Ⅲ 学習教材「総合実践システム」の利用方法

Ⅲ
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学習教材「総合実践システム」の利用方法
総合実践システムの学習目標
(1) 学習目標
学習教材「総合実践システム」の学習目標を,次のように設定した。
①
実践を通して,商業経営の本質を把握すること。
②
常に課題意識を持って,その解決にあたること。
③
個人思考から集団思考へと,意識改革すること。
④
価値ある情報を選択して,その活用を図ること。
⑤
正しい職業観を養い,進路に役立てること。
⑥
人間の在り方生き方について考えること。
(2) 学習内容
学習教材「総合実践システム」の学習内容を,次のように設定した。
①
第1段階(13期,14期)
他の教科・科目で学習した知識・技術を活用して,商業活動の仕入れと販売に伴う経理,
営業,総務の業務を行う。また,2∼4人で1社を組織して経営活動を行い,販売活動に関
する取引を全会社が競争しながら行う。なお,この段階の販売地区は2地区である。
②
第2段階(15期以降)
第1段階の取引と同じ市場構成で商業活動の仕入れと販売に伴う経理,営業,総務の業務
を行う。また,この段階の取引から販売地区は4地区となる。
2
総合実践システムの概要
学習目標,学習内容に対応して,図Ⅲ−1に示す「総合実践システム」を構築した。システ
ムの詳細については,p.34「Ⅳ
取引処理システム」とp.70「Ⅴ
情報検索システム」で述べ
る。
図Ⅲ−1
総合実践システムの構成
・管理システム
取引処理システム
・会社システム
売買取引を支援するシステム
総合実践システム
・企業内情報処理システム
情報検索システム
・地域情報検索システム
市場等のデータバンク
・国内情報検索システム
− 5−
3
総合実践システムの市場モデル
「総合実践システム」の市場モデルを,次のように構成した。
(1) 市場構成
・
生徒は,会社を担当し,各会社に均等に配置する。
・
指導教師は,管理部及び機関商業を担当する。
(2) 業種及び形態
・
各会社の形態は,株式会社とする。
・
業種は,電気製品(テレビ,ステレオ,ビデオ)を扱う卸売業とする。
・
各会社は,小規模企業から中規模企業へ発展していく段階にある。
・
会社名,所在地,電話番号は,学校で設定し,会社コードは01∼24とする。
・
組ごとの会社数及び構成員は,学校で設定する。
・
各会社の構成員は,年間を通して継続し,変更しない。
・
各会社の人員配置及び業務分担は,指導教師が合議の上で決定する。
・
できるだけ多くの業務を経験するため,1期ごとに会社内で生徒の配置替えを行う。
(3) 会社組織と業務分担
①
会社組織
生徒が担当する会社の組織を図Ⅲ−2に示す。
図Ⅲ−2
会社組織図
総務部 ・・・・・・・・ 文書管理,人事計画,業務計画,経営計画
社
長
営業部 ・・・・・・・・ 販売業務,仕入業務,在庫管理,販売計画
仕入計画,販売促進,新商品研究開発
経理部 ・・・・・・・・ 出納,会計,資金計画,財務分析
企画プロジェクトチーム
②
業務分担
・
社長は,経営全般を総括する。
・
総務部は,庶務及び経営計画に関する業務を行い,経理部の業務も分担する。
・
営業部は,商品の仕入れ,販売に関する業務と企画を行う。なお,一つの商品を担当す
る営業部員は一人とし,その部員が仕入れから販売まで一貫して担当する。
・
経理部は,出納,経理,資金計画,財務分析に関する業務を行う。
・
企画プロジェクトチームは,情報の収集,分析を行い,経営の企画を検討する。
(4) 取扱商品
①
商品の種類と取引状況
会社が取り扱う商品の種類と取引状況を表Ⅲ−1に示す。
− 6−
表Ⅲ−1
種
ステレオ
テ レ ビ
ビ デ オ
②
商品の種類と取引状況
類
取
引
状
況
商品コード
1型(11商品)
取引中の商品
11
2型(12商品)
新商品として13期から取引可能
12
1型(21商品)
