ディジタルホログラフィ ック断層イメージング手法の開発

デ ィジタルホ ログラフィック断層 イメー ジング手法の開発
野村孝徳
和歌 山大 学 シス テ ムエ 学部光 メカ トロニ クス 学科
〒6 4 0 - 8 5 1 0 和歌 山市栄谷 9 3 0
Tomgraphic lmaging by Use of E)igital Holography
Takanorl Nomura
Niechatronics,Faculty of Systems Enginccring,Wakayamal」nivcrsity
Dcpartment of()pto―
930 Sakacdani,Wakyama,640-8510,Japan
p
E―
m a i l i n o m @ s y s , w a k auy.aamcaj―
概要
デ ィジタルホ ロ グラフイを用 いた断層イメー ジ ングのための光波伝搬 を用 いた再構成法 を提案す る.
ー ー ー ー
沢じ
定試料 の肥折率遅延壁 が無 視 で きな い ほ ど大 きい場合や ミリメ タ オ ダ の試料 の場合 には
極 めて有効 な手法であ る。提案手法 に よって これ まで用 い られて い る逆投影法で生 じた測定誤差 を
減少す ることがで きる。 ロ ッ ドレンズを測定試料 として用 いた計算機 シ ミュレー シ ョンに よ りその
有用性 を示す。
1 は じめに
工 業分野 における透 明部品 の 内部欠陥検 出, 医
る。例 と して ,直 径 5mmの ロ ッ ドレ ンズ を対 象
とした シ ミュ レー シ ョンをお こな い ,提 案 手法 と
学分野 におけ る細胞や微生物 の 内部構造 の立体観
従 来 手法 の 再構成 精 度 を比較 し,提 案 手法 の有用
察 な どの場面 で 3 次 元屈 折率構造 の 画像化 技術
が 求 め られ てい る. 屈 折率分布計測手法 のひ とつ
性 を示 する
として, 光 波 の位相情報 を計測す るデ ィジ タルホ
2 逆 伝搬 を用 いた 断層再構成 計算手 法
ロ グラフイが あ る。 この技術 は透明物体 の透過光
デ ィジ タル ホ ロ グラフ イック トモ グ ラフ ィは計
の位相分布 を解析す る ことに よって透明物体 の 2
測 す る 1 ) . この技術 に逆投影
次元屈折率分布 を言卜
測 物体 を回転 させ ,複 数 の 方 向 へ 透過 した各光 波
法 に よる トモ グラフ ィを導入 し, 3 次 元旭1 折率計
取 得 す る。得 られ た複 数 の 位科1遅延 主 に 対 し,断
測 を可能 に したデ ィジタルホロ グラフィック トモ
2 ) 。しか し この 手法 は
グ ラフィが報 告 されて い る
層再 構 成 計算 をお こな う こ とに よ り計測 物体 の 屈
逆投影法 を用 い るため, 屈 折 を無視 で きるほ ど位
相遅延量 の小 さい物体 であ る必要があ る。 その た
の 位相遅 延量 をデ ィジ タル ホ ロ グ ラフィに よって
折率 断層画像 を再構 成 す る.こ れ まで ,再 構 成 に
一
用 い る断層再構 成 計算 手法 に は 般 的 な X tt CT
に採 用 され て い る逆 投 影 法 が 用 い られ て きた 幼.
しか し逆 投影 法 に は,計 測物 体 に よ る屈 折 は無 視
め, 細 胞 の ような微小物体 に限 るな ど, 計 測対象
が制 限 されて しまう。 そ こで , 本 研究 で はデ ィジ
で き るほ ど位相遅 延 量 が 小 さ くな けれ ば な らな い
タルホロ グラフィの深 い被写界深度 を活用 した大
とい う条件 が あ る.し たが って ,計 滅l物体 の 寸 法
型物体計測可能 なデ ィジタルホロ グラフィック ト
モ グラフイを提案す る 3 巧) .
