PC 鋼材破断を想定した PC 橋の健全性に関する解析的検討 (株)CORE 技術研究所 ○西 弘* 東京地下鉄(株) 亀井 啓太** 東京地下鉄(株) 大塚 努** 岩手大学 大西 弘志*** Analytical Study for Health Assessment of a PC Bridge by Simulating PC Tendon Rupture Hiroshi NISHI*, Tsutomu OTSUKA**, Keita KAMEI***and Hiroshi ONISHI*** * CORE Institute of technology Corporation 3-8-5 Asakusabasi, taitou-ku, Tokyo, 111-0053, Japan E-mail: [email protected] ** Infrastructure Maintenance Department, Tokyo Metro Co.,Ltd. 3-19-6 Higashi-ueno, taitou-ku, Tokyo, 110-8614, Japan E-mail: [email protected], [email protected] *** Department of System Innovation Engineering, Faculty of Science and Engineering, Iwate University 4-3-5 Ueda, Morioka, Iwate, 020-8551, Japan E-mail: [email protected] 1 ( 緒 言 ) 東京地下鉄株式会社 以下,東京メトロと称す では, 現在,営業線約 195km のうちトンネルが約 85%を占め, 残り 15%の地上構造物のうち約 9%の 17.4km がポストテ ンション方式単純 T 桁橋(以下,PCT 桁橋と称す)であ る.東京メトロの PCT 桁橋の特徴は,1960 年代に建設 されている高架橋であり,その多くが市街地に隣接して いる.主ケーブルには上縁定着方式の PC 鋼線が採用さ れ,横締めケーブルには PC 鋼棒が使用されている 1). 一方,PC 構造物は密実なコンクリートを使用し,プレ ストレスによりひび割れを制御していることから, RC Fig.1 View of the PCT bridge 構造物に比べ,外部からの劣化因子が侵入し難く,耐久 8320 性に優れる構造物である.しかし,PC グラウト充填不 4390 足や PC 鋼材の腐食等が主な原因で,重大な変状が生じ 3930 A-Line たものや落橋した PC 橋も存在する.以上から構造物管 B-Line Drainage concrete 理者は予防保全的に維持管理を行うため,PC 橋の PC グ Ballast Railway materials Drain ラウト充填状況や PC 鋼材の腐食,破断に関する調査を 行って,その状況や傾向等について把握することが重要 であると言われている 2).そのため PCT 桁橋を多く保有 している東京メトロ東西線(Fig.1)では,予防保全とし 0 0 8 1 て主ケーブルと横締めケーブルの PC グラウト充填度調 G1 査を含む横締め突出防止工,断面修復工,ひび割れ注入 工,表面保護工等の補修工事を実施している.また,仮 に PCT 桁橋の PC 鋼材が破断に至った場合,どの部位に 変状が生じるかを把握しておき,橋梁点検時,補修施工 時,緊急対策時においても速やかに判断する必要がある ことから,リスクマネジメントの一つとして 3 次元 FEM 解析にてプレストレス低下による PCT 桁橋の耐荷性能 に関する解析的検討を行って,ひび割れの発生をシナリ オ上にて整理している.本稿では東西線 PCT 桁橋におい て,上述の解析的検討により整理した PCT 桁橋の維持管 理の留意事項を示すとともに,予防保全として実施した PC グラウト充填度調査の結果を報告するものである. 東西線 PCT 桁橋のリスク 東京メトロ東西線の全線開通は 1969 年であり約 50 年 2 経過している.