呼吸困難のある患者へのケア ~看護師の立場から~

第19回日本緩和医療学会学術大会
呼吸困難への対応-明日から役だつ多職種アプローチ!
2014.06.21
呼吸困難のある患者へのケア
~看護師の立場から~
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター
緩和ケア病棟
山川 幸枝
本日の内容
 呼吸困難が患者に与える影響
 心地よく過ごせるという成功体験を支えるケア
・患者との関係作り
・環境整備
・生活場面(睡眠、食事、排泄等)でのケアの工夫
 家族へのケア
本日の内容
 呼吸困難が患者に与える影響
 心地よく過ごせるという成功体験を支えるケア
・患者との関係作り
・環境整備
・生活場面(睡眠、食事、排泄等)でのケアの工夫
 家族へのケア
呼吸困難が患者に与える影響
呼吸困難=呼吸が苦しいという主観的な体験
食べるのも苦しい
トイレに行くのも苦しい
今まで当たり前にできていた
ことができない。情けない。
患者の生きる力を支えるために
すぐそこにある物を取る
こともできない
このまま死んでいく
のかな。
心地よく過ごせるという
成功体験を支えることが大切
本日の内容
 呼吸困難が患者に与える影響
 心地よく過ごせるという成功体験を支えるケア
・患者との関係作り
・環境整備
・生活場面(睡眠、食事、排泄等)でのケアの工夫
 家族へのケア
患者との関係作り①
会話が可能なときは…
 呼吸困難でどのような苦しみを感じているのか
(日常生活面、精神面、役割の面など)を聴き、
受け止める。
トイレに行くと息が止まりそう。
食欲もない。夜も眠れていない。
 会話の中で出てきた「困っていること」を1つ
1つ改善し、「やりたいと思っていること」が
できるように調整していく。 尐し楽になってきたので、
お風呂に入ってみたいな。
好きな編み物をしてみようかな。
患者との関係作り②
会話をすることも負担であるときは…
 患者の様子、部屋の環境をよく観察。
 「はい」「いいえ」で答えられる質問。
 「痛い」「息が苦しい」「痰をとって」などの
単語カードを作成。
 患者が求めていることを一覧表にして共有。
 ホットタオルで肩を温める、マッサージ等の快
刺激の提供。
本日の内容
 呼吸困難が患者に与える影響
 心地よく過ごせるという成功体験を支えるケア
・患者との関係作り
・環境整備
・生活場面(睡眠、食事、排泄等)でのケアの工夫
 家族へのケア
環境整備の視点
室温は?
(クーラー、アイスノンの使用)
空気の流れは?
湿度は?
環境調整の視点
室温は?
空気の流れは?
湿度は?
姿勢は?発汗は?
布団は重くない?
殿部が痛くない?
環境調整の視点
室温は?
空気の流れは?
湿度は?
姿勢は?発汗は?
布団は重くない?
殿部が痛くない?
必要な物は手の届く所に
・ナースコール
・リモコン
・携帯電話、手帳
・メガネ
・飲み物
・ティッシュ、タオル等
環境調整の視点
室温は?
空気の流れは?
湿度は?
姿勢は?発汗は?
布団は重くない?
殿部が痛くない?
