あいさつ 本日は御多忙の中、私達文化会 KSWL 技術部門の研究発表会にお越し 下さいまして誠にありがとうございます。 今年度は、研究発表会を三日間に分けて開催する事となりました。13 個のテーマについて発表するのですが発表は、全く知識がないという方々 にも御理解いただき、興味を深めてもらえるように日々練習を積み重ねて きました。 途中難しい専門用語等も出る事もあろうかと思いますが、どうぞ最後ま でご覧ください。また、大学祭でもそれぞれ日々の活動を活かした作品を 展示致しますので、そちらの方も足を運んでいただければ幸いです。 2015 年度 研究発表会実施局 2 回生 大江耕平 3 回生 足立望 1 回生 猪木 夏樹 1 回生 竹本 凌 1 回生 山本 大輝 ドローン 三回生 ハード班 井上 渓哉 二回生 ソフト班 中西 司 一回生 ハード班 竹本 凌 項目 1,ドローンとは 1-1,ドローンの歴史 1-2,ラジコンヘリとの違い 2,ドローンの基本要素 2-1,フレーム 2-2,モーター 2-3,プロペラ 2-4,PMU 2-5,バッテリー 2-6,FC 2-7,IMU 2-8,GPS 2-9,ジンバル 2-10,プロポ 3,ドローンの活用法 3-1,法規制 3-2,国内、海外でのドローン活用 4 問題、近年のドローン騒ぎ 4-1,具体的な事故について 4-2,ドローンの危険性 5,これからのドローン 5-1.宅配ドローン 5-2,ドローンで人が運べるか 5-3,ドローン軍隊 5-4,ドローン撃墜システム 6 全体を通したまとめ 1,ドローンとは ドローン (drone)とは、元をたどると 英語で雄のハチ(英語:Drone)を指 す語句。転じて群体の一部(端末)、 不活発な活動体、ハチの発するよう な音などを指す言葉だ。それにちな み現代では(命令を実行する)自律 する無人機のことを指す。最初にこ の言葉が使われはじめたころは軍事 用に開発された自律移動する端末ロ ボットのうち、無人航空機(UAV)、無 人車両(UGV)、無人船舶(USV)など遠 隔操縦機または(半)自律式な移動機 械全般のことを指し、近年では商業 用や、民間利用も増加傾向にある。 最近のドローンの定義は命令を受け て自律飛行する飛行物体という意味 から転じ、やや狭義に、遠隔操縦ま たは自律式のマルチコプター全般を 表す言葉として、近年メディア等で 多用されるようになっている。 (右図:上から順に無人航空機(UAV)、無人車両(UGV)、無人船舶(USV)) 1-1,ドローンの歴史 ドローンの発想、つまり無人の航 空機を遠隔操縦するという発想 は第一次世界大戦中からあり、第 二次世界大戦時から研究が本格 化した。1939年には無人飛行機 「ラジオプレーンOQ-2」が初めて 量産され、無人機の本格的な製造・運用が始まる。(右図:「ラジオプレ ーンOQ-2」)当初は無人機に爆弾を搭載して体当たりさせるのが主な目的 だったが、結局第二次世界大戦中に実用化したが作戦に成功することはな かった。だが1980年代に無人飛行機の行動範囲が一気に拡大すること が起こる。イスラエル軍で航空機設計を担当していたアメリカ在住のイス ラエル移民であるエイブラハム・ カレム氏が、自宅のガレージで 「Gnat-750」を開発。当時の米軍 の無人機では、一度の飛行時間は 数時間が限界だったが、カレム氏 が個人的に開発した「Gnat-750」は、その飛行時間が50時間を超えたの だ。(左図:「Gnat-750」)これにより1994年1月、アメリカ国防総省の国防 高等研究計画局とジェネラルアトミックス社との間で「Gnat-750」をベースに新 型無人偵察機の開発が始まり、その半年後にはより静かでより安定した飛行 ができる「RQ-1 Predator」の第一世 代が発表された。「RQ-1 Predator」 の方が「Gnat-750」より1.6倍ほど大 きい。(右図:「RQ-1 Predator」) 「RQ-1 Predator」の当初の仕様は、偵察用のカメラだけを搭載する無人偵察 機だったが、2000年12月にアメリカ国防総省は対戦車ミサイルである「ヘルフ ァイア」を装備させることを承認し、装備させることによってマルチロール化した 「RQ-1 Predator」は「MQ-1 Predator」と名称が変わり2001年10月14日に先 立つ10月7日、「MQ-1 Predator」が「ヘルファイア」を搭載して武装偵察飛行を 行ったのが無人攻撃機実戦の始まりである。 1-2,ラジコンヘリとの違い ラジコンヘリはラジオコントロール(無線操縦)できるヘリコプターのこと を指し、RC ヘリと表記されることもある。娯楽用としての利用をはじめ、 農薬散布や空撮といった産業用、ドローンと同じく軍事用としても使われ る。現在の広い定義では、ラジコンヘリも 無人の航空機であることからドローンの 一種といえる。しかし、ドローンを本来の 意味である、 「GPS などを利用して自動飛 行する無人航空機の総称」として捉えた場 合、プロポと呼ばれる送信機などを用いて 無線で操縦する必要があるラジコンヘリ とは全く別のものともいえる。近年では単 にマルチコプター型を指して外観のみで ドローンとされる場合もあるが、自律運転 できない玩具などに関しては「ラジコンマ ルチコプター」が相当し、厳密には間違い といえる。 (右上図:ラジコンマルチコプ ター。右下図:ドローン) まとめると、 「ドローン」は自律移動でき る小型無人航空機型、 「ラジコンヘリ」は 無線で遠隔操縦する必要のあるヘリコプ ターのことである。 2,ドローンの基本要素 ここからは、マルチコプター型飛行ドロー ンの技術的な部分について説明していく。 2-1,フレーム 物は自作、キット、完成品から、材質は金 属、木材、プラスチック、カーボン、発泡 スチロールなど様々で、一番選択肢が多い ところでもある。自分の使用目的に合わせ て考え、これに合わせて他パーツを考えて いく。ただし、2-3,2-10,でも述べるが、重 さと材質に注意しておく必要がある。 2-2,モーター マルチコプターにおいて最も重要な部分である。まずモーターにはブラシ モーターとブラシレスモーターがある。 一般的なラジコンカーや工作で使われているのはブラシモーターといい、 電流の向きを半回転ごとに逆にするためのブラシがついている。このブラ シはコミュテーター(回転子に設けられた電気接点)と物理的に接触してい るため摩擦により電気ノイズ、火花がでる。これにより接触部分が炭化す るためブラシの交換、コミュテーターの研磨といったメンテナンスが必要 である。ブラシモーターは消耗品なのである。 対してブラシレスモーターは ESC でモーターの電磁コイルの磁界をコン トロールして電流の向きを制御し回転させている。ブラシもコミュテータ ーも存在しない。また、ブラシモーターはコミュテーターの関係上インナ ーモーター(モーターの内側が回転するもの)になるが、ブラシレスモータ ーはアウターモーター(モーターの外側が回転するもの)にすることができ るのでその分トルクが大きいためギヤダウンが必要なくダイレクトドラ イブで回せるため、ブラシモーターと比べギヤボックス分軽くすることが できる。よって長時間高速回転し続けできるだけ重さを減らしたいマルチ コプターにおいてはブラシレスモーターを使うことが多い。ただしブラシ レスモーターは、モーター、専用 ESC 等が高価な上入手方法も限られて くる。また、ECS を通すためジャイロの変化からモーターが反応するまで どうしても遅くなる。インナーとアウターでトルクの差がほぼ出ないほど 小さいモーターを使うマイクロコプターではブラシモーターが使われる こともある。 モーターの性能は KV 値で表される。これは 1V あたりの無負荷回転数の こと。例えば、800Kv というモーターであれば 1V あたり 800rpm(1 分 間に 800 回転)回るので、よく使われる 11.1V の 3S バッテリーを利用す るのであればフルパワー100%で 8880rpm 回せる事になる。しかし、ブラ シレスモーター(に関わらず、部品と言う物)は常にフルパワーで動かす ようなものではなく、現在一般的に使用されているブラシレスモーターと ESC は 0~12%、90~100%のスロットル範囲は回転が不安定になるため 50%ぐらいでホバリングさせることを考える必要がある。今回の場合なら 4440rpm を基準とする。 2-3,プロペラ プロペラのおよその静止推力と消費電力の計算は 静止推力(g)=(プロペラ径÷10)^3×(ピッチ÷10)×(回転数÷ 1000)^2×22 消費電力(W)=(プロペラ径÷10)^4×(ピッチ÷10)×(回転数÷ 1000)^3×0.45 である。(右図:ピッチとは) 22、0.45 はプロペラによって 異なってくる係数で、プロペ ラが決まっていない場合、判 らない場合は世界標準プロペ ラの APC 社の係数を代入する。 ここにピッチが同じ 10 でプロペラ径÷10=8、回転数÷1000=2 のプロペ ラ A と、プロペラ径÷10=2、回転数÷1000=16 のプロペラ B があった とする。それぞれ、 静止推力 A= 83 × 1 × 22 = 2048 静止推力 B= 23 × 1 × 162 = 2048 と同じであるが、 消費電力 A= 84 × 1 × 23 = 32768 消費電力 B= 24 × 1 × 163 = 65536 と、消費電力では倍になる。これより、推力と電力の関係でいえば、低回 転で大きいプロペラの方が効率が良いことがわかる。ヘリコプターが扇風 機より遅く回転しているのはこれによる。ただし、大きければ大きいほど 良いわけではなく、フライトコントローラーとの兼ね合いが出てくる。フ ライトコントローラーによる姿勢制御は応答性の良いプロペラ(応答性(ス テアリング) とは大きさ(ゲイン)と遅れで表される命令から行動までの早 さで、それがいいプロペラとは回転しやすいプロペラということ。要する に小径プロペラ)の方が安定する。また、スピードの出る機体にはピッチ の大きいもの、低速に飛ぶ機体はピッチの少ないものを使用する。 仮に、12 インチプロペラ 4.7 インチピッチの 2 枚ブレード、上記のモー ターとバッテリーを使用したとすると、50%出力の推進力は 352.2g、クァ ッドコプターの場合この 4 倍で 1408.8g になる。このなかで機材、フレー ム、フライトコンピューターなどの重さを算出し、モーター、プロペラ、 ESC の組み合わせを算出し、モーターとプロペラ、バッテリーの組み合わ せをシュミレーションして、適切な組み合わせを選ぶ。 2-4,PMU(パワーモニタリングユニット) 1 つの電源から各 ESC、フライトコン トローラー、ジンバル、カメラ等への電 力出力をする。他低電圧アラーム等電源 関係のサポート機能がついている物も ある。 (右図:DJI WOOKONG-M マル チコプター用 PMU) 2-5,バッテリー これによりモーターへの電圧、飛行可能時間が決まってくる。実はプロで もバッテリー関連の事故は多いため十分注意が必要である。一説には、湘 南国際マラソンでの墜落事故もバッテリートラブルではないかと思われ る。 (4-1-1,にて詳しく) バッテリーを使う上で注意しなくてはいけないことは、店で販売している 「正常品」のバッテリーが事故を起こす原因があるということである。例 えば、市販バッテリーにはまれに配線接触部分が盛り上がっている個体が ある。この様なバッテリーは内部のハンダ不良が発生している可能性が高 い。即時に危険があるのではないが、尖ったハンダが保護材を突き破り短 絡など可能性は少ないが運用中にトラブルの芽と成り得る不良である。熱 を与えすぎないように気を付けながら、尖った部分を修正していく必要が ある。また、外観だけでは安心できない。内部を見てみると、絶縁、固定 用のテープが足りない、スポンジが短いなどのものもある。繰り返すよう だがこれは「正常品」である。なぜならホビー用途での使用ならこれらが 問題で事故が起こることはほぼなく、あっても危険性はないためである。 ただし、飛行する場合は別である。空中での機能停止、墜落は大きな事故 になりえるこのような一見細かい点にも注意が必要である。 (右図:注意 が必要なバッテリーの様子) また、電池使用料も気を付けなけれ ばいけない。たとえば、定格 10 分 のバッテリー(11.1V3000mAh の バッテリーは 11.1×3.0=33.3Wh の電力を蓄えている。モーターが 200W 使用したとすると 33.3÷200 =0.1665 時間、つまり約 10 分の飛 行可能電力ということになる。 )を 使用したとする。しかしこれは 10 分飛行してもいいというわけでは ない。繰り返すが、機械は 100%フ ルで使うものではなく、いくらか余 裕を持たせる必要がある。可能であ れば 40%程度の残量で警告を出す くらいの安全運用をするべきである。それと当然ではあるが、この約 6 分 は安全に飛行できるバッテリーを 4 個搭載したからと言って 24 分飛べる わけではない。重量が増えればその分消費電力は増えるためである。また、 飛行可能時間は様々な要因で変化する。プロペラ・モーターによって電力 使用量は変化するし、ペイロード(荷物)の増減、外気温、複数回使用し たことによるバッテリーの消耗など様々な要因でフライト限界は変わっ てくる。特に外気温。低温下では大きく性能が落ちるのはバッテリーの宿 命である。これらからもわかると思うが、上空フライトは特に電力を消費 する。長距離の加速、強い風による細かい姿勢制御、下がる気温、どれを とっても消費を加速させるものばかりだ。十分注意が必要である。参考ま でに、現在使われているマルチコプターの飛行時間は長くて 20~30 分程度 である。また、ドローンに限らずバッテリーは 0℃より寒い状況で充電す ると、事故に繋がる可能性があるのでしないように。 2-6,FC(フライトコントローラー) 今ある代表的なものは MultiWii、DJI NAZA-M、DJI WooKong-M、NAZE32 Acro、 KK、Ardupilot, Connecting the APM2 など。MultiWii はオープ ンソースだったり、KK はアナ ログなところが多くセンサーの 追加が難しかったり、それぞれ 細かい特徴があるので自分の目 的に合わせて調べて選んでいく。 (右上図:APM 2.6 マルチコプター用フ ライトコントローラー) 2-7,IMU(慣性計測装置) 慣性計測ユニット(Inertial Measurement Unit)の略で、 ジャイロスコー プ(ジャイロセンサー、ジャイロ) 、加速度計、コンパスなどが一つにな った装置。ジャイロスコープは角度や角速度を検出する装置。力学的な慣 性を利用するものや光学的な干渉を利用するもの、回転型や振動型などが ある。加速度計は加わった加速度を計測する。振動方式や光学的方式もあ るが、基本的に使われているのは半導体方式の静電容量型、ピエゾ抵抗型、 ガス温度分布型の三つ。これらを直交する3軸(X、Y、Z)に各々1個 設置することで全方向の動きを検知する。IMUは、50~200Hz のサンプ リング周波数でデータを出力し、短時間においては極めて高精度な相対位 置と姿勢方位角を検出できるが、ジャイロのドリフト(ゼロ点(バイアス) が時間経過と共に自己変動すること)によりそ の姿勢方位角の誤差が時間の経過とともに急激 に累積(増大)するという欠点がある。販売さ れている完成品としては、地磁気 3 軸の計測も できる Sensor Stick、安価な Atmel の評価基板 用センサ拡張ボード Inertial One Sensor Board など。 (右図:IMU の様子) 2-8,GPS(グローバルポジショニングシステム) アメリカ合衆国が軍事用に打ち上げた約 30 個の GPS 衛星のうち、上空に ある数個の衛星からの信号を GPS 受信機で受け取り、受信者が自身の現 在位置を知るシステム。GPS のデータは データ取得のサンプリング周波 数が数 Hz 程度の間欠的なデータである。その精度は、時間に依存するこ とはないが、電離層等の電波環 境や衛星の配置・組み合わせに よりばらつきが大きく、またち ょっとした遮蔽物があるだけ で測位不能となる場合もある。 IMU と GPS はそれぞれの欠点 を相互に補い合うことができ、 2 つを合わせることで連続的に 高精度な測位が可能となる。 (右図:IMU と GPS がデータ を補い合う様子)なお、航空機搭載型の GPS は絶対位置精度を向上させ るために、座標値が明らかな地上点に GPS 基地局を設置し、後処理で航 空機に搭載した GPS の観測値と基線解析を行うキネマティック GPS 方式 というものもある。今後のドローンにも使われるかもしれない。なお GPS が利用できない室内などではカメラと超音波距離計で位置と高度を認識 して安定飛行する方法がある。 2-9, ジンバル ドローンにカメラを乗せた時、映像がブ レないように衝撃を吸収するようモータ ーで動かす装置。かつカメラの遠隔操作 (角度、ズームなど)をすることができ る。近年はブラシレスモーターを使った 格安ジンバルが出てきている。使用には GUC(ジンバルコントロールユニット) も必要。 2-10,プロポシステム 送信機と受信機、つまりヘリのリモコンのこと。語源はプロポーショナル (比例する)のことでプロポ(送信機)の操作に比例してサーボやアンプ を動かすことから通称として送信機をプロポと呼んでいる。ラジコンヘリ のものをそのまま流用することも可能。 新しくそろえるのであれば 2.4Ghz 帯のシステムを購入するのが良い。ヨーロッパや日本メーカーが主流だっ たが、近年は安価で性能も悪くない中国製品も出てきている。最低必要な チャネル数は上昇下降(スロットル) 、前後移動(エレベーター) 、左右移 動(エルロン) 、左右回転(ラダー)の 4 チャネル。カメラ・ジンバルを 搭載している場合はカメラのシャッ ターやジンバルのチルト機能も必要 であり、自律飛行モードの IOC 機能 などを利用するのにもチャンネルを 割り当てるので 6~8 チャネルはあっ た方が良い。また、送信機からの信 号幅を±120~130%変更できる機能 (トラベルアジャスト機能)もあっ た方が苦しまずに済む。 (右図:フタバ T10J プロポの様子) 受信機の方で気を付けるべきなのは、アンテナであ る。アンテナには、得意な方向と不得意な方向が存 在するため、まず自分の使っているもの何が得意な のかを確認する。また電波は金属(カーボン含む)の影 響を受けやすいことから、配置する場所に注意が必 要。1つ例を挙げると、フタバ T10J プロポセットの 2 本の短めの線が出ているタイプのアンテナ。このタ イプは当然ながらアンテナ軸に対してまっすぐ入っ てきた電波は入射が少ないので苦手である。そのた め 2 つに 90°の角度をつける必要があり(右上図: 正しいアンテナの張り方) 、説明書にも記載されてい る。しかし、ネットの自作ドローンや、下手すると一部企業ですらそのま ま垂らしているだけのところがある(前ページ右下:間違ったアンテナの 張り方) 。この場合電波が入らなくなる危険がある。アンテナをつける時 は十分説明書を読む事。 3,ドローンの活用法 3-1,法規制 ドローンを使用するにあたり、知っておかなければいけないのは法律につ いてである。ドローンを飛行させる事を考えたとき注意しなければいけな い点は主に、高度(空域)の規制、民有地上空の通行の承諾、カメラ撮影 によるプライバシーの問題である。 まず、高度の規制についてだが、まだ「飛行する無人機」に対する法律が 十分に整備されていない。ドローンを「模型航空機」に分類されると仮定 したとき、航空法が定める禁止区域以外であれば、許可がなくとも飛行さ せることができる。禁止区域とは空港周辺(半径 9km 以内) 、航空路内(下 図:航空路線図)の地表や水面から 150m 以上の空域、航空路外の地表や 水面から 250m 以上の空域で、国土交通大臣の許可があれば禁止区域内で 飛ばすことも可能なようである。使用する際は空港から離れた場所で 150m 以内を飛行させていればとりあえず安全である。 次に民有地上空はどこまで権利者のものかという問題だが、航空法の最低 安全高度は最も高い障害物(建物など)の上端から+300m である。この事 から他人の土地で飛ばす場合は権利者の承諾が必要である。 プライバシーの問題について、人の顔やナンバープレート、表札などが映 ってしまっている映像をインターネット上に公開したい場合はぼかしな どの配慮をするよう総務省から注意喚起されている。 これらの国の法律だけではなく自治体が定める条例についても注意が必 要で、例えば大阪市では市内のすべての公園でのドローンの飛行を禁止す る取り組みを検討している。また、公道の道路などで自動車と同じ高さを 飛行すると、道路交通法に引っかかる可能性があるため、注意する必要が ある。 ドローンを飛行させたいと思っても、現状自由に飛ばすことは難しい。し かし法が整備されれば、条件の緩和も考えられるが、もう少し決定には時 間がかかりそうである。 3-2,国内、海外でのドローン活用 当初、軍事目的(偵察や空爆など)に開発された無人航空機だが、将来的に 民間利用での需要が考えられており、ドローン市場はドローンの高機能化 とともに拡大し、2030 年には 1000 億円の規模になると予測されている。 (右下図:ドローン市場の拡大の予想) (下図:ドローンの利用法) 農薬散布については、海外の食料生産国に非常に効果的である。膨大な土 地へ小型飛行機を使って農薬を散布する方法はこれまでも行われていた が、農薬を過剰に散布してしまうなどの問題があった。その点をドローン では、カメラを使ってデータを残し、必要なところだけに農薬を散布する ことによりカバーできる。他にもヘリでは侵入できないような場所の地形 調査、撮影が困難なスポーツのカメラマン、放射能汚染調査など、人間で は実現が厳しかった内容を次々とこなしてくれるだろう。実用化までには まだまだ時間がかかるが、ドローンのビジネス利用は図の示す通り、様々 な可能性を秘めていると言える。 日本では首相官邸侵入、航空法違反などのニュースから「ドローン」とい うワードをよく見かけるようになった為か、マイナスな印象を持たれてい ることもあり、企業のドローン参入が足踏みな状態であるが、海外では前 向きな姿勢がよく見られる。 Amazon やドミノピザに続き、Google もドローンを利用した配送システム 開発へ参入し、更に発達が加速すると考えられている(5,にて詳細) 。NASA がドローンを安全に運用するための航空管制システム(ドローンの交通整 理)を開発中であり、NASA がこれから Google や Amazon などがドローンを 飛ばしたビジネスを完成させることを予想していることが考えられる。 4,問題、近年のドローン騒ぎ ドローンについて多く考えられる問題は墜落、衝突事故である。ドローン 自体がまだ急な環境の変化に対応出来ないため、操作とは関係なく落ちて しまったりすることがある。また、ホビー用としても販売されているため、 初心者が操作して電線にぶつかってしまったり有人飛行機にぶつかって しまう可能性がある。 4-1,具体的な事故について 4-1-1, 湘南国際マラソン墜落事故 2014 年 11 月 3 日開催の第 9 回湘南国際マラソンにて、国内初となるマル チコプター墜落による人身事故がニュースとなった。 具体的には、 「3日午前9時10分頃、神奈川県大磯町西小磯の西湘バイ パスで、湘南国際マラソンの様子を撮影していた無線操縦の小型ヘリコプ ターが墜落し、大会運営の女性スタッフ(39)が顔に軽いけがをした。 神奈川県警大磯署の発表によると、ヘリコプターは重さ4キロ、直径 1.3 メートル、高さ45センチ。プロペラ8枚が付いていて、ビデオカメラを 搭載していた。大会の様子を撮影しようと離陸した約1分後、ホバリング していた高さ約3メートルから墜落した。 」[引用:YOMIURI ONLINE] 2-5,でも述べていたが、この事故はバッテリートラブルではないかと思わ れる。 4-1-1-1, 電波障害の可能性は低い 注目すべきは、墜落事故の発生タイミング。 電波状況的に一番厳しいスタート前後の時間帯ではない。電波起因の障害 が発生しやすいのは、スタート 30 秒前~スタート後 1 分で、墜落が発生 したのはスタート後約 10 分。トップ追いのカメラマンなどは、既に移動 してしまっている時間帯です。ここまで順調に飛んでいて急に悪くなるこ とは少なく、またオクトコプターは電波が悪くなったからと言って急に落 ちるようなものでもない。 4-1-1-2, 風は事故原因とは考えにくい 撮影当日の天気図は、 「弱い西高東低」 。木枯らし一号が吹いた後(2014 年 は、例年よりも早め)。気圧配置から北風が基本。直近の気象庁観測ポイ ントも 3m/s 台の北寄りの記録が残っている。墜落ポイントは東西に走る 海岸線の道路。北風の場合は、マルチコプターに危険な上昇気流(4-2-2, で詳細)は発生していない。なお、南風の場合は道路上に上昇気流が発生 するため、ファントムなどの軽量機体はパーシャル域(大まかにいうと「多 くのプロペラが回転を落とす瞬間」の事故が起こりやすいところのことだ が、実際はもう少し複雑)に入る可能性が高まる。今回のような重量機体 はパーシャル域問題を起こしにくい。さらに、パーシャル域起因の場合は、 墜落直前に「ブンブン」と言う音も発生するが、この様な音も聞き取れな い。 4-1-1-3,操作ミスの可能性 傾いた状態で垂直に落下している。この様な動きは、パイロットの意思で は不可能。 4-1-1-4, マルチコプタージャマーの可能性 この条件下でマルチコプタージャマーが用いられると、機体は風下である 海方向に暴走する。GPS をクラックした場合も、傾いたままでの垂直降下 は不可能。細かい部分をつくと、この様な犯行のタイミングはスタート直 前。計画班にしても愉快犯にしても今回のタイミングでする可能性は低い。 4-1-1-5, モーターやモーターコントローラーのトラブルの可能性 クアッドコプター(モーター4 個)の場合は、この様な形で墜落するが、オ クトコプター(モーター8 個)では、モーター回りのトラブルが発生しても 垂直に落下する事故にはならない。 (で説明) 4-1-1-6,以上と、離陸短時間で推力を失い墜落という事実から バッテリーシステムの考え方により原因の切り分けはかわるが、 直列搭載=バッテリー劣化・充電ミス 並列搭載=充電ミス この様な切り分けが出来る。究極というレベルまでバッテリーが劣化して いる場合や片バンクの能力低下が計算に入ってない機体設計の場合は、並 列搭載でもバッテリー劣化起因の可能性は残る。 考えられることの一つに、 「雨でぬれたバッテリーを使用したのではない か?」というのがある。実はバッテリーは雨に濡れたからと言ってすぐに 使えなくなるわけではない。 ・前回は普通に飛行が出来た ・飛行後の充電にも不自然なところが無い ・セルバランスも良好 ・普通通り離陸 ・離陸 10~数十秒で短い不安定飛行後に墜落 と言う場合、これが原因の可能背がある(今回の事故はぴったり当てはま る) 。そして、もうひとつの可能性は「使い切ったバッテリーをもう一度 付けてしまった」というもの。プロがそんなこと、と思うかもしれないが 可能性が低いことではない。 ここまで見てもらって分かるかもしれないが、ドローンのフライトと言う 物は様々なことを考慮しなければいけない。特に一般人が飛ばすときは本 当に気を付けなければいけないのだ。 これらの偶発的な事故とは別に、意図的にドローンを悪用する場合が考え られる。ドローンを使った麻薬の取引、盗撮、ハッキング、極端なことを 言えば、もともとの無人航空機の用途である空爆(テロ)だって考えられる。 実際に外国では麻薬取引やハッキングが話題になったことがあり、早急に 各国は監視体制を構築する必要があるだろう。ここで一つ、日本で起きた 意図的なドローンの悪用事件について推測してみる。 4-1-2, ホワイトハウス無人機墜落 2015 年 4 月 22 日に発見された、首相官邸屋上のドローン。今回出頭した 犯人の詳細は分からないが、ラジコンマニアと言うよりも一般の方に近い 者と推測できる。この事故により、多くの方が望まない方向に向かう可能 性が上がった事は間違いない。技術のあるラジコンマニアなら、ファント ムをベース機として選択しない。自身の技術レベルを隠匿する目的なら、 機体の塗装などは施さない。フライト技術が有る方なら、屋外機でプロペ ラガードも付けない。一般程度の技術レベルで、目的を達成しようという 工夫を施した機体と推測できる。 では、マルチコプターによるホワイトハウス襲撃を防ぐにはどうすればよ かったのか。10kg 程度のマルチコプターの撃墜に 100kg を越える地対空ミ サイルを用いるのも、流れ弾によるとんでもない二次災害が発生する CIWS も、レーザー兵器を使うのも、どれも現実味がない。周囲のパトロールを 強化しても、駐車中の車両のサンルーフから飛び立てるのが小型のドロー ンというものだ。方法の一つに、GPS ジャミングというものがある。敷地 直上は当然として、敷地外の斜め上空にもジャミング波を出す。周囲の自 動車の GPS には実害無し。低空から近づくマルチコプターのみに影響を与 える。比較的直進性の高い GPS 電波だからこそ有効な対抗手段だ。これに より、近づいてくるマルチコプターの GPS を無効化。確実に落とすならラ ジコンジャマーも使用。コントロールと FPV も同様に無効化。ここからの 先のマルチコプターの挙動は大きく以下の二つになる。 ・風下側にバッテリーが続く限り流されて、最終的には自由落下 ・風下側に流れつつ徐々に高度を下げつつ、最終的には墜落 多くは上の「風下側に暴走」のコースに入る。これは、送受信機の信号途 絶時(送信機の強制 OFF)の制御を「ゴーホーム」(離陸場所に戻る)として いるためだ。GPS とラジコンコントロールを失った機体は、高度を維持し つつ平行を保つ。結果として風下に流されつつ暴走に入る。全ての目を失 ったマルチコプターは、どこかに墜落する。大型機と言ってもマルチコプ ター程度の質量では、建物内の要人を殺害するのは困難なため、ピンポイ ントで要人を狙われる事を防げば目的は達成出来るはずだ。 4-2,ドローンの危険性 このように、ドローンについての事故や使用法の是非、法律の制定など 様々に世間を騒がせているが、なぜドローンがこれほど危険なものとして 扱われ始めたのか。 4-2-1,一般人使用の増加 昔からあったラジコンヘリというものは操作が難しく一般人が扱えるよ うなものではなかった。ヘリコプターは大きなメインローターと小さなテ イルローターを回転させて飛行する。メインローターで揚力と推力を作り 出し、テイルローターでメインローターの反回転トルクを打ち消す。そし てヘリコプターはメインローターとテイルローターの回転数だけでなく ピッチも変えることで推力の調整を行う。このためヘリコプターは回転す るローターが 2 つだけですが複雑な機構を持つ。