4−3.ゲーム理論の代表例 ∼「囚人のジレンマ」∼ 1 「囚人のジレンマ」と

4−3.ゲーム理論の代表例
∼「囚人のジレンマ」∼
1 「囚人のジレンマ」とは?
状況
強盗事件で2人の容疑者が逮捕。
それぞれ別々の部屋で取り調べを受けている。
プレイヤー :
戦略 :
容疑者B
容疑者A
黙秘
自白
容疑者A 、B
「黙秘」 か 「自白」
黙秘
自白
A、Bとも1年 Aは無罪
Bは20年
Aは20年
Bは無罪
A,Bとも10年
利得表にすると?
A
黙秘
自白
B
黙秘
自白
(−1,-1) (−20,0)
(0,-20)
(-10 , -10)
(
,
A
)
B
(横の流れ)
B
︵
縦の流れ︶
Aが「黙秘」 → Bは 「
Aが「自白」 → Bは 「
」
」
どちらにとっても
「
」が良い
A
Bが「黙秘」 → Aは「
Bが「自白」 → Aは「
ナッシュ均衡は?
」
」
本来、2人にとって最も望ましいのは 「黙秘、 黙秘」
(全体合理性)
一致しない
But それぞれが個人の利益を追求した結果、
実際に実現するのは 「
」
(個人合理性)
プレイヤーにとって、より望ましい状況があるにもかかわらず、
悪い状況に陥ってしまう
ジレンマ
※ 「囚人のジレンマ」において、
「黙秘」 → 「協調」
「自白」 → 「裏切り」
と解釈すると、さまざまな事例に応用できる。
2 「囚人のジレンマ」の応用例
応用例1
ラーメン店の価格競争のケース (P3−7)
このとき、ナッシュ均衡は?
この値下げが1回では終わらずに繰り返されていくと、
値下げが続いて、結局、両方とも損をしてしまう可能性がある
B
A
据え置き
値下げ
据え置き
(2億、2億) (0億、3億)
値下げ
(3億、0億) (−1億−1億)
応用例2
伊勢丹の経営戦略 ※(配布資料1)
「伊勢丹の復活の秘密はどこにあったのか?」
∼「囚人のジレンマ」に陥る価格競争を避けるために、
独自性をうちだすことで、ゲームの構造そのものを変えた∼
「囚人のジレンマ」に陥ると予想できるならば、前提となっている条件を
変化させておくことで、より望ましい結果を得ることができる!
※身近な例でも「囚人のジレンマ」が生じているケースは多い
(参考) その他の応用例
※(配布資料2)
・ 銀行合併と囚人のジレンマ
・ 財政再建の先送りと囚人のジレンマ
(補論) 繰り返しゲームを考えると、「協調、協調」 に向かう
1回限りの囚人のジレンマ
個々の利己的な行動の結果、裏切り合う可能性がある
(裏切ることで一方的に高い利得が得られるから)
But
同じ状況が繰り返されると??
1回だけの行動では終わらず、それ以降の相手の行動も
考えなければならなくなる
(例)
トリガー(引き金)戦略 : 相手が1回でも裏切ったら、その後は
自分もずっと裏切り続ける
しっぺ返し戦略
: 相手が裏切ったら自分も裏切り、相手が
改めたら自分も改める
(仕返しされることで結局、利得が下がるので...)
しだいに 「協調しあう」方向へ
※ ナッシュ均衡は必ず1つのみ存在するとは限らない
具体例1
「 男女の争い 」
A君は野球に興味があるがオペラには興味がない。逆にBさんは
オペラには興味があるが野球には興味がない。
A君
応用例
Bさん
野球に行く
オペラに行く
野球に行く
(5、1)
(-1、-1)
オペラに行く
(-1、-1)
(1、 5)
ナッシュ均衡は?
どちらが最初に主導権を握るかによる(先手の利益)
A銀行とB銀行が数年後の合併に向けて、両行の情報システム
統合化も考慮に入れて検討中である。採用可能なシステムと
しては、現在A行が使っているD社システムと、B行が利用している
E社システムがある。このときの利得表は以下の通りである。
A行
B行 D社システム
E社
D社システム
(100、50)(20、20)
E社システム (5、1)
(50、100)
ナッシュ均衡は?
具体例2
チキン(弱虫)ゲーム
松井・清水『勝つための戦略 ゲーム理論』
より抜粋
2人の少年、ジムとバズが吹きさらしの高台で、それぞれが乗った2台の
自動車を崖に向かって走らせる。このとき、どちらが飛び降りないで前進
し続けることができるかを競う。
→ ・両方が最後まで前進し続けてしまうと、2人とも崖から転落
・相手が先に車から飛び降りれば、自分が英雄になれる
ジム バズ 飛び降りる
飛び降りる
( 2, 2)
前進する
応用例
(3,
1)
前進する
( 1,
3)
(0,
0)
ナッシュ均衡は?
ビルの建替えの投資競争 (※配布資料3)
(解決策)
・ ゲームの構造をあらかじめ変えることで解決する
・ 先手の利益 (小ビルが先に建て替えてしまう)
展開形ゲームへ
「じゃんけん」
具体例3
B
グー
チョキ
パー
(0, 0)
(1, -1)
(-1, 1)
チョキ (-1, 1)
(0, 0)
(1, -1)
パー
(-1, 1) (0, 0)
A
グー
(1, -1)
均衡は?
解決策
戦略を確率で組み合わせて
最適な組み合わせをさがす
(混合戦略)
※ 配布資料一覧
(配布資料1) 『∼戦略思考で「先を読む!」∼ ゲーム理論』
佐々木宏夫 編著 宝島社 (別冊宝島969号)
(配布資料2) 日本経済新聞 「やさしい経済学」連載
「金融システムと戦略」 柳川範之 (2005年8/3∼8/15)より
「財政政策と戦略」 佐藤主光 (2005年7/22∼8/2)より
(配布資料3) 『図解雑学 ゲーム理論』 渡辺隆裕 ナツメ社