使用上の注意の解説

日本標準商品分類番号
87625
―医薬品の適正使用に欠かせない情報です。使用前に必ずお読みください―
新医薬品の「使用上の注意」の解説
処方箋医薬品*
抗ウイルス化学療法剤
薬 価 基 準 未 収 載
VEMLIDY® Tablets
25mg
*注意-医師等の処方箋により使用すること
【警告】
B 型肝炎に対する治療を終了した患者で、肝炎の重度の急性増悪が報告されている。
そのため、B 型肝炎に対する治療を終了する場合には、投与終了後少なくとも数ヵ月間は患
者の臨床症状と臨床検査値の観察を十分に行うこと。経過に応じて、B 型肝炎に対する再治
療が必要となることもある。
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
(1) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
(2) 次の薬剤を投与中の患者:リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーン
ズ・ワート)含有食品(「相互作用」の項参照)
製造販売元:
はじめに
テノホビル アラフェナミド(TAF)は、米国 Gilead Sciences, Inc により開発された B 型
慢性肝疾患治療薬であり、
B 型肝炎ウイルス(HBV)
及びヒト免疫不全ウイルス 1 型
(HIV-1)
の逆転写酵素阻害作用を有する核酸アナログです。
国内及び海外では、テノホビル(TFV)の経口プロドラッグであるテノホビル ジソプロ
キシルフマル酸塩(TDF)は、2001 年に米国で他の抗レトロウイルス薬と併用投与する
HIV 感染症治療薬として初めて承認され、B 型慢性肝炎に対しては単独療法として 2008
年にトルコで初めて承認されました。現在、TDF は米国、カナダ、欧州、日本、台湾、韓
国及び中国を含む 165 ヵ国以上で承認されており、最初の販売承認以降、HIV 及び HBV
感染症に対し全世界で 330 万患者・年を超える使用経験が確認されています。
本邦においては、TDF は HIV-1 感染症治療薬として日本たばこ産業株式会社により開発
され、
「ビリアード錠 300mg」として 2004 年 3 月に承認され、また、HBV 感染症治療薬
としてグラクソ・スミスクライン株式会社により開発され、
「テノゼット錠 300mg」とし
て 2014 年 3 月に承認され製造販売されています。
TAF は、TFV をホスホンアミデートで化学修飾し、血漿中の安定性と細胞移行性を大き
く改善したプロドラッグです。TAF は血漿中において TDF よりはるかに安定であり、標
的細胞(HBV 感染肝細胞及び HIV 感染リンパ系細胞)内に取り込まれた後、リン酸化活
性代謝物であるテノホビル二リン酸(TFV-DP)に変換されます。TDF の 1/10 以下の用
量で標的細胞内により高い濃度の TFV-DP を曝露することが可能となり、治療用量では
TFV の循環濃度は TDF と比較して約 90%低く抑えられます 1), 2), 3), 4)。TAF は特有のこの
代謝特性により、TDF と比べて優れた安全性プロファイルが期待されています。
B 型慢性肝炎(CHB)は、公衆衛生上の世界的な重要課題の一つであり、慢性肝疾患、肝
硬変及び肝細胞癌(HCC)の主因の一つとされています。B 型肝炎ウイルス(HBV)は
周産期感染や不適切な観血的医療行為などによる経皮感染、性的曝露により容易に伝染し
ます 1)。HBV の急性感染後、成人の 5%~10%、小児の最大 90%では感染を排除するのに
十分な免疫応答が起こらず、これらは HBV 持続感染患者へと移行します 2)。CHB を発症
すると、肝硬変、肝代償不全及び HCC 発症の重大なリスクにさらされ、有効な治療を受
けない場合、患者の 15%~40%が上記肝疾患へと進展します 3), 4)。なお、肝癌は世界的に
がん関連死の第 3 位を占めており、中でも HBV の高度感染地域では最も重大な疾病負担
となっています 5)。HBV 持続感染患者及び CHB 患者の体内から HBV を完全に排除する
ことは困難であり、CHB の治療は、ウイルス量を減少させ、血中アラニンアミノトラン
スフェラーゼ(以下、ALT)値を正常化させることにより、肝炎を鎮静化させることが第
一目的となります。
ベムリディ錠 25 mg(以下、本剤)は、ギリアド・サイエンシズ株式会社により開発され
た B 型慢性肝疾患治療薬であり、本剤の有効性及び安全性は、代償性肝硬変を含む CHB
患者を対象とした 2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験
(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)
で確認されました。本剤の開発により、B 型慢性肝疾患に対するより安全で、簡便な、有
効性の高い経口抗ウイルス薬がもたらされ、既存の推奨治療法と比較して、ラミブジンに
よる治療歴を有する患者を含め、より幅広い患者集団に対する長期投与が可能となります。
また、本剤の投与による骨及び腎関連の臨床パラメータに対する影響は TDF に比較して
有意に少ないことが示されています。
本剤の推奨用量は TAF として 25 mg を 1 日 1 回投与することとしています。食前・食後
を問わず投与可能で、腎又は肝機能障害患者に対する用量調節の必要性はありません。
本剤の開発により、B 型慢性肝疾患に対する治療は重要な進歩を遂げることが期待されま
す。
本冊子では、本剤を使用する際の注意事項を項目ごとに解説しました。本剤の適正使用の
一助となれば幸いです。
なお、
本剤の使用に際しましては、添付文書及びインタビューフォームもご参照ください。
1)World Health Organigation (WHO). Hepatitis B. Fact sheet Updated
July 2016 Available at:
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs204/en/.
Accessed: 23 November 2016.
2)Zuckerman AJ. Progress towards the comprehensive control of hepatitis B. Gut
1996; 38 (2):S1-70.
3)World Health Organization (WHO). Guidelines for the Prevention, Care and
Treatment of Persons with Chronic Hepatitis B Infection. 2015(. 第 5.4.93 項)
4)Wright TL. Introduction to chronic hepatitis B infection. Am J Gastroenterol
2006; 101: S1-6.
