経営戦略の作り方

中小企業のための
経営戦略の作り方
2014 年 1 月改訂版
経営環境がますます厳しくなる中にあっては、中小企業であっても明確な経営
戦略を策定したうえで、組織的に、かつ、継続的に経営力を高めていくことが
必要であり、そのための経営戦略の作り方を解説しました。
中小企業診断士
鶴石
悠紀
目
次
1. 経営戦略の目的
(1)経営戦略はなぜ必要になるのか
(2)経営戦略をどのように使うのか
2. 経営戦略の策定
(1)どういう会社にしたいのか(ビジョン)
① 経営理念とビジョンの違い
➁ 経営戦略と経営戦術の違い
(2)ビジネスモデルの検討
①ビジネスモデルとは
➁ビジネスモデルの注意点
(3)現状認識とギャップの把握
(4)SWOT分析のやり方
[SWOT 分析の事例]
[SWOT 分析の注意点]
(5)ギャップをいつまでにどうやって埋めるのか
(6)使える経営資源と使えない経営資源
(7)顧客と市場の明確化
(8)選択と集中
(9)戦略から戦術展開へ
(10)KFSの活用
①KFS とは
➁KFS は多層に深堀すること
➂KFS から戦術が明らかになる
(11)経営戦略の策定プロセスと戦略の完成
(12)経営戦略の策定事例
3. 最後は社員の力
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1.
経営戦略の目的
(1)経営戦略はなぜ必要になるのか
経営戦略というのは、自分の会社を「望ましい姿」に変えていく上で
の経営課題に対する選択を明確にしたものです。
戦略には、狙いとする着地点の姿が設定されていなければなりません。
最終的な到着港を決めていないで出港するのであれば、詳しい海図は
要らないし、まして、どのルートから進んでいくかと言う選択も不要
です。その日の状況に合わせて気ままに進んでいくことになりますが、
それでは狙いとする港があっても、永久にたどり着けないでしょう。
経営戦略は、
・将来の自社の狙いとする望ましい姿を描き、それに向かって、
・入手可能な経営資源を選択し、
・いち早く到達できる方法を決め、
・障害となる要素に予め対応策を備え、
・社員の力を分散させないように配置し、
・途中で待ち受けるトラブルに臨機応変に対処し、
・年々の進捗に合わせた最適な戦術を展開して、
期待通りに目標とする望ましい姿を実現する経営の海図なのです。
もっと分かりやすく言えば、会社を成長させ、存続させるための知恵
と言うことでもあります。
(2)経営戦略をどのように使うのか
経営戦略を経営の海図だと考えた時、出発港(現状)から目的港(望
ましい姿)までの経路は沢山の選択があるはずです。しかし、それぞ
れの選択に従って、必要時間が早かったり遅かったり、経費が高かっ
たり安かったり、嵐や座礁の恐れがあったり安全だったりと条件に違
いがあります。どの要因を一番重視するのかを決めるのも戦略の一部
なのです。言わば、どの要因は重視しないので、選択しないと明確に
腹を決めることでもあります。時間が早い方を重視して決めたのに、
途中まで行ったら経費がかかり過ぎるからと翻意して、別の安いルー
トに変更するのでは無駄が多いし、経費も時間も期待通りには得られ
ません。戦略は、最初にしっかり検討して策定したら、簡単に基本路
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線を変えないで徹底する必要があるのです。すなわち、何をやらない
か(どのルートは行かない)を最初に決めることになります。経営戦
略は、策定当初に想定した重要要因に予期せぬ大変化が起きない限り、
基本路線をころころ変えない指針として使うものです。重要要因以外
の前提条件に変化が起きることはしばしばありますが、それには戦術
で対処することになります。航海で言えば、運行の遅れを挽回するた
めに積荷を減らしたり、船員の病気のために予定外の寄港をしたりす
ることです。こういう時々の障害を乗り越えるための戦術は、毎年の
年度方針の中で対応していくのです。
経営戦略と称しているが、目標とする望ましい姿が不明確なままに設
定した経営戦術を戦略と勘違いする事があります。目標とする姿を、
利益を上げる会社とか累損の解消とか社員が元気な会社というように、
スローガンのようなイメージにおいてしまうと、経営戦略は作れませ
ん。経営戦略は、明確に設定された望ましい姿に向かって着実に毎年
進んでいるかどうかを評価する尺度としても使うのです。
さらに、経営トップが変わった時に、経営戦略を見直しすることが頻
繁に起きますが、こういう場合にも、現在の経営戦略のどこが問題な
のか、なぜ問題なのか、その問題は対応策があるのか、戦略の何処を
変えれば望ましい姿に早く近づくことになるのか、果ては、自分の会
社にとって今掲げている望ましい姿は間違いないものかなどを新経営
者が検証する場合にも、使われるのです。逆説すれば、経営戦略が明
確になっていない企業は、新しい経営者を迎えても、どこをどのよう
に変えるべきかを把握するまでに手間取ってしまうことになります。
このような使い方が出来るように、検証に応えられる内容の経営戦略
を作る必要があるのです。
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2.
