BSNET2016 一般演題「この1例から学んだこと」 01 増大する硬膜外血腫に対し、中硬膜動脈塞栓術を行った一例 孫 宰賢、岩上 貴幸、藤井 教雄 豊見城中央病院脳神経外科 目的:増大する急性硬膜外血腫の一例を報告する。 症例:18 歳の男性。交通事故で左前頭部を打撲し救急搬入となった。搬入時の頭部 CT にて左前 頭部に線状骨折と直下に硬膜外血腫を認めた。血腫は少量で神経学的異常所見認めなかったため 経過をみたが、3 時間後の CT で血腫増大を認めた。脳血管撮影を行うと、左中硬膜動脈前枝か ら持続的な出血を認めた。続けて同血管を塞栓し、止血を行った。その後、臨床経過は良好で、 血腫は増大せず徐々に退縮した。 結論:少量の急性硬膜外血腫に対する中硬膜動脈塞栓術は検討すべき治療法の一つであると考え られた。 02 難治性慢性硬膜下血腫に認めた硬膜動静脈瘻に対して経動脈的塞栓術を併用して治療に成功した 一例 山本太樹、大島共貴、佐藤雅基、後藤峻作、石川晃司郎 刈谷豊田総合病院 脳神経外科 慢性硬膜下血腫の中に、burr-hole drainage だけでは再発を繰り返し、治療が困難である症例を 経験することがある。今回われわれは、burr-hole drainage で短期間に再発を繰り返したが、経 動脈的塞栓術を併用し完治し得た症例を経験したので報告する。 症例は 82 歳、女性。右片麻痺を主訴に受診し、頭部 CT にて左慢性硬膜下血腫を認めた。burr-hole drainage にて改善したが、短期間で 2 度の再発を繰り返した。原因検索のため脳血管撮影を行う と、左中硬膜動脈(MMA)から多数の feeder が burr-hole 直下硬膜-血腫外膜で shunt する硬 膜動静脈瘻(dAVF)を認めた。マイクロカテーテルを MMA の遠位まで選択し、NBCA で塞栓 したところシャントは完全に消失した。その後 burr-hole drainage を施行し、術後 3 ヵ月経過 しているが再発なく経過している。本症例は、手術の侵襲とその治癒過程において、医原性の dAVF が生じ、血腫外膜に多くの血流が供給され、短期間での再発を繰り返したと考えられた。 血腫外膜の濃染像や、本症例のように dAVF を形成している場合、選択的 MMA 塞栓術の併用が 効果的であると考えられた。 03 機械的血栓回収術後に生じうる遅発性の中大脳動脈狭窄症 金 相年 JA 北海道厚生連 帯広厚生病院脳神経外科 【目的】機械的血栓回収術後 3 ヶ月の経過で,症候性中大脳動脈狭窄症を呈し,経皮的脳血管形 成術を行った症例を報告する.【症例】73 歳男性.直腸がん術後 3 日目に心原性脳塞栓症を発症 し,左中大脳動脈閉塞に対する機械的血栓回収療法を施行し,回復が得られたものの,内科的治 療に抵抗する進行性の左中大脳動脈狭窄を呈し,やがて軽度の右上肢巧緻動作障害と認知機能低 下を引き起こした.機械的血栓回収から 108 日目に経皮的脳血管形成術を施行した.【結論】機 械的血栓回収術後に,画像および症状の定期的で厳重な経過観察を必要とする症例が存在する. 04 ONYX を静脈側に penetration させて根治を得た on the wall type dural AVF の1例 秋岡直樹、桑山直也、柏崎大奈、黒田敏 富山大学 脳神経外科 症例は 62 歳男性。左側頭葉脳内出血による感覚性失語症を発症し、精査にて硬膜動静脈瘻(dAVF) と診断した。血管撮影所見は、右 S 状静脈洞の on-the-wall type dAVF (Borden Type III)であ り、main feeder は右後頭動脈で、その他は右後耳介動脈、中硬膜動脈、浅側頭動脈、テント動 脈もシャントに関与していた。シャント血流は拡張したラベ静脈を逆流して、SSS や basal vein of Rosenthal へ還流していた。右大脳半球の静脈うっ滞所見も伴っていた。本症例に対して、 ONYX を用いた経動脈的塞栓術を行った。右後頭動脈末梢に Scepter C を進め、バルーン拡張下 に ONYX-18 を注入した。最初は plug and push technique にて ONYX の方向付けをし、ONYX がシャントポイントを超えてラベ静脈に到達したところで、ONYX を注入し続けた。ONYX はラ 1 ベ静脈内を進み、静脈側から多数の feeder に逆行性に penetration していった。この1ヶ所か らの ONYX 注入により、最終的にシャントは完全に閉塞した。 05 上腕アプローチでの頚動脈ステント留置術におけるプロテクション法の工夫 大島共貴、山本太樹、後藤俊作 刈谷豊田総合病院 脳神経外科 【目的】頚動脈ステント留置術において、8Fr 以上のバルーン付きガイディングカテーテルが誘 導できなくても行える低侵襲かつ安全な protection 法を編み出した。【症例】67 歳男性。腹部 大動脈瘤の手術待機中に脳梗塞を発症した左内頚動脈起始部高度狭窄の症例。右上腕動脈より 6Fr アクセルガイド シモンズ型を左総頚動脈へ誘導した。同軸に 6Fr Optimo 100cm を誘導、 外頚動脈へ Guardwire 300cm を誘導した。flow reversal 下に、別の Guardwire 300cm で狭 窄 病 変 を 通 過 さ せ た 。 内 頚 動 脈 側 の Guardwire も inflation し て 、 distal double balloon protection の状態から、6Fr Optimo のみを抜去した。以降は通常の手順でステント留置を行っ た。 【結論】これまで直達手術や保存的治療を選択していたようなアプローチ困難、かつ不安定プ ラークが予想される症例においても、本法を用いればステント留置術が安全に行える。 06 上矢状静脈洞直接穿刺により経静脈的塞栓術を行った横-S 状静脈洞部硬膜動静脈瘻の一例 松崎丞,河野健一,梅嵜有砂,樫村洋次郎,久保美奈子,中山禎理,河面倫有,山家弘雄,和田 晃,松本浩明,寺田友昭 昭和大学藤が丘病院 脳神経外科 罹患静脈洞への到達に工夫を要した横-S 状静脈洞部硬膜動静脈瘻(TS-dAVF)の症例を報告す る.症例は,71 歳,女性,左拍動性耳鳴りで発症し,進行性の認知症を呈してきたため,当院に 紹介された.血流動態としては,左外頸動脈系,左テント動脈,左後硬膜動脈からの feeder が, 左横-S 状静脈洞へびまん性に shunt を形成していた.左内頚静脈、右横静脈洞は閉塞しており, シャント血流は,左 vein of Labbe,上矢状静脈洞(SSS),両側皮質静脈へ逆流し,右横-S 状 静脈洞を順行性に流れて,右内頚静脈に灌流していた.以上より,Cognard type Ⅱa+b の左 TS-dAVF と診断した.根治を目指すためには,罹患静脈洞を全域にわたって塞栓する必要があっ たことから,アプローチルートの工夫が必要であった.我々は,手術室で ICG を用いて SSS を 同定し、直接穿刺によって罹患静脈洞にシースを挿入した後,血管撮影室でコイル塞栓術を行い, 根治できた. 07 経上腕動脈アプローチによる緊急血行再建術 徳永 聡、今村 博敏、吉田 泰規、谷 正一、足立 秀光、船津 尭之、別府 幹也、鈴木 啓太、足 立 拓優、奥田 智裕、松井 雄一、川端 修平、三神 和幸、秋山 亮、堀内 一史、坂井 信幸 神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科 【はじめに】 脳主幹動脈閉塞による緊急血行再建術において、状況判断の遅れが再開通の遅れ に繋がった反省を要する症例を経験した。文献的考察を加え報告する。【症例提示】79 歳女性。 発症後 116 分で来院。NIHSS:17 点。CT-ASPECTS:8 点、CTA にて右 MCA M1 distal 閉塞を st 認めた。tPA 静注を行いながら緊急血行再建術を施行。Door-to-1 puncture:37 分。腹部大動 脈の蛇行が強く、type 3 aortic arch であった。ガイディングカテーテル(GC)の変更(9F OPTIMO、8F NeuroEBU)や 4F Simmons を用いた exchange 法への変更、術者の変更等を試 st nd みたが、経大腿動脈アプローチでは GC 誘導が困難であった。1 puncture-to-2 puncture:118 分で経上腕動脈アプローチに切り替えた。