そのため操縦も大変難し いもので、その習得にはまずはパソコンを使ってシミュレーショントレー ニングをし、次は自動車の免許教習のように先生と一緒に練習し、やっと ひとり立ちするような過程が必要なものだった。さらに最低何十万円もす る高価なもので、いきなりひとりで飛ばしても、ものの数秒で墜落し、高 価な機体は大破。このため、使うのは余程の愛好家ぐらいだった。 対して、マルチコプターは複数の小口径ローターを持つ。マルチコプター にテイルローターはない。反転トルクは複数のローターをそれぞれ逆回転 にする事で打ち消す。 またピッチ操作を行う機構もなく、複数のローターの回転数だけを調整す る事で飛行する。このため単純な機構になり故障しにくく耐久性が高くな り、単純ゆえに破損しても修理が簡単な事が特徴である。またマルチコプ ターは破壊力の大きなメインローターを持っていないためヘリコプター より安全に飛行できる。近年のマルチコプターの進化は目覚ましく、10 万以下で自動ホバリング(その場で止まること)が出来るものが買えるよ うになった。これらより、しっかりと練習した愛好家だけでなく、何の知 識もない一般人も使い始めたことがこのような事故が増えた原因の一つ だ。 4-2-2,具体的な愛好家の知識 では、一般人は具体的にどんな知識が無い ために事故を起こすのかというと、例えば 彼らはマルチコプターの中の「クァッドコ プター」の危険性を知らない。代表的なマ ルチコプターにクァッド、ヘキサ、オクト が存在し、珍しいものではトリプルもある。 もちろんモーターが増えればその分高く なるので「素人だしそんなに本格的なもの はいらないだろう」と、安いクァッドコプ ターを買いがちだ。また部品点数が少なく 構造が単純であることから、ホビー機体の 多くはクァッドコプターだ。しかしクァッ ドコプターはどれか 1 つのモーターが停 止、あるいは能力低下するだけで墜落する (右上図:クァッドコプターの簡略図) 。 対してオクトコプターでは、隣接するモー ターの出力を上げることで故障モーター を補助することができる。 (右中央図:オクトコプターの簡略図) M1 が能力低下すると失った反動トルク と揚力を回復する為に、M3・M7 が回転 を上げ、機体バランスを保つ為に、M2 と M8 が回転を上げ、機体バランスを保 つ為に、M4 と M6 を絞ることで変則ヘキ サコプター+としてフライト可能である。 なお、ヘキサコプターも他モーターによる補助で飛行可能だが(前右下 図:ヘキサコプターの簡略図)対向しているモーターが逆回転なため加速 によるトルクの打ち消しができないためピルエットを伴う 5 モーターか 4 モーターによる飛行になるため、通常飛行はできない。つまりクァッドコ プターは従来のラジコンヘリ同様一瞬で落下する危険のあるマルチコプ ターなのだ。 また一般人の多くはゲインを考慮していない。マルチコプターはプロペラ 回転数の変化によって機体バランスを保っている。どの程度の力でバラン スを修正するかをゲイン値として設定しているのだが、ゲイン値を上げす ぎるとハンチング(左が下がったので左を上げる、左が上がりすぎ右が下 がったので右を上げる、ということを繰り返し機体が大きく揺れ動き、最 終的に限界を超えてバランスを崩し墜落する)を起こす。カメラなどの荷 物を設置する等で重量が重くなるとバランスをとるのに大きな力が必要 になるためゲイン値を上げる必要がある。また同じ重量でも重心が低いと ゲイン値を上げる必要がある。ただし重量というものは降下中は見かけ上 小さくなるため、ゲイン値が適正からずれる。また上昇気流時も同様にず れる。荷物を運ぶなどしたときの重量物切り離し時も、急なゲイン値変化 が追い付かない等の危険がある。このような、自分のマルチコプターが何 に弱くてどんな時が危険なのか、その時自分は何をしなくてはいけないの かをわかっていないと、マルチコプターは本来扱えないものなのである。 4-3,急激な発展の理由 ではなぜ一般人にも普及するレベルでドローンは近年急激に発展したの か。そのひとつにスマートフォンがある。過去ドローンが普及しなかった のは GPS センサーや電子コンパス、加速度センサーなどラジコンヘリに はないパーツの性能が低い上に高価であったことがある。しかし近年のス マートフォンの流行によるこれらの位置と傾きを測る技術の開発競争に よって、性能を飛躍的に進化させ同時に大量生産によって低価格化させた。 それによって同じ技術が使われてマルチコプターが、自分が飛んでいる位 置と傾き、方角を測りながら自分で安定してかつ安価で飛ぶようになった。 GPS により、指定の位置に自動飛行したり、緊急時は飛び立った場所に帰 ってくることも出来るようになった。こうして「簡単で安い」という宣伝 文句でマルチコプターが売り出されると、これまで操縦が難しく高価な飛 行機やヘリコプターに躊躇していた方々が飛びついていったのだ。しかし 「簡単で安い」とは言え、昔のヘリコプターよりも簡単なだけであって、 誰でも扱える家電のレベルではない。まだまだセンサーもコンピューター も未熟だ。スマートフォンでもナビアプリで自分の位置がズレていたり、 時間がかかったりすることは、使ったことのある人は知っているはずだ。 それはセンサー精度が悪かったり、磁気の影響でたまたま狂ったりするか らなのだ。マルチコプターにもそれは起きる。自分の位置を誤って認識し、 正しくない方角に勝手に飛んだり、傾いていないのに傾いていると判断し て宙返りし、墜落したりする。ドローンの、特にホビー用品の姿勢制御装 置は、まだそんなレベルの操縦補助技術なのだ。これを理解せず、家電レ ベルに勘違いし簡単で誰でも扱えると思って子供や遊び半分が飛ばし墜 落事故を多発させたのだ。マルチコプターにおいて GPS や傾きセンサー に異常が出た時は、それに頼った機能をオフにし手動操縦にすることがで きる。当然、昔からのヘリコプターと同じ状態になるので、そのモードで は高度な操縦技術を要する。ドローンのセンサーは異常が発生するものと して考えるべきで、本来センサーオフでも飛ばすことができる人が楽をす るための補助技術なのだ。 5,これからのドローン ドローンの進歩派すさまじく、2013 年の時点で、適当に放り投げてもそ のまま飛んでくれる、1m ほどの棒を乗せるとそのまま落ちないようにバ ランスを取ってくれるようなドローンは発表されていた(ホビー用品では ないが) 。ここでは最近発表されたばかりのドローン関連技術のうち身近 で実用的なものを紹介する。 5-1,宅配ドローン 現在開発されている代表的な宅配ドローンは、AMAZON の「Prime Air」 、 イギリスでドミノピザ「Domi Copter」など。Prime Air の場合、配送セ ンターから 30 分以内の距離に重さ 5 ポンド(約 2.3kg)以内の商品を配送す ることができる。空の安全性基準を 定める連邦航空局(FAA)による認 可がとれれば、最も早ければ今年年 内から実用化できるとのこと。 (右 図:Prime Air) 5-2,ドローンで人が運べるか 「人が乗っているならそれドロー ン(無人機)じゃないじゃん」とい うツッコミはとりあえず置いてお くとして、実際に人を運ぶためのマ ルチコプターを開発したところが ある。それがこの、ドイツで開発中 の人2名が乗れる Volocopter VC200 と呼ばれる機種である(右 中央図) 。ご覧のとおり、プロペラ を使い安全性を求めるとほぼヘリ コプターになる。 「市販のもので飛べないものか?」 と思う人もいるかもしれない。これ も実際にやった人がいる。ドローン をたくさん繋げたら人を乗せて飛 べるのかを個人で試してみたのだ。 ただ、これも結果的にヘリコプター に近い。高度は上空 2、3 メートル ほどで、安定性にも欠けているが、 飛行は成功。実験者の今後に期待し たいところだ。 (右図:youtube「The Swarm Manned Aerial Vehicle Multirotor Super Drone Flying」より)参考に youtube の url を貼ってお く。 5-3,ドローン軍隊 1 章でも述べたとおり、ドローンの本分は軍事使用であり、アメリカ等で は実戦で使用されている。また近年ではロシアも本格的に動き始めた。国 営ロシアン・テクノロジーズ(ロステック)をはじめとした複数の軍需企 業が、 「ロシア初の包括的・組織的国産ドローン開発計画」で政府と合意 したと、国営イタル・タス通信が伝えている。ロステックは既に昨年、爆 撃機能を持つ水陸両用のドローン「チロック」を発表。一方でロシア軍は、 小型の監視用ドローンの運用試験を進めていた。ロステックによれば、2 016〜25 年にかけ、 「数百種に及ぶさまざまな性能、用途の国産ドロー ン」を統合する計画が進められる。 製造関係者によれば、これらの大多 数は短距離用だが、今後は「積載用 兵器の開発が促進されるだろう」と いう。数百機のドローン部隊が登場 することになれば、ロシア軍は一気 に世界最先端の軍隊に躍り出るか もしれない。 (右図:ドローンを見るメドベージェフ(中央) ) 5-4,ドローン撃墜システム ドローンの技術が向上してくると必要になってくるのが、ドローン対策で ある。紹介した GPS ジャマーのほ かに、レーザー攻撃という手段で ある。ボーイングが開発したレー ザーによる最新の対ドローン技術 「コンパクトレーザー兵器システ ム」 (右下図:Compact Laser Weapons System)だ。 「Xbox」の コントローラーとノート PC で操 作でき、スーツケースサイズの箱、 4 箱分に収まる。レーザーといえば実用化がまだまだ先の SF 兵器のよう なイメージがあるかもしれないが、これは実際に撃墜に成功しており、今 後数年間で配備されると伝えられている。フルパワーなら、2 秒で対象の 機体が燃え上がる。この対ドローンのレーザーは戦場向けではなく、主に 機密エリア上空のドローン撃墜に使われることになっている。 余談ではあるが、一般の方でドローン対策を考える場合はこのような撃墜 ではなく ALSOK が新たに開始したドローン対策サービスをお勧めする。 6,全体を通したまとめ 現在の一般的なドローンはプロペラとモーターと形状による単純な構造 ながらも複雑な動きと安定性を兼ね備え持つ人間の技術の結晶である。 誰でも容易に操縦できる技術的な面と手に入りやすさというコスト的な 面で徐々に一般人にも普及されつつある。 この技術はまだまだ発達の可能性があり、今後の技術発達に期待したいと ころだ。ドローン技術のすごいところは、いつか未来にできるものではな く、今日この瞬間にも新しい技術が発表されていることだ。 しかしながら、一般人に普及されることはメリットだけでなくデメリット もあることをきちんと理解していただきたい。 ドローンの原理や構造と社会のモラルをきちんと理解せずに操縦するこ とは非常に危険であり迷惑行為にでもなりうる。ドローンの事件により法 的改正が行われようとしているが、法は人を守るものではなく人が法を守 るものだ。どれだけ規制しても誰でも使える以上事件事故は必ず起きる。 大切なのは、悪意のない我々がドローンを正しく理解しどう接していくか を考え、楽しく操縦することを望むことだ。これが平和なドローン社会作 りに繋がっていくのだから。 参考 http://dration.com/basick11 http://www.tea-league.com/mt/tea/archives/1900/01/post_388.html http://blog.goo.ne.jp/komaida424/e/fb64f931be31067bf055b2152c2f3e38 http://www.tamiya.com/japan/cms/images/stories/gpinfo/2015/06/kv150 604.pdf http://homepage3.nifty.com/yoq/model/sekkeiintro/intro2.html http://mataro777.hateblo.jp/entry/2013/05/18/184534 http://diydrones.com/group/japan-arducopter-group/forum/topics/70584 4:Topic:1700621?xg_source=activity http://picworld.e-monster.jp/2014/07/23/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3 %83%81%E3%82%B3%E3%83%97%E3%82%BF%E3%83%BC-%EF%B C%9A-%E9%A3%9B%E3%81%B0%E3%81%99%E3%81%BE%E3%81% A7%E3%81%AB%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E7%89%A9%E3%83%A2%E3%83%BC/ http://fdsa-life.jp/blog/?p=72 http://www.hobbynet-jp.com/blog/PermaLink.aspx?guid=2fa6715d-8a94 -42a0-b5de-2b79f8b05d42 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%BC% E3%83%B3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E4%BA%BA%E8%88%AA %E7%A9%BA%E6%A9%9F http://lowch.com/archives/4118 http://blog.zaq.ne.jp/blueocean/article/700/ http://waval.net/8883/ http://xn--2qq52evn948cl3sfgh.jp.net/cat243/post_3.html http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10115290490 http://www.tsuruya77.com/brushless.html http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14129924834 http://tenhp.fc2web.com/ship/scale5.htm http://www.04u.jp/aerial0d_01.html http://ameblo.jp/fullmetal-moon/entry-11330869139.html http://plaza.rakuten.co.jp/CPU4Edu/31002/ http://blog.goo.ne.jp/ja4dan/e/43b3a6074c3001f549a3ef1e5039bc65 http://blog.livedoor.jp/papagon88/archives/50539784.html http://www.airplane.kan-suke.com/PropData.html http://www.aoky.net/articles/raffaello_dandrea/the_astounding_athletic _power_of_quadcopters.htm http://ascii.jp/elem/000/001/008/1008725/ http://nge.jp/2014/11/30/post-89153 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO88951410W5A700C1000000/ http://www.sv-comm.com/sub258.htm http://dronebiz.net/ http://nge.jp/2014/09/02/post-4891/project-wing-jpg_%E9%A3%9B%E8 %A1%8C%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88 http://matome.naver.jp/odai/2141042874171278901 https://wirelesswire.jp/2015/02/20175/ http://gigazine.net/news/20131203-amazon-prime-air/ http://www.huffingtonpost.jp/2013/06/05/domicopter_n_3393976.html http://www.tecnotemas.com/2013/11/22/volocopter-vc200-hace-su-prime r-vuelo-de-prueba/ http://news.aol.jp/2015/09/05/drone/ http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/05/post-3665.php http://www.sankei.com/wired/news/150902/wir1509020001-n1.html http://picworld.e-monster.jp/2014/07/20/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3 %83%81%E3%82%B3%E3%83%97%E3%82%BF%E3%83%BC-%EF%B C%9A-multiwii-%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AA%E3%82%93% E3%81%A0%EF%BC%9F/ http://www.gsi.go.jp/common/000009610.pdf http://sssj.co.jp/cgi-bin/ja/usr/index.cgi?c=faq http://drone.beinto.xyz/recommend-drone/select-propotional-system-for -multicopter/ 人工無脳 二回生 知能情報学部 ソフト班 上田京太郎 ○人工無脳と人工知能 人工無脳とはおもに会話することに重点を置いたソフトウェアである。 まず、人工知能は人間の脳をモデル化し、人間が持っている知能をコンピ ューター上で実現することを目的としている。しかしこの方式では人らし さを感じることが出来るまでの道のりが限りなく遠い。対して人工無脳は 意識のごく表層的な現象だけを考えることで、手軽にそれっぽい何かを作 ることを目指している。人工知能とは違い知能の獲得を目標としてはいな い。具体的には会話の中にルールを見出し、それをシミュレートすること で意識があるふりをするという方式をとっている。あくまでも意識がある フリや知能のあるフリをするだけであるので無脳または無能という呼び 名がふさわしい。 ○人工知能の歴史 ・1980 年代前半~1990 年代前半 人工無脳の歴史はパソコンの普及にほとんど時を同じくして始まった。 それだけユーザが会話する相手としてのコンピュータに期待していたこ とがよくわかる。当時のパソコンといえば PC-8001、FM-7、X1、MZ-80 などいずれも 1 バイト系文字だけを使う BASIC 環境を特徴とし、ソフト ウェアの流布は主に雑誌などの紙メディア中心であった。当時の PC は PC-6001 などの例外を除きカタカナ表記しかできなかったため、人間にと っての読みやすさをかねて人工無脳へは人間が手動で文節をスペースに 区切って入力するタイプが多かった。当時のソースは記録メディアおよび ドライブの劣化やハードウェア自体が捨てられていることもあってほと んど残っていないが、ASCII-NET などには人工無脳を研究するユーザの グループが存在していたようである。またこのころに限ってエミー、 Ractor など商用の人工無脳が日米で開発されていたことも大きな特徴で ある。ちなみに英語圏では Eliza が開発されてからすでに 20 年近く経と うとしており、技術的には日本よりもかなり進んでいた(英語は解析が楽 だった)と思われる。一方日本では研究用の人工無脳として 1984 年に東 京農工大の研究者から SCAM(Eliza のひらがな版と思われる)が発表さ れたが、この段階では漢字かな混じり文の形態素解析はかなり困難だと考 えられていた。 ・1990 年代前半~1995 年頃 この頃には PC-9801 シリーズなど全角漢字を使えるコンピュータが多 く普及し、MS-DOS 上で走る C 言語で書かれたプログラムや Mac 上で動 くプログラムが多く作られフロッピーを用いたコピーと配布が盛んであ った。当時は質の高い PDS(今でいうフリーソフト)がたくさん開発され、 現在の人工無脳の基本的なアーキテクチャが確立された。すなわちそのこ ろ作られた人工無脳は二つの機能からなっていた。ひとつは人間の入力し た文字列の中から自分の知っている単語を探索し、用意された文字列を返 すという漢字変換類似の機能である。もうひとつは入力された文字列の中 から未知の名詞を探し、それが何かをたずねる学習機能である。このよう な単純な機構でも時には会話が成立しているかのような感覚を味わうこ とができた。しかし会話のパターンは学習が進むと単調になる傾向があっ た。その原因はいちユーザによってのみ学習が行われることで,結局その ユーザの知識や意識だけを反映してしまうために学習すればするほどユ ーザ自身の「ひとりごと」へと近づいてしまうことにあると考えられる。 このころに作られた人工無脳も PC-9801 アーキテクチャーの絶滅に伴っ て現在ではほとんど伝えられていない。一部の記録によれば語尾の変形 (「だっちゃ」など)や人称の置き換えなどが実装された人工無脳が存在 していたようである。また 1990 年には漢字かな混じり文に対応した日本 語の形態素解析モジュールの基本ロジックがある研究チームによって開 発され、商用の辞書引きソフト等に利用された。その後フリーの形態素解 析モジュールも大学等から数種類発表され、現在では高い精度で構文の解 析が可能となっている。 ・1995 年~2000 年頃 Windows95 が登場するころになると Windows マシン以外の DOS 系 PC はほぼ淘汰され、Mac ユーザも地道に増えていたことにより GUI 環境で 動く人工無脳が出始めた。同時にインターネットの普及と CGI という新た なプラットホームの普及が進み、それは結果として新人工無脳時代に入っ てスタンドアロン型とネットワーク型の二つの潮流を生み出した。スタン ドアロン型はふきだしを伴ったキャラクタとして画面の隅に立ったり表 情を表現するグラフィックに注力されていることが特徴で、一部には秘書 ツール的な要素を持つものもあった。特にこの中で多くのベンダーが存在 したペルソナが採用したネットワーク更新機能を使った自動アップデー トはユーザの飽きに対する一つの考え方として興味深い。スタンドアロン 型でもうひとつ特筆すべきは会話に固定の相方を導入した偽春菜(現伺か) であろう。ペルソナ、偽春菜の両者ともユーザとの自然言語によるやり取 りは行わず、自分たちで勝手にしゃべることを通してユーザを会話の中に 引き込むという新しい会話モデルを用いて成功した。 ネットワーク型人工無脳は 1980 年代前半~1995 年頃のアーキテクチャー をそのまま受け継いでいるが CGI や IRC を活動の場とすることで不特定 多数のユーザと会話することができ、それゆえ一人のユーザの独り言に陥 らないと期待された。ゆいぼっとや人工無脳カツオなどでは単調な返事を 行わないための工夫がさまざまに施され、教育システムなども考えられて いた。ネットワーク型人工無脳がもたらした重要な変化として誰かが人工 無脳と会話したログを見て楽しむという新しい要素が加わった。その結果、 開発者には辞書を作りこんだことに対する報酬を得られるというこれま でにない大きな圧力が発生し、より高いクオリティーの会話能力が人工無 脳に求められるとともに、これまでの人工無脳のアーキテクチャーではチ ューンアップにも限界があることがうすうす感じられてきたといえよう。 これ以外にも人工無脳はたくさん存在するが技術的には 1990 年代前半~ 1995 年頃から枝分かれ進化した種に分類される。 ○人工無脳のしくみ ・概要 人工無脳は前記のとおり会話を理解する必要はなく、「それっぽい」言 葉を返すソフトウェアである。まず、ユーザが入力した文章を形態素解析 等の自然言語処理によって、その文章から必要な情報を取り出す。取り出 した情報を自らの登録した辞書や会話パターンに当てはめてユーザに返 す文章を作成する。分からない(登録した辞書にない)単語や文章は、それ について聞き返したり、適当にはぐらかしてやりすごしたりする。この「ご まかし」 が結果的に人間味を出しているというのも人工無脳の特徴である。 ・学習 人工無脳の楽しみとは、要約すれば育てる楽しみと見る楽しみである。 始めはたいした反応もせず退屈だった人格が、育てるにつれいろいろしゃ べるようになり、製作者が思わずにやりと笑ってしまうようなやり取りを するようになる。さらに育った人工無脳が第三者と会話をし、まったく予 想もしなかった返事をしてお客を驚かせる。これが人工無脳の醍醐味だろ う。ところが現実を振り返ってみると、人工無脳の人格をゼロから組み上 げるのには退屈で遠大な作業を伴い、それが人格の製作者を萎縮させてし まう。その原因としては、人格を作るのに何を準備したらよいかわからな い、どこから始めたらよいかわからない、辞書の作成が大変である、など がある。特に辞書の作成というのは未来に起きる出来事の全てを予測して その対策をいちいち用意するようなもので、漏れなく予想を立てるのは何 らかのツールを使わない限りふつう不可能であるし退屈である。だが本来 は人格の製作者にとってそれこそが楽しみであるべきであり、人工無脳と いうパッケージには楽しく人格育成するためのノウハウやツールが含ま れるべきであろう。そこで段階的な人格育成と対話による育成を考える。 対話的な育成の方法として、人工無脳にパフォーマンスとリハーサルの二 種類のセッションを用意する。パフォーマンスは一般ユーザと会話をする 人工無脳の本来のモードである。リハーサルは人工無脳と製作者が一対一 で対話するモードで、人工無脳が雑談を交えながら製作者に対してさまざ まな要求を提示してくる。その内容は製作者の個人情報(人工無脳は製作 者のことを知りたがる)、辞書に不足している情報、体調、辞書の統計デ ータ、一般ユーザの動向、辞書の文法チェックの結果などである。それを もとに製作者は各種のファイルを増強し、人工無脳にリロードさせる。リ ロードの結果、人工無脳はまずファイルの文法チェックを行い、エラーが なければ製作者を誉めたり喜んだりする(←重要) 。 人格育成の段階的プログラム 第一のステップとして、製作者は人格の名前と口癖を用意する。導入直後 の人工無脳にはジェネリックであまり個性のない最低限の人格が入って いる。このジェネリック人格の名前と口癖(参考:偽春菜のトランスレータ 機構)を用いるだけで、人格の雰囲気をかなり変えることができる。できれ ばそれ以外の人格のキャラクタ付け、すなわち性別、性格、職業、外見、 生い立ち、趣味などをこの段階で詳しく妄想しておいてもらいたい。人格 製作のプロセスは長いので、これらの情報は文章化して残しておくべきで ある。いくつかのパラメータはこの段階で定義ファイルに書き込むことが できるだろう。 第二のステップは話題の作成である。人工無脳に設定した職業、趣味に 従って考えうるいろいろなネタを辞書に直接書き込む。同時に名詞のリス ト、動詞のリスト、形容詞のリストなどを作り、人工無脳が即興性の高い 文書を作れるようにする。ある程度ネタを仕込むことができたらパフォー マンスセッションでこれらの話題がどのように利用されるかを確認する。 この段階で人工無脳は既に公開されているので、一般ユーザがどのように 人工無脳と対話しているかログを確認する。職業などの固有の知識に基づ くネタ以外に、人工無脳の好みに従った話題がある。泣ける話、笑える話、 驚いた話、怪談、艶笑譚、説教話、上司の批判、旅行話など のなかから一 つを選んでネタを仕込むとよい。芸能ネタ、スポーツなどは話題の陳腐化 が速いので、避けるべきである。 第三のステップはリハーサルセッションでの情報収集と不要情報の削 除である。製作者はユーザがどんな会話を好むのかをほとんど把握してい ない。そのため多くの時間をかけて用意したネタがまったく使われなかっ たり、特定のキーがあまりにも頻繁に使われる結果単調なせりふしかしゃ べらなかったりということが頻発する。その調査のために製作者は会話の ログを観察するのであるが、それを統計的にサポートするのがリハーサル セッションである。人工無脳がユーザの怒り、喜び、笑い、否定、といっ た反応を検出すれば、それを引き出したやり取りを憶えておくことで製作 者が意図したのと違う意味で辞書が使われていたり効果的でなかったり する点が判明する。具体的には以下のような項目が考えられる。 存在しないキーを参照しようとした :辞書の文法チェック 存在しない変数を参照しようとした :辞書の文法チェック キーが不適切 :人工無脳の発言によってユーザが怒ったり不機嫌になった。製作者が期 待した通りに機能していない。 キーの使用頻度が高すぎる :同じことを繰り返しすぎる。キーの細分化を考えるべき。 キーが一般的過ぎる :このキーの使用頻度が高すぎ、かつキー文字列が短い場合。 キーの使用頻度が低すぎる :キー文字列を再考すべき。 相槌のパターンが不足 :話の受け答えが単調 話題セルが少ない :いろいろな話を振ってくれない 辞書の内容に関するもの以外には次のような項目を考えなければならな い。 ユーザから帰ってきた反応(喜怒哀楽)の分布 ユーザの逗留ターン数分布 ユーザの名前のリスト 人工無脳の現在の体調(体調の変化する周期が適切かどうか) 傾向と総合評価 ここで示したような内容を人工無脳は対話によってユーザに伝えなけれ ばならない。すなわち明確な目的をもった会話をしなければならない点は、 これまでの人工無脳と根本的に違う点である。本来はパフォーマンスセッ ションでも目的をもった会話ができれば面白いのであるが、パフォーマン ス中の人工無脳の目的はなかなかはっきりさせられないのである。さて、 人工無脳はユーザに伝えたいメッセージを持っており、ユーザからの返事 を直接自分で評価することは基本的にないため本質的にはリハーサルセ ッションはコンパイラがエラーメッセージを吐くのと大して違わない。そ れを以下に対話している風に見せかけるかであるが、メッセージに雑談や 挨拶を適当に混ぜたデッキを使えば簡単である。デッキの先頭は常に挨拶 となり、終端はユーザにファイルのアップロードを求めるメッセージにな るだろう。 ・自我状態 人工無脳は会話の中でユーザに唐突さ、不自然さを感じさせたり、フラス トレーションを与えてしまうことがよくあり、その結果ユーザとの会話が 続かなかったり、拒絶されるという点が課題となっている。