一般に建設時期が古い PC 橋は経年の影 1365 G2 2100 G1 1850 G2 2100 905 Fig.2 Sectional View Table.1 Specifications of the bridge(A-Line) Structure type Posttension system simple girder Girder length 24.96m(Span length 24.10m) Width 4.39m Angle 90°00’00” Live load Axle load 16tf(Train load) Girder 40N/mm2 , Concrete strength Slab・Beam 30N/mm2 PC steel wire SWPR 12φ7mm Prestressing steel PC steet stick SBPC110 φ24mm Reinforcing bar SR235 Cracking load fbck=1.34N/mm2(40N/mm2 h=1.8m) 響を受け,古い橋梁ほど健全度が劣る傾向が示されてい 未熟であったことなどから, 完全に PC グラウトが充填されていない可能性を有して る.また PC グラウト技術が いる 2).以上から東西線 PCT 桁橋においても PC グラウ ト充填不足と PC 鋼材腐食や破断に対してリスクが高い と言 える.その理由を整理すると以下の通りとなる. (1) 建設年次が 1960 年代であることから,PC グラウト 料のブリージング,PC グラウトの先流れ現象,施 工機器の性能による空隙など,品質管理や施工管理 材 が原因で PC グラウト充填不足のリスクが高い. 種別では,横締めケーブルに PC 鋼棒φ24mm, 鋼製シースφ35mm が使用されており,シースの空 隙率による PC グラウト充填不足や鋼製シースの腐 食のリスクと破断した場合に PC 鋼棒突出による第 三者被害に対するリスクが高い. (3) 構造形式は PCT 桁であり,主ケーブルに PC 鋼線 12 φ7mm が配置されており,主ケーブルのほぼ 3 割が 上縁定着されているため,上縁定着部からの水の侵 入や定着部のあと処理の不具合などが懸念される. 以上のリスクを考慮して,現在,PC グラウト充填度 調査を含む補修工事を実施している.今回報告する調査 結果は補修工事が 完了 した東西線 葛 西 駅 から 妙典駅間 のうち 33 径間である.幅員構成は 1 径間当たり 2 主桁 ,調査 が 1 連として 2 連配置されており(4 主桁/径間) 数量は拡幅径間を含む 68 連である.なお,補修施工時 に,PCT 桁橋の状況が迅速に判断できるように,事前に FEM 解析による検討を行い,施工管理上の目安とするた めにひび割れやたわ み 等の性状と 応力 状 態 の関 係 を整 (2) PC 鋼材 評価は死荷重時と設計荷重時 各部材の引張応力度が,コンクリート標準示方 書の曲げひび割れ強度(fbck=1.34N/mm ,40N/mm )に 達した時にひび割れが発生することとした. 3.3 解析モデル 東西線 PCT 桁では 1 連が 2 主桁の構 成であること,PC 鋼材の破断対象を主ケーブルと横締 めケーブルに着目することから,主桁,床版,横桁を構 成した 2 主桁で,橋軸方向の対称性を考慮した支間 1/2 モデルとした.使用要素はコンクリートがソリッド要素, PC ケーブルと鉄筋を埋込鉄筋要素とした.なお,解析 ステップは建設当時の施工順序(主桁架設,横組工,橋 面工,活荷重)を再現した.解析モデルを Fig.3 に示す. 検討を行った.ひび割れの における 2 PCT 桁橋の FEM 解析結果 解析結果 3.4 (1) 主桁のひび割れ 主桁のひび割れ Fig.4 に G1 桁の主ケーブルを 1 本 毎にプレストレス量を除去した時の主桁下縁支間中央 部の合成応力度を示す. 設計荷重時において G1 桁の主ケーブルを 3 本除去し た場合,G1 桁下縁に引張応力度 2.12N/mm が生じ,曲 げ引張強度(1.34N/mm )以上となる.さらに主ケーブ ル 4 本除去すると,主桁下縁引張応力度 3.00N/mm とな り,コンクリート引張強度(2.69N/mm )以上となる. 2 2 2 2 C.L. 4390 12430 1800 理している. 3 6000 PCT 桁橋の耐荷性能の検討 3.1 検討対象径間 東西線では建設 当時にキロ程,橋長, 車線に分類し標準桁が設定され設計されている(以下, 標準設計と称す).