資材鋤に対する中国の為替管理の有効性

酋文
資材鋤に対する中国の為替管理の有効性
一一人民元の内外金利差による検証
斉中凌*
慶 麿 義塾 大 学
本稿では、人民元 N
D
F(
N
o
n
d
e
l
i
v
e
r
a
b
l
eF
o
r
w
a
r
d 元本の受け渡しを伴わずに、
予約レートと期日のレートの差金だけを決済する為替先物取引)レートのデータを
用いて人民元の国内外金利差を推定し、 資本移動に対する中国の為替管理政策の有
効性を検証した。従来の研究に基づき 2005年 7月の中国為替管理改革が実施された
以降のデータを分析に加え、人民元の国内外金手Ij差と中国通貨当局の資本移動規制
政策の問に整合性があるとし寸結論が得られた。さらに、 90年代以降の中国の為替
管理と類似性がある 70年代の日本のケースを取り上げ、両者を比較した上で中国為
替管理の今後の課題に言及した。
1 はじめに
国境を越える資本移動に対する通貨当局の規制(キャピタノレ・コントローノレ)は法令
の内容などからその厳しさが読み取れるが、脱法行為や規制の抜け穴もあるため法律だ
けでは実効性を計ることはできない。キャピタノレ・コントローノレの実効性を検証する方
法として、当該国の通貨の圏内金利水準と t
毎外市場(ユー口市場)における金利水準を
比較することがよく用いられている。
中国の場合、 1
9
9
6年 1
2月に経常取引の自由化が実現し I
M
F
8条国に移行した後、 資本
取引自由化の方向へ向かいつつあるが、主知生でも通貨当局による厳しいキャピタノレ・コ
ントローノレが残っている。このような通貨当局によるキャピタノレ・コントロールの実効
性を、人民元の内外金利差を用いて検証することが本稿の目的である。しかし、人民元
叫毎外流通が通貨当局によって禁止されているため、lIiJ7トでは受け渡しを伴う人民元の
ヰ
デ稿 は 日本経済析究センター J
:金融析 究班報告書 1
5号「ゼロ金手Ij解除後の個人向け貸 出市場」に掲載され
ている論文を全面的に加筆修正したものである。本稿の執筆 に当たり、深尾'lt
l
羊先生(慶応義塾大学)、平
田英明先生(法政大学)、乾智里氏 (日本経済新聞社)から丁寧なご指導 を頂いた。また、本誌匿名レフェ
リーからも数々有益なご助言 とご指摘を頂いた。 ここに記 して、深く感謝 を申し上げたい。言うまでもなく、
本稿に残された誤りは量者に帰属するものである。なお、本稿の内容は筆者の所属する大学の見解を示す も
のではない。
0
8回 4
5 東京都港区三田21
54
5 慶曙義塾大学商学部
(連椅先住所)干 1
(
Em
ai
l
)
q
zl
@
f
b
c
.
k
e
i
o
.
a
c
.
j
p
82
日本経済研究 比 5
8,2
0
08.
1
取引市場がまだ存在していない。そこで、近年取引規模が拡大しつつある人民元の N
D
F
市場に関するデータを使用し、ユーロ人民元金干Ijlの水準を推定することでこの問題を解
決しようと試みたことが三同高の分析の特徴である。
本稿の構成は以下の通りである。第 2節では、先行研究に基づいてキャヒ。タノレ・コン
トローノレと内外金利差との関係、を説明し、分析の理論的フレームワークを明らかにする。
第 3節では、人民元の NDF市場を概観した上で、それに関する既存研究を紹介し、今回
の分析の位置づけを明確にする。第 4節では、人民元のスポットレートと NDFcートの
変動および両者の関連性について分析した後、両者にユーロドノレの金利を加えてユーロ
人民元金手Ijを推定し、国内金利水準と比較する。そして、第 5節で通貨当局が実際に行
ってきた資本移動規制政策を回顧しつつ、前節の推定結果との整合性を検証した後、第
6節で為替管理江効果について分析を行う。第 7節では、以上の分析結果を踏まえ、キ
ャヒ。
タノレ・コントローノレに関して中国の管理政策と、 70年代の日本における管理政策を
比較し、最後の第 8節では中国における為替管理政策の今後の課題に言及する。
2 キャピタル・コントロールと内外金利差
通貨の海外流通が通貨当局に認められる場合、国内だけでなく海外でも流通市場が形
成される。いうまでもなく、国内外市場問の資本の自由移動が妨げられる規制政策がな
く、しかも市場参加者にとって両市場において同じような資本取引に関するリスクが存
在する場合、取引費用を捨象すれば金干Ij裁定のメカニズムが働き、当該通貨の国内外金
利は同一水準になる。ところが、通貨当局が国境を越える 資本の自由移動を規制すると、
国内外の市場が分断され、内外金利の問にはギャップが生ずることになる。
このような議論は、効率的市場を前提としたものである。効率的市場の下で、 資本は
満期、流動性などの性質が同じような金融資産に対する期待収益の高いほうに流れるこ
とになる。また金手Ij格差は、金融資産所持のリスクの違いと 資本移動障壁によるもので
ある。
1年にブレトンウッズ体制の崩壊後、主要国が変動相場制に移行し、米国も含
実際、 7
めキャヒ。タノレ・コントローノレ政策が講じられていた。米国をはじめ、この期間における
主要国通貨の圏内タは訴Ij差に注目する研究が多数なされてきた。
L
中国国外で人民元建ての貸借を行う場合の市場金利。
論文
資本移動に対する中国の為替管理の有効性
83
代表的な研究として DufeyandGiddy(
1
9
7
8
)は、効率的市場の下で、ユー口市場と国
内市場との金利の希離は主としてキャピタノレ・コントローノレと通貨当局の管轄リスク
(
]
u
r
i
s
d
i
c
t
i
o
n
a
lr
i
s
k
) 2によるものと指摘したうえで、西ドイツを対象にマルクの国
内外金手Ijの比較をしている。その結果、主にキャヒ。タノレコントローノレを反映してマノレ
クの国内外市場の問には大きな金利格差が観察されている。その一方で、資本移動自由
化になった米国についても、米ドノレの内外金利差がわずかながら存在していたことは、
管轄リスクによるものだと指摘されている。
1
9
9
0
)は、日本を対象に変動相場制に移行した 7
3年から資本移動自由
そして、深尾 (
化が実現した 80年までの期間において、資本の流出入に対する通貨当局の規制政策の
変化と円の内外金利差の変動との関係、を分析し、為替管理による円の内外金利差の発生
メカニズ、ムを解明している。
これらの既存研究では、管轄リスクが無視できるような主要国では、通貨の内外金手Ij
差が主として通貨当局のキャヒ。タノレ・コントローノレによるものであることが指摘されて
し
、
る
。
3 人民元の N
D
F取引
米国をはじめとする主要国では、その通貨が国際的な通貨として海外でも広く流通し
ている。しかし、中国の場合、出入国時の人民元所持が一定額を超える 3と、中国国家為
S
A
F
E
:S
t
a
t
eAdministrationofF
o
r
e
i
g
nE
x
c
h
a
n
g
e
) の認可が必要となり、
替管理局 (
資本移動に対する通貨当局の厳しし、規制が存在している。そのため、人民元のI!im-;市通
が不可能となり、人民元の受け渡しを伴う海外の取引市場も未だに存司生していない。
そのうえ、中国の対外貿易規模の拡大と資本市場の開放に伴って、人民元相場の変動
リスクをヘッジしようとする外国企業や外国銀行が増加し、人民元に関するデリパティ
7年に為替先物の予約が認められたが、
ブ取引のニーズが高まっている。中国圏内では、 9
例えば、オランダのシティハンク支庖に米ドノレを預金している英国の預金者の場合、彼は米ドル預金に対す
る自国(英国)の規制、同預金に対するユーロパンク(シティパンク支庖)の所在国(オランダ〕の規制、さ
らに非居住者の米ドル建て資産の交換性に対する米国の規制など、彼自身および預金金融機 関の所在地の通貨
当局による様々な規制のリスクに晒されている。それに対 L、米国内で米ドル預金を持っている居住者が直面
しているのは、米ドル預金に対する米国の規制だけである。これはいわゆる管轄リスク (
J
u
r
i
s
d
i
c
t
i
o
n
a
lr
i
s
k
)
の遣いであり、国内外市場における同一通貨¢金利差が生じる一因である。
3 現庄では居住者が出入国時に所持できる人民元現金の上限は 2万 元 で あ る 。 ( ~中国人民長附子全人守告~ 0
4年 第
1
8号)
2
84
日本経済研究比 5
8,2
0
0
8.