経営戦略の策定
(1)どういう会社にしたいのか (ビジョン)
経営戦略を策定するには、将来どういう会社にしたいかという目標、
または望ましい姿を明確にして、それに向かって選択するべき方法や
方向を検討することになります。すなわち、目標の設定が最初に必要
になるのです。
目標は、どういう形のものでも構いませんが、一定の要件を満たして
いることが必要です。
一定の要件とは、
・どこの会社にでも当てはまるようなスローガンになっていないこと
・達成の時期が明確になっていること
・達成のための課題が浮かび上がるような指標を含んでいること
・企業の社会的責任に反するような視点を含んでいないこと
・お客様不在の利益主義や利己主義だけを求めないこと
少なくとも、こうした要件は満たしているべきでしょう。
思い付き易いのは、業界トップになると言う目標です。しかし、この
業界トップになると言うことの中味にまで真剣に議論しておくべきで
す。往々にして、シェアトップとか売上 No.1 とかを業界トップと考え
てしまいます。もちろん、それも指標の一つではありますが、この指
標は、企業活動の結果を後付けで見ていることです。結果が集計され
る前の段階では、何が起こるでしょうか。民生商品であれば、商店の
棚の前に立ったお客様が、幾つも並んだ競合商品の中から、当社の商
品を最終的に選んでいただいた結果として、シェアトップという数字
がうまれています。お客様がどういう気持ちで、どういう理由で選ん
でくださったのかに関心を持つこと、お客様の気持ちを今よりも一層
確実につなぎとめることに力を入れようとすること、こういうことが
数字の上だけのシェアトップよりも遥かに重要なのです。そうすると、
シェアトップをもたらす根拠となる戦略が見えてきます。
どういう会社にしたいのかと言うビジョンにお客様の視点を入れるこ
とによって、継続性がありグローバルに通用する戦略課題が明確にな
ってきます。
また、ビジョンはトップが社員に押し付ける形で設定すべきではあり
ません。全社員が納得して共有しているビジョンでなければならない
のです。
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①
経営理念とビジョンの違い
ところで、どういう会社にしたいのかと言う概念には、経営理念と
言う表現もあります。経営理念とビジョンとはどのように違いがある
のでしょうか。
経営理念とは、会社創業の精神とか、経営者の経営哲学とか、会社の
社会的な使命についての拠り所等を定めた言葉と言うことになります。
会社経営に関する経営者の価値観を示していると言うこともできます。
従って、経営理念には通常、達成時期とか目標数値は入らないのが普
通です。
これに対して、経営戦略を策定する上での目標としてのビジョンは、
経営理念に従って、何を何時までにどの程度まで達成したいかと言う
目標を示すものです。経営理念は最上位の経営哲学ですから、ビジョ
ンは理念に反したものであってはなりません。
例えば、
「浮利を追うことなく、お客様に真に喜ばれる製品だけを作りつづけ
る事が当社の使命である。」という表現は、経営理念に当たります。こ
れには、達成時期も達成内容も具体的には含まれていません。従って、
その時々の市場や顧客ニーズに合わせて製品を変えたり、経営分野を
変えたりしても経営理念は通用するのです。時代の変化が大きい場合
には、経営理念そのものも見直しすることはありますが、数年毎に定
期的に変えると言うようなものではありません。
これに対して、
「ハッチバック小型車分野で、3 年後に世界市場シェア 13%を達成す
る。」というのは、戦略のためのビジョンになります。達成時期や達成
内容が具体的に目標として示されています。ただし、品質は多少悪く
てもとにかく安い車を開発してシェアを伸ばせばよいと言う考え方で
ビジョンの達成を図るのは、上述した経営理念には合致していません。
「お客様に真に喜ばれる」ハッチバック小型車を作らなければならな
いのです。
経営理念があり、それを受けたビジョンがあり、ビジョンを具体化す
る経営戦略があり、経営戦略を推進するための具体的な行動としての
経営戦術があるという関係にあるのです。
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➁
経営戦略と経営戦術の違い
さらに、経営戦略と経営戦術はどう違うのでしょうか。
経営戦略は、ビジョンを実現するための幹に当たります。その幹は、
複数になるのが通例です。そして、幹毎に、つまり経営戦略ごとに戦
略達成目標を設定します。全ての戦略達成目標が実現できれば、確実
にビジョンの達成がされるように戦略が作成されるのです。
もっとも、経営戦略とビジョンの関係は、企業のおかれている状況や
規模などによって変わってきます。
前述した、
「ハッチバック小型車分野で、3 年後に世界市場シェア 13%を達成す
る。」というのがビジョンだと申しました。ところが、これは特定車種
の小型車に依存している中規模自家用車メーカーにとっては、ビジョ
ンになりますが、様々な大小車種の機種を製造している総合自動車メ
ーカーにとっては、経営戦略の一つと言うことになるでしょう。総合
自動車メーカーであれば、
「3 年後に世界生産台数 850 万台を達成する。」というようなビジョン
があり、それを達成するための戦略の一つとして、上述したハッチバ
ック小型車分野の戦略が策定されるのです。
そうすると、経営戦術とはどういうものになるでしょうか。戦略がビ
ジョン達成の幹であるとすれば、経営戦術は、幹を形として実現する
枝や葉に当たります。通常、経営戦術は、毎年度見直しされ、競争相
手の動向や市場の変化や技術開発の進展に合わせて優先度や選択を見
直しします。例えば、ハッチバック小型車の開発計画において、優先
度を変更して 1500 リッターのA車種を前倒しに市場投入する、そのた
めにB車種の開発陣から 200 名を 1 年間A車種の開発陣に異動させる
というような決定が経営戦術と言うことになります。
経営規模が大きい企業では、経営戦術レベルの選択に当たる内容が、
企業規模が小さく特定範囲に集中している企業にとっては、経営戦略
レベルの選択になると言う事は上述した通りです。
経営戦術の展開に当ってのさらに下位の概念は、マイルストーンとか
行動計画などの進捗管理に当たる内容になります。新製品管理の場合
には、大日程管理や小日程管理といわれる進捗管理がされます。つま
り、経営戦術には、戦略レベルに近い多くの経営資源を必要とするも
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のから、職場の判断で推進できるレベルのものまで含んでいることに
なります。
「戦略ありて戦術無し」という言葉があります。ビジョンを達成する
ために何をするかという構想は作れても、具体的に明日から何を始め
るかと言う行動に結び付けられる決定がされない、あるいは出来ない
場合に、戦術なしというのです。適切な戦術がなければ、戦略目標は
達成できず、ビジョンも実現しないことになるという関係です。
さらに言えば、経営戦略もあるし、それを実現する経営戦術も策定し
てあるが、戦略目標が達成できない事があります。戦術展開が思うよ
うにできていない場合は当然ですが、当初に設定する経営戦術が不十
分で、幹となる経営戦略を支えるだけの枝や葉の戦術の広がりがない
場合もそうなります。これは、設定した経営戦術を予定通りに進める
ことが出来れば、設定している経営戦略が達成できると言う因果関係
の見込み検証が不完全だからです。高い目標で経営戦略を設定してい