検討対象径間は,標準設計より設計 荷重時に 最 も大きい断面 力 が生じている 径間 で, Fig.2 に示す A-Line の 1 連を選定した.Table.1 に橋梁諸元を 示す. 法 Fig.3 Analysis model of the PCT bridge 合を検討した.また,横締めケーブルのプレストレス低 確認するために床版,横桁の横締めケーブル についても 1~2 ケーブルのプレストレス量を除去する 下の影響を -6.96 ) 「-」Compression,「+」Tension -6.54 -6.16 -6.00 N/mm2 配置されており,そのうち上縁定着ケ ーブルは 4 本配置されている. PC 鋼材の破断の想定は,プレストレスによる曲げ応 力度の影響が大きい最下段の主ケーブルから 1 本毎にプ レストレス量を除去することとし,除去本数は最多 4 ケ ーブルとして,プレストレス低下による主桁,床版,横 桁の応力状態と変位を確認した. 主ケーブルのプレストレスを低下させる主桁は G1 桁 を基本とし,2 主桁とも破断した場合の影響を確認する ために G2 桁が健全な場合と主ケーブル 1 本除去した場 たり 13 ケーブル -8.00 -6.11 -5.71 -5.25 Dead load G1 Designed load G1 -4.36 -4.00 ( Bending Stress 形 380 【G2】 ソ ッドモデルによ 数は 1 主桁当 【FEM Mesh Configuration】 ・Concrete:Solid Elements ・PC cable ,Reinforing bar: Embedded Reinforcement Elements ・Shoe:Beam Element ・Number nodes:69,217 ・Number of elements:59,483 6050 【G1】 検討方法 検討方 は 3 次元 リ る線 FEM 解析を用いた.主ケーブル本 3.2 2 -3.44 -2.00 Dead load G2 Designed Load G2 -2.02 -1.60 -1.17 -0.77 -0.60 0.00 -0.32 0.32 crack occurrence 1.20 2.00 2.12 3.00 4.00 0 1 2 3 4 5 6 7 8 ( Number of prestressing steel in each cable Girder G2 soundness) Fig.4 Combined Stress(Bottom fiber) 9 10 2 0.0 -0.5 -0.6 -1.0 -1.2 -1.0 -1.1 )-2.0 (-3.0 Vertical Displacement mm 死荷重時では G1 桁の主ケーブル 9 本除去すると主桁 下縁に曲げひび割れ強度以上,10 本除去するとコンクリ ート引張強度以上の曲げ応力度が発生する. G1 桁のプレストレスの低下とともに,G1 桁のたわみ が増加して G2 桁に荷重分配する.その G2 桁に生じる 増加応力は G1 桁の主ケーブル 1 本除去ごとに 0.4N/mm 程度発生することが確認できた. G2 桁の主ケーブル 1 本除去した場合の検討では,G1 桁に曲げひび割れが生じる G1 桁の主ケーブル除去本数 は 2 本となり,1 連当たり除去する主ケーブル本数(設 計荷重時 1 連当たり 3 本除去)と同等な時期に主桁下縁 支間中央部に曲げひび割れ強度以上の引張応力度が発 生する結果が得られた. (2) 横桁の 横桁のひび割れ 上部工の挙動は主ケーブルのプレ -1.2 -2.0 -2.4 -1.7 -2.3 -1.9 -2.6 -3.1 -3.6 -4.0 c -4.2 a -5.0 -4.8 CL d -6.0 b 【G2】 【G1】 a b c d -7.0 0 1 2 3 4 5 Number of prestressing steel in each cable Girder G2 soundness ( ) Fig.5 Vertical Displacement ストレス低下により,プレストレスが低下した主桁のた みが増加する.この時 G1 桁と G2 桁のたわみ差によ って,主桁と横桁にねじりが生じ,主桁と端部横桁,主 桁と 中間 横桁の接合 付近 に橋 軸直角 方向の 引張力 が発 わ -4.79mm C.L. Center of Span -2.31mm Defection of main girder caused main girder and cross beam torsion. 