Mg 蓄電池用正極活物質の開発

平成24年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
Mg 蓄電池用正極活物質の開発
埼玉県産業技術総合センター
栗原 英紀、○稲本 将史
次世代自動車用蓄電池には高エネルギー密度化が要求され、高容量型の電池として多価カチオン電池が期待されて
いる。その中でマグネシウムはリチウムに匹敵する体積理論容量を有しており、安全性が高く、戦略物質でもないこ
とから実用化が期待されている。しかし、2価であるマグネシウムイオンは固体中での拡散が遅いので、正極中にト
ラップされやすく、吸蔵・放出により正極構造が壊れやすい。すなわち、電池容量がリチウムに比べて上がらず、サ
イクル維持もしにくい欠点がある。そのため、マグネシウムイオンを安定的に吸蔵・放出することができる正極活物
質の開発が必要とされる。そこで、我々は、結晶構造が安定な酸化物に硫黄をドープするハイブリッド型の材料によ
り課題解決を目指した。合成は、カーボンフェルト電極マイクロ波放電により発生する水プラズマを用いた(CF-MWP)。
この方法により、金属酸化物と硫黄の反応を抑制し、金属酸化物中への硫黄のドープを図った。その構造解析と電極
性能評価を行ったので報告する。
1)CF-MWP合成法
概略図を下記に示す。原料に H2O 添加したものをカー
ボンフェルトに挟み、ガラス容器に入れ、0.001MPa まで
減圧した。この状態でマイクロ波照射することにより発
生する水に起因するプラズマで焼成した。
Fig.1 Schematic of CF-MWP.
2)構造解析と電極評価方法
合成した活物質を XRD 等その他各種の分析により評
価した。また、電極は活物質と導電材、結着剤を十分に
混合した後、カーボンペーパーに塗布し、減圧乾燥して
作製した。電極評価は3極セルを用いて充放電試験を行
った。負極は Mg 合金またはあらかじめ放電して Mg を挿
入した正極を用い、電解液は 0.4M Mg(ClO4)2 + 0.1M
NaClO4 /PC+H2O を、参照電極は Mg 金属を用いた。
結果・考察
原料は五酸化バナジウム(V2O5)が効果的であった。
合成後の活物質の XRD パターンを Fig.2 に示す。合成後
も V2O5 と硫黄のパターンが検出された。従って、
CF-MWP による合成では V2O5 の構造が維持され、硫黄
がドープされたと考えられる。また、硫黄は V2O5 の表
面に分散しており(EPMA)
、V2O5 は層間が拡がったア
モルファス構造であることが示唆された(TEM,
DRS-FTIR)
。
充放電曲線およびサイクル特性を Fig.3,4 に示す。最大
容量は 420mAh/g を示し、50 サイクル後の維持率は 70%
であった。これらの結果はアモルファス構造により Mg
イオンが挿入脱離しやすくなったことを示している。ま
た容量は硫黄量に相間することから、硫黄もレドックス
反応することが示唆された。サイクル劣化が少ない結果
が得られ、S-V2O5 は Mg 蓄電池の正極材料として期待で
きることが示された。
Fig.2 XRD pattern of : (a) V2O5 and (b) S-V2O5.
2.5
Potential / V vs Mg/Mg2+
研究内容
2
1.5
1
0.5
0
100
200
300
Capacity /mAhg-1
Fig.3 Charge-discharge curves.
Fig.4 Cycle performance.
400