平成27年発生災害の概要及び災害復旧事業採択について

平成27年発生災害の概要及び災害復旧事業採択について
国土交通省水管理・国土保全局防災課
田 部 成 幸
総括災害査定官
目
次
Ⅰ.平成27年災害と被害の特徴
Ⅱ.公共土木施設災害復旧事業の概要
Ⅲ.災害申請の基本知識
Ⅳ.査定時に議論となりやすい点
平成27年発生災害の概要及び
災害復旧事業採択について
国土交通省
水管理・国土保全局防災課
総括災害査定官 田部 成幸
Ⅰ.平成27年災害と被害の特徴
 平成27年には、水害(床上浸水10棟以上)7の地域、地震(最大震度5弱以上)7件、
口永良部島の噴火等の災害が発生した。(H27.10月時点)
5月
6月
7月
9月
平成27年の主な地震
(震度5弱以上発生地域)
宮城県沖を震源とする地震
(岩手県 : 震度5強)
奄美大島近海を震源とする地震
(鹿児島県 : 震度5弱)
埼玉県北部を震源とする地震
(茨城県 : 震度5弱)
小笠原諸島西方沖を震源とする地震
(東京都 : 震度5強)
釧路地方中南部を震源とする地震
(北海道 : 震度5弱)
大分県南部を震源とする地震
(大分県 : 震度5強)
東京湾を震源とする地震
(東京都 : 震度5弱)
平成27年の噴火警戒レベル変更概要
平成27年の主な水害
(床上浸水10棟以上発生地域)
6月10日から続く梅雨前線
6月
(熊本県)
台風11号
7月
(徳島県)
台風12号
(鹿児島県)
台風15号
8月
(山口県)
平成27年9月関東・東北豪雨
9月
(関東地方・東北地方)
台風23号
10月
(北海道)
箱根山
噴火警戒レベルを1(平常)から
2(火口周辺規制)へ引上げ
口永良部島
噴火警戒レベルを3(入山規制)から
5(避難)に引上げ
三宅島
噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から
1(平常)に引下げ
噴火警戒レベルを1(平常)から
2(火口周辺規制)に引上げ
噴火警戒レベルを3(入山規制)から
2(火口周辺規制)に引下げ
噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から
3(入山規制)に引上げ
噴火警戒レベルを1(平常)から
2(火口周辺規制)に引上げ
噴火警戒レベルを3(入山規制)から
4(避難準備)に引上げ
噴火警戒レベルを4(避難準備)から
3(入山規制)に引下げ
噴火警戒レベルを3(入山規制)から
2(火口周辺規制)に引下げ
噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から
3(入山規制)に引上げ
5月
5弱
浅間山
6月
御嶽山
箱根山
7月
雌阿寒岳
8月
桜島
5強
桜島
9月
【台風11号経路】
箱根山
阿蘇山
①
【台風15号経路】
①
【台風12号経路】
阿蘇山
噴火
平成27年の主な遠地地震の概要
平成27年9月
関東・東北豪雨
5弱 5弱
4月
パプアニューギニア、ニューブリテン (Mw=6.8)
5月
【凡例】
ネパール (Mw=7.9)
パプアニューギニア、ニューブリテン (Mw=7.5)
ソロモン諸島 (Mw=7.0)
ネパール (Mw=7.2)
5強
水害・・・床上浸水10棟以上
が発生した地域
小笠原
西方沖地震
5弱
5弱
【台風18号経路】
5強
7月
サンタクルーズ諸島 (Mw=6.9)
インドネシア、パプア (Mw=7.0)
地震(震度)
火山噴火
口永良部島
噴火
ソロモン諸島 (Mw=6.7)
9月
チリ中部沿岸 (Mw=8.3)
※日本では、津波注意報が発令
10月
バヌアツ諸島 (Mw=7.1)
アフガニスタン、ヒンドゥークシ (Mw=7.5)
台風経路
※年平均約2個の台風が日本に上陸
平成27年5月 口永良部島の噴火
○鹿児島県屋久島町の口永良部島で噴火が発生。
○島内住民及び滞在者合計138名が屋久島に避難。
○国土交通省では、防災ヘリによる口永良部島上空からの調査や一時入島時の支援として
火口周辺の上空監視を実施。
②
①
③
平成27年7月 台風11号 徳島県阿南市の浸水被害
な
か
がわ
○台風11号による累計雨量640mmの豪雨により、那賀川等が氾濫。
○那賀川の古庄観測所において、7月17日5時に7.22mを観測。平成26年8月台風11号による
観測開始以降最高の水位8.00mに約80cmと迫る水位となった。
○徳島県阿南市では、91戸の浸水被害が発生。
ふる
しょう
持井地区
加茂谷中学校(痕跡水位)
H26台風11号
浸水深 約4.3m
加茂谷中学校
H27台風11号
浸水深 約3.0m
那賀川 浸水被害状況 【国管理区間】
H27台風11号(H27.7.17)
浸水面積
(ha)
約140
床上
37
浸水家屋(戸)
床下
54
小計