1
取引対象は経常取引に関する外国為替に限定されており、先物契約期間も当初は最長
1
2
0日に隈定されていた (
0
4年には最長 l年に延長)。そこで、 9
6年半ばにシンガポー
ノレと香港で登場したのは、人民元の NDF取引である。
D
F市場を概観した上で、それに関する諸研究を紹介し、今回の
本節では、人民元の N
分析の位置づけを明確にする。
3
.1 人民元の N
D
F市場
N
D
Fとは N
o
n
d
e
l
i
v
e
r
a
b
l
eFo
工w
a
工dの略称で、取引の対象となる通貨の受け渡しを伴
わずに、当該通貨の約定レートと決済レートとの差額を米ドノレなどの基軸通貨で決済す
る為替先渡取引である。一般に国内金融市場が未発達であるために先物取引市場が存在
しないこと、非居住者によるオンショアの先物取引が禁止されているか取引規制が課せ
られていること、通貨当局の規制により当該国の通貨の海外での流通が厳しく制隈され
ていること
などが一国通貨の NDF取引が誕生する要因である九したがって、 NDF取
引は一種のオフショア取引であり、通常海外で行われている。最近では、人民元の NDF
取引の 60~8C 同は投機目的で行われているとされている
(Lipsωmb(2005)) 。
人民元の N
D
F取引は 96年半ばごろ、香港とシンガポールで登場した。マーケットメ
H
S
B
C
) 、スタンダードチャータード銀行 (
S
C
B
) 、シンガポー
ーカーは香港上海銀行 (
D
B
S
) の香港支底、 JPモノレガン、手ティパンク、 ドイツパンク、パンク・
ノレ開発銀行 (
P
e
n
g,S
h
ua
n
dY
i
p(
2
0
0
6
)
)。
オブ・アメリカのシンガボーノレ支庖と 7つあるとされている (
そして、 0
3年における人民元の NDF取引量は 6
8
0億ドノレであり、世界 N
D
F市場の聞を
T
A(
2
0
0
4
))
。
占めている(日A
3
.2 人民元 N
D
Fに関する研究
何 年 7月まで人民元が実質的に米ドソレにベッグしていたため、人民元 NDFレート水準
は、為替相場の将来の動向を予測する上で参考指標としての大きな価直があった。そこ
アジアで取引規模が比較的に大きい NDF市場は 6つあり、 03年における取引規模の大きさで順番に並べると、
韓国ウォン、台湾 ドノレ、人民元、インドネシア・ノレピー、フィリピン・ベソ、インド・ノレピーとなっている。 l
日当たりの取引量についてみると、韓国ウォンが 13.50億 ドノレとアジア NDF市場の 70
誌を占めており、その次
刻、人民元の1.5億ドノレと邸になっている (
M
a
,H
oa
n
dM
c
C
a
u
l
e
y (2004) )。
は台湾 ドルの 2.5億ドノレと同 l
4
論文
資本移動に対する中国の為替管理の有効性
8S
で、中国園内では人民元 NDFレートと人民元のスポットレート、実質実効為替レートと
の関係に注目する研究が圧倒的に多かった(例えば、任・ 寧 (
2
0
0
5
) 、張・楊 (
2
0
0
5
)、
2
0
0
5
) )。筆者の知る隈り、英文では人民元 NDFをテーマとする最初の論文は Fung,
銭 (
LeungandZhu (
2
0
0
4
) とされている。この論文は 1階自己回帰モデルを使用し、 NDFレ
ート対スポットレートがプレミアムからディスカウントに変わった 02年 1
1月以降、 NDF
レートの変動がランダムウオークに近くなったことを明らかにしている。
また、国内金手Ij差と通貨当局のキャヒ。タノレ・コントローノレとの関係、に着目している論
文として Ma、HoandMcCauley (
2
0
0
4
) が挙げられる。この論文はアジアにおける 6つ
の主要 NDF市場に焦点を当て、各通貨 NDFレート問の相関関係を分析した上で、国内外
金手Ij差を推計し、金手Ij格差が通貨当局のキャヒ。タノレコントローノレによるものであると
指摘している。とくに、人民元については 9
9年 1月から 04年 1月までのユーロ人民元
金利と圏内インターバンク金利との格差を推計している。
ただし従来じて研究では、人民元の内外金手Ij差と通貨当局による実際のキャヒ。タノレコ
ントローノレ政策との整合性に関する分析は行われていない。また、何年 7月に人民元レ
ートが部切り上げられたと同時に、相場決定メカニズムが米ドルペッグの固定相場制か
ら通貨ノミスケット市ト移行した。そこで、通貨パスケット制の下で人民元 NDFレートの
変動、およびそれに伴う人民元の内外金利差変化と資本移動に対する規制緩和との対応
関係について分析を行う。以下、人民元のスポットレートと NDFレートの変動および両
者の関連性を分析した後、内外金干Ij差を推計し、内外金利差と通貨当局のキャピタノレ・
コントローノレの具体的政策との整合性を検証する。
4 人民元の内外金利差
4
.
1 人民元のスポットレートと N
D
Fレート
中国通貨当局は 94年に人民元の相場決定メカニズムについて管理フロート制を採用
することを宣言したしかし、それ以来人民元為替相場はほとんど変動を見せておらず、
米ドソレにベッグする固定相場制が実施されていたことを示唆している図 1は NDFレー
,
~外国為替管理体制に対して更なる改革の実施に 関する国務院の通達~
(((国務院関子 進 歩改革外匿管理
2月)。
体制的通知》、中国国務院、 93年 1
I
MFも何年から中国の為替桐場管理について管理フロートから伝統的な固定相場制へ と説明を変更した (
I
M
F
.
An
nualR叩
,o
rtonE
x
c
h
a
n
g
eArrang
四
, 回 ta
ndE
x
c
h
a
n
g
eRest
rict
i
叩ぁ 1
9
9
8
)。
,
86
日本経済研 究 比 5
8,2008.
1
図 1 人民元対米ドル相場の変動
7
.
5
(元/ドノレ)
7
.7
7
.
9
8
.1
8
.
3
8
.
5
8
.7
8
.
9
,
t
:
::-:
-:
:
:
:::十
9
.1
ぺ
9
.
3
l
刊 同;
Sp
竺
」 ← 」 よ 上
L___1__ _1_1__ _ J
よ 上
L___1__ _ _1__ _ J
9
.
5
9
8
/
1
29
9
/
0
69
9
/
1
2 00/06 0
0
/
1
20
1
/
0
6 01/12 0
2
/
0
6 02/12 03/06 0
3
/
1
20
4/
0
6 04
/
1
20
5
/
0
6 05/12 0
6
/
0
6
暦年/月次
注)破線は人民元 NDFl年勅レートがスポット Lートより元高の方向に転じた 02年 11月の時点を示す。
資料
) Int
e
r
n
at
i
o
n
a
lF
i
n
a
n
c
i
a
lSt
at
i
st
i
c
s(
IF
S
)、
B100mbergデータベース
トの利用可能な時期にあわせて、 98年 1
2月から 0
6年 1月までの人民元のスポットレー
D
Fレートの変動を示している。
トと N
2月の N
D
F先物相場はスポットレートから人民元安の方向に大
図 lを見ると、 98年 1
きく希離しており、 9
9年 2月には 9
.