ても、実施していることは簡単に今できる範囲のことだけしかしてい
ないという場合には、戦略ありて戦術なしの状態を招くことになりま
す。
(2)ビジネスモデルの検討
①ビジネスモデルとは
ビジネスモデルとは、事業経営を継続していく上で、どのような経営
形態で競合との差別化を図り、継続的な利益を確保していくかと言う、
自社の経営を将来に亘って安定成長させていく経営コンセプトのこと
です。
どのような会社にしたいかと言うビジョンに伴い、そのビジョンをど
ういうビジネスモデルにすれば将来に亘って継続的に成長維持してい
けるかと言う検討が必要になります。ビジネスモデルが明確にされて
いない場合には、その時々の状況に応じて競合対策を図ったり、利益
確保のための応急措置を取らなければならない事態が頻発するように
なりやすいのです。
ビジネスモデルは、次のように事例でみると分かりやすいと思います。
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・携帯電話のビジネスモデルの例
携帯電話は、携帯電話本体を買えば終わりと言う商品ではありません。
それは、買った後で電話とかメールとかインターネット検索などに使
えなければならないものです。つまり、利用者は必ず利用時に通信サ
ービスを使うことになりますし、その通信サービス料金を負担するこ
とになります。
そうすると、携帯電話本体を非常に安くして、利用時の料金をやや高
めにして利用料で利益を確保する方法と、携帯電話本体を高くして、
利用料を安くして本体販売で利益を確保する方法と、それらの中間的
な方法とが考えられます。ところで、電話機本体は何年も使うもので
すから、一度販売したお客様は再購入するまでに何年か経過します。
したがって、本体販売で利益を確保する方法では、市場規模は利用者
年齢範囲の人口に制約され、比較的早く成熟してしまいます。それに
比べて、利用料で稼ぐモデルであれば、魅力的なサービスメニューを
どんどん増やすことで利用頻度を増やすとともに、頻繁に使われるた
びに利用料を得る事が出来ます。本体所有者の数が成熟しても、利用
料サービスの市場規模は成熟することなく増やしていけるのです。た
だし、利用料金で稼ぐためには、出来るだけたくさんの人に携帯電話
を持ってもらう必要があります。
こういう考え方で、一頃、本体購入無料という極端な時期がありまし
た。現在でも、高度な機能の割には、本体価格は安く抑えられていて、
購入後の利用サービスの幅や種類がどんどん広がり、利用者は毎月の
サービス料として相当の負担をしていますし、携帯電話サービス会社
の業績は、いまだに堅調なのです。
このビジネスモデルを、本体を買えば終わりと言う液晶テレビ販売の
ビジネスモデルと比較してみれば、サービス料金で稼ぐビジネスモデ
ルの良さが理解できるでしょう。液晶テレビのビジネスモデルは本体
の販売で稼ぐモデルなので、本体の製造技術が成熟すると、国際的な
価格競争にもさらされますから、今では国内大手メーカーの殆どが大
きな赤字事業に陥っています。
本体購入後のサービス料金で稼ぐビジネスモデルを成功させるために
は、魅力的なサービスが次々と提供されるということがポイントです。
携帯電話サービス業者だけでは膨大なサービスの提供は困難なので、
サービスを開発提供する専門業者と協力してともに成長しながら業界
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が発展しています。
ゲーム機のビジネスモデルも、本体価格を安くし、ゲームソフトを後
から買ってもらうと言うビジネスモデルですから、似ています。
・複写機のビジネスモデルの例
複写機は、本体購入時点でお客様が本体の購入価格を負担したり、リ
ース料金を負担したりしますが、さらに国内の商習慣として、お客様
がコピーを取るたびに一枚について何円かを負担するモデルです。複
写機メーカーには、本体売上だけでなく、コピーを使ってもらえばそ
れに応じて利用料が入る仕組みです。複写機の初期の時代には、感光
体という主要部品の寿命が短く、それの交換費用がかなり高いために
利用料を貰う代わりに感光体の寿命による交換を無償にするという考
え方があったからだと言う事のようです。しかし、その後、感光体自
体は技術開発が進み、長寿命の物になりましたが、利用料金を負担し
て頂くと言う商習慣は根付いたままでした。感光体の交換費用のメー
カー負担は大幅に改善されましたが、利用料金はそれほどには下げら
れていませんので、利用サービス料で稼ぐと言うビジネスモデルが定
着し、業界の健全成長につながっているのです。
これとは違いますが、パソコン用のプリンターでは、本体価格を安く
抑えて、印刷をする機会を増やし、インクが無くなった時にインク購
入価格を高めに設定して利益を稼ぐと言うビジネスモデルになってい
ます。これを消耗品で稼ぐモデルと言います。このために、プリンタ
ー各社は、年賀状の印刷とか、写真を自分で印刷するとか、手作りカ
レンダーを作るソフト提供等、印刷機会を増やすサービスに力を入れ
ているのです。
➁ビジネスモデルの注意点
上述したように、ビジネスモデルが明確で、かつ、継続的に利益を確
保できる仕組みになっていれば、過当競争に陥ることも少なくなり、
長年に亘って継続的に利益体質の事業を展開できるのです。
したがって、中長期の経営ビジョン(中長期経営目標)を設定した時
に、そのビジョンをどのようなビジネスモデルとして実現するのかと
言う検討は非常に重要です。それがないと、一時的にビジョンを達成
できても、短命な事業になりやすいのです。
さて、ビジネスモデルを検討する場合にも、注意しなければならない
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以下のようなポイントがあります。
・顧客不在にならないこと。
営利事業にはどんな場合でもお客様が存在します。お客様が売上や
利益に貢献して下さるのです。従って、お客様の視点と遊離したビ
ジネスモデルは成功しないと言えます。お客様の期待とか要望とか、
あるいは本能的な欲望とかを必然的に満たせるビジネスモデルでな
ければなりません。本体販売後のサービス提供で稼ぐと言うビジネ
スモデルでも、サービスそのものがお客様の期待に応えられる面白
さや利便性や納得できる料金で提供され、サービスの種類が多く幅
広い選択が出来ると言うことが実現できなければビジネスモデルと
して成立しえないのです。
・希望的要因を前提としないこと。
ビジネスモデルを考える場合に、不確実な要素について自分たちに
都合のよい解釈をして希望的要因を前提として検討してはならない
のです。いずれ環境規制がかけられるはずだとか、円はドルに対し
ていずれ大幅に安くなるに違いないとか、競争相手の技術は近いう
ちに行き詰るだろうとか、自分にとって都合のよい希望的な予測を
前提としたビジネスモデルは失敗しやすいのです。
・SWOT 分析の裏付けをすること。
ビジネスモデルを考える時には、後述するように、自社の強みはな
んであるか、弱みは何であるか、自社にとっての今後の機会はどん
なことがあるか、今後の脅威となる事は何か、などを分析するSW
OT分析を行い、強みが活かせるビジネスモデルを検討しなければ
ならないのです。もし、自社の弱みと関係するビジネスモデルとな
るのであれば、弱みを速やかに強みに変える戦略、たとえば敵対的
に買収などを戦略に取り上げざるを得ないのです。
・永久のビジネスモデルはないこと。
いかなるビジネスモデルでも永久不変と言うものはありません。技
術も変化しますし、お客様のニーズも変化しますし、グローバルな