91
※那賀川河川事務所調べ、7月24日時点(国管理区間)
※本資料の数値等は速報値を含むため、今後の調査で変わる可能性がある。
平成27年9月関東・東北豪雨による被害
○台風18号及び台風から変わった低気圧に向かって南から湿った空気が流れ込んだ影響で、
記録的な大雨となった。
○ 9月10日から11日にかけて、関東地方や東北地方では、16地点※で、最大24時間降水量が
観測史上1位を記録。 ※統計期間が10年以上の観測地点を対象
○国土交通省では、全国の地方整備局等よりTEC-FORCE及び災害対策機械等を派遣し、
被災状況調査や24時間体制による緊急排水などの災害対応を実施。
<鬼怒川(茨城県)の決壊による被害状況>
:氾濫域の最大総浸水
面積(40k㎡)
国土地理院公表資料
常総市役所
決壊箇所
(鬼怒川左岸21.0㎞)
小貝川
:決壊箇所
鬼怒川左岸21.0km
:浸水範囲内の建築物
小貝川
鬼怒川
決壊箇所
(鬼怒川左岸21.0km)
鬼怒川
小貝川
鬼怒川
決壊箇所
(鬼怒川左岸21.0km)
項目
常総市役所
状況等
人的被害
死亡8名、重傷8名、軽症71名
住宅被害
床上浸水 3,147件
床下浸水 8,998件
土砂災害
17都県において、177箇所発生
常総市役所から撮影(撮影日:9/11)
平成27年9月関東・東北豪雨による被害
<渋井川(宮城県)の決壊による被害状況>
渋井川(県管理)堤防決壊
(大崎市西荒井上流地区①)
(大崎市西荒井中流地区②)
(大崎市西荒井下流地区③)
鳴瀬川
多田川
渋井川の決壊による浸水状況
鶴田川
吉田川
渋井川
吉田川
堤防決壊
L=40m
氾濫
渋井川堤防決壊状況(西荒井下流地区)
平成27年9月関東・東北豪雨による被害
<土砂災害の発生状況>
○台風18号等による大雨により、全国17都県で177件の土砂災害が発生。
○栃木県鹿沼市日吉町では、住宅裏の斜面が崩壊し、死者1名、負傷者1名、人家被害3戸の
被害が発生。
○栃木県日光市芹沢地区では、8渓流9箇所において土石流が発生し、人家被害7戸、地区唯一の
避難経路である市道芹沢線が分断され、住民25名が一時孤立するなどの被害が発生。
○栃木県鹿沼市日吉町の被害状況
10月5日9:00現在
土砂災害発生件数
177件
土石流等 : 36件
地すべり: 5件
がけ崩れ : 136件
【被害状況】
人的被害 :死者
負傷者
人家被害 :全壊
半壊
一部損壊
住宅裏斜面の崩壊状況
1名
3名
15戸
5戸
27戸
凡例
発生件数
20~
5~
1~
0
平成27年9月関東・東北豪雨による被害
○栃木県日光市芹沢地区の被害状況
田茂沢
中坪上沢
中坪下沢
ウドン沢
滝向沢
間の沢
(仮称)
下坪下沢
下坪沢 (仮称)
芹沢
土石流の発生状況
市
道
芹
沢
線
芹
沢
市道芹沢線の崩落状況
土砂流出状況(滝向沢)
土砂流出状況(中坪上沢)
被害報告額
○平成27年発生災害は、公共土木施設における被害報告箇所は6,816箇所、被害報告額は1,846億
円(H27.12.25点)。
これは、過去4年間(H22~H26 東日本大震災が発生したH23は除く)の12月時点において平均
的な規模。
砂防
1.6%
橋梁
累積被害報告額の推移
2.1%
下水道・公園
急傾斜地
1.5%
0.1%
港湾 2.8%
海岸
(億円)
地すべり防止施設
0.0%
6.4%
30,000
平成22年災害
25,000
道路
河川
29.8%
55.6%
平成23年災害
20,000
(参考)平成16年災害
11,165億円 ●
15,000
3,000
平成24年災害
工種別被害報告額の割合
冬期風浪
融雪
1.4%
及び風浪 3.3%
平成25年災害
2,000
10,000
梅雨前線豪雨
4カ年平均
(H22,H24,H25,H26)
0
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平成27年災害
0.0%
0.9%
豪雨
平成26年災害
1,000
5,000
地震
その他
6.5%
7.1%
地すべり 8.2%
台風
72.6%
異常気象別被害報告額の割合
Ⅱ.公共土木施設災害復旧事業の概要
根拠法令
目
的
特
徴
公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年3月31日法律第97号)
自然災害により被災した公共土木施設を迅速に復旧することで,公共の福祉を確保
① 様々な公共土木施設が対象
(河川,海岸,砂防設備,林地荒廃防止施設,地すべり防止施設,急傾斜地崩壊防止施設,道路,港湾,漁港,下水道,公園)
② 高率な国庫負担
③ 迅速で確実な予算措置
・事業費確定のための災害査定は,地方公共団体の準備が整い次第速やかに実施
・災害査定等により災害復旧に必要な費用を過不足なく確実に措置