4元/
1 ドノレの最安値を記録した。この現象は、 9
7
年 7月に勃発したアジア通貨危機の影響で、人民元相場の切り下げに対する期待が非常
に高まったことによるものと考えられる。
しかし、 99年 8月以降、 N
D
Fレートは変動が見られるものの、人民元高の方向に向か
ートはスポットレートとほぼ同水準まで上昇し、 1
1月にはスポッ
った。 02年に NDF c
D
F レートはスポット Lートよ
トLートを上回る人民元先高の水準に転じた。その後、 N
り先高の水準で推移し、特に 04年 7月以降はほぼ右肩上がりの軌跡を描いており、ス
ポットレートとの希離が拡大する傾向にあった。
ートと対照的に、スポットレートは何年 7月まで水平線
激しい変動を見せた NDFc
のように水準が維持されていた。アジア通貨危機期間中、危機に巻き込まれた周辺諸国
の通貨が米ドノレに対して次々と値下がりし、人民元の切り下げ圧力が高まったが、中国
通貨当局は相場水準を維持することによって「アジアないし世界の金融と経済の安定化
論文
資本
移動に対する中国の為替
管理の有効性
87
に対して積極的な貢献を成した J7との立場をとった。一方、 0
2年以降、日本や米国か
ら人民元の切り上げを促す声が高まっているなかで8、中国通貨当局は人民元為替市l
度の
改革の必要性を認めながらも、
「金融市場と経済の激しい変動を避けるために漸進的に
改革を進める必要がある J9と、日本や米国の要求には応じなかった。人民銀行が為替市l
度改革に踏み切ったのは、何年 7月 2
1日であった。同日、人民元レートは 8
.1
1元/ド
ノレと約以切り上げられ、人民元相場の決定メカニズムは米ドノレベッグから通貨バスケッ
トにベッグする管理フロート制へ移行した 10
前掲の図 1を見でわかるように、この後人民元のスポットレートは非常に緩やかでは
あるが、人民元高 rJ)傾向となった。人民元 N
DFtートもスポットレートに従うように人
民元先高の方向に向かつており、両者の'l1言離幅はおおむね一定の水準を保ちつつある。
4
.2 ユー口人民元金利と圏内金利
ユーロ人民元金利とは、海外に人民元取引市場が前生する場合、人民元の貸借に適用
する金利である。同時に海外の人民元の先物取引が存在すれば、 t時点においてユーロ
人民元金利
(CRn、人民元スポットレート
ーロドノレ金利 (UR~
(S
,
)、人民元先物レート (
F
, )およびユ
)の間には次の先物カバーつきの金利裁定式が成り立つ。
)
l
(
CR:+1 ,
F
U
,
R +1 S,
U
そして、
(
1)式の右辺と左辺から同時に 1を引き、さらに (
U
1
す+1
)を近似的に 1と
見なして式を整理すれば、
C
R
;に関する次の近似式が得られる。
F-S
α 間+守プ
U
(
2
)
(
2
) 式は、ユーロ人民元金利がユーロドノレ金利と人民元対ドノレ為替相場の直先スプ
レッドの和に等しくなることを意味する。例えば、人民元の先安期待が高まるときには、
人民元為替相場の直先スプレッドが正の数値になり(ドノレの先物プレミアム)、ユーロ
79
9年
3月 5 目、第九期金人代第 2回会議における朱絡基首相(当時)の「政府工作報告」。
02年 1
1月、黒田東彦財務省財務官(当時)が「中国が世界にデフレを輸出している」
8 代表的なもの とし
て、
と指摘し、人民元の切り 上げを要求した。また、 03年半ばごろに人民元の切り 上げに対する期師寺を示す米国財
朝 の 発言 が相次いでいた。(日本経済新聞の報i
l
i
"による)
務長官スノー(当日
90
5年 6月 初 日、第 6回 ASEM (アジア欧州会議)財務長官会議の開幕式での温家宝首相の演説 (新華社報
道による)
w ~中国人 民約子ま抗告~ 05年第 1
8号
。
88
日本経済研 究 比 5
8,2
0
08.
1
人民元金利がユーロドノレ金利を上回る。逆に、人民元が将剤直上がりするとし、う予測が
市場で広がった場合には、人民元為替相場の直先スブョ
レッドが負になり(ドノレの先物デ
イスカウント)、ユーロ人民元金利がユーロドノレ金利より低くなる。
実際、先述したように人民元の海外流通に対して通貨当局による規制政策があるため、
ユーロ人民元の資金市場の規模は小さし人民元の海外市場は前生していない。ところ
が
、N
D
F取引市場は存在しているため、トソレの貸借と人民元・トソレの先物取引を通じて、
海外市場でも実質的には人民元江貸借が可能となる。例えば、現怠トソレを持って人民元
で運用するならば、 N
D
F市場で人民元の先物を買って満期日に差金決済すればよい。こ
の取引によって、スポットレートで人民元を買し、ユーロ人民元の資金市場で運用するこ
とと同じ結果が得られる。逆に人民元を借り入れようとする場合に、 N
D
F市場で人民元
の先物を売って期限に差金決済すればよい。これは、人民元を借り入れ、スポットレー
トで人民元売り・ドル買いを行い、 トソレで運用して期日に先約のレートで人民元を買い
返済することと同じ効果である。そのため、人民元先物レート
(ND
F
,
) で代替すれば、
(
F
, )を N
D
F レート
(
2
) 式を用いてユーロ人民元金利を推定することが可能に
3)式で
なる。実際に推定に使う式は(1)式の左辺の分母を右辺に移項して整理した (
ある。
α
:乎
[x(l叩
(
3
)
=
Nは満期(ここでは 3カ月)、
ND
,
Fは N
D
F
3カ月物レート、
C
l
でと UR
,
"はそれぞれ
ユーロ人民元 3カ月物とロンドンインターバンク市場におけるトソレ 3カ月物金手Ijである。
データが利用可能な 98年 1
2月から 0
6年 5月までの期間におけるユーロ人民元金利の
推定結果と園内インターバンク市場金利を比較した図 2では、。 l年 7月までユーロ人民
元金利が国内金手Ijを上回る水準にあったことが示されている。特に、アジア通貨危機の
影響がまだ強い 9
9年には、ユーロ人民元金利の変動が激しく、国内金利より一時 1
5ポ
イント高い水準まで急上昇した場面もあった。ユーロ人民元金利が下落傾向に転じたの
は0
1年に入ってからであった。
。l年 8月に入るとこれまでの状況が
J
変し、ユーロ人民元金利が圏内金利を下回る現
象が見られた。そして、両者の希離幅が次第に拡大し、特に 0
3年 8月から 06年 2月に
かけては、ユーロ人民元金利はほぼマイナスで推移し、 04年 1
2月にはマイ ナス聞と最
低値を記録した。 06年 5月現怠でも、ユーロ人民元金利が国内金利より低い状態が続い
論文
資本移動に対する中国の為替管理の有効性
89
図2 ユ
1
8
口人民元金利と圏内金利(年率)
%
1
6
,
一
,
一
1
4
ー
&
ー
&
:
;
C
J
J
J
X
J
6
4
2
。
2
L
4
6
8
「
1
0
1
2
9
8
/
1
29
9
/
0
69
9
/
1
20
0
/
0
60
0
/
1
2 01
/0
6 01/1
20
2
/
0
60
2
/
1
20
3
/
0
60
3
/
1
2 04
/
0
60
4
/
1
20
5
/
0
60
5
/
1
2
暦年/月次
注)内外¢金利差二ユーロ人民元金利 国内インターバンク金手Ij
資料
)B
B
A(
Br
i
t
i
s
hBan
k
er
s
'A
s
s
o
c
i
a
t
i
o
n
) のホームページ、B100mb
目 gデータベース、 C
E
I
Cデータベース、
人民新子統計季報
ており、両者の希離幅は 2ポイント程度で推移する傾向にある。
4
.
3 人民元内外金利差と為替管理
通貨当局の為替規制がない場合には、国内外の市場開の裁定取引によりユーロ人民元
.
2節の推定結果
金利と中国国内の人民元金利はほぼ一致するはずである。 ところが、 4
で示されているように、ユーロ人民元の金利は園内の人民元金利から希離している。人
民元 NDF市場では、実在の人民元資金の流れが伴っていないため、国内金利と比較する
1
9
7
8
)で 指 摘 さ れ て い る よ う な 通 貨 当 局 の 管 轄 リ ス ク
際、 Dufey and Giddy(
(
]
u
r
i
s
d
i
c
t
i
o
n
a
lr
i
s
k
) を考慮する必要がない。そのため、人民元内外金利差は為替
管理により国内外の資金市場が分断されたことによるものであると捉えられる。 ここで
は、為替管理によって人民元の内外金利差が生じるメカニズムを詳細に掘り下げて考え
てみる。
まず最初に、人民元の切り下げ圧力が強く、通貨当局の為替管理により園内からの資
本流出が困難な場合を想定する。 この場合、人民元の先安が予想されるため、非居住者
90
日本経済研究 l
b5
8,2
0
08.