容易に GC 留置可能で、Solitaire 4*15mm 1pass で nd TICI:2b の再開通を得た。2 puncture-to-recanalization:32 分であり、NIHSS:15 点、mRS:4 で転院となった。【LESSON】GC 誘導困難時は、一つの方法に固執することなく、短時間で別 の方法に切り替えることが肝要である。大動脈弓部の解剖学的状況によっては、早期に経大腿動 脈アプローチを諦め、経上腕動脈アプローチ、頚動脈 direct puncture 等へ切り替える必要があ る。 08 Pressure cooker technique 変法によりカテーテル断裂をきたした一例 1 1 1 1 1 2 山口泉 里見淳一郎 兼松康久 木内智也 吉岡正太郎 山本伸昭 1 治 1 2 徳島大学 脳神経外科 神経内科 山本雄貴 2 永廣信 2 【症例】64 歳男性。脳ドックにて右横-S 状静脈洞部硬膜動静脈瘻が疑われ当院紹介となる。神 経学的脱落所見、頭痛、耳鳴りは認めず。脳血管撮影所見では左右後頭動脈の mastoid branch、 右上行咽頭動脈、左椎骨動脈硬膜枝が流入動脈となっていた。右横静脈洞は isolated sinus とな っており、皮質静脈逆流、Pseudophlebitic pattern も伴っていた。シャンティングポイントは confluence 近傍と考えられた(Borden type III、Lalwani grade 4)。経静脈的アプローチが困 難であり、治療は ONYX を用いた TAE を行った。マイクロカテーテル(Marathon)を右後頭動脈 mastoid branch に留置し、手前をコイルと 33% NBCA にて plug 形成し、Onyx18 を注入した (pressure cooker technique 変法)。塞栓は予定どおり進み、右総頚動脈撮影でシャント血流 は消失した。しかし Marathon が抜去困難となり、先端部が離断された状態での回収となってし まった。先端離脱可能なカテーテルを使用しない場合、Pressure cooker technique 変法はカテ ーテル離断の可能性があり注意が必要である。 09 ADAPT technique による血栓回収後に脳動脈瘤の合併が明らかになった中大脳動脈閉塞症の1 例 浅井 克則 1, 中村 元 1,坂口 学 2, 西田 武生 1,木谷 知樹 1,角野 喜則1,村上 知義 1, 吉峰 俊 樹1 1 大阪大学大学院医学系研究科脳神経外科学 2 大阪大学大学院医学系研究科神経内科・脳卒中科 3 大阪大学国際医工情報センター 【はじめに】未破裂脳動脈瘤の有病率は 2-5%とされているが、tPA 静注療法の適応となる脳梗 塞患者においては約 10%の未破裂脳動脈瘤の合併が報告されている。今回、我々は閉塞血管に未 破裂脳動脈瘤を合併していた中大脳動脈閉塞症に対して再開通療法を行った1例を経験したため 報告する。【症例】慢性心不全、心房細動、腸管動脈塞栓症の既往のある 86 歳女性。他科の手 術目的に当院に入院中に右麻痺・失語を呈しているところを発見された。左中大脳動脈閉塞症と 診断され、Penumbra ACE による ADAPT technique による血栓回収で再開通を得た(TICI 3) ところ、M1-2 分岐部に 7mm 大の脳動脈瘤を認めた。術後、頭部 CT では出血性変化を認めず、 翌日には症状の改善を認めた。【考察・結語】閉塞血管に存在する脳動脈瘤を再開通療法術前に 診断するのは時に困難である。 10 VA fenestration に発生した動脈瘤の1症例 折戸 公彦1)、坂本 六大1)、中村 普彦2)、 竹内 靖治3)、広畑 優1)、 森岡 基 浩1) 1)久留米大学 脳神経外科学講座 2)済生会福岡総合病院 3)公立八女総合病院 症例:74 歳女性。外出中に突然の頭痛が出現、嘔吐を認め、近医へ搬入。くも膜下出血(H&H G Ⅳ,Fisher group3)の診断となった。搬入 9 時間後に水頭症の悪化を認め、意識レベルの低下を認 めたため、加療目的に当院へ、全身麻酔導入後に紹介搬送となった。既往歴なし。脳血管撮影に て Rt. VA に fenestration が認められ、fenestration 部より PICA が分岐しており、分岐と反対 側に neck を持つ neck4.4mm,depth 4.2mm の動脈瘤が認められた。Neck が PICA 分岐部では なかったため、解離性動脈瘤の可能性も考えられた。動脈瘤に対し LVIS Jr. 2.5 x 17 mm にて ステント併用下コイル塞栓術を施行し、術後経過良好にて退院となった。 結語:稀である VA fenestration に合併した破裂動脈瘤の1例を経験したので報告する 11 Palpebral AVM の 1 治療例 1) 2) 厚生中央病院 脳神経外科、 藤枝市立総合病院 脳神経外科、 放射線科 1) 2) 渡辺大介、 堤将輝、 鹿子祐介、星野孝省、檮木治 62 歳女性. 既往歴に特記事項なし. 2 年前から左眼瞼浮腫を自覚していたが放置していた. 半年 前から徐々に悪化してきたので眼科を受診した. MRI で眼瞼/眼窩内に異常を指摘され脳神経外科 を紹介受診となった. 頭部 MRA では左中硬膜動脈が怒張し左眼窩内及び眼瞼に異常血管を認め た. 精査・加療目的に入院となった. 脳血管撮影で Palpebral AVM と診断した. Main Feeding Artery は左中硬膜動脈から涙腺動脈を介して眼瞼にある nidus へ流入し, Drainage Vein は上眼 静脈で海綿静脈洞へ還流した. 経動脈的塞栓術を施行した. 外頸動脈へガイディングカテーテル を誘導し, 反回中硬膜動脈へマイクロカテーテルを誘導した. 同部位にコイルを用いて塞栓し、マ 3 イクロカテーテルを涙腺動脈へ誘導し可能な限り shunt point へ近づけた. 中硬膜動脈前枝にバ ルーンカテーテルを誘導して Flow Control を行い、低濃度 NBCA で注入した. NBCA の一部は nidus へ到達し, ゆっくりと涙腺動脈を充填した. 眼窩上動脈と鼻背動脈からわずかに nidus へ流 入するが, 明らかに血流量は低下した. 上記にて手技を終了として, 摘出術を計画した. 文献的考 察を含め, 報告する. 12 急性期血行再建時に多発閉塞血管を見逃さないために 宮原牧子、井上雅人、岡本幸一郎、原徹男 国立国際医療研究センター病院 脳神経外科 【背景】急性期血行再建は時間との勝負であり、当院では脳卒中が疑われる患者に頭部 CT 撮像 後すぐ CTA を撮像し、主幹動脈閉塞を認めた場合速やかに治療を行っている。今回中大脳動脈 (MCA)閉塞治療後、脳底動脈(BA)閉塞に気付かれた症例を経験したため報告する。【症例】 70 歳女性、NIHSS34/42 で右上下肢麻痺と意識障害で来院した。来院時発症 54 分で既往に Af あり Warfarin 内服中(INR2.8)で tPA 適応外であった。来院 41 分で穿刺し左内頚動脈(ICA) 撮影し左 MCA(M1)閉塞を確認した。Penumbra ACE+Marksman を M1 遠位から M2 まで 挿入し Solitaire6 30mm2Pass で血栓除去し、更に central artery に一部閉塞あり Penumbra 3Max を使用し TICI3 となった(穿刺 67 分)。翌日の CT で左小脳梗塞、両側 PCA 領域の梗塞 を認めた。後方視的に来院時 CTA にて BA 先端部に一部造影欠損を認め、第 3 病日後頭下減圧 開頭を余儀なくされた。第 98 病日療養転院した。mRS5。【考察・結語】本例では左 MCA 閉塞 を来院時 CTA で発見し治療に臨んだが、意識障害も強く、脳底動脈閉塞などの多発病変を当初か ら考慮すべきであった。また急性期血行再建の現場で時間に迫られている場合、まず主病変を治 療した場合も、その後その他の血管撮影を行うことで多発病変の見逃しを防ぐことができると思 われる。 13 BA occlusion に対するステントリトリーバーを用いた血栓回収術の注意すべき合併症 井上雅人、宮原牧子、岡本幸一郎、原徹男 国立国際医療研究センター病院 脳神経外科 【背景】血栓回収術は比較的安全な手技だが、時に合併症をもたらす。