④ 迅速な工事着手
・災害復旧工事は,国の災害査定を待たず,発災直後から実施可能
⑤ 原形復旧だけでなく適切な施設形状で復旧
⑥ 県単位で一括し予算交付
・災害復旧事業費は,予算費目ごと(河川等=河川,海岸,砂防等,道路,
下水道/都市=公園等)に災害年ごとに県単位で一括して交付
・災害復旧事業として採択された同一予算費目の工事であれば,工種,箇所に
かかわらず市町村も含め県内で自由に活用可能
高率な国庫負担
地方公共団体は,災害が発生した場合には,被災箇所について災害復旧を申請し,
それに基づいて災害査定が行われ,災害復旧事業費が決定
災害復旧関係事業における
国庫負担は2/3以上※と高率
※年間の災害復旧事業費が,標準税収の1/2を超え,2倍に達するまで
の額に相当する額については75%が国費
標準税収の2倍を超える額に相当する額については100%国費
交付税措置により実質的な地方公共団体の負担は最大でも1.7%(災害発生年災の場合)
【国庫負担率2/3、災害発生年災の場合】
国の負担
(国費 66.7%)
地方の負担
(地方費 33.3%)
起債充当率 100%
地方負担分には、起債(地方債)充当が可能
国の負担
(国費 66.7%)
起債のうち95%を交付税措置
(交付税 31.6%)
国の負担額=国費+交付税=98.3%
(参考) 一般公共事業の場合 (補助率1/2の場合)
国の負担
(国費 50%)
交付税措置
(15%)
地方の実質的負担額 1.7%
起債充当率 90%
35%
起債のうち交付税措置なし
(30%)
起債なし
(5%)
※ 激甚災害に指定された災害の災害復旧事業については,方公共団体の標準税収入に応じさらに国庫負担率をかさ上げ
災害復旧事業の定義
○ 災害復旧事業は,被災箇所を原形に復旧することを目的としている。
○ ただし,原形復旧とは,単なる元どおりだけではなく、従前の効用を復旧するこ
とができる。
○ さらに,原形復旧が困難な場合や不適当な場合には,形状,材質,構造を改良
する等,従前と異なる施設形状で復旧することができる。
-参考-
公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和二十六年三月三十一日法律第九十七号)(抜粋)
(定義)
第二条
2 この法律において「災害復旧事業」とは,災害に因つて必要を生じた事業で,災害にかかつた施設
を原形に復旧する(原形に復旧することが不可能な場合において当該施設の従前の効用を復旧す
るための施設をすることを含む。以下同じ。)ことを目的とするものをいう。
3 災害に因つて必要を生じた事業で,災害にかかつた施設を原形に復旧することが著しく困難又は
不適当な場合においてこれに代るべき必要な施設をすることを目的とするものは,この法律の適用
については,災害復旧事業とみなす。
原形と異なる施設形状での復旧
①広域の地盤沈下,極端な河床の洗掘等により,地形地盤が大
きく変動したため,原形での復旧が不可能な場合
→ 地盤の沈下量や河床の洗掘深を考慮した上で,同位置で護
岸法長を増加して、従前の効用(防災機能など)を復旧
②大規模な山腹崩落等により,地形が大きく変動したため,原
位置での原形復旧が困難な場合
→ 道路のルートを変更し,トンネルで、被災した施設に変わる
べき施設を復旧
③木橋が全橋被災し,原形での復旧が不適当である場合
→ 現在の設計基準に合わせ,コンクリート橋で復旧
④洪水等が堤防を越える「越水被害」が発生し,背後地の集落
地、主要交通幹線路が浸水する等,原形での復旧が不適当
である場合
→当該災害を与えた洪水等を対象として堤防を嵩上げして復旧
被災前
被 災
洪水で木橋が流出
復 旧
コンクリート橋で復旧
事業の採択要件
(「負担法」での必要3条件)
1.異常な天然現象により生じた災害である
1)河川
①警戒水位以上の水位
②河岸高の5割程度以上の水位(警戒水位未定部)・・・・護岸高ではないので注意
③長時間にわたる融雪出水等
2)河川以外の施設災害
①最大24時間雨量80mm以上の降雨
②時間雨量が20mm以上の降雨
3)10分間平均風速の最大値が15m以上の風・・・・最大瞬間風速ではないので注意
4)高潮、波浪、津波による軽微でない災害
5)地震、地すべり、落雷等による災害
6)積雪が過去10ヶ年間の最大積雪深の平均値を超え、かつ1m以上の雪による災害
事業の採択要件
(「負担法」での必要3条件)
2.地方公共団体又はその機関が維持管理している公共土木施設の被災である
3.地方公共団体又はその機関が施行するものである
ただし、負担法の適用除外(法第6条)に該当しないものであること
管理施設であっても・・・
2.5%
民地法面の
崩壊は負担
法対象外?
U300
民
地
法面は
公共土木
施設?