5) Global Burden of Disease Cancer C, Fitzmaurice C, Dicker D, Pain A,
Hamavid H, Moradi-Lakeh M, et al. The Global Burden of Cancer 2013.
JAMA oncology 2015; 1 (4):505-27.
目
次
【効能・効果】........................................................................................................ 1
<効能・効果に関連する使用上の注意> .................................................................. 4
【用法・用量】........................................................................................................ 5
<用法・用量に関連する使用上の注意> .................................................................. 6
【警告】 .................................................................................................................. 7
【禁忌】 .................................................................................................................. 8
【使用上の注意】 .................................................................................................... 9
1.慎重投与 ···································································································· 9
2.重要な基本的注意 ······················································································· 10
3.相互作用 ··································································································· 13
4.副作用 ······································································································ 15
5.高齢者への投与 ·························································································· 18
6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与 ······································································ 19
7.小児等への投与 ·························································································· 20
8.過量投与 ··································································································· 21
別添 1 国際共同第Ⅲ相臨床試験における副作用発現状況
【効能・効果】
B型肝炎ウイルスの増殖を伴い肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患におけるB型肝炎
ウイルスの増殖抑制
解説
本剤の効能・効果は、B 型慢性肝炎(CHB)患者を対象とした 2 つの国際共同第Ⅲ相臨
床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)での有効性及び安全性の結果に基づき設
定しました。GS-US-320-0108 試験では、B 型肝炎ウイルス e(HBe)抗原陰性の CHB 患者
を対象として、テノホビル アラフェナミド(TAF)25 mg 1 日 1 回とテノホビル ジソプロ
キシルフマル酸塩(TDF)300 mg 1 日 1 回の 48 週間投与について比較しました。
GS-US-320-0110 試験では、HBe 抗原陽性の CHB 患者を対象として、TAF 25 mg 1 日 1 回と
TDF 300 mg 1 日 1 回の 48 週間投与について比較しました。両試験ともに主要評価項目
(Week 48 時点における血漿中 HBV DNA 量が 29 IU/mL 未満の患者の割合)では良好な
ウイルス抑制率を示しました。
表 1 に、これら 2 つの国際共同第 3 相臨床試験のデザインの概要を示します。
1
表 2 には、これら 2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験の主要な有効性及び安全性パラメータの
要約を示します。
表 1
TAFの承認申請を裏付ける臨床試験
投与法
試験
試験デザイン
(症例数 a)
試験結果
Week 48 時点に
TAF と TDF の
TAF 25 mg 1日1回
(N = 285)
安全性及び有効性
TDF 300 mg 1日1回
有効性、
評価第Ⅲ相無作為化
(例 N = 140)
薬物動態と安全性
HBe 抗原陰性 CHB
患者における
GS-US-320-0108
おける
二重盲検試験
HBe 抗原陽性 CHB
患者における
GS-US-320-0110
TAF と TDF の
安全性及び有効性
評価第Ⅲ相無作為化
TAF 25 mg 1日1回
(N = 581)
TDF 300 mg 1日1回
(N = 292)
Week 48 時点に
おける
有効性、
薬物動態と安全性
二重盲検試験
CHB: B 型慢性肝炎, N: 症例数
a
安全性評価対象症例数 (無作為化され最低1回の試験薬を投与された患者).
社内資料(GS-US-320-0108 試験): GS-US-320-0108 Week 48 CSR, Section 15.1, Table 3 と GS-US-320-0110
Week 48 CSR, Section 15.1, Table 3
2
表 2
GS-US-320-0108及びGS-US-320-0110試験: 有効性及び安全性パラメータの要約
GS-US-320-0108
TAF 25 mg
N
GS-US-320-0110
TDF 300 mg
TAF 25 mg
TDF 300 mg
n (%)
N
n (%)
N
n (%)
N
n (%)
268 (94.0%)
140
130 (92.9%)
581
371 (63.9%)
292
195 (66.8%)
Week 48 時点のウイルス抑制率
HBV DNA 量 < 29 IU/mL
285
群間差 (95% CI)
1.8% (−3.6% ~ 7.2%)
−3.6% (−9.8% ~ 2.6%)
0.47
0.25
P値
Week 48 時点の ALT 正常化率
中央検査機関基準
236
196 (83.1%)
群間差(95% CI)
276
537
384 (71.5%)
268
179 (66.8%)
4.6% (−2.3% ~ 11.4%)
0.076
0.18
137 (49.6%)
群間差 (95% CI)
91 (75.2%)
8.0% (−1.3% ~ 17.2%)
P値
AASLD 基準
121
138
44 (31.9%)
572
257 (44.9%)
290