あ る い は屈折率 変化 が 大 きい場 合 ,計 演l物体 と周
本研究 で は ミリメ ー トルオ ー ダー の大型物体計
囲 の 媒 質 との屈折率 差 が 大 き い 場合 な ど,位 相遅
延 量 が 大 き く屈 折 が無 視 で きな い ケ ー スで は逆 投
測 デ ィジタル ホ ロ グラフイック トモ グラフイのた
影 法 は大 きな計測誤 差 を生 じさせ て しま う こ とに
めの 屈折 を考慮 した断層再構成計算手法 を提案す
な る。
Phase delay ψ
(a)計測試料 による'i折と位相遅延量
,
→
φヘン
フ
― Fψ
…
)
れ
〕
竹
為
( b ) 位相遅延豊の逆投影 ( 従来手法)
(c)逆 投影 (従来手法)の 重ね合わせによる断層再構成
(d)位 相遅延生の逆伝搬 (提案 子法)
(e)逆伝般 (提案 手法)の 重ね合わせ
による断層 lll構
成
Fig。1 デ ィジ タル ホ ロ グ ラフイ ッ ク断層イメー ジング手法の概念図
この 問題 点 に つ い て ,共 体例 を挙 げ て詳 し く述
に, 得 られ た位本
H 遅延景 を そ軸 の負方向へ 正線 的
べ る。 円柱 状 の 計測物 体 に平 面 波 を入射 させ る場
に反映す る逆投影の ようすを F i g 。
1 ( b ) に示す。最
合 を考 え る。 円柱 状物体 の 軸 方 向 を メ軸 ,メ軸 と平
後 に, 入 射光 の入 射角 を変化 させ , 各 角度 の逆投
行 な波面 を もつ 平 面波 の 光軸 を そ軸,メ軸 とそ軸 そ
影 を重ね合 わせ る ことに よ り断層再構成 を達成 す
れ ぞれ に直 交 す る軸 を I軸 とし,以 降 は簡単化 の
た め χ…
そ平 面 の み につ いて 考 え る。入射 光 が 屈折
る。円柱状物体 の従来手法 に よる断層再構成 の よ
し,透 過 光 に位相 遅 延 が 生 じる よ うす を Fig。1(a)
再構成 され た円柱 状物体 の 断層 を示 す. F i g . 1 ( C )
に示 す.Fig.1(a)に 示 され る透過 光 の 位相遅 延量
の再構成 された円柱状物体 の 直径 は, F i g . 1 ( a ) の
直径 よりもイヽさ くな り誤差 が大 きじゝことがわか る。
をデ ィジ タル ホ ロ グ ラ フイに よって取得 す る。次
示す. F i g 。1 ( C ) の円形 の破 線 が
うす を F i g . 1 ( C ) に
そ こで , 本 研 究 で は逆 投影 で はな く光波 伝搬
計 算 を用 い た 断 層 再 構 成 計 算 手 法 を提 案 す る.
Fig,1(a)に
示 され る透過光の位相遅延量の取得過
4 -様
な屈 折 率 を もつ ロ ッ ドレンズ の 断層 再
構成
計測物体 は直径 5 m m , 屈
折率 1 . 4 5 7 0 で一 様 な
程 は従来 と同様 であ る. 従 来手法 で は得 られた位
ロ ッ ドレ ンズ を想定 した. ロ ッ ドレ ンズの 周 囲
相遅 延 量分 布 を じゅ うぶ ん に 活用 して いた とは
の 媒 質 は屈 折率 整合 液 と した 。屈 折率 整 合 液 の
い えなか った. 提 案手法 で は得 られた位相遅延量
屈折率 はロッ ドレンズ よ り低 く, そ の屈折率差 は
分 布 が 光 波 の 伝搬情 報 を含 んで い る こ とに着 目
す る。す なわち, 位 相遅延主 を そ軸 の 負方 向へ 光
0.0015, 0.0070, 0.0120,0.0170, 0.0220, 0,0270
波伝搬計算 をす る逆伝搬 をお こな ことに よ り, 試
る ことに よ リロ ッ ドレンズの透過光 の屈折 の度合
料 を透過 して きた光波 を再現す る。 この ようすを
F i g . 1 ( d ) に示す。逆伝般 を用 いて光路 を負方向へ
い を変 え,屈 折 が 断層再構成 に与 え る影響 を比較
辿 る こ とに よ り, 実 際 の屈折 した光路 とのずれ を
の 6通 りでお こなった.こ れ は,屈 折率差 を変 え
す るためであ る.
まず,届 折率差 が 0.0015の場合 の用折率断層lml
低減す る。 その後 は従来手法 と同様 に, 各 角度 の
像 を Fig.3に 示す。従来手法 ,提 案手法 で ロ ッ ド
逆伝般 の重ね合 わせ に よる断層再構成 をお こな う
レンズの 直径 に顕著 な違 いは見 られな い。 これ は
ようすを F i g . 1 ( e ) に
示す. F i g . 1 ( a ) と( C ) , ( a ) と
光波 がほ とん ど屈折 しな いた めであ る。
( c ) をそれぞれ比較 す る と, 円 柱状物体 の直径 の誤
差 は従来手法 と比 べ提案 手法 の方 が低減で きるこ
像 を Fig.4に 示す.提 案手法 と従来手法で ロ ッ ド
とが期待 され る.
