2015 年8月 25 日 病気の経験と健康に対する意識 ~ 病気になる前にしておけばよかったことの1位は「ストレスをためない」こと ~ 『ライフデザイン白書 2015 年』の調査より 第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所 (社長 矢島 良司)では、全国の 18~69 歳の男女 7,256 人に対して「今後の生活に関する アンケート調査」を実施し、その分析結果を元に『ライフデザイン白書 2015 年』を発刊い たしました。 9月が厚生労働省の定める「健康増進普及月間」であることにちなみ、この調査結果の中か ら健康の分野に関するデータをご紹介します。 本リリースは、当研究所ホームページにも掲載しています。 URL http://group.dai-ichi-life.co.jp/cgi-bin/dlri/ldi/total.cgi?key1=n_year ≪調査結果のポイント≫ 病気・ケガの経験 (P.2) ●過去5年間に入院・手術を伴う病気・ケガをした人は13%。 病気・ケガによって生じた状況 (P.3・4) ●三大疾病の経験者はそれ以外の病気やケガの経験者に比べて、「今後の人生や万が一の ことについて深く考えた」割合が特に高い。 ●「働き方を変えざるを得なかった」「家事や子育てに支障が生じた」割合は若い世代ほど高い。 病気になる前にしておけばよかったこと (P.5・6) ●「ストレスをためない」が29%で最多。 ●三大疾病の経験者はそれ以外の病気の経験者に比べて「定期的に健康診断を受ける」の 割合が特に高い。 健康に関して心がけていること (P.7・8) ●「睡眠や休養」「栄養や食事内容」が約半数、それ以外は3割前後。 ●男性のほうが心がけている割合が低い傾向。 ●三大疾病の経験者は「栄養や食事内容」の割合が特に高い。 ●「ストレスをためない」は病気の経験にかかわらず3割台にとどまる。 ≪調査の概要≫ 第一生命経済研究所は、生活者の意識や行動の現状と変化をとらえるため、1995 年より 「今後の生活に関するアンケート」を実施し、『ライフデザイン白書』を出版してまいりま した。第8回目となる今回は、 「家族」「地域」「消費」「就労」 「健康・介護」 「人生設計」 という、ライフデザインにかかわる基本的な分野について調査しました。 この調査の健康に関する分野の結果の中から、病気によってもたらされる生活への影響 や健康のための心がけなどに関して詳しくご紹介します。 ※『ライフデザイン白書 2015 年』については、最終頁にご案内があります。 また、調査結果の一部は以下でもご紹介しております。 ニュースリリース「『ライフデザイン白書 2015 年』の概要」2015 年7月 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/ldi/2015/news1507.pdf ≪「今後の生活に関するアンケート」の概要≫ 調査対象 全国の満 18~69 歳の男女個人 調査実施期間 2015 年1月 29 日~30 日 抽出方法 調査機関の登録モニター約 118 万人から国勢調査に準拠して 地域(10 エリア)×性・年代×未既婚別にサンプルを割付 調査方法 インターネット調査 有効回答数 7,256 サンプル 調査機関 株式会社マクロミル ≪回答者の主な属性≫ 性別 年代 (単位:%) 男性 49.9 女性 50.1 29 歳以下 19.1 30 代 21.2 40 代 19.6 50 代 19.0 60 代 21.2 1 病気・ケガの経験 過去5年間に入院・手術を伴う病気・ケガをした人は 13%。 図表1 過去5年間の入院・手術を伴う病気・ケガの経験(全体、性別、性・年代別) 0 5 全体 10 3.0 5.9 15 3.8 20 25 % 12.7 <性別> 男性 女性 3.7 6.2 2.3 4.6 5.6 2.9 14.5 10.8 <性・年代別> 男性29歳以下 2.1 4.1 男性30代 1.0 男性40代 7.3 5.2 1.5 4.4 5.2 男性50代 10.6 3.5 4.3 13.5 10.2 6.1 男性60代 4.2 9.6 14.6 10.2 4.0 23.8 0.6 女性29歳以下 3.5 女性30代 1.0 女性40代 女性50代 女性60代 3.4 6.2 2.0 7.5 1.3 6.0 3.5 8.5 2.2 5.6 4.2 10.2 3.2 6.3 三大疾病 12.3 4.5 それ以外の病気 15.0 ケガ 注1:2種類以上の病気・ケガで入院・手術をしたことがある場合は、最も大きな病気・ケガについて回答 注2:「三大疾病」は「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」の合計、「それ以外の病気」は「がん・急性心筋梗塞・ 脳卒中以外の病気」の略 過去5年間に病気やケガで入院または手術をしたことがあるかどうか、また、ある場合 にはその原因となった病気やケガが何であったかをたずねました。