山側の法尻側溝に土砂堆積していたため、
維持管理不良(法6条の5)で欠格
災害復旧事業制度の改善の取組
災害復旧事業研究会(H25.10月設立)
〈構成メンバー〉
国交省防災課
災害査定官
11道県
+ 災害復旧実務担当者
【目的】
自治体の意見を踏まえた、災害査定や災害復旧事業制度の改善
【研究会の開催】
第1回(H25.10.21~22) 設立・課題抽出・担当者の決定
第2回(H26.1.28~29) 課題研究結果の発表・意見交換
第3回(H26.4.30~5.1) 報告書案取りまとめ
最終報告書の取りまとめ(H26.5末)
災害復旧事業制度の改善の取組
研究テーマ・課題
①採択要件の緩和
②査定の簡素化
③事務の改善・簡素化
④改良復旧制度の拡充
⑤早期着工・完成
⑥職員の技術力不足
⑦予算配分の弾力化
⑧制度(工雑、改国費)の廃止
⑨災害と維持管理
⑩事例集(ITで効率化)
提 言
早急に対応すべき改善項目
・査定設計と実施設計の
乖離解消
・査定の簡素化
・採択基準の明確化 など
H26年,27年で
制度・運用の改善を実現
主な制度改善・運用改善
1 査定の効率化(☆:H26,★H27,次頁も同様)
○査定設計と実施(発注用)設計の乖離解消
☆単価、数値基準を実施設計に整合 ☆処分費、事業損失防止費を計上可
★年度分割発注の必要があれば設計書を分割で申請可
★契約保証に係る一般管理費率補正を計上可
★消波根固めブロック:実施ブロックでも計上可
★水替え:金額を問わず積み上げ積算も可
★埋塞土砂、流木撤去のうち査定時契約済みの部分は全量を計上可
○査定前着工(事後査定)、概略図面での査定・発注の奨励
☆契約済み箇所(★入札契約手続き中を含む)は実施設計書を査定
☆総合単価の上限撤廃【H26.6.27通達】→★手帳に明記
○査定の簡素化
☆写真撮影(全景、縦横断)の省力化徹底
☆ビデオ(生中継、録画)や3D画像の活用可
★査定開始時のポールマンによる延長読み上げを不要
主な制度改善・運用改善
2 採択基準の明確化
☆下水道を災害手帳に追加
☆既存施設とのすりつけ工(雑工)は必要に応じて影響範囲のブロック積等の取り
壊し、再設置が可能
☆兼用施設(護岸等)は効用の大きな施設で申請。要件を満たせば何れでもよい
☆カゴ護岸の根入れは必要に応じて0.5~1.5m可
☆護岸上部の土羽の被災に対する法覆工の設置について手帳に例示
☆不可視部分(調査不能な場合)は設計変更対応→★H27災害手帳に明記
★金額保留(4億円)の判断は内未成、内転属を除外
★欠壊防止の高さは被災状況等を踏まえて総合判断(DHWL等の一律ではない)
★流出橋梁撤去は河川管理上の支障があれば計上可
★仮設道路の敷砂利は原則再生砕石(リサイクル法の遵守)
★大型ブロック積設計方法の判断に当たっての土圧の基準を明示
★一定要件を満たす場合に下水道ポンプ場・処理施設で止水壁、耐水扉等の
設置を可
主な制度改善・運用改善
3 設計変更の効率化
☆単費合冊は重変協議不要→★重変協議不要な合冊を詳細に手帳に明記
★軽微な変更の上限拡大(3割かつ1千万円未満→3割かつ3千万円未満)
★軽微な変更の内容拡大
・現地状況変化等による仮設工、すり付け、雑工、交通整理員、列車見張員の
増減
・再測量による埋塞土等の変更、搬出先確定による発生材の投棄料・運搬費の
変更
4 その他
☆2ヶ月査定:引き続き柔軟対応
☆査定は週連続4日上限制(8月中旬~12月)
★再調査で軽微な変更に該当する未着手工事は実地調査を不要
★助成事業への再調査制度適用により助成費の増額可
★助成、関連事業は査定後であれば採択を待たずに設計、工事に着手可能
3D画像を活用した災害査定の取組例
【災害復旧に活用できるIT技術の例】
衛星リモートセンシング
航空レーザー測量
携帯型斜め写真撮影システム
地上3次元レーザースキャン
ステレオ写真測量 ・・・・取組対象
GPS測量、TS測量、GIS・・・
小型無人飛行機(UAV)による3次元計測
移動計測車両(MMS)
水中3次元ソナー
【取組対象の道路災害】
・支障木で正面から写真が
撮れない
・長大法面の崩壊
・空からの視界も樹木で
遮られている
【使用機材】
・特別な知識、資格が不要
・投入コストが安価
・職員が操作できるデバイス
①市販のデジタルカメラ、②汎用3Dモデリングソフト、③3次
元CADソフト、④ノートパソコン、⑤UAV(マルチコプター)
「初期投入コスト」:②③無償版から数十万円の汎用ソフト⑤
10万円/台の玩具
3D画像を活用した災害査定の取組例
⑤高所や危険箇所はUAV等
による間接撮影
(鳥瞰・精細な凹凸が視覚的に判り易い)
点群、TINモデルの3次元データ
②「3Dモデリングソフト」
①市販のデジタルカメラによる
撮影(GPS:データ整理が容易)
ステレオ写真測量
カメラ位置と計測ポイント、計測点は直線上になることから3次元座標値が算出できる。
【ステレオ写真測量のメリット】
測量施術者の安全確保
危険区域に立ち入らずに測量が可能となり、2次災
害の危険性の軽減
機動性
特別な機材、知識、資格も不要で、小規模な災害が
多数発生した場合の機動性が高い
3次元データの利活用
容易に3次元データが取得でき、平面図、任意横断
図、土量算出も精度が高い
◎机上査定用の写真撮影が不要(外業の大幅削減)
◎実査(職員の移動・測量準備・危険区域の立入等)
の軽減
③3Dモデルでの計測
③3次元CAD処理
Ⅲ.災害申請の基本知識
① 1箇所工事の定義について
②査定前着工について
③査定用写真の撮影方法について
④応急工事について
⑤兼用工作物の申請について
⑥原形復旧のとらえ方(護岸高を例として)
①1箇所工事の定義
1. 管理者(県・市等)別、工種(河川、道路等)別、災害別に区分した上で、直線距離
で100m以内のものをまとめて1箇所とする強制規定。
2. ただし、災害が異なっていても、前災と分離できない場合は、前災(未施工分)を
内未成、内転属として含め1箇所で申請。
3. 1箇所の事業費(内未成、内転属、応急仮工事費、処分費等を除く)が限度額
120万円(都道府県・指定都市)、60万円(市町村)以上の場合は採択。
(問題)県道で以下のようなH27被災(ただしBはAの増破)があった場合、
どのように申請すべきか?