生する. 除去本数が 2 本の場合,死荷重時 端部横桁の接続付近に,3 本の場合には主桁と 中間横桁の接続付近に,それぞれの横桁下縁側に曲げひ び割れ強度(fbck=1.18N/mm ,30N/mm )以上の引張応 力度が発生する結果となった. 横締めケーブルのプレストレス低下の影響は,床版 , 横桁ともにプレストレスによる 応力 度がそのまま 減少 し,合成応力度上,曲げひび割れ強度以上の引張応力度 が発生するが,主桁の耐荷性能に大きな影響を与えるま でには至らないことが確認できた. -4.17mm G1 桁の主ケーブル に主桁と 2 End of Girder -2.60mm 2 Deflection of main girder occurred after a prestressing steel was removed from a PC cable. : Torsion took place perpendicular to a bridge due to tensile strength. (3) 主桁の変位 主桁の変位 Fig.5 に G2 桁が健全な場合で,G1 桁の ~4 本のプレストレスを除去した時の鉛直 変位を示す.4 本除去した場合,G1 桁では支間中央部の 主ケーブル 1 主桁下縁 b で 4.2mm, G2 桁の主桁下縁 d では 2.6mm の 鉛直変位が生じている.G1 桁の主ケーブルのプレスト レス量が 1 本分除去する毎に 1mm 程度の鉛直変位が G1 桁の支間中央部で発生することが確認できた.そのため, 高 感 度の 計測機器 を用いることで上部工の健全度を モ ニタリングできる可能性が有ると考えられる. 3.5 PCT 桁橋の維持管理に関する着目点 桁橋の維持管理に関する着目点 今回の解析 結果より,主桁に着目した場合の PCT 桁橋の外観変状と 耐荷性能の状 態 をシナリオ上にまとめると以下の通り となる. (1) PC ケーブルに沿ったひび割れ : 分 水 塩 水 凍結膨張圧あるいはシースや PC 鋼材が腐食することが 原因で PC ケーブルに沿ったひび割れが生じる. 対策案 対策案:PC グラウト充填度調査,PC 鋼材腐食状況調査, 補修の検討を実施することが望ましい. 外観変状 PC グラウト充填不足が存在すると,その充 填不足部 に や 化物などの劣化因子が侵入し, の 【G1】 Value Verical displacement after prestressing steels removal. 【G2】 Fig.6 Behavior after prestressing steels removal 相対変位に伴い主桁と横 ,主桁と端部横桁の接合部 桁にねじりが生じて(Fig.6) に橋軸直角方向のひび割れが生じる.この時,主桁が健 全な時と比べると,主桁のたわみ量は鉛直方向に約 2mm 増加する. 対策案 対策案:PC 鋼材腐食状況,残存プレストレス量,上部 工の変位量などに着目した詳細調査と健全度を検討し て,補修および補強の計画を実施することが望ましい. ストレスが低下すると,主桁の (3) 主桁と中間横桁の接合部,主桁支間中央 主桁と中間横桁の接合部,主桁支間中央にひび割れ ,主桁支間中央にひび割れ 荷重時において,主ケーブル 3 本 のプレ 外観変状 ストレスが低下すると,主桁と 横桁の接合部に橋 :死 分 中間 軸 直角方向のひび割れが生じる.また,設計荷重時では主 桁の支間中央部で曲げひび割れが生じる.この時,死荷 重時の主桁のたわみ量は鉛直方向に約 3mm となる. 対策案 対策案:主桁の応力改善を目的とした補強を実施するこ とが望ましい. (4) 主桁の支間中央部に曲げひび割れ(設計荷重時) 主桁の支間中央部に曲げひび割れ(設計荷重時) : 計 分 記 (2) 主桁と端部横桁の接合部にひび割れ 主桁と端部横桁の接合部にひび割れ 外観変状 設 荷重時において,主ケーブル 4 本 のプ レストレスが低下すると,主桁の 部に上 (3) 外観変状 より :死荷重時において,主ケーブル 2 本分のプレ 支間中央 顕著に曲げひび割れが発生する.