その結果、 「がん」1.9%、 「急性心筋梗塞」0.4%、「脳卒中」0.7%を合わせた三大疾病が 3.0%、「がん・急性心筋 梗塞・脳卒中以外の病気」 (以下、それ以外の病気)が 5.9%、ケガが 3.8%であり、計 12.7% の人に入院・手術を伴う病気・ケガの経験がありました(図表1)。一方、「過去5年間 に入院・手術をしたことはない」と答えた人は 87.3%でした。 性別にみると、三大疾病、それ以外の病気、ケガのいずれにおいても、男性の割合が女 性の割合を上回っています。 性・年代別にみると、男性では三大疾病やそれ以外の病気の割合が特に高いのは 60 代で すが、ケガの割合が最も高いのは 29 歳以下です。女性では年齢が上がるほど三大疾病の割 合が高くなっています。 2 病気・ケガによって生じた状況① 三大疾病の経験者はそれ以外の病気やケガの経験者に比べて、 「今後の人生や万が一のことについて深く考えた」割合が特に高い。 図表2 病気・ケガによって生じた状況(病気・ケガの経験別)<複数回答> 0 10 20 今後の人生や万が一のことについて 深く考えた(考えている) 25.9 働き方(勤務時間・形態、仕事の内容など) を変えざるを得なかった 11.0 11.2 仕事を辞めざるを得なかった 10.8 9.1 将来の見通しが立たなかった(立たない) 9.9 7.5 5.4 遠くの病院に行かざるを得なかった(得ない) 7.1 精神的に頼る人がいなかった( いない) 6.0 7.8 7.0 病気や病院・医師に関する情報が 十分に得られなかった(得られない) 7.6 6.6 5.9 治療に適した病院・医師が 見つからなかった(見つからない) 38.3 29.6 4.9 4.9 2.5 2.6 18.3 14.5 14.8 12.0 10.3 7.5 家事や子育てに支障が生じた(生じている) 医療費が高いために受けたい治療を 受けられなかった(受けられない) 50 % 40 21.1 18.4 16.7 収入が減った 入院時や自宅療養時などに 身の回りの世話をしてくれる人がいなかった(いない) 30 11.1 三大疾病 それ以外の病気 ケガ 7.8 6.4 3.3 3.2 3.0 32.1 この中にあてはまるものはない 43.1 46.2 注1:過去5年間に病気・ケガで入院・手術をしたことがある人対象 注2:全体の結果については 2015 年7月発表のニュースリリース「『ライフデザイン白書 2015 年』の概要」に掲載 過去5年間に入院または手術を伴う病気・ケガをしたと答えた人に対し、その病気・ケ ガをしたことによってどのような状況になったか(または現在なっているか)をたずねま した。図表2で病気・ケガの経験別にみると、三大疾病の経験者はそれ以外の病気やケガ の経験者に比べて、 「今後の人生や万が一のことについて深く考えた」の割合が特に高くな っています。ときに命にもかかわる三大疾病になったことを契機に、人生を見つめ直す人 が多いことが示唆されています。 また、この項目と同様に今後のことに関する「将来の見通しが立たなかった」という項 目や、仕事に関係する「働き方を変えざるを得なかった」「仕事を辞めざるを得なかった」 という項目などの割合も、三大疾病の経験者では比較的高くなっています。 3 病気・ケガによって生じた状況② 「働き方を変えざるを得なかった」「家事や子育てに支障が生じた」 割合は若い世代ほど高い。 図表3 病気・ケガによって「働き方を変えざるを得なかった」「仕事を辞めざるを得なかった」 「家事や子育てに支障が生じた」人の割合(全体、性・年代別)<複数回答> 25% 20.9 働き方(勤務時間 ・形態、仕事の内 容など)を変えざる を得なかった 20 15.6 16.6 14.8 13.7 15 12.4 11.6 10 11.5 12.5 10.9 10.6 9.2 5 仕事を辞めざるを 得なかった 12.0 7.1 6.3 5.9 4.3 家事や子育てに 支障が生じた (生じている) 0.6 0 男性40代 以下 男性50代 男性60代 女性40代 以下 女性50代 女性60代 注:過去5年間に病気・ケガで入院・手術をしたことがある人対象 図表3には、病気・ケガによって生じた状況のうち、仕事に関する2項目「仕事を辞め ざるを得なかった」 「働き方を変えざるを得なかった」と家事・子育てに関する1項目「家 事や子育てに支障が生じた」を性・年代別に示します。 