<報告> 第 3 回アジア放射線研究会議(3rd ACRR)に出席して 奈良県立医科大学 大西 武雄 3rd ACRR が北京国際会議場で本年 5 月 11-13 日に開催された。今回の開催前には鳥インフルエン ザウイルスが中国で流行して死者まで出ている。PM2.5 の大気汚染がひどく、北京では晴れていて も曇りのような状況である。尖閣列島問題で日本人は安心して中国での旅行ができない。などのう わさが広まり、開催さえ危ぶまれていた。実際に、韓国の研究者から鳥インフルエンザウイルス流 行の理由から、開催を延期してはどうかまでの提案が小生に届いていた。中国の 3rd ACRR の世話 人に問い合わせるといずれの不安に対して、安心してお越しくださいとの返事であった。小生には 宇宙放射線研究が進んでいる大連海運大学での講演もあったので、ACRR 開催の 3 日前に日本を飛 び立った。現在の中国では独自に宇宙へのフライトを繰り返しており、2020 年には中国独自で宇宙 ステーションを建設することになっている。すでに宇宙飛行士による宇宙実験が何度も行われてい る。宇宙研究に関わらず、基礎研究の広い分野に関して中国各地の大学・研究所では多くの大きな プロジェクトが動いている。また、アメリカで活躍してきた中国出身の教授クラスの研究者やアメ リカで博士の学位を取ってきた研究者の帰国ラッシュが始まっている。研究施設・装置・研究費・ プロジェクトも目を見張るものがある。何よりも研究者の数が多い。 ゴーグル、PM2.5 と鳥インフルエンザウイルス対策用のマスク、手袋の完全装備で大連国際空港 をでた。迎えに来ていただいた研究者に「あなたは病気ですか、すぐ病院に行きますか」とたずね られた。空港では誰一人マスクすらしていないのである。鳥インフルエンザの状況をたずねると、 「誰一人感染していません。それは上海などの南の方のことです。中国人の人口の中でたった数十 人のことは問題になりません。マスクも外す方が良いでしょう」と言われた。「日本の報道は間違 いが多いのです、中国は日本よりも安全な国です」と言うのです。お迎えの車に乗る前には用意し ていたすべての装備を外さざるを得なかった。 大連での滞在中に旅順への半日旅行に出かけた。「杉野はいずこ」の旅順港、激戦地の 203 高地 - 306 -
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