この時の死荷重時 み量は鉛直方向に約 4~5mm となる. :列車運 停 準備 支 望 の主桁のたわ 対策案 行 止の とともに,上部工の荷重 対策案 持による緊急対策を実施することが ましい. (5) 主桁の支間中央部に曲げひび割れ(死荷重時) 主桁の支間中央部に曲げひび割れ(死荷重時) :死 分のプレ 支間中央 顕著に曲げ ひび割れが発生する.この時の死荷重時の主桁のたわみ 量は鉛直方向に約 10~11mm となる. 対策案 対策案:列車運行停止と抜本的な対策が必要となる. 外観変状 荷重時において,主ケーブル 9 本 ストレスが低下すると,主桁の 部に 4 実橋での PC グラウト充填度調査 4.1 調査方針 調査方針 東西線 PCT 桁橋では,主ケーブルが桁 長の関係などにより 1 桁当たり 11~13 本配置されてい る.その中で 2~4 本が上縁定着ケーブルである.この 上縁定着ケーブルは端部定着ケーブルと比べ,主ケーブ ルの曲上げ角度が大きいため,PC グラウト充填不足の 可能性が高く,主桁上縁に切欠部を有することから,劣 化因子の侵入リスクが高いケーブルである 2).以上から ~4 本/桁の充填状況を 確認し,その結果から端部定着ケーブルの充填状況を類 推して,主ケーブル全体の充填状況を評価することとし た.そのため,主ケーブルの調査対象は全ての上縁定着 リスクが高い上縁定着ケーブル 2 ケーブルとした.一方,横締めケーブルには PC 鋼棒が 使用されており,PC 鋼棒突出による 第三者被害に対す 象は床版およ るリスクを保有していることから,調査対 配置されている全ての横締めケーブルとした. 法はコンクリートと PC 鋼材を極力傷つけるこ となく,PC グラウトの充填状況が判断できる非破壊調 査手法から,衝撃弾性波法,超音波法,電磁パルス 法 , X 線透過法を抽出し,適用範囲,作業性,実績,経済性 から衝撃弾性波法を選定した.また,衝撃弾性波法によ り充填不足が疑われた PC ケーブルについては, PC グ ラウト充填状況と PC 鋼材の腐食状況を確認するために, ドリルによる削孔と CCD カメラを挿入してシース内の 状況を確認した(以下,削孔法と称す) .なお,削孔法 び横桁に 調査方 による調査の結果,PC グラウトが充填不足と判断され 再注入を行っている. 分的な 空洞の有無を判断することができるインパクトエコー た場合は,速やかに PC グラウトの 4.2 主ケーブルの調査方法 主ケーブルの調査方法 主ケーブルには,部 法を採用した.Fig.7 に調査方法の概要を示す.コンクリ ート表面をインパクタにて弾性波を入力し,弾性波の縦 波成分が,コンクリート内部の空洞などの境界面に反射 して,コンクリート表面と空洞の境界面との間に往復す る定常な波が生じる(縦波共振現象) .この現象を利用 して入力付近で計測された波形の周波数スペクトルの ピーク位置からコンクリートの内部状況を推定する方 法である .PC グラウト充填度調査の場合は,予め電 磁波レーダにて PC ケーブルの配置位置とシースのかぶ りを特定し,その部分のコンクリート表面に弾性波を入 力し,反射波をセンサにて受信することで,PC ケーブ ル内部の空隙の有無から PC グラウト充填状況を定性的 に判断する非破壊調査手法であり,近年,使用実績が多 3) 5) くなっている. 直 4.3 横締めケーブルの調査方法 横締めケーブルの調査方法 横締めケーブルは, 配置されている PC ケーブル全長に対して充填状 確認するために利用されている打音振動法を採用 した.調査方法の概要を Fig.8 に示す.PC 鋼材定着部付 近のコンクリート表面にハンマーやバネポインターな どで打撃して弾性波を入力し,その近傍の入力信号と反 対側の定着部付近に伝播した弾性波の出力信号を AE セ ンサにて受信する方法であり,PC グラウト充填状況を 伝播特性の変化を利用して判定する非破壊調査手法で .評価方法は PC 鋼材を伝播する弾性波の伝播エ ある ネルギーの減衰程度と伝播速度を測定することで,PC グラウト充填状況を定性的に評価することができる方 法であり,1990 年代半ばから実用化され実績も多い. 線状に 況を 4) 5) 4.4 調査結果と考察 PC グラウト充填度調査を実施し 径間数は 33 径間(68 連)である.主桁本数は 140 桁 象とした上縁定着ケーブル数は 476 ケー ブル(インパクトエコー法の調査箇所数は 952 箇所)で ある.