105 (36.2%)
17.9% (8.0% ~ 27.7%)
8.7% (1.8% ~ 15.6%)
< 0.001
0.014
P値
Week 48 時点における血清学的検査
HBs 抗原消失
281
0
138
0
576
4 (0.7%)
288
1 (0.3%)
HBs 抗原セロコンバージョン
281
0
138
0
576
3 (0.5%)
288
0
HBe 抗原消失
NA
NA
NA
NA
565
78 (13.8%)
285
34 (11.9%)
HBe 抗原セロコンバージョン
NA
NA
NA
NA
565
58 (10.3%)
285
23 (8.1%)
GS-US-320-0108 and GS-US-320-0110
N
P値
N
TAF 25 mg
寛骨骨密度の平均変化率(SD)
807
−0.163% (2.2437)
404
−1.860%
(2.4525)
< 0.001e
寛骨骨密度減少 > 3%, n (%)
807
68 (8.4%)
404
108 (26.7%)
< 0.001f
寛骨骨密度増加 > 3%, n (%)
807
55 (6.8%)
404
8 (2.0%)
< 0.001f
脊椎骨密度の平均変化率(SD)
814
−0.570% (2.9147)
407
−2.366%
(3.2051)
< 0.001e
脊椎骨密度減少 > 3%, n (%)
814
159 (19.5%)
407
155 (38.1%)
< 0.001f
脊椎骨密度増加 > 3%, n (%)
814
89 (10.9%)
407
11 (2.7%)
< 0.001f
血清クレアチニン量平均値(SD) (mg/dL)
828
0.010 (0.1140)
418
0.024 (0.0974)
0.012g
eGFRCG 変化量中央値(第一四分位、第三四分位)
(mL/min)
827
−1.2 (−8.4, 7.5)
417
−5.4 (−12.0, 3.0)
< 0.001h
TDF 300 mg
Week 48 時点における骨安全性変化量
Week 48 時点における腎安全性変化量
AASLD: American Association for the Study of Liver Diseases 米国肝臓病学会; CI: 信頼区間, HBV DNA: B 型
肝炎ウイルス DNA 遺伝子, HBeAg: B 型肝炎ウイルス e 抗原, NA: 該当なし, SD: 標準偏差, TAF: tenofovir
alafenamide, TDF: tenofovir disoproxil fumalate, N: 症例数
すべての変化量は Week 48 時点におけるベースラインからの変化量です。
社内資料: TAF Week 48 ISE, Table 1; TAF Week 48 ISS, Tables 23.1.2, 23.2.2, 25.1, 25.2, 31.2, 32.1 と Request 7633
Tables 2.1 と 2.2; GS-US-320-0108 Week 48 CSR, Section 15.1, Tables 19.1, 20.1, 23.1.1 と 23.2.1;
GS-US-320-0110 Week 48 CSR, Section 15.1, Tables 19.1, 20.1, 23.1.1 と 23.2.1
3
<効能・効果に関連する使用上の注意>
<効能・効果に関連する使用上の注意>
本剤投与開始に先立ち、HBV-DNA定量により、ウイルスの増殖を確認すること。
解説
本剤を使用する前に、ウイルス量の定量により、B 型慢性肝炎(CHB)又は B 型肝硬変で
あることを確認してください。
代償性肝硬変を含む未治療及び既治療の、いずれのジェノタイプの CHB 患者も対象とし
た本剤の 2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)では、
スクリーニング時の HBV DNA が 2×104 IU/mL 以上の HBe 抗原陽性又は陰性の代償性
肝硬変を含む CHB 患者が登録されました。
4
【用法・用量】
通常、成人にはテノホビル アラフェナミドとして 1 回 25mg を 1 日 1 回経口投与する。
解説
本剤の用量については、ベースラインからの HBV DNA 低下量、テノホビル(TFV)全身
曝露量及び安全性プロファイルに基づき、2 つの国際共同第 3 相臨床試験で使用した用量
を選択しました。
第Ⅰb 相試験(GS-US-320-0101)では、CHB 患者に対し TAF 8、25、40 又は 120 mg を 28
日間投与したとき、ベースラインからの HBV DNA 低下量は同様であり、用量依存性がな
いことが示唆されました。また、これら TAF 用量による HBV DNA 低下量は、B 型慢性肝
疾患に対する TDF の承認用量である TDF 300 mg による HBV DNA 低下量と同程度でした。
TAF 25 mg 群の TFV の全身曝露量は、TDF 300 mg 群と比較して低く(約 92%の低下)
、
GS-US-120-0104 試験で TAF 25 mg が投与された HIV-1 感染症患者における暴露量と一致し
ていました。
また、CHB 患者に対する 2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験に用いられた用量 TAF 25 mg は、
治療効果として等価である TAF 用量(E/C/F/TAF 配合錠の一成分として 10 mg)により実
施された第Ⅱ相試験(GS-US-292-0102)における未治療の HIV 感染患者で観察された TAF
の安全性プロファイルも考慮して選択されました1)。
TAF の血漿中曝露量と有効性との薬物動態/薬力学相関は、2 つの国際共同第Ⅲ相臨床
試験(GS-US-320-0108 試験及び GS-US-320-0110)のデータを用いて検討されました。重要な
こととして、両試験でウイルス学的抑制率(血漿中 HBV DNA 量が 29 IU/mL 未満の被験者
の割合)は TAF の曝露量のレベルを問わず同程度であり、曝露量と有効性に一定の傾向は
みられませんでした。
1)Sax PE, Zolopa A, Brar I, Elion R, Ortiz R, Post F, et al. Tenofovir Alafenamide Vs. Tenofovir Disoproxil Fumarate in
Single Tablet Regimens for Initial HIV-1 Therapy: A Randomized Phase 2 Study. J Acquir Immune Defic Syndr 2014;67
(1):52-8.(第 5.4.76 項)
5
<用法・用量に関連する使用上の注意>
<用法・用量に関連する使用上の注意>
(1) 本剤は、投与中止により肝機能の悪化又は肝炎の重症化を起こすことがある。本内容を
患者に説明し、患者が自己の判断で投与を中止しないように十分指導すること(
【警告】
の項参照)
。
(2) 本剤の投与開始時期、投与期間、併用薬、他の抗ウイルス剤に対する耐性がみられた
患者への使用等については、国内外のガイドライン等を参考にすること。
(3) 本剤の有効成分であるテノホビル アラフェナミドの他、テノホビル ジソプロキシル
フマル酸塩を含む製剤と併用しないこと。
(4) 投与開始時に、クレアチニン・クリアランスが 15 mL/分以上であることを確認するこ
と。また、本剤投与後、クレアチニン・クリアランスが 15 mL/分未満に低下した場合
は、投与の中止を考慮すること(「重要な基本的注意」及び【薬物動態】の項参照)。
解説
(1) 本剤を含む B 型肝炎治療の既知のリスクとして、投与を中止した場合に B 型肝炎の
重度の急性増悪が発現する可能性があります。本剤の臨床試験において該当する報
告として、国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0110)の 48 週時点の解析において、
投与中止後の肝炎の悪化(ALT フレア)が 1 例報告されています。したがって、TDF
の添付文書と同様、患者が本剤の使用を中止しないように十分指導指示する必要が
あることから設定しました。