1
は人民元を借り入れて直物のドノレを購入し、人民元が値下がりしてから、人民元を買い
戻すことによって利益を上げようとする。しかし、為替管理により園内銀行などの居住
者から非居住者への人民元貸し出しが規制されていると、中国からの人民元資金の流出
は規制範囲内に限られ、その限度を超える貸借は海外では非居住ー者の問で行われるしか
ない。人民元の貸 し手則にとって、人民元の値下がりリスクが大きいため、この為替リ
スクに見合う高し企利でなければ人民元を貸そうとはしない。したがって、ユーロ人民
元金利は上昇する。 (
2
) 式からわかるように、ユーロ人民元金利上昇は、ユーロトソレ金
利が一定の下ではドノレの先物フ。レミアム幅が拡大することに対応する関係にある。一方、
中国国内では米トソレにベッグする実質的な固定相場制が実施されており、金利の自由化
も実現されていないことから、金手Ij裁定メカニズ、ムが働かない。人民元金手Ijはあまり変
動せず、変動幅は限定的である。このようにして、ユーロ人民元金利が圏内の人民元金
利を上回る現象が発生する。
次に、人民元の切り上げ圧力が強いことによって、為替管理により海外からの資本流
入が規制されるとしゅ今までとは逆の場合について考える。人民元の先高が予想される
ため、非居住者は人民元の預金や人民元建ての証券など、人民元建て資産を運用して利
益を上げようと考える。しか L彼らは、中国の資本流入規制により人民元建て資産の取
得が不可能であるため、手元にある人民元の運用方法は貸し付けに隈定されることにな
る。人民元の借り手側にとって、人民元債務を負うのは為替リス クが大きいため、ユー
ロ人民元金利がある程度江低水準でなければ人民元を借りようとはしない。したがって、
ユーロ人民元金利が下落し、圏内金利水準よりイ尽くなる。人民元相場の上昇リスクが更
に高くなれば、ユーロ人民元金利がマイナスになることもありうる。これは、 t
毎外では
マイナス金干Ijをつけて人民元が貸し出されているとし、うより、人民元の先物相場がユー
ロドノレ金利水準以上にディスカウントされていると解釈できょう。
当然のことであるが、 N
D
F取引の大半は投機目的のものであるため (
3
.1節)、ユー
ロ人民元金干Ijは投機の影響を受けている。ここで計測された国内人民元金利とユーロ人
民元金利の差は、為替管理の強度だけで決まるのではなく、 N
D
F取引に対する投機のイ
郎、ときに見
ンセンティブの強さにも影響を受ける。そして、為替管理の強さは投機が E
えてくる。そこで、以下のような関係式が成り立つ。
ユーロ人民元金利
国内金利く為替管理の強度(人民元が値下がり傾向にあるとき)
圏内金利 ユーロ人民元金利く為替管理の強度(人民元が値上がり傾向にあるとき)
論文
資本移動に対する中国の為替管理の有効性
9唱
すなわち、ユーロ人民元金利は投機の影響を受けるが、為替管理の強度によって縛ら
れているのである。
5 中国のキャピタル・コントロール政策の変遷 11
中国通貨当局が本当に人民元内外金干Ij差の希離で示されているほどのキャピタノレ・コ
7年
ントローノレ政策を実施しているのであろうか。ここでは、アジア通貨危機を境に 9
まで、 97 年~Ol 年、例年以降と 3 つの期間に分けて通貨当局の規制政策の変遷を概観
する。
9
7年までは、資本州市入については海外投資家にとって投資可能な国内証券は B株 uに
限定されており、園内の短期金融資産への投資も禁止されていた。また、圏内法人・政
府機関については、海外における債券発行や借り入れの認可・登録制によって、海外市
場からの資金調達が制隈されていた。海外からの 1年超の長期借入については国家の外
資利用計画に組み入れられ、 SAFEの認可が必要であった。一方で、対内直接投資など外
国からの長期資本投資に関しては、国内資金不足の状況や、外国の進んだ技術や先進的
な設備の導入という司郎、もあったことから、積極的に受け入れる政策が実施されていた。
次に、資本の流出については、非居住者による国内での証券発行む毎外発行証券の園
内販売がすべて禁止されていた。国内法人・政府機関について、海外からの借り入れの
場合と同じく、海外の証券および短期金融資産への投資を対象に認可・登録制が実施さ
れていた。また、国内法人による非居住者への貸し出しについて外国為替に対する資
産・負債比率規制内で行わなくてはならないとしザ制限が設けられていた。そして、対
外直接投資について投資リスクに対する SAFEの査定に加え、対外経済貿易部(現・商
務部)の認可が必要であった。
つまり、対内直接投資のような外国からの長期資本投資以外のすべての資本流出入に
対しては、通貨当局がより厳しい規制措置を取った。
アジア通貨危機発生後、人民元の切り下げ期待が高まり、国際収支統計においては通
貨当局が把握できなかった資本流出を示す大きな誤差・脱漏額が記録されていた(次節
より詳しい政策の詳細は付表を参照されたい。
中国ではかつて外国人投資家向けの株式は E株といい、園内投資家向けの株式は A株とし、った。 01年 7月に
居住者の E株への投資が解禁され、 0
2年 1
2月に中国証券監督委員会認可の適格外国機 関投資家 (
Q
F
I
I
Q
u
a
l
i
f
i
e
dF
o
r
e
i
g
nI
n
s
t
i
t
u
t
i
o
n
a
lI
n
v
e
s
t
o
r
) による A株への投資が可能になった。
n
U
92
日本経済研究 比 5
8,2
0
0
8.
1
を参照)。資本流出を食い止めるため、通貨当局は資本移動に関する従来の管理を厳格
に実施すると共に、圏内法人・政府機関による対外債務の繰上返済を制限するなど、さ
らなる資本市出規制を講じた。
例年に入ると、 N
D
Fレートも示しているように人民元先安観が後退し、外貨準備高が
2
0
0
0億トソレを超えたこともあって、 資本流出が国内経済を揺さぶる可能性が次第に小さ
くなった。経常・資本収支ともに黒字を記録し続けており、外貨準備の規模が急速に拡
大していることもあって、通貨当局は資本市出の規制緩和へと政策転換をした。
具体的には、これまで禁止されていた圏内法人・政府機関による対外債務の繰上返済
が条件付きで可能となった。対外投資を促すため、国内法人・政府機関の対外直接投資
に対する規制が緩和され、対外直接投資可能な機関の範囲が拡大された。それと同時に、
金融機関の対外証券投資についても規制が緩和された。例えば、通貨当局からの認可取
得が依然として必要であるものの、保険会社は一定の外貨使用枠内で対外投資すること
が可能になった。外国為替業務の認可を取得した銀行、いわゆる為銀には、居住者から
資金を集め、その代理として海外への証券投資が認められた。
外貨使用については、留学目的の個人による外貨交換枠の大幅な拡大(従来の 5倍)
や、大企業だけでなく中小規模の国内企業にも為銀の外国為替専門口座に一定の外貨収
入を預けて留保することが認められたことなど、個人と企業の外貨使用の自由度が高ま
った。
一方、 資本流入については、人民元高を狙う大量投機資金の流入を防ぐため、対内直
接投資に付随する海外からの外貨建ての資金や海外からの外貨建て借入金などに対し
ては規制が強化され、人民元への交換が制隈される措置が講じられた。
以上のことから、第 4節で推計された人民元内外金干Ij差には通貨当局が実際に行って
いるキャピタノレ・コントロール政策の影響が現れていることが確認された。
6 為替管理の効果
第 4節で推定した人民元の内外金利差を見て分かるように、中国の為替管理は元安時
の資本流出抑制、元高日
寺の資本流入抑制とし寸為替相場を安定的水準に保つための防衛
的な狙いがあった。また、通貨当局は為替管理を通じて国内外の人民元の裁定取引を制
限し、元安時の元売り圧力や元高時の元買い圧力を弱め、より少ない介入額で人民元相
場の安定を維持することを可能にしたと考えられる。
その一方で、中国の国際収支状況を示している図 3は、誤差・脱漏項目が 94年から
論文
資本移動に対する中国の為替管理の有効性
93
図 3 中国の国際収支の
1
2
G
D
P比
%
1
0
J
J
7
P
E
J
J
J
〆
8
6
4
2
。
2
4
1
9
9
4
9
5
96
9
7
9
8
9
9
2
0
0
0
0
1
0
2
0
3
04
0
5
暦年
注)誤差・脱漏二外貨準備増
(経常収支+資和収支)。この値が大きなずイナスになった場合には、違法な資
本流出が発生した可能性がある。逆に、こJ:値が大きなプラスになった場合にはホットマネーの流入が発生 L
た可能性がある。
資料) I
F
S
2000年までは通貨当局が把握できなかった巨額な資本流出、また 02年から 04年までは
通貨当局が把握できなかった資本流入の可能性を示すものであり、資本市出入に対する
規制の隈界の目安と捉えることができる 13
また、前掲の図 2で示されているように、人民元値上げ圧力が続くなかで、 0
3年半ば
以降ユーロ人民元金利は一時的にマイナスになっても、すぐにゼロ水準h と回復すると
いうことが読み取れる。このことから、ユーロ人民元金利がマイナスになった場合は、
中国国内の金融機関と企業がリーズ・アンド・ラグスu などによって海外からユーロ人
民元を借り入れていることが推測される。すなわち、国内の金融機関および企業がユー
"資本逃避の規模を図る指標として、長附子部門広短期 資本流出と誤差脱漏項目との合計を採用した分析があ
る
。 (
C
u
d
d
i
n
g
t
o
n(
1
9
8
7
))
H 輸出入企業が輸出代金J:受取時期や輸入代金の支払時期を早めたり遅らせたりすることである。その目的と
して、内外金利差を狙い金手Ijの鞘を稼くこと、為替リスクを回避すること、国境を越えて資金を動かすことな
どが挙げられる。
94
日本経済研 究 比 5
8,2008.
1
図 4 人民元の内外金利差と民間資本移動
覧
億ド
ノ
レ
6
4 ト
I1
5
0
0
..‘
、
'0
2 ト
1
2
0
0
ん民元(左の目内盛外り金)
利差
¥./
、
‘
。
•
ー
.