横締めケーブルの調査数量は,床版が 2,662 ケー ブル,横桁が 336 ケーブル(打音振動法による調査数量 た であり,調査対 は 2,998 ケーブル)である. インパクトエコー法と打音振動法による調査の結果, 充填不足として判定したケーブルは,削孔法により充填 状況と PC 鋼材腐食状況を確認した.その数量は主桁で は 5 ケーブル,床版が 117 ケーブル,横桁が 39 ケーブ Elastic wave Receiving AE sensor Transverse steel tendon Hammer & AE sensor Amplifier Waveform recorder Fig.7 Comparison of grout fill level and frequency response Fig.8 Measurement set-up for impact-elastic wave method 最終判定は目視確認がで 削孔法の調査結果を優先に判定することとした. Table.2 に PC グラウト充填度調査結果の総括を示す.主 ルであった.なお,充填不足の Table.2 Summary of grouting filling condition of PC bridge きる Main Girder Item Number of samples ケーブルでは 476 ケーブルのうち 1 ケーブルが充填不足 (充填不足 率 0.21%)であり,概ね PC グラウトが充填 得られた.上縁定着ケーブルは端部定 されている結果が Slab/Cross Beam Crouting conditions IE Method Impact elastic wave method Fully Poor grouting grouting 476 471 5 - - - Crouting conditions Number of samples - 2,998 Fully Poor grouting grouting - - 2,842 156 着ケーブルと比べ充填不足と PC 鋼材腐食に対するリス Drilling Method 5 4 1 156 30 126 クが高いケーブルである. Final judgement 476 475 1 2,998 2,872 126 率 4.20%)であり,充填不足率 は低いものの PC グラウトの充填不足が認められた.部 材 別 の PC グラウト充填状況を Fig.9 に示す. 床版 が ルが充填不足(充填不足 3.68%であり,横桁が 8.33%である.横締めケーブルは 第三者災害に対するリスクを有して いること,東西線は市街地に隣接していることから,今 後も予防保全として PC 鋼棒突出防止を実施する必要が あると言える. Fig.10 に車線別に分類した PC グラウト充填状況を示 す.A~D 線のうち B 線の充填不足率が最も高い値(充 填不足率 4.93%)を示している.Fig.11 に区間別に分類 した PC グラウト充填状況を示す.区間は補修工事の工 区にて分類しており第 1 区間は葛西方面,第 3 区間は行 徳方面であり,第 2 区間は第 1 区間と第 3 区間の間であ る.そのうち第 2 区間の充填不足率が最も高い値(充填 不足率 7.25%)を示している.このデータから,車線別 と区間別に分類した PC グラウト充填状況の傾向は特に 得られなかった.今後も継続的に予防保全対策の一環と してデータ蓄積と分析を行う予定である. PC 鋼棒突出による まとめ 5.1 PCT 桁橋の耐荷性能の検討 プレストレス低下に 5 Notes IE Metod Impact-Echo Method 分のプレストレスが除去 列車荷重が載荷されると G1 桁の支間中央部に いないが,主ケーブル 3 本 され, 曲げひび割れが発生する. Poor grouting 8.33% 80% 70% 60% 50% Fully grouting 99.79% Fully grouting 96.32% Fully grouting 91.67% 40% 30% 20% 10% Main Girder Slab Cross Beam Fig.9filling 部材別の PCグラウト充填状況 Fig.9 Grouting condition