(2) TDF の添付文書と同様、本剤による治療に際しては、最新の国内外のガイドライン
等の情報を参考にすべきであることから設定しました。
(3) テノホビル(TFV)を含有する製剤との併用により TFV の過量投与となるおそれが
あることから、当該製剤との併用を避けるために設定しました。
(4) 本剤の 2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)では、
Cockcroft-Gault 式による推算糸球体ろ過率(eGFRCG)が 50 mL/分以上である CHB
患者が登録され、有効性及び安全性が確認されました。また、重度腎機能障害を有
する被験者(スクリーニング時の eGFRCG が 15~29 mL/分)14 例及び背景が一致す
る腎機能が正常な被験者(スクリーニング時の eGFRCG が 90 mL/分以上)13 例に本
剤 25 mg を投与した第Ⅰ相薬物動態試験(GS-US-120-0108 試験)では、重度腎機能
障害を有する被験者における TAF の AUCinf 及び Cmax は、腎機能が正常な被験者と
比較してそれぞれ 1.9 倍及び 1.8 倍、TFV の AUCinf 及び Cmax は、それぞれ 5.7 倍及
び 2.8 倍高かったものの、TAF 又は TFV の薬物動態に臨床的意義のある差は認めら
れませんでした。なお、クレアチニン・クリアランスが 15 mL/分未満の腎機能障害
患者における本剤の薬物動態は検討されていません。
6
【警告】
【警告】
B 型肝炎に対する治療を終了した患者で、肝炎の重度の急性増悪が報告されている。
そのため、B型肝炎に対する治療を終了する場合には、投与終了後少なくとも数ヵ月間は患
者の臨床症状と臨床検査値の観察を十分に行うこと。経過に応じて、B型肝炎に対する再治
療が必要となることもある。
解説
本剤を含む B 型肝炎治療の既知のリスクとして、投与を中止した場合に B 型肝炎の重度の
急性増悪が発現する可能性があります。したがって、TDF の添付文書と同様、本剤の投与
を終了する患者は、少なくとも治療終了後数ヵ月間は、患者の臨床状態及び臨床検査につ
いて慎重な観察を行う必要があります。本剤の臨床試験において該当する報告として、国
際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0110)の 48 週時点の解析において、投与中止後の
ALT フレアが 1 例報告されています。
状況に応じて、B 型肝炎に対する治療を再開することも考量する必要があります。
7
【禁忌】
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
(1) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
(2) 次の薬剤を投与中の患者:リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョー
ンズ・ワート)含有食品(「相互作用」の項参照)
解説
(1) 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者では、本剤の投与により、さらに重篤
な過敏症状を発現するおそれがある。
<本剤の成分>
有効成分・含量
(1 錠中)
添加物
テノホビル アラフェナミド 25mg(テノホビル アラフェナミドフマル酸
塩として 28mg)
クロスカルメロースナトリウム、乳糖水和物、ステアリン酸マグネシウム、
結晶セルロース、黄色三二酸化鉄、マクロゴール 4000、ポリビニルアル
コール(部分けん化物)、タルク、酸化チタン
(2) リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品の
強力な P 糖蛋白質の誘導作用により、テノホビル アラフェナミドの血漿中濃度が低
下するおそれがあり、血漿中濃度の低下により、十分な臨床効果が得られないおそれ
があるため設定いたしました。(詳細は P.17≪[使用上の注意]3. 相互作用≫の項を
ご参照
ください。)
8
【使用上の注意】
1.慎重投与
非代償性肝硬変患者[使用経験がない。
]
解説
本剤の 2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)におい
て非代償性肝硬変患者に対する使用経験がなく、本剤の有効性及び安全性が確立されてい
ないので設定いたしました。
*:
2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)における
非代償性肝硬変の除外基準
臨床的な非代償性肝硬変(すなわち、腹水、脳症又は静脈瘤出血)の既往歴又は合併症を有する患
者
9
【使用上の注意】
2.重要な基本的注意
(1)本剤による B 型慢性肝疾患の治療は、投与中のみでなく投与終了後も十分な経過観察
が必要であり、経過に応じて適切な処置が必要なため、B 型慢性肝疾患の
治療に十分な知識と経験を持つ医師のもとで開始すること。
(2)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)/B 型肝炎ウイルス(HBV)重複感染患者では、薬剤
耐性 HIV が出現する可能性があるため、本剤のみの投与は避けること。また、本剤
の投与を開始する前に HIV 感染の有無を確認すること。
(3)本剤の投与に際しては、クレアチニン・クリアランスを測定するなど、腎機能障害
の有無に注意すること。また、本剤投与後も定期的な検査等により患者の状態を注意
深く観察し、腎機能障害のリスクを有する患者には血清リンの検査も実施すること。
腎毒性を有する薬剤との併用は避けることが望ましい(〈用法・用量に関連する使用
上の注意〉、
「副作用」及び【薬物動態】の項参照)
。
(4)成人 B 型慢性肝疾患患者に対する本剤の 48 週間投与により、腰椎と寛骨の骨密度
の低下が認められている。主な骨密度の低下は、腰椎と寛骨で投与開始後 24 週時
にかけて発現した。病的骨折の既往のある患者又はその他の慢性骨疾患を有する患者
では、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど適切
な処置を行うこと。
(5)体脂肪の再分布/蓄積があらわれることがあるので、異常が認められた場合には適切な
処置を行うこと。
解説
(1) B 型慢性肝疾患に対する抗ウイルス薬による治療の際に考慮すべき一般的注意事項と
して設定しました。本剤はウイルス性肝疾患の治療に十分な知識・経験を持つ医師の
もとで、本剤の投与が適切と診断された患者に対してのみ投与してください。本剤を
含む B 型肝炎治療の既知のリスクとして、投与を中止した場合に B 型肝炎の
重度の急性増悪が発現する可能性があります。したがって、TDF の添付文書と同様、
本剤の投与を終了する患者は、少なくとも投与終了後数ヵ月間は、患者の臨床状態及
び臨床検査について慎重な観察を行う必要があります。TAF の臨床試験において該当
する報告として、国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0110)の 48 週時点の解析に
おいて、投与中止後の ALT フレアが 1 例報告されています。
状況に応じて、B 型肝炎に対する治療を再開することも考慮する必要があります。
なお、2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)で本
剤を投与された未治療及び既治療患者の併合解析では、48 週時までにウイルス学的ブ
10
レイクスルー(HBV DNA 量が一度 69IU/mL 未満となった後、2 回の来院時に連続し
て 69IU/mL 以上、又は HBV DNA 量が最低値から 1.0 log10 以上増加)に至った患者、
又は 24 週時以降に早期中止し、中止時の HBV DNA 量が 69IU/mL 以上であった患者
を対象に、ベースライン及び投与後の HBV 分離株を用いて HBV DNA の塩基配列を
解析しました。日本人患者 2 例を含む、24 例中 20 例で HBV DNA の塩基配列が決定
されました。しかし、これらの分離株から、本剤への耐性と関連するアミノ酸変異は
検出されませんでした。1, 2
1.