この原因の一 つに人工無脳の印象やムードがでたらめに変化し安定していないことが 挙げられる。たとえば、初めは友好的に「おはよう!」と挨拶したり笑っ たりしたのに次の瞬間前触れなくユーザに向かって毒を吐いたり、急に受 身に変わったり、かと思えば説教を始めたり、といったぐあいである。ユ ーザにしてみれば、それぞれの状態が何をきっかけに始まるのか分からず、 またどれくらいの時間持続するかも予測できないために、会話を続けよう とした場合は常に人工無脳のペースに合わせざるを得ない。このような振 る舞いに付き合わされた人間は「相手はこちらと親しく話す気はない」と か「ひどくからかわれている」というメッセージを暗黙のうちに受け取っ てしまい、怒り出すのである。 このことは、印象やムードを考慮しない人工無脳の構造、不特定多数のユ ーザから教育されて成長する辞書のアルゴリズム、そしてなにより人工無 脳において一つ一つの発話より高いレベルで会話の流れをどうデザイン したいかという方針が明確でないことなどに起因する。一方、人は通常意 識することなく相手に不適切なメッセージが伝わることを避けてうまく コミュニケーションをはかっている。一体我々は、どんなルールを使って 我々はこれを可能にしているのだろうか。 自我状態とそのプロフィール Eric Berne は Transaction Analysis 理論のなかで、人の行動パターンや考 え方(これを自我状態と呼ぶ)を親の心、大人の心、子供の心の3つに分 類した。その後この理論は数多くの研究者達の手により改良され、現在で は人の自我状態は Table 1 に示すように CP(Critical Parent, 批判的な親)、 NP(Nuturing Parent, 養育的な親)、A(Adult, 大人)、FC(Free Child, 自 由な子供)、AC(Adapted Child, 従順な子供)とそれぞれ呼ばれる5つに分 類されている。例えば、CP は相手の欠点をきびしく追求したり信念を持 って行動する心、NP は相手をいたわり元気付ける心、A は客観的で分析 的な心、FC は好奇心をもったありのままの心、AC は素直に相手の言うこ とを聞く心を示している。人には本来全ての自我状態が備わっているが、 個々の強弱はその人の性格によって異なり、立場や場面によって意識的に それを調節したりもしている。その様子を折れ線グラフにプロットしたも のをエゴグラムと呼び、グラフの形によって個人の性格を大まかに知るこ とができるとされている。またこの自我状態は 50-100 問からなる、当て はまる~当てはまらないを 3~5 段階にチェックするタイプの簡単なアン ケートに答えることで知ることができ、心理療法の分野では個人の中で起 きていることを理解し自覚する方法として広く取り入れられている。 Table 1. 自我状態 CP 批 判 的 な 父性的。道徳的で几帳面、規律を守ることを需要と考えるが、 Critical 親の心 Parent NP Nuturing Parent A 養 育 的 な 相手を思いやり元気付けたり育てたりする母性的な心。一方で 親の心 大人の心 Adult 口うるさかったり厳しいかったりする。 甘やかすことになったり相手の自立を妨げる。 客観的で情報収集を好むが、それは打算的だったり冷たいとと られる場合もある。 FC 自 由 な 子 無邪気で自発的、好奇心を持った心で、行き過ぎるとわがまま、 Free Child 供の心 AC Adapted Child 従順な子 供の心 自己中心的になりがち。 素直に人を信頼し、批判を受け入れるが抑圧されてしまう。AC はさらに CC(Compliant Child,従順な子供)と RC(Rebellious Child,反抗的な子供)に分類されることがある。 エゴグラムの典型的なパターンのいくつかとその傾向を Fig. 1 にいくつか 示す。人間の場合は得られたグラフを見て自分の弱点を意識できるように なったり、自分自身と脳内会議をして人生の指針とするわけだが、人工無 脳製作者としては、これをどんな人工無脳を作りたいかの指針にしながら、 アルゴリズムに反映させることを目的とする。そこで Fig. 1 には人工無脳 の性格にありがちな例とその性格のイメージを表した。 (a) おもてなし - 気遣 (b) クール -理性が甘 (c) 無法者 - 他者に厳 (d) ユートピア - 相手 い重視かつ理性的で、 やかしやわがままを抑 しく自身に甘い。他者 を思いやりつつ、羽を 礼節を守る性格。理屈 制している。批判もし から甘えられることは 伸ばしている。理性は と気遣いでは、気遣い ないが相手を受け入れ 許容できない。計算は 少し脇にどけ、あまり を優先する。 る傾向もあまりない。 する。 批判的にもならない。 Fig. 1 エゴグラムの例 自我状態とエゴグラムの興味深い点は、自我の状態を限定することで人工 無脳の返答や行動をデザインしやすくなることである。例えば、辞書型人 工無脳の辞書を作るとき、 「今何時ですか?」というユーザの質問に対す る返答を考えていくと、「○○時です」のほかにも「自分で調べたら?」 とか「そろそろお昼ご飯だね!」など様々なバリエーションを思いつくだ ろう。そして、人工無脳の製作者はつい人工無脳に色々な返答をさせたく なってこれら全てを採用してしまうのである。しかし、返答の中身を自我 状態に分類してみると、 「○○時です」は冷静な A か従順な AC、 「自分で 調べたら?」は厳しい CP、 「そろそろお昼ご飯だね!」は FC か NP に属 すると想像できる。これらが辞書に混在することで、人工無脳の自我状態 も混乱した印象を与えることになる。そこでまずは自我状態を統一するこ とによる効果を検証するためにも、一つの自我状態だけを持つ人工状態を 作ってみよう。 一つの自我状態だけを持つ人工無脳 自我状態を考慮した人工無脳として、最も基本的でシンプルなのは CP、 NP、A、FC、AC のいずれか一つだけを持った構造のものであろう。自我 の受動的な側面として、辞書型人工無脳の場合は辞書の返答を自我状態に 合わせて考えればよい。返答が辞書中に見当たらなかった場合に適当な返 事を行なう$NOT_FOUND$は使用される頻度が高いため、自我状態を意 識した返答を用意する。また、自我の能動的な側面として、Table 2 のよ うな自発的な行動も設計しやすくなる。人間本来の行動の中にはそれぞれ 良し悪しがある。人工無脳の場合には意図的に悪い面を避ける場合もある が、ユーザは人間相手の場合と同じく必ずしも良い面だけを気に入るとは 限らない。それも含めて設計段階では全ての面について吟味し、作ろうと している人工無脳のキャラクタについて考察を深める必要があるだろう。 また、エゴグラムのいくつかの質問セットがインターネット上に公開され ているこれを利用して、「この自我状態ならこの質問にはこう答える」と いうシミュレーションをするのも有効だろう。 Table 2. 各自我状態での能動的行動 自我状態 よい行動 わるい行動 CP 毒舌、ユーザの以前の行動 批判的な 親の心 NP しつけをする、自立を促す、そっ けない挨拶 について辛口の批評をす る、ユーザを突き放す 傾聴、ねぎらい、健康状態を気遣 養育的な う質問、お茶、コーヒーを淹れて 親の心 A 大人の心 FC 持ってくる ユーザの状態を調べる質問、ユー ザの好きなものを聞く、冷静な導 事務的にすぎる応答、 入の挨拶 歌う、笑う、笑い話を作って聞か 自由な子 せる、自分の趣味の話をする、ゲ 言うことを聞かない 供の心 ーム、はしゃいだ挨拶 AC 従順な子 控えめな挨拶 能動的な行動が少ない 供の心 自発的な行動を起こすアルゴリズムとしては、$NOT_FOUND$のなかに $ACT_COFFEE$のように特定の行動をトリガするタグを入れておく方 法が簡単である。ログ型の人工無脳の場合は、ログがユーザ達の自我状態 の集合体となる。そのため、人工無脳にペット的な役割を与えている場合 はユーザは NP や FC として人工無脳に接するため、ログの内容も NP や FC としての性格が強くなるだろう。そこで、ログの検索とは関係ないア ルゴリズムで Table 2 の行動を起こすことで、人工無脳をそのキャラクタ にそった対応に近づけることができる。 複数の自我状態が共存する人工無脳 一つだけの自我状態からなる人工無脳は設計と運用が容易であるが、キャ ラクタの幅が狭く不自然である。例えば A だけでは事務的になるかカウン セラーのようになってしまって、話が盛り上がったりはしないだろう。CP だけでは合わせるのが疲れるし、AC ではそもそも会話が続かない可能性 もある。人間も実際には複数の自我状態の間を遷移しながら会話をしてい るわけで、人工無脳でも複数の自我状態を併せ持った設計が考えられる。 つまりエゴグラム(Fig. 1)にそって全ての人格を実装したり、簡略な方法と して二つないし三つの自我状態を実装する方法である。 ○様々な人工無脳 ・ELIZA ELIZA(イライザ)は初期の素朴な自然言語処理プログラムの 1 つであ る。スクリプト (script) へのユーザーの応答を処理する形で動作し、スク リプトとしては DOCTOR という来談者中心療法のセラピストのシミュレ ーションが最もよく知られている。人間の思考や感情についてほとんど何 の情報も持っていないが、DOCTOR は驚くほど人間っぽい対話をするこ とがあった。MIT のジョセフ・ワイゼンバウムが 1964 年から 1966 年に かけて ELIZA を書き上げた。いわゆる人工無脳の起源となったソフトウ ェアである。 ユーザー(患者役)の入力する文が DOCTOR 内の非常に小さな知識ベー スの範囲外のものだった場合、DOCTOR は一般的な応答を返す。例えば、 「頭が痛い」と言えば「なぜ、頭が痛いとおっしゃるのですか?」などと 返し、「母は私を嫌っている」と言えば「あなたの家族で他にあなたを嫌 っている人は?」(この場合「母」が「家族」の下位概念である、という 知識ベースは必要である)などと返す。単純なパターンマッチ技法を使っ ているが、一部のユーザーはワイゼンバウムがその仕組みを説明しても納 得せず、ELIZA の応答を真剣に受け止めた。 余談だが iOS 向けのソフトウェアである Siri に話をしてほしいとせがむ と ELIZA を登場人物とした物語を聞くことが出来る。 ・人工無能うずら うずらは IRC(Internet Relay Chat)上で会話をする人工痴能(作者曰く 「人工無能というほどアホではないと思うし(ほんとか?)、人工知能と呼 べるほど賢いわけでもない」ことから「人工痴能」)。ニックネームは 「uzura」. 「!うにっくす:*.jp」(文字コードは ISO-2022-JP) などに棲ん でいる。基本的に 24 時間起きているが、ときどき寝る。 寝ているときに はアウェイメッセージが設定さているので、 whois をかければ寝ている かどうかわかる。 うずらは人間同士の会話から完全に自動で学習するという特徴がある。 他の人工無脳のように決まったパターンは一切なく、 また,反応を登録 する必要も全くない。 「こんにちは」に対して「ちわ~」と挨拶を返す ことさえも、人間同士の会話の中から自然に学習していく。 国内で最も賢いと言われたこともある会話プログラムであり、うずらを 長い期間本当の人間だと思っていた人もいるほど。 ・伺か 伺か(うかがか)はデスクトップ常駐型アプリケーションの一つで、デ スクトップマスコットと呼ばれるソフトウェアの一種である。 主な機能は PC のメモリを無駄に占有し、CPU パワーを無駄に消費する、 メインキャラクター(さくら)とサブキャラクター(うにゅう)の気の効 いた掛け合いを行うのを眺めることである。 簡単に言えば「2 人のキャラクターが、ちょっとしたトークを繰り広げ る」というもの。 (メインキャラクターのみが登場して、主に使用者(ユーザ)をもう 1 人 のキャラクターに見立てて会話する「単体ゴースト」と呼ばれるものも存 在する) PC を使っている際の暇潰しにしたり、作業中の息抜きにしたり、ちょっ と気分転換をしたい時の清涼剤にしたりと、使用者の気が向いた時に気軽 に起動し、気軽に終了できるのが特徴。 副次的な機能として、NTP クライアント、POP3 によるメール着信確認、 ToDo リストの管理、Windows 9x 系用のメモリクリーニング、オンライン アップデート、SSTP を使用した通信等がある。 多彩な Ghost(キャラクター)が用意され、美麗な画像やジャンル特化 されたトーク、萌えキャラ鑑賞などとしても利用されている。 デフォルトでセットされているゴースト、ならびにその相方キャラとし て「さくら」 「うにゅう」というキャラクターがいる。 「偽春菜」という名 前が使用不可能になった際、「任意」や「さくらとも呼ばれるひと」と表 記されていた時期があったが、後に正式に「さくら」となった。由来は、 偽ペルソナウェアの時代から収録されていたランダムトークで『カードキ ャプターさくら』のパロディネタとして、うにゅうが偽春菜を「さくら」 と呼んだ事から。 さくらは、偽春菜を原型としている。デフォルトゴーストに返り咲いた 際に、髪型はショートになり、服装も変更され、「御影さくら(みかげさ くら)」というフルネームも付けられた。また、初代のデータをそのまま 引き継がず、中身は新規で作られている。 CLAMP 原作の漫画・アニメ『カードキャプターさくら』に登場する主 人公・木之本桜がキャラクターのモデルだが、外見は別物である(名前が “さくら”だったことからそうなったらしい) 。 リニューアル後、ランダムではない通常会話での毒が抜けてマイルドな 性格になった事や、性格やシェルなどがから受けるイメージが、以前より も年齢が若干上がっているような雰囲気を醸し出している事から、ユーザ ーサイドでは初代とは別人として扱われる事がある。また、区別するため に、単に「さくら」と呼ぶ場合は初代のことを指し、二代目は「御影さく ら」と呼ばれる事もある。 うにゅうは、関西弁で話す独特の形をした相方で、他の製作者による派 生キャラが多く誕生している。 右がさくらで左がうにゅう ・人工無脳エクサ 人工無脳エクサは、辞書型対話式人工無脳で、感情パラメータや表情を もった人工無脳である。CG によって表情を持った会話が出来る。好感度 パラメータにより感情をコントロールしており、いじめるような発言をす ると下がり嫌われ、褒めるような発言をすると上がり好かれる。 2008 年頃からトモック氏により開発され、2009 年に公開された。現在 の最新バージョンは Vr2.5.0。また VOCALOID2 のキャラクター「初音ミ ク」をメインキャラクターに差し替えた「Windows 版 人工無脳ミク Vr2.1.0」も同氏によって公開されている。 エクサの開発の軌跡については「人工無脳エクサ開発記」で読むことが 出来る。 画像をクリックすること でもコミュニケーション がとれる ・井上トロ ソニー・コンピュータエンタテイメントのゲームソフト「どこでもいっ しょ」シリーズに登場するキャラクター。公式サイトのキャラクター紹介 には「寂しがり屋で甘えん坊。とっても純粋でムジャキ。コトバをたくさ ん覚えれば人間になれると信じていて、とにかくあれこれなんでも知りた がる。特に恋愛話には興味シンシンで、ちょっぴりエッチ。また、かなり のコワがりでもある」とある。ゲームのジャンルは「お話しゲーム」とな っている。 トロはプレーヤーから単語を教えてもらい、それについて「○○ってな ぁに?」 「○○って胸キュン?」といくつか質問することによって言葉を覚 えていく。そして覚えた言葉を組み合わせてプレーヤーと会話を行う。 人工無脳特有の会話で 大勢のプレーヤーに癒 やしを与えた ○出典 人工無脳は考える http://www.ycf.nanet.co.jp/~skato/muno/ 人工無脳 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%84%A1 %E8%84%B3 人工知能と人工無脳 http://www.ycf.nanet.co.jp/~skato/muno/target.html トモックの電脳パーク http://www.geocities.jp/tomock/ 人工無脳エクサ開発記 http://blogs.yahoo.co.jp/tomock 人工無脳 wiki http://www53.atwiki.jp/munou/ 人工無能うずら(人工痴能)の部屋 http://www.din.or.jp/~ohzaki/uzura.htm うさださくら http://usada.sakura.vg/ ELIZA https://ja.wikipedia.org/wiki/ELIZA どこでもいっしょ.com http://www.jp.playstation.com/dokodemoissyo/index.html 水中探信儀 ハード班 2 回 大倉拓己 ソフト班 2 回 大江耕平 ・目次 Ⅰ水中探信儀とは Ⅱソナーの仕組み Ⅲアクティブ・ソナーとパッシブ・ソナー ①アクティブ・ソナー ②パッシブ・ソナー Ⅳソナーの歴史 Ⅴ魚群探知機 ①サーチライトソナー ②スキャニングソナー Ⅵ参考資料 Ⅰ水中探信儀とは 水中探信儀または超音波探信儀はソナー(ソーナー、SONAR、Sound navigation and ranging)のことで、水中を伝播する音波を用いて水上船 舶や潜水艦、水中や海底の物体を捜索・探知・測距する装置である。英国 及びドイツでは ASDIC(アスディック)1と呼ばれる。 音波を利用する利点としては、水中での音波の速度があげられる。空中 での音速はおよそ 340m/秒であるが、水中においてはおよそ 1500m/秒と 空中での 4 倍以上になる。これは 1 秒でも早く目標を発見することが求め られる軍事用途においては大きな利点である。また、音波は光や電波に比 べて水中で減衰しにくく、遠くまで探知することができる2。 現代の軍艦においては艦首のバルバス・バウ内に設置されることも多い (表紙画像②)。 1 Anti-Submarine Detection Information Comittiee(対潜探知情報委員会)から。 電波は海水中では減衰してしまうので使えず、光も散乱・吸収されるので 15m~長 くても 100m しか届かない。音波は電波や光に比べて減衰しにくく、遠くまで探知で きる。 2 Ⅱソナーの仕組み ソナーは周囲方向を探知するため、海中に向けて超音波を発射しその反 射波を捉えることで目的の物体を探す、もしくはある物体が発する音を拾 うことで物体の位置を探知する仕組みになっている。大きくアクティブ・ ソナーとパッシブ・ソナーの2つに分けることができるが、軍用において はアクティブとパッシブ両方の用途で使用できるものも多い。 図 1(ソナーの仕組み) 自然界においてはクジラ目の動物がエコーロケーションという超音波 を使い周囲環境や獲物の採取に役立てているが、原理は同じである。 写真 1(クジラ) Ⅲアクティブ・ソナーとパッシブ・ソナー ①アクティブ・ソナー アクティブ・ソナーの原理はやまびこと同じであり、自らが音波を発 してその反射によって物体を探知するものである。水中探信儀といえば 基本的にはアクティブ・ソナーを指す。ソナーにおける距離の測定は、 ある方向に出した音波が物体で反射されてT秒後に帰ってきたとする と、物体までの距離は「物体までの距離=(音速×T/2)」という式で 求めることができる。 音波を 360 度の全周にわたって放射し記録すれば、 水中音波を反射する全ての物体を探知することができる。軍用のアクテ ィブ・ソナーでは、アクティブ・モードだけでなくパッシブ・モードに よって聴音だけを行うことができ、パッシブ・ソナーを兼ねるものがほ とんどである。下方を探知するための「エコー・サウンダー」と横を探 知するための「サイド・スキャン・ソナー」 、障害物回避用の「オブス タクル・アヴォイダンス・ソナー」などに分類される。 特徴としては、自ら音を発するため、音を発しない物体でも探知でき る可能性が高く、遠距離でも探知できる可能性があることと、敵のパッ シブ・ソナーで探知される可能性があり、場所を知られる危険性がある ということがあげられる。 図 2(アクティブ・ソナーの仕組み)作成:大倉 ②パッシブ・ソナー アクティブ・ソナーの水中探信儀に対して、パッシブ・ソナーは水中 聴音機と呼ばれ、軍用のものがほとんどである。パッシブ・ソナーは水 中・水上の艦船の発する水中音を拾うことでそれらの位置を特定する。 現代では、アクティブ・ソナーを使用すると敵に自らの位置を知らせる ことにつながるため、ステルス性を重視する潜水艦ではアクティブ・ソ ナーは機雷の探知や、戦闘中に敵艦の位置を正確に探知することなどど うしても必要な場面しか使用されず、パッシブ・ソナーをメインに使用 することが多い。 特徴としては、自ら音を発しないためステルス性に優れ、敵に自分の 存在や位置が知られないこと、超音波を発して探知を行うアクティブ・ ソナーに比べて精度が低いこと、機関を完全に停止した艦船などの音を 発しないものは探知できないことなどがあげられる。 図 3(パッシブ・ソナーの仕組み)作成:大倉 Ⅳソナーの歴史 1912 年のタイタニック号の沈没事故によって、海上に浮かぶ遠方の氷山 を早期に発見する技術の開発が求められるようになった。 1914 年にアメリカ合衆国の科学者フェッセンデンがアクティブ・ソナー の原型となる装置を開発した。この年に第一次世界大戦がはじまり、各国 はドイツ海軍の U ボートに対抗するため、より高性能なソナーの開発を急 いだ。1917 年にはフランスのランジュバン博士が実用的なアクティブ・ソ ナーを開発した。 この装置はフランス海軍の興味をひき、1918 年には 1500m 先の潜水艇を発見することに成功している。英米海軍はサーチライト型の アクティブ・ソナーを船団護衛の駆逐艦やフリゲートに搭載し、U ボート へ対抗した。 写真 2(第一次世界大戦時のドイツ軍 U ボートとイギリス軍駆逐艦) 日本では第一次世界大戦が終わる 1918 年ごろに欧米からソナー類を輸 入した。米国からはフェッセンデンが開発した F 式アクティブ・ソナー「水 中探信儀」のほか、パッシブ・ソナーである K チューブ・ハイドロフォン 「水中聴音機」も購入している。また、ドイツ海軍の U ボートに搭載され ていたパッシブ・ソナーも購入している。 第二次世界大戦期には各国が潜水艦を運用し船団や主力艦への攻撃に 利用したため、それに対抗するべくソナーや対潜兵器の開発が行われ、多 くの駆逐艦や海防艦に搭載された。また、潜水艦に搭載するためのソナー にも改良がおこなわれた。ブラウン管の登場により探信儀の探知結果が視 覚化できるようになると、これまでの読み取りに熟練を要する装置よりも 簡単に読み取ることができるようになった。 写真 3(ソナーを装備した第二次世界大戦時の駆逐艦) 近年ではデジタル化が進み、さらに高性能になっている。また、軍事技 術として発展してきたソナーであるが、電子技術の発展によって小型・軽 量・安価となり、ゴムボートに積んでレジャーの釣りなどにも気軽に利用 できるようになった(写真④)。 写真 4(ゴムボートでも使用できるスキャニングソナー) Ⅴ魚群探知機 ソナーの仕組みを民間用に転用したものとして魚群探知機がある。西森 (2012)によると、超音波を用いた魚群探知技術は 1950 年代から漁船へ導 入され、漁業の科学化、創業の効率化に貢献してきた。一般的な魚群探知 機は自船の直下のみを探知し、映像を表示するものであるが、斜め方向の 魚群を探知することのできる高性能なものも利用されている。主に利用さ れているのはサーチライトソナーとスキャニングソナーである。また、こ れらはすべてアクティブ・ソナーに分類される。 ①サーチライトソナー サーチライトソナーは 1 回の超音波発射で小さい幅のビームを発射し、 このビームを順次回転させることで広範囲の魚群分布を探る。サーチラ イトソナーの場合、探知ビームを回転させるのに時間がかかる。また、 走行しながら細いビームを回転させて探知するため、探索できない部分 が生じる。 図 4、図5(サーチライトソナーにおけるビームの回転) ・サーチライトソナーの仕組み サーチライトソナーは、空の高いところから海中を眺めたような画面表 示になる。探知ビームは船底のセンサー部からサーチライトのようにグル グルと回っている。サーチライトソナーの動作は、送受波器(センサー部) から海中の前方に向けて超音波を発射する。すると、すぐに受信状態に切 り替わり、信号受信時間が終わると、送受波器の角度は右または左へ少し ずれ、それと同時に即座に超音波を発射される。また超音波を発射したあ とすぐに受信状態に切り替わり、海中からの反射信号を受信する・・・。 といった状態が機械的に順次繰り返される。 図 6(サーチライトソナー) ②スキャニングソナー スキャニングソナーは、自船の全周囲 360 度方向を瞬時に探知表示す ることができる。このため、水平方向での探知漏れ域が生じない。しか も、超音波を発射する毎に全周囲を探知するため、同じ魚群を何度でも 捕らえることができる。また、魚群が移動する方向やその速さなどを画 像上の反応から計算表示できる。スキャニングソナーの探知範囲は、一 瞬に 360 度方向を探知表示する全周型(左)と 180 度方向の半周型(右)が 存在する。 図 7(スキャニングソナー) ・スキャニングソナーの仕組み スキャニングソナーのセンサー部は、1000 個ほどの振動子からできて いる。それが水平方向、垂直方向に並べられ、360 度方向に探知できる よう構成されており、そこから一度に全方向に向けて超音波を発射し、 瞬時に海中からの反射波を受信するという仕組みになっている。海中か ら返ってきた信号は、縦横に並べられた多くの振動子を電子的に切り替 えることにより、魚群までの距離や方向を知ることができる。スキャニ ングソナーの基本的な動作は、タイマー回路でコントロールされており、 順次、振動子を切り替えて反射信号の方向を確認する動作になっている。 図 8、図9(スキャニングソナーの仕組み) Ⅵ参考資料 西森 靖(2012)『漁撈用超音波機器 20 年の進展と今後の展望』「水産工 学第」48 号 3 巻、243~246 頁 鳥羽 利男(2009)『 「海中音響兵器ソーナー」出現と発展』 「軍事研究」 2009 年 5 月号 古野電機 HP「ソナーの基礎知識」 http://www.furuno.com/special/jp/sonar/index.html 古野電機 HP「フルノのテクノロジー」 https://www.furuno.co.jp/technology/about/sonar1.html 表紙画像 表紙画像① https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/21/I400_2.jpg 表紙画像② https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4a/USS_Cowpe ns_%28CG-63%29_drydocked.jpg 画像・写真 図① https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/07/Sonar_Princ iple_EN.svg 図④⑤⑥⑦⑧⑨ https://www.furuno.co.jp/technology/about/sonar1.html 写真① https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/07/Jumping_H umpback_whale.jpg 写真② https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/13/German_U C-1_class_submarine.jpg https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/1e/HMS _Zubian.jpg/220px-HMS_Zubian.jpg 写真③ https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fd/USS_Farrag ut_DD-348.jpg 交流電流 ソフト班 知能情報学部 上岡 拓哉 3 回生 1.交流電流とは 交流電流とは、時間とともに周期的に向きが変化する電流のこと。 また、同様に時間とともに周期的に大きさと正負が変化する電圧を交流電 圧と呼ぶ。 電圧、電流を区別せずに交流、または交流信号と呼ぶこともある。 交流の三要素 交流信号は三つの要素を持ち、これらを特定することで任意の交流波形 を得ることができる。 ・周波数 周期的なパターンが 1 秒間に繰り返される回数。量記号は f 、単位はヘ ルツ(Hz)。コイルの回転角により定まる。なお、周期 T(単位 s)は周波 数の逆数となる。 ( T = 1 f ) ・最大振幅 瞬時値(下記)の絶対値のうち最大のもの。 ・波形 横軸を時間、縦軸を瞬時値とする直交座標に表したときの形 波形の例 周波数 二分の一 最大値 1 1.5 1 0.5 0 -2 -1 -0.5 -1 -1.5 0 1 2 3 4 瞬時値 磁束密度 B (T = Wb 𝑚2 = v s 𝑚2)、コイルの長さ l (m)、コイルの速 度 v (m/s)、コイルの垂直面に対する角度をθとするとき、時間とともに 変化するコイルに生じる起電力 e(V)は次の式のようになる。 e = 2B l v sin 𝜃 =𝐸𝑚 sin 𝜃 この式を瞬時式といい、ある時間における起電力を瞬時値という。瞬時値 はコイルの回転角の変化に応じて刻々と変化する。また、瞬時値が最高と なる値を最大値あるいは波高値といい𝐸𝑚 で表す。以上を角速度ω (rad/s)、時間 t (s) として弧度法で表現すると次のようになる。 𝐸𝑚 sin 𝜃 = 𝐸𝑚 sin 𝜔𝑡 さらに負の最大値を最小値といい、最大値と最小値の差をピークピーク値 という。 実効値 実効値とは、交流における電流・電圧の大きさを、直流における電流・ 電圧に換算したときに相当する値をいう。正弦波交流電圧の実効値 E は次 の式で表現される。 E = 1 √2 𝐸𝑚 交流信号の大きさを表すときに最も多く用いられる指標で、例えば日本の 一般家庭向け商用電源の電圧は 100V であることはよく知られているが、 これは実効値としての値である。 また、正弦波交流電流の実効値は次の式となる。 I= 1 √2 𝐼𝑚 平均値 瞬時値の正の範囲を 1⁄2 周期にわたって積分し、周期で割ったものを平 均値という。1⁄2 周期をとるため半波平均値ともいうが、通常の正弦波交 流の場合には 1 周期の瞬時値の算術平均がゼロであるため、 単に「平均値」 という場合には半波平均値を指す。 正弦波交流の平均値は次式のようになる。 