of PC bridge by elements 100% Poor grouting 4.93% Poor grouting 2.61% 90% Poor grouting 0% 80% 70% 60% 50% Fully grouting 97.39% Fully grouting 95.07% Line A Line B Fully grouting 100% 40% 30% 20% 10% 0% Line C/D Fig.10 Grouting filling condition of PC bridge by routes Fig.10 路線別の PCグラウト充填状況 100% Grouting filling condition of PC bridge (%) が発生する.この時,主桁にはひび割れは発生して Poor grouting 3.68% Poor grouting 0.21% 90% 0% まとめると以下の通りとなる. 挙動は,主ケーブルのプレストレスが低下 すると,主桁の相対変位に伴ない主桁と横桁にねじ りが生じ,主桁と横桁の接合部に橋軸直角方向の引 張応力が生じる.その後,プレストレス低下が進む と主桁の支間中央部に曲げひび割れが生じることが 確認できた. (2) 解析の結果,例えば G1 桁の主ケーブル 2 本分のプレ ストレスを除去すると,死荷重時に主桁と横桁の接 合部の横桁側に曲げひび割れ強度以上の引張応力度 : Unit Cable 100% よる PCT 桁橋の耐荷性能に関する解析的検討の結果を (1) 上部工の : 4.20% Drilling Method:Drilling+CCD Camera Insufficient filling rate of grout: Number of insufficient grouting of drilling method/ number of samples×100 Grouting filling condition of PC bridge (%) 横締めケーブルでは 2,998 ケーブルのうち 126 ケーブ 0.21% Filling Rate of Grout Grouting filling condition of PC bridge (%) 今回調査対象とした上縁定着 ケーブルでは PC グラウト充填率が高かったこと,建設 時の PC グラウト注入は一連で施工することが基本であ ることから,今回調査していない端部定着ケーブルもほ ぼ PC グラウトが充填されているものと考えられる.以 上から,今回調査した区間の主桁は,PC グラウト充填 に対して健全性は確保されていると考えられる. 90% Poor grouting 0.28% Poor grouting 7.25% Poor grouting 2.07% 80% 70% 60% 50% Fully grouting 99.72% 40% Fully grouting 92.75% Fully grouting 97.93 30% 20% 10% 0% Section 1(13 spans) Section 2 (13 spans) Section 3 (7 spans) Fig.11 区間別のPCグラウト充填状況 Fig.11 Grouting filling condition of PC bridge by Secton 分のプレストレスを除去した場合の 計荷重時には,G1 桁の支間中央部に発生している 曲げひび割れは顕著となる.そのため,主桁に曲げ ひび割れが認められた場合は,速やかに詳細調査, 健全度評価,列車運行停止の準備を行うとともに耐 荷性能を回復するための対策が必要となる. (4) 一連当たりの主ケーブルのプレストレスが 1 本除去 する毎に 1mm 程 度の鉛直変位が主桁の支間中央部 で発生することから,高感度の計測機器を用いるこ とで上部工の健全度をモニタリングできる可能性が (3) 主ケーブル 4 本 設 今回行った PC グラウト充填度調査の対象径間で 概ね PC グラウトは充填されていたものの,横締め ケーブルには一部充填不足が認められた.また,東西線 はリスクが比較的高いと言われている年代の PCT 桁橋 であることから, 今後も予防保全としての補修工事や, リスク低減としての PC グラウト充填度調査およびデー タ蓄積を継続的に行う予定である. 