/
民間資本移動
(右目盛り)
4 ト
9
0
0
6
0
0
六
、
¥/
3
0
0
。
3
0
0
6
0
0
9
0
0
1200
1800
2100
1
9
9
9
2000
0
1
0
2
0
3
0
4
0
5
暦年
注1)人民元の内外金手1)差は、ユーロ人民元金不1)3カ月勅の推定値と中国国内インターハンク金利 3カ月勅と
の差の年平均。プラス値はユーロ人民元金利が園内金利より 高いことを意味する。
注 2
) 民間資本移動は経常黒字と外貨準備増との差にほぼ一致するため、ここではその差を民間資本移動とみ
なす。プラス値はトータルで資本流出が資本流入より多かったことを意味する。
資料)中国国家為替管理局のホームページ、 C
E
I
Cデータベース、 I
F
S
ロ人民元を借り入れることにより裁定メカニズムが働き、マイナスになったユーロ人民
元金利がゼロ水準まで上昇する可伝性がある。この現象は為替管理の限界を示す lつの
証拠ともいえる。
為替管理下で民間資本移動と人民元の内外金手Ij差との関係について、ユーロ人民元金
利がより高い時に資本の純流出が多く、逆に国内金利がより高い時に資本の純流入が多
かった(図 4
) 。これは、為替管理により国内外の金融市場が遮断されていたものの、
資本移動が依然として内タ地利差に大きく影響されていたことを示している。
7 中国と日本の比較
これまで見てきた資本移動規制により内外金利の希離が生じる現象は、 70年代の日本
でも見られる。 70年代初頭、変動相場制への移行後の日本も、通貨当局の誘導によって
相場水準が決定され、変動相場といえども実質的には固定相場制に近い政策運営がなさ
論文
資本移動に対する中国の為替管理の有効性
9S
れていた(深尾 (
1
9
9
0
) )。また、経常収支の不均衡や石油危機など、国内外の経済情
勢の変化により円相場の変動圧力が強まった際、通貨当局は資本移動に対する規制措置
を通じて円相場の安定を図った。この時期における通貨当局の為替政策運営は 90年以
降の中国と類似性が見られる。そこで、本節では日本と中国を比較し、該当時期におけ
る両国の為替政策の異同を検討する。
7
.
1 7
0年代における日本のケース 15
日本では 80年に国際資本取引の自由化が実現するまで、通貨当局が円相場の水準を
保つために、国内外経済情勢の変動に応じて資本移動に対する様々な規制を課 した。そ
の結果、内外円金利の問に格差が生じていた。図 5は 7
2年以降について、ユーロ円金
利と国内円金利を比較したものである。 70年代を通じて、 資本移動に対する規制が存在
したため、ユー ロ円金利と園内金利の問に希離が発生している。
日本は固定相場制末期の 7
1年 1
2月にスミソニアン協定に基づき、円の I
M
F平価を 3
0
8
円に切り上げ、為替変動幅も 2
.5
百に拡大したが、円高の圧力は依然として強かった。円
高の圧力を弱めるため、通貨当局は 7
2年、輸出前受金規制の再強化、非居住者自由円
勘定に対する増加額準備率の設定、非居住者による日本国内証券の取得額を処分額の範
囲内に隈定するなど、 資本流入規制措置を講じた。これらの施策を反映して、ユーロ円
金手Ijは概ね国内金利を下回る水準で推移した。特に変動相場制への移行が実施された 7
3
年 2月、ユーロ円金手Ijが大幅なマイナスを記録した。これは当時通貨当局が示した為替
管理の厳しさの現れであると考えられる。
7
3年 3月、第 l次石油危機発生後、日本の経常収支が赤字に転じ、物価の急 騰など景
気の過熱も発生したため、円売り圧力が強まった。円の大幅な切り下げを避けるため、
通貨当局は対内証券投資の純増ゼロ規制の撤廃や、非居計主者自由円勘定の増加額準備率
の引き下げなど、資本流入規制を撤廃するとともに、流出規制を急速に強化した。銀行、
証券会社などの金融機関に対しては、対外投資純増ゼロの自主規制が導入された ほか
、
居住者の外貨預金残高を純増ゼロとする規制も導入された。このようにして為替管理の
方向性の転換を反映して、ユーロ円金利が園内金利を大幅に上回り、両者の差は一時 2
7
ポイントまで拡大した。
,
C 日本の為替制度の歴史については探滝
96
日本経済研 究 比 5
8,2
0
0
8.
1
(
1
9
9
0
) を参照した。
図5 ユ
口円金利と日本の圏内円金利
1
ゐ
5
0
(
L__L ユーロ円 3カ月金f
l
j __1___1___
4
0
LJ ; J ; l
3
0
Y1 1
2
0
1
0
。
1
1 園内現先金利
l
k
l
沼》斗斗二L
;
J
斗し
]
:
1
0
戸
、
、トi
2
0
内外金利差
30
ト
4
0
7
2
/
0
1
l
~--~--~--~--~--~--~--~--~--~--~--~--~--~--~--~--~--~--~
7
3
/
0
1
7
4
/
0
1
7
5
/
0
1
7
6
/
0
1
7
7
/
0
1
7
8
/
0
1
7
9
/
0
1
8
0
/
0
1
1
81/0
暦年/月次
注 ) 内 外 金 利 差 二 日 本 の 国 内 現 先 金 利 ユ ー ロ 円 3カ月金手Ij
資料)深尾 (
1開 0
) p.149
7
5年以降、経常収支の改善 と黒字化により、円相場は上昇が高品、た。特に、経常黒字
が急速に拡大した 76年には、円相場の切り上げ圧力がいっそう強まった。この状況に
対応して、日本通貨当局は非居住者自由円勘定の増加額準備率を大幅に引き上げるなど、
再び資本流入規制を導入した。これによりユーロ円金利は圏内金利からの希離幅が拡大
し、国内金利を 2
4
'
幅下回る水準で推移した。このような状況は第 2次石油危機が発生し、
日本の経常収支が再び赤字に転落した 7
9年まで産品、た。
7
9年に円高時に採用された資本流入規制がすべて撤廃され、非居住者の現先取引も解
禁された。為替管理が撤廃されることによって、ユーロ円金利が現先金利に近づいた。
特に、新外国為替管理法が施行され、国際資本取引の自由化が実現した 80年 1
2月以降、
ユーロ円金利と国内金利はほぼ同じ水準で推移した。
7
.
2 日中為替制度の異同
以上のように 7
0年代における日本の為替管理政策と、 90年代以降の中国の為替政策
を比較すると、資本移動に対する厳しい規制があった点においては共通していた。
日本では、 7
1年には一般投資家の対外証券投資が自由化されたが、煩雑な政省令によ
論文
資本移動に対す る中国の為替管理の有効性
97
る規制があったため、 7
0年代には小規模なものにとどまっていた。その結果、 7
0年 代
後半、日本の経常黒字はほぼ外貨準備の増加によってファイナンスされていた。中国で
も、対外投資については相変わらず許認可が必要であり、厳しい規制が課せられている。
4年 8月であったが、
例を挙げると、国内の保険会社の対外投資が可能となったのは 0
投資ライセンスを獲得するには人民銀行などの管理部門の審査が必要であり、投資枠に
ついても規制が設けられている。そのため、中国では経常黒字と資本取引の黒字の大半
が外貨準備の増加によって吸収され、外貨準備高は急速に拡大した。
以前の日本では、円安または円高の圧力が発生すると、それに応じて資本流出入に対
する通貨 当局の規制政策の方向性の変化がはっきり見られた。それに対して、中国では
元来規制が厳しかったため、人民元安または人民元高の圧力下で、 t
邑力日的な規制措置が
実施されることが少なく、全体から見ればむしろ規制緩和江傾向が見られる。例えば、
人民元の切り上げ圧力が強まった 0
2年以降、その圧力を弱めるために資本流出を促進
すると同時に、 資本流入を規制することが必要となる。しかし、実際に中国はこの時期、
Q
F
I
Iによる国内 A株 投資を認めるなど、資本流入に対する規制を緩和する政策も打ち出
している。
一方、両国の為替管理には以下のような相違点も見られる。
まず、為替相場の決定メカニズムが異なることである。日本の場合、 7
3年変動相場制
に移行後、当初は実質的に固定相場制に近い政策運営がなされていたが、それ以降の為
替相場の変動幅が大きく変化した。円・ドノレ相場江年平均値を見ると、 7
3年の相場水準
(
2
71
.7
0円/ドノレ)を基準に、 8
0年まで円対ドノレの切り上げ幅と切り下げ幅はそれぞれ
最大 2
3
首位 1
0
.
4
4円/ドノレ)と側 (
2
9
6
.7
9円/ドノレ)であった。これに対して、中国で
は何年半ばまで実質的なドソレベッグの固定相場制が続いた。何年 7月に通貨バスケッ
ト制へ移行した時の相場水準 (
8
.1
1 元/ドノレ)を基準にすると、それ以降は人民元が値
上がり¢傾向にあったが、 0
6年 1
0月 1
0日主尉生まで最大の切り上げ幅は部 (
7
.