2 𝐸𝑎𝑣 =𝜋 𝐸𝑚 (交流電圧の平均値) 2 𝐼𝑎𝑣 =𝜋 𝐼𝑚 (交流電流の平均値) 交流回路 交流回路においては抵抗のほかにコイルやコンデンサも電流を妨げる 働きをするが、それは正弦波交流の場合、抵抗 R においては電圧と同相、 コイルにおいては自己誘導作用により電流は電圧よりπ⁄2 (rad) 進み位 相、コンデンサは電流を蓄積・放出する性質をもつため電流は電圧よりπ ⁄2(rad)遅れ位相に働く。 交流回路における電流を妨げる働きをするインピーダンス(電流の流れに くさ)は量記号 Z 、単位オーム(Ω)で表現し、抵抗を R 、コイルの誘 導性リアクタンスを XL 、コンデンサの容量性リアクタンスを XC とする とき次式のようになる。 Z = √𝑅 2 + (𝑋𝐿 − 𝑋𝐶 )2 交流電力 交流回路(単相交流回路)において、電圧 V (V)、電流実効値 I (A)、 電圧と電流の位相差𝜃 (rad) のとき、電力 P(W)につき次式が成り立つ。 P = VIcos 𝜃 有効電力 上式で電力 P は、負荷回路のインピーダンスのうち抵抗成分にかかる電 力を意味し、これを有効電力(消費電力)という。有効電力の量記号は P で、 単位にはワット (W) を用いる。 皮相電力 上式で VI は単純に交流の瞬時値電流の絶対値と瞬時値電圧の絶対値の 積を 1 周期にわたって積分したものであり、皮相電力と呼ぶ。皮相電力の 量記号は S あるいは Ps で、単位にはボルトアンペア(記号: VA)を用い る。 力率 上式で cosθは有効電力を皮相電力で割ったもの(あるいは抵抗成分を インピーダンス全体で割ったもの)で力率といい百分率 (%) で表すこと も多い。 無効電力 負荷回路のインピーダンスのうちリアクタンス分にかかる電力は無効 電力といい、 量記号は Q あるいは Pq で単位にはバール (var) を用いる。 無効電力については次式が成り立つ。 Q = VIsin 𝜃 電流を必要とするが回路では消費されない部分となる。力率が小さいほど 無効電力は大きくなり無駄な電流を流していることを意味する。なお、sin θの値を無効率という。 三相交流回路の場合、三相電力 P は各相における電力の総和として表され る。相電圧𝐸𝑝 、相電流𝐼𝑝 、力率cos 𝜃のとき次式が成り立つ。 P = 3𝐸𝑝 𝐼𝑝 cos 𝜃 非正弦波交流 非正弦波交流の分析には、基本波や高調波などの概念が用いられる。 基本波 - 交流信号の周波数成分のうち、もっとも周期が長い(周波数が 低い)もの。 高調波 交流信号の周波数成分のうち、基本波を除いたもの。交流信号では高調 波のそれぞれの周波数は基本波の周波数の自然数倍になる。純粋な正弦波 には含まれない。 歪率 高調波の電力の総和を基本波の電力で割ったもの。正弦波では歪率はゼ ロとなる。 長所短所 長所 交流送電の最大の利点は、変圧が可能であることだ。交流送電では変圧 器によって電圧を自在に調整可能なため、発電所から変電所では数十万ボ ルト、変電所から住宅の付近までは 6,600V、住宅の付近の柱上変圧器で 200V に降圧するといった必要な場所ごとに電圧を調整する方法が採用で きるため、送配電の設備コストを最小限に留めることが可能。 交流電源はプラス・ゼロ・マイナスという周期を繰り返しているため、電 源を遮断する時はゼロの瞬間を狙って、もっともショックの少ない電源遮 断をすることが可能。 短所 白熱電球や電熱機器に電圧を加えたとき、交流電源は常にプラスとマイ ナスの変化を繰り返しているため、電圧と電流が 0 になっている瞬間には 発熱できないので、所定の熱量を得たい場合には、より大きな電圧を与え なければいけないこと。 2.歴史 1831 年にファラディはコイルの中で磁石を動かすと、コイルの中の磁 気が変化することによって電流が流れるという電磁誘導の法則を発見し、 この法則が機械力と電気力の相互変換を可能にする法則で、電気エネルギ ーの利用に必須となる機器(発電機、電動機や変圧器等)の開発が急速に 進められた。1886 年、ジョージ・ウェスティングハウスとスタンリーは、 最初の多電圧交流送電システムをマサチューセッツ州グレートバーリン トン に設置した。送電システムへは水力による交流 500 V 発電機から電 力が供給されていた。送電のために電圧は 3,000 V に上げられ、そして電 灯を灯すために 100 V に再び落とされるようになっていた。1890 年代の中 頃には経済性の良い交流が一般に広く使用されるようになった。1895 年 8 月 26 日にナイアガラ瀑布の水力発電所の 5000 馬力の 2 台の水車発電機か ら 2200 ボルトで交流による電気が送電され、アルミの精錬とカーボンラ ンダム(炭化珪素、混合砂)の生産に使用された。 その時の周波数が 60 サイクル(Hz ヘルツ)で、以降この周波数が米国の標準になった。日本の 周波数 60Hz もここに起源があり、1896 年 11 月 16 日にナイガラ瀑布の水 力発電所からバファローの町に電気が送られ、そのときには電圧が 11000 ボルトに上げられ、20 マイル(32km)離れたバファロー市まで送電され、 家庭の照明や街路灯に使用されました。これが世界最初の長距離送電にな る。交流送電方式による電気エネルギーの利用が拡大し、交流の電動機が 実用になると電力が動力に使用されるようになり、水力や石炭石油を使用 した巨大な発電所が作られ、送電線で需要地に電力を安価に送ることがで きるようになり、第 2 次産業革命が始まった。その最初の米国での例は 3 相交流方式の商業化で、アルマーデッカーによって設計され、 1893 年 9 月 7 日に運開したカリフォルニア、レッドランドの水力発電所ミルクリー ク No1 だ。この発電所で作られた電力はオレンジ畑の灌漑用のポンプを動 かし、製氷会社の冷凍機を動かすのに使用された。 ・電流戦争 1880 年代後半、ウェスティングハウスとエジソンは敵対関係にあった。 これは、エジソンが直流送電(DC)を提案したのに対して、ウエスティン グハウスとテスラが交流送電(AC)を主張したためだ。電力事業の最初の 数年間、エジソンの直流送電はアメリカ合衆国における標準方式で、直流 はモータと同様に当時の主要な電力需要であった白熱灯にも適当な送電 方式だった。一方のテスラは自身の回転磁界の研究から交流電力の発電、 送電、使用のシステムを考案し、さらにこのシステムを商業化するために ウェスティングハウスと契約を結んだ。ウエスティングハウスは、以前に テスラの多相システムの特許とルシアン・ゴーラールおよびジョン・ディ クソン・ギブズから AC 変圧器のための他の特許権を買っていた。電線自 体の抵抗によって送電する電流の減衰はやむを得ない事であるが、電圧を より高くすれば減衰は抑えられ、効率が良い。そのため発電所からの送電 は高電圧で行われ、家庭に配電する直前に家庭用として使われる電圧にま で下げられる。また直流が必須である電気器具を使用する場合も、交流か ら直流への変換は容易だが、逆に直流から交流への変換は困難であった事 も挙げられる。エジソンの直流送電システムは、発電所と重い配電線、そ してそれらから電気を取り出す消費者の家電製品(照明とモーターなど) で構成される。このシステムは全体を通じて同じ電圧で作動する。電線の 銅を節約するために三線式の配線が採用された。エジソンのシステムでは、 三本の線はそれぞれ+110V、0V、-110V の電圧がかけられていた。100V 電 球は+110V の線と 0V の線の間、または 0V と-110V の線の間のいずれかに 接続された。0V の線(「中性線」)には、+線と-線の電流差分だけが流れ た。この三線式システムは、使用電圧が低い値に留められたにもかかわら ず、比較的高い効率を示した。しかし、この発明をもってしても導体の抵 抗による電圧降下は大きいため、発電所と消費地の距離は 1.6km に留める か、高価な極太の銅線を使用しないかぎり、膨大な電力が失われる。また 直流電流は交流よりも電圧を容易に変えることができず、結果電圧ごとに 別々の架線を用意しなければならず、結果として架線や電力網の複雑化と それに伴うメンテナンス費用の増大といった問題が発生した。 エジソンは交流の使用に反対する宣伝工作を行った。エジソンは人々に 交流の危険性を印象付けるため、個人的に動物を交流電気によって処分す る実験を実施した。はじめは野良犬や野良猫、最終的には象に及んだ。コ ニーアイランドの遊園地の象のトプシーは、飼育員を殺すなどしたことか ら薬殺処分されることが決まっていたが、エジソン側は交流電流の危険を 訴えるために公開の場で電気ショックで殺すことを提案した。トプシーが 交流電気のショックでわずか数秒で殺される場面を収めた映画は、エジソ ンの手により全米で公開され話題を集めた。対するテスラ側も、人体に交 流電気を流すショーを行い安全性を主張した。 エジソンは「処刑される」ことを「ウェスティングハウスされる」と呼ぶ ように働きかけもした。 エジソンは死刑制度には反対派だったが、しか し彼は電気椅子の発明によって交流が非難されることを願った。ハロル ド・P・ブラウンはエジソンの秘密の資金によって、交流はより致命的で あるという考えを普及させるために最初の電気椅子をニューヨークに設 置した。交流は、発電および送電において直流から主役の座を交替させる こととなった。これは送電範囲の大幅な拡大と、送電における安全性と効 率の向上によるものだった。エジソンの直流を用いた低電圧送電システム は最終的には他者、主としてテスラの多相システムのほか、チャールズ・ プロテウス・スタインメッツが提案した交流用機器に敗北する事となった。 テスラのナイアガラの滝の発電所は交流を受け入れる上でターニングポ イントとなった。最終的には、エジソンのジェネラルエレクトリック社は 交流システムに転換し、交流用機器を製作する事となった。 3.交流電流の利用 交流発電 交流発電では、一般に正弦波を発生させる。 発電所や船舶あるいは大型航空機などの発電機は交流発電機を用いる。発 電機は通常三相交流発電機を利用する。 交流送電 発電所で発電された電力は、送電のために特別高圧に変圧器で変電され 交流送電される。交流には変圧が容易であるため、遠方へ簡単に送電でき る特長がある。ただし、直流送電には無効電力がないなど大規模な電力を 長距離に送電する場合に利点があり、海底や地中での送電ケーブルでの送 電では、整流器やインバータを使用した直流送電が利用される。交流の配 電で用いられる電気方式は三相 4 線式・三相 3 線式・単相 3 線式などがあ る。電力会社が供給する交流の商用電源の周波数は国によって違い、60Hz または 50Hz である。日本では歴史的経緯から同一国内に 2 種類の周波数 が混在しており、概ね本州中央部を境に西が 60Hz、東が 50Hz を採用する。 交流機器 交流モーターには整流器が通常は不要である。しかし単相交流誘導モータ ーにはコンデンサーが必要である。 蓄電 交流は常に極性が変わるため、化学変化を利用して一方向へ電気を送るこ とで放電や蓄電を行う電池に用いることはできず、交流のまま電気を貯め ておくことができない。全ての電池の出力が直流であることはもちろん、 二次電池の充電にも交流電源はそのまま使えず、整流が必要となる。整流 せずに交流機器のみで電力の出し入れを行う場合は、揚水発電やフライホ イール・バッテリーなど、一旦位置エネルギーや運動エネルギーに置き換 える必要がある。 変圧 変圧器は、磁気的に結合した複数のコイルからなる。コイル内外に磁気回 路をともなうものもある。コイルに使用する導線を巻線という。 特に 2 個のコイルから成るものにおいて、入力側のコイルを一次コイル、 出力側のコイルを二次コイルという。一次コイルに交流電流を流し、変動 磁場を発生させ、それを相互インダクタンスで結合された二次コイルに伝 え、再び電流に変換し、出力する。 変圧器によって電圧を変更することを変圧といい、電圧を上昇させること を昇圧、逆に下降させることを降圧という。 (損失を無視すれば)エネルギー保存則により一次側と二次側でエネルギ ーが変化する事はない。つまり昇圧させれば電流は減る。 出典 ・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E6%B5%81#.E4.BA.A4.E6 .B5.81.E9.9B.BB.E5.8A.9B ・http://electric-facilities.jp/denki1/souden.html ・http://www.kairo-nyumon.com/electric_basic2.html ・http://www.geocities.jp/hiroyuki0620785/ac/ac.htm ・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3% 82%B8%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83 %B3%E3%82%B0%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9 ・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B5%81%E6%88%A6%E4%BA %89 ・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83 %BB%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%A9#.E5.B9.B4.E8.AD.9C ・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%89%E5%9C%A7%E5%99%A8 ガラス ハード班 3 回生理工学部 久保渕葵 ハード班1回生知能情報学部 清原昂希 1.ガラスの歴史 ガラスは紀元前数千年の昔から天然ガラスである黒曜石が矢じり や刃物として使用されている。人類がガラスを作るようになったの は紀元前 1600 年頃とされており現在ガラスの成形法として広く知 られている"宙吹き"が考案されたのは 1 世紀頃とされている。ガラ スの製造には高温での溶融のような操作が必要であり、この当時は 製造の困難さからガラスは大変な貴重品であり、主に装飾品や工芸 品として使用されていた。 このようにガラスは古くから人間の生活に深く関わっていますが、 正確に定義されていません。ですが、「ガラスは過冷却状態にある 液体である」と考えられている。 2.ガラスの製造方法 フロート法 ① 主原料のケイ砂に、石灰石、苦灰石、長石、ガラスの製造工程 で出るガラスくず[カレット]を混ぜ合わせる。これにソーダ 灰、ぼうしょうなどを調合したものがフロートガラスの原料。 ② 原料を高温で溶かして透明なガラス素地にする工程が溶解だ。 次々に投入される原料は、順ぐりに「溶解炉」へと運ばれる。 耐火レンガで造られた溶解炉には、大きなものでは常に約 2000 トン以上のガラス素地がたたえられている。このため、 溶解炉は、一度操業を開始すると耐火レンガの寿命[通常 10 ~13 年]がくるまで、昼も夜も休みなく働き続ける。溶解炉 は、カーテン状の壁によって、ガラスを溶かす「溶解槽」と、 ガラスの温度を下げ、内部の泡を抜くための「清澄槽」に区切 られている。 「溶解槽」の左右の壁には穴が開いていて、ここ から吹き出すバーナー[燃料は重油]の強力な炎によって原料 は溶かされる。その温度は約 1600℃以上。炉の温度が均等に なるように、左と右から 20 分おきに炎が吹き出すようになっ ている。左右交互に炎を出すのは、燃焼効率を高めることがで きるからだ。まず、片方のバーナーで重油を燃やして炎を出す。 このとき高温の排気ガスが発生する。この排気ガスの熱をうま く活用することで、もう片方のバーナーで重油を燃焼させると きの効率を高めている。さて、1600℃に溶けたガラス素地は、 溶解炉の中を進み、 「清澄槽」へ押し流される。ここで素地の 温度は、約 1300℃~1100℃に下がる。この段階の素地には少 し粘り気が出てくる。そして押しつ押されつをするうちに混ざ っていた泡を吐き出していく [泡ぎり] 。さらに成型に適した 温度操作[温調]を経て、フロートバスへ入っていく。溶解炉 では、バーナーの火力、素地の温度調整など、厳密なコントロ ールが要求されるため、すべてコンピューターによって管理・ 制御されている。 ③ 清澄槽で約 1100℃となったガラス素地は「フロートバス」に 流れ込み、ここで板のかたちに成型される。フロートバスは密 閉されたプールのようであり、溶融金属[液状に溶けた錫(す ず) ]が入っている。内部は密閉されており、錫を酸化させな いための雰囲気ガス[窒素と水素を混ぜたもの]が充填され、 天井には温度操作のために電気ヒーターが設置されている。 (1)ガラスを平面にする フロートバスに流れ込んだガラスは、ちょうど水面に油が浮か ぶように、錫の上にひろがっていく。ガラスの比重[2.5]が、 錫の比重[6.5]よりも軽いからだ。浮かんだガラスは、そこ で自然と平面になる。錫と接する面は、錫の水平面を写しとる ので、自然と水平になる。一方、ガラス上の面は重力により水 平になる。こうしてガラスは完全な平行平面の板状となってフ ロートバスの中を流れ進む。この工程でもコンピューターによ る厳密な温度操作が行われる。およそ 1100℃でバスに流れ込 んだガラス素地は、フロートバスの中ほどで約 800℃になり、 徐々に固まりはじめる。そして、フロートバスの出口では約 600℃になる。また、フロート法では、固体に接することなく ガラスを成型することができるため、両面とも自然のままの火 造り面になる。 (2)ガラスの厚さ フロートバスの中では、ガラスと錫の重力、表面張力のつりあ いによって、自然に約 6.8 ミリメートルの厚さになる。しかし この厚さは、ガラスを引き出すスピードを調節することによっ て、約 2 ミリメートルから 25 ミリメートルまでの厚さの板を 自由につくることができる。この調節もコンピューターによっ て正確に行われる。 (3)ガラスの幅・長さ ガラスの幅は、装置の制約上、最大約 4 メートルと一定だが、 長さは、いくらでも長くすることができる。 [工場から運び出 し、運搬する制約上、現実的には最大長約 13 メートル] ④ 600℃で固まった板ガラスは、フロートバスを出て、回転する ロールに運ばれて「徐冷ライン」に入る。徐冷ラインは全長お よそ 200 メートルあり、ガラス内部に温度差による力のひず みを生じさせないように、ゆっくりとガラスを冷やしていく。 ⑤ 徐冷を経た板ガラスは、さらにロールで次の工程へと運ばれて いく。まず、温水で洗浄してから乾燥させる。その後、自動欠 点検出器によって、板の厚さ、キズ、ひずみ、異物の混入など の各種検査が行われる。 ⑥ 切断は、まずカッターでガラスに切りキズを入れ、その部分に 下から衝撃を与える。するとガラスはキズに沿ってきれいに折 れ、切断できる。ガラスは、一定の速度でラインの上を動いて いるので、カッターをななめに走らせることによって直角に切 っている。またガラスの両端の部分は、搬送の跡がついている ためカットされる。 [ここでできたガラスくずは、原料に加え て再利用される]もちろんこの工程も、すべてコンピューター 制御により、機械が行う。 3.ガラスの種類(+特性やどのような物に使われているか) ガラスの種類は数千種類存在します。そのうちメジャーなものをあ げると、 ソーダ石灰ガラス: 現在最も広く利用されているものであり、 古代に最初に作られたガラスもソーダ石灰ガラスと考えられて います。ソーダガラスなどとも呼ばれ、安価なことから板ガラ ス、ガラス瓶などに広く利用される。ソーダ石灰ガラスはケイ 砂 (SiO2) 、 炭 酸 ナ ト リ ウ ム (Na2CO3) 、 炭 酸 カ ル シ ウ ム (CaCO3) を混合して融解することにより得られる。炭酸ナトリ ウムを加えると融点は 1000 ℃近くまで下がり加工が容易にな る。しかし炭酸ナトリウムを加えるとケイ酸ナトリウムを生じ 水溶性になるため、さらに炭酸カルシウムを加えることでこれ を防いでいる。ガラス転移点は 730 ℃で融点は約 1000 ℃で ある。 鉛ガラス:一般的には、ケイ砂、カリウム、ソーダ灰というガ ラスの主成分に、酸化鉛(PbO)を添加して形成されるガラス。ガ ラスの製造時に酸化鉛等を添加することでガラスの溶解温度が 低く抑えられ成形もソーダガラスに比べて容易になること、ま た透明度と屈折率が高まり水晶(クリスタル)のように輝く透 明なガラスになることから、通称として「クリスタル」と呼ば れる。一般的には鉛の含有量が上がるほど光の透明度や屈折率 が高くなり、また比重が大きくなるとともに打音が澄んで余音 を持つ。このため、特にワイングラスなど工芸用では酸化鉛が 多いものが好まれる。 しかし、その実現には、溶解・成形・徐 冷・加工などの高度な製造技術や、鉄分など不純物の除去や他 の混合物の配合など全体的な化学組成の調整が重要であり、一 概に鉛の含有量が高ければ良いという訳ではない。光学的に無 色透明であるよりもわずかに青みを帯びた方が肉眼では「美し い透明」と感じがちなため、アルカリ金属酸化物などの着色剤 を用いて調整することが多い。 主に高級洋食器・グラス・トロフィー・シャンデリア・ジュエ リー・ビーズに使われる。 4.ガラスの性質 プラスチックや金属との比較で言えば、硬く傷がつきにくいこと、薬 品に強いこと、加工性や成形性に優れていること、熱に強く燃えない こと、錆びないことなどが長所として挙げられる。一方、短所として、 張力に弱いこと、高温で粘度が急激に低下すること、長時間加熱する と結晶化が起こってもろくなること、異常膨張する特性があること、 熱の不良導体であることなどが挙げられる。 (1)透明である 物体が透明であるためには「可視光を吸収しない」だけでなく「可 視光を散乱しない」ことが必要である。ガラスを構成する主成分であ るケイ砂や B2O3,Al2O3 等は可視光を吸収せず、また結晶質固体で散 乱の原因となる結晶粒界が存在しないため、ガラスは可視光域で透明 である。ガラス以外の無機固体材料で透光性を持つのは単結晶と特殊 なセラミックスのみであり、それゆえガラスは窓材や容器、光学材料 として広く用いられている。 (2)成形しやすい ガラスの粘度は温度の上昇にともない連続的に変化するので、温度 を制御することにより加工の容易な柔らかさにすることが可能であ る。そのため吹く、プレスする、引き伸ばす等の様々な加工が可能で ある。 (3)組成・物性の自由度が高い 結晶では一定の化学組成比でなければ一様な固体が得られないが、 ガラスは非晶質故に多くの場合、相当の組成変化を与えても一様なガ ラスが得られる。そのため種々の物質をガラスに混入したりガラスの 組成を操作して物性値を制御することが可能である。着色ガラスはこ の特性を利用しており、種々の金属元素を添加する事で様々な色のガ ラスが得られる。 (4)熱的・化学的に安定 多くのガラスはケイ砂を主成分としているため酸や有機溶媒など に侵されず、また酸化物であるため高温でも安定である。従って長期 使用上、寸法安定性や信頼性が高い。 5.ガラスの色 ガラスの色は、ガラスの原料に、金属酸化物を加えることで、色がつ く。ガラスの成分や溶融のしかたが変わると、色合いも変わる。色合 いの違いには酸素が多い「酸化雰囲気」と酸素が少ない「還元雰囲気」 という違いがある。酸化雰囲気は寒色系、還元雰囲気は暖色系を出す ときに使われる。 例えば、赤色は金。緑色は酸化銅。 6.その他のガラス ① 強化ガラス ② アクリルガラス ③ 石英ガラス ④ ガラス繊維 ⑤ 水ガラス ⑥ 合わせガラス http://m-uo.com/research/glass1.html http://www.sekiyarika.com http://www.agc.com/kingdom/manu_process/history/history11.html http://www.city.toyama.toyama.jp/etc/glasscity/enjoy/material.html https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82% B9 http://www.agc.com/kingdom/manu_process/history/history11.html http://www.glassman.or.jp/chishiki/ ホログラフィー 経営学部 知能情報学部 知能情報学部 2 回生 1 回生 1 回生 ハード班 ソフト班 ハード班 川畑裕己 河原林鴻希 山本大輝 <ホログラムとホログラフィーの違い> ホログラフィーとは、レーザーを使って物体から反射した光の波形(干渉 縞)を感光材に記録し、立体画像として再生する技術のことで、ホログラ ムとはこの技術を応用した製品のことです。つまり、ホログラムとは、レ ーザーを使って記録した立体画像等のことで、ホログラフィーはそれを作 り出す技術を指します。 <ホログラフィーの発明者> ホログラフィーは 1947 年にハンガリーの 物理学者ガーボル・デーネシュによって発 明されました。この発見はイギリスにあっ たブリティッシュ・トムソン・ヒュースト ン社にて電子顕微鏡の解像度を向上させ る研究の中で水銀灯光源に何重にもフ ィルターをかける実験をしていて発見、 ホログラフィーを発明した。このホログ ラフィーはインライン型ホログラフィ ーと呼ばれる像を鮮明に観察できない 形式のものでした。これはレーザーのよ うな波が一定で一直線に進む光がなかったためであり、それゆえレーザ ーが 1960 年に発明されるまでは研究があまり進歩することはありません でした。 <ホログラフィーの原理> まずレーザーから出た光をビームスプリッターによって 2 つに分けます。 レーザー光は通常広がらずにまっすぐ進んで行く細い光線なので、これを レンズなどによって広げ、一方の光を記録したい物体にあてます。すると、 光のあたった物体表面の各点を第 2 の光源としてそれぞれの明るさに応じ た反射光が生じます。それらが重なって、ちょうど水面に広がっていく波 紋のように空間に広がってゆきます。この光は物体の情報をもった光で物 体光と呼ばれ、これを記録材料(写真フィルム)にあてます。2 つに分けた もう一方の光も同様に広げ、直接記録材料にあてます。この光は参照光と 呼ばれます。物体光と参照光が干渉してできる干渉縞を記録材料に記録し ます。これを現像処理してできたものがホログラムです。 物体の各点からやってきて記録材料にあたる光は、物体表面の形によっ てその距離と方向が少しずつ違っています。このずれが 3 次元の情報をも っていますが、基準がないとどれだけずれているかわかりません。この基 準となるために導入する光が参照光であり、これが物差しの役目をして、 干渉縞という形で明るさと方向を含めた物体の正確な空間情報を記録で きるのです。 こうして記録されたホロ グラムは干渉縞が写って いるだけで、写真の場合と 異なりレンズで像をつく っていないため、像らしき ものは何も写っていませ ん。ただ、その干渉縞も非 常に細かいため肉眼では 認められず、一枚の透明な 板のようにしか見えませ ん。しかし、ホログラムの 断面を拡大して見ると、下 の写真のような縞模様が見 えます。この縞模様が干渉 縞です。この写真の場合は 銀塩乳剤に記録されたもの で、縞の間隔は約 1 ミクロ ン(1000 分の 1 ミリメーター)です。黒く見える部分は小さな銀塩粒子 の集まりからできています。粒子の大きさは約 20 分の 1 ミクロン(50 ナ ノメーター)です。 記録したときの参照光と同じ光を同じ方向からホログラムにあてて反対 方向から覗くと、物体のあった位置に本物そっくりの像が見えます。これ は細かい周期構造を持つ干渉縞に光をあてると、やってきた光の方向が曲 げられるという回折の現象によるものです。その方向は干渉縞の間隔と向 き、および波長によって決まります。 ここで重要なことは、ホログラムの各場所で回折される光の方向は、物 体からやってきた光がホログラムを通過するときの方向と全く同じであ るということです。このことは、ホログラムから出て行く光(これを再生 光といいます)は元の物体からやってくる光と全く同じものであり、実際 に物体がなくても観察者の眼には物体がある場合と何ら変わりがなく見 えることを意味します。したがって、観察者にはそこにあたかも物体があ るかのように、本物そっくりの 3 次元像が見えることになります。この像 は、ホログラムの奥に見えるので、虚像といいます。下の図はそれぞれ左 右からホログラムを覗いたときに見える再生像です。 もし、再生照明光を参照光とは逆向きに進む光にした場合は、 先程の見 えかたと違ってホログラムの手前に像が浮かんで見えます。このような再 生の仕方で生じる像は共役像と呼ばれ紙などの上に映すことができ、実像 といいます。 ここで観察者の位置と像の関係を考えたとき、観察者は光がやってくるホ ログラムの方に顔を向けるので、見える像は実際の物体と前後が逆になっ ています。つまり、前のものが後ろに、後ろのものが前に見えます。この 像をシュードスコピック像といいます。 <ホログラムの種類> ・レインボーホログラム 記録時に水平のスリットを 使い、縦方向の視差を犠牲 にして白色光再生を可能に します。眼を上下に動かす と、再生像の色が虹のよう に変化します。クレジットカードなどに付いているのはこのホログラムで す。 ・リップマンホログラム 物体光と参照光を、記録材料の表裏か ら対向するように入射させて作製す るホログラムです。単色でぼけの少な い像を見ることができます。眼を上下 しても再生像の色は変化しません。展 示会で見られるホログラムの多くが このホログラムです。3 色のレーザー 光でカラーホログラムを作製すれば カラーの再生像が得られます。 ・ホログラフィックステレオグラムと マルチプレックスホログラム 少し視差の異なった 2 つの画像を 右と左の眼で見ると、立体的に画 像が浮き上がって見えます。これ がステレオグラムの原理です。こ れと同じ原理を利用したのがホロ グラフィックステレオグラムで す。普通のカメラで視点を変えて たくさんの平面画像を多数撮影し ます。この一駒一駒を原画像とし て、縦に細長いホログラムを敷き 詰めるように多数記録します。こ れをレーザーで再生すれば、左右 の眼に視差の異なる画像が再生 され、3 次元的に見えます。 通常は、これをマスターホログラ ムとして、レインボーホログラム やリップマンホログラムにして 白色光で見えるようにします。こ のレインボーホログラムを円筒 状に丸めたものがマルチプレッ クスホログラムです。円筒を回転 することにより、観察者が動かず に 360°方向の像が見えます。 ホログラフィックステレオグラムの大きな特長は、原画像を作製するとき、 レーザーを使う必要がないことです。カメラを使う以外に、コンピュータ ーグラフィックスでも原画像を描くことができるため、現実には存在しな い架空の3次元像が得られます。 ・カラーホログラム 私たちが眼にする映像はほとん ど全てがカラーです。