BA occlusion に対する Solitaire を用いた血栓回収術時に脳底動脈の解離を経験したため報告する。 【症例】72 歳男性で、 意識障害にて救急搬送。来院時 NIHSS40、頭部 CT、CTA で脳底動脈閉塞と診断し血栓回収術を 行った。Solitaire 6mm 30mm にて 1pass するも再開通しなかった。再度 PCA から BA に展 開し Solitaire を引くと、抵抗があった。すぐに Marksman を一部リシースし Solitaire を回収。 血栓が回収され閉塞は解除されたが、脳底動脈の解離を認めた。術後 CT,MRI で脳幹梗塞は完成 しており、意識障害は改善しなかった。1 か月後の CTA にて解離は改善。解離部位に一致して fenestration を認めた。【考察・結語】解離の原因は断定できないが、fenestration の部位と一 致しており、血栓回収時に Solitaire が fenestration に引っかかり解離を起こした可能性は考え られる。回収時に抵抗があるときには決して無理せずリシースして回収することが重要である。 14 Solitaire FR による血栓回収療法により破綻した粥腫が回収されたアテローム血栓性中大脳動脈 閉塞の一例 1 1 1 2 1 3 3 2 船津奈保子 ,日野天佑 ,早川幹人 ,山上宏 ,古賀政利 ,佐藤徹 ,髙橋淳 ,長束一行 ,植 5 1 田初江 ,豊田一則 1 国立循環器病研究センター 脳血管内科, 2 国立循環器病研究センター 脳神経内科, 3 国立循環器病研究センター 脳神経外科, 4 5 国立循環器病研究センター 心臓血管内科 国立循環器病研究センター 病理部 【症例】82 歳男性.6 カ月前に心筋梗塞・左心室瘤切迫破裂に対し開心術を受けた.某日,持続 性心室頻拍にて当院入院,電気的除細動を施行された翌朝に左片麻痺,右への眼球共同偏倚,左 半側空間失認を生じた.MRI DWI で右中大脳動脈領域に高信号域,MRA で右 M1 遠位部閉塞を 認め,血管内治療を行った.脳血管撮影では,右中大脳動脈 inferior trunk の起始部閉塞,superior trunk 起始部の高度狭窄を認めた. Superior trunk 起始部の狭窄は残存血栓と考え,血栓回収療 法を行った. TICI 2b の再開通を得,直後より眼球共同偏倚と左片麻痺は改善した.当初は心原 性脳塞栓症と判断していたが,回収された検体は破綻した粥腫,付着血栓および血管中膜より成 り,アテローム血栓性脳梗塞と判明した.【Lesson】頭蓋内動脈硬化性閉塞に対するステントリ 4 トリーバーの使用は,血管傷害の懸念があり,注意が必要である. 15 解離性椎骨動脈瘤のトラッピング後に対側に新生の解離性椎骨動脈瘤を生じた 1 例 木谷尚哉、杉生憲志、菱川朋人、平松匡文、春間純、高杉祐二、新治有径、 西廣真吾、高橋悠、 伊達勲 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 脳神経外科 PICA involved type の解離性椎骨動脈瘤(vertebral artery dissecting aneurysm; VADA)に対 しトラッピングを行った後に、対側椎骨動脈に de novo の VADA を生じた一例を報告する。55 歳女性が左 VADA の破裂によるクモ膜下出血で搬送された。動脈瘤は PICA 起始部を含んでおり、 PICA を温存するため、PICA から、遠位 VA にかけて LVIS Jr.ステントを留置した後、近位 VA の解離部位をコイルでトラッピングした。患者は後遺症なく退院した。3 ヶ月後の脳血管造影検 査では、左 VA の閉塞及び左 PICA の良好な開存が確認されたが、右 VA に新たな VADA の出現 を認めた。こちらに対し、解離部に LVIS Jr.ステントを留置した後、瘤のコイル塞栓を行った。 血行力学的ストレスの変化が新たな動脈解離の発生に寄与する可能性があり、VADA のトラッピ ング後には慎重なフォローアップが必要である。 16 前半ダブルカテーテル法、後半バルーンアシストで塞栓した破裂脳動脈瘤の一例 桑山一行、亘雄也、谷口秀和、夫敬憲、中川義信 四国こどもとおとなの医療センター 脳神経外科 【目的】前半ダブルカテーテル法、後半バルーンアシストで塞栓した破裂脳動脈瘤の一例を報告 する。 【症例】73 歳男性、透析患者。家で動けなくなっており救急来院。来院時 E3V4M5、頭部 CT でくも膜下出血と脳室拡大あり(Fisher4,WFNSⅣ)。頭部 MRA で左内頚動脈瘤を認め、全 身状態不良の重症例でありコイル塞栓術を選択。左内頚動脈瘤は neck6.5mm, dome9.8mm, height7.8mm。XT-17 str.と SL10 preshape J を用いダブルカテーテル法施行。SL10 より Target XL 360 soft 7x20 を用い、neck 付近の 1 ループを支えに framing。Framing コイルは 離脱せず、XT-17 より塞栓。4 本目のコイルを留置時に瘤外へでた XT-17 を抜去し、Transform C 4mm を neck 部に留置。SL10 よりコイルを追加すると、framing コイルが母血管に出たが、 balloon assist で瘤内に塞栓できた。術後、新たな神経症状なし。水頭症、脳血管攣縮は認めず、 リハビリ病院へ転院。 【結語】ステントアシストが行えない破裂脳動脈瘤の塞栓において本方法は 選択肢の一つとなりうる。 17 MRI で解離腔と壁在血栓の経時的変化を認め、high resolution cone beam CT でも解離腔内血 栓と外膜が確認された解離性椎骨動脈瘤の 1 例 島田健司、門岡慶介、田中美千裕 亀田総合病院 脳神経外科 症例は 37 歳男性。子供と遊んでいる際に、突然右後頚部痛を認め、翌日になっても改善しない ため、当院受診した。CT にてくも膜下出血は認めず、MRI にて右椎骨解離性動脈瘤を認め、経 過観察のため入院となった。高血圧の既往があり、血圧コントロールによる保存的加療にて後頚 部痛は改善した。しかしフォローアップ MRI 中、経時的に壁在血栓の増大を認めたため、コイル 塞栓術を予定した。術当日の high resolution cone beam CT では偽腔周囲の血栓化および、血 管外壁への造影効果が描出されたため、活動的な血栓化の進行を疑い、ステント併用コイル塞栓 術ではなく、根治的な母血管閉塞術を施行した。術後経過良好で独歩退院となった。解離性脳動 脈 瘤 の 偽 腔 を 含 む 経 時 的 変 化 を み る に は 通 常 の DSA よ り も MRI が 有 用 で あ る が 、 high resolution cone beam CT もその解像度と空間分解能から治療戦略決定にとって極めて有用なモ ダリティーであると思われた。 18 椎骨動脈に生じた解離性動脈瘤をどう治療するか? 1) 1), 2) 北澤圭子 、伊藤靖 2) 信楽園病院 脳神経外科、 新潟大学脳研究所 脳神経外科 【はじめに】SAH 発症の椎骨動脈解離性動脈瘤(VADA)は、解離部の trapping が治療の基本だ が、対側 VA が無形成の場合には trapping ができない。今回、我々は対側 VA が無形成の VADA 症例の血管内治療とその後の経過について報告する。 【症例】64 歳、男性。 SAH grade 2。Angio 上、左椎骨動脈 (lt.VA)から脳底動脈(BA)の解離があり、2 カ所で解離性動脈瘤(DA)を形成して 5 いた。対側 VA が無形成であったため、発症 12 日目にステント併用コイル塞栓術を行った。BA から lt. VA に Enterprise(EP)を留置し、DA2 カ所のうち、大きい方の DA にコイルを jailing で 入れ、さらに EP を 2 枚重ねる予定とした。しかし、first coil を巻いた時に瘤の穿孔を生じ、coil を追加し止血が確認された時点で治療を終了した。発症 44 日目に EP を 2 枚追加し治療を完遂 した。経過は良好で自宅退院。コイルを入れなかった DA が残存していたが、EP が計 3 枚入っ ており、DAPT を行った。退院後、3・6 ヶ月、1 年で Angio を行い、残存した DA に変化がな いため、DA の消失を期待して SAPT にした。