9
0
7
2元/
ドノレ)にとどまっている。 資本移動の自由化が進むなかで、固定相場制および変動幅が
狭い範囲内に制限されている管理フロート制は、通貨 当局の為替管理運営の自由度を狭
め、近年外貨準備が急、増している一因である。
次に、自国通貨の交換性が異なることである。日本では、 6
0年 7月に非居住者の自由
円勘定が認められ、経常取引は円建てで決済することが可能になった。その後、非居住
3
者の自由円勘定が円転換規制の対象とされ、その残高に対する規制が続いていたが、 7
年 1
2月にはすべての規制措置が撤廃された。このことを反映して、前掲の図 5で示さ
98
日本経済研 究 比 5
8,2
00
8.
1
れているように 7
3年末以降はユーロ円金利がマイナスになることはなかった 16 一方、
中国の場合、経常取引はすべて外貨建てで決済され、人民元建ての決済はまだ認められ
M
F
8条国移行後、経常取引に関しては居住者の外貨交換が自由化
ていない。すなわち I
されたが、非居住者が人民元勘定を開設することに対しては依然として規制されている。
これは、人民元切り上げ圧力があった場合に、 資本流入に対する為替管理も反映して、
ユーロ人民元金利が合理的にマイナスになり得る理由である。
8 中国為替管理の今後の課題
中国経済は大きな発展を遂げ、 04年時点では GDPの規模が世界 7位を占めるにいたっ
た。世界 3位の輸出入貿易規模を持ちペ日本の最大貿易相手国、米国の最大貿易赤字
相手国でもある。大幅な経常黒字に伴う 貿易摩擦の問題が次第に深刻になっているなか、
中国の為替管理にとっては人民元相場の変動幅の拡大と対外投資じて促進が最も重要な
課題である。
国際金融論には、「自由な資本移動、独自の金融政策、固定相場制のうち経済政策と
しては最大 2 つしか追求し得なし、」という、
「マンデノレの不可能な三角形」
(
M
u
n
d
e
l
l(
19
6
0
)
) と呼ばれる命題がある。中国の経済規模から見ると、当然独自の金
融政策を維持することが不可欠となる。資本移動については、経常取引が自由化した後、
圏内企業はリーズ・アンド・ラグズなどを通じて、実質的な資本取引が可能となった。
実際、第 6節に記述したように、人民元切り下げ圧力ならびに切り上げ圧力が高まった
ときには、国境を越えて大規模な資本移動が発生した。そのため、 資本移動が次第に自
由になる中、中国は固定相場制を放棄する必要がある。何年 7月、中国は従来のトソレベ
ッグの相場体制から通貨バスケット制へ移行したが、人民元の変動幅は依然として狭い
範囲内に制限されている。未発達な国内金融市場、対外貿易に依存している経済発展モ
デルなどの状況から見れば、現段階では管理フロートの為替相場体制が適切であろうが、
貿易摩擦の緩和や通貨当局による為替市場介入のコストの削減を目標に、今後は人民元
相場の変動幅の拡大を許容する必要がある。
資本移動に関して、外貨準備が世界最大になった中国にとっては、対外投資を促進す
"円高予想があったときに、非居住者はドノレを円に替えて 日本広重附子に無制限に円預金ができる。 自由 円預金
の金利は最低、当座預金のぜロ金利であるため、ユーロ円金利はマイナスにはならない。
n 中国国家統計局のホームページによる。
論文
資本移動に対する中国の為替管理の有効性
99
ることが重要である。現在でも民間部門の外貨保有と対外投資に対する中国通貨当局の
規制は依然として厳しい。これらの規制措置により、経常黒字と資本収支黒字がほとん
ど通貨当局の外貨準備によって吸収され、外貨準備が急、増した。その結果、通貨当局は
米トソレなどの基軸通貨の為替変動リスクをすべて背負うことになっているだけでなく、
民間部門はせっかく獲得した外貨収入に対してより高い運用収益を手に入れる機会も
なくなるとし寸ジレンマに陥っている。対外投資に対する規制緩和をより一層進めれば、
民間部門の外貨資産の運用により、収益がより高い投資機会を海外に求めることができ
る。そして、対外投資による 資本市出は人民元の切り上げ圧力を軽減させるとしゅ効果
も期待することができる。
このような資本移動に対する規制緩和を進める一方で、アジア通貨危機の教司1から短
期投機資本の流入などの資本移動に関しては相変わらず注視すべきである。 7
0年代の日
本の経験から考えても、変動相場制移行後、資本移動に対する厳しい規制は 80年まで
続けられ、日本は資本取引の自由化に対して当時相当に慎重な姿勢をとっていた。アジ
ア通貨危機の轍を踏まないように、中国はより柔軟な人民元相場の決定メカニズ、ムを採
用すると同時に、国際資本取引の自由化を漸進的に進めることが必要となる。
参考文献
深尾光洋(1s
拘) ~実践ゼミナーノレ国際金高叫 日 本経済新聞社
C
u
d
d
i
n
g
t
o
n
,]
.T
. (
19
8
7
) “C
a
p
it
a
lF
l
i
g
h
t," EuropeanEconomicReview3
1, p
p
.3
8
2
3
8
8
,G
., a
n
d1
.H
.G
i
d
d
y(
19
7
8
)T
h
eI
n
t
e
r
n
a
t
l明 a
1ル neyMarket
,P
r
e
n
t
i
c
e
H
a
l
lI
n
c
D
u
f
e
y
2
0
0
4
)"
2
∞3NDFMarketvolumeSurvey"
E
m
e
r
g
i
n
gM
a
r
k
e
t
sT
r
a
d
e
r
sA
s
s
o
c
i
a
t
i
o
n (日~TA) (
F
u
n
g
,H
u
a
n
g
G
a
y
,W
a
iK
.L
e
u
n
g
,a
n
dJ
i
a
n
gZ
h
u(
2
朗4
)“
N
o
n
d
e
l
i
v
e
r
a
b
l
ef
o
r
w
a
r
dm
a
r
k
e
tf
o
r
C
h
i
n
e
s
eR
M
B
:
Af
i
r
s
t1
∞k"αi
n
aE
c
o
n
o
m
i
cR
e
v
i叫
2
0
0
4
1
5, p
p
.3
4
8
3
5
2
I
M
FAnnualR
e
.
知 '
r
to
nE
x
c
h
a
n
g
eA
r
r
a
n
g
.
明 e
n
tandE
x
c
h
a
n
g
eR
e
s
t
r
i
c
t
i
α
n
s
.
D
i
r
e
c
t
i
o
nofT
r
a
d
eS
t
a
t
i
s
t
iιヲ
I
n
t
e
r
n
a
t
i
o
n
a
lF
i
n
a
n
c
i
a
lS
t
a
t
i
s
t
i
c
s
.
L
i
p
s
c
o
m
b,L
a
u
r
a(
2
0
0
5
)“
A
nO
ve
r
v
i
e
wo
fN
o
n
D
e
l
i
v
e
r
a
b
l
eF
o
r
e
i
g
nE
x
c
h
a
n
g
eF
o
r
w
a
r
dM
a
r
k
e
t
s,"
F
e
d
e
r
a
lR
e
s
e
r
v
eB
a
n
ko
fN
e
wY
o
r
k
M
a
, Guona~ C
o
r
r
i
n
n
eH
o,a
n
dR
o
b
e
r
tN
.M
c
C
a
u
l
e
y(
2
0
0
4
)‘
'
T
h
em
a
r
k
e
t
sf
o
rn
o
n
d
e
l
i
v
e
r
a
b
l
e
f
o
r
w
a
r
d
si
nA
s
i
a
nc
u
r
r
e
n
c
i
e
s," BISQuarterlyRevie
,
w 2
0
0
4
7,p
p
.8
1
9
4
唱0
0 日本経済研 究 比
5
8
,
2
0
0
8.
1
M
u
n
d
e
1
1,R
o
b
e
r
tA
.(
19
6
0
) ‘
'
T
h
eM
o
n
e
t
a
r
yD
y
n
a
m
i
c
so
fI
n
t
e
r
n
a
t
i
o
n
a
lA
d
j
u
s
t
m
e
n
tu
n
d
e
rF
i
x
e
d
a
n
dF
l
e
x
i
b
l
eE
x
c
h
a
n
g
eR
a
t
e
s,
"Q
u
a
r
t
e
r
l
yJ
o
u
r
n
a
lofE
c
o
n
o
m
i
c
s74, p
p
. 227-257
P
e
n
g
,W
e
n
s
h
e
n
g
,C
h
a
n
gS
h
u
,a
n
dR
a
y
m
o
n
dY
i
p(
2
0
0
6
) “R
e
n
m
i
n
b
id
e
r
i
v
a
t
i
v
e
s
:R
e
c
e
n
tD
e
v
e
l
o
p
m
e
n
t
a
n
dI
s
s
u
e
s,
" C
h
i
n
aE
c
α
n
岬 '
i
cI
s
s
u
e
s
,H
ongK
o
n
gM
on
e
t
a
r
yA
u
t
h
o
r
i
t
y
,2
0
0
6
5,p
p
.1
1
7
任兆輩、寧忠忠 (
2
0
0
5
) “人民幣iL率預期与人民愉叩時仁率的実在研究" 学務すよ窓 2
0
0
5
1
2,p
p
3
4
3
9
張陶偉、楊金国 (
2
0
0
5
) “人民愉叩F与人民幣iL率失調関係的実在分析ヲ"屋被冶/菰培矛'x, 2
0
0
5
1
0,
p
p
.4
9
5
4
銭小燕 (
2
0
0
5
)“離岸NDF市場対人民幣iL卒未来走趨的予期"必i
!
f
f
J
t
f
:
濯E
J
寸学学議 V
ol
.2
7,N
o
.
