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Title
皮膚悪性腫瘍に対する軟X線療法のTDF値による評価( 内容
の要旨(Summary) )
Author(s)
加藤, 優
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第900号
Issue Date
1994-03-16
Type
博士論文
Version
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/15376
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名(本籍)
加
藤
学位の種類
博
士(医学)
学位授与番号
乙第
900
学位授与日付
平成
6
学位授与の要件
学位規則第4条第2項該当
学位論文題目
皮■悪性腫動こ対する軟X線療法のTDF値による評価
審
査
委
員
優(岐阜県)
号
年
月16
3
日
(主査)教授
森
俊
二
(副査)教授
土
偉
誉
論
井
文
内
容
教授
の
野
要
間
昭
夫
旨
TDFとは,timedosefractionationfactorの略語で・1973年にOrtonとEllisが,放射線の照射効果を表わ
す新しい概念として発表した。TDF=nXdl・53×Ⅹ-&10×10-3で表わされ,照射回数(n)が多いほど,1回
照射量(d)が大きいはど照射間隔(Ⅹ)が短いはど・TDFは大きい値に計算され,照射効果は高いと考えら
れる。このTDFは,197時Storckにより,皮膚科領域に導入され,従来の照射の終了の目安とされた総射量,
腫瘍の消失,正常部のビラン反応の惹起にくらべて,非常に進歩した。
当院皮膚科において過去11年間に・主にSiemens-Reiniger社のDermopan=型を用いて軟Ⅹ線療法により治療
してきた扁平上皮癌19症例・基底細胞癌15症例の照射成嵐予後について,TDF,PTによる検討を行い,さ
らに照射面積,腫瘍の厚さ,照射体積との関係も検討した。
TDFの検討に入る前にDermopanⅡの線量測定を行った0上野の方法に順じた実験セットを作成して,種々
の照射条件(Stufe)・照射面積の場合の皮膚表面線量,深部線量を測定して,線量減弱曲線,半価深度を求めた。
ファントムとして・MiXDpとその上に脱銀したフイルムベースを重ねて用いた。
StufeⅡの場合,12cmツーブスで照射面積が78・5c坑36・Oc&,25・Oci,12.6c&の際の,皮膚表面線量はそれぞれ
61・3R・59・9R・57・8R・56・7Rで・照射面積が少なくなると少しずっ小さくなっていた。
4cmのツーブスで照射面積が2・OcEfの際の皮膚表面線量は,55.5Rであった。
StufeⅢの場合,12cmツーブスで照射面積が78・5c&・19・6c&・12・6cポの際の皮膚表面線量は,それぞれ84.8R,
82.4R,81.4Rであった。
4cmツーブスを用いて,照射面積が12・6ci・8・Oc航6・Oc楓4・OcHfの際の皮膚表面線量はそれぞれ86.7R,85.1
R,84・7R,85.1Rであった。
3cmツーブスを用いて・照射面積が7・1cd・4・Oc航2・Ocdの際の皮膚表面線量はそれぞれ83.OR,80.8R,75.9R
であった。
2cmッーブスを用いて・頗射面積が3・Ocポ・2・Oc肋際の皮膚表面線量は78.汎76.1Rであった。
StufeⅣの場合,12cmツーブスを用いて・照射面積が78・5c航36・Oc航25・Oc航12.6cぬ際の皮膚表面線量は,
それぞれ71・8R・70・5R,70・OR,69.4Rであった。
4cmツーブスを用いて・照射面積が12・6c楓7・Oc&・2・Oc紬際の皮膚表面線量はそれぞれ72.OR,70.8R,65.3
次いで,TDF値について検討した。口唇部以外の扁平上皮癌は11症例あり,照射面積が10cポ以上の症例(7
症例)のTDFは,98・7-224・9(平均161・7)で・照射面積が10c株満の症例のTDFは99.4-132.5(平均114.2)
と・照射面積が10c揃後でTDF値の大きさに差がみられた。照射面積とTDFとの相関係数は0.72と強い相関
がみられた。
口唇部以外の扁平上皮癌で腫瘍の厚さが5m以上の症例は4例あり,TDFは159.4-224.9(平均186.9)で腫
瘍の厚さが5mm未満の7例のTDFは98・7-163・2(平均120・1)でI腫瘍の厚さが5皿皿前後でTDF値の大きさ