競争環境も変化していきますので、理想的なビジネスモデルであっ
ても、いずれは利益確保につながらなくなる時が来るでしょう。
例えば、特許に守られた技術を差別化要因として技術や性能を成功
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要因とするビジネスモデルは、特許が切れてまえば成り立たなくな
るし、対抗技術が開発されても成り立たなくなります。従って、ビ
ジネスモデルと言えども、中期経営戦略の中で見直しや検証が必須
なのです。
(3)現状認識とギャップの把握
将来のいつの時点にどのような望ましい姿になりたいかと言うビジョ
ンが明確になれば、それに対して今はどうなのかを知っていなければ
なりません。現在の状況が正確に把握できていなければ、ビジョンに
到達するまでに必要な課題も曖昧になります。
現状認識は、ビジョンを実現する戦略推進、さらには年々の戦術展開
に何が使えるか、何が足らないか、国内や海外の政治経済状況がどの
ように追い風となるか向かい風となるのか、競争相手はどうなってい
るか今後どうなりそうかなど、様々な視点で認識しておかなければな
りません。認識の視野が狭いと、将来予期せぬ障害があれこれと起き
てきて、そのたびに右往左往したり、判断ミスを起こしやすくなりま
す。
現状認識のやり方にはどんな方法があるでしょうか。
① 主として自分たちの置かれている現状を客観的に掴む手法として、
SWOT分析があります。
これは、自社の強み(Strong)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、
脅威(Threat) を競合他社または対抗業種との比較で把握する方法
です。SWOT 分析では、抽象的な表現や根拠が不明確な内容は吟
味して事実を客観的に認識することが必要です。
例えば、わが社は、老舗であることが強みだと言うのであれば、
競合に比べてわが社のお客様は戦前からの御贔屓の比率が倍以上
になっている、というように把握するのです。単に創業が古いこ
とは強みとは言えないからです。
機会においても、インターネットの普及が機会をもたらすという
認識は、曖昧すぎます。インターネットの普及は世界中の誰にで
も当てはまるからです。わが社は、競合他社よりいち早く全国流
通網を完了していてネット受注に対しても翌日配送が出来るので、
インターネットの普及がわが社にとっては機会になるというよう
に根拠を明確にして認識します。
② 将来の自社を取り巻く経営環境を予測するための現状認識として
11
③
④
⑤
⑥
は、国内消費の伸び率、内外の経済成長率予測、円高の推移、グ
ローバルの主要市場の伸び、各国の賃金の伸び、旅行者の推移、
新築住宅の推移、失業率の推移など自社が属する業種の特性に合
わせた種々の指標を確認し、将来の動向を予測したデータも集め
ます。
この種の経済指標は、大型投資の時期の判断とか海外進出する時の
出先国の選択など基本的な経営判断をする場合に参考にするので
す。
自社の業績および経営資源の推移や現状を整理しておきます。こ
れには、売上の伸び、利益の伸び、利益率の推移、在庫量の推移、
シェアの推移、不良率の推移、資産の伸び、自己資本比率の推移、
社員数の推移、付加価値労働分配率の推移、損益分岐点の変化、
売れ筋商品の内容、部門損益や店舗損益の比較、進出地域の拡大、
利益事業と損失事業の推移など、過去の 5 年位の変化とそれらの
理由や原因を把握します。将来の予想が出来るものは、根拠を明
確にしたうえで予測もしておきます。これらは、商品や事業の選
択と集中を判断する上での裏付けとなるものです。
経営資源としての設備や資金や人材・労働力などは、現状および
将来の可能な強化策も検討しておきます。
技術系の企業であれば、新技術や新製品の開発状況、発売時期、
生産投資の必要見込みなどを把握します。
競合動向も分析します。
これは、新聞情報の範囲は簡単に把握できますが、それでは判断
が甘くなりやすいと言えます。共通のお客様からの情報とか購買
先からの情報などを常に集めるようにすることが重要です。
さらにお客様のニーズの変化を把握します。これには、自社や競
合企業の商品の売れ筋の変化や平均単価の推移、仕様に対するお
客様の期待の変化を確認します。時には営業員が足で聞き取って
くることも必要です。従来製品の延長上のお客様ニーズはこうい
う聞き取りでも把握できます。
しかし、お客様のニーズには、お客様が認識しているニーズだけ
でなく、潜在的な不満になっていることとか、実際の製品を使っ
てみて初めて良さに気付くものもありますので、顧客ヒヤリング
だけで判断するのは危険だという場合があるのです。そういう場
合には、先進的な意見を持っている特定集団を集めて自由に夢を
語ってもらうという方法をとることがあります。革新的な生き方
12
⑦
を指向している学生だけ集めて特定テーマについて意見を戦わせ
たりします。世界に初めて登場する新製品は、誰の意見を潜在的
なお客様ニーズとみなすかと言う判断が必要になります。
法規制や規制緩和の動向も把握します。特に規制緩和によって新
規参入が見込まれるような場合には、その影響を見極める必要が
あります。
戦略を作成する前に、このように幅広く現状認識を行い、客観的なデ
ータを集めて、戦略の方向を決める上で参考にするのです。
次に、ギャップの把握が必要になります。すなわち、目標としている
望ましい姿と現状との違いを認識すると言うことです。何年の間にそ
のギャップを埋めるかという戦略推進のスピードを決めるためでもあ
ります。ギャップが余りに大きい時は、正攻法の自助努力だけでは目
標が達成できないことになるでしょう。そういうときには、戦略の選
択肢に M&A や合併など他者の力を利用すると言う検討を加えること
になります。
現状とのギャップが大きいからと言って、ビジョンそのものをやさし
い目標に落としてしまうと、経営力が弱体化しやすいので要注意です。
経営戦略は、「想いは実現する」という姿勢を持つべきでしょう。
(4)SWOT分析のやり方
ここで、自社の現状分析に良く使われる SWOT 分析についてもう少し詳
しく説明しておきます。
[SWOT分析の事例]
まずは、事例を考えてみましょう。
「創業 300 年という老舗の街の納豆屋さんを考えてみます。職人は、昔か
らの製法の作業職人が殆どで、今後の高齢化が懸念されています。原料は、
これまで近隣の農家から仕入れていたのですが、農家の高齢化で近隣では
大豆生産が無くなりつつあり、北海道産の国産大豆は大手業者が畑買いす
るために入手が不安定で高値で買わざるを得なくなっています。健康ブー
ムで、納豆の需要は堅実に増えていますが、国産原料確保と老朽設備の更
新が課題です。ただし、昔からの近隣のお客様とは長い付き合いなので、
大手業者と同等の価格・品質であれば、引き続き買っていただけます。最
近、納豆が糖尿病にも良いと言う治験データが出たことから、高齢化に向
13
けて市場は拡大する見込みです。そうは言っても、中国産大豆は使いたく
はありません。」
さて、これだけの情報でどんな SWOT 分析が出来るでしょうか。
SWOT分析事例 ・・・ 老舗の街の豆腐屋さん
S 強み
W 弱み
・ 近隣の昔からの固定客が大半を占めており、
同じ品質・価格なら買い続けてもらえる。
・ 設備は償却済みで現在は投資負担がない。
・ 国産大豆の安定調達が出来ず、スポット買いで
高くなる。
・ 設備が古く、老朽化に備えが必要である。
・ 昔ながらの製法で品質安全を守っている。
・ 規模が小さく、需要があっても生産量に限界が
ある。