一方, は, 1) 有ることが判った. 2) りとなる. (1) 主ケーブルでは 476 ケーブルのうち 1 ケーブルが充 率 0.21%)であり,概ね PC グラウ トが充填されている結果が得られた. 填不足(充填不足 2016.9. 3) (2) PC グラウト充填不足と PC 鋼材腐食に対するリスク 率が高かったこと, 連の施工であり,調査 対象としていない端部定着ケーブルも概ね充填され ているとの推察から,今回調査した主桁の PC グラウ ト充填に対する健全性は,ほぼ良好であると考えら が高い上縁定着ケーブルの充填 建設時の PC グラウト注入は一 率 4.20%)となり,充填不 率は低いものの,PC グラウトの充填不足が認めら T-BEAM BRIDGE,Sixth International Conference on StructuralFaults and Repair 3rd July 1995, Volume1.pp73-80,1995.7 5) Norihiko Ogura, Hiroshi Nishi, Hideki Manabe, Tae-Ho Ahn れた. :Various non-destructive tests for infrastructures in JAPAN, Journal of Ceramic 率の内訳は,床版が 3.68%, 横桁が 8.33%であり,PC 鋼棒突出による第三者災害 Processing Research.Vol.16,Special.1,pp.132-137, 2015.3 今後も予防保全として PC 鋼棒突出防止を実施する必要があると言える. 5.3 今後の検討 今回,PCT 桁橋の補修工事にあたって, 6) 目すべきひび割れの発生位置を示すことで,施工管 理上,容易に判断することができた.実橋ではコンクリ ートの浮き,剥離などの断面欠損が認められていること から,今後,橋梁定期点検の結果から,実橋での変状の 種類,発生位置,大きさを集計して,それらの変状によ る剛性低下を評価した検討を行い,さらに実務者に便利 に利用できる維持管理の着目点を整理する予定である. 7) に隣接していることから, 耐荷性能とひび割れの発生をシナリオ上にて整理し,予 : NDT OF GROUTING INTRANSVERSE PRESTRESSING STEEL IN (4) 横締めケーブルの充填不足 に対するリスクを有していること,東西線は市街地 Kazuo Kobayashi,Toyoaki Miyagawa,Yoshihiro Hatta,Kazuhiro Kuzume れる. 足 鎌田敏郎,内田慎哉,大西弘志,葛目和宏,真鍋 英規,藤原規雄,玉越隆史:叩けばわかる!道路 橋鉄筋コンクリート床版の疲労による水平ひび 割れの検出,検査技術,2009.4. 4) (3) 横締めケーブルでは 2,998 ケーブルのうち 126 ケーブ ルが充填不足(充填不足 土木学会第 70 回年次学術講 演会,Ⅵ-141,pp281-282,2015.9. プレストレストコンクリート工学会:既設ポスト テンション橋のPC鋼材調査および補修・補強指針, 全性に関する検討, 径間(68 連)を対象に,PC グラウ ト充填度調査を行った.その結果をまとめると以下の通 柳沢有一朗,小柴康平 亀井啓太,保栖重雄,西 弘,小椋紀彦,橋本達朗,益村拓朗:プレストレ ス低下によるポストテンション単純 T 桁橋の健 5.2 実橋での PC グラウト充填度調査 予防保全として 東西線 PCT 桁橋 33 参考文献 , 鎌田敏郎,淺野雅則,川嶋雅道,内田慎哉,六郷 恵哲:弾性波によるPCグラウト充填評価手法の実 構造物への適用,土木学会論文集,Vol.62,No.3, pp.569-586,2006.9 め着 鎌田敏郎,内田慎哉,角田蛍,佐藤浩二:実橋梁 PC桁での非破壊試験によるPCグラウト充填評価 方法に関する研究,土木学会論文集,Vol.68,No.4, pp.238-250,2012. 8) 竹内祐樹,中村英佑,渡辺博志,木村嘉富:PC グラウトの充填度評価と再注入に関する基礎的 研究,プレストレストコンクリート技術協会第18 回シンポジウム論文集,pp365-370,2009.10
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