技術編 TDK Power Electronics World 絶縁型 DC-DC コンバータの基本回路 絶 縁 型 DC-DC コンバータと呼ばれるのは、トランスを積 極 的に用い、大出力にも対応した本 格 的なタイプです。基本的な原理や骨格となる回路を知っておくと理解も深まります。 RCC 方式(自励式フライバックコンバータ) 小出力タイプ < トランスの原理と起電力の方向 > 1 次巻線の 1 次巻線 巻き始めを表す印 からの磁束 2 次巻線の 反作用磁束 スイッチ ON 電流 負荷 誘導 起電力 逆起電力 スイッチ ON する と、1 次 巻 線 から 磁 束 が 発生するが、 このとき磁束増加を妨げるよう に起電力 (逆起電力) が生まれる。コアを通じ た 1 次巻線の磁束は、 2 次巻線に反作用磁束 を 生み、 起電力 (誘 導 起 電 力) が 生じて電 流 (誘 導 電 流) が 流 れる。スイッチ OFF のとき は、 電流の向きは逆になる。 ベース巻 線 の ベース電 流 によりQ1が ONしてコレ クタ電 流 が 流 れる。ベー ス電流が不足するとOFF となり、2 次 側 に 電 流 が 流 れる。この 動 作を 繰り 返す自励式。部品点数が 少なくて すみ、簡 易な 小 出力電源に用いられる。 Q1 が ON: OFF: Q1 ベース巻線 ポイント ※磁気飽和を防ぐためトランスコアにはギャップを入れる(→19 頁) *RCC : Ringing Choke Converter 出力電圧・電力別のタイプ ON/ON タイプ (多石式:プッシュプル、ハーフブリッジ、フルブリッジ式など) ON/OFF タイプ (V) 中∼大 出 力タイプは複 数のスイッチング 素 子を用いる多石式となり、 回路は複雑になりますが、高効率化や低ノイズ化、高機能化が図れます。 巻き始めを表す印 プッシュプル方式 中∼大出力タイプ 100 10 0 0 小∼中出力タイプ スイッチ ON + スイッチ OFF ❶スイッチ ON すると、 1 次巻線に電 流が流れ →) 、 発 生 する 磁 束 によりコアが 磁 化 さ れる (→ (エネルギーの蓄積) 。ダイオードの向きが逆な ので、 2 次巻線には誘導電流が流れない。 + ポイント トランスコアがエネルギーを蓄え るので、チョークコイルが不要。 (制御回路に接続) 100 1000 電力(W) (1 石フォワード式など) DC 出力 磁性体コアの B-H 曲線 Q2 Q1 が ON: Q2 が ON: ❷スイッチ OFF すると、 コアに蓄積されたエネ ルギーが開放されて、 ダイオードを通じて電流 (→ ) 。トランスのコイルがチョークコ が流れる イルの役割を果たしているともみなせる。 − 10 ON/OFF タイプ &ON/ON タイプ Q1 トランス (RCC 式、フライバック式など) 1000 (逆起電力、誘導起電力) の 向 き は、●印 に 対 して 同じ方向になる。 2 次巻線の DC-DC コンバータには、スイッチング素子が ON のときエネルギーを出力するON/ON 方式 と、スイッチング 素 子が OFF のとき出 力 する ON/OFF 方式がある。 出力電圧 1 次・2 次巻線の起電 力 コア ON/ON方式とON/OFF 方式 Q 1・Q 2 を 交 互 に 切 り 替 え る 。出 力 300W程度までの電源によく使われる。 フルブリッジ方式 B:磁束密度 飽和磁束密度 励磁過程 透磁率が高いほど傾 きが大きくなる。 中∼大出力タイプ 透磁率 H:磁界 数100W以上の高効率・大出力電源に採用される。 中出力タイプ D1 スイッチ ON 誘導起電力 OFF Q1 + 逆起電力 スイッチ チョークコイル + D2 − (制御回路に接続) 15 ❶スイッチ ON すると、 トランス の原 理により 1 次巻線・2 次巻 線に起電 力 (逆 起 電 力、 誘導起 電 力) が 発 生して、 ダイオ ード (D1) を 通じて 電 流 が 流 れる (→) 。このとき、 チョークコイル にエネルギーが蓄えられる。 ❷スイッチ OFF すると、 電 流 変 化を妨げるようにチョーク コイルに起電力が生まれ、 蓄えられたエネルギーが放出さ を通じて電流が流れる (→ ) 。 れて、 転流ダイオード (D2) 絶縁型 DC-DC コンバータの主役はトランス。 Q3 曲線の幅が狭いほど、 損失が小さい。 ハーフブリッジ 方 式は、Q1・Q2 を 2 つの コンデンサで置き換えた方式。 各種コア材の性能比較 DC 出力 Q2 Q4 Q2・Q3 が ON: Q1・Q4 が ON: ケイ素鋼 フェライト アモルファス 透磁率 △ ○ ◎ 飽和磁化 ◎ △ △ 鉄損 × ◎ ◎ 製造コスト △ ◎ × 鉄心は高周波領域では損失(発熱ロス)が多くなるので使えない。 16
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