取引中の商品
21
2型(22商品)
新商品として14期から取引可能
22
1型(31商品)
取引中の商品
31
2型(32商品)
新商品として23期から取引可能
32
投資累計額
40万円
30万円
0万円
新商品の発売
各商品の2型は,現在,メーカで開発予定又は開発中の商品である。この商品に対して,
各会社が新商品販売の研究開発投資を行い,その投資額が一定額を超えかつメーカから新商
品として発売されたときに,仕入取引が可能となる。
「総合実践システム」では,第1段階(13期)で各商品の1型(小型,旧型)の取引を
行い,研究開発投資累計が一定額を超えたときに,2型(大型,新型)が取引の対象に加わ
る。
(5) 会計期間
1会計期間を6か月とし,次の実践歴で行う。
・
第1段階
平成○年4月1日∼平成△年3月31日:2期(13期∼14期)1か年
・
第2段階
平成△年4月1日∼平成×年3月31日:4期(15期∼18期)2か年
(6) 期首財産状態
①
13期の期首貸借対照表
第1段階である13期の期首貸借対照表を図Ⅲ−3に示す。
図Ⅲ−3
資
当座預金
売掛金
貸倒引当金
繰越商品
備品
備品減価償却累計額
車両運搬具
車両運搬具減価償却累計額
諸口
産
19,085,000
191,000
2,000,000
1,080,000
1,600,000
288,000
13期期首貸借対照表
平成○年4月1日
金
額
負 債 及 び
3,167,000
支払手形
借入金
18,894,000
未払法人税等
3,046,000
資本金
別途積立金
920,000
未処分利益
1,312,000
27,339,000
28,898,000
− 7−
資
本
金
額
12,844,000
7,500,000
145,000
6,600,000
74,000
176,000
27,339,000
諸口
28,898,000
②
商品の期首残高の内訳
③
ステレオ1型
6台×@¥59,000=
¥354,000
テレビ1型
3台×@¥36,000=
¥108,000
ビデオ1型
34台×@¥76,000= ¥2,584,000
計¥3,046,000
売掛金の内訳
売掛金19,085,000円の得意先名(販売先名)は,学校で設定する。
④
支払手形の内訳
支払手形12,844,000円は,次のとおりとする。
手形種類:約束手形
手形番号:学校設定
振 出 日:12期
満 期 日:14期
振 出 人:各会社
受 取 人:学校設定
支払場所:学校設定
(7) 勘定科目及び帳簿組織
①
勘定科目
「総合実践システム」で使用する勘定科目の一覧を表Ⅲ−2に示す。
表Ⅲ−2
勘定科目一覧
資
流動資産
当座預金,定期預金,売掛金,受取手形,繰越商品,
(貸倒引当金)
産
固定資産
備品,(備品減価償却累計額),車両運搬具,(車両運搬具減価償却累計額)
流動負債
買掛金,支払手形,借入金,未払配当金,未払役員賞与金,未払法人税等
資
資 本 金
資本金
本
剰 余 金
別途積立金,未処分利益,
(未処理損失)
,繰越利益,(繰越損失)
負
債
費
用
収
益
②
仕入,貸倒償却,広告料,減価償却費,発送費,法人税等,支払利息
費
用
販売促進員採用費,退職給与金,販売促進員給料,割引料,在庫維持費
市場調査費,一般管理費,研究開発費
収
益
売上,受取利息,貸倒引当金戻入
帳簿組織
主要簿は,3枚複写の伝票制を採用する。1枚目の仕訳伝票は仕訳帳,2枚目の借方票及
び3枚目の貸方票は総勘定元帳とする。
(8) 管理部と機関商業の組織と業務
管理部と機関商業の担当は,指導教師が行う。
①
管理部の業務
・
取扱商品の売渡・買付
・
コンピュータ処理
②
機関商業の業務
・
銀行業務(当座振込の受付,手形代金の取立,手形割引,短期借入の受付)
・
運送業務(自動車貨物の受付・発送,自動車貨物の到着・引渡)
− 8−
・
倉庫業務(出庫受付,入庫受付)
・
保険業務(運送保険契約)
・