社内資料:耐性発現に関する検討(PC-320-2009)
2.
社内資料:日本人での耐性発現に関する検討(PC-320-2010)
(2) 本剤と同じ TFV のプロドラッグである TDF を含有する製剤が、HIV-1 感染症治療薬
(
「ビリアード錠 300mg」
)として製造販売されています。HBV/HIV 治療ガイドライ
ン(DHHS Guidelines 2016)では、HIV 感染症の治療に対して、2 種類の核酸系逆
転写酵素阻害剤と、インテグラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤又は非核酸系逆転写
酵素阻害剤を併用して使用することを推奨しており、TDF が単独で HIV 感染患者に
投与されることはないと考えられます。本剤は HBV 持続感染による B 型慢性肝疾患
治療薬として承認されていますが、HIV/HBV 重複感染患者に対して、万一本剤が単独
で投与された場合は、薬剤耐性 HIV の出現する可能性が考えられるため注意喚起して
います。本剤の投与を開始する前には、HIV 感染の有無を確認してください。なお、
本邦においては、HIV-1 感染症治療薬として、
TDF 及びエムトリシタビン(以下、FTC)
の配合剤である「ツルバダ配合錠」、TDF、FTC、エルビテグラビル及びコビシスタッ
トの配合剤である「スタリビルド配合錠」、また、TAF、FTC、エルビテグラビル及び
コビススタットの配合剤である「ゲンボイヤ配合錠」が承認されています。
(3) 本剤では腎機能障害の程度に応じた用量調節は不要ですが(
「用法・用量」の項参照)
、
本剤の臨床試験において、腎機能関連の有害事象が認められていること、また、TDF
群に比べ変化量は小さいものの本剤群でも血清クレアチニンの上昇及び eGFRCG の低
下傾向が認められることから、テノゼット錠 300 mg と同様の注意喚起を設定しまし
た。
なお、クレアチニン・クリアランスが 15mL/分未満の腎機能障害患者における本剤の
薬物動態は検討されていません。
1 社内資料:腎機能障害を有する被験者における薬物動態試験(GS-US-120-0108)
2社内資料:透析を必要とする末期腎不全患者における母集団薬物動態解析(QPS 2015-1004 TAF ESRD)
11
(4) 2つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108及びGS-US-320-0110)の併合解析に
より、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)に基づく骨密度のベースラインから48週
時までの変化について、本剤が骨密度に及ぼす影響をTDFと比較しました。ベースライ
ン から 48週 時までの 骨密 度の平均 低下率 は、腰 椎では本 剤群 0.6%、TDF群 2.4%
(p<0.001)であり、寛骨では本剤群0.2%、TDF群1.9%(p<0.001)でした。腰椎の骨
密度が3%を超えて低下した患者の割合は、本剤群20%、TDF群38%でした。また、寛
骨の骨密度が3%を超えて低下した患者の割合は、本剤群8%、TDF群27%でした。なお、
本剤群の骨密度の平均低下率は、寛骨で48週時に比し24週時で大きく(24週時で
-0.248%、48週時で-0.163%)
、腰椎での骨密度の平均変化率(24週時で-0.787%、48週
時で-0.570%)も同様の傾向でした。したがって、本剤群の骨密度のベースラインから
の変化率は、TDF群と比較して小さいものの、本剤群でも骨密度の低下が認められたこ
とから設定しました。
(5) 体 脂 肪 の 再 分 布 / 蓄 積 は 、 特 定 の 核 酸 系 逆 転 写 酵 素 阻 害 薬 ( nucleotide reverse
transcriptase inhibitors: NRTIs)の薬理作用に関連する事象と考えられています。TDF
において、CHB患者を対象とした国内外臨床試験では認められていませんが、HIV-1
感染症患者を対象とした海外臨床試験において体脂肪の再分布/蓄積が報告されて
います。また、自発報告においては、少ないながらB型慢性肝疾患患者で体脂肪の
再分布/蓄積が報告されています。なお、HIV-1感染症患者を対象としたTAFを含む配合
剤の臨床試験において、エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/TAF
(E/C/F/TAF)又はF/TAFを投与された2950例のうち、体脂肪の再分布/蓄積に関連
した有害事象は7例(0.2%)と非常に少なく、また重症度はいずれもGrade 1でした。
B型慢性肝疾患患者を対象とした2つの国際共同第3相臨床試験(GS-US-320-0108及び
GS-US-320-0110)では、体脂肪の再分布/蓄積は認められていません。
12
【使用上の注意】
3.相互作用
本剤は P 糖蛋白(P-gp)及び乳癌耐性蛋白(BCRP)の基質である(
【薬物動態】の項参照)。
(1)併用禁忌(併用しないこと)
薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
リファンピシン(リファ テノホビル アラフェナミドの血漿中 強力な P-gp の誘導作用に
濃度が低下し、本剤の効果が減弱する より、テノホビル アラフ
ジン)
おそれがある。
ェナミドの血漿中濃度が
低下するおそれがある。
セ イ ヨ ウ オ ト ギ リ ソウ
(セント・ジョーンズ・
ワート)含有食品
(2)併用注意(併用に注意すること)
薬剤名等
リファブチン
機序・危険因子
臨床症状・措置方法
テノホビル アラフェナミドの血漿中 P-gp の誘導作用により、
濃度が低下し、本剤の効果が減弱する テノホビル アラフェナミ
おそれがある。
ドの血漿中濃度が低下す
るおそれがある。
カルバマゼピン
フェノバルビタール
フェニトイン
ホスフェニトイン
13
解説
In vitro 試験成績*
In vitro 及び in vivo 試験成績
*
In vitro では、TAF は、肝細胞側底膜の取り込みトランスポーター
OATP 1B1 及び 1B3 の基質でありますが、排出トランスポーター(P-gp 及び BCRP)の
基質でもあります。
≪併用禁忌≫
腸管内で P 糖蛋白(P-gp)を強力に誘導する薬剤と併用した場合、TAF の血漿中濃度が
低下し、本剤の効果が減弱するおそれがあることから、
リファンピシン(リファジン)とセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)
含有食品は併用禁忌に設定しました。
≪併用注意≫