ところが、 1 色のレーザー光で作製したホ ログラムの再生像はモノクロー ムです。ホログラフィーの特長は 本物そっくりの 3 次元像が見え ることで、その像が本物と同じカ ラーになればすばらしいことで す。これを実現するのがカラーホ ログラムです。これを作製するためには、赤、緑、青のいわゆる 3 原色の レーザー光を使えばよいのです。カラーテレビと同じ原理により、3 色の 像が重なってカラー像になります。 <ホログラフィーの特徴> 1.本物の物体を見るのと同じように、ごく自然に3次元像が見える。 2.ホログラムが割れて小さな破片になっても、その部分から完全な3次 元像が再生される。 3.一枚のホログラムに異なったたくさんの物体の情報を記録でき、また それらを別々に再生できる。 これらの特徴を利用して、ホログラフィーは様々な分野に応用されていま す。 ・計測 現在、ホログラフィー顕微鏡などホログラフィーを利用した計測機器が 次々と作られています。ホログラフィー顕微鏡はホログラフィーを利用す ることにより、微小な物体の立体像を得るものです。これをコンピュータ 処理することにより、3 次元情報を得ることが可能でさまざまな応用が期 待されています。 ・光コンピュータ 演算素子として利用することができます。例えば、1 枚のホログラムに 2 つのホログラムの実像を写せば、2 つの 3 次元像の和をとることができま す。また、フーリエ変換面にホログラムフィルタをはさみこむことにより、 微分演算を行うこともできます。他にも、さまざまな画像処理がホログラ フィーで可能です。 ・ホログラフィックメモリ ホログラフィックメモリは結晶やフォトポリマーの中に高密度の情報を 記録するものです。現在一般的な記録媒体(メモリ)である DVD は面上 に記録するため回折限界の制約を受けます。DVD はほぼこの上限に達し ておりこれ以上容量を増やすことができません。しかし、メディアの容積 全体に記録できるホログラフィックメモリは次世代記憶素子としての可 能性を秘めています。 ・芸術 ホログラフィーは芸術にも利用されています。ホログラフィック・ディス プレイ研究会では、毎年大学ホログラフィー展を開いており、芸術的なホ ログラムを誰でも無料で見ることができます。フルカラーのホログラムや 手前に大きく飛び出るホログラムなどもあり、芸術の手法として確立され つつあります。 トレーディングカードゲーム(TCG)には、レアカードであることを示す ためにホログラム加工がなされているものがあります。コンピュータゲー ムの TCG にも、ホログラムのようなエフェクトが表示されるものもあり ます。 <3D ホログラム> 3D ホログラムとは、レーザーを使い、特殊なフィルムを通して投影する 立体映像技術のことです。3D メガネをかけなくても、肉眼で映像を確認 することができます。映画やアニメで出てくる人や物体の立体映像がそれ にあたります。現実でも徐々にその技術が実装されつつあり、具体的には 3D ホログラムを用いたゲームや、宣伝用のショーウィンドウがあります。 スマートフォンを用いて家で手軽に 3D ホログラムを楽しめる玩具菓子" ハコビジョ ン"もありま す。 <参考文献> http://www.dnp.co.jp/bf/hologram/about/ http://wired.jp/2015/07/07/haptic-japanese-holograms/ http://homepage2.nifty.com/kubotaholo/ https://ja.wikipedia.org/wiki/ホログラフィー http://liginc.co.jp/web/useful/127206 画像処理 2 回生 知能情報学部 ソフト班 織田 直之 1回生 法学部 ハード班 猪木 夏樹 1回生 知能情報部 ハード班 東 航平 画像編集 画像編集は、デジタル写真や銀塩写真やイラストレーションなどの画像を 変化させる過程を指す。 デジタルスキャナーとデジタルカメラが主流になる以前は、写真画像編集 は、エアブラシなどの道具で修正を施したり、絵筆などでイラストレーシ ョンを修正するのが一般的だった。しかし、デジタル画像が登場し、アナ ログでの画像編集はほとんど使われなくなってきている。グラフィックソ フトウェアには、ベクトル画像を扱うドローソフト、ビットマップ画像を 扱うペイントソフト、3 次元コンピュータグラフィックス用のモデラーな どがあり、画像を操作・修正・変換するのに使われる。画像編集ソフトウ ェアはコンピュータアートなどの芸術にも利用されている。 (補足) 銀塩写真:デジタル写真の対立概念。画像の記録媒体がフィルムであり、 銀塩(塩化銀) を感光剤に使用していることに由来。 ________________________________ 基本 ビットマップ画像は画素(ピクセル)を格子状に並べたものであり、コン ピュータに格納される。ピクセルには色や輝度の情報が含まれる。画像エ ディタはピクセルを操作して画像を様々に変化させる。画像エディタに備 わっているアルゴリズムにより、ピクセルを複数まとめて扱うこともでき るし、個々に操作することもできる。本項目では主にビットマップ画像編 集について解説する。 一方、ドローツール(Adobe Illustrator や CorelDRAW、Inkscape など) は、ベクトル画像の生成・編集に使われる。ベクトル画像はピクセルでは なく、直線やベジェ曲線、テキストなどの形で格納される。ベクトル画像 をビットマップ化(ラスタライズ)するのは、逆(ビットマップ画像のベ クトル化)よりも容易である。ビットマップ画像のベクトル化はコンピュ ータビジョンの研究テーマの 1 つとなっている。ベクトル画像は編集が容 易で、任意の解像度のビットマップ画像に変換可能である。一方、ビット マップ画像も拡大・縮小は可能ではあるが、整数倍率の縮小でない限り、 その操作には何らかの推論が含まれている。 (補足) 画像エディタ:コンピュータで画像情報のみのファイル、すなわちテキス トファイルを作 成、編集、保存するためのソフトウェア(プログ ラム)である。 ラスタライズ:コンピュータが扱う文字や画像を、プリンタで印刷したり ディスプレイに 示できるように、色付きの小さな点の集まり(ビットマップ)で表現する こと。 ________________________________ ビットマップ画像とベクトル画像 画像は、各画素から構成されており、それぞれの画素に濃度値の情報があ り、画像を構成していることをこれまで説明してきた。 このように、各 画素に濃度値情報を持たせた画像をビットマップ画像という。 このビットマップ画像は、拡大すると、各画素がそのまま拡大されるため、 ギザギザが目立つと言う問題があった。 この課題を解決するために工夫 された画像にベクトル画像があげられる。 ベクトル画像は、直線や曲線の始点、終点の座標、また、線幅、色を、ま た、円の場合は、中心座標、半径を情報とするものである。 この場合、 拡大する際は、半径や線幅などを拡大率分大きくしていけばいいため、ビ ットマップ画像のようにギザギザにならない。 よって、拡大だけではな く、縮小、回転、変形等も容易にでき、図形が崩れないという特徴もあげ られる。 ________________________________ 編集ソフトウェア デジタルカメラの普及とともに、画像編集ソフトウェアも一般化した。主 なソフトウェアを以下に列挙する。 ・Adobe Photoshop ・Paint Shop Pro ・GIMP ・Paint.NET ペイントソフトとドローソフト 上記でビットマック画像とベクトル画像について書いたが、ベクトル画像 が優れているとは一概にいえない。 その用途によりそれぞれを使い分け ることが最適である。 例えば、写真などを表すためには、ビットマップ画像が向いており、図面 などの図形、記号などを書くときには、ベクトル画像が向いている。 そ のため、それぞれを扱うには別のアプリケーションソフトを用いることに なる。 ビットマップ画像を扱うには、 「ペイントソフト」を用いる。上記の Adobe Photoshop や Jasc ソフトウエアの Paint Shop PRO などが有名である。 一方、ベクトル画像を扱うには、「ドローソフト」を用いる。こちらは、 MicroSoft の PowerPoint や CAD ソフト、 Machintosh では、クラリス 社のクラリスドロー等がある。 このように、ビットマップ画像とベクトル画像を使い分けるには、それぞ れのアプリケーションソフトも使い分けると言うことになる。 ________________________________ デジタルデータ圧縮 多くの画像ファイルフォーマット(保存形式)ではデータ圧縮技術を使っ てファイルサイズを削減している。画像圧縮はデジタルカメラでも行える し、コンピュータ上でも行える。例えば、JPEG 形式の画像は既に圧縮さ れている。画像圧縮する際には圧縮率が設定可能であることが多い。 PNG 形式などで使われている圧縮アルゴリズムでは、情報が失われない ため、圧縮前の状態に戻すことができる(可逆圧縮)。JPEG 形式では非 可逆圧縮アルゴリズムが使われている。後者は圧縮率が高いが、情報が失 われるため、画像の細部の品質が劣化する。JPEG 形式では、人間の脳や 眼に関する知識を応用して、この劣化が目立たないよう考慮している。 ________________________________ 画像エディタの機能 以下に列挙したものは、画像編集ソフトウェアが持つ主な機能である。全 てが列挙されているわけではない。 ________________________________ 選択 以下に列挙された機能の多くは、画像の部分を選択する方法を前提として おり、選択した部分だけに修正を施す。画像編集ソフトウェアは選択の方 法を複数備えていることが多い。マーキーツール、投げなわツール、ベク トル画像方式に基づくペンツールなどがある。また、より高度な選択方法 として、輪郭検出、マスキング、アルファ合成、色やチャネルの選択的抜 き出しなどがある。 (補足) マーキーツール:長方形選択ツール 投げ縄ツール:自由選択ツール ________________________________ レイヤー また、レイヤーも画像編集ソフトウェアで一般的な機能である。画像が一 部に張り付いた透明なシートを複数重ねたようなもので、各シートは個別 に編集できる。これにより、他に影響を与えないで一部分だけを編集する ことが容易となる。 例えば、今 2 枚のガラスがあったとして、1 枚目に「あ」、2 枚目に「い」 と描いたとしよう。この「あ」と描かれたガラスの上のちょうど良い位置 に「い」と描かれたガラスを置けば、「あい」という文字列が完成する。 このときのそれぞれのガラスがレイヤーである。 このとき、一枚目のみに「あい」と描いた場合、例えば「あ」を大きく描 きたい、「い」をもっと右に移動したい、といった場合に各文字を消さな ければ ならない。しかし、レイヤーを使えばそれぞれ「あ」レイヤーを 拡大するだけ、「い」レイヤーを右に移動するだけで済む。このような単 純な例では レイヤーを使うことにより受けられる恩恵は比較的小さいが、 複数枚の写真をレイヤーとして重ねるような場合においては、それぞれの レイヤーを個別に編集可 能であることが大きな意味を持つようになる。 ________________________________ 拡大・縮小 画像編集ソフトウェアは、画像を拡大・縮小できる。高解像度のカメラは 非常に大きな画像を撮影するが、インターネット上でその画像を使う場合、 縮小することが多い。拡大・縮小では、再標本化(resampling)と呼ばれ る数学的手法で各ピクセルの値を計算することで行われる。 ________________________________ 切り取り 切り取り(cropping)は、元の画像の一部を(通常)矩形に切り抜いて、 他の部分を捨てる機能である。これにより、画像内の必要な部分だけを抜 き出し、不要な部分を除去する。切り取りでは画像の解像度は変化しない。 切り取った部分を拡大する場合、元の画像が高解像度である方が好ましい 結果が得られる。 切り取り前の画像 ユリの花を切り取った画像 パノラマ化 以下の例では、画像 1、画像 2、画像 3、画像 4、画像 5 をパノラマ作成用 ソフトウェアで合成し、不要部分をトリミングしてパノラマを作成してい る。 画像1 画像 2 画像 3 画像 4 魚眼レンズで撮った複数の写真で作成できたパノラマ写真 画像 5 (補足) パノラマ:遮蔽物のない見晴らしの良い風景、また派生してある主題を概 観した全体像の 意。 トリミング:写真の画像処理において、画面の一部だけを切り出す加工を 指す。 ______________________________ 自由変形(もしくは「遠近法」機能) 画像を任意の方向(一方向、もしくはニ方向)に傾斜させることが出来る。 元々傾斜した状態での撮影写真や、創作者の意図により描かれた絵画・CG などを真正面イメージに補正させる等、主に 3 次元コンピュータグラフィ ックスのテクスチャマッピング画像データ素材の作成に用いられる。 ________________________________ ヒストグラムによる編集 画像編集ソフトウェアによっては、画像のヒストグラムを使って編集する ことができる。この場合のヒストグラムは、画像内の輝度ごとのピクセル 数をプロットしたものである。例えば、ヒストグラム上で画像の明るさや コントラストを調整するといった使い方をする。 ひまわりの画像 左の画像のヒストグラム (補足) ヒストグラム:縦軸に度数、横軸に階級をとった統計グラフの一種で、デ ータの分布状を 視覚的に認識するために主に統計学や数学、画像 処理等で用いられる。 ________________________________ ノイズ除去 画像のノイズは、被写体の明るさが足りない場合や感度を高くしすぎた場 合に発生する。画像編集ソフトウェアはこれを除去するアルゴリズムを備 えている。逆に、画像に古めかしい雰囲気を与えるためにノイズを追加す る場合もある。 ________________________________ 不要な要素の消去 多くの画像編集ソフトウェアは不要な要素を取り除く機能を備えている。 不要なものを取り除くことで画面の構成が良くなる。 オリジナル画像。枝が映り込んでいる。 枝を消した画像 色の選択的変更 場合によっては、色を選択的に変更する機能を持つものもある。領域を設 定し、指定した範囲の色を選択的に変更する。 ________________________________ グラデーション グラデーション(gradation)とは、図画の中で、位置に対し色が連続的 に変化することである。線形グラデーションや放射グラデーションなどが ある。 二種類のグラデーション ________________________________ 回転・反転 画像の回転は、90°単位の場合もあるが、一般に任意の角度に回転させる ことができる。鏡像を作ることもでき、左右に反転させたり、上下を反転 させることもできる。 画像回転の例 マージ 複数の画像をマージ(併合、合併)して 1 つの画像ファイルにすることもで きる。どうマージするかはユーザーが制御可能。 2 つの画像をマージした例 ________________________________ スライシング スライシングとは、Web ページで画像の個々の部分にリンクを設定するな どの機能を付与する際に使われる機能である。画像を分割してラベルを付 けて、全体とは分離して格納する。画像の部分的なアニメーション化など が可能。 特殊効果 画像編集ソフトウェアには様々な特殊な効果を施す機能がある。画像を斜 めにしたり歪めたり、アート的効果(キュビズムや油絵やキャンバス地な どなど芸術作品のような仕上げをする効果)を与えたり、テクスチャ効果 (3 次元コンピュータグラフィックスで、物体の表面の質感を表現するため に画像を貼り付ける効果)を与えたりといった機能である。 写真に特殊加工を施した例 ________________________________ 色深度変更 画像の色深度(画面あるいは画素が表示できる色数)を変更することもで きる。通常、フルカラー画像を確実に表示できる色数やグレイスケール(モ ノクロ)になるよう色深度を小さくする編集を施す。 レンズによる歪み修正 レンズを通して撮影された画像には、樽型歪み、糸巻き型歪みなどがあり、 魚眼レンズで撮影した画像にそれが顕著に現れている。これらの歪みを矯 正するソフトウェアもある。一般に歪みは微妙であるが、矯正によって見 た目が改善される場合もある。 コントラスト調整と明るさ調整 コントラストと明るさの調整は画像編集の基本であり、これによって見た 目が改善される画像は多い。最近では、明るさが指定した閾値(境界とな る値 )以下のピクセルだけを明るくしたりでき、好ましくない影の部分だ けを明るくしたりできる。 ________________________________ シャープネス シャープネスとは、画質の堅さであり、画像編集ソフトウェアではこれを 修正することもできる。例えば、人物写真は画質をソフトにすることで見 た目が改善されることもある(特に、背景をソフトにすると人物が際立つ。 カメラの絞りを使って被写界深度を狭くするのと同じ効果をソフトウェ アで人工的に作り出すのである)。シャープネスを強化する方法として輪 郭強調があるが、結果が不自然になることもある。 ________________________________ 色補正 画像の色は様々な方法で修正できる。色を段階的に変化させたり、色調を 変えたり、色のバランスを改善したりする。室内で昼光用(デイライト) フィルムで撮影した画像や、色温度の設定を間違って撮影した画像では、 色補正が必要となる。 ________________________________ 3D 画像処理技術 ・2 次元画像処理 ・2次元画像処理による 3 次元画像処理の原理 1 台のカメラで画像を撮像して 2 次元の画像計測を行うことはごく普通の ことですが、2 台以上のカメラを使用して同じ場所を違った角度で撮像す ることによっ て撮像対象の 3 次元上の座標位置が 2 枚の画像から求めら れます。これは人の 2 つの眼が 3 次元空間を認識している方法である「両 眼立体視」と基本的に同じもので、人は同じものを 2 つの眼で見ることに よって生じる視差で瞬時に 3 次元空間上の位置を判断しています。人の目 ではその位置を精度良く計測することは出 来ませんが、カメラ間の位置 関係が固定された撮像角度が異なる 2 台のカメラで同じ対象画像を捕捉し、 コンピュータ処理することによって 3 次元座標を計測す ることができま す。ただし、3 次元座標の計測精度を高めるためには「事前にカメラ間の 位置関係を精度良く求めておく」と「カメラで正確に対象画像を捕捉す る」 ことが大変重要となります。 ・実用化の例 ロボットハンドに 2 眼のカメラセットを搭載してばら積み部品をロボット でピッキングするピックアンドプレースへの応用、3 次元空間内にある部 品の組み立て 用途、立体部品の形状計測や欠け・キズの検出等がありま す。これらのテーマは現状広く普及されていると言える段階ではありませ んが、いろいろな企業で実用 化への取り組みが盛んに進められています。 ・ステレオビジョン ・ステレオビジョンの原理 カメラを使った距離センサの一種で、通常のカメラ画像が視線と交差する 対象表面上の一点の明度や色データからなっているのに対し、カメラと対 象表面までの距離データ(距離画像)を出力する技術です。 ・実用化の例 複数の立体物の大きさ、位置、速度を瞬時に検出できるのに加え、走行領 域の境界となる側壁や路肩、白線、黄線などの路面のマークまで的確に検 出することも可能で、目視による物体認識の代替手段として幅広い用途に 応用できます。 例えば上の写真のような場面でステレオビジョンを使用する事で家まで の距離が何メートルか、手前の動物は何メートル先にいて、何メートル動 いたのか等を独自のアルゴリズムで瞬時に検出します。 3 次元距離画像技術 ・3 次元距離画像技術の原理 近赤外線 LED の高速光源と、距離画像データを取得するために特別に設 計された CMOS イメージセンサを用い、投光した光がターゲットに当た って戻る時間を約 2 万点の各画素ごとにリアルタイムで測定することによ り、距離画像イメージを取得します。 この技術は環境条件の影響 を受けない新技術であり、2 次元画像処理や、複数のカメ ラで距離を測るステレオビ ジョンと異なり太陽光や影 の影響を受けない為、昼夜、 屋内外を問わず、使用可能で す。 また、距離情報を処理することで、撮像背景の色やコントラストに関係な く対象物を分離、抽出できます。 ・実用化の例 昇降機の安全性と運転効率の向上やプライバシーエリアでの危険を早期 発見、人の動きの認識からの次世代インターフェイスを実現すること等が 考えられています。 それぞれの比較表 3D 画像処理技術の応用例 ・全世界デジタル 3D 地図提供サービス 「全世界デジタル 3D 地図提供サービス」は、陸域観測技術衛星「だい ち」によって撮影された約 300 万枚の衛星画像を利用して作られた、高精 度のデジタ ル 3D 地図を提供するサービスです。 高さを示す DEM(数値標高モデル)と、オルソ画像のデータを提供して います。 DEM には、DSM(数値表層モデル)と、要望に応じて加工する DTM(数 値地形モデル)があります。 オルソ画像とは、上空から撮影された画像の歪みを取り除いて、地図に重 なるように補正した画像のことです。 センサーのレンズの 特性により、上空から高い山などを撮ると、斜めに 倒れこんでいるように写りますが、それを補正します。 ・医療現場における 3D 画像処理 最近では CT や MRI や超音波の画像を三次元画像に変換するソフトウ ェアが登場しています。CT や MRI は本来二次元の画像をフィルムに映 し出すものでした。三次元画像を生成するには複数回の撮影を行って、そ れらをコンピュータを使って統合して三次元モデ ル化する。三次元超音 波画像も同様の手法で生成できます。 重要な構造を詳細に視覚化できるため、三次元視覚化手法は各種診断や外 科治療にとって重要な情報源となっており結合双生児の分離手術でも三 次元画像が重要な情報源となっています。 参考文献 画像編集 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F%E7%B7%A8% E9%9B%86#.E7.B7.A8.E9.9B.86.E3.82.BD.E3.83.95.E3.83.88.E3.82.A 6.E3.82.A7.E3.82.A2 グラデーション - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%87% E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3 マージ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B8 スライスを使った基本操作(Photoshop CS5) https://helpx.adobe.com/jp/photoshop/kb/cpsid_92262.html 10. 芸術的効果フィルタ http://docs.gimp.org/2.6/ja/filters-artistic.html テクスチャとは|texture|テクスチャー - 意味/解説/説明/定義 : IT 用 語辞典 http://e-words.jp/w/%E3%83%86%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%8 1%E3%83%A3.html 色深度とは- IT 単語帳 - IT、IT 製品の情報なら【キーマンズネット】 http://www.keyman.or.jp/it-word/61006096/ グレースケールとは|gray scale|グレイスケール - 意味/解説/説明/定 義 : IT 用語辞典 http://e-words.jp/w/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82% B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB.html 閾値とは|しきい値|スレッショルド - 意味/解説/説明/定義 : IT 用語 辞典 http://e-words.jp/w/%E9%96%BE%E5%80%A4.html 画像処理 http://www.ai.soc.i.kyoto-u.ac.jp/~inaba/ImageProc/2-7.html レイヤー https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%A4% E3%83%BC_%28DTP%29 銀塩写真 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%80%E5%A1%A9%E5%86%99% E7%9C%9F ヒストグラム https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%B9%E3%83%88% E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0 画像処理アルゴリズム | イメー ジングソリューション: http://imagingsolution.net/imageprocessing/imageprocessingalgorithm/ 画像処理について(一般的な説明と代表的ソフトウェアの紹介): http://www.anfoworld.com/IDP.html 技術情報 - 3 次元距離画像技術 | オプテックス: http://www.optex.co.jp/tech/sensor/3d.html ステレオビジョンの技術|Stereo Vision IP Suite |富士ソフト株式会社: http://www.fsi-embedded.jp/solution/sv/technique.html ステレオ方式による3次元計測 - 株式会社アイディール: http://www.eyedeal.co.jp/technology/3Dstereo.html JAXA | 世界の暮らしを支えるデジタル 3D 地図: http://www.jaxa.jp/projects/feature/satellite/tsutsui_j.html 医用画像処理 - Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BB%E7%94%A8%E7%94%BB %E5%83%8F%E5%87%A6%E7%90%86#.E4.B8.89.E6.AC.A1.E5.85.83. E7.94.BB.E5.83.8F.E3.81.AE.E7.94.9F.E6.88.90 フラッシュメモリ 知能情報学部 2回生 林和輝 文学部 2回生 藤本真央 知能情報学部 1 回生 岩谷草紀 フラッシュメモリの発明者 発明者は、電子工学研究者,東北大学名誉教授の東芝の舛岡富士雄である。 日本ユニサンティスエレクトロニクス株式会社最高技術責任者でもあ る。 1980 年に NOR 型フラッシュメモリ、1986 年に NAND 型フラッシュメモリ を発明した。 フラッシュメモリの種類 フラッシュメモリは、いくつかの基準で分類が可能だが、まずは基本ゲー ト回路の組み合わせで分類すると NAND 型と NOR 型に分類できる。 ・NAND 型 1987 年に東芝が開発したフラッシュメモリである。書き込みが高速で、 集積率が高いものの、ブロック単位での読み書きが不可能でランダムアク セスが遅い。ビットコストが安価である。現在では、USB メモリや SSD 等 日常でしばしば触れるものはこちらの仕組みが一般的である。 NAND とは、AND と NOT を組み合わせたものであり、2 つの値が 1,1 の場 合のみ偽,他の 3 つの組み合わせは真となる。 A B 判定 0 0 1 1 0 1 0 1 1 1 1 0 ・NOR 型 データの読み出しが高速かつ 1 ビット単位で読み出すことが可能。その 特徴から、携帯電話の基本ソフトウェア等で、NOR 型のフラッシュメモリ に記録されることが多い。 NOR とは、NOT と OR を組み合わせたものであり、2 つの値が 0, 0 の場 合のみ偽,他の 3 つの組み合わせは真となる。 A B 判定 0 0 0 1 0 1 0 1 1 1 1 1 構造 左の画像は、デ ータを記録する 最小単位のセル である。 データはフロー ティングゲート に電子を蓄えた り放出したりす ることで保存が可能となります。 0 を書き込む際は、コントロールゲートに高めの電圧を与えることで電子 がトンネル酸化絶縁膜を突き破り、フローティングゲート内に蓄えられる。 消去する(1 を書き込む)際には、ドレインとソースに高い電圧を与え、フ ローティングゲート内の電子を押し出す仕組みとなっている。注意点とし て、フラッシュメモリはデータの書き換えが不可能である。別のデータに 書き換える際は、一度消去してから書き込むことになる。NAND 型では数十 ~十百 KB 単位でブロックとなっており、ブロック内のデータを 1 つでも書 き換えるためには一度ブロック内の全データを消去しなければならない。 0を 書 き 込 む 時 の 図 消 去する時の図 データを読み込む際は、ソースからドレインに弱い電圧をかけ、その時に 検出される電流値から、電子の量を読み取る。 ここで、フラッシュメモリに寿命が発生する原因となっているのが、 トンネル酸化絶縁膜である。電子が通過するたびに格子欠陥と呼ばれる電 子が通過しやすい箇所が増大する。していき、最終的には電子がほとんど 自由に通過できる状態となり、内部の電子を維持できなくなることでデー タの保存が不可能となる。このようにして発生した不良ブロックは、以降 使用されないように管理される。 電圧のかかっていない状態においても、微量ずつではあるが電子がトン ネル効果*により外に飛び出しているため、長時間放置しているとデータ が消失してしまう。当然、トンネル酸化絶縁膜が劣化していくに従い、漏 れだす電子の量は増加する。したがって、長期保存には向いていない。 *エネルギーの壁を超えて別の場所に確率で移動ができる現象。これに ついては量子力学の範囲になり、筆者の理解が進んでいないため細かい説 明を省略する。 SSD : Solid State Drive SSD も記憶媒体としてフラッシュメモリを利用している。SSD の情報を得 る際しばしば SLC,MLC,TLC といったものを目にするが、それはどういうも のだろうか。 これらの主な違いは、1 つのセルあたり情報量である。