300万円
26災
A
200万円
27災
B
500万円
100m以内
27災
C
100万円
100m以内
27災
D
①A+Bを1箇所、C+Dを1箇所として2箇所申請
②A+B+C+Dを1箇所で申請
③A+B+Cを1箇所で申請(Dは限度額以下で申請不可)
(参考)被災拡大時の対処方法
②査定前着工について
~査定が終わるまで工事着工できないのは誤解~
(アナウンサー)
・・・しかし一方で○市や○○町など
他の被災地では今も主な工事が始
まっていません。なぜここまで時間
がかかるのか。背景には国などで
進めていた災害査定の作業が工事
に影響していることがあります。
災害査定は補助金の交付額を決
めるために被害にあった場所を調
査してその規模を確認します。災害
査定が行われている間は工事を始
めることができません。そのうえ査
定には多くの時間を必要とします。
・・・略・・・
豪雨災害から半年、国や地元自治
体による迅速な対応と、住民への
極め細かい説明が求められます。
災害復旧事業の主な流れ
○ 災害査定を待たず,被災直後から応急工事が可能(応急工事も災害復旧事業の対象).
○ 地方公共団体の意向を踏まえ,災害緊急調査、事前打合せを実施し,早期復旧を支援.
○ 災害査定は、地方公共団体の準備ができ次第,全国から査定官を派遣して速やかに実施.
大規模な災害が発生した場合など
災害発生
・災害緊急調査(本省査定官)
・災害復旧技術専門家派遣制度
災害報告
災害終息後10日以内 *1
事前打合せ
県等からの申し入れがあった場合
工
(応 事
急実
工施
現地調査・設計図書作成
国庫負担申請
申請を受けて速やかに実施
国庫負担金の交付
事業費の精算
通常,被災後2ヶ月以内
*2
災害査定(工事費決定)
事
も
含
む
)
被災
災害
直復
後旧
か工
ら事
実は
施,
可国
能の
災
害
査
定
を
待
た
ず
、
成功認定(完了検査)
*1 災害終息後10日以内に概算被害額を報告.訂正を要する場合は1ヶ月以内に訂正報告.所定の期間内に報告できない場合は,防災課に連絡し別途指示を受ける.
*2 査定前に着工する箇所については,写真が被災の事実を示す唯一の手段のものとなるので,被災状況等ができる限りわかる写真を撮影しておく.
③査定用写真撮影~全景・縦断写真の改善(H25.8)
多人数を配置した非効率な作業。高所・水中等では危険が伴う作業
リボンテープ、
作業員を省略
現 状
L=13.0m
終点(NO.○)
NO.○
3.0m
起点(NO.○)
NO.○
5.0m
5.0m
※ 改訂(案)のポール、木杭等
はイラスト表示であり、実際
には実物を設置すること。
杭間距離表示の例
スケール貼付の例
測点ポール
改訂(案)
註1) 起終点の確認、距離判別のため、可能な限り正面から撮影のこと
註2) 被災の全景、範囲等が良く分かるように周辺を合わせて撮影のこと
註3) 写真の歪みなどにより、起終点付近の距離判別しにくい場合には
水平ポール等を設置して、延長の判別が可能なように工夫のこと
査定用写真撮影~横断写真の改善(H25.8)
ポール縦横断写真のイメージ ②
(2) 横断写真のイメージ
■ 兼用道路の被災事例
(測点NO.○○)
現 状
※ ポール測量に15名もの人員を配置(重複あり)
(測点NO.○○)
危険なポール
測量を省略
横断方向の
見出しポール
全景写真の
測点ポール
改訂(案)
水平方向・距離確認
用ポール(2m)
勾配変化点
の木杭等
水際杭の
見出しポール
④応急工事について
道路の崩壊・河川の破堤が発生!
施設管理者としてどう対応しますか?
①本復旧工事の全部又は一部として応急本工事を実施 → ◎
②負担法のルールをふまえて必要な応急仮工事を実施 → ○
③負担法のルールにこだわらず、管理者として必要な対策をすぐに
実施 → 管理者のスタンスとしては○ 負担申請については△
④査定で認められないかもしれないため最小限で実施 → ×
⑤査定で認められないかもしれないため放置 → ×× 論外!
※応急工事の実施には負担法のルールを踏まえた判断が必要。
申請者として悩むのは、負担対象になるか否かと、応急本工事と
応急仮工事の別。判断の助けとなるよう次ページ以降のフローを
作成した。これをふまえて工法を検討し防災課と事前打合せを。
⑤兼用工作物について
兼用工作物(道路・河川等双方が国交省所管)の場合には、効用が大きい施設
側で一括した申請が可能
道路
道路
D.H.W.L
D.H.W.L
L.W.L
この場合は道路の効用が大
河川
河川
L.W.L
この場合、破堤の恐れがあるので
河川の効用大
(問題)左図の場合(道路で申請)に応急仮工事として実施した決壊防止のため
の大型土嚢積は負担法の対象となるか?