腸管内で P-gp を誘導する薬剤と併用した場合、TAF の血漿中濃度が低下し、
本剤の効果が減弱するおそれがあるため、
リファブチン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ホスフェニトイン
を併用注意に設定しました。
*
社内資料:トランスポーターに関する試験(AD-120-2018)
14
【使用上の注意】
4.副作用
2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)における 48 週
時までの成績では、本剤を投与された B 型慢性肝疾患患者 866 例(日本人 56 例を含む)
中 123 例(14.2%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められた。主な副作用は、悪心 17
例(2.0%)
、疲労及び頭痛各 12 例(1.4%)
、腹部膨満 9 例(1.0%)等であった。
(承認時)
解説
本剤の 2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)で TAF
25 mg を 1 回以上投与された患者は 866 例であり、そのうち日本人は 56 例でした。両試
験において、本剤及び TDF はともに良好な忍容性を示し、Grade 3 又は 4 の有害事象、
重篤な有害事象又は有害事象による治験薬の投与中止を認めた患者の割合は低値でした。
有害事象の発現率及び種類は両群間で類似しており、Grade 3 又は 4 の臨床検査値異常の
発現率も両群間で同程度でした。
本剤の TDF に対する非劣性が確認されたことから、Week 48 時点の 4 つの主要な安全性
評価項目に対し、事前に定めた両側有意水準により fallback 法を用いて、逐次的に多重性
の調整を行いました。
調整した有意水準に基づき、Week 48 時点では 4 つの安全性評価項目のうち 3 つで、本剤
の TDF に比較して好ましい、統計学的に有意な差が認められ、寛骨の骨密度(BMD)の
ベースラインからの平均変化率(SD)は本剤群−0.163(2.2437)、TDF 群−1.860(2.4525)
(p<0.001)
;脊椎 BMD では本剤群−0.570(2.9147)、TDF 群−2.366(3.2051)
(p<0.001)
;
及び血清クレアチニンのベースラインからの平均変化量(SD)は本剤群 0.010
(0.1140) mg/dL、TDF 群 0.024(0.0974) mg/dL(p=0.012)でした。
試験治療下での蛋白尿が発現した症例数については、本剤群と TDF 群に統計学的に有意
な差は認められませんでした(p=0.26)。
BMD の結果は、骨形成マーカー[プロコラーゲン 1 型 N 末端プロペプチド(P1NP)、
骨型アルカリホスファターゼ(bsAP)及びオステオカルシン(OC)]並びに骨吸収
マーカー[I 型コラーゲン架橋 C テロペプチド(CTX)]の変化で、本剤群の方が TDF
群よりも有意に小さかった(p<0.001)ことからも裏付けられました。
15
【使用上の注意】
4.副作用
(1)重大な副作用
1)腎不全等の重度の腎機能障害(頻度不明注)
腎機能不全、腎不全、急性腎不全、近位腎尿細管機能障害、ファンコニー症候群、急性
腎尿細管壊死、腎性尿崩症、腎炎等の重度の腎機能障害があらわれることがあるので、
定期的に検査を行う等観察を十分に行い、臨床検査値に異常が認められた場合には、投
与を中止するなど適切な処置を行うこと。特に腎機能障害の既往がある患者や腎毒性の
ある薬剤が投与されている患者では注意すること(〈用法・用量に関連する使用上の注
意〉、「重要な基本的注意」及び【薬物動態】の項参照)。
2)乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)(頻度不明注)
乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)が報告されている。観察
を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど適切な処置を行う
こと。
注
:テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含有する製剤の臨床試験、製造販売後調査及
び自発報告等で報告されているため頻度不明。
解説
1) 腎不全等の重度の腎機能障害(頻度不明注)
本剤では腎機能障害の程度に応じた用量調節は不要ですが(
「用法・用量」の項参照)
、
本剤の臨床試験において、腎機能関連の有害事象が認められていること、また、TDF群
に比べ変化量は小さいものの本剤群でも血清クレアチニンの上昇及びeGFRCGの低下傾
向が認められることから、テノゼット錠300 mgと同様の注意喚起を設定しました。
なお、クレアチニン・クリアランスが15mL/分未満の腎機能障害患者における本剤の薬物
動態は検討されていません。
2) 乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)(頻度不明注)
脂肪肝と関連する乳酸アシドーシスは、NRTIsの薬理作用に関連する有害事象と一般的
に考えられております。
2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)では、乳酸
アシドーシス、高乳酸血症、乳酸値上昇及び肝腫大に関連した有害事象の報告はあり
ません。
しかしながら、治験薬との因果関係は否定されているものの、脂肪肝が本剤群 866 例
のうち 5 例(0.6%)、TDF 群 432 例のうち 1 例(0.2%)で認められました。
16
【使用上の注意】
4.副作用
(2)その他の副作用
以下の副作用が認められた場合には、症状に応じて適切な処置を行うこと。
器官分類
消化器
臨床検査
筋・骨格系
神経系
精神系
皮膚
その他
1%以上
悪心、腹部膨満
頭痛
0.5%以上 1%未満
消化不良、下痢、放屁、
上腹部痛、便秘
ALT 増加
関節痛
浮動性めまい
不眠症
そう痒症、発疹
疲労
解説
2 つの国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)におけるそれぞれ
の試験で発現した副作用名に基づき記載しています。発現頻度は、それぞれの試験における本
剤 群 及 び TDF 群 に 分 け て 記 載 し て い ま す 。 [ 別 添 1
国際共同第Ⅲ相臨床試験
(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)における副作用発現状況](P.26~30)をご参照くだ