に差がみられた。腫瘍の厚さとTDFの相関係数は0・68と軌、相関がみられた。
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口唇部以外の扁平上皮癌で,照射体積が5c止を超えるものは4例あり,TDFは159.4∼224.9(平均186.9)でt
腫瘍の体積が5cd未満の7症例の98.7-163.2(平均120.1)と5cd前後で差がみられた。照射体積とTDFの相
関係数は0.88と非常に強い相関がみられた。
口唇部扁平上皮癌は8例あり,照射面積は2.2∼12.OcⅡf(平均6.8cⅡf)TDF61.2∼138.8(平均107.8)照射面積
とTDFの相関係数は0.72と強い相関がみられた。
口唇部扁平上皮癌は,腫瘍の厚さが5mm未満が7例,5皿mを超えるものは・1例のみ,TDFは61.2∼138.8(平
均107.8)であった。腫瘍の厚さとTDFの相関係数は0.68と強い相関がみられた。
口唇部扇平上皮癌は,腫瘍の照射体積が3d未満が7例で,TDFは61.2∼131.4(平均103.4)低値であった。
照射体積とTDFの相関係数は0.65とかなり強い相関がみられた。
軟Ⅹ照射した後,経過を観察できた扁平上皮癌15症例について,PTと予後の関係を調べた。症例7(側頭部,
照射面積37.7cd
F163.2
DF200.3
PT2914.2)は強い癒痕形成がみられた。症例9(手指背,照射面積14.3cば
TD
PT2561.5)は,潰瘍形成がみられた。その他の4症例は,軽い療痕形成がみられた。残りの9症例
は,はとんど癒痕を残さず治癒した。
基底細胞癌は15症例あり,TDF84.7∼218.8(平均1亜.7),照射面積は1.56cぱ∼12.00c坑(平均6.80c皿ぞ),照射
面積とTDFの相関係数は-0.06と,正の相関も負の相関もみられなかった。
基底細胞癌の症例の腫瘍の厚さは0.38mm∼3.25nn(平均l.86mm)で,厚さ2mm以上の6症例のTDF平均168.
8で2mm未満の5症例のTDF平均135.8と厚さが2mmを墳としてTDF値に差がみられた。腫瘍の厚さとTDF
の相関係数は0.64と強い相関がみられた。
基底細胞癌の症例中照射体積が1.Ocd以上の5症例のTDF平均166.7,1.OcⅡ抹満の6症例のTDF平均143.1
と有意差がみられた。照射体積とTDFの相関係数は0.27とやや相関がみられた。
軟Ⅹ線照射後皮膚の経過を観察できた基底細胞癌13症例についてPTと予後の関係を調べた。症例5(鼻翼部,
照射面積9.45c虚TDF218.8
PT2963.9)症例12(内眼角部,照射面積5.75c&
TDF203.2
PT2824.4)
は,強い癒痕形成がみられた。
7症例は,軽い頼痕形成が残った。残りの4症例は,ほとんど癒痕を残さず治癒した。
照射を行った扁平上声癌19例,基底細胞癌15例について,Ellisのdataから求めた照射面積におけるNSDと
実際に照射したときのPT値を比較して,予後との関係を調べた。扁平上皮癌はPT>NSDの症例は7症例あ
り,経過を観察できた3症例は,強い癒痕,潰瘍などを形成していた。PT<NSDの症例は12症例で,3症例
は軽い癒痕を残した。残りの9症例は,はとんど療痕を残さず治癒している。
基底細胞癌はPT>NSDの症例6症例で,経過を観察できた5症例は,掛、癒痕∼軽い癒痕がみられた。
PT<NSDの症例9症例のうち経過を観察できた8症例はt全例わずかに癒痕一色素沈着のみで治癒してい
る。従って,照射面積が10cⅡf未満の扁平上皮癌,5c虎夫満の基底細胞癌には,殆ど障害を残すことなく照射が可
能であるので,非常に有効な治療法と考えられた。
論文審査の結果の要旨
申請者加藤
優は,軟Ⅹ線装置,デルモパンⅡ型の線量,線質の実測を種々の条件の下に行った。これらの測
定結果をもとにして実際に治療を行った皮膚悪性腫瘍に対してTDF値等による検討を行った結果,以下の成績
を得た。過去に軟Ⅹ線治療した扁平上皮癌19症例,基底細胞癌15症例の照射成績,予後についてTDF.PTによ
る検討を行い,照射面積が10cポ未満の扁平上皮癌,5cd未満の基底細胞癌には治療成績,予後が非常に良好であ
ることを明らかにした。
本研究の成果は皮膚悪性腫瘍の治療の進歩に貢献するものと認める。
[主論文公表誌]
皮膚悪性腫瘍に対する軟Ⅹ線療法のTDF値による評価
岐阜大医紀
42(2):掲載予定
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