さらに、それに比 例して寿命や速度も深く関わってくる。 ・SLC : Single Level Cell セルの情報量は 1bit のみである。要求する情 報量が少ないため、寿命が長く、高速である。ただし一定容量の確保に多 くのセルが必要になるため、容量が少なく、高コストである。 ・MLC : Multi Level Cell マルチと書かれているが、通常は 2bit の情報 量を持つことができるものである。寿命,価格,容量,速度全てが 3 つの内 の中間である。 ・TLC : Three Level Cell 3bit セルの情報量は 3bit である。セルに対し より細かい情報の保持を要求するため、寿命が短く低速である。ただし、 大容量で価格が安い傾向にあり、SLC と正反対の性質を持つ。 現在では、4bit の情報の記録にも成功している。 この分類は、SSD だけでなく、USB フラッシュドライブや SD メモリーカ ード等フラッシュメモリ全体における 1 つの機能面での分類である。 上にも記述したとおり、セル内の電子は電圧をかけないでいると減少し ていき、その量はトンネル酸化絶縁膜の劣化状態に左右される。ここで、 SLC においてはある程度電子が漏れだとしても、保持するデータは大雑把 であるため影響が少ない。しかし、保持する情報が増加するに従い、少し 電子が漏れ出すだけで読み取った際のデータに変化が生じる。これが、寿 命の差へ繋がっている。 USB フラッシュドライブ USB フラッシュドライブは、一般的に USB メモリと表現される。今日では 様々な容量,速度,価格の USB メモリが発売されている。根本的な仕組みは フラッシュメモリと同様である そもそも、USB(Universal Serial Bass)とは、キーボード,マウス等の 周辺機器とパソコンを結ぶデータ転送炉の規格の一つである。現在の最新 は 3.1TypeC である。 USB メモリは、多くは MLC または TLC である。サイズの関係でこうなっ ていると推測できる。ここで、SSD と USB メモリは同じフラッシュドライ ブであるが、転送速度が大きく異なっている。この要因となっているがメ モリコントローラーの性能である。SSD はサイズが大きいため余裕があり、 多くのメモリチップに並列で処理を行うようになっている。対し、USB メ モリは持ち運びによる省スペース性が求められるため、メモリコントロー ラーの性能が劣ってしまう。そのことから、USB メモリの中で性能が良い ものは、サイズが大きいことが多い。 3D XPoint Technology 2015 年 7 月 28 日(現地時間)、Intel と Micron Technology の企業連合が 記者会見を開催し、 「革新的な不揮発性メモリ技術を共同開発した」と発 表した。これが 3D XPoint Technology である。 これは新しい不揮発性メモリのクラスであり、25 年振りの革命である としている。従来の NAND 型と比較し、1000 倍高速であり、1000 倍長寿命 で、10 倍の記憶密度であると発表した。これは 1 つのダイに 128Gb 記憶で きる計算となる 仕組み : 従来の NAND 型は序盤にあるとおり、電子を移動させることで データを表す。それに対し、3D XPoint はセルの材質自体の抵抗値を変化 させる。この変更により、トランジスタが不要になり、セル材質自体の活 用が可能となるため、高密 度化が可能となる。さらに、Cross Point Structure というデータ構造を用いることで、セル単位で消去・置換が可 能となる。これらのおかげで高速,長寿命が実現している。 SD メモリーカード 1999 年に SanDisk 社,松下電器産業,東芝の 3 社が共同開発したメモリ ーカードの規格。MMC の使用をベースとしており、SD メモリーカードスロ ットに MMC を差し込んで使用することができる。ただし、SD メモリーカー ドには著作権保護機能「CPRM」を内蔵しているのに対し、MMC には内蔵さ れていないため差し込むことが可能でも記録はできないようになってい る。 その他のメモリーカードとして、CompactFlash,SmartMedia,MMC 等が挙 げられるが、ここでは SD メモリーカードのみ紹介する。 ・SD カードの種類 種類 SD miniSD microSD 容量 ファイ ルシス テム SD SD miniSD microSD ~2GB FAT16 SDHC SDHC miniSDHC microSDHC 4GB~32GB FAT32 SDXC SDXC microSDXC 2GB~2TB exFAT ・寸法 幅 長さ 厚さ SD 24mm 32mm 2.1mm miniSD 20mm 21.5mm 15mm microSD 11mm 15mm 1.0mm ・スピードの規格 スピードクラス 速度 SD バスモード Class 10 10MB/s Class 6 6MB/s Class 4 4MB/s Class 2 2MB/s High Speed Normal Speed UHS スピードクラス Class 3 30MB/s UHS-II Class 1 10MB/s UHS-I ・バスインタフェーススピード バ スインタ フ カードタイプ ェース バスインタフェース バージョン スピード 標準スピード SD,SDHC,SDXC 12.5MB/s 1.01 ハイスピード SD,SDHC,SDXC 25MB/s 2.00 UHS-I SDHC,SDXC UHS-II SDHC,SDXC 50MB/s(SDR50,DDR50) 104MB/s(SDR104) 156MB/s 312MB/s 3.01 4.00 SDXC の中でも安価な物は TLC を採用していることが多く、耐久性に難 がある。高価格帯のものは MLC を採用していることが多く、比較的寿命が 長い上同じスピードクラスでもこちらのほうが高速であることがある。 参考資料 Semiconductor Japan Net http://www.semiconductorjapan.net/serial/lesson/13.html NTTPC コミュニケーションズ 用語解説辞典 http://www.nttpc.co.jp/yougo/NOR%E5%9E%8B%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83 %83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%83%BC.htmlLLo gitec データ復旧技術センター http://www.logitec.co.jp/data_recovery/column/vol_002/ FUTURUS http://nge.jp/2015/08/05/post-112320 Micron http://www.micron.com/about/innovations/3d-xpoint-technology Intel http://newsroom.intel.com/community/intel_newsroom/blog/2015/07/2 8/intel-and-micron-produce-breakthrough-memory-technology SD Association https://www.sdcard.org/jp/index.html SD メモリーカード http://e-words.jp/w/SD%E3%83%A1%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82% AB%E3%83%BC%E3%83%89.html トンネル効果 http://www.phys.aoyama.ac.jp/~w3-furu/lecs/QMA2004/08.pdf バーチャルリアリティ ソフト班 2回生 知能情報学部 瀧山峻輔 ソフト班 1回生 知能情報学部 安田利蘭 ソフト班 1回生 知能情報学部 和田智弘 バーチャルリアリティとは バーチャルとは,「実際には存在しないが, 効果や機能において、それ が存在すると同等である」という意味であり、リアリティとは、 「現実, 現 実感」という意味。この二つの言葉から作られたバーチャル・リアリティ という言葉は,「人工的な手段を用いて生成された現実」のことを意味し ている。 単に人工的な現実感」といった場合には、例えば小説や映画といったメ ディア表現も含まれるが、VRの構成要件としては以下の要素が必要とされ る。体験可能な仮想空間(virtual world)の構築、五感(のうちのいく つか)に働きかけて得られる没入感(immersion)、対象者の位置や動作 に対する感覚へのフィードバック(sensory feedback)、対象者が世界に 働きかけることができる対話性(interactivity)の4つである。うしろの 3つを構成要件する場合もあり、この基準に照らせば、例えば小説には視 聴覚による没入感が欠け、映画には対話性が欠けるため、VRとはみなされ ない。 VRシステムはコンピュータと入出力機器の組み合わせによって構築さ れる。頭に装着して視界をすっぽりと覆うHMD(ヘッドマウントディスプ レイ)や、手の動きを入力したり擬似的に触覚を与える手袋上のデータグ ローブ、体をすっぽり包み込む衣服状の入出力装置データスーツなど、 様々な機器が考案され、いくつかは実用化されている。 歴史 【黎明期 前編】:軍事産業から娯楽産業へ流れるVR 黎明期には、VRの仕組み本体とHMDのそれぞれの原型が現れはじめた。 1960年代から軍事関係の技術が使えないだろうかという模索が既に娯楽 産業への転換を促していた。 ・ アーケードとして出発 VRの仕組みのご先祖様は、「Sensorama」という屋上デパートのちょ っとしたアーケード。これは、一応非公式なものであるが、3Dと揺れに よって、別の世界にいるような没入型の経験を演出しようとした機械で、 コインを入れて遊ぶことができた。 ・ The Ulitimate Display VR技術と切っても切り離せないものとしてHMDがある。HMDという形が 一番初めに形作られたのは、1968年の「The Ultimate Display」である。 この機械は、コンピューター・サイエンティストのIvan Sutherlandに よって、考案された。1960年代中は、SutherlandとMITの同僚らによっ て、HMDによるVRを映し出す可能性が探られていった。使用されたHMDは、 「デモクルスの剣」と呼ばれていた。 【黎明期 後編】:VR普及への足がかり ・ パーソナル・コンピューターの普及 VR技術が広範に使用されるためには、VRの学術的・専門的な発展と同 時に、前提となる知識や技術が一般的に普及する必要がある。1970年代 には、一般的な普及の端緒が見られるようになる。それが、パーソナル・ コンピューターの普及という画期的な出来事であった。高価なコンピュ ーターの開発はされていたが、全くもって一般の人が買えるものではな く、コンピューターを必要とするVRのことを知る人も殆どいなかった。 ・ 「Apple Ⅱ」(1977)「Atari400」(1979) いわゆる、パーソナル・コンピューターがアメリカをはじめとする先 進国のビジネス・家庭を侵食するようになる。中でも、「Apple」の表 計算ソフト「VisiCalc」は、キラーヒットした。この表計算ソフト実装 によって、アマチュアプログラマーが個人的にミニコンピューターを所 有したり・作ったりするような好奇心によるものだけでなく、ビジネス で使われるようになっていった。 また、価格面でも「Atari400・Atari800」や「VIC-20」、「コモドール 64」などの約5万~15万程度の価格帯の低価格パーソナル・コンピュー ターが普及しはじめる。これらの動きによって、一気に人間と機械の距 離が縮まり始める。 ・「Atari Shock(アタリショック)」(1982) アタリ社は、1977年に外部からソフトウェアを入れ替えられるテレビ ゲーム機「Atari2600」を発売した。発売当初は、売り上げもさっぱり だったが、1980年に『スペース インベーダー』、『パックマン』、『バ トルゾーン』などの人気ゲームを、キラーソフトとして「Atari2600」 に移植したことで、爆発的な人気を博した。 しかし、アタリ社が1982年に上層部との対立を引き金に、ロイヤリテ ィを受け取る代わりに、サードパーティーによるソフトの開発を認める ことになった。そのため、1982年頃から、ゲーム機を全く作ったことの ないような他業種のメーカーが、次々と参戦してきた。その結果、粗悪 品が大量に製造されるようになった。消費者は、ソフトを買っても家で ゲーム機に挿すまで、粗悪品かどうかわからない状態になり、購買意欲 がそがれたため、ゲーム機やソフトが全く売れなくなっていった。その ため、大量の不良在庫を抱えることになり、中小メーカーの倒産も頻発 しました。 ・「The Atari Sunnyvale Research Laboratory」(1982) しかし、「Atari Shock」の影で、1980年代もVRの研究が進んでいっ た。それがこの「The Atari Sunnyvale Research Laboratory」である。 この研究所は、先に述べたアタリ社本体の倒産危機によって、たった2 年しか続かなかったが、コンピューター・サイエンティストの権威であ るDr. Alan Kayをはじめとして、後にVRの発展において大きな役割を果 たすTom Zimmerman、Scott Fisher、Jaron Lanier、Brenda Laurelらが 一同に会した研究所であり、VRの発展にとって非常に重要な役割を果た した。 成長期 VRバブル 黎明期にVR技術含むIT技術開発が徐々に進んでいった。経済的にもその インパクトは大きく、IT技術による効率化が進んでいった。その技術が一 気に花咲くのがこの成長期である1980年代後半から1990年代前半になる。 この時期は、IT革命の第一段階とも呼ばれるほどで、潜在的な技術が顕在 化する時期でして、VRは注目を集め始める。 ・ 「Virtual Proguramming Language(略式:VPL)」(1985) VPLは、前述の「The Atari Sunnyvale Research Laboratory」研究所 に勤めていたZimmermanやJaron Lanierなどが集まって作った会社であ る。VR技術においては、HMD以外にも密接に結びついているセンサーつ きのウエアの発達も同時に進んでいった。多くの会社がこぞって、アク セサリーを作ったが、その中で当時最もよく知られていたものが” DataGlove”というVPL社の製品である。 ・ 「The Power Glove」(1989) 任天堂によって開発されたVRアクセサリーである。これは、当時にお いて価格が安く、家庭に普及したVR製品の中心になっていった。 <1990 年代前半>:凋落一歩手前 1990年代前半には、VRという言葉自体が本・雑誌・ニュースレターに焚 き付けられたために、非常に有名になった。それは、マスメディアが好奇 心から注目したのと同時に、VR研究者も技術的なことは話さず、メディア に対しては広告だけしていればいいという態度を取ったためにであった。 そのお陰で、MITやワイオミング大学などでの研究体制が一気に整った。 しかし、研究の進歩とは無関係に、期待感ばかりが先行したため、1990年 代後半にはVR市場の凋落が訪れることになる。 ・ 「Virtuality 1000CS」(1991) イギリスにベースを持つ会社のグループが、アーケードヘッドセット を生産した。この後ぐらいから、VRはメディアの報道のメインストリー ムになっていった。 ・ 「Lawnmower Man」(1992) Lawnmower Manという映画は、大衆に初めてVRの存在を紹介した。そ の映画では、Pierce Bronsan演じるVRセラピーを研究する科学者とJeff Fahey演じる精神的な障害を抱えた患者が主人公であった。この映画は、 かなり現実とはかけ離れているが、モデルとなったのはVPLのような会 社だった。 凋落期 見向きされないVR 1993年を過ぎたころには、VRバブルは弾けるとの見方が強まっていった。 HMDマーケットは徐々に崩壊していき、HMDやVR関連製品は芸術・映画・研 究以外の用途では使われなくなっていった。Mark Bolas’s Fakespaceや Silicon Graphicsのような企業はビジネスに残り続けたが、ビジネスにお ける地位を大きく下げた。一度は未来の代名詞であったVRも、インターネ ットに入れ替わり、全く見向きもされなくなっていった。 ・ 「Cyber Maxx 2.0」(1995) VictorMaxx technologiesは、本製品を、それぞれ180k ピクセルをも つ2つの発行するLCDパネルをもつと宣伝していたが、889$と一般用には 高すぎたため、マーケットにはなんら変化をもたらさずにマニアックな 人向けの製品となった。Business Weekも既に、VRは広告しても無駄で あると結論づけてしまっていた。 ・「Virtual Boy」(1995) 本製品は、任天堂が開発したもので、「Virtual Boy」は「テーブル 型ゲームのアクセサリー」として売り出された。しかし、アクセサリと して開発したためか、HMDが頭部をトラッキングできないなどそもそも VRの技術が低く、殆どVRを想起できないとクレームが頻発した。結局、 日本と北アメリカの一部でしか売り出されず、翌年には本製品の生産ラ インは打ち切られた。 ・「Virtual Reality Therapy」(1996) HMDやゲームアクセサリとしても生き残ることの出来なかったVRは、 脚光を浴びやすい経済的な表舞台からは去り、医療や建築などの分野に 細々と残り続けるようになる。1996年には、VRを用いた精神療法などが 試験的に試され始める。しかし、技術的にはまだまだ現実との感覚との 乖離が激しく、本格的な運用には程遠い状態が続く。 <2000年代>:インターネット発展の影で 2000年代に入っても、相変わらずVR関連会社は、実用的な利益を上げる ことが出来ていなかった。VR技術を最も利用するのは、軍関係のみとなり、 3Dグラフィックは発展したが、並列してVRが語られることは殆ど見られな くなった。この間インターネットが猛烈に発展し、VRの出力機能をインタ ーネットに任せることの出来るようになるまでVRは表には出てこなくな る。 再興期 VRの復権 最近の更なるIT技術の進歩によって、機械と人間の距離はどんどん近づ いている。日本の中学生・高校生からパソコンを持ち、10代・20代のスマ ートフォンの普及率は90%弱にまで高くなっている。全体での普及率も 60%を超え、いよいよネット全盛になってきた。その中で、ネットという 特殊な空間にもっとも深く繋がることが出来る技術がVRだと言える。 VR全盛前夜となってきた2012年以降の動向を振り返っておく。 <2012年>:Oculus Riftの参上 2012年8月1日、Palmer Luckeyという若い起業家がoculus rift(オキュ ラスリフト)という名のVRヘッドセットを売り出すことを明らかにした。 この発表によって、10年以上も埋もれていたVRが再発掘されることになっ た。しかも、スマートフォンの普及によって手元でVRを再現できるように なっており、いよいよ潜在技術としてのVR技術が身近なものになるのも時 間の問題となってくるのではないかと思われる。 <2013年>:ゲーム産業へ 2013年に開催された特筆すべきVRのイベントとして、「GDC 2013」が挙 げられる。「GDC2013」は、「Game Developer Conference 2013」の略で、 世界最大のゲーム開発者会議です。このイベント自体も、近年はソーシャ ル・ゲームやモバイルゲームの比率が増えているようだ。Oculus Riftも ここに出品しており、VRゲームを切り開いていく姿勢が見られる。 <2014年>:開発者のハートを鷲掴み 例えば、2014年の1/24~1/26には、東京工科大学八王子キャンパスで 「Glocal Game Jam 2014」、通称「GGJ 2014」が開催される。この「GGJ」 というのはIDGA(国際ゲーム開発者会議)が毎年開催しているもので、グル ープとなってゲーム開発を行うイベントである。「GGJ2014」になると Oculus Riftのゲームが開発されるなど、ゲームとして開発者のこころを つかみはじめる。 また、2014年3/17~3/21に開催された「GDC 2014」では、Oculus Riftの 「Developer Kit 2」が発表され、1080pixの高解像度や平行6軸トラッキ ング、大幅な遅延低減に成功した新しい「Oculus Rift」の姿を現した。 そして、2014年9月には、Oculus VR初の開発者カンファレンスである 「Oculus Connect」が開かれた。ここでは、Oculus Riftが新しいモデル であった「Crescent Bay」を発表したり、Oculus Researchという部署を 新設したOculusの姿勢が見えてくる講演を行われた。また、開発者同士で アプリ開発をどう進めていくかということに関しての議論などが行われ た。 こうして、2012年から2014年にかけて、Oculus Riftの動向を簡単に追 ってみた。当然、他にもSONYやSamsungも追従しているが、やはり際立っ ていて代表的なOculusが最もスピードの早い展開を見せているため、 Oculusを追いかけた。これからも、様々な進化を遂げるであろうVR業界を 追いかけるための参考にしてもらいたい。 バーチャルリアリティを構成する技術 バーチャルリアリティの技術を構成する要素には、コンピュータ科学、 ロボティクス、通信、計測工学と制御工学、芸術や認知科学などが含まれ る。また、その応用は、科学技術における情報の可視化 (Scientific visualization)、ソフトウェアの構築、セキュリティ、訓練、医療、芸術 などと幅広い。例えば、VR に関する IEEE や ACM の国際会議などでは次の ようなセッションが準備されている。 情報の取得と提示のシステム 分散処理システム・インテリジェントシステム 人物や物体のトラッキング ヒトの知覚 インタラクションと共同作業 シミュレータ 拡張現実、複合現実 ナビゲーション CSCW (Computer supported cooperative work) CHI/HCI (Human-computer interaction) バーチャルリアリティの目標は、疑似体験のリアリティ(現実感)を高 めることにある。リアリティを高めるために、次に挙げる両面簿アプロー チが求められる。 1. ユーザーの五感を刺激する出力装置の性能を高めてゆく。 2. ユーザーの反応を感知する入力センサも増やす。 ユーザーの感覚と仮想空間との関連性をどれだけを増やしていけるか、 またそれらの密度、精度をどれだけ高めていけるかがこれからの課題であ る。 ディスプレイサブシステム 人間の感覚を介して周辺環境情報を人間に提示するシステムのこと。 ディスプレイサブシステムには、次のようなものがある。 ・ 視覚ディスプレイ 仮想的な視覚情報を出力する。ちなみに人の視野角は 80 度(180 度: 眼球運動、240 度:両眼)でこの範囲の情報を立体映像で出力する。 視覚ディスプレイとして次のようなものがある。 没入型の投影ディスプレイ 高精細の立体視プロジェクタを用いることで、没入感の高い広視 野の仮想世界を提示しようという技術である。没入感(Immersion) とは、利用者が映像世界の中に入り込んでいるかのような感覚を得 られることを意味しており、バーチャルリアリティの重要な構成要 素の1つと考えられている。 CAVE(Cave Automatic Virtual Environment) これは 10×10×9 フィート(1フィート=30.48 センチメートル)の 大きさの部屋状の空間の正面、左右、床面を、それぞれプロジェク タによる立体映像のスクリーンとして利用したシステムである 頭部搭載型ディスプレイ ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着ディスプレイ、Head Mounted Display、HMD)は、頭部に装着するディスプレイ装置 のことである。ウェアラブルコンピュータの一つ。スマートグラス とも呼ばれる。 両眼・単眼に大別され、目を完全に覆う「没入型」(非透過型) や「透過型」といったタイプがある。3D/2D にも分類できる。 外の世界を完全に見えなくし、ヘッドフォンと併用して「視覚」、 「聴覚」を制御できるようにすれば、より完全に近い「バーチャル リアリティ」を実現できる。 ・ 聴覚ディスプレイ 聴取者の左右の頭部伝達関数(Head-Related Transfer Function) を正確に模擬し、音源に対して畳み込み演算を行うことにより、任意 の位置の仮想的な音像を聴取者に与えることが可能になる。このよう なシステムは聴覚ディスプレイシステムと呼ばれる。 人間は音を聴取することによって、臨場感を得ることができ、高次 感性情報を含む感覚をも得ることができる。 ・ 前庭感覚ディスプレイ 前庭感覚とは、主に重力と関係する感覚的な動きである。 前庭感覚がないと、平衡感覚がなくなり、体のバランスを保てなくなったり する。 前庭感覚ディスプレイの例として次のようなものがある。 次の前庭感覚ディスプレイは、可動座席、2 次元下肢部駆動ボード、足裏 刺激提示装置で構成されている。可動座席は上下並進運動と、ピッチ、ロ ールの回転運動ができる。2 次元下肢駆動ボードはボード上に足裏面を設 置することで、体験者に足の運動と地面の運動を疑似的に提示することが できる。足裏刺激提示装置は歩行時などの足裏の地面に対する接触時の 皮膚感覚の提示を行う。 ・ 味覚ディスプレイ シンガポール国立大学のニメシャー・ラーナシン博士は、舌の先端に銀 でできた電極を当て、その電極に微弱な高周波電流を流し刺激を与えるこ とで、仮想的に「味」を体感できる味覚再現システムを開発した。 通常、人間の味覚は、舌の表面にある舌乳頭の味蕾(みらい)という 感覚器に食べ物が接触し化学反応を起こすことで生じるが、ラナーシ ン博士は、舌に温度変化と電流変化による刺激を与えることで、脳に 「仮想的な味覚」を発生させることに成功した。現在のところ、ラナ ーシン博士の研究チームは、5 つの基本味のうち、 「うま味」を除く、 「甘み」 「酸味」 「塩味」 「苦味」を再現することに成功している。 ・ 嗅覚ディスプレイ 嗅覚ディスプレイとは香りを人に提示する装置である。数十種類の香り のもと(要素臭という)を任意の比率で混ぜ合わせて調合し、すぐに香りを 発生させる。 嗅覚ディスプレイはこれまでパソコンの画面に合わせて香りを発生させ る「香る映画」、「香るアニメーション」、「香る料理体験ゲーム」など様々な コンテンツに応用されてきた。香りの調合ツール「EZ Blender」は、調合・ 再生が容易に行える。 他にも、物体の感触を近くする力覚ディスプレイや、動作の挙動を体感で きるモーションディスプレイがある。 センササブシステム シミュレーション条件を決定するために、人間の位置、姿勢、運動など を計測する。 ・ 空間位置センサ HMD やデータグローブに装着して、3 次元空間位置や姿勢を検出する装置。 コイルに発生する磁界を利用する磁気センサが主流である。その他にはレーザ ジャイロ、画像センサ、超音波センサがある。 ・ データグローブ 指の曲げ具合を測定するデータグローブにとっての基本的な機能も、そ の取得の程度はいくつかに分かれる。n 本の指の曲げ量を n 個の数値とし てのみ出力する単純なものから、各指の関節ごとに測定するもの、さらに それらに加えて、各指同士の距離または開き角度を測定するもの、手の平 の曲がり具合を測定するもの、手首の曲げを測定するものなどさまざまな 段階がある。また、指の曲げ具合等を測定する基本的な機能に加えて、モ ーショントラッカー装置を取り付けることで、手のピッチ、ヨー、ロール といった角度情報と X、Y、Z 軸方向での座標情報も測れるようになる。 データグローブに主に使われている技術の一つに樹脂製光ファイバ方 式がある。この方式は手袋の外面に樹脂製の光ファイバを這わせ、手元の 発光部からの光が指の屈曲に応じて漏れることで減少した光量を指先で 折り返され戻ってきたもう一端の受光部で測り、指の屈曲度合いの情報を 得る。 測定すべき屈曲部で特に漏れが大きくなるように作られ、各指の 第 1 指と第 2 指に対応する 2 往復のファイバが手袋に内蔵される。この形 式のものは親指を含む指同士の距離関係や、手の平の曲がりは計測しない。 手の大きさは各人で異なり、光の漏れ具合は装着者ごとに異なるため、使 用開始時にキャリブレーションが必要になる。また、他に歪みゲージ方式 や磁気センサ方式がある。 ・ データスーツ スーツ内の光ファイバの透過率変化により、 人間の体の動きを検出 シミュレーションサブシステム シュミレーションサブシステムとは、バーチャルリアリティで再現する 人工的な現実感を出力するシステムのことである。シュミレーションサブ システムで表現できる仮想的な世界は様々な物があり、バーチャルリアリ ティの使用用途として色々なものが考えられている。 これからのバーチャルリアリティ バーチャルリアリティは防災への利用も考えられており、めったに起こ らない大災害を体験する訓練が可能になる。これまでの訓練演習では、発 生確率の低い大災害のシミュレーションを行うことはほぼ不可能だった。 VR の訓練を受ける人は、環境がどのように変化していくかを体験しなが ら慣れることができ、危険な状況を乗り切る能力に自信が持てるようにな る。 また、法執行機関でも特に犯罪捜査の現場で、捜査官が実際に犯罪現場 に出向く必要があったこれまでとは違い、現場の VR モデルを構築するこ とができる。犯罪現場に人の手が入る前にレーザースキャナや高解像度カ メラでその場をスキャンし、現場がそれ以上荒れるのを防ぐ。現場捜査が 打ち切られ、かなり後になった段階でも、この技術で犯罪現場を再検証で きる。 医療では、内視鏡でみるのと同様な、 人の器官内などの映像を仮想空 間に再現するシステムが開発されている。 これは、MRI や CT スキャン により取得した人体特性データを 3 次元 CG で再現する技術だ。 胃など の内視鏡検査は、準備も含め約半日かかり、患者の負担もそれなりにある。 しかし、このバーチャル内視鏡システムでは、 データ取得に 20 から 30 分かかるだけで、患者の負担はほとんどない。 ゲームとして、 「The VOID」という仮想現実ゲーム施設が現在米国で開 業準備中となっている。視界を覆う VR ヘッドセットに加えて腕と手先の 動作を認識するグローブ、 振動や打撃を感じるベストを身につけて、約 330 平方メートルのステージ内を実際に歩いて体験する。 