全りんの分析 りんは地中に広く存在する元素で、河川や湖沼などの水中のなかにも含ま れている。水中のりんが増加するのは、し尿や肥料などに多量に含まれてい るため、生活排水、工場排水、農業排水などの流入による場合が多い。りん は生物の増殖機能に必須の元素であるが、水中のりんや窒素などの栄養塩が 多 く な り 過 ぎ る と 、藻 類 の 異 常 繁 殖 な ど の 様 々 な 富 栄 養 化 現 象 を 引 き 起 こ す 。 水中に存在するりんの形態はさまざまであるため、個々のりん化合物を測 るのではなく、全りんとして水中のりん酸化合物の総量を測る。工場等の排 水基準や湖沼・海域の環境基準に用いられる公定法には、ペルオキソ二硫酸 カリウム分解、硝酸−過塩素酸分解及び硝酸−硫酸分解によって試料中の有 機物などを分解し、この溶液のりん酸を測定して全りん濃度を求めるものが あるが、実習室では比較的容易なペルオキソ二硫酸カリウム分解法を用いる ( 工 場 排 水 試 験 法 JIS K 0102 46.3.1)。 分 解 後 の り ん 酸 イ オ ン は 、 モ リ ブ デ ン 青 ( ア ス コ ル ビ ン 酸 還 元 ) 法 で 求 め る ( 工 場 排 水 試 験 法 JIS K 0102 46.1.1)。 こ の 方法は、りん酸イオンとモリブデン酸塩とのヘテロポリ酸錯体のりんモリブ デン酸を、還元剤のアスコルビン酸で還元して生じるモリブデン青の吸光度 を測定して求められる。 【用意する器具・薬品】 100mLテ フ ロ ン ジ ャ - メスシリンダー メスピペット ホールピペット 30m L共 栓 試 験 管 共栓メスシリンダー 劇 物 ペルオキソ二硫酸カリウム (窒素・りん測定用) L(+)-ア ス コ ル ビ ン 酸 モリブデン酸アンモニウム溶液 全りん - 1 り ん 標 準 原 液 (50mgP/L) 【全りん分析操作フローチャート】 《試薬の調製》 A ペルオキソ二硫酸カリウム溶液 (使 用 時 に 調 製 ) ◆ペルオキソ二硫酸カリウム(窒素・ り ん 測 定 用 ) 4g を 共 栓 メ ス シ リ ン ダ ー に 入 れ 、 蒸 留 水 を 加 え て 100mL にする ◆振り混ぜて溶かす ペルオキソ二硫酸カリウム (窒素・りん測定用) B アスコルビン酸溶液 (使用時に調製) ◆ L ( + ) - ア ス コ ル ビ ン 酸 0.72g を 共 栓 メ ス シ リ ン ダ ー に 入 れ 、 蒸 留 水 を 加 え て 10mL に す る ◆振り混ぜて溶かす L(+)-アスコルビン酸 C り ん 標 準 液 ( 0.005mgP/mL ) (使用時に調製) ◆ り ん 標 準 原 液 ( 50mgP/L ) 10mL を 全 量 フ ラ ス コ 100mL に と り 、 蒸 留 水 を 加 え て 100mL に す る ◆混合する りん 標 準 原 液 (50mgP/L) D 発色試薬(使用時に調製) ◆ ア ス コ ル ビ ン 酸 溶 液 10mL の 入 っ て いる共栓メスシリンダーに、モリブ デ ン 酸 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液 50mL を 加 える ◆混合する 劇 物 モ リブ デ ン 酸 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液 《分析操作手順》 1 試料とブランクの採取 ◆ テ フ ロ ン ジ ャ ー に 試 料 を 50mL 採 取 す る ◆ ブ ラ ン ク は 蒸 留 水 を 50mL 採 取 す る 2 ペルオキソ二硫酸カリウム溶液を入れる ◆ ペ ル オ キ ソ 二 硫 酸 カ リ ウ ム 溶 液 を 10mL 入 れ る ◆ふたをして混合する ペルオキソ二硫酸カリウム溶液 全りん - 2 3 加熱分解 ◆ オ ー ト ク レ ー ブ に 入 れ 、 120 ℃ で 30 分 間 加 熱 分 解 を す る 4 標準液の採取(加熱分解をしている間に行う) ◆ り ん 標 準 液 ( 0.005mgP/mL ) 1 ∼ 5mL を 30mL 共 栓 試 験 管 に採取する ◆ 蒸 留 水 を 加 え て 25mL に す る ◆ 標 準 液 の ブ ラ ン ク と し