(問題)左図のような堀込河道で背後に道路及び民地がある場合(地盤線が水
平な場合)効用の大きいのは河川、道路のどちらか?
⑥原形復旧のとらえ方~護岸高を例として~
連続性を欠く復旧、施設バランスの欠如
支障事例
(H19全国知事会資料より抜粋)
復旧護岸高(被災水位<既設護岸高の場合)
復旧護岸高(被災水位<既設護岸高の場合)
あなたならどう申請しますか?
地盤高①の場合
D.H.W.L>既設護岸高
復旧護岸高は?
既設高?DHWL?
地盤高②の場合
・地盤高①の場合:背後地の被災状況と当該区間の河川特性により○○工を追加可
・地盤高②の場合:背後地資産と施設被災状況により、○○や○○工を追加可
復旧護岸高(被災水位>既設護岸高の場合)
・既設護岸以上の土羽が側方洗掘されたことにより、背後民地まで被災が発生してい
る場合等は、既設護岸高まで原形復旧しても被災原因の除去ができない。
・水衝部などの河川特性を把握したうえで、土羽では対応出来ないのであれば、法面
保護工を追加又は被災水位までの護岸を申請。(原形復旧不適当条項の適用)
負担法逐条解説:既設土羽部分を栗石などに材料を変更(要綱3-【二】-イに該当)
(災害手帳「工種別の特殊な採択基準」の頁を参照)
Ⅳ.査定時に議論となりやすい点
① 国庫負担の対象となる応急工事の範囲
② 復旧工法の重複(二重対策)
③ 被災程度の問題
④ 工法選定の妥当性
⑤ 河川環境の保全
① 国庫負担の対象となる応急工事の範囲
被災直後
被災直後
カゴマット護岸
DHWL
応急仮工事
ブロック張護岸
応急仮工事
幅員?、決壊防止の高さ?、材料?
本復旧
② 復旧工法が重複している場合
いわゆる
二重対策では?
擁壁とロックネット
根継と根固
ロックネットと
ストンガード
・目的が重複していないことの説明が必要
(根固めの例:水衝部や著しい局所洗掘を受けた箇所において、根入れのみ
確保し根固めを申請しない例が多い。河川特性、被災状況等により周辺と同
等な根入れを確保した上で根固で洗掘緩和をすることが必要。)
法枠工と落石防止柵が「二重対策」では?
法枠工
落石防止柵
二重対策
不安定土塊・浮石
法枠工
落石防止柵
目的や経済性
から二重対策
とはならない
③ 被災程度の問題
1. 天然河岸の欠壊で、背後に人家、公共施設等が存在しない。河床堆積が
河積の3割未満の区間。(他に高さ1m未満の小堤、幅員2m未満の道
路等)【被災程度にかかわらずNG】
2. 地山の崩壊を伴わない法面処理工のみの被災。道路山側法面の崩壊で、
交通への支障が小さく、崩土の除去のみをすれば供用が可能。(他に路
面のみ、側溝のみ、凍上災の歩道のみ等)→災害査定の手引きp17参照
【被災程度にかかわらず他に被災施設なければNG、維持管理対応】
3. 土羽護岸等の被災で法面が多少乱されている程度で護岸機能は残存。
【被害少・機能残存・・・被災程度によりNG】
・被害少区間が次期に被災した場合は、今後の
被災程度を判断に当たっての重要な根拠データ
・護岸復旧の間に短距離の中抜け(土羽)
区間ができると弱点となり、復旧護岸も
再度被災するリスク増
被災程度の問題1 天然河岸
維持上、公益上特に
必要か?(①~⑤に該
当するか)
山 林
天然河岸
① 人家、公共施設、田畑等が流失した場合
② 橋梁、床止工、井せき等の機能が喪失し
た場合
③ 隣接の堤防もしくは護岸が損傷した場合
④ 河道が著しく変化して、他に被害を及ぼし
た場合
⑤ これらの恐れが大きい場合
適用除外(法第6条)
天然河岸
欠格(天然河岸)
被災程度の問題2
地山の崩壊を伴わない法面処理工の被災
法面処理工
のみの
災害
欠格
(問題)同一箇所内に、地山の崩壊を伴う法面被災工区と地山の崩壊を伴わない法面
被災工区の双方が混在する場合に負担法の対象範囲はどこまでか?
被災程度の問題3 路面等に影響なし
被災状況
道路山側からの土砂流出
→①崩土除去、②法止め
フトンカゴ、③集水桝を申請
路面、排水管に支障なし。
斜面は現状で安定。
①は限度額以上あれば採択可。
②、③は施設被災ないので不可。
被災程度の判断を誤ると再度被災
被害少としてカットに合意した区間を含めて再度被災
④ 工法選定の妥当性
1. 被災原因が除去されていないため、再度災害のおそれが大きい
場合(原形復旧不適当 条項の活用が不十分など)
2. 河川護岸の死に体判断が不適当、根入長や河床安定対策(帯
工など)の検討が不十分な場合
3. 道路の切土のり面対策で経済比較なしに画一的に法枠工が選
定されている場合及び盛 土法面の排水対策の検討がなされて
いない場合
4. 大型ブロック工設計に関する誤解
5. 用地を十分に活用していない場合
6. 仮設費、用地補償費が多額の場合
7. 地すべり対策において抑止工のみの内容となっているもの及び
施工中の安全度を確保 していないもの
④1被災原因除去~何故再度被災を受けたのか?