約 18m 四方のステージ (Gaming Pod) には安全のため発泡樹脂で覆われ た床や可動式の壁、実際に操作できるドアや各種の仕掛けがあり、プレー ヤーたちは VR ヘッドセットに映る仮想世界を目にしつつ、実際に歩いた り触れたり、武器を振るって全身でゲームコンテンツを体感できる。 (上)VR ヘッドセット装着予想図 (下)VR ヘッドセットで見たときの予想図 参考文献 歴史 http://sign.jp/ae265928 http://e-words.jp/w/VR.html http://hacosco.com/ https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsao1972/23/6/23_6_1181/_article/-ch ar/ja/ http://journal.vrsj.org/16-1/s42-43.pdf http://vr-magazine.com/category/vr%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8 F%B2 バーチャルリアリティの技術 http://ns.flash.tuis.ac.jp/~sasama/lect/vs/vs11.htm 頭部装着ディスプレイ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%83%E3%83%89%E 3%83%9E%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%87%E3%8 2%A3%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4 前庭感覚ディスプレイ http://mgikta.sd.tmu.ac.jp/2012J/kawamata.pdf 嗅覚ディスプレイ http://silvia.mn.ee.titech.ac.jp/research/odordisplay/odordisplay.htm 味覚ディスプレイ http://gigazine.net/news/20131125-taste-simulator-digital-lollipop/ データグローブ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF% E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%96 http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1504/01/news009.html http://japanese.engadget.com/2015/05/10/vr-the-void-2016/ http://easy.mri.co.jp/20000523.html ナノマシン 三回生 足立望 一回生 森本冬海 調べるに至った経緯 ナノマシンについて、詳しい知識がある者はそうそういないでしょう。 そうでない人間と言えば、専門家ぐらいではなかろうか。この研究発表会 の研究テーマに「ナノマシン」を選び調べるまで、私はナノマシンについ て全くと言ってよいほど何も知らなかった。この資料に目を通している皆 さんもまた、無知に等しいことと思います。 ところで、ナノマシンという言葉ぐらいは聞いたことがあるでしょう。 漫画やアニメ、SF 映画で度々目にすることがあることと思います。私は アニメを見ることが好きです。これまでに見てきた作品の中にも、ナノマ シンの登場する作品がいくつかあった。例えば、「銀魂(図 1)」「カウボ ーイビバップ(図 2)」がある。皆さんは、このような漫画やアニメといっ た作中に登場するナノマシンに心惹かれたことはないだろうか。私は、ナ ノマシンに魅了された者の一人である。それゆえに、この研究発表会の研 究テーマに「ナノマシン」を選んだと言ってもよいだろう。では、なぜこ んなにもナノマシンに興味が湧いたのか。おそらく、それは私自身ナノマ シンについてよく分かっていないからだと推察している。 宇宙について想像してほしい。宇宙に行ってみたいと思い馳せたことが 誰しもあると思う。見渡す限りの闇の中を点々と光り輝く星は、とても神 秘的であろう。その神秘性に拍車を掛けているのが、宇宙の未知性である と考える。よく分からないからこそ、人々はその分からないものに夢を感 じるのだと思う。それは、ある種の憧れと言ってよいだろう。 ナノマシンもまた、宇宙と同じことが言えるのではないだろうか。私が ナノマシンに惹かれるのは、多くの人々が宇宙に抱く夢や憧れと同じだと 思う。 ※「銀魂」、「カウボーイビバップ」両者ともに面白い作品であるため、 みなさんに是非観てもらいたいと思う。 図 5 図 6 ナノマシンについて ナノマシンという言葉は、文字通り「ナノ」と「マシン」に分けること ができます。ここで言う「ナノ」というのは、nm(ナノメートル)単位の大 きさのことである。1nm(ナノメートル)は 10-9m、0.000000001m を指す。 また、「マシン」は機械のことである。つまり、ナノマシンというのは nm 単位の大きさを有する機械ということになる。 機械としてナノ単位の大きさを実現するために、ナノマシンは分子を組 み合わせることによって作られている。従来、機械というのは、トップダ ウン的に作られている。簡単に言えば、大きな材料を加工し、そこから本 来の材料より小さいものを作るということだ。初めてナノマシンの概念を 提唱したアメリカの物理学者ファイマン(Richard Phillips Feynman)は、 トップダウン的にナノマシンを作成することを考えた。ファイマンについ ては次頁「ナノマシンの歴史」について述べることとする。しかし、現代 の技術ではトップダウン的な方法によってナノ単位の機械を作ることは 不可能だとされている。そのため、機械は従来トップダウン的に作られて いたのが、ナノマシンではボトムアップ的に作られているのだ。大きなも のから小さなものを作るトップダウンに対して、小さなものから大きなも のを作るのがボトムアップである。ナノマシンは、原子や分子を組み合わ せることによって構成された大きな集合体を指す。このようなナノ領域の ものを扱えるようになったのは、近年幅広く研究が進められているナノテ クノロジーによる恩恵と言えるだろう。 また、車といった世間一般で言うマシンは、電気やガソリンをエネルギ ー源とするのに対して、ナノマシンは化学反応等によって駆動するのだ。 ナノマシンが極めて小さい機械だということは分かっていただけたと 思う。よりその大きさを実感してもらえるよう、他のものと比較すること にしよう。 図 3 を参照していただきたい。 実際、 ナノマシンは 10nm~100nm の大きさを有している。DNA は 1nm、タンパク質は 10nm、インフルエ ンザウイルスが 100nm ある。細菌は 1000nm、つまり 1μm(マイクロメ ートル)程の大きさがある。赤血球は 10μm、人間の髪の毛の直系が 100 μm。 野菜の種や昆虫の卵は 1000μm、 つまり 1mm の大きさなのである。 他のものと比較することで、ナノマシンがどれほど小さいものであるかわ かっていただけただろうか。 図 7 歴史 「ナノマシンについて」でも述べたが、初めてナノマシンの概念を提唱 したアメリカの物理学者ファイマン(Richard Phillips Feynman)である。 図 4 の人物がそれにあたる。彼は、1959 年にカリフォルニア工科大学で 「原子レベルには発展の余地がある」という講演を行う。そこで初めてナ ノマシンについて取り上げた。一般的な工具を加工し、1/4 サイズの工具 を作る。さらに、それを加工して 1/16 サイズの工具を作るという工程を 繰り返す。図 5 をご覧になれば、理解していただけると思う。この工程を 繰り返すことによって、ナノサイズの工具ができると彼は考えた。しかし、 現代の技術ではこのようなトップダウン的にナノ単位の機械装置を作る ことは不可能だとされている。ナノ領域の世界において通常の機械装置に 重要な働きを示す重力や摩擦力は小さくなる。逆に、分子間に働く力や静 電気等の影響を大きく受けるようになる。つまり、ファイマンの述べる方 法でナノマシンを作成するならば、ナノ領域の世界における機械工学の進 展が必要なのだ。 1974 年に日本の谷口紀男(図 6)が生産技術国際会議で「ナノテクノロジ ー」という造語を用いる。それから派生して「ナノマシン」という造語も 誕生する。ナノマシンという言葉は日本で生まれたと言っても過言ではな いだろう。しかし、我々は日本人でありながら、それを知らない人がほと んどだろう。 図 8 図 9 図 10 医療 ナノマシンは主に医療分野での活躍が期待できる。現に 2014 年 4 月 2 日、東京大学大学院教授の片岡一則が高分子ミセルをベースとした光応答 性ナノマシンの開発に成功した。テレビ番組で特集が放送される等、話題 となっている。ここでは片岡教授が開発したナノマシンに焦点を当ててい きたいと思う。 片岡教授が開発したナノマシンは一体どのような有効性があるのだろ うか。このナノマシンは、がん治療薬として開発されたものだ。がん治療 をナノマシンが行うことには以下のような長所が挙げられる。 ・手術をする必要がない(医者の技術に頼らなくてもよい)。 ・病巣に到着するまでに効能を失わない。 ・副作用がない。 治療薬を投与するだけなので、手術によってがんを除去しなくてもよい。 つまり、がんの除去手術がより高度なものであったとしても、医者として の技術、精密な手作業に頼る必要がなくなったのである。 ナノマシンと違って、私たちが飲む抗がん剤の多くは胃や小腸を経て肝 臓に送られ、細胞に吸収されやすいように分解される。そして、血液によ って全身に送られるのだが、病巣に到着するまでに薬の成分が効能を失っ てしまう。また、血液によって全身に薬の成分が行き渡ってしまうため、 正常な細胞にも効果が働き、副作用を起こしてしまうのだ。なぜ、ナノマ シンではそういったことが生じないのかは後に説明する。 図 7 のように、このナノマシンは水に溶けやすい親水性部分と水に溶け にくい疎水性部分を持つ高分子からなる。さらに、疎水性部分に抗がん剤 を結合させている。この紐状の高分子化合物を水や血液に溶かすと、疎水 性部分が水や血液を避けて中央に集まる。抗がん剤を内部に凝集した高分 子の集合体、高分子ミセル(図 8)になる。 図 11 図 12 人間の身体の中には、異物を見つけ処理する細網内皮系という細胞がい る。高分子ミセルもまた、その細胞によって分解されてしまう可能性があ る。それを防ぐために、高分子ミセルの表面を修飾し生体適合性を高めて いるのだ。そして、投与された高分子ミセルが細網内皮系によって分解さ れずに血管内を移動できる。先ほど挙げたナノマシンの長所「病巣に到着 するまでに効能を失わない」はここにあると言っていい。 次に、長所の「副作用がない」ことについて説明する。血管には小さな 穴が開いている。高分子ミセルは、この穴を通り抜けられないような大き さに設計されている。しかし、一般的な抗がん剤は高分子ミセルと比較し て小さい。一般的な抗がん剤は、この穴を通り抜けて全身の細胞に作用し、 副作用を生じさせる。高分子ミセルは、血管内の穴を通り抜けないので、 全身の細胞に作用することがない。 がん細胞は急激に成長し増殖するため、血液中から栄養を取り込む必要 がある。よって、がん細胞の周囲のみ血管内に空いている穴は、正常な血 管と比べより大きくなる。図 9 が正常な血管で、図 10 はがん細胞周辺の 血管である。高分子ミセルは、正常な血管内にある隙間を通り抜けること はできないが、がん組織周辺にある血管内の隙間は通ることができる。副 作用なく、がんを治療することが可能なわけである。がん組織周辺血管内 の穴は約 100nm ある。高分子ミセルが 10nm 以下の場合、腎臓で排出さ れてしまう。そのため、10nm~100nm の大きさに設計がなされている。 図 13 図 14 がん細胞に辿り着いた高分子ミセルは、内包している抗がん剤をがん細 胞放出しなければならない。しかし、薬剤耐性のあるがん等の場合には、 外敵から自分を防御する機構が、がん細胞自身に備わっている。例えば、 抗がん剤を使用したとする。抗がん剤は、がん細胞の核に到着する前に、 タンパク質によって薬効を不活性化(薬の効果がなくなる)される。 がん細胞が外敵から自身を守る機構には、他にもエンドソームという膜が ある。これは、細胞内に取り込まれた様々な物質の選別、分解をする。高 分子ミセルが、がん細胞に侵入したとしても、異物としてエンドソームに 包み込まれてしまって薬剤が効かない。エンドソーム中の pH(水素イオン 濃度を表す)は、 がん細胞の核に近づくにつれて低下し、 pH が約 5 になる。 そこで、約 pH5 に低下した状態の時に、高分子ミセルが壊れるよう作ら れている。高分子ミセルに内包された抗がん剤が、エンドソームの膜を破 りがん細胞の核に向かって放出される。これらを分かりやすく説明したも のが以下の図 11 である。 図 15 片岡教授は、この高分子ミセルのナノマシンをギリシャ神話のトロイの 木馬になぞらえている。巨大な木馬から多くの兵士が現れ、トロイを全滅 させる。体内の防御システムに気づかれずに血液の流れに乗ってがん細胞 に辿り着いたナノマシンが、そこの環境を感知して抗がん剤が一斉に放出 され、がん細胞を滅ぼす様はまさにトロイの木馬と言えるだろう。 最後に ナノマシンの開発を可能としたのは、極小な分子等を自在に扱うナノテ クノロジーに他ならない。ナノテクノロジーという分野は開拓されたばか りの新しい技術である。ナノテクノロジーの代表的な産物であるカーボン ナノチューブは、約 20 前に構造が解明されたばかりなのだ。カーボンナ ノチューブは、アルミニウムの半分の軽さでありながら、ダイヤモンドよ りも硬く、高度な弾性力を有している。このようなナノ技術を利用するこ とで、パソコンでは小型化、高速化、大規模容量化を図ることができる。 しかし、新しい技術だけあって未だに研究が進んでいないことが多々ある。 非常に高い将来性を有していると言える。ナノテクノロジーの研究が進む ことは、ナノマシンのさらなる進歩にも繋がるだろう。現状では、外部か らの指示を受けて動作するナノ単位の機械装置を製造することは不可能 である。つまり、私たちの考える SF 映画等に登場するようなナノマシン の開発はまだまだ先の話だ。ナノマシンによる自律的な治療、人間の体内 で臓器や骨の再生、精密な診断が実現する日がいつか来るかもしれない。 参考文献 http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/26396/1/rgn 36_3_5.pdf http://www.terumozaidan.or.jp/labo/technology/23/index.html http://www.ampo.jp/movies/vol59 http://www.audi.jp/innovator/ism/i_04/index.html https://note.mu/mizunohiroyuki/n/n63815692729d オンラインゲーム ソフト班 知能情報学部 ソフト班 法学部 2回生 3回生 村松 呉 堯 寛哉 1.オンラインゲームとは オンラインによるコンピュータネットワークを介して専用のサーバや 他のユーザのパソコンやゲーム機と接続し、複数の人と同時に参加して行 われるゲーム全般、もしくは、そういったゲームの内容や形態を指す言葉 である。略して、オンゲー、ネットゲーム、ネトゲとも呼ばれる。 「ポケ モン」や「ぷよぷよ」のようなオンライン対戦プレイのような非同期型の ゲームも呼ばれることがあるが、一般的には MMO と呼ばれるリアルタイム で進行する多人数参加型のゲームを指して呼ぶ場合が多い。インターネッ トが普及した後のオンラインゲームは、ほとんどインターネットを介して 接続するようになっているが、それ以前にも、LAN 環境を利用したり、ダ イアルポップ接続でアクセスしたりするものは存在した。古くは、専用機 による囲碁や将棋などの遠隔対局システムもあった。 2.オンラインゲームの種類 現在、一口にオンラインゲームといっても多くのジャンルが存在する。一 昔前までは MMORPG と呼ばれるジャンルのゲームが主流だったが、現在で はオンライン RTS(MOBA)や、ソーシャルゲームなどが主流になりつつある。 ジャンルごとの違いと簡単な仕組みをまとめてみた。 ・MMORPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game) 日本語で言うと大規模多人数同時参加型オンライン RPG という。ホストコ ンピューターの方に一つの世界を構築し、プレイヤーはパソコンにインス トールされたソフトなどを通じて自分のキャラクターを操作する。他のプ レイヤーと一緒に遊べる事がポイントであり、ゲーム内ではギルドやパー ティなどと呼ばれる集団が実装されている事が多い。主要なタイトルは World of Warcraft(Blizard)で、プレイヤーは 770 万人にものぼる。 ・FPS(First Person Shooter) 一人称視点のシューティングゲームで、主人公である本人がゲーム内の空 間を自由に移動できるのが特徴。MMORPG と同じく、ネットワークを介した 対戦モードが主なコンテンツである。このようなジャンルのゲームはパソ コンやゲーム機のスペックよりも、契約しているプロバイダなどで勝敗が 決まってしまう事がある。つまり、個々のマシンとサーバー間ネットワー クラウンドトリップと呼ばれるコンマ数秒の遅延が決定的な差につなが る場合が多い。他にも、ゲームシステムを外部から改変して、チート(不 正行為)を行うプレイヤーも問題視されている。対策のためにアンチチー トソフトが導入されているゲームがほとんどだが、検知されないツールを 使うなどイタチごっこの状態だ。代表的な FPS は、Call of Duty シリーズ に代表するリアル系 FPS や CounterStrike シリーズなどに見られるスポー ツ系 FPS に分類することが出来る。 (左)一般的な MMORPG のゲーム画面(WoW)(右)一般的な FPS。伝説的マップ の Dust2 だ ・MOBA(Multiplayer online battle arena) そもそも MOBA というのは RTS(リアルタイム戦略ゲーム)と呼ばれるジャン ルの派生で、最初期はプレイヤーによる MoD(改造データ)や熱心なプレイ ヤーが自らカスタムすることによってプレイされてきた。RTS では採集や 建設が主な要素だが、MOBA と呼ばれるゲームではそれらを除外し、RPG に 見られるレベル制や装備品といった要素を持つキャラクターが、アクショ ンゲームのような能力を使って相手と戦うものになった。 (画像)MOBA とは、画像のようなマップで行うものが大半である。5 人対 5 人のチームに分かれ、相手の本拠地を破壊するか、敵が降参することでゲ ームに勝利する。内容を説明すると長くなるので割愛する。 初めはゲームそのもののとっつきにくさと、複雑なルールやマッチング (対戦)の面倒さでマイナーなジャンルであった。しかし、2006 年に Riot Games 社によって開発された League of Legends(以下 LoL)は、複雑なルー ルを簡略化し、プレイヤーの実力を数値化するレーティングシステムを参 照することで、レーティングが近い人同士でプレイできるオートマッチン グシステムを導入し、さらに Free to play(基本無料)をで運営したことに よってゲームの参入敷居を低くした。これらの要素によって、今ではプレ イヤー7000 万人、平均同時接続者 750 万人を超える世界で一番プレイヤー が多いゲームとなった。尚、日本では知名度が低い。 ・ソーシャルゲーム 最初はオンライン・ブラウザゲームが主流で、専用のクライアントソフト を必要とせず、ウェブブラウザだけで遊ぶことができた。ゲームの特徴と して、気軽に短時間で遊べるものが多く、基本無料(アイテム課金)の形態 が多い。パズルアンドドラゴンなどのスマートフォン向けアプリもソーシ ャルゲームと呼ばれる事があるが、ウェブブラウザを使ったものではない ので、厳密にはソーシャルゲームとは言えない。スマートフォン向けのア プリはネイティヴアプリと呼ぶ。 3.オンラインゲームの仕組み ○接続形態 ・クライアント・サーバ型 某ゲーム、 「メイプルストーリー」や「PSO2」など、企業が管理してい るゲームサーバにインターネットを介してパソコンやゲーム機器等のク ライアント端末で接続し、ゲームをする方式である。インターネットを通 した接続が大前提となるのでゲーム端末にはインターネットに接続する ためのネットワークカードやインターネットに接続するための IP アドレ スが必要になる。プレイヤーの操作はネットワークを経由してサーバーに 伝わり、その結果がネットワーク経由で端末に戻ってきてゲーム画面に表 示される。つまり、ゲームのシステムは、インターネット上にある「ゲー ムサーバー」とゲーム端末にインストールされた「クライアントソフト」 が一体となって動作している。サーバーの運営はゲーム運営会社に任され ており、メンテナンスなどでサーバーが停止している時間は遊ぶことがで きない。 ・P2P(Peer to Peer)型 ネットワーク上で利用者間を直接つないで、データを送受信する通信方 式である。 「ポケットモンスター」や「モンスターハンター」のような P2P 型接続のゲームは、もともと専用ケーブルでゲーム機をつないでいた仕組 みの延長であり、ゲーム機同士が一時的に通信(アドホックネットワーク) できれば遊べるようにできています。接続の形式はゲーム機によって異な り、特に規定はない。ゲームのプログラムはゲーム機で動いているソフト で完結するので、接続さえできればいつでも遊べるのが、クライアントサーバー型のゲームとの大きな違いである。 現在、任天堂では、公式のサービスとして、3DS や WiiU で、Wifi を使 って離れたところにいる人と P2P 接続型のゲームを遊ぶためのサービスを 提供している。 ○通信技術 オンラインゲームをプレイしていると、ゲームの進行が全体的にスローモ ーションになってしまったり,当たったはずの攻撃が外れてしまったりと いった現象が起こる。いわゆる「ラグ」という通信遅延だ。ラグが頻繁に 発生する環境では,ゲームでまともに遊べなくなってしまう。一言でラグ といっても,それを引き起こす要因には次の三つのケースがある。 ・遅延 これは文字通りの通信遅延のことで、ネットワーク的な距離があまりに遠 いため,応答に時間がかかってしまうケースなどを指している。この応答 速度は ping というコマンドで計測することが可能で、その値はネットワ ークゲームの快適さを示す,一つの指標といっていいだろう。当然応答は 早いほうが良く,実際の応答速度は,LAN 環境では1~2ms、インターネッ ト回線においては、数 ms から数百 ms といったところだ。 ・帯域 帯域は回線の「太さ」を表す指標のこと。よくインターネットのスピード を示す単位として使われているのがこの数値で、LAN 環境では 100M~ 1Gbps,最近はインターネットでも,光回線なら 50Mbps くらいは出たり する。ただ携帯電話の 3G 回線なども対象にする場合には、大体 200~ 500kbps くらいなので、低いほうに合せてゲームを設計する必要がある。 ・パケットロス パケットロスは通信の内容が,途中でどこかに行ってしまって届かない現 象のことをいう。いわゆる通信の安定性というか品質とでも言うべき指標 で,これが頻発する状況だとかなり厳しいことになる。主にサーバーが混 雑しているときなどに起こりやすく,プレイヤー側では,あまりどうこう できるものなかったりする。 具体的には「遅延」が発生していると、画面がカクカクした動きになっ て、気づいたらキャラクターが死んでいた、なんてことが多くなり、「帯 域」が足りないと,例えば MMORPG で人が集まる広場などに行ったとき, 重くて身動きが取れなくなる。「パケットロス」が起こると攻撃したつも りがダメージにならなかったり,頻発するようならそもそもサーバーから 切断されたりといった現象が発生することになる。 では実際のゲームでは,これらのラグに対処し,ゲームを成立させるた めに,どのような工夫が行われているのだろうか。現在のインターネット では TCP/IP と呼ばれる通信方式(プロトコル)が採用されており,そこ では主に UDP と TCP という通信方式が使われている。 ・UDP パケットを一方的に送りつけてそれで終わりという,ごく単純な仕組みの もの。パケットロスなどが発生して相手に届かなかった場合でも判別でき ないので、信頼性は低い。また、後から送ったものが、先に送ったものよ り先に届くこともあって困りものだが,その分処理が速いという特徴があ る。 ・TCP パケットが届かなかった場合には、再送が行われる仕組みになっている。 郵便で言うところの書留のような仕組みで受信の確認が行われるので,信 頼性が高い半面,処理はどうしても遅くなる。メールやブラウザなど,ゲ ーム以外の通信用途では、ほぼこちらの TCP が使われていているのだが, ゲームのような処理スピードがシビアに要求されるものでは、それでは間 に合わない場合がある。 届いたかどうか分からない UDP では,ゲームでも困ることも多い。そこで 考案されたのが、RUDP(Reliable-UDP,Reliable=信頼できる)という仕 組みだ。 ・RUDP 受信の確認はいちいち行われないものの、次に送信するパケットには「こ れまで相手から受け取ったパケットの番号」が記載されることになってい る。相手から送られてきたパケットを見れば,相手がどこまでこちらのパ ケットを受け取っているか分かるので、抜けがあったら再送すればいい。 プレイ中,常に相互に通信が発生するゲームならではの方式といえるだろ う。 また再送が必要な重要なデータと、再送の必要がない、あまり重要でな いデータをくっつけて送るなんてことも可能で、まさに UDP と TCP のいい とこどりの通信方式だ。 4.オンラインゲームの集金形態 オンラインゲームはどのように利益をあげるのか、運営会社によって収益 の上げ方は異なるが、どのような違いがあるのかまとめてみた。 ・月額課金制度 ひと月ごとに定められた金額を課金することで、ゲームがプレイできる 制度である。黎明期はインターネットカフェからの利用が多かったため、 月額ではなく時間単位で料金を支払うゲームが多かったが、インターネッ トの普及に伴い月額課金制度が主流となっていった。料金はおおまかに1 000~2000円であるものが多い。 ・基本無料(アイテム課金)制度 現在、ほとんどのオンラインゲームが基本無料としながら、ゲーム内で 使われるアイテムやキャラクターアバターなどを実際のお金で購入した 仮想通貨で買う場合が多くなった。これらのアイテムはゲーム内の通貨に 直結していることがあり、無料で遊べるとうたいながらも、実際は課金す ればするほど強さに比例するという仕組みだ。ほかに、月額課金制度を導 入しつつも、こういったアイテム課金制度を導入しているゲームも存在す る。 ・ソーシャルゲームの場合 ソーシャルゲームやネイティブアプリなどの場合は、さらに事情が変わ る。基本無料のソーシャルゲームやスマートフォン向けゲームには、「体 力」「スタミナ」と呼ばれる概念がある。それは、ゲームをプレイするた びに消費する数値であり、それを消耗しきると数値が回復するまでゲーム で遊ぶことができなくなる。このように、遊ぶことに上限を設けることに よって、無課金のプレイだと一日数回だけしか遊べないことが多いのだ。 (画像)ほとんどのソーシャルゲームでは「体力」(この場合 ACT)を消費 すると、ゲームが続行できなくなる。数値が回復するにはゲームによるが、 多少の時間がかかる。 そこで、 「体力」の数値を回復させるアイテムや、無課金だと手に入れ ることが難しいアイテムなどをリアルマネー(あるいは仮想通貨)で購入 できる形態が多い。販売されるアイテムは多岐にわたり、後述するアイテ ムくじ(ガチャシステム)も登場することとなる。 ・ガチャガチャシステム ガチャシステムとは、ゲームによって異なることもあるが、一定の金額 を支払い、一定の確率で希少なアイテムなりキャラクターなどを手に入れ ることができるシステムだ。多くはガチャガチャ限定アイテムおよびキャ ラクターなど、他人と差をつけれるもので優越感を得ることができる。希 少性の高いアイテムやキャラが手に入る確率は単なる乱数(数十分の一~ 数百分の一)で決められることが多く、いくら課金しても目当てのものが 手に入らないことがある。以前は「コンプリートガチャ」と呼ばれる仕組 みがあった。これは、ガチャシステムでしか手に入らないキャラクターや アイテムのうち、指定されたものを複数そろえることができれば別の景品 としてさらに希少性の高いアイテムが報酬としてもらえるというものだ。 一見するとお得なように思えるが、この報酬を目当てに際限なくガチャガ チャを回すユーザーが後を絶たず、結果として、このシステムは景品表示 法違反であるとの見解が出され、国内各社でこのシステムは廃止された。 (画像)コンプリートガチャとはこういうものである 5.オンラインゲームの悪影響 ・チート(不正行為) 一般的には、改造ツールと呼ばれるものを使い、ゲーム内のデータを改ざ んすることによって、自身に有利な状況を作り上げるか、他人の権利を侵 害したり迷惑をかけたりする事を言う。例えば、FPS ゲーム(前述)では 壁を透過して向こう側を見ることができるものであったり、自身が操作し ているキャラクターだけが壁を自在に通過でき、なおかつ空を飛ぶことが できるなど、ゲームバランスを著しく破壊するものである。 手法として、オンラインゲームの中にはプログラムの実行結果をファイル にして、パソコンのハードディスクなどに記憶させるものがある。これら を悪意をもった人間が書き換えることもチートに含まれる。これは「デー タファイルハック」といい、プログラムの誤動作を狙ったものがおおい。 ・リアルマネートレード さきほどは現金でゲーム内通貨を購入し、それでゲーム内アイテムを買 うといった事を説明したが、すべてのゲームでは仮想通貨を経なければ運 営会社の定めた規約違反となる。 しかし、プレイヤー間あるいは外部の業者とプレイヤーが、現実の通貨を もって直接アイテムやゲームアカウントの取引をすることがある。時間を かけないと強くなれないゲームでは、時間を節約しつつ、ゲーム内で一定 の地位を確保したいユーザーが多く、リアルマネートレードが頻繁に行わ れる傾向が強い。 また、ゲーム内の通貨を現実通貨で販売する業者も存在する。だいたいは、 業者側が不正な手段で(BOT と呼ばれるチートプログラム)ゲーム内通貨 を稼ぎ、それを商品として販売する。