代理業務(営業諸経費の徴収,官公庁業務の代行(郵便,収入印紙,法人税等 ),デー
タバンク(企業内情報の提供,地域情報の販売,国内情報の販売,市場需要量情報の販売,
他社営業情報の販売)
)
(9) 業務プロセス
「総合実践システム」の業務プロセスの概要を図Ⅲ−4に示す。
図Ⅲ−4
業務プロセスの概要
<情報検索システム>
<取引処理システム>
[会社システム]
[管理システム]
初期化処理
ファイルの初期化
国内情報検索システム
地域情報検索システム
市場調査データの入力
市場調査処理
市場調査結果の印刷
企業内情報処理システム
営業外実績データの入力
営業外実績処理
営業外実績表の印刷
仕入申込データの入力
仕入取引処理
仕入競争結果の印刷
販売申込データの入力
販売取引処理
販売競争結果の印刷
決算・繰越処理
報告書の印刷
利益処分計算書の印刷
企業内情報データの追加
− 9−
(10) 企画プロジェクトチーム
①
QC活動の概要
QC活動は,製造工程における品質管理の方法として米国で誕生したものである。これが
日本において ,会社の経営活動全体の質を高めるTQC(Total Quality Control)にまで発展し ,
定着した。事務におけるQC活動,販売におけるQC活動というように,日本のQC活動は,
単なる製品の品質管理だけではなく,販売,事務,サービスなどの品質の向上にも向けられ,
直接,業務を担当している人の発想が最も良質の仕事を形成できるため,全員が経営者の意
識を持って,QC活動へ参加,協力,努力するという形態になっている。
日本のQC活動では,意志疎通や意志決定は,上から下(トップダウン)へ向けてなされ
ているのではなく,下から上(ボトムアップ)へ向けてなされている。日本では,1982年
に600万人の労働者のうち,60万人を越える労働者がQC活動を経験したと言われている。
こ
れは,現場の集団思考がボトムアップ方式によって企業経営に役立つことを示している。
②
企画プロジェクトチームとQC活動
会社を維持発展させるためには,活動に要する経費を上回る利益を上げる必要がある。そ
のために会社は,様々な情報を収集し,分析を行い,独自の経営方針に基づいて経営を行っ
ていかなければならない。つまり,日常の仕入業務,販売業務,経理業務などは,過去の反
省と将来の展望を基に立てられた経営計画に従って行われるものである。
「総合実践システム」では,日常業務を,総務部,営業部,経理部の各係に業務分担して
行うが,財務分析や経営計画等に関する企画活動は,小集団の企画プロジェクトチームを編
成し,QC活動を行うことで企業運営の方針を検討する。なお,最終的な意志決定は,社長
が行う。
③
企画プロジェクトチームの留意事項
各会社の企画プロジェクトチームは,
次の事項を十分考慮して企画活動を行う必要がある。
・
情報の利用にあたっては,「情報を利用してどのような課題を解決するのか」というこ
とが明確になっていなければならない。したがって,会社経営では,常に目標設定や課題
意識をもって各種計画の企画活動を行う必要がある。
・
販売政策上で,取扱商品の販売傾向として特徴的なことは何かをあらかじめ明確にして
おき,情報検索の仕方及び分析の指針とする。
・
市場調査を行って地域情報には,どのような情報があるかを確認する。
・
市場調査等で収集した情報を利用して調査・分析を行い,情報を段階的に解明しながら
課題の解決を図る。
④
企画プロジェクトチームの企画活動
各会社は,各学習段階に応じて企画プロジェクトチームを編成し,情報の収集,分析を行
い,これからの業務の立案などのQC活動を行う。主な活動は,次のとおりである。
・
損益分岐点分析
・
関係比率分析
・
最低必要利益の計算
・
販売予測
・
販売計画
・
仕入計画
・
資金計画
・
商品のライフサイクル
・
地域情報の分析
・
国内情報の分析
・
他社営業情報の分析
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