護岸天端保護工をカットした箇所の未満災
被災原因除去~経済性だけで判断すると・・・
被災橋梁の復旧をボックスカルバート
工で申請・採択。河床変動による再度
被災のリスク大。
④2 死に体の判断を誤ると・・・
工事施工中に被災した事例
「護岸積み換え+根固め工」申請を「根継工」に変更した結果、床掘中に被災
査定後の小出水で増破した事例
L=37.0m
根継工の事故
根継工型枠(裏型枠)解体のため,根継擁壁の背面にて作業をしていたところ,
突然既存のブロック基礎が崩れ落ちた。
型枠解体作業をしていた作業員は,崩れ落ちてきたブロック基礎と根継工との間
に挟まれ死亡。また既設ブロック張上でシートの撤去をしていた作業員は,崩れ
落ちたブロック基礎と根継工との間に足を挟まれ骨折。
工事着手直前(石積がずり落ち)
・死に体に根継ぎはNG→原則積み換え
・死に体ではない護岸基礎の露出対策は根固めを優先<根継ぎは最終手段>
「死に体」の判断は適切に
沈下・滑動
③陥没
②裏込流出・緩み
①基礎部洗掘・支持力低下
判断のポイント
●基礎下部の土砂が緩んで地盤支持力が失われていないか
●裏込め材の流出や緩みにより、背後の水圧・土圧を減ずることができるか
●支持力の低下や偏圧作用により、構造物が沈下、滑動又は破壊していないか
施設機能が確保されているか?
工事が安全に施工できるか?
○急流河川の特徴
・流速が速い
・ほとんどが射流
・掃流力が大きい
・河床変動が大きい
・水面形が乱れる
・場合に因って水面波
(ウエブ)が発生
出水中の状況 護岸沿い
を流水が走っており、洪水
中の洗掘が伺われる。
洪水後の護岸の状況
(基礎部は浮いていない)
平成21年 災害復旧申請数(河川) 約6,000件※
1.5m
2.9%
1/500~
1.5m~
7.0%
1m
11.7%
0.5m
9.2%
0m
33.3%
最大洗掘深の分布
0.4m
5.5% 0.3m
10.7%
0.2m
13.0%
0.1m
9.6%
①最大洗掘深
~1/10
1/10~
1/30
1/100~
1/500
勾配別分布
1/50~
1/100
1/30~
1/50
②河床勾配
・0mが約1/3
調査不足又は計算チェック不足?
・0.2m以下で約6割近くに上り、0.5m以下で約8割
・1mを越えるのは1割程度
・1/50より急勾配が概ね半数
・急流河川が多い
全体的に洗掘深の適切な評価がなされているのかが疑問
※ 平成21年申請数(河川)約6,000件に対し、収集したB表データ数は約28,000件
○局所洗掘の場合
洗掘により既設護岸が崩壊
平均河床
被災後河床
×:実績最大洗掘深(横断図より)
○:実績最大洗掘深(既設護岸の根入れ以上)
○全体的な河床洗掘の場合
従来の1mでは根入れ不足→根入長見直し又は根固追加
洗掘により既設護岸が崩壊
洗掘前の河床痕跡
○:実績最大洗掘深(洪水前河床痕跡より)
被災後河床
平均河床
×:実績最大洗掘深(横断図より)
④4 道路法面対策のポイント
のり面災害 約8割
( 山側 約3割)
( 谷側 約5割)
山側斜面の災害
適用基準
谷側のり面の災害
①
のり面の安定勾配の確保
・土工による復旧を基本とする
・安定勾配確保が難しいときに構造物を設置
②
水処理(表流水、地下水等)
・被災原因の除去の上から極めて重要
・微地形や現地状況に合わせた計画
③
のり面の劣化(浸食)防止
・雨水や風化による劣化、浸食の防止
切土工・斜面安定工指針 盛土工指針 排水工指針 落石対策便覧
④4 法枠工が不可欠?
吹付法枠⇒擁壁+植生
豪雨により、法面が飽和し、
地山法面が崩壊
●申請:
・法面を安定させるため、
吹付法枠を申請(吹付法枠)
申請額 14,349千円
(P11.0~P16.0)
P12.0同断
境
界
(P12.0~P16.0)
境
界
●査定:
・隣接施設に合わせて復旧
(擁壁+植生基材)
S=
SL=1:0.5
2.6 0
5
植生基材吹付工
S=1
SL= :0.5
9.2
0
20600
20600
吹
付
25 法枠
20
0
・査定額 9,523千円
0.50
5100
S=
SL=1:0.5
5.5
9
5100
2.00
0.50
S=1
SL= :0.45
5.2
5
法枠:湧水?凹凸(長期安定
不安)?急勾配?被災特性?