O 機会
T 脅威
・ 健康ブームで確実に消費が伸びている。
・ 糖尿病にも効果があると言う治験結果が発表
されて、さらに伸びると思われる。
・ 高齢化の加速によって安定的に市場が確保
されている。
・ 大手業者が国産大豆を囲い込んで原料確保
が難しくなる。
・ 職人の高齢化で熟練作業者が確保できなく
なる。
・ 市場の伸びとともに大手業者の増産設備投
資がされ、品質の良い低価格品が登場 する。
・ 老朽化した設備では品質 の安定確保が出来
なくなる。
[SWOT分析の注意点]
このSWOT分析の事例にも見られるように、SWOT を書き出す上での注
意点がいくつかあります。
① 強みと弱みが同じ事由を見る立場が違うだけで、両方に取り上げられ
ている。
このような場合は、本当に強みなのか、弱みなのか、どちらが影響と
して大きいのかを考慮しなければならないのです。
事例の中では、
強みとして、
「設備は償却済みで現在は投資負担がない。」と言う点が挙げられてい
ます。つまり、減価償却費がないので価格競争力があると言っている
のです。ところが、
弱みとして、
「設備が古く、老朽化に備えが必要である。」と言っています。いつ駄
目になるか分からないので、更新投資を予定しておかなければならな
14
➁
いと言うのです。そのための資金が必要になると言うことです。
これでは、古い設備を使い続けていることが、強みなのか弱みなのか
分からなくなります。
このような時には、現在の設備であと何年使えるかを見通して、具体
的に「後 5 年間は、償却負担のない設備が使える。」と言うように表現
します。そうすると、5 年後に設備更新資金を必要とするという脅威が
明白になります。
データの裏付けのない想像で分析しない。
事例の中では、
強みとして、
「近隣の昔からの固定客が大半を占めており、同じ品質・価格なら買
い続けてもらえる。」と言っています。
この中には、幾つもの情報がありますが、データの裏付けがあるのか
どうかが問題になります。すなわち、固定客が大半を占めているとい
うことは、そういう顧客データを把握して数年に亘って変化がないこ
とを掴んでいるのかどうか。知らないうちになじみ客の客離れが起き
ていないかどうかをデータで調べておかなければなりません。
また、同じ品質・価格なら買い続けてもらえるというのは、顧客満足
度調査を実施した結果としての裏付けがあることなのかどうか。勝手
に思い込んでいるだけでは危険です。お客さまも、なじみであれば、
口先では愛想よく振舞っていても、心の中では、大手企業の近代化設
備で作られたものの方が衛生的だと思っているかもしれないのです。
脅威として、
「市場の伸びとともに大手業者の増産設備投資がされ、品質の良い低
価格品が登場する。」と言う点を脅威に上げていますが、競争相手の経
営方針に関してどれだけ正確に把握しているかが問題です。想像だけ
で、疑心暗鬼になってしまうと判断を誤るのです。新規増産設備投資
をして、品質の良いものが作られるなら、価格をやや高くして投資回
収を早めようとする場合もあるのです。
このように、データの裏付けや根拠の薄弱な想像だけで、分析するこ
とのないようにしなければなりません。想像や思い込みで記述すると、
性格的に強気の人は何でも良い方に解釈し、性格的に悲観的な人は何
でも悪い方に解釈するようになってしまうのです。それでは、戦略作
成のための分析としては使えないのです。
15
➂
機会と脅威でも、同じ現象を見方の立場によって、機会と同時に脅威
に取り上げるときにも、注意が必要です。
「健康ブームで市場が安定拡大する。」と言う機会を、「市場が安定拡
大するから、大手業者が設備投資するので競争が厳しくなる。」という
脅威にも上げてしまうことがあります。ただし、強みと弱みとは違っ
て、機会と脅威は、表裏をなす場合もありますから、意識して注意す
れば良いでしょう。この場合には、機会はあるが、ぼやぼやしておれ
ば、競合に機会を取られて、一気に脅威に変化しますという分析にな
っているのです。つまり、投資決断をするなら早くしないと手遅れに
なると言う戦略決定の方向が見えることになります。
(5)ギャップをいつまでにどうやって埋めるのか
ギャップとは、ビジョンで定めた「こういう会社にしたいと言う姿」
と現状認識との差を言うのですが、このギャップをいつ何時までにど
のようなやり方でゼロにするかということが、戦略になります。
戦略構成には、いつまでにと言う時間軸要因と、どうやってという方
法要因とを含んでいます。
時間軸要因を決めるには、
・ 新しい技術がいつ頃までに完成できるか
・ 競合相手は競争商品を何時投入してくるか
・ お客様のニーズはどのくらい早く変化しているか
・ 当社の経営危機を金融機関が支えてくれるのはあと何年くらいか。
・ 規制緩和や法改正はいつから適用されるか
などがタイミングを決めることになります。
方法要因を決めるのは、
・ 自社技術だけで対応できるか
・ 自社の販売チャネルで対応できるか
・ 自社の設備や人的資源だけで対応できるか
・ 国内市場だけで実現できるか
・ 現在のビジネスモデルがまだ通用するか
・ 自己資金だけで対応できるかどうか
などからどんな方法でギャップを埋めるのが適切かを判断することに
なります。
もうひとつの見方は、ギャップを埋めるにはどうするかという課題を
16
明確にしてみることです。それらの課題を解決するための時間軸と方
法を決定することが戦略策定になるとも言えます。
さらに、戦略策定には誰が担当するか、実施部門はどこかなどの組織
の位置付けが必要です。これも方法要因の一つに含まれる内容ですが、
戦略の実現には、戦略推進の責任者および担当組織が明確にされてい
なければ実現しないのです。この点は、経営戦術でも同じことです。
(6)使える経営資源と使えない経営資源
経営戦略を推進するためには、経営資源の投下や活用あるいは消費が
不可欠です。
経営資源とは、人的資源、機械設備や固定資産、金融資産、資本金や
内部留保、技術力、所有特許、それにソフト資産ともいう信用力やブ
ランド力などです。
しかし、特定の経営戦略に対して効果的に使える経営資源とはならな
いものもあると言うことです。
特に、人的資源の場合には、社員数は多くても、戦略実現に活用でき
る社員数には限りがあったり、あるいは在籍している社員の経験やノ
ウハウ、資格等では戦略推進に役立たない場合があります。
信用力やブランド力でも、戦略に対して効果的に活用できない場合も
多々あります。例えば、トヨタ自動車は長年トヨタホームというブラ
ンドで住宅事業も行っていましたが、民間住宅市場ではトヨタブラン
ドの信用力が殆ど通用しませんでした。国内市場で確固たる地歩を築
いている企業でも、新規に海外進出する時には、ブランドが通用しな
いことがあります。
従って、経営戦略を策定する時には、自社の経営資源の中で、何が効
果的に活用でき、何が通用しないかも見極めなければならないのです。
それによっては、外部との提携や買収とか合併などの手段で、必要と
なる経営資源を確保することが必要ですし、その目途を立てること自
体が戦略目標になることもあります
ここで注意しなければならないことは、自社の経営資源だけでは対応
できないような経営戦略は早々とあきらめてしまって、自分だけで出
来る範囲の戦略しか選択しなくなることです。それでは、革新的な経
17
営体質への転換はできなくなってしまいます。想定している経営戦略
が自社の成長のために必要なら、積極的に外部との提携や協力を模索
して、戦略実現を可能にするように開かれた経営姿勢を進めるべきだ
ろうと思います。
人的資源に関しては、国内でも中途採用が当たり前になっていますか