3,p
p
1
1
6
1
2
0
B
lcコmberg
データベース
C
E
I
C
データベース
くホームベージ〉
中国人民銀行
http://
附 w
.
p
b
c
.
g
o
v
.
c
n
/
中国国家為替管理局
h
t
t
p
:
/
/
w
w
w
.
s
a
f
e
.
g
o
v
.
c
n
/
m
o
d
e
l
_
s
a
f
e
/
i
n
d
e
x
.j
s
p
中国国家統計局
http://
附 w
.
s
t
a
t
s
.
g
o
v
.
c
n
/
英国銀行協会
h
t
t
p
:
/
/
附 w
.b
b
a
.o
r
g
.u
k
/
論文
資本移動に対する中国の為替管理の有効性
唱。唱
付表
資本取引およびその関連事項に対する為替管理の変遷
資本流入
日
イ
寸
(
!
e
屠l:者l
資本流出
その他
(
1
ド厨l:
者l
.外 資 金 融 機関が 預 か る 外 貨預金 に 対
. 投 資 可 能 な狂 # は酎朱に限 定。
- 圏 内 における 旺 穿発 行 及 び 海 外 発 行狂 券の国 して は 、 満期 3カ 月 未 満 の 場合 は準 情率
%,満 期3カ 月 以上 司〉場 合 は 問調 で
が5
内 販売 が禁止。
- 短 期 金 融 資 産へ の投資は禁止。
あ った。
方 で園 内 金 融 機関 が預かる
外 貨預 金 に 対 し て は、 準 備率 が2
誌で
- 短 期 金 融 資 産 即 発 行 及 び 販売 が禁止。
.外 国 投 資 家 に よ る 対 内直接 投 資に対 して
あ った。
は、環境への~警がある産業平国家機密に
(
)副主者 l
関 わる 産 業 以 外、 規 制 は ほ と ん ど な かっ
- 出国 時 に 6,
口
口
口元 を 上 限 に 人 民 元 町 持 出 し が
。 香 港 、 マ カ オへ の 捜航 は 50
0ド
ノ
レ (
ま
ち
る
可 官E
ア
こ
。
い はそ の 相 当 外 貨、 以 下問) 、 そ の 他 の園 へ の
捜航 は 1
000ドノレを超 え る 外貨 受 換 は S
A
F
EC
'
)毘 可
[
居l:
者l
発 行 は 人 民 組 行 毘 可 の 金 融 が 必要 。また、 個 人 の理 由 で 海 外 へ 捜航 す る 揚
.海 外 で の慣 #
機 関 に限定。
合 に は、外 貨 " 換 が 年 回 の み に限定。
1
9
9
6年
まで
- 国 家 為替 管 理 局 (
S
A
F
E
)箆 可 の 金 融 機関 . SAFE~可の金融機関 に 限って、 海外の 喜正#及
は 対 外 借 入 、 所 定 ラ イ セ ン ス を有 する園 内 び 短 期 金 融 資 産へ の 投 資 が 可能。
商 工 業 企 業 は海 外 か らの 商 業情 用惜 入 が 可
A
F
E
で 登 録 . SAFE~可の金融機関 に 限っ て非居住者への貸
能。 畏 期、 短期 に か か わ らず 、 S
す る こ とが義務付けられた。
出が可能。ただし
、 外 国 為 替 資産ー 負 慣 比 率 の
(
満期1
年越 )は S
A
F
E規 制範 囲内で 貸 出 を 行 うと の 規制 が あ っ た。
海 外 か ら の畏 期借 入 (
の思 可 が 必要。
.海 外へ の直接 投 資 は 、 投 資 り ス ク に 対す る
A
F
EC
'
)韮 定 及 び 対 外 経清 貿 易 協 力 部 (
現 ー商務
-居 住 者 が 入国 時 に所 持 外 貨 を 申告 する 義 S
s
M の毘 可 が 必 要。
務 が あっ た。
1
9
9
7年
.海 外 渡航 時 に 自由 に所 持 で き る 外 貨 の規 制を
緩 和o S
A
F
E(
1
)
箆 可 不 要 な 上限 は香 港 、 マ カ オへ
000ドル以下、 そ の 他 の園 へ の 捜
の 捜航 の 場合 1
00ドノレ と引き 上 げられた。
航 の 場合 、 20
9月
. 登 記す る 資 本 金 が 1
0日 万 人 民 元 以上
お よ び 対 外貿 易 規 模 が 年30日 万ドノレ以
上 め 対 外貿 易 専 門 企 業、 も し 〈 は 登記
0日
日万 人 民 元 以上 お よ び
す る資本金が3
対 外貿 易 規 模が 年 1
0
日 万 ド ル 以上 の 対
外 貿 易 ラ イ セ ン ス を 持 っ て い る 企 業に
は、 前 年度 輸出 入貿 易総 額 15
世に 相 当 す
る 外貨 を為根町〉
外 国 為替 専 門 口 座に 預
け、自 由 に梗 用 す る こと が 可能 になっ
た。 ( こ れ まで は 、 貿 易 関 連 の 外 貨 収
入 はす べ て 為程 に 売 却 す る こ と が 義 務
付 け ら れ た。 )
1
0
月
. SAFE~可の金融機関以外、 所定ァイ セ ン スを
有 する 商 工 業 企 業 ーグ ルー プ も短 期金 融 資 産へ
の 投 資 が 可能 に な っ た。
将
- 政府 機関 ー園 内法 人 が 海 外 で 外 貨 建 て の
慣 捧 を 括 行す る こ とに対す る規 制 が 強 化。
1
9
9日年
. 対 外借 入 に 対す る審 査の 範 囲 は借 手 企 業
の 資 産枚 担、借 入 金 の用 途 ま で 広 が 1 対
1月 外 借 入 に 対 す る 規制 が 強 化。 国 家 発展 改 革
委員 会 が満 期 1
年 超 円 中畏 期 の惜 入 に対 し
A
F
E
が 短期借 入 に 対 して そ れ ぞ れ借 入
て、 S
の 年度 残 高 基 準を 公 布 し
、 借 入可 能 額 を 各
企 業 号機 関 に配 分 す ること に な っ た。
. 対 外惜 入 につ い て 繰 り 上 げ 返清 が 可能 とい う - 園 内 :
i
t
H子には、 園 内 資本 町 企 業 が 外
事宅約条文がない場 合 に は、 政 府 機関 ー園 内 法 人 資樹 子 の 担 保 で 人 民 元 建 て ロ ー ン を惜
が繰り 上 げて対外{
責務 を 返清 する こと が 禁 止 さ り入れるこ とが 禁 止 さ れ た。
れ た。 当 践 条 文 が あ る 場合 で も、 返 清 す る に は
S
A
F
Eの " 可 が 必 要 に な っ た。
8月
-居 住 者 と 非 居 住 者 が 入国 時 に そ れ ぞ れ
- 非居 住 者 が 5000ドル を超 え る 外 貨 を海 外 へ所
非 2
000ドノレ、 5000ドル以上 め 外 貨 を 所 持す る 持す る場合に は、 SAFE (7)~可が必要 になった。
場 合 に は 視開へ の 申告 が 義務づけられた。
注) 1がついているところは月まで時聞が確定できない項 目である。
資料)A
nn
ua
lR
epJr
to
nExc
h
a
ng
eArr
ang
田 町 ta
ndE
x
c
ha
n
g
eR
e
s
tri
c
t
i
ons
、中国国家為替管理局と 人 民銀行
のホームページ
唱0
2 日本経済研究 比 5
8,2
0
0
8,
1
日付
資本流入
資本流出
その他
ej
l
j人 的 理 由 で海外 へ制 高す る 居住者には、 こ
れ ま で は 年 固 めみ の外 貨 受 換 が官、
められてい
たが、こ の規 制が 撤 廃 さ れ た。
万ドノレを所持す るこ
- 居 住者 が 出 国 時 に最大 1
とがI
I
Iめられた。 ただし、 20
0
0ドルか ら40
0
0ド
ノレまでの場合 に は為替吏換す酎7発 行 の 「 外国為
0
0
0ドルを超 え
替所 持喜
正明書 J が 必要であり 、 4
AFEの官、
可 が 必要で あった。 図的 ド
ノ
レ以
ると 、 S
下 の 場合 には、 以上 のF
正明書 ー官、
可 が 不要。
1
9
9
9年 1
0
月
0
0
0ドルか ら1
方ドノレま
-非 居住者 が 出 国 時に 5
で の 外貨 を所 持す る場 合 には、為替吏 換樹 7発
行 の 「 外 国 為替所 持紅明書 」 が 必要で あ った
。
•
•
20
0
0年
20
02
年
る外貨に限って 外国憤券 と短期金 融 資 産へ の投
資 が 可能 になっ た。ただ し、 権 外F
正券投資を目
的と す る外貨受換が 禁止 された。
-外 国主
酎7の担保付を条件に、圏 内提
行 に よ る 外 資 企 業へ の人民元理て貸出
がE、
められた。
9
7年 1
0
月 の項 を審開) を
-所 定 条 件 (
満 たす 圏内資 本企 業 に は前年度 の 対 外
帽 に 相当す る外貨収入を自
貿易総額 の3
己勘定 に留保 す ることが可能 になった
5
船 。 た だ し、留保
(
当限 比 率は以前 1
外 貨 の残高が S
AFECO視 定上 限を超 える
場合 には
、 超過 績の外 貨 を 為根 に売却
しな け ればな ら な か っ た。
4月
•
20
01
年
eSAFE(
I
)!