SAPT 後 3 ヶ月目にめまいがあり、MRI で小さな 小脳梗塞を認めた。Angio で lt. VA から BA には異常なかったが、残存した DA も閉塞していな かった。DAPT に戻し外来に通院中である。【Lesson】VADA に対する multilayer stenting の 有用性が言われているが、本例のごとく不十分な結果に終わることもある。抗血小板剤の使用方 法を含め未だ確立された方法ではない。 19 ステント併用コイル塞栓術適応の未破裂前交通動脈瘤の術中破裂とその対処 長谷部朗子,中原一郎,小田淳平,鈴木健也,渡邉定克,定藤章代†,早川基治†,安達一英†, 大場茂生†,我那覇司†,廣瀬雄一† 藤田保健衛生大学 脳卒中科,脳神経外科† 【はじめに】前交通動脈瘤は母血管径が小さく,バルーンアシスト(BAC)やステント併用コイ ル塞栓術(SAC)の対象となりくにいことが多い,近年,細小血管に留置可能なステントやバル ーンが使用可能となり治療可能域が拡がっているが未だ治療手技は容易とは言い難い.術中破裂 を来した合併症例を呈示し,治療戦略や破裂時の選択肢について検討する.【症例】57 歳男性, 脳ドックで判明した長径 7.13mm,左 A1/2 の Acom 瘤.左 A1 経由で SAC を企画,局麻下に 8/6F の guiding system にて左 ICA 高位に 6F Fubuki を留置し,Headway 17 を左 A2 に誘導. 次いで Excelsior XT-17 を瘤内に誘導したところカテ先端位置が瘤外へ逸脱していた.神経症状, バイタルに変化なく元来 BAC が容易でないことから,予定通り LIVS Jr 2.5 mmx23mm を留 置した後,瘤穿孔した XT-17 はそのまま留置しておき,Headway17 を瘤内へ誘導してコイル 塞栓を行い完全閉塞が得られた.術後 CT で右前頭葉内に径 5cm 大の脳内血腫を認めたが明らか な deficit はなかったものの,翌朝意識レベル低下を認めステント内血栓症が判明.急性期血行再 建を行い再開通が得られたが,左前大脳動脈領域に脳梗塞を生じ高次脳機能障害が残存した. 【ま とめ】SAC 不可避の難治瘤の術中穿孔による出血に際しては臨機応変な手技選択,迅速な止血, 瘤の根治とともに周術期のステント血栓症への対処や抗血栓療法のマネージメントが重要となる. 本例における対応の妥当性や他の選択肢の可能性を検討する. 20 脳底動脈先端部動脈瘤に対する stent coiling の際に Enterprise 2 が変形した 1 例 中山 禎理 昭和大学藤が丘病院脳神経外科 左右 PCA が dome から分岐する 7mm 弱の broad neck BA tip AN の症例。右 PCA への balloon assist にて fraiming を行った後に、Prowler select plus を通して Enterprise 2 (E2)を展開し た(balloon と coil 挿入用に microcatheter2 本を jail)。stent 内腔を確保するため guide wire 先 行で Prowler を stent 内にすすめたところ、flare の一部が引っ掛かり折れ返ってしまった。血 流は保たれており、瘤 neck 部 stent 拡張は得られていたため coil を順次挿入し coiling は終了。 本症例のように折れ返った flare が固定されるのは外側に折れた状態であると考えられた。実験的 検討を加え報告する。 21 マイクロカテーテルの誘導が極めて困難であった左内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤破裂によ るくも膜下出血の一例 岩上貴幸、藤井教雄、孫宰賢 豊見城中央病院 症例:77 歳女性。左内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤破裂によるくも膜下出血。動脈瘤は内頚 動脈の外側から後下方向きに突出。既往として、右内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤破裂による くも膜下出血に対しコイル塞栓術を 2 年前に施行している。今回も破裂瘤に対しコイル塞栓術を 行ったが、マイクロカテーテル誘導が極めて困難であった。カテーテルの選択及び先端形状の shaping を繰り返し、何とか瘤内への誘導を達成し、完全閉塞を得た。 考察・結論:本症例においてマイクロカテーテル誘導が困難であった要因として、①C4∼2 の屈 曲が強くカテーテル操作が困難、②C2 の軸と動脈瘤の軸が大きくずれており、瘤内へのマイクロ 6 カテーテル留置が困難で不安定、③瘤の径が小さい、④瘤は細長い形状で先端に bleb があるため、 先端部分の塞栓が必要であった、という点が考えられた。治療困難例を術前に予測し、マイクロ カテーテルの形状選択や shaping を入念に行うことが重要であると考えられた。 22 Tortuous で距離の長い feeder での NBCA 塞栓術における micro catheter 抜去時の工夫 藤井 教雄 友愛会豊見城中央病院 【はじめに】Onyx や NBCA を用いた塞栓術において、マイクロカテーテル抜去時に動脈解離を 起こすことが稀にあるが、tortuous な feeder に対しては特に注意が必要である。今回われわれ は tortuous で距離の長い feeder での塞栓術において、カテーテル抜去直後に脳出血を呈した AVM 症例を経験したので、合併症回避のための工夫について考察した。【症例】62 歳男性。ク モ膜下出血治療中に偶然発見された AVM 患者。開頭術に先立って NBCA を用いた塞栓術を行っ た。左 M2 から左側頭葉後方の nidus へ延びる、屈曲が強く距離の長い feeder に対して Marathon を nidus 近傍まで誘導した。25%NBCA を注入後、陰圧をかけながらカテーテルを抜去した直後 に feeder からの extravasation を認めたため、すぐにヘパリンリバースを行った。左側頭葉内 側に血腫形成を認めたが、幸いにも明らかな神経脱落所見はなく血腫増大も認めなかったため、 翌日 AVM 摘出術を実施した。【考察・結語】Tortuous かつ距離の長い feeder で塞栓を実施す る際は、塞栓前にカテーテルのたるみをできるだけ取っておくことや、予めヘパリンリバースし ておくことが肝要であると思われた。 23 Transvenous reverse pressure cooker technique を用いて根治できた isolated transverse sigmoid dAVF の1例 昭和大学藤が丘病院脳神経外科 久保美奈子、山家弘雄、樫村洋二郎、松崎丞、梅嵜有砂、中山禎理、河野健一、河面倫有、松本 浩明、寺田友昭 【症例】耳鳴りで発症した左 transverse-sigmoid sinus dAVF の 80 歳女性。経動脈的塞栓術後 の経過中に静脈洞の流出路閉塞、皮質静脈逆流が出現したため経静脈的塞栓術を行った。経大腿 静脈アプローチで左 transverse sinus に到達、0.035 ガイドワイヤーで閉塞部を貫通させ、マ イクロカテーテルを isolated sinus に挿入、sinus 内でカテーテルをUターンさせ transvese sinus からコイル塞栓を行った。Sinus パッキング後、Labbe への逆流残存を認めたが、Labbe へのルートはコイルで閉塞され、マイクロカテーテルではアクセスできないため、静脈洞内のマ イクロカテーテルから ONYX18 を注入、Labbe 閉塞を試みた。ONYX18 を静脈洞内に注入して ゆくと、静脈洞全体に ONYX が入って行き、その後流入動脈への逆流が認められ注入を休止、さ らに注入すると、Labbe に ONYX が入り出した。さらに Labbe の末梢まで ONYX を充填させ た時点で血管撮影を行うと dAVF は完全に消失した。重要な皮質静脈逆流を残してしまった場合 には ONYX による reverse pressure cooker technique による静脈洞からの塞栓は有効である。 