ら、自社の在籍社員戦力だけでは難しい経営戦略であっても、外部か
らの人材充足を戦術として明確にしておけば問題はないと思います。
(7)顧客と市場の明確化
経営戦略では、顧客に提供するものが、商品であれサービスであれ、
対価を得て、継続的に提供されることになります。無償で配られる物
や自治体から税金で提供されるサービスは、そもそも商業行為ではな
いので、経営戦略の対象とは言えません。
すなわち、お客様に対価を払って買い上げて頂く物やサービスの提供
が経営であり、経営戦略を策定する時には、どんなお客様のどんなニ
ーズを満たすために何を提供するのかを明確にする必要があります。
そのためには、自分たちの戦略のターゲットにしようとしているお客
様は、どんなニーズや要求を持っているのかが分かっていなければな
りません。
逆説的に言えば、あらゆるお客様に満足される商品やサービスを提供
すると言うのは、非常に困難であり、非効率でもあります。自分たち
が狙いたい市場と狙いたいお客様を鮮明に区別して、そのお客様に対
して最も満足してもらえるものを集中して提供するということが戦
略として重要になります。
狙いたい顧客と市場に対しては、競合他社には決して負けない、最高
に満足して頂けるものを提供するということが戦略になるのです。そ
のためには、顧客や市場を漠然ととらえるのではなく、ターゲットと
する顧客と市場を線引きして認識することが必要です。そして、ター
ゲットとした市場では、第一人者になるのです。
例えば、化粧品市場と定義すれば、非常に広い概念になってしまいま
す。この漠然とした市場で第一人者を狙うには、膨大な経営資源と体
力が必要です。ところが、男性用化粧品と言えば、それだけで相当に
18
絞り込まれた市場になります。さらに、薄毛になった男性が頭部に使
う化粧品と言えば、さらに絞り込まれます。さらに、高齢者になって
乾燥肌になりやすい男性の薄毛の頭部に残っている毛髪の保護と肌
の健康に使う化粧品と定義すれば、対象者はぐんと絞り込まれます。
出来るだけ具体的に絞り込んだお客様に対して、そのニーズや要望を
くみ取り、最適な商品を開発し、その線引きされた市場では誰にも負
けない競争力があるように経営することで、経営資源の集中が出来、
規模の小さな企業でも立派に戦えることになります。このように、経
営戦略とは、いわば、手掛けないことにする市場を明確に線引きして、
狙ったところにだけ脇目も振らずに集中するという選択であると言
う事が出来ます。
もちろん、経営体力が許せば、同一の技術が使える商品やサービスを
隣接する顧客や市場に適用することで、徐々にターゲットとなる顧客
と市場を増やしていくことは可能です。
このように顧客と市場の明確化を進めるには、その顧客と市場の理解
を深めなければなりません。そのための方法としては、まずはお客様
満足度の調査と言うことになります。お客様が増えてくれば、会員制
のユーザー会を組織化して、ニーズの把握を定期的に実施することも
できます。
[顧客と市場の明確化の事例]
・・化粧品市場を男女と年齢で区分
顧客と市場の明確化事例
・・・ 化粧品市場
男女と年齢の要素で区分
男性高齢者用
化粧品
男性用
女性用
10
20
30
19
40
50
60
70
歳台
・・化粧品市場を男女と身体部位で区分
顧客と市場の明確化事例
・・・ 化粧品市場
男女と身体部位の要素で区分
男性用
養毛育毛
化粧品
男性用
女性用
顔
肌一般
頭部
手足
・・化粧品市場を身体部位と年齢で区分
顧客と市場の明確化事例
・・・ 化粧品市場
身体部位と年齢の要素で区分
手足
男女高齢者用
養毛育毛品
染髪剤
頭部
肌一般
顔
10
20
30
40
50
60
70
歳台
ここで注意しなければならないことは、顧客と市場を細分して区分し
た時に、その区分された領域のお客様のニーズ、要求、要望が他の領
域のものと明らかに違いがあると言うことでなければ区分されたこ
20
とにならないのです。他の領域の顧客ニーズとほとんど同じであれば、
他の領域に参入している企業が競合として立ちはだかるからです。
すなわち、顧客と市場の区分は、顧客ニーズの違いがある領域を明確
に区分できるような線引きでなければならないと言うことです。
また、経営戦略としてターゲットとする顧客と市場は、既に述べたS
WOT分析において自社の強みが活かせ、機会が捉えられ、弱みが妨
げにならない選択となっていて、脅威に対する備えも十分出来ると言
う領域であることが望ましいのです。もし、SWOT分析の結果とは
必ずしも一致しない領域を戦略ターゲットして選択するのであれば、
SWOT分析で明確にされている自社の弱みや脅威に対しての対策
を戦略の中に組み入れなければならないのです。
(8)選択と集中
選択と集中については既に若干述べていますが、あらためてその重要
性に触れておきたいと思います。
自社のビジョンまたは戦略がターゲットとしたい「顧客と市場」が明
確にされたなら、その選択領域に対して経営資源を集中する事が必要
です。
戦略がターゲットとする領域を設定しておきながら、その領域から外
れている既存事業にも人や資金を細々と投入し続けると言うのでは、
決してビジョンの達成は難しいでしょう。
得意でない領域に限られた経営資源を惰性で投入していくと、利益悪
化につながり、体力を消耗し、狙った領域の戦略成果にも悪影響が出
ることになります。
選択と集中とは、どのお客様と市場を事業領域にするかと言う事を明
確に選択し、それ以外の領域には経営資源を投入しないと言うことで
す。ところが、経営者は、どうしても創業家の意向とか、世話になっ
た先代が始めた事業だからとか、せっかく今まで苦労して続けている
のだからとか、色々と自分の心の中に言い訳をして、選択した領域以
外の不採算事業をすっぱりあきらめきれないことが多いのです。
選択領域が曖昧だったり、集中が不完全であれば、無駄な体力の消耗
をしてしまい、せっかくの戦略の成果を最大化出来ないのみならず、
気付いた時は手遅れと言うような業績不振を招く恐れがあるのです。
日本を代表するような大企業にもこうした懸念があります。
21
(9)戦略から戦術展開へ
選択した事業領域において、ビジョンを達成するために必要となる経
営戦略の立案は、これまで述べた「ビジネスモデル」に沿って、SW
OT分析を始めとする現状認識に基づいて、ビジョンが目指す期間に
ビジョンの目標を実現するにはどういう活動が必要になるかと言う案
の候補検討から始めます。
経営戦略の立案は、自社の能力や経営資源が分かっていなければ策定
できませんから、外部のコンサルタントに頼るよりも能力のある社員
が集まって案出するのが良いと思います。
戦略立案は、一度で望ましいものを作るのは難しいと思いますから、
何回かの検討を得て、沢山の案の中から、取捨選択し、優先順位をつ
けて、絞り込みをし、多すぎず少なすぎず、おおむね 3 つから 5 つ程
度の経営戦略として設定することになります。もちろん、複数の事業
を展開している場合には、それぞれの事業ごとに策定することになり
ます。
さて、経営戦略案が出来てくれば、その戦略を達成する上で、今年は
何をどうするか、来年はそれをどうするか、などの年単位とか四半期
単位での実施行動計画が必要になります。これを戦術展開と言うので
す。戦術は、誰が何を何時までにどのように誰に対して幾らの資金を
使って実行するか、というように具体的に定めていく必要があります。
それは、単年度の経営計画、業績計画、利益計画、生産計画などとも
結びついていなければならないのです。そして、戦術展開は、マイル
ストーンと言われる実施時期を明確にして年度計画に組み入れていく