レンズの 直径 に違 いが あ る ことが わか る。 これ は
3 シ ミュレー ション
)ぷ
折率差 が大 き く光波 の屈折 を考慮す る必要が あ
提案手法 の有用性 を示すため シ ミュレー シ ョン
をお こなった, F i g . 2 に 示 す ような実験光学系 を
次 に,屈 折率差 が 0.0170の場合 の屈折率断層画
るか らであ り,提 案手法 の有用性 を示 して い る。
提案手法 の有用性 を定量的 に示す ために ロ ッ ド
ズ 2 . 物m と し, 回 転角度 は 0 . 2 度 とした。 ロ ッ ド
レンズ の 直径 を評価 した。 ロ ッ ドレ ンズ中心 を通
る直線の屈折率 プ ロ ファイルを と り,そ の半値全
レンズの透過光 と参照光 を干渉 させ , 位 相 シフ ト
幅 を直径 とした。 ロ ッ ドレンズの 直径 の 計測誤差
デ ィジ タルホ ロ グラフイで計測物体 に よる位相遅
を縦軸 に,ロ ッ ドレンズ と屈折率整合液 の屈折率
延主 を計測 し, 提 案手法 と従 来手法 の 断) ■
1専
構成
差 を横軸 に と り,提 案手法 と従 来手法 の1専
構成結
想 定 して い る. 撮 像素子 は 2 5 9 2 画 素, 画 素サイ
計算 をお こなった。なお, 計 算 の簡略化 のため試
︱ ︱
同︱ ︱ 川 門 盟 日 ■ ■ ■ ■
料 は ノ方 向 には構造 を もた な い もの とした。 その
ため撮像素子 の画素や画素サイ ズは 1 次 元 で示 し
てい る.
竹メ
Ю
ギ!
r
R
側田
m
a
e
B
恩
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W
[
瑠如
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h
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貯
□﹂
1率
断層像
従来 子法 に よ る屈折
附
づれ鵠2艦
Fig.2 シ ミュ レー シ ョンで想定 した光学 系
│1折
手法によるオ
率断片
イ
像
(b)rt案
F i g . 3 屈 折率断層画像 の 比較 ( 屈折率 差 が
0 , 0 0 1 5 の場合 )
6 5 8 4 6
5
5
4
5
5
5
4
︲︲
同十 ︱ 口 ■ ■ ■ ■ ■ ■
日門日川H盟■■■■■
(a)従 来 r法 によるlJ折 率断膚像
︲
6
4
6
5 5
ーーーー
ローーーー田幽■■■■■
Fig.6 内 部 欠 陥 を含 む ロ ッ ドレンズの 屈
折率分布
( b ) 提案手法 による屈折率断層像
F i g . 4 屈 折率 断層画像 の比 較 ( 屈折率差 が
0 . 0 1 7 0 の場合 )
お こなった。計測物体 であ る内部 欠陥 を含 む ロ ッ
ドレンズの屈折率分布 を Fig.6に 示す.ロ ッ ドレ
ンズは直径 5mm,屈 折率 1.4556とし,内 部 の球状
m,屈 折率 1.4856と した .ロ ッ
欠陥 は1巨
径 125μ
果 を プ ロ ッ トした グ ラフを F i g . 5 に 示 す. F i g . 5
ドレンズの 周 囲 の 屈 折率整合液 は屈 折率 上4555
よ り, 屈 折率 差 が 大 き くな り屈折 の 影 響 が 強 くな
とした。
得 られた屈折率断層像 を Fig.7に ,内 部 欠陥部
くこ とが わか る. 提 案 手法 の 誤 差 は従 来 手法 の 誤
分 を拡 大 した屈 折率 断層像 を Fig.8に 示 す。 こ
差 と比 べ , 最 大 で 0 . 5 5 9 m m 低 減 させ る こ とに成
の球状欠陥 の直径 を半値全幅 に よ り評価 した とこ
功 した。 この こ とは, 計 測 の際 の 屈 折率整 合液 の
ろ,提 案 手法 に よ り再構 成 され た 直径 は 92.争m
選 択 の 幅 が広 が る こ とを意 味 して い る.