24 Acquired pial dural arteriovenous fistula の 1 例 山家弘雄 昭和大学藤が丘病院 脳神経外科 静脈洞閉塞後の静脈梗塞部に新たに発生した pial dural arteriovenous fistula の1例を経験した ので報告する。症例は 31 歳、男性。1 年前に左横静脈洞閉塞に伴った静脈性梗塞を発症し失語症 をきたしたが、保存的治療にて完治していた。今回、痙攣発作にて救急搬送され、MRI で脳内に 拡張蛇行した血管陰影をみとめたため、当科に紹介された。脳血管撮影にて、中硬膜動脈(MMA)、 角回動脈、後側頭動脈の分枝から superficial sylvian vein(閉塞した Labbe 静脈との合流部)へ のシャントが認められた。TAE を選択し、MMA から ONYX を注入して治療した。合併症はな く、術後経過は良好であった。本疾患の発生機序として、静脈梗塞周辺での angiogenic factor による新生血管の誘導と静脈洞閉塞に伴う静脈性高血圧の 2 つの機序が関与し、このようなシャ ントが形成されたと考えた。 25 総頚動脈近位部病変からの A to A embolism を繰り返した1例 新美 淳 船橋市立医療センター 脳神経外科 7 症例は、83 歳、男性。某年 8 月・12 月と 2 度の左散在性脳梗塞にて入院加療。心房細動は認め ず、脳血管造影では左頚部頚動脈分岐部の軽度狭窄を認めるのみであり、DAPT 内服加療となっ た。しかし翌年 3 月に、再度左脳梗塞発症。血小板凝集能検査(吸光度法)では、明らかな不応 症は認めなかった。頚部 MRA にて左総頚動脈近位部に壁不正、頚動脈エコーにて同部位に mobile plaque を認め、塞栓源と考えられた。以前の脳血管造影を見返すと、側面像では撮影範囲外であ ったが、正面像で同部位に解離も疑わせる壁不正を認めていた。後日左総頚動脈ステント留置術 を施行し、以降は脳梗塞再発なく経過している。 本症例は、総頚動脈近位部からの A to A embolism を 3 回繰り返したと考えられた。2 回目の脳 梗塞後の脳血管造影検査では頚動脈分岐部病変ばかりに注目しており、その近位の総頚動脈病変 を認識していなかった。基本的な事ではあるが、撮影血管全てをしっかりと確認する事の重要性 を再認識させられた1例であった。 26 Protein S 欠乏症を原因とした急性期脳梗塞に対し機械的血栓除去術を施行した一例 1) 1) 2) 2) 3) 1) 重畠裕也 ,矢澤由加子 ,佐藤健一 ,松本康史 ,森下英理子 ,板橋亮 1) 広南病院 脳血管内科 , 2) 広南病院 血管内脳神経外科 3) 金沢大学付属病院 血液内科 【症例】46 歳,男性.一カ月程前より呼吸苦が出現し近医受診したが経過観察となっていた.今 回突然の右上下肢脱力と呂律の回りにくさを主訴に脳梗塞発症し搬送.発症から 75 分で rt-PA 静注療法施行.頭部 MRI では左中大脳動脈皮質枝領域に散在する新規脳梗塞巣(DWI-ASPECT: 5/11)を認め,頭部 MRA では左頚部内頚動脈閉塞を認めた.急性血行再建術の適応と判断し, Solitaire FR を用いた機械的血栓除去術を施行し,TICI grade 2b の再開通を得た.発症形式・ 梗塞巣からは塞栓性機序の可能性が高いと判断したが,心房細動は認めなかった.搬入時の D-dimer:60 以上であり,呼吸苦の既往があったことから胸部造影 CT を施行したところ肺塞栓 症を認めた.下肢静脈エコーでは深部静脈血栓症を認め,心エコー・経食道心エコーでは心房中 隔欠損症(ASD)を認めた.採血上 Protein S 活性の低下(38%)を認め,プロテイン S 遺伝子に g →a の変異を認めた.ワルファリンによる 2 次予防を行い,回復期リハビリテーション病院へ転 院.その後 ASD に対して Amplatzer septal occluder による閉鎖術施行. 27 3D venography と 3D Roadmap が有用であった cavernous sinus dural arteriovenous fistula(CS dAVF)の一例 青木吏絵、キッティポン スィーワッタナクン 重松秀明 長田貴洋 反町隆俊 松前光紀 東海大学 脳神経外科 Introduction CSdAVF の標準的治療は inferior petrosal sinus(IPS)からの transvenous embolization(TVE)である。しかし、IPS が描出されない症例では、元々IPS の起始部には複数 variation がありこれを盲目的に探る事になるため、IPS へのカテーテルの誘導が困難な場合があ る。今回 3D venography を用いる事で IPS の起始部を明瞭にし、効率的に IPS から TVE を行 う方法を紹介する。 Methods IPS が描出されない症例で、カテーテルを internal jugular vein に挿入し軽度頸部を 圧迫し venography を撮影すると IPS の起始部がみえ、これを 3D Roadmap として用いた。 Conclusion 頸部圧迫下での 3D venography は IPS の起始部を描出するのに非常に有用であっ た。我々は CSdAVF の TVE で IPS が描出されていない場合、この方法を推奨したい。 28 急性期破裂大型内頚動脈瘤に Y ステントテクニックを用いて治療した 1 例 1)2) 2) 2) 2) 2) 1)2) 2) 宍戸肇 、菅田峻光 、松本淳志 、岡内正信 、新堂敦 、河北賢哉 、川西正彦 、黒田泰弘 1) 2) 、田宮隆 2) 香川大学医学部附属病院救命救急センター、 同脳神経外科 【目的】脳梗塞治療中にクモ膜下出血(SAH)を発症した大型脳動脈瘤に対し、2 本のステント (Enterprise2; Codman, LVIS Jr.; Terumo)を使用した Y ステントテクニックで治療した 1 例を 報告する。【症例】62 歳男性 意識障害の精査で SAH(H&K gradeⅣ、Fisher Group3)を認め、 当院搬入。動脈瘤は大型(19 x 23 mm)で、血栓化を認め、中大脳動脈(MCA)、前大脳動脈(ACA) を巻き込んでいた。ステント併用ダブルカテーテルにてコイル塞栓術施行①動脈瘤血栓化部に flaming②ACA∼ICA に Enterprise2 を留置③MCA∼ICA に Y ステントで LVIS Jr.を留置④ MCA、ACA への血流を温存したまま塞栓。動脈瘤残存を認めたが再出血予防はできたとして手 8 術終了。術数日後残存動脈瘤の増大を認め、追加コイル塞栓術を施行。 【結果】破裂大型脳動脈瘤 急性期に Y ステントテクニックによる塞栓術で現在まで破裂防止できている。今後中長期評価が 必要である。 29 静脈洞血栓症と誤診された特発性頭蓋内圧亢進症の 1 症例 2 平松亮¹⁾、矢木亮吉¹⁾、大西宏之 ⁾、川端信司¹⁾、宮地茂¹⁾、黒岩敏彦¹⁾ 1)大阪医科大学脳神経外科・脳血管内治療科 2)大西脳神経外科病院 症 例 呈 示 : 症例は 27 歳女性で 2015 年 10 月中旬より頭痛とうっ血乳頭を認め、近医総合病院 を受診され入院となった。同病院の MRV で左側内頸静脈閉塞を認めたため静脈洞血栓症の診断 で抗凝固療法が開始された。しかし症状が改善せず、腰椎穿刺の圧も高値持続していたため再開 通療法が施行された。血栓は回収されず、依然として腰椎穿刺での圧が高値でありうっ血乳頭も 改善しないため当院へ転院となった。当科で DSA を施行したところ右横静脈洞に狭窄を認めた。 同部位が責任病変である特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)と考え同血管に対して PTA を施行し、術後よ り頭痛の改善を認めた。退院後も症状増悪なく経過していたが、うっ血乳頭の改善なく MRV で 右横静脈洞の再狭窄を疑う所見を認めたため 3 ヵ月後ステント留置術を行った。術後経過良好で あり、術 1 ヶ月後の眼底検査でうっ血乳頭の改善傾向を認めている。考 察 ・ 結 語 : IIH は我々脳 神経外科医には聞きなれない疾患である。しかし若年者の継続する頭痛には IIH が隠れているこ とも考え日々の診療を行う必要がある。その場合 MRV を追加で施行するが有用であると思われ た。また治療においてはステント留置術が有用であった。 