必要な物は手の届く所に
・ナースコール
・リモコン
・携帯電話、手帳
・メガネ
・飲み物
・ティッシュ、タオル等
酸素チューブ
が絡まらない
ように固定。
(S字フックや
紐などで動線
に合わせて)
酸素吸入をしている場合の配慮①
労作時の流量調節を患者ができる場合:
 酸素流量計の流量設定の位置をテープで表示
 ダイアル式の流量計
 在宅用の酸素濃縮装置
 酸素流量計を2つ使用(安静時用・労作時用)
HOT用酸素濃縮装置
(帝人ホームページより引用)
酸素吸入をしている場合の配慮②
酸素鼻腔カニューラでの刺激が気になるとき:
 鼻腔内に入る部分を尐しカットする
酸素の臭いが気になるとき:
 アロマの精油をティッシュペーパーに落とし、枕元に置く
殿部の褥瘡対策
 高機能エアマットの使用
 ポジショニンググローブ
での除圧
 クッションの使用
ポジショニンググローブ
(株式会社モルテンホームページより引用)
本日の内容
 呼吸困難が患者に与える影響
 心地よく過ごせるという成功体験を支えるケア
・患者との関係作り
・環境整備
・生活場面(睡眠、食事、排泄等)でのケアの工夫
 家族へのケア
睡眠
活動の尐なさ、夜間に考え事をするなどで眠れていない時
 眠剤を使用してでも、一度しっかり眠る。
 朝日を浴びてもらい、日中の活動をサポート。
夜間頻尿の場合
 輸液量や輸液時間の調整。
「臥床すると、咳が増える。」「夜中に咳で目が覚める」
 鎮咳薬の内服のタイミングを工夫。
「明け方に呼吸が苦しくなる。」
 モルヒネやステロイドの使用量・使用のタイミングを工夫。
 オプソの自己管理を検討。
食事
 ポジショニング(腕置き、背もたれを作る)
 食事前のレスキューの使用
 オキシマイザーの使用、鼻カニューラ+リザーバーマスク
の併用
 嚥下困難もあるとき
【摂食回復支援食】あいーと®
(イーエヌ大塚製薬株式会社ホームページより引用)
Oxymizer®
(CHAD THERAPRUTICS ホームページより引用)
口渇対策①
 口腔ケア
・アズレン+グリセリン含嗽液でうがい
・口腔保湿ジェル、白ごま油等で保湿
・電動歯ブラシの使用
 水分をこまめに摂取できるように手元に設置
・ストローつきのコップやペットボトル
・半分凍らせたペットボトルのお茶
・かき氷
口渇対策②
むせずにのどが潤った
(^o^)
 嚥下障害もある場合:
・小さな氷片、とろみ茶氷
・お茶スプレー
・人口唾液の使用
 加湿器の使用
 ネーザルハイフローの使用
High Flow
Therapy
System
(パシフィック
メディコ(株)
ホームページよ
り引用)
排泄方法
患者の思い
呼吸困難の程度
排泄のしやすさ
総合的に考える
日中と夜間とで方法を変えることもある
 車椅子で広いトイレへ誘導
 家具調のポータブルトイレ
 尿器、安楽尿器
 コンドーム型収尿器
 オムツ
 バルーン
コンビーン
®
セキュアー コンドーム型収尿器
(コロプラスト社ホームページより引用)
便秘対策
ブリストルスケール
 排便前にレスキューの使用。
 排便時:息を止めずに吐きながら。
 軟らかめの便が定期的に出るよう
に下剤を調整。
排便困難時→ラクツロースを試す。
 下剤の調整が難しい時:
排便時間・排便量・性状(ブリス
トルスケールを使用)と下剤の使
用量がわかる経過表を作成する。
清潔ケア
 汗ふきタオルをはさむ
 保清の前にレスキューの
使用
 部分清拭、手浴、足浴な
ど、一度にせずに分けて
する
 リクライニング車椅子で
のシャワー浴
 シャンプーハットの使用
本日の内容
 呼吸困難が患者に与える影響
 心地よく過ごせるという成功体験を支えるケア
・患者との関係作り
・環境整備
・生活場面(睡眠、食事、排泄等)でのケアの工夫
 家族へのケア
家族へのケア
呼吸困難で苦しむ患者の様子を目の当たりにする
何もしてあげられない
無力感、罪悪感
家族のしんどさを受け止め、
できることを共に探す。
家族へのケア~具体例~
 「しんどそうな様子を見ているご家族もつらいですね。」
と声をかけ、感情を表出してもらう。
 家族の存在で患者が安心していることを伝える。
 患者が苦しいときに、家族ができることを説明する。
例)スクイージング、うちわであおぐ など
 患者との楽しい時間が持てるようにサポートする。
例)車椅子やベッドでの散歩、入浴、外出・外泊 など
まとめ
 呼吸困難によって活動制限が生じている中でも、
心地よく過ごせるという成功体験を支えるため
には、細かな配慮が必要である。
 呼吸困難で苦しむ患者を見る家族へのケアも大
切である。