て 、 蒸 留 水 を 25mL 採 取 す る り ん 標 準 液 (0.005mgP/mL) 5 放冷 ◆オートクレーブから取り出し放冷する 高 6 温 オートクレーブの圧力が下がっていることを 確認してから取り出す 上澄み液の分取 ◆ 上 澄 み 液 25mL を 30mL 共 栓 試 験 管 に 分 取 す る 7 発色試薬を入れる ◆ 試 料 と 標 準 液 の 入 っ た 共 栓 試 験 管 に 発 色 試 薬 を 2mL 入れる ◆栓をして混合する ◆ 20 ∼ 40 ℃ ( 室 温 ) で 15 分 間 放 置 す る 劇 物 8 発色試薬 吸光度の測定 ◆ 分 光 光 度 計 で 波 長 880nm の 吸 光 度 を 測 定 す る 9 計算 ◆検量線から求めた分取試料中の全りん量a(ブランクの値で補正) から、次の式で全りん濃度を求める P ( mgP/L )= a × 60/25 × 1000/50 定 量 下 限 値 0.05mg/L 全りん - 3 1 全りん分析操作における注意事項 ①ペルオキソ二硫酸カリウムは、必ず窒素・りん測定用を用いる。 ② モ リ ブ デ ン 酸 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液 に は 、劇 物 の 硫 酸 が 入 っ て い る の で 、 取り扱いには注意する。 ③オートクレーブによる加熱分解は、高温になるのでその取り扱いに は十分注意する。 ④オートクレーブからの取り出しは、圧力が下がっていることを確認 してから行う。 ⑤臭化物イオンの多い海水の場合は、臭素が生成してモリブデン青の 発色を妨害することがあるので、加熱分解の放冷後に亜硫酸水素ナ ト リ ウ ム 溶 液 ( 50g/L ) 1mL を 加 え る 。 ⑥ 試 料 中 の り ん 濃 度 が 低 い 場 合 ( テ フ ロ ン ジ ャ -に と っ た 試 料 中 の り ん 濃 度 が 0.1mg/L 未 満 ) に は 、 吸 光 度 の 測 定 に 光 路 長 50mm の 吸 収 セ ル を用いる。 2 全りんの環境基準 全りんの環境基準は、湖沼及び海域に設定されているが(詳しくは、 資 料 集 を 参 照 )、 河 川 に は 設 定 さ れ て い な い 。 ま た 、 水 域 類 型 の 指 定 は 、 湖沼及び海域とも植物プランクトンの著しい増殖を生ずるおそれのある 湖沼(海域)について行うものとしている。全りんの環境基準は類型別 に 定 め ら れ て お り 、 湖 沼 で は 、 0.005mg/L 以 下 か ら 0.1mg/L 以 下 、 海 域 で は 0.02mg/L 以 下 か ら 0.09mg/L 以 下 と な っ て い る 。 県 内 で は 全 り ん の 水 域 類 型 は、海域の東京湾が指定されているが、湖沼は指定されていない。ただ し、相模湖、津久井湖、芦ノ湖及び丹沢湖の湖沼には、全りんの排水基 準がある。 3 富栄養化 富栄養化とは、閉鎖性水域においてりんや窒素などの栄養塩類の濃度 が増加することで、この結果、アオコや赤潮などの富栄養化現象が現れ る。本来、富栄養化とはりんや窒素などの栄養塩類が少なく、生物生産 の 低 い 貧 栄 養 湖 が 、自 然 に 栄 養 塩 類 が 多 く な っ て ゆ く 現 象 を 示 し て い た 。 しかし、近年、閉鎖性の湖沼、海域などでは、周辺域への人口や産業の 集中に伴い、富栄養化は人為的な汚染として扱われるようになった。富 栄養化は栄養塩類濃度の増加だけでなく、それに伴って藻類などが異常 繁殖し、水域内の有機物が増加する。この藻類などによって増加した有 機物を内部生産という。水域内の有機物は、流入する有機物とこの新た に水域内部で生じた有機物の合計で表される。そこで、湖沼や海域にお け る COD の 環 境 基 準 を 達 成 す る た め に は 、 内 部 生 産 に よ っ て 生 じ た 新 た な 有 機 物 質 も 削 減 す る た め 、 COD な ど の 排 水 規 制 だ け で な く 、 り ん や 窒 素の排水規制が必要となった。 全りん - 4
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