30 破裂部近傍に偽性動脈瘤を伴う脳動脈瘤に対する急性期塞栓術 森脇拓也、新美淳、根本文夫、内藤博道 船橋市立医療センター 脳神経外科 患者は 69 歳女性。歩行中に突然の頭痛、嘔吐があり他院に救急搬入。CTA で脳動脈瘤を認めた が血小板減少により止血困難が予測されたため、血管内手術適応として当院に救急転送となった。 当院での DSA で前交通動脈瘤の破裂部 bleb 近傍から最大径 16mm の多層性の偽性動脈瘤が描 出され、当初形態の複雑さから clipping の適応としたが移動時に再破裂を生じ、早期対応可能な 血管内手術に方針を変更した。Simple technique で塞栓術を開始し、偽性動脈瘤に coil が侵入す れば再破裂や coil compaction を来す可能性が高いため、cage 内での塞栓のみの bleb 近傍にス トレスのかからない塞栓を心がけた。しかし VER が 40%を超えても偽性動脈瘤の血流は消失し ないため、bleb 近傍の cage 内に straight の SL-10 を誘導し、cage に絡めた bleb 近傍の塞栓 を小径の nano coil を用いて追加した。Coil の一部は bleb 内に侵入したが、塞栓の追加により偽 性動脈瘤は描出されなくなり軽度 NR で手技を終了することができた。偽性動脈瘤を伴う破裂脳 動脈瘤に対しての塞栓術の経験と、その過程について報告する。 31 診断に苦慮した、両側外側仙骨動脈が feeder となっている spinal dAVF の一例 山本光晴 松本隆 渡邉隆之 松尾州佐久 内田充 柴田広海 豊川市民病院 脳神経外科 【症例】40 代男性【主訴】数年来続く間歇性跛行、間歇的な膀胱直腸障害【経過】当科紹介、dAVF の疑いにて血管撮影施行した。MRI で shunt が同定し難く、4Fr. Shepherd Hook を用い下位へ 向かい順に撮像したが shunt を検出せず。内腸骨動脈(IIA)の選択でも shunt が検出されず。4Fr. Simmons に変更、IIA に浅く「ひっかけるだけ」にして造影したところ、外側仙骨動脈(lateral sacral artery, 以下 LSA)を feeder とする dAVF と診断できた。両側 LSA の high flow feeder を coil 塞栓し、wedge する枝から 25%NBCA で塞栓し治療した。【Lesson】LSA は IIA の起 始のごく近傍から分枝するため、IIA を深く選択すると造影されない。脊髄円錐部近傍の dAVF の feeder として LSA は重要な分枝であり、意図的な選択が必要である。 32 治療に難渋した左後頭動脈破裂紡錘状血栓化動脈瘤の 1 例 畑岡 峻介,石橋 敏寛,結城 一郎,児玉 智信,郭 樟吾,西村 健吾,青木 建,佐々木 雄一,村山 雄一 東京慈恵会医科大学 破裂脳動脈瘤に対するステント併用は周術期の抗凝固・血小板療法の管理が確立されておらず未 だ contoversial な治療である。今回左後頭動脈の破裂紡錘状血栓化動脈瘤に対してステント併用 9 でコイル塞栓術を施行後短期間で再発し最終的に抗血小板薬中止で血栓化し治療し得た症例を経 験したので報告する。【症例】42 歳 女性。【現病歴】仕事中に突然の頭痛及び意識障害のため 当院救急搬送。頭部 CT で後頭蓋窩にくも膜下出血、左後頭動脈(LtPCA:P2)に紡錘状動脈瘤を認 めたため同日血管内治療を行った。【治療経過】初回治療は PCA を温存し Enterprise2 を留置 し jailing technique で塞栓した。術後頭部 MRI で血栓化瘤であることが判明。mRs1 で入院 21 日目に抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル)継続し自宅退院となった。3 ヶ月後の MRI(TWIST)で coil compaction を認め 2 回目の塞栓術を行ったが proximal neck 近傍の血栓化 部分に血流見られたため抗血小板薬中止、五苓散を開始し経過を見ていたところ再血栓化を認め 瘤内への血流消失を認めた。 33 左総頚動脈起始部から分岐部直前まで至る動脈解離に対してステント留置術を施行した一例 黒木 亮太、佐原 範之、宮 雄一、津本 智幸 国立病院機構九州医療センター 脳血管内治療科 46 歳、男性。咳嗽を契機に左後頭部、頚部痛を自覚した。神経脱落所見はなし。大動脈弓部は Bovine arch で、腕頭動脈と左総頚動脈に解離を認めた。左総頚動脈は起始部から分岐部直前ま で 14cm の偽腔開存型の解離で、最狭窄部は ECST 59%であった。ECST 80%まで狭窄の進行 を認め、CAS を施行した。8Fr Neuro EBU を guiding catheter として大動脈弓部に留置し、 6Fr SY3 をインナーカテとして解離部真腔を確保した。Carotid guardwire で distal protection を行い、Protege 10 60mm を 3 本、ASSURANT COBALT 10 30mm、ASSURANT COBALT 9 30mm の計 5 本のステントを留置した。術後、ステントの開存は良好で、新たな神経脱落所 見はなかった。非常に稀な病態であり、治療方法、使用デバイスの選択に難渋した症例であった。 34 難治性脳硬膜動静脈 に対する血管内治療 鈴木一幹(すずき かずもと)、大石英則 順天堂大学医学部脳神経外科 60 歳男性、現病歴は 2016 年 4 月に一過性の失語を認め、その後進行性の高次機能障害が出現 したため、当院脳神経内科に受診した。MRI にて右横静脈洞 dAVF を認め入院となった。既往歴 は糖尿病、脂質異常症、深部静脈血栓症にて内服加療しており、出血発症の脳動脈奇形にて保存 的加療となっていた。入院後経過は、血管造影にて multiple feeder で上糸状静脈洞と右横静脈 洞に shunt point を認める dural AVF(Borden typeⅡ、Cognard typeⅢ)の診断に至った。著明 な静脈うっ血と皮質静脈への逆流を認めたため緊急手術の適応となった。第 1 期手術は、右上腕 静脈に 6Fr ENVOY/Excelsior XT17/ASAHI CHIKAI .014, black .014 にて血栓化した isolated sinus に到達し、coil embolization 後に 33% NBCA にて TVE を施行した。次いで右大腿動脈に Medikit 7Fr VT(C)/Marathon/Mirage にて両側 MMA から Onyx 18 にて TAE を、右 STA か ら 33% NBCA にて TAE を施行した。術後、STA から板間静脈を経由した shunt の残存は認め るも、shunt 量、静脈還流は改善した。1ヶ月後、右大腿動脈より 6Fr axceiguide/6Fr セルリ アン G/4Fr セルリアン G の coaxial system にて左 MMA より Onyx 18/36 を 2section に渡 り TAE を施行した。術後はわずかな shunt の残存を認めた。現在、軽度の高次脳機能障害ありリ ハビリテーションを継続している。 35 出血発症の解離性椎骨動脈瘤に対するステント併用コイル塞栓術の一例 濱野栄佳、佐藤徹、丸山大輔、織田祥至、江口盛一郎、片岡大治、高橋淳 国立循環器病研究センター 脳神経外科 【背景】解離性椎骨動脈瘤では原則的に母血管閉塞が考慮されるが、最近ではステント併用コイ ル塞栓術の報告も散見される。 【症例】57 歳、男性。くも膜下出血(WFNS grade2)発症。左椎骨 動脈(VA)の後下小脳動脈(PICA)起始部に解離性動脈瘤を認めた。母血管閉塞も考慮されたが、拡 張部前後の VA は病的な拡張や狭窄病変を認めず、若年かつ eccentric な拡張病変であったため Enterprise VRD を用いた拡張部に対するステント併用コイル塞栓術を施行した。1 ヶ月後、塞 栓部が再開通し著明な拡張所見を認めたため再度ステント併用コイル塞栓術を施行した。5 ヶ月 後、一過性の拡張部増大傾向を認めたものの、術後 1 年 5 ヶ月まで再出血や解離部拡大なく経過 観察中である。 【結語】解離性動脈瘤に対するステント併用コイル塞栓術では短期間で再増大する ことがあり、特に出血発症例においては綿密な経過観察を要する。 