それを購入したいユーザーは web サ イトなどで買い受けの申し込みをし、業者の口座に現実通貨を振り込むこ とによって仮想通貨を受け取るのが一般的だ。日本において、明確な法的 根拠や規制がないため、違法とも適法ともとれない状態が現在も続いてい る。なので、こういった行為が運営によって確認された場合、アカウント 削除を含めた厳正な対応をとられることがある。 参考文献 第93回 ゲームは一人で遊ぶものじゃない http://www.tdk.co.jp/techmag/knowledge/200805/ Wikipedia > オンラインゲーム https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A 4%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0 [CEDEC 2010]ネットゲームの裏で何が起こっているのか。ネットワークエ ンジニアから見た,ゲームデザインの大原則 http://www.4gamer.net/games/105/G010549/20100905002/ Wikipedia > コンピューターゲームのジャンル https://ja.wikipedia.org/wiki/MMORPG MMORPG はなぜ衰退したのか http:/kultur2.blog.fc2.com/ コンピューターゲームの仕組み solalis.com/gamedev-tips-game-mechanism CS:Go Image capture http://esportheaven.com MOBA の発展について(海外サイト) http://www.engadget.com/ 築城技術 文学部歴史文化学科 2回生 西川丈太朗 文学部歴史文化学科 1回生 中川連 経営学部 1回生 乾史弥 城について ・歴史 古代まで 弥生時代の日本には、集落に濠をめぐらせた環濠集落や山などの高いと ころにつくられた要塞集落である高地性集落が数多く存在したが、政治的 統一が進むにつれて衰退した。 城の文献上の初見は、664年に天智天皇が築いた水城(みずき)で、こ の時代には文献に見えないものも含め多数の城が九州北部から瀬戸内海 沿岸に築かれた。また、蝦夷(えみし)との戦争が続いた東北地方では、 7世紀から9世紀にかけて多賀城や出羽柵・秋田城などの軍事拠点と行政拠 点を兼ねた城柵が築かれた。 中世 中世の日本では、武家の平時の居住地への防護と、戦時に険阻な山に拠 る際の防護と、2つの必要から城が発達した。 戦国時代中期から城の数は飛躍的に増大し、平地に臨む丘陵に築いた平 山城(ひらやまじろ)や平地そのものに築いた平城(ひらじろ)が主流と なり、防御には優れるが政治的支配の拠点としては不向きであった山城は 数が減っていく。 近世 中世・戦国時代初期の城郭は、土塁の上に掘り立ての仮設の建物を建て たものがおもであったが、鉄砲の普及によって室町末期から安土桃山時代 には、曲輪全体に石垣を積み、寺院建築や公家などの屋敷に多用されてい た礎石建築に加えて壁に土を塗り籠める分厚い土壁の恒久的な建物を主 体として建設され、見た目も重視して築かれたものが現れた。 こうした城は室町末期以降、特に松永久秀が多聞山城や信貴山城を築い たころや、織田信長が岐阜城や安土城を築城したころに発生したと考えら れている[5]。その後豊臣秀吉により大坂城や伏見城などが築かれ、重層な 天守や櫓、枡形虎口を伴う城門に代表される、現在見られるような「日本 の城」が完成した。この形式の城郭を歴史学上、 「織豊系城郭」と呼ぶ。 織豊系城郭はその呼称で表されるように織田信長、豊臣秀吉麾下の諸大 名がおもに建設したが、日本国内に深く普及したのではなく東北や関東、 四国、九州の戦国大名たちは各地の実情にあわせた城郭を築いている。ま た、これまで城や館の周囲に定住しなかった商工業者たちを織豊系の城で は、城に接する街道沿いの指定された区域に町家を建てさせて常設の市を 開き、領国の経済拠点として都市を設置した。 江戸時代 江戸時代以降の城は、軍事拠点としての意義が縮小し、政治を執り行う 政庁としての意味が強くなる。 徳川幕府により、1つの大名家につき原則1つの城を残して破却するよう 命じる「一国一城令が諸大名に向けて発布されたため、各大名はこれに恭 順して家臣たちの城を破却し、大名の居城の城内や城下に屋敷を与えて集 住させた。 1万石以下の大名は城を持つことが許されず、陣屋と呼ばれる屋敷を建 てて住い、領地支配を行った。 このような陣屋の一部は、江戸末期から 明治初頭において城郭化や拡張が行われたものもある。 近代以降 明治時代に入ると、各地の城郭は、1873年(明治6年)に布告された廃 城令による破却や管理放棄に伴う焼失、更には大日本帝国陸軍による資材 の接収による崩壊などが進んだ。 城跡には引き続き役所が置かれたり、新たに公園や神社が設置されたこ とが多かったが、主要都市ではほぼすべての城跡に大日本帝国陸軍が駐屯 した。それら駐屯地となった城跡は、大東亜戦争中に米軍の標的とされ、 空襲や原子爆弾等により、名古屋城、岡山城、和歌山城、広島城などの戦 前に国宝(現在の重要文化財に相当)として指定されていた天守や櫓、門 など、多くの現存していた江戸時代以前の城郭建築が損失した。現在は、 姫路城や高知城などの現存12天守や、大坂城や名古屋城などに一部の櫓や 門などが現存する。 また、城郭の門や櫓などは、天守に比べれば、火災や戦災を免れて残存 しているものが多く、ほとんどが重要文化財に指定されている。 石垣 •切込み接ぎの乱積(高松城香川県 向かって左の石垣) ・石垣の歴史 石垣は古来からあらゆる文明で見ることができる。その手法も、 自然の石をそのまま積み上げるものや、割った石や切った石を美 しく組み上げて見栄えを良くしたもの、さまざまな種類の石を組 み合わせて力を分散させ排水を良くして堅固にしたものなどが ある。 石垣が築かれる目的は「土地の境界線」、 「国境」、 「防御施設」、 「土地の補強」などである。また城砦、城の建物自体の基礎とし て石垣が用いられることも多かった。欧米では更に城下に造られ た民家の壁も、石を積み上げ漆喰などを塗って造ることがある。 琉球諸島など日本の南方の島々の伝統的な村落では、屋根の上 に石を積み、家屋の周りに石垣を積むことで台風などの強風を防 いでいる。例えば石垣島や竹富島など八重山諸島には、琉球石灰 岩の石垣に囲まれた家々が建ち並ぶ景観が残っている。 古代 日本では古墳時代に古墳の墳丘表面を石で葺かれるようにな るとともに、石室の壁面は石垣を積み上げ蓋石を乗せる構造が見 られるようになる。同様の技術が豪族の居館でも見られ、濠と土 塁で防御された豪族居館の土塁表面は石葺きとなっている。 中世 1274年の元寇の際、1276年までに博多湾沿岸に「石築地(いし ついじ)」と呼ばれる長大な石垣の防塁が構築された。しかしそ の後、再び大規模な石垣は用いられなくなる。 中世の城郭においては、2メートル程の小規模なものが見られ、 近世の城石垣のように防御を目的としたものではなく、主に曲輪 敷地が崩れるのを防ぐために用いられたと考えられている。中世 の石垣技術は寺院の基壇(堂塔が建てられる台)などで用いられ、 その技術が近世以降の城石垣に反映された。 近世 16世紀中葉には、観音寺城で、近世の城石垣の先駆ともいわれ るものが築かれていたと史実上で確認されている。この時に石垣 を手掛けた技術者集団が穴太衆である。穴太衆は織田信長に雇傭 されて安土城の石垣を積んだとされている。その後、西日本を中 心に城郭建築に石垣を用いる事例は増えていった。江戸幕府が再 建した大坂城の石垣は日本最大である。 一方、東日本では概して石垣を持つ城は少なく、特に関東地方 では小田原城や甲府城、江戸城を除くと殆ど石垣は見られない。 これは石垣の材料となる花崗岩の産地が限られていたためで、逆 に花崗岩を容易に採取できる瀬戸内海沿岸には、石垣を持つ城郭 建築が多く残っている。 ・石の積み方 戦国時代以降の石垣は、主に「空積み」(からづみ)という技 法が用いられる。対して、粘土やモルタルなどを練りこんで石同 士を接着する積み方を「練積み」(ねりづみ)という。練積みは コンクリートやモルタルを接着材として石垣施工に用いられて いる近代工法での例が多い。城郭で用いられた例は少ない。 構造 石垣の石は、石垣の出隅に積まれる隅石(すみいし)と法面に 積まれる平石(ひらいし)で構成される。底の部分の石のことを 根石(ねいし)といい、最上部に据える石のことを天端石(てん ばいし)という。 盛り土または既存の斜面に段状の切り目を施し(切り土)、底 にあたる根元に溝を掘って(根切り)根石を置き並べ、砂利や割 栗石という小さく砕いた石を積み石と斜面の間に詰めながら(裏 込〈うらごめ〉)石を積み重ねる。地盤が弱い場合は、根切り部 分に松材の杭を打ち丸太を並べる梯子胴木(はしごどうぎ)とい う基礎を敷いた。松材は、水中に沈めておくとほとんど腐敗せず 長持ちするため、梯子胴木は主に水に接する石垣の基礎に用いら れた。 積む石については、以下に述べるが、無加工であるものや加工 したものも用いる。切込み接ぎや打込み接ぎのように加工した石 を用いる場合は、石同士との隙間が狭まり排水効率が弱まるため 排水路や排水口が通される。 ・石垣の耐震性について 現代の土木技術の視点では石垣の地震時の安定性には大き な問題があるとされてきていた。 城郭などの石垣は、近代工法と違ってモルタルなどを使わない 空石積みであり、現代の土木技術の視点では地震時の安定性には 大きな問題があるとされてきた。しかし、大きな地震を経ても築 造後400年間安定性を保っている石垣は多数存在する。対照に強 固で壊れにくいとされている鉄筋コンクリート製の建築物は地 震や火事で簡単に倒壊してしまう。 ハザマと西形達明(関西大学環境都市工学部准教授、地盤防災 工学研究室)が計測した結果、石垣にはこれまでの研究以上の耐 震性があることが分かった。 その計測とは、城郭石垣の構築・補修において経験豊富な石工 によって、ほぼ実物大の伝統的石垣を大型振動台の上に構築し、 最大で、阪神・淡路大震災の最大加速度(818gal)に匹敵する振 動を加える実験を行った。 実験石垣 (加振前)① 実験石垣(加振前)② 実験結果は、多少のズレや段差が生じることはあるものの、大 きな損害は見られず、伝統的技法による石垣の耐震性はこれまで 考えられていたよりもはるかに優れていることが証明された。 振動により変形した石垣 振動により段差が生じた石垣 コンクリートブロック壁の強度を上回る実験結果もあり新名 神高速道路の一部など道路に使われる場合もある。 ・木造建築 木造建築とは、構造耐力上主要な部分に木材を用いる構造のことであり、 城や寺院などの伝統建築はこれにあたる。 木造建築は、古くから日本人の生活を支えてきた建築方法であり耐火 性・耐震性・耐久性に非常に優れている。 まずは耐火性だが、一般的に木造は火に弱いと考えがちだが、実は案外 火に強い。それは、木が燃えた時はまず表面が炭化し、その断熱効果によ り周囲が高温となっても木の内部にまで燃え進むのを遅らせる効果があ るからである。木材の組織には空隙が多くあり、そこに空気をたくさん含 んでいるので、鉄に比べ熱を中に伝えにくく、また、酸素が供給される表 面からゆっくりと燃えていくので、急激に強度が落ちることはありえず、 燃え広がるまでに逃げる時間を稼いでくれる。そのため、火災で木造住宅 が倒壊に至るまでの時間は柱の太さで決まる事となり、当然太い柱を使っ た城などの伝統建築物は非常に燃えにくい。 それに対して、現在多くの建物で使用されている鉄骨は、熱を加えると 急激に強度が低下し、変形しやすくなるので重い屋根を支える柱や梁など が曲がってしまい建物が倒壊してしまう。 次に耐震性では、木造建築はその軽さから、鉄骨や鉄筋よりもかえって地 震の影響を受けにくくなり、また、木は鉄骨に比べて柔軟であるため、圧 力に対して鉄骨よりも壊れにくくなる。 ・伝統的工法 木造建築の中にも、木造枠組壁構法・丸太組構法など、さまざまな種類 があるが城や寺院などの伝統建築には、日本古来の伝統的な工法が用いら れる。 その工法とは、太めの柱と梁や、貫を使用し互いの部材を貫通させる構 造形式で、継ぎ手によって固定するものである。 ・継ぎ手 継ぎ手は伝統工法の大きな特徴の一つで、 「同一方向の木材を繋ぐ部分」 のことである。 長さを調節するために木材を繋ぐわけであるが、必然的に継ぎ手部分は 構造耐力的に最も弱い箇所となるので、さまざまな工夫が行われてきた。 継ぎ手には数多くの種類が存在するが、中でも金輪継は、同形の両部材 の口にT字形の目違いをつけて組み合わせ、車知栓を差して固定するもの で、継ぎ手の中でも最も強固なものとされており、あらゆる方向に強度が 得られる。 ・車知 車知とは、継ぎ手のホゾ(男木と女木の結合部)を固定するためにホゾ と溝にまたがって刺される細い棒のこと。先端部をやや細くした車知栓を 叩き込むと、車知栓が太くなるに従ってA材のホゾは右側に寄ろうとし、 B材の溝は左側に寄ろうとする。そのため、両材がより強く結合されるこ とになり、耐震性が大きく強化される。 ・筋交い 日本古来の伝統的工法の一つとして筋交いというものがあげ られる。 筋交いとは、柱と柱の間に斜めに入れて建築物や足場の構造を 補強する部材である。 「筋交」「筋違」とも表記され、構造体の耐震性を強める効果 がある。 柱と梁の形づくる長方形は、接合部の強度に余裕がないと、地 震や暴風などの水平力を受けたときに平行四辺形にひしゃげる ように変形してしまう。ここに対角線状に筋交いを加えて三角形 の構造を作り、変形を防止するわけである。 現代の建築物でもこの手法は多く取られており、その有用性が 認められているため、建築基準法では一定の割合で筋交いを使用 することが義務づけられている。 まとめ このように、石垣や木造建築などの築城技術は、耐震性・耐火 性について考慮されており、その工法の中には現代の建築物にも 使用されているものが数多くある。 近年の研究により、これまで耐震性について問題があるとされ てきたこれらの伝統的工法は見直されつつあり、建築基準法の改 正も行われた。この先、かつて築城に用いられていた技術を利用 した木造建築物が増えていくかもしれない。 参考文献 安藤ハザマ http://r-cube.ritsumei.ac.jp/bitstream/10367/789/3/19_%E6%B1%A0% E6%9C%AC.pdf 建築用語集 http://www.kenchikuyogo.com/212-shi/071-shachisen.htm 竹田工務店株式会社 http://www.takeda-komuten.com/original.html Wikipedia『木構造』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%A7%8B%E9%80%A0_( %E5%BB%BA%E7%AF%89) 建物性能の基礎知識/防火・耐火性能 http://www.house-support.net/seinou/bouka.htm ニュートリノ 理工学部物理学科 2回生 浅田真人 理工学部物理学科 1回生 川島翔太郎 ・ニュートリノとは ニュートリノとは、1930 年にオーストリアの物理学者ヴォルフガング・ パウリによって理論的に存在を予言され、26 年後に実験で確認された、電 気的に中性(電荷ゼロ)で、重さ(質量)がほとんどゼロの粒子のことで ある。現在では電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリ ノの 3 種類のニュートリノが観測されている。 電子ニュートリノは素粒子標準模型における第一世代のニュートリノ である。レプトンの三世代構造において、同じく第一世代の荷電レプトン である電子と対をなすため、名付けられた。ベータ崩壊の過程で運動量と エネルギーが喪失するという現象から、1930 年にヴォルフガング・パウリ によって予測され、1956 年にフレデリック・ライネスとクライド・カワン によって最初に検出された。 ※クォーク…粒子を構成する素粒子。強い力を及ぼし合い、6種類存在する。 ※レプトン…粒子を構成する素粒子。強い力を及ぼし合わず、6種類存在する。 ミューニュートリノは、※1 素粒子標準模型における第二世代のニュート リノである。レプトンの三世代構造において、同じく第二世代の荷電レプ トンであるミュー粒子と対をなすため、名付けられた。1940 年代初頭に何 人かの研究者によって理論的に予測され、1962 年にレオン・レーダーマン、 メルヴィン・シュワーツ、ジャック・シュタインバーガーらによって検出 された。 タウニュートリノ は、素粒子標準模型における第三世代のニュートリノ である。レプトンの三世代構造において、同じく第三世代の荷電レプトン であるタウ粒子と対をなすため、名付けられた。1974 年から 1977 年にマ ーチン・パールら SLAC 国立加速器研究所、ローレンス・バークレー国立 研究所による一連の研究でタウ粒子が発見されるとすぐにその存在が理 論的に予測され、2000 年 7 月に DONUT によって初めて検出された。ニュー トリノは電荷を持たない。また、質量は非常に小さいが、存在することが 確認された。 物質をほとんど素通りするため、宇宙のはるか彼方や太陽の中心部で発生 したニュートリノのほとんどが、そのまま地球にやってくる。太陽からも ニュートリノが出ているが、ニュートリノの数は多く、1cm²あたり毎秒 660 億個という数のニュートリノがいつも私たちの体を通り抜けている。物質 を素通りするということはニュートリノを観測しようとする装置すら素 通りしてしまうということであるので、ニュートリノの観測はたいへん困 難である。大量の水を蓄えたタンクを用意し、ニュートリノが水分子とご くまれに衝突する時に発せられる光を検出することによってニュートリ ノが飛んできていることを確認するという方法がある。 ※チェレンコフ光…荷電粒子が物質中を移動するとき、荷電粒子の速度がその物質中の光 速度より速い時に光が生じる現象。 また、ニュートリノは強い相互作用と電磁相互作用がなく、弱い相互作用 と重力相互作用でしか反応しない。ただ、質量が非常に小さいため、重力 相互作用もほとんど反応せず、このため他の素粒子との反応がわずかで、 透過性が非常に高い。そのため、原子核や電子との衝突を利用した観測が 難しく、ごく稀にしかない反応を捉えるために高感度のセンサや大質量の 反応材料を用意する必要があり、他の粒子に比べ研究の進みは遅かった。 電荷を持たない粒子であるため、中性の※2 パイ中間子のようにそれ自身 が反粒子である可能性がある。ニュートリノの反粒子がニュートリノ自身 と異なる粒子であるか否かは現在でも未解決の問題である。 ・ニュートリノの性質 例えば光子は質量が 0 である理論的根拠が存在するが、ニュートリノに ついては質量が 0 でない値を持ってもかまわない。しかし、この粒子は弱 い相互作用しかしないこともあり、その質量が観測できず、質量を持たな いとするのが一般的であった。 ニュートリノ振動が起こるためにはゼロではない質量が必要となる。この 現象は 1957 年にブルーノ・ポンテコルボにより提唱された。この理論は、 K中間子振動から類推された。彼は、その後 10 年で真空の振動理論の現 代的な数学による定式化に取り組んだ。1962 年、坂田昌一・牧二郎・中川 昌美が、ニュートリノが質量を持ち電子・ミュー・タウの型の間で変化す るニュートリノ振動を予測した。 この現象について、1998 年 6 月にスーパーカミオカンデ共同実験グループ は、宇宙線が大気と衝突する際に発生する大気ニュートリノの観測から、 ニュートリノ振動の証拠を 99%の確度で確認した。また、2001 年には、太 陽から来る太陽ニュートリノの観察からも強い証拠を得た。 ただし、ニュートリノ振動からは型の異なるニュートリノの質量差が測定 されるのみで、質量の値は解らない。しかし、これに先立つ 1987 年 2 月 23 日午後 4 時 35 分小柴昌俊による 15 万光年離れた大マゼラン雲の超新星 SN 1987A からの電子ニュートリノの観測時刻が光学観測との間で理論的に 有意な差を観測できなかったことから、極めて小さな上限値(電子の質量 の 100 万分の 1 以下)が得られており、共同研究チームは 3 種のニュート リノの質量を発表している。 その後、つくば市にある高エネルギー加速器研究機構 (KEK) からスーパ ーカミオカンデに向かってニュートリノを発射する K2K の実験において、 ニュートリノの存在確率が変動している状態を直接的に確認し、2004 年、 質量があることを確実なものとした。 ニュートリノの質量が有限値を持つことは理論研究に大きな影響を与え る。まず問題になるのは、これまで各種の提案がされてきた標準理論のう ちの一部はニュートリノの質量が 0 であることを前提としている。それ らの理論は否定される。また、ニュートリノ振動は各世代に保存されると されてきたレプトン数に関して大幅な再検討を促すことになる。 また電磁相互作用がなく、すなわち光学的に観測できず、またビッグバン 説は宇宙空間に大量のニュートリノが存在することを示すことなどから、 ※3 暗黒物質の候補のひとつとされていたが、確認された質量はあまりに 小さく大きな寄与は否定された。 実験結果からは誤差の範囲内で、生成され観測されるほとんど全てのニュ ートリノはスピン角運動量の回転方向が左巻き、すべての反ニュートリノ が右巻きを持っていることを示す。このことはニュートリノに質量はない とした極限では、双方の粒子に考えうる 2 つのカイラリティの 1 つしか観 測されていないことを意味する。このようなカイラリティは素粒子相互作 用の標準模型での唯一のものである。実験結果からは、右巻きニュートリ ノと左巻き反ニュートリノという、相対するパートナーが単に存在しない ということも考えられる。そうであれば、観測 されるニュートリノと反 ニュートリノは実際、全く異なる性質のものということになる。理論的に は非常に重いものは弱い相互作用を起こさないもの、あるいはその両方が 考えられている。 質量がゼロでないニュートリノの存在は状況をやや複雑にする。ニュート リノは弱い相互作用で生成された固有状態である。しかし質量のある粒子 のカイ ラリティは(みかけの)運動が同じにならない。すなわち、ヘリ シティ演算子はカイラリティ演算子とは固有状態を共有しない。自由なニ ュートリノは左巻きと 右巻きのヘリシティ状態が混在して伝搬し、 mν/E のオーダで振幅も混在している。このことは実験にはまったく影響しない。 関係するニュートリノは常に超相対論的であり、振幅の混在は無視できる ほど小さいためである。例えば、ほとんどの太陽ニュートリノは 100 keV から 1 MeV のオーダでエネルギーを持っており、”誤った”ヘリシティを 持ったニュートリノの割合は 10−10 を超えない。 ・ニュートリノが一躍有名になった研究とその結果 2011 年 9 月 23 日 CERN で、観測したニュートリノが光速より速かったと いう実験結果が京都市で開かれているニュートリノ・宇宙物理国際 会議 で正式に発表された。名古屋大などの国際研究チーム「OPERA」のチ ームが、人工ニュートリノ 1 万 6000 個を、ジュネーブの CERN から約 730km 離れたグラン・サッソのイタリア国立物理学研究所研究施設に飛ばしたと ころ、2.43 ミリ秒後に到着し、光速より 60.7 ナノ秒(1 億分の 6 秒、ナ ノは 10 億分の 1)速いことが計測された。1 万 5000 回の実験ほとんどで 同じ結果が示された。この発表は「質量を持つ物質は光速を超えない」と するアインシュタインの特殊相対性理論に 反するため世界的な論争を呼 んだ。光より速い物質が存在しないのは、粒子を光速にまで加速するため には無限のエネルギーが必要だということが理由だが、も しこの実験結 果が本当だった場合、このニュートリノはエネルギーを必要としない何ら かの相転移で超光速になってまた戻ったとする仮説なども考えられた。 OPERA チームは、光速を超える物質が存在しないことを証明する特殊相対 論が これまでの実験と理論でしっかり確立された理論であり、自分たち の実験結果は誤りだと考えていた。 そのため結果を発表するのに数か月の内部討論を重ね、実 験結果の誤り を探したが、内部討論では誤りを発見できず、科学界での検証を呼びかけ た。OPERA は声明の中で「この結果が科学全般に与える潜在的な衝撃 の大 きさから、拙速な結論や物理的解釈をするべきではない」としていた。 11 月 18 日、OPERA は、ニュートリノビームの長さを短くした再実験によ ってもほぼ同様の結果が見られたと発表した。ただ時間情報は前回と同様 GPS を使ったとしている。 その後、ニュートリノの到着側で地上と地下の時計をつなぐ光ケーブルの 接続不良やニュートリノ検出器の精度が不十分だった可能性が見つかっ たため、2012 年 5 月、実験不備を解消した上で再実験を行った。結果、ニ ュートリノと光の速さに明確な差は出ず実験結果を修正、6 月 8 日にニュ ートリノ・宇宙物理国際会議で「超光速」の当初報告の正式撤回を発表し た。 実験直後から、この実験結果に対する懐疑的意見があった。小柴昌俊が行 った SN 1987A の観測では光とほぼ同時(発生源からの距離に比して)に 届いたニュートリノしか確認されておらず、整合しない。もしニュートリ ノが OPERA の実験結果と同じくらいの速度であれば、ニュートリノは超新 星からの光学観察時刻の 8 年前に到着していなければならない。2007 年に フェルミ研究所における MINOS 実験で同様の結果が発表されているが、誤 差が大きかったという。発表直後は、ニュートリノではなく未知の性質の 発見を表しているかどうか注目されていた。また、日本が※4 スーパーカ ミオカンデで人工ニュートリノ飛行実験をしていることから、日本の実験 結果も注目された。 10 月 6 日、CERN のホイヤー所長、高エネルギー加速器研究機構の鈴木厚 人機構長、フェルミ研究所のオッドーネ所長らはジュネーブで記者会見し、 OPERA 実験の超光速の結果に対し懐疑的立場を示した。ホイヤー所長は「1 つの方法による 1 つの実験結果にすぎない」とし、CERN と OPERA を切り離 す立場をとり、特に実験に使われた GPS による時計あわせが疑われるとし た。そのため今後フェルミ研究所で追加実験を行い、数ヶ月後に結果が出 る見込みと語った。 11 月 19 日、 グランサッソ研究所の別の実験チーム「ICARUS」が、OPERA の結果を否定する論文を発表した。それによると、実験では光速で移動す る粒子と同じエ ネルギースペクトルを示したという。グラショウ理論に よれば、もし超光速ならエネルギーをほとんど失っているはずだと言われ ている。 ・ニュートリノが天文学として注目された研究 1987 年、大マゼラン雲で発生した※5 超新星「1987A」爆発の際に放出 されたニュートリノが岐阜県神岡鉱山にある東京大学宇宙線研究所・神岡 宇宙素粒子研究施設のカミオカンデ(水 3,000t を蓄えた巨大タンクを検 出器とする素粒子観測装置)で検出された。太陽以外の天体からのニュー トリノが検出されたのはこれが初めてで、ニュートリノ天文学の幕開けと なった。カミオカンデの観測チームを率いた東京大学の小柴昌俊名誉教授 はその功績が認められ、2002 年にノーベル物理学賞を受賞した。 ・ニュートリノ天文学の歴史 宇宙から飛来するニュートリノを検出する試みは 1960 年代から行われて いる。 1964 年には、レイモンド・デービスらのグループが太陽ニュート リノを検出するために行われた予備実験の成果を報告している。 1967 年から、デービスはアメリカ合衆国サウスダコタ州にあるホームステ イク鉱山に設置した装置で太陽ニュートリノの観測を行い、太陽が核融合 反応を起こしている証拠をつかんだ。しかし同時に、観測されたニュート リノが理論値の 3 分の 1 しかないという問題が発見された。これは太陽ニ ュートリノ問題と呼ばれる。 一方、1983 年からカミオカンデで陽子崩壊実験を行っていた小柴らのグル ープは、1985 年からペンシルベニア大学のグループと共同で実験装置を太 陽ニュートリノの検出に使えるよう改造し、1987 年 1 月 1 日から運用を開 始した。これによって 1989 年、デービスの提唱した太陽ニュートリノ問 題の存在を確認した。 1987 年 2 月 23 日、南半球に超新星 SN 1987A があらわれ、重力崩壊に伴 うニュートリノバーストが カミオカンデをはじめとする 3 箇所のニュー トリノ検出器で検出された。観測成果はカミオカンデのグループによりま とめられ、同年 4 月に発表された。これに より、超新星爆発の理論モデ ルの正しさが検証された。一般にはこの出来事をもってニュートリノ天文 学の幕開けとされる。 2002 年、サドベリー・ニュートリノ天文台の研究チームによって、太陽由 来とされるニュートリノからニュートリノ振動が検出され、太陽内部から 放出されるニュートリノ減少に関する問題が解決された。 2006 年現在、地球内部からの反電子ニュートリノを捉える実験等が進めら れている。また、アイスキューブ・プロジェクト等によって国際観測網の 整備が進められている。 ※1 素粒子…物質を細分化していって、最後にたどりつく究極の粒子 ※2 中間子…クォークおよび一つの反クォークで構成された不安定な亜原 子粒子 ※3 暗黒物質…宇宙における質量の大半を占めながら観測されていない(仮説 上の)物質の総称 ※4 スーパーカミオカンデ…世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置 ※5 超新星…大質量の恒星が、その一生を終えるときに起こす大規模な 爆発現象 ・参考URL http://sankei.jp.msn.com/science/news/120608/scn12060810170000-n1 .htm http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/about/neutrino.html http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/neutrinos.html https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%8 8%E3%83%AA%E3%83%8E http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/about/intro.html http://www2.kek.jp/ja/news/press/2010/T2KfirstEvent.html
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