ことになります。毎年度の四半期ごとに進捗状況を確認し、遅れがあ
れば、理由を分析して挽回施策を追加する事も必要になります。
経営戦術は、内容的にも予算的にも大小様々になりますが、必ず担当
責任部署を設定して、日々の事業活動の中で実施されるように進めて
いくことになります。
ところで、経営戦術は、個々の経営戦略を受けて、戦略達成のために
実施するものですが、経営戦略が確定してから戦術を立案すれば良い
のでしょうか。そういう場合もありますが、望ましくは、戦略案の検
討と並行しながら、その戦略を達成するための戦術案もアイデアを出
しながら進めていく方が良いと考えています。そして、戦術の案の善
し悪しも考えて、戦略を入れ替えたり、優先順位を決めたりするのが
良いと思います。と言うのは、戦略ありて戦術なしとなってしまえば、
22
戦略的には優れていても達成できない事になるからです。あるいは戦
術として企業買収しかないと言うような戦略であれば、その戦略を取
り上げるべきかどうかという原点に戻って検討する必要があるからで
す。
ただし、戦術は、担当部署を明確にして設定しますので、戦術案の検
討に際して、担当部署の責任者が時々に参画することが必要でしょう。
担当部署が出来ないような事を戦術として押しつけても上手くいかな
いからです。戦術展開において、経営資源の過不足を判断するのも担
当部署の責任者になりますから、立案段階から参画してもらって、実
行部門が納得できる戦術にしていくことが望ましいのです。
(10)KFSの活用
①
KFS とは
KFSは、Key Factor for Success の頭文字をとった言葉です。
すなわち、成功のカギとなる要因と言うことです。これは、経営
戦略を策定した時、その戦略を達成するには、どういう要因が成
功のカギを握るかと言うことを明らかにしておく為の検討です。
事例で考えてみましょう。
携帯電話事業の 3 年後のビジョンとして、「国内市場において第 2
位のポジションを確保する。」という目標であるとした時、経営戦
略の一つが、「サービス料金売上を 3 年後に、当年度比で 2.5 倍に
伸ばす。」という内容だったとします。この戦略のKFSは、「サ
ービスメニューの種類数」
「月間アクセス百万以上になるサービス
数」
「業界全体でトップ 20 に入る当社サービスの数」
「お客様一人
当たりのサービス料料金伸び率」などが上げられるでしょう。
このようにKFSは、必ず一つと言うことではなく、複数考えら
れることもあります。
➁
KFS は多層に深堀すること
ところで、KFSには、その要因を成功につなげるための二次要
因、すなわち階層が下に当たるKFSが考えられます。
上の事例でいえば、
「サービスメニューの種類数」というKFSに
おいて、戦略を達成できる種類数を実現するには、
「メニュー供給
契約を締結したサービス提供業者数」ということが二次要因とし
てのKFSになってきます。
このように、KFSは、多層的に考えてみると、戦略達成につな
がる様々な要因が浮かび上がることになります。
「風が吹けば桶屋がもうかる。」という程の屁理屈の要因とは言い
23
ませんが、2 段階くらいまで掘り下げて考察してみると、戦略達成
にはどれだけの要件が関連しているかを理解する助けになります。
KFS から戦術が明らかになる
このようにして考察したKFSは、戦略の成功要因ですから、戦
略達成レベルに届くKFSの内容を実現すれば、同時に戦略達成
にもなると言うことになります。
すなわち、KFSから戦術案が明確になると言えるのです。
上の事例でいえば、サービスメニューの種類数というKFSにお
いて、戦略達成に必要なサービスメニューの種類数を 5000 種類と
想定するなら、その数を 3 年後に達成するには、何をすればよい
かと言う事が、戦術になってくるのです。例えば、サービス提供
契約業者の数を初年度にどこまで増やすかとか、100 種類以上のヒ
➂
ットサービスを持っている大手業者の誰誰と今年中に契約すると
か、具体的な戦術が見えてきます。
このように、KFSについても、戦略検討や戦術立案と並行して一
緒に考えてみることが必要です。
(11)経営戦略の策定プロセスと戦略の完成
以上に見てきたように、経営戦略の策定プロセスは、次のようなプ
ロセスフローチャートで表すことが出来るでしょう。
立案された経営戦略は、企業の今後数年の活動を決めるものですし、
将来の趨勢も左右することになりますし、経営資源の手当てなども
決める基準になりますので、取締役会での承認を得て、完成とする
のが通例です。
さらに、承認された経営戦略に基づいた年度経営戦術が、来期の経
営計画に反映され、各部門や部署の年度実行計画に落としこまれて
いくと言う順序で全社的な戦略実行プロセスに乗せられるのです。
24
経営戦略策定プロセスフローチャート
経営戦略策定プロセスフローチャート
プロセスステップ
ポイント
中期ビジョンの検討
・どういう会社にしたいのか
ビジネスモデルの検討
・ビジョンの裏付けとなる利益確保
現状認識
・SWOT分析
・業績推移、自社資源の把握
・社会情勢、業界動向、競合動向の把握
ギャップの把握
・ビジョンと現状のギャップ
戦略案のアイデア出し
・ギャップをどうやって埋めるか
・使える経営資源の確認
・顧客と市場の明確化
・選択と集中
戦術案の考察
・具体性、時期、担当、必要資源等
・実施担当部署の参画
KFSの検討
・多段階で深堀
経営戦略案の策定完成
・戦術を含めて完成
・取締役会意見での修正
取締役会の承認
次期経営計画に反映
部門活動計画で展開
・四半期進捗確認
25
(12)経営戦略の策定事例
経営戦略の策定を事例によって考えてみましょう。
事例として、顧客と市場の検討で取り上げた「男性用養毛育毛化粧品製
造業」を取り上げてみました。
①
ビジョンの検討
どういう会社にしたいのかというビジョンは、
「男性用養毛育毛化粧品業界において売上規模が 3 年後に世界の
トップ 3 に入る。」という目標とします。
➁
ビジネスモデルの検討
この場合のビジネスモデルは、継続的に使用して頂くことで固定
客を確保し、再購入による利益を安定的に確保する、というモデ
ルになります。
このビジネスモデルでは、画期的な育毛治療剤が他社で開発され
て、一度に髪が増えてしまう事態が起これば、事業存続が出来な
いことになりますので、その見通しに常に注意していくことが必
要です。
自社としては、抜け毛や薄毛がこれ以上進まないような、効くけ
れども効きすぎない製品で、購入しやすい価格で長い間買い替え
て使い続けてもらうことが重要になります。
➂
SWOT分析
Strong
・男性育毛市場では国内市場トップの販売力
・男性育毛市場では国内トップのブランド力
・髪に優しい純漢方の育毛剤製造技術
・無借金経営で自己資本比率 100%
・材料となる原料の自社栽培農園の経営
Weakness
・女性用育毛市場での認知度は全くない
・かつらや植毛による増量技術は持っていない
・海外販路は東南アジアの提携先のみである
・若年層の病的はげには効果がない
26
・大手化粧品メーカーに比して人的資源に乏しい
・ネット販売の取組が遅れている。
Opportunity
・世界的な高齢化と元気な老人の増加に伴い、外見に気を使う高
齢者が急増している。
・紫外線対策で髪の保護も関心事になってきている。
・高齢の有名俳優を真似て若づくりのファッションが定着してき
た。
・この種の製品がネット販売で急増している。
Threat
・大手化粧品メーカーから競合する新製品が安く発売されようと
している。
