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「あこがれの馬路村」
32年前、林業で栄えていた村だ。しかし林業は先細りの兆しが
見えていた。農協は、思いを切った。この村を全国の柚子の里に
しようと・・・しかしその道のりは長かった。現在売上、32億円を
ほとんど柚子で稼ぐその過程は長い歴史があった。「えぇか、通
販やるなりゃ、5年やそこりゃであきらめたらあかんきね!!」組合長、
東谷さんの声が響く。柚子を愛し、村を愛した人々の生き様こそ
が「奇跡の村」と言われる馬路村なのだ。
2010年6月24日 梅雨の合間の晴天の中、高知龍馬空港に降り立った。
車で3時間約60km向こうに、目指す馬路村がある。高知とはいえ、徳島よりの山村である。車は山間の国道
から村道にはいっていく。ところどころ川のせせらぎが聞こえ、解禁になった鮎の釣師たちが散見される。
まず出迎えてくれたのは、隣町の「映画館」の大将だっ
た。昭和30年代をかもし出す風情。決して綺麗とは言え
ず、いにしえのカオリが漂う。近代的とはいえないアング
ラ芝居小屋のような木造の映画館。時にはコンサート会
場にもなるらしい。
大将は「豆電球さん58歳」元フォークミュー
ジシャン、「馬路村」の歌を聞かせてくれた。
「♪ごっくん うまじむ~ら」「♪うまじ・・・湯・
ゆ・ゆ」。なつかしくて、あたたかい。これが
馬路への入り口だった。しかしこの親父、あ
などれん。高倉健も来たらしい。映画にも出
ているらしい。歌はCDとなって売られていた。
そんなタイムスリップの洗礼を受け、さらに車で20分、強烈な余韻のまま、私たちは馬路村に到着した。出
迎えていたのは、鶯の声だった。まずは、コールセンターと発送センターがある棟に入った。
地元の木材で作った綺麗な研修室だ。「まぁ一杯。」出てきた
のは「ごっくん、馬路村」というゆずドリンクだ。有名になってしまっ
ているが、「柚子の村を丸呑み」という意味なのだと思う。
営農販売課の兎本さまより説明が始まっ
た。素材⇒製造⇒販売⇒観光 といっ
たサイクルで、村を回している。雇用
創出・やりがい創出に軸を置いている。
例えば、緩衝材は、タオル。(一部今
治のタオルらしい) ごみを届けないと
いうコンセプトだ。
農協の職員30名 通販用のプロパー雇用60名、コールセンターは15名、工場・売店他業務を入れると農
協関係者が300人近くいるらしい。受注は、1000件~1200件/日、電話は250件/日 8:15~18:00、 通販売
上32億円でここ4・5年横ばい、商品:半分以上が冬のポン酢と夏のジュース、800トンのゆずを使用、流通
は、通販6割 流通4割、営業はいない。
商品開発は、この事業を26歳に立ち上げ32年手がけてきた組合長の東谷さんがしきっているという。商品
開発が肝で、まだ未完成で今から頑張るんだと若手の兎本さんは言う。
「私たちは『通販をする』ということを主軸にしているのではな
くそれは手段なだけ、『村をいかに売るか』が焦点で、個人
の利益は二の次なんだ」と。ここで、我に返った。そうだ、ここ
は農協なんだ。 ここに登場している組織は、
・生産農家(生産)
・農協従業員 ・農協関係者 ・お客様
本来、農業協同組合。組合員のためのもの。組合員とは農家であり生産者である。まず、農家ありきなのだ
った。儲かったお金は、組合員に還元すべきなのだ。そして、それが何よりもお客様を満足させている。
では何故、農協が、食品の製造・販売を手がけ、30億円を越える売上を上げたのか?
つづきは、馬路村農協の組合長、東谷さん58歳の登場だ。
馬路が他所とちがうのは、観光客を巻き込むところなんだ。
俺たちは田舎の村だ、何もない村だ。どう考えても都会や他
の村に秀でるものは「自然と柚子」だ。だから、どんどん視察
を受け入れることを考えた。馬路に遊びに来たお客様をどう
やってミカタにつけるかそればかり考えていた。物産展に出
展してもどう馬路に来てもらえるかを考えていた。
通販が成功した要因は、3つのバランスだと思う。
・商品⇒(良いというのは当たり前なんだ) ・売り方(伝え方) ⇒(「風を届ける」というコンセプトのカタログ) ・人がかかわる部分⇒コミュニケーション
正直、通販はなかなか伸びん。しかし、売れれば利益率が高い。
卸はしていないが、向こうからやってくる。今は、業務用を少ししよ
うかと考えている。それから化粧品・低価格のもの。高知女性の半
分が1回買ってくれる/年=3億円を目指す。
こんな山の中でも工夫すれば事業は成り立つということをやってみ
せたかった。それがなんとかここまで出来たと思う。
コールセンターも荷造りも発送も全部自分でやっている。
ヒントとなったのは、お客様の何通かの手紙。これを心の支えにや
ってきた。ここが俺の源泉だ。
儲かったお金は組合員に還元しているらしい。金利7%の馬路農協
の貯蓄金利。
馬路村の秘密・・・それは、「決算書に載らない3つの資産」
1.柚子の木
2.たっぷりの自然
3.にこにこした姿で働く村人
これが、馬路の源泉だ。決して他の町ではマネはできない。
「できればこのままでいて欲しい」と願うのはも僕だけではないかもしれない。
決して大きくなりすぎず、このシステムの参加者の満足があれば、僕はそれが
いいんだと思うな。
最後に、 何の屈託もなく全てをみせて頂いた馬路村のみなさま、組合長の東谷さま、そして、すばらしき視察
の機会を頂いた、業界の大先輩のDMGの田村哲二社長に感謝いたします。