P300による虚偽検出の音声刺激と視覚刺激の比較 ○三阪梨紗 (福山大学大学院人間科学研究科) 平 伸二 (福山大学人間文化学部) • zこれまでのP300を指標とした虚偽検出研究 z実務 視覚刺激 (文字・数字・写真) 検査者が肉声で質問し,被検査者が返答を行うのが一般的 z情報処理における視覚優位性 刺激入力の遮断が困難 聴覚呈示 z聴覚呈示による受動的処理 (Pinel,2003) 聴覚野は側頭葉の狭い部分のみ,視覚野は後頭部,頭頂葉,側頭葉にまで広く分布 ヒト=視覚的動物 視覚刺激は刺激呈示時点ですべての情報入力が可能 z本研究の目的 虚偽検出場面における質問の呈示を音声 (聴覚刺激) と文字 (視覚刺激) を用いて,裁決刺激と非裁決刺激に対す るP300の振る舞いについて比較検討する。 結果 方法 参加者 大学生14名 (音声条件・文字条件の両条件に参加した。) 図1より,両条件とも刺激呈示後300ms-600msの間に最大 振幅が見られる。 装置と測定 — TEAC製携帯型多用途生体アンプ (Polymate AP1524) — ノイズキャンセリングヘッドホン (SONY MDR-NC500D) — 脳波は,Fz,Cz,Pzから測定 刺激 (音声条件・文字条件) — 標的刺激 (バナナ) — 裁決刺激 (イチゴ) — 非裁決刺激 (ブドウ・ミカン・リンゴ・レモン) 呈示時間400㎳,刺激間隔1800㎳±20% 手続き 最初に模擬犯罪課題を行った。 飴が5つ入った袋の中から1つを選び,黙って食べるよう指示した。 模擬犯罪課題終了後,脳波による検査をした。 参加者の課題は,標的刺激に対して利き手,それ以外の刺激 に対しては非利き手でできるだけ速く正確にボタン押しをする ことであった。 音声条件でのみ,ノイズキャンセリングヘッドホンを装着し て脳波測定を行った。また,ディスプレイ中央に+を呈示して 凝視点とした。 図1. 音声条件(左),文字条件(右)における各刺激に対する総加 算平均波形(Pz) 図2より,2要因(条件×刺激)分散分析 —条件の主効果(F(1,83)=63.97,p<.001)が認められた。 —刺激の主効果(F(2,83)=63.59,p<.001)が認められた。 —交互作用(F(2,83)=4.88,p<.05)が認められた。 刺激要因の多重比較(Ryan法) —標的刺激と非裁決刺激 p<.05 —標的刺激と裁決刺激 裁決>非裁決 ∥ 検出成功! 音声条件 14名中11名 文字条件 14名中11名 Χ2検定 有意差なし!! 図2. 両条件におけるP300の最大振幅の平均値(Pz) 考察 本研究では,文字条件の方が音声条件よりも最大振幅が有意に大きくなることが認められた。これは,文字条件では,刺激呈 示と同時に単語3文字の情報入力が可能であったが,音声条件では刺激呈示と同時に単語3文字すべての情報入力が不可能 であった。したがって,本実験では,両条件での注意の時間配分が異なったと考えられる。また,両条件の裁決刺激と非裁決刺 激の間に有意な差が認められなかった。しかし,裁決刺激のP300振幅が非裁決刺激よりも大きい場合を検出成功とした場合, 検出率は音声条件では78.6%(14名中11名),文字条件では78.6%(14名中11名)だった。両条件間に有意な差が認められな かったことから,音声呈示による虚偽検出の可能性が示唆された。さらに,今回の内省報告で14名中12名が音声条件の方が文 字条件と比較して疲れを感じにくいと回答した。これにより,虚偽検出時の被検査者への負担が減少されることが考えられる。ま た,実務では聴覚刺激と視覚刺激を同時に呈示することもあることから,今後同時呈示による検討も必要である。 謝辞:本研究は,平成20年度科学研究費補助金(研究代表者:平伸二,課題番号:20530649)の成果である。 本研究の実施にあたり,皿谷陽子さんの協力を受けました。ここに感謝の意を表します。
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