2
.
可 を 取得 す れ ば 、 居住者 が手 元 に あ
I
I
可 の 金 融 機 関 は これ ま で 園 内 法 人
-人 民組行 I
を代理 し、 あ る い は 自 己勘定 で S
AFEの官、
可なし
で碍外のデロパテイフ商品へ の投資が可能で
あったが、そ の 目的をり スタのへッ ヅに 限定す
ると 明 確な 規 定 が 殺 け られ た。外 資 系 金 融 機 関
が圏 内法人を代 理 し て 碍 外 の デ ロ パ テ ィ ブ 商 品
へ投 資す る場合 には、 S
AFEの官、
可 が 必要。
-居住者も 手 元 にあ る外貨でE
株 へ投 資
が 可 能 に なった
。
7月
9月
-政府 機 関 ー圏 内 法人 の対 外 憤 務へ の繰 上 げ 返
?
斉に対する 規制 が 緩 和。 国務 院官、
可の対外情
I
Iめ ら れ た 対
入 、 判 決 で 繰上 げ 返清 め必要性 が I
AFE
官、
可 後、政府 機 関 ー
外
イ昔入 な ど を 対 象 に、 S
圏 内法 人 が 外 貨空換 を 行 い 、 そ れ を 返荷 す ると
とが可能 にな っ た。
1
2月
-大 学 レベ ル以 上 の 外国教育機 関へ の留 学 ヒザ
を取 得 した居住 者 には、生活費、 学費 などと し
て、 S
AFEの官、
可 な しで 2
万ドノレ以内の外 貨受換
方 ド ル を超 え る 場合 には
が 可能 になった
。 2
SAFEの官、
可 が 必要。
-年間外 貨 収 入 が 2
00万ドル 以上、ある
い は 外貨 の 年間支 出 が 2
0
万 ド ル 以上 の
圏 内企業には、外 貨収 入 の 2
5
匹を為根 の
為替 専門口座に留保 す ることが可能 に
なっ f
こ。
種績 に 分揮 され、 これ まで 対 外
- 対外 投 資 が4
直接 投資規 制の 対 象で あっ た多 〈 の圏 内企 業は
対外 直接 投 資 が 可能 になった。
4月
9月
-海 外上 場の圏 内企業、 あるいは圏内
企業の海 外 持ち株 会 社 に は、碍外で自
0日内
社 株 を売却 したら、そ の 代 金 を 3
に園 内 に 送 金す ることが義務付けられ
た 。 自 社 株売却 の代 金 を 碍 外 に預 ける
には S
AFEの官、
可 が 必要 で あった。
1
0
月
-経 常取引 に関わる す べ て の圏 内企業
には、前年 度 外 貨 収 入の2
帽 を 為 提の為
替専門 口座 に留保す る ことが官、
めら
れ、外 貨留 保に対す る上限規制も 撤 廃
された。 ただ し
、 これまで留保 した外
貨を為根 に売却 しなければならなかっ
f
こ
。
骨FI
I)による A株
-適格 外国機 関 投 資 家 (
へ の 投 資 が 可能 になった。
酎 7およ
-中国"千
子、建較す酎7、工商昔
大国 有昔
酎引 が
び農業ま酎l' (
,、
わゆる 4
外 国為替先 物 取 引 を 開 始 した。 ただ
し、実 需 原則 に 基づ き 、 制 限 措 と
なったのは経常取 引 お よ び 外国憤 務め
返?
斉に関わる外貨に 限定された。
1
2月
論文
資 本 移 動 に 対 す る 中 国 の 為 替 管理 の有 効 性
唱0
3
資本流入
日
イ寸
2003
年
1
0
月
資 本流 出
その他
-居住者が権外から入国時に申告不要の - 居 住者 が 「外国 為 替 所 持 狂 明 書」 な し で 樺
所 持 外 貨の上限は 200口約レから 5000ドル 外 へ 所持 できる外貨の上限は 2000ド/
レ君、ち
5000ド
ノ
レへ
、 SAFEの認可必要な所持外貨の下
へ引 き上げられた。
限 は 4000ドノレから 1万 ド ルへ 引 き 上げられ
た。
- 大学 レベノレ以下の機関も吉 む 権 外 教育機 関
へ の 留学 ピザを 取得 した居住者 には 、 生 活
費 、学 費 な どとして、
固で 2万 ド ル の 外 貨
受換が可能になった。
2004
年
1
1月
. 昔日の省 (日本の県 に相当)および地域 に
対して、対外投資可能枠が 100万ドノレから 300
万ドルに引き上げられた。
1月
. 中国大 陸 め居 住者 が香港で加行するとき
に、人民元理てのパンクカード(タレシァ ト
カードキデピァトカードなどの機能がついて
H
子めキャ ァシューカード) での支払い
いる
量l
が 可 能に なった。
2月
-香 港では 部め強行が人民元町〉預貯
金、人民元と 香港 ド ル と の 烹 換 お よ び
人民元理ての送金業務を開始
。
3月
. 外国 為 替収支があるすべ て の 園 内 企
業 に は 、 外貨 留保 が認 めら れ
、 留保 可
能 な外貨め上限はは前年度外貨収入め
30誌
、 もし 〈は印私へと引 き上げられ
ア
こ
。
. 投 資 を受け入れる園内企業の書面 要求
がなければ、 権外 投 資 家は投資資金の人
民元への吏換が禁止された。
7月 -園 内 め外資系昔l
H
子には、権外への貸 出
から生 じた外貨収益の人民元へ む吏 換、
お よ び 権 外へ の貸 出 を 目 的 とする外 貨 の
購 入が禁止された。
8月
- 園 内の保険金社には、権外への投資および
それを目的と す る外貨烹換が認め られ た。 た
だし、人民昔附子と保険監督委員会 の 認 可 が 必
要。
9月
. 中国大 陸 め 居 住者 が,;ウオで旅 行 す る とき
に、人民元理てのハンクカードでの支払いが
可 能 になった。
.' カ オでは 音'"組行が人民元の預
貯 金、 人民元 ー香港 ド ル お よ び 人 民
元 ー マ カ オ閉 め吏換、そして人民元理
ての送金業務などを 開始。
1
1月
2005
年
1月
. 中国大 陸 め 居 住者 が人民元理てのハンク
H
子が預 かる人民"およびと外貨の
.昔l
カードで、タイでの消 費、 ま た 持国 とシン芳 預金に対して頭 金 準 備 率が 3誌と 元
ポー/レでの消 費 と預金 引 出 し が 可能 に なっ
化された。
た。
. 権外 教 育 機関へ の留 学ピザを取得 した居住
者 には学 費以外、 最大 2万 ド ル め 外 貨吏換 が
認 められた。
2006
年
唱0
2月
-認 可制の下で、 園 内で 1
0
{
:
曹人民"以
上 司〉融資を実施 した経 験 が あ る 国 際 金
融機 関 を対象に、人 民元理ての慣 券 の
園 内で の発行 が認 められた。ただし、
制違資金め運用は圏 内のプロジェタト
に限定された。
7月
叫 切 り 上 げ、 為替相 場 決
.人民"が 2.1
定メカ ニ ス、
ムが通貨パスケ ァ ト制へ移
イ
了
。
4月
4 日本経済研究比 5
8,2
0
0
8.
1
.昔附子業監督委 員 会 め 認 可 を 取得 した為張に
は、居住者を代理して権 外 の 旺 券 市 場へ の 投
資 が認 められた。