-大分地域大学等連携講座- 大分大学・大分県立芸術文化短期大学

-大分地域大学等連携講座-
大分大学・大分県立芸術文化短期大学・別府大学公開講座
「-多文化共生社会のために-フランスにおけるマイノリティ」
大分地域大学等連携講座は大分県内8大学等が地域研究,
国際交流及び教育の各分野で連携する事業のうち、教育分野
における市民向け講座を連携・実施するものです。大分大
学・大分県立芸術文化短期大学・別府大学が共同し、「多文
化共生社会」について学ぶ公開講座を開講しました。歴史上
有名な多文化社会であったローマ帝国とハプスブルク帝国
や,文化のメッカとしても名高いフランスにおける変遷を辿
りながら,現在まさに多文化共生時代を迎えた日本の「日本
人像」が海外からどのようにイメージされているのか,ドイ
ツのマス・メディア考を通して概観します。異なる文化を相
互に理解し、異なる文化を生きる人々の人権を尊重する社会
の構築のために何が必要かを考えるきっかけとして好評で
す。
平成22年11月27日(土)14:00から15:30
まで、大分県立芸術文化短期大学 人文棟において、大分地
域大学等連携講座「多文化共生社会のために」として、大分
大学経済学部の安田 俊介准教授が、移民問題を手掛かりに、
今後のフランス社会の行方を探るとして「フランスにおける
マイノリティ」の講議をされました。
当日は、16名が講座に参加しました。講師が作成した資
料を基に、キリスト教やイスラム教などのさまざまな宗教シ
ンボルの例示の後、スカーフ事件(1989年)及び宗教シ
ンボル禁止法(2004年)について説明しました。これを
ひも解くために、フランス革命以前の社会とキリスト教、王
の聖性とは?ノートルダム大聖堂(ランス)と微笑みの天使
と薔薇窓、アンリ4世の按手などのフランスでのキリスト教
の歴史について詳しく解説しました。
そして、1789年から始まったフランス革命は古い政治
システムの否定であると同時に、そのシステムを支えている
キリスト教の否定でもあったこと、現在のフランス社会は、
第五共和政と呼ばれ、フランス革命期に樹立された政治体制
である第一共和政の理念を引き継ぐものであることから、フ
ランスの社会は、革命を通じて、多くの人々の血という犠牲
を払って獲得した共和政という国家のありかたを現在も必
死に守ろうとしている。したがって、国家が管理する公共空
間に、宗教的なものを持ち込むことに、きわめて強いアレル
ギーがあることを説明しました。
次いで、移民の歴史、北アフリカのマグレブの位置、フラ
ンス郊外の暴動事件(2005年)、サルコジ政権の移民政
策などを解説し、18世紀末のフランス革命以来の政教分離
原則(ライシテ)を国是とするフランスでは、公共空間にお
ける宗教的行為が禁じられていること、言うまでもなく、か
ってその標的はキリスト教だったが、現在ではそれがイスラ
ム教となっている。更に、この問題を複雑にしているのは、
現在のフランスの経済不況による失業率の上昇であり、全体
では2008年の7.8%が、2010年には9.8%に上
昇し、しかも若年層(15歳~24歳)の失業率は24%近
いことである。 ちなみに「格差社会化」が叫ばれている日
本でも、失業率は10%台にとどまっている。
こうした経済状況を背景にして、次の二つの反応が現れて
いる。フランス人の側からは、国内のイスラム系移民がフラ
ンス人の就業機会を奪っているという反発があり、いっぽう
でイスラム系移民の若者層の失業率は先の統計数値の倍近
く高く、その原因が、フランス人による公然の、あるいは暗
黙のさまざまな差別にあるという怒りである。
このように、多文化共生社会をめざして、現在のフランス
の社会におけるフランス人とイスラム系アラブ人のあいだ
に存在する反目と対立の構図を緩和するためには、どのよう
な処方箋が考えられるのか?自由・平等・友愛の理念の真価
が今まさに問われているなどの説明を行いました。
受講者は、講師の資料、写真などにより、講師の話をうなづきながら真剣に聞いていました。「多文化
共生社会のために」では、今後も魅力ある講座を提供する予定となっております。また、大分地域大学等
連携講座でも大分県立芸術文化短期大学・別府大学共同企画「大分地域再発見講座」を予定するなど、今
後も県内8大学等が連携した企画を提供していきますので、皆さまのご参加をお待ちしております。
なお、大分地域大学等連携講座に関する詳細はリサーチファクトリー(554-7022)までお問い
合わせ下さい。