36 10 上眼窩裂部硬膜動静脈瘻に対して前方アプローチによる TVE が有効であった 1 例 山本雄貴, 山本伸昭, 山口 泉, 吉岡正太郎, 兼松康久, 里見淳一郎, 永廣信治 徳島大学病院 神経内科, 脳神経外科 【患者】58 歳女性.【病歴】2015 年 8 月より左眼の腫脹, 眼球突出, 眼瞼結膜の充血が出現した. 外傷歴なし. 血管撮影で左内頚動脈および中硬膜動脈を流入血管とする左上眼窩裂部の硬膜動静 脈瘻を認めた. 海綿静脈洞との交通はなく, シャント血流は上眼静脈から眼角静脈を介して顔静 脈に流出していた. 【治療経過】海綿静脈洞とシャントポイントとの間の交通がないと予想され たため, 顔静脈を介した前方アプローチによる TVE を第一選択とした. ガイディングカテーテル として 6Fr ENVOY MPD を頸静脈に留置し, 顔静脈から眼角静脈, 上眼静脈にかけてセルリアン G と Renegade-18 を誘導した. 顔角静脈の角度が急峻であったが, マイクロカテーテルをシャ ントポイントに到達させることができた. 計 9 本のコイルを用いて塞栓をおこなった. AV シャン トは消失し, 臨床症状も術後すみやかに軽快した. 【考察】海綿静脈洞と交通しない上眼窩裂部の 硬膜動静脈瘻を経験した. 前方アプローチによる TVE が有効であった. 37 CT ガイド下で直接穿刺して治療を行った右頚部巨大内頚動脈瘤の一例 伊藤真史 泉孝嗣 名古屋大学脳神経外科 【症例】67歳 女性 【現病歴】1988 年に右内頚動脈瘤を指摘され、縫縮術を施行された。2011 年頃から増大傾向を 認めたため、2015 年に初回 TAE を行った。血栓化の強い動脈瘤であり、瘤内でのマイクロカテ 操作やコイル挿入時の塞栓症リスクが高いと考えたため、近位部 IC の遮断のみとした。一時的に は瘤の縮小が得られたが、遠位 IC からの逆行性の血流により動脈瘤の再増大を来した。動脈瘤が 大きく周囲への癒着が予想されるため、摘出術ではなく直接穿刺下にて動脈瘤の遠位部を遮断す ることとした。 【治療】CT ガイド下にて 18G 針を直接動脈瘤の非血栓化腔に穿刺し、留置した外筒から Headway17 を挿入した。動脈瘤の遠位部 IC に、DELTAMAXX を 3 本留置したのち 33%NBCA にて塞栓を行った。次に穿刺部から血液を吸引すると、動脈瘤のサイズの縮小が得られた。その 後も徐々に動脈瘤は縮小傾向である。 【結語】頚部内頚動脈血栓化瘤はまれな疾患である。近位部閉塞や Covered stent にて治療され たとの報告もあるが、今回の症例のように逆行性の血流が残存し治療効果が得られない場合もあ る。確実に治療効果を得るためには、動脈瘤への血流の完全な遮断が望ましいと思われた。 38 緊急血行再建術で回収した組織から,大動脈原性脳梗塞と診断した一例 1) 1) 1) 1) 1) 2) 佐原 範之 ,德永 聡 ,鶴 雄一郎 ,黒木 亮太 ,宮 雄一 ,林 博之 ,津本 智 1) 幸 1) 2) 九州医療センター 脳血管内治療科 病理診断科 73 歳,男性.意識障害,全失語,左共同偏視,右片麻痺(NIHSS:23 点)にて当院に救急搬送さ れた.頭部 MRI にて左放線冠∼内包後脚に新鮮梗塞巣(DWI-ASPECTS:9/10 点)を認め,MRA では左内頚動脈が描出不良であった.O2N:122 分で rt-PA 静注療法を行い,D2P:83 分で緊急 血行再建術を行った.Stent retriever を用いて,1pass にて P2R:22 分で完全再開通を得た. 心電図で心房細動を認め,また経食道心臓超音波検査で,大動脈弓部に可動性を伴った複合粥腫 病変を認めた.Stent retriever で回収した組織は硬く,白色成分が混在しており,病理ではコレ ステリン裂隙を伴う粥腫が主成分であった.病理所見より、心原性にできた血栓というより,大 動脈弓部のプラークが塞栓症を引き起こしたと考えた.アピキサバンにクロピドグレル,スタチ ンを追加し,mRS:4 点でリハビリ転院した.われわれは病理所見が診断に有用であった大動脈原 性脳梗塞の症例を経験したため報告する. 39 Penumbra ADAPT で完全再開通を得た小児非外傷性頭蓋内内頸動脈解離の 1 例 菊池文平 新潟大学脳研究所脳神経外科 【症例】14 歳男児,高度肥満あり.体育授業で短距離走の直後に全身痙攣で発症した.痙攣頓挫 後も意識障害と左片麻痺が継続し,救急搬入時 NIHSS 22 点であった.MRI-DWI で右基底核に 高信号を認め,MRA で右頭蓋内内頸動脈から中大脳動脈(M2)の描出が不良であった.t-PA は投与せず,脳血管撮影で右頭蓋内内頸動脈(C2)の壁不整と右中大脳動脈 M2・レンズ核線状 11 体動脈の閉塞を認めた.M2 で Penumbra 5MAX を用いた直接血栓吸引を 1 回行うと完全再開 通し,神経症状の急速な改善を得た.発症から再開通までは 314 分であった.術後経過は良好で, 独歩退院し,高校に進学した(mRS 1). 【考察】小児の非外傷性頭蓋内内頸動脈解離の予後は悪 いが,本病態に対する脳血管内治療の報告はまだ少ない.Penumbra System による直接血栓吸 引は本病態に対しても選択肢となりうることが示唆された. 40 パーキンソン症状を呈した硬膜動静脈瘻の診断と治療 平松匡文、杉生憲志、菱川朋人、春間純、高杉祐二、新治有径、西廣真吾、木谷尚哉、高橋悠、 伊達勲 岡山大学大学院脳神経外科 【はじめに】パーキンソン症候群で発症した静脈洞交会部の硬膜動静脈瘻を経験したため、報告 する。 【症例】64 歳男性。他院脳神経外科で他部位の硬膜動静脈瘻の治療が行われていたが、当院入院 2 ヶ月前から寡動・歩行障害が出現し、他院神経内科でパーキンソン症候群と診断された。MRI にて両側大脳基底核に異常信号を認めたが、原因不明であり、精査目的に当院に紹介となった。 当院入院後に脳血管撮影を行い、静脈洞交会部の硬膜動静脈瘻を認め、シャント血流は全て直静 脈洞から深部静脈系へ逆流していた。直静脈洞から両側横静脈洞への還流は認められなかった。 治療として、経静脈的に直静脈洞内にアプローチし、直静脈洞の sinus packing を行い、シャン ト血流の消失が得られた。術後パーキンソン症候群は一部改善が得られた。 【結語】パーキンソン症候群を呈した硬膜動静脈瘻の稀な一例を経験した。症状改善のためには 早急な診断と治療が必要であると考えられた。 41 血管内治療中に発生した腹部大動脈瘤破裂の1例 花川 一郎、有屋 田健一、長嶋 良、堤 恭介、松本 隆洋、田中 健太郎、柳橋 万隆、中 村 安伸、村尾 昌彦、井手 隆文 都立墨東病院 脳神経外科 血管内治療に伴う合併症として様々な合併症が考えられるが、guiding sheath 留置に伴う合併症 も患者の ADL 低下に影響を及ぼす可能性がある。今回、我々は、guiding sheath 留置により、 腹部大動脈解離を生じた1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は 86 歳、 女性。症候性頭蓋内内頚動脈瘤に対し、治療中に留置していた guiding sheath が関与したと考え られる腹部大動脈瘤の破裂を認め、緊急手術を施行した。この教訓から、可能であれば、術前に 胸部から腹部大動脈の 3D-CT を施行しておく。シースはカテーテルが出入りする際に血管壁に 負担のかからない位置に留置することをこころがけ、緊急症例で、情報のない場合はまずは細い guiding sheath を留置し、先端から造影を行った上で、sheath の選択を行う。症例によっては ultralong sheath や上腕 approach を使用するように心がけている。 42 内頸動脈分岐部未破裂脳動脈瘤に同側内頸動脈低形成を伴い治療困難であった 1 例 髙橋 悠、杉生 憲志、菱川 朋人、平松 匡文、春間 純、高杉 祐二、新治 有径、 西 廣 真吾、木谷 尚哉、伊達 勲 症例は 45 歳、男性。Incidental に脳動脈瘤を指摘され、治療目的に当院紹介となる。DSA で内 頸動脈分岐部に 6mm 大の脳動脈瘤を認め、遺残三叉動脈及び同側内頸動脈の低形成を認めた。 治療戦術として 1)同側内頸動脈からのアプローチ、2)椎骨-脳底動脈から遺残三叉動脈を介するア プローチ、3)対側内頸動脈から前交通動脈を介するアプローチを考えた。