S=1
SL= :0.5
2.6 0
5
19000
④4 法面排水対策
豪雨により、大量の
路面水が流下し、
路側のり面が被災
●申請:
・路肩および法面保護が必要
・L=8.0m Co張ブロック
・申請額 1,923千円
●査定:
・路面水の流下浸食対策として張り
ブロック保護ではなく、集水路と縦
排水に変更
・法面保護は土羽盛土に変更
・査定額 1,044千円
ブロック張⇒縦排水路
④5 通常のブロック積擁壁について
• 主としてのり面の保護に用いられ、背面の地山が締まっている切
土、比較的良質の裏込め土で十分な締固めがされている盛土など
土圧が小さい場合に適用される。また重要な場所への適用には注
意をする。
「道路土工 擁壁工指針」
直高(m)
のり面
勾配
~1.5
1.5~3.0
3.0~5.0
5.0~7.0
盛
土
1:0,3
1:0.4
1:0.5
ー
切
土
1:0,3
1:0.3
1:0.4
1:0.5
5
10
15
20
裏込めコンクリート厚(cm)
河川護岸の裏込めコンクリートの考え方
構造形式
練積
裏込め
コンクリート
あり
裏込め
コンクリート
なし
※河川用護岸
④5 大型ブロック積擁壁設計に関する誤解
直高5mを超えると、とたんに控長が2~3mの異様な大型ブロック積が出現。土圧が
小さいにも係わらず画一的に安定計算(もたれ式擁壁)を実施していることが原因。
→経験に基づく設計法を適用すれば控長1m程度で対応可。
直 高
土圧小
土圧大
7m(5m)以下
7m(5m)超~8m以下
8m超
通常のブロック積擁壁
(経験に基づく設計法)
大型ブロック積擁壁
(経験に基づく設計法
+支持力照査)
安定計算などの
詳細設計が必要
大型ブロック積擁壁及び他形式の擁壁
(比較設計により形式を選定)
注)直高の閾値は切土:7m、(盛土:5m)
土圧小の場合とは・・・・・背後の埋め戻し土質と嵩上げ盛土の形状(盛土勾配1割5分で
高さ4m以下又は盛土勾配2割以下)がポイント
④5 用地を活用した工法に見直し
豪雨により、大量の
路面水が流下し、
路側のり面が被災
官
民
境
界
●申請:
・路肩および法面保護が必要
・L=4m Coブロック積
・申請額 1,493千円
申請
●査定:
・用地境界まで幅がある
・用地活用しブロック高を抑える
・査定額 420千円<600千円
失格
査定
民地
⑤ 河川環境と経済性
被災前の環境保全(復旧)が可能な工法を選定
1. 災害復旧事業で、河川環境を犠牲にしてきた。(土羽7割→コン
クリート護岸7割、河床が平らな水路化)
2. 被災前の河川環境機能も「従前機能(原形)」の範疇。
3. 管理者として環境保全・整備の方針を議論し確立しておくことが
重要。(例えば被災した石積護岸をコンクリートブロックに改変
していくことの是非。守るべき当該河川固有の環境・景観。河川
整備計画や維持管理計画への位置づけと実践など。)
4. 土羽を護岸に変えれば、更新・維持管理費用が増大。また、流
速増により上下流の土羽被災リスク増大。状況により護岸を整
備しないことも視野に入れた選定が必要。
5. 治水と河川環境保全を両立できる工法を選定した上での経済
比較。(治水機能だけを復元する工法は経済比較する意味が
ない)
河川環境(美山河A表チェックリスト)
1. 査定官は査定資料で確定している事項にしかチェックを入
れない。又、申請者欄に配慮(チェック)が皆無な場合は申
請内容の再考を求める。
2. 設計から施工・維持管理まで関係者の取り組みを持続・連
携・向上させることが目的。査定が終わればチェックは終
わりではない。
3. 天端コンクリートの処理、水際の土砂・植生、場所打ちコン
クリートの明度等は平常時からの議論が重要。
岐阜県高山市
H26.10製作
護岸ブロックの明度計測方法の確立・普及と証明
(全国土木コンクリートブロック協会)
粗面仕上げ+吹きつけによる明度低下例
(参考)測量設計業界の主な要望(H26.2アンケートより)
対発注者
 指示事項を統一をして欲しい(担当者差異による手戻り防止)
 発注者における現地調査の徹底及び適切な起終点、工法の指示
 詳細図面作成に手間と時間。総合単価での工事発注、概略図面
での工事発注ができないか(査定前に集中する詳細測量や詳細
検討が緩和できる。直轄では実施している。)
 現地調査から査定設計まで相応の費用でコンサルに責任を持た
せた業務発注ができないか
 写真簡素化通達の徹底(査定のために用心し、従来から変わって
いない県もある)
 査定結果とカット理由の提供
 査定修正にCADやエクセルの使用を認める(手修正は非効率)
 受注者も一堂に会した研修機会の創設
おわりに
1. 何故被災したか。被災しなかった区間と外力や構造がどう
違うのかを熟考(現状施設の諸元不明は入り口でアウト。
改善するためには・・・)
2. 被災前と同一構造で被災原因が除去できるのか?(原形
復旧不適当、関連事業の活用も視野に入れて)
3. 工法・被災データの蓄積・伝承・活用が重要(標準マニュア
ル等にもまさる、査定官を納得させる貴重な武器)
・切土安定勾配、横断暗渠、根入れ、根固め重量など
4. スピード感ある工法決定と工事着手(放置するほど被災拡
大・再度災害のリスク大。)
5. 被災地域や首長などへ継続した復旧見込み情報の提供