さい。
17
【使用上の注意】
5.高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しており、合併症や併用薬の使用が多くみられることか
ら、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
解説
一般に高齢者では生理機能が低下していることや、合併症や併用薬の使用が多くみられる
ことから、併用薬の使用頻度が増え、副作用が発現しやすくなることが考えられます。患
者の状態を十分に観察し、慎重に投与してください。
<参考>
母集団 PK 解析の結果、年齢は CHB 患者の TAF 又は TFV の曝露量に影響を及ぼさず、
統計学的に有意な、又は臨床的に重要な共変量ではありませんでした。
18
【使用上の注意】
6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
(1) 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断
される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立されていない。
動物試験ではテノホビル アラフェナミドによる催奇形性(ラット及びウサギ)
、又は生
殖機能に対する影響(ラット)は認められなかった。
(2) 授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。[動物試験でテノホビルの乳汁
への移行が報告されている。テノホビル アラフェナミドのヒト乳汁への移行の有無に
ついては不明である。]
解説
ヒトにおける本剤及びその代謝物の妊婦、産婦への影響及び乳汁移行については不明
です。それらの胚・胎児発生に対する影響をラットとウサギで、乳汁移行性について
動物実験で検討しました。
(1)TAF の動物実験では、催奇形性、又は生殖機能に対する影響は認められませ
んでした。しかしながら、人における妊婦への影響は検討されておらず不明で
あるため、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が胎
児への危険性を上回ると判断される場合のみに投与してください。
(2)TAF の動物実験において、TAF の乳汁への移行が報告されていますので、授
乳中の婦人には投与することを避けてください。
19
【使用上の注意】
7.小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない(使用経験
がない)。
解説
国内外において小児等を対象とした臨床試験は実施しておらず、使用経験がないことから、
安全性は確立していません。
20
【使用上の注意】
8.過量投与
本剤の過量投与時には、毒性の徴候について観察し、バイタルサインのモニタリングや臨
床状態の観察等の一般的な支持療法を考慮すること。
テノホビルは血液透析により約 54%が除去される。
解説
海外臨床試験において、健康成人 58 例に本剤 125mg を空腹時単回経口投与したときの
有害事象の発現頻度及び重症度は、本剤 25mg 又はプラセボ投与時に報告されたものと
同様でした。
また、この 58 例からはグレード 3 又は 4 の有害事象、重篤な有害事象又は治験薬投与
中止に至った有害事象は報告されませんでした。
また、本剤の過量投与に対する特別な解毒剤がないため、
過量投与した場合にはバイタルサインのモニタリングや患者の臨床状態の観察等の適切な
処置とともに、一般的な支持療法を行うことを推奨いたします。
なお、TFV は血液透析により約 54%除去されます(GS-01-919)。
21
別添1
国際共同第Ⅲ相臨床試験(GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110)における副作用発現状況
承認時までの状況
承認時までの状況
(国内症例のみ)
(国内症例を含む全試験症例)
27
266
試験施設数
安全性評価対象症例数
副作用発現症例数(副作用発現症例率)
副作用
TAF 25 mg
TDF 300 mg
TAF 25 mg
TDF 300 mg
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
(%)
(%)
(%)
(%)
56
17
866
432
9 (16.1)
4 (23.5)
123 (14.2)
68 (15.7)
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
(国内症例のみ)
(国内症例を含む全試験症例)
器官別大分類
TAF 25 mg
TDF 300 mg
TAF 25 mg
TDF 300 mg
N=56 (%)
N=17 (%)
N=866 (%)
N=432 (%)
0
1 (5.9)
0
2 (0.5)
貧血*
0
1 (5.9)
0
2 (0.5)
心臓障害*
0
0
2 (0.2)
1 (0.2)
動悸
0
0
1 (0.1)
1 (0.2)
心室性期外収縮
0
0
1 (0.1)
0
耳及び迷路障害
0
0
0
1 (0.2)
回転性めまい
基本語
血液及びリンパ系障害*
0
0
0
1 (0.2)
*
0
0
1 (0.1)
2 (0.5)
副甲状腺機能亢進症*
0
0
1 (0.1)
2 (0.5)
0
0
2 (0.2)
0
屈折障害
0
0
1 (0.1)
0
霧視
0
0
1 (0.1)
0
胃腸障害*
6 (10.7)
1 (5.9)
61 (7.0)
34 (7.9)
下痢*
1 (1.8)
0
4 (0.5)
5 (1.2)
消化不良
0
0
8 (0.9)
8 (1.9)
心窩部不快感
0
0
1 (0.1)
0
腹部膨満
0
0
9 (1.0)
2 (0.5)
放屁*
0
0
5 (0.6)
2 (0.5)
慢性胃炎
0
0
1 (0.1)
0
胃炎
0
0
0
1 (0.2)
内分泌系障害
眼障害
22
副作用
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
(国内症例のみ)
(国内症例を含む全試験症例)
器官別大分類
基本語
TAF 25 mg
TDF 300 mg
TAF 25 mg
TDF 300 mg
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
(%)
(%)
(%)
(%)
1 (1.8)
1 (5.9)
5 (0.6)
3 (0.7)
腹痛
0
0
1 (0.1)
0
便秘
1 (1.8)
0
5 (0.6)
1 (0.2)
胃食道逆流性疾患
0
0
3 (0.3)