まず初めに、同側内頸 動脈からのアプローチを行ったが、内頸動脈が低形成のためカテーテルがウェッジしてしまい、 先行することができなかった。遺残三叉動脈を介するアプローチは血管蛇行が強く、マイクロカ テーテルの誘導困難であると判断し選択しなかった。最終的に対側内頸動脈から前交通動脈を介 してアプローチを行い、良好なコイル塞栓術を行う事ができた。血管 variant により同側内頸動 脈から脳動脈瘤に対してアプローチ困難な場合は、交通動脈を介するアプローチも有効であると 考えられる。 43 破裂脳動脈瘤による非外傷性急性硬膜下血腫の1例 川井正統 1) 石田城丸 1) 下岡直 1) 出原誠 2) 萩原靖 2) 1) 若草第一病院 脳神経外科、2)りんくう総合医療センター 脳神経外科 12 破裂脳動脈瘤による非外傷性急性硬膜下血腫は稀であり、急性硬膜下血腫単独で発症する破裂脳 動脈瘤は稀である。破裂脳動脈瘤による非外傷性急性硬膜下血腫の1例を経験したので報告する。 症例:74 歳女性。前額部、後頸部に突然の鈍痛を自覚し症状改善しないため当院搬送となった。 意識は清明であったが、瞳孔が rt/lt 2.5/3.5 と不同を認めた。対光反射には問題がなかった。CT でテント下、後頭蓋窩に硬膜下血腫を認めた。外傷歴がなかったため CTA を施行すると、lt IC-PC に最大径 5.4mm の動脈瘤を認め、動脈瘤破裂による硬膜下血腫と考えられた。同日全身麻酔下 に IC-PC 動脈瘤に対してコイル塞栓術を施行した。術後 CT で血腫の拡大は認めなかった。術後 ステロイドパルスを施行したが、左眼瞼下垂、左眼内転障害、複視が出現した。第9病日に自宅 退院となった。動眼神経麻痺は術後三ヶ月の経過で消失した。 本症例の経過と、文献的知見を報告する。 44 脳 底 動 脈 (BA)急 性 閉 塞 時 に 両 側 椎 骨 動 脈 (VA)が 描 出 さ れ な か っ た 症 例 大前 智也、濱崎 亮、佐々木順孝 大曲厚生医療センター 脳神経外科 急 性 期 血 栓 回 収 療 法 は MRI、CT が 簡 略 化 さ れ 、事 前 に ア ク セ ス ル ー ト が 把 握 で き な い こ と も あ る 、我 々 は 、脳 底 動 脈 (BA)閉 塞 の 血 栓 回 収 術 の 際 に 、ア ク セ ス ル ー ト に 難 の あ る 症 例 を 経 験 し た の で こ れ を 、報 告 す る 。72 才 女 性 意 識 障 害 で 搬 送 さ れ た 。JCS200 四 肢 麻 痺 、 呼 吸 抑 制 あ り NIHSS 23。 MRI で 左 小 脳 半 球 に DW I 高 信 号 域 あ り 、 MRA で BA 描 出 不 良 で 、 血 栓 回 収 術 を 行 っ た 。 血 管 撮 影 で 両 側 椎 骨 動 脈 (VA)描 出 な く 大 動 脈 起 始 の VA も 考 え 、造 影 し た が 描 出 な し 、左 鎖 骨 下 動 脈 か ら は 、内 胸 動 脈 の 起 始 部 に も み え る 血 管 が あ り 、ガ イ ド ワ イ ヤ ー に 通 常 の VA の 走 行 に ガ イ デ ィ ン グ カ テ ー テ ル を 誘 導 で き た 。BA は 閉 塞 し て お り 、ス テ ン ト レ ト リ ー バ ー を 展 開 し 、TICIⅢ の 再 開 通 を 得 た 。 鎖 骨 下 動 脈 撮 影 で VA が 描 出 さ れ な い 場 合 、大 動 脈 起 始 の VA の 可 能 性 も あ る が 、BA 閉 塞 に 伴 い VA が 虚 脱 し て 描 出 さ れ な い こ と 、あ る い は 、狭 窄 の 場 合 が あ り 、注 意 が 必 要 で あ る 。 45 極太 feeder に対して、マラソンから EDES を挿入した経験。と細い血管への NBCA 注入の失敗 山之内高志 大垣市民病院 脳神経外科 背景 マラソンから EDES が入るとは言うものの、実際に使用する機会はなかなかない。 症例 57 歳女性。頭痛で受診され、頭部 CT で左側頭葉に大きな皮質下出血を認めた。造影検査 で同部に最大径 3.5cm の AVM を認めた。手術摘出を予定し、前日に部分塞栓を行った。 手技 左 MCA の upper branch から出る nidus に入る部分が瘤状に膨らむ high flow な feeder にマラソンを留置し、EDES を数本留置した後、66%NBCA で塞栓した。EDES は非常にしぶく、 一時的にトルカーを必要とした。その後 post parietal A.の分岐直前からの high flow な feeder をマラソンから、66%NBCA で塞栓した。一本目の feeder とは太さが全然違ったが、一本目の 勢いで打ち、post parietal A.まで閉塞した。幸い症状の出現は無かった。翌日摘出術も無事に施 行した。 結語 マラソンに EDES は非常に固く注意が必要だが入れることは可能、太さの違う feeder へ のグルー注入は感覚の切り替えが必要との教訓を得た。 46 眼動脈にカテーテル誘導困難であった前頭蓋窩硬膜動静脈瘻の一例 大川将和、東 登志夫、福田健治、保田宗紀、井上亨 福岡大学脳神経外科 【症例】70 歳女性。頭頂部髄膜腫に対し摘出術を行い、その術前検査で偶発的に発見された anterior cranial base dural AVF(ACB dAVF)。脳血管造影では feeder は両側眼動脈から分岐 する anterior ethomoidal artery であった。流出静脈は前頭葉の皮質静脈を介して右の SMCV と SSS に流出していた。開頭による治療を薦められたが経過観察となっていた。今回脳血管内治 療で治療可能と判断し、説明を行ったところ治療を希望された。手技は全身麻酔下で行い、VEP をモニタリングした。まず細い左の ethomoidal artery を 12.5%NBCA で閉塞した。こちらは 意図的に feeder occlusion とした。VEP は変化を認めなかった。次に右の眼動脈へマイクロカ テーテルの誘導を試みたが、内頚動脈からの分岐角度が急峻であり、起始直後に蛇行があり困難 であった。同側の P1,Pcom はいずれもカテーテルを誘導可能な血管径を有していたため、ガイ ディングカテーテルを椎骨動脈に誘導し、右 P1、Pcom を介してマイクロカテーテルを右眼動 脈に誘導した。内頚動脈遠位からは眼動脈への誘導が鈍角となるため、誘導可能であった。 13 anterior ethomoidal artery までカテーテルを誘導し 12.5%NBCA を注入した。シャントを超え 静脈側まで glue を注入しカテーテルを抜去した。その後の撮影でシャントは消失していた。術中 VEP に変化を認めなかった。術後、神経症状の出現はなく、独歩退院した。 47 Wire assist technique で治療した 2 症例 滝川知司 鶴田和太郎 筑波大学医学医療系 脳神経外科 Rt. VA-PICA の wide neck 動脈瘤に対して Wire assist が有効であった 2 症例を報告する。い ずれも対側の VA は PICA endo であった。Wire(CHIKAI 14)を PICA distal まで進めようと 試みるも、VA に落ちてしまい断念した。続いて Balloon catheter を用いて、支点を作って wire を進めることを考慮したが、wire が動脈瘤 neck を cover して coil を支えるような力が働いてい ると考えられたため、wire assist で行う方針に切り替えた。Headway を瘤内に留置し塞栓を開 始、Wire が coil の支えとなり、coil が PICA に逸脱することなく完全塞栓を得ることができた。 Balloon catheter や micro catheter が目的の血管に留置できない場合、sheep technique や exchange など様々な方法があるが、分枝血管の分岐角度が急峻な場合、wire のみでも coil を持 ち上げる力が作用するため、wire assist が有効な症例が存在すると考えられた。
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