であった.一 方,従 来手法 の球状 欠陥の屈折率分
布 は有意 な ピー クを もたず ,半 値全幅 に よる評価
︵E E ︶ のC聖
るに つ れ , 再 構 成 され た 直径 の誤 差 が 増 大 して い
がで きなか った.こ の結果 か ら,提 案手法 を用 い
る ことに よって ,球 状欠陥 の断層形状 の再構成 が
Oe
Proposed method
X Conventional rnethod
O留 ぅの価OE ち
可能 となった とい える。
5 ま とめ
I
X
る も E oも 弱 ち
卜
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l
_
屈折 の影響 が 強 い物体 を対象 としたデ ィジタル
I
ホ ロ グ ラフ イック トモ グ ラフイ言卜測 にお い て誤
│
│
l
│
差 を低減す る断層再構成計算手法 を提案 し,直 径
5mmの ロ ッ ドレ ンズの 計測 シ ミュ レー シ ョンを
l
0.0070 00120 0,0170 00220 00270
Refractive index ditterence
お こな い,直 径 の計測誤差 を低減 させ る ことに成
F i g , 5 試 料 ( ロッ ドレンズ) と 屈折率整合
液 との屈 折率差 とロ ッ ドレズの直径 の誤差
の関係
功 した。 また,内 部欠陥 を もつ ロ ッ ドレンズの計
測 シ ミュレー シ ョンにおいて も提案手法 の有用性
を示す ことに成功 した.提 案手法 を用 い るこ とに
よ り,従 来手法 では計測す ることので きなか った
大型物体や屈折率変化 の大 きい物体 な どの計測が
4 . 1 内 部欠陥 を含むロッ ドレンズの断層再構成
提案手法 は計測物体 の屈折率分布 が
一様 でな い
場合 も適用可能で あ るこ とを示すため, 内 部欠陥
を含 む ロ ッ ドレンズの再構成 シ ミュレー シ ョンを
可能 とな ることが期待で きる。現在 は光学実験 を
お こな い,提 案手法 の有用性 を実験 的 に示す こ と
を試 みて い る。
謝辞
8
3
7
4
財 団 の 助成 を受 け ま した。 こ こに記 し,感 謝 の 意
を表 します 。
1
4
4
4
ー
ロー 川 川 = 納 圏 E E ■
本研 究 の遂 行 にあた り,公 益財 団法人 高柳 記念
8
3
7
4
1
4
4
4
︱
口川︱日=M幽■■■
(a)従 来 手法 による肘折率断層像
│1折
率断片1 像
( b ) 提案手法によるオ
F i g . 7 内 部 欠 陥 を 含 む ロ ッ ドレ ン ズ の 屈
折率断層画像 の比較
参考文献
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Hidenobu Arimoto,
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フ ィ ッ ク トモ グ ラ フ ィ に よ る 3 次 元 振 幅 透 過
8
3
7
4
1
4
4
4
ーー
ロー ー 川 = 脱 圏 ■ ■ ■
率 分 布 再 構 成 実 験 ,"日本 光 学 会 年 次 学 術 講 演
演予楠集 ,
会 Optics&Photonics Japan 2011講
P13(2011).
4 ) 北 澤 貴 宏 , 野 村 孝 徳 , “デ ィ ジ タ ル ホ ロ グ ラ
フ ィ ッ ク トモ グ ラ フ ィ に よ る屈 折 率 断 層 言ト
測 の た め の 光 波 伝 般 を用 い た 断 層 再 構 成 計
算 手 法 , " 日本 光 学 会 年 次 学 術 講 演 会 O p d c s
&Photollics Japan 2012講
8
3
7
4
演予オ
高集 , 23pD3
(2012).
5)TakahirO Kitazawa and Takanori Nomura,“
fractivc indcx mcasurcmcnt of internal defccts
by digital holographic tomography using rc―
vith lightwavc
constructioll calculation IIlethod、
propagationf'The SecOnd Japan―
Korca Work―
1
4
4
4
shop on E)igital Holography and lnfomation
Photonics Technical Digest,C014(2012).
( b ) 提突 子法 に よるね! 折率断層像 の内 部欠
陥部分
Fig.8 内 部 欠陥 を拡 大 した屈折率断層画
像 の比較
Rc―
ーー
︱
ロー ー 川 ︱ 樹 圏 ■ ■ E
せ折率断層像 の内部欠
( a ) 従来手法 に よるた
陥部分