0
腹部不快感
0
0
3 (0.3)
1 (0.2)
便意切迫
0
0
1 (0.1)
0
排便回数増加
0
0
0
1 (0.2)
3 (5.4)
0
17 (2.0)
16 (3.7)
嘔吐
0
0
2 (0.2)
1 (0.2)
吐き戻し
0
0
0
1 (0.2)
0
0
0
1 (0.2)
1 (1.8)
0
15 (1.7)
13 (3.0)
疲労*
1 (1.8)
0
12 (1.4)
9 (2.1)
倦怠感
0
0
2 (0.2)
2 (0.5)
無力症
0
0
1 (0.1)
1 (0.2)
発熱
0
0
0
1 (0.2)
異常感
0
0
1 (0.1)
0
1 (1.8)
0
6 (0.7)
1 (0.2)
感染性下痢
0
0
1 (0.1)
0
口腔ヘルペス
0
0
1 (0.1)
1 (0.2)
1 (1.8)
0
3 (0.3)
0
0
0
1 (0.1)
0
0
0
10 (1.2)
6 (1.4)
アミラーゼ増加
0
0
1 (0.1)
1 (0.2)
リパーゼ増加*
0
0
1 (0.1)
0
0
0
4 (0.5)
1 (0.2)
肝酵素上昇
0
0
1 (0.1)
1 (0.2)
血中ビリルビン増加
0
0
1 (0.1)
0
骨密度減少
0
0
1 (0.1)
1 (0.2)
上腹部痛*
悪心
*
口内乾燥
一般・全身障害及び投与部位の状態
*
感染症及び寄生虫症
上気道感染
鼻咽頭炎
臨床検査*
アラニンアミノトランスフェラーゼ増加
23
副作用
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
(国内症例のみ)
(国内症例を含む全試験症例)
器官別大分類
基本語
TAF 25 mg
TDF 300 mg
TAF 25 mg
TDF 300 mg
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
(%)
(%)
(%)
(%)
血中副甲状腺ホルモン増加
0
0
0
1 (0.2)
体重減少
0
0
0
1 (0.2)
0
0
1 (0.1)
0
0
0
0
1 (0.2)
0
0
6 (0.7)
6 (1.4)
食欲減退*
0
0
3 (0.3)
4 (0.9)
2 型糖尿病
0
0
1 (0.1)
0
ビタミン D 欠乏
0
0
1 (0.1)
0
低カリウム血症
0
0
1 (0.1)
1 (0.2)
ラクトース不耐性
0
0
0
1 (0.2)
0
0
21 (2.4)
12 (2.8)
交換神経性後頸部症候群
0
0
1 (0.1)
0
骨硬化症
0
0
1 (0.1)
0
骨痛
0
0
2 (0.2)
2 (0.5)
関節痛
0
0
4 (0.5)
4 (0.9)
骨減少症
0
0
1 (0.1)
3 (0.7)
骨粗鬆症
0
0
2 (0.2)
0
筋肉痛
0
0
3 (0.3)
1 (0.2)
筋痙縮
0
0
2 (0.2)
0
筋肉疲労
0
0
0
1 (0.2)
背部痛
0
0
2 (0.2)
3 (0.7)
四肢痛
0
0
2 (0.2)
0
筋骨格系胸痛
0
0
0
1 (0.2)
筋骨格痛
0
0
1 (0.1)
0
頚部痛
0
0
0
1 (0.2)
腱炎
0
0
1 (0.1)
0
3 (5.4)
0
24 (2.8)
17 (3.9)
1 (1.8)
0
3 (0.3)
2 (0.5)
0
0
1 (0.1)
0
血中クレアチニンホスホキナーゼ増加*
尿中アルブミン陽性
代謝及び栄養障害*
筋骨格及び結合組織障害*
神経系障害*
傾眠
第 7 脳神経麻痺
24
副作用
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
(国内症例のみ)
(国内症例を含む全試験症例)
器官別大分類
基本語
TAF 25 mg
TDF 300 mg
TAF 25 mg
TDF 300 mg
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
(%)
(%)
(%)
(%)
1 (1.8)
0
12 (1.4)
8 (1.9)
浮動性めまい*
0
0
4 (0.5)
4 (0.9)
体位性めまい
0
0
2 (0.2)
2 (0.5)
頭部不快感
0
0
1 (0.1)
0
感覚鈍麻*
0
0
0
2 (0.5)
1 (1.8)
0
1 (0.1)
1 (0.2)
0
0
5 (0.6)
4 (0.9)
激越
0
0
1 (0.1)
0
うつ病
0
0
0
1 (0.2)
不眠症
0
0
4 (0.5)
3 (0.7)
腎及び尿路障害
0
0
3 (0.3)
0
排尿困難
0
0
1 (0.1)
0
蛋白尿
0
0
2 (0.2)
0
生殖系及び乳房障害
0
0
2 (0.2)
1 (0.2)
不規則月経
0
0
1 (0.1)
1 (0.2)
無月経
0
0
1 (0.1)
0
1 (1.8)
2 (11.8)
16 (1.8)
3 (0.7)
脱毛症
0
0
3 (0.3)
0
円形脱毛症
0
0
1 (0.1)
0
皮膚乾燥
0
0
3 (0.3)
0
皮膚変色
0
0
1 (0.1)
0
皮膚炎
0
0
1 (0.1)
0
湿疹
0
0
1 (0.1)
0
皮脂欠乏性湿疹
0
1 (5.9)
0
1 (0.2)
1 (1.8)
1 (5.9)
6 (0.7)
2 (0.5)
発疹
0
1 (5.9)
2 (0.2)
1 (0.2)
丘疹性皮疹
0
0
2 (0.2)
0
斑状丘疹状皮疹
0
0
1 (0.1)
0
0
0
1 (0.1)
0
頭痛*
味覚異常
精神障害
皮膚及び皮下組織障害*
そう痒症*
血管障害
25
副作用
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
GS-US-320-0108 及び GS-US-320-0110
(国内症例のみ)
(国内症例を含む全試験症例)
器官別大分類
基本語
TAF 25 mg
TDF 300 mg
TAF 25 mg
TDF 300 mg
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
副作用発現例数
(%)
(%)
(%)
(%)
0
0
1 (0.1)
0
高血圧
(MedDRA version 18.0)
*
同一症例に同じ器官別大分類を持つ事象(基本語)が複数発現した場合は、器官別大分
類の総数は 1 例として集計しています。
社内資料: TAF Week 48 ISS – Japan (Table 11); CSR Week 48 (Japan) Study GS-US-320-0108 & Study
GS-US-320-0110
26
TAF16GS0019EX
2016 年 12 月作成(第 1 版)