・ヨーロッパのA社が東南アジア市場を開拓しようと力を入れ始
めた。
・粗悪な東南アジア製品がネット市場に出回り、業界全体の信用
を落としている。
➃
ギャップの把握
当社の現状は、男性用養毛育毛化粧品市場では、世界市場の中で、
第 5 位の規模であり、3 年後に第 3 位の規模にまで成長するには、
大市場のヨーロッパ、北米それに中国での販路の拡大と、シェア
の確保が必要になる。
世界的に業界の成長率は、年率 3%であるから、3 年後に世界第 3
位の売上を達成するには、国内シェアをさらに 5%増やし、ヨーロ
ッパと北米市場でそれぞれ 5 パーセントのシェアを確保し、中国
市場では、将来への布石として、都市部をカバーする販売チャネ
ルを確立することが必要である。
➄
顧客と市場の明確化
社内には、女性用養毛育毛市場への参入を主張する者がいるが、
少なくともビジョンを達成するまでは、女性市場には参入しない。
関連製品として男性かつら、植毛サービスへの拡大を主張する意
見もあるが、これについても、現在の体力では参入しないことと
する。ただし、男性用白髪染め市場には、業務提携出来る相手を
探して、早期に参入することとする。
27
小規模に進めている女性用養毛育毛製品の開発や試験販売は中止
して、男性市場に集中することとする。
➅ 戦略案の検討
以上の分析を踏まえて、3 年間の中期経営戦略として、以下の戦略を
検討する。
・ 北米およびヨーロッパにおいて販売網整備を進める。
・ 中国沿岸部地域に試験的な販売を開始する。
・ 男性用白髪染めの提携相手を確保する。
・ 女性用養毛育毛剤のチームを解散し、男性用製品のネット販売を充
実させる。
[3 年後の戦略目標値]
グローバル販売ポジション
売上 第 3 位
国内シェア
68% (5%アップ)
北米シェア
5%
ヨーロッパシェア
5%
総売上高
360 億円 (120 億円アップ)
営業利益
48 億円
経常利益
15 億円
国内従業員数
520 人 (25 人アップ)
➆
戦術案の考察
[北米およびヨーロッパにおいて販売網整備を進める。]
この戦略に関する戦術展開は、次のような案になります。
・担当部署を速やかに設置する。
・グローバルに活躍できるマーケティング経験者数名を至急に中
途採用する。
・競合するヨーロッパA社、北米B社の販売網の実情を調査する。
・北米およびヨーロッパの顧客への売れ筋製品の調査を行う。
・欧米人種について、当社製品の育毛養毛効果を速やかに確認す
る。
・北米およびヨーロッパ市場における整髪関連製品、養毛育毛製
品についての規制などを調査する。もし必要であれば、認可申
請手続きを行う。
・可能性のある販売提携候補をリストアップし、自力での販売網
整備が良いか提携が良いかの選択を決定する。
28
・北米およびヨーロッパ市場に参入する時の広告宣伝計画を策定
する。
[中国沿岸部地域に試験的な販売を開始する。]
この戦略に関する戦術展開は、次のような案になります。
・担当部署を速やかに設置する。
・中国語でビジネス対応できる人材を最低一人中途採用する。
・販売提携可能な相手を探し、試験販売への協力交渉を始める。
・中国市場における男性用養毛育毛剤の市場の動向、売れ筋の状
況、売れ筋価格帯、漢方薬剤の利用状況、法規制の有無などを
調査する。
・将来の現地生産または提携生産について必要な情報を集めてお
く。
[男性用白髪染めの提携相手を確保する。]
この戦略に関する戦術展開は、次のような案になります。
・国内海外にこだわらず、男性用白髪染めメーカーで提携可能な
候補を調査する。
・自社の国内販売チャネルで、男性用白髪染製品を販売した場合
の見込み可能数を調査する。
・将来の自社生産の可能性、必要技術、投資額等について予め調
査検討し、提携判断の材料とする。
[女性用養毛育毛剤のチームを解散し、男性用製品のネット販売
を充実させる。]
この戦略に関する戦術展開は、次のような案になります。
・チーム解散に伴う人事異動を進める。
・ネット販売を専門とする販売組織を設定する。
・ネット販売を自社ホームページ内で独自に行うか、楽天等のネ
ット市場に出展する方法をとるか、将来を見通し選択する。
・ネット販売に伴う受注から送品、売上回までの仕組みを整備す
る。
・購入者に関する個人情報保護や会員組織の立ち上げなどネット
販売のメリットを追求する総合ネット販売中期計画を策定する。
➇
KFSの検討
[北米およびヨーロッパにおいて販売網整備を進める。]
29
これに関してのKFSは、
・十分な販売網を有する提携先の確保
・欧米人の毛髪に適する製品のラインナップ
・初期浸透のための広告宣伝
などでしょう。
[中国沿岸部地域に試験的な販売を開始する。]
これに関してのKFSは、
・十分な販売網を有する提携先の確保
・中国市場向きの価格帯の製品の投入
などでしょう。
[男性用白髪染めの提携相手を確保する。]
これに関してのKFSは、
・魅力的な製品ラインナップを有する提携先の確保
でしょう。
[女性用養毛育毛剤のチームを解散し、男性用製品のネット販売
を充実させる。]
これに関してのKFSは、
・ネット販売の仕組みの構築
でしょう。
以上のような経営戦略案、戦術アイデア、KFSを一覧表にして、それぞ
れの戦略で目指しているビジョン目標が達成できるのかどうか、戦術とし
て十分かどうか、成功要因に間違いはないかなどを全体的に検証すること
が必要になります。その上で、どの戦略が最も重要になるか、戦略効果が
高いのはどれか、投資負担が少ないのはどれかなどを考慮して、優先順位
をつけることになります。
➈
最終的な経営戦略案の策定
以上のような検討を経て、最終的に、例えば、次のようにまとめます。
戦略 1
北米およびヨーロッパにおいて販売網整備を進める。
戦略 2
男性用白髪染めの提携相手を確保する。
戦略 3
中国沿岸部地域に試験的な販売を開始する。
戦略 4
製品のネット販売を強化する。女性用事業は中止する。
30
3.
最後は社員の力
いかなる経営戦略であっても実現させるのは社員と言うことですから、戦略
の達成、ビジョンの実現は、社員の力にかかっています。社員の力と言葉で言
うだけなら簡単ですが、真に社員力が発揮されているかどうかを検証する仕組
みも持っていることが望ましいのです。
社員力が十分に発揮されている状態としては、
・全員がビジョンを理解し、その実現に興味を持って、日々の何事にも真剣
に取り組んでいる。
・部門の当期の活動方針に従って、個々の社員が自分のやるべきことをしっ
かり認識し、常に上司との報告、連絡、相談を欠かさない。
・仕事の進捗が遅れている同僚や部下に対しては、周りの社員が積極的に助
け舟を出し、組織責任として計画達成が出来ている。
・今日出来ることは今やるという姿勢で、自分の時間を無駄なく効率的に使
い、殆どの社員は予定より前倒しに業務を進めている。
・戦略や戦術に少しでも疑問を感じた場合には、反抗するのではなく、素直
な気持ちで、上司に質問したり提案したり出来ている。
・戦略や戦術の達成に、職場の全員が喜びを感じて、生き生きと仕事を楽し
んでいる。
・自分の計画を達成することに関わりのある業界情報や技術資料には、いつ
でも関心の目が向いてしまい、考える習慣が出来ている。
こういう社内状態になっていれば、戦略の達成に高いモラルで邁進出来ている
と言えるでしょう。
社内をこのような状態に動かしていくことも、管理者や経営者の責務だと言え
るのです。
以上
[著者紹介]
1945 年 岡山県生まれ、1967 年東京大学電気工学科卒業、
セイコーエプソン株式会社、株式会社リコー勤務後、
2005 年経営コンサルタント開業
中小企業診断士、社会保険労務士
31