これをみると、 「働き方を変えざるを得なかった」と「家事や子育てに支障が生じた」と 答えた割合は、男女とも高い順に 40 代以下、50 代、60 代の順となっています。若い世代 の人が病気になると、仕事や家事・子育てに影響が及びやすいことがわかります。 4 病気になる前にしておけばよかったこと① 「ストレスをためない」が 29%で最多。 図表4 病気になる前にしておけばよかったこと(全体、性別)<複数回答> 0 10 20 30 ストレスをためないようにする 23.0 22.3 23.8 早い段階で治療する 19.6 19.6 19.6 栄養や食事内容に気をつけて食事をとる 睡眠や休養を十分とる 15.5 18.0 20.0 16.1 16.2 16.0 定期的に健康診断を受ける 13.9 13.8 14.1 経済的な準備をする 12.6 11.0 14.7 病気や病院に関する情報を収集する 12.4 タバコを吸いすぎない・吸わない 5.7 17.8 全体 10.7 11.4 9.9 定期的に運動やスポーツを行う 10.0 お酒を飲みすぎない・飲まない 6.5 男性 女性 12.8 9.5 8.8 10.2 早寝早起きなど規則正しい生活を心がける その他 40% 28.9 27.7 30.4 0.8 0.5 1.1 31.8 29.9 特にない 34.2 注:過去5年間に病気で入院・手術をしたことがある人対象 過去5年間に入院または手術を伴う病気をしたと答えた人に対して、その病気になる前 に何をしておけばよかったと思うかをたずねました。 全体では、 「ストレスをためないようにする」が 28.9%で最も多く、次に「早い段階で治 療する」 「栄養や食事内容に気をつけて食事をとる」「睡眠や休養を十分とる」が2割前後 となっています(図表4) 。 「特にない」と答えた人は 31.8%です。 性別にみると、 「特にない」の割合は女性に比べて男性でやや低くなっています。つまり、 男性のほうが病気になる前にしておけばよかったと思っていることがやや多いといえます。 特に「タバコを吸いすぎない・吸わない」「お酒を飲みすぎない・飲まない」の割合は女性 より男性でかなり高く、喫煙・飲酒を控えておけばよかったと思っている男性が比較的多 いことがわかります。 5 病気になる前にしておけばよかったこと② 三大疾病の経験者はそれ以外の病気の経験者に比べて 「定期的に健康診断を受ける」の割合が特に高い。 図表5 病気になる前にしておけばよかったこと(病気の経験別)<複数回答> 0 10 20 30 28.1 29.3 ストレスをためないようにする 20.8 早い段階で治療する 24.1 18.6 20.1 栄養や食事内容に気をつけて食事をとる 17.6 18.2 睡眠や休養を十分とる 24.4 定期的に健康診断を受ける 11.9 16.4 経済的な準備をする 12.7 11.9 13.0 病気や病院に関する情報を収集する 19.1 タバコを吸いすぎない・吸わない 9.0 三大疾病 12.3 定期的に運動やスポーツを行う 9.9 それ以外の病気 13.7 お酒を飲みすぎない・飲まない 8.2 9.4 9.5 早寝早起きなど規則正しい生活を心がける その他 40% 0.5 0.9 27.4 特にない 34.1 注:過去5年間に病気で入院・手術をしたことがある人対象 図表5には、病気になる前にしておけばよかったことを病気の経験別に示します。これ をみると、三大疾病の経験者はそれ以外の病気の経験者より「特にない」の割合が低くな っており、病気になる前にしておけばよかったと思うことが多いといえます。三大疾病の 経験者における割合がそれ以外の病気の経験者における割合より特に高いのは、「定期的 に健康診断を受ける」「タバコを吸いすぎない・吸わない」「お酒を飲みすぎない・飲ま ない」です。健康診断をきちんと受けたり喫煙・飲酒を控えたりしておけば病気にならな かったかもしれないと後悔している人が、三大疾病の経験者では比較的多いと想定されま す。 6 健康に関して心がけていること① 「睡眠や休養」「栄養や食事内容」が約半数、それ以外は3割前後。 男性のほうが心がけている割合が低い傾向。 図表6 健康に関して心がけていること(全体、性別)<複数回答> 0 20 40 60 % 53.1 睡眠や休養を十分とる 47.3 58.9 48.3 栄養や食事内容に気をつけて食事をとる 39.1 57.5 32.7 32.9 32.6 タバコを吸いすぎない・吸わない 31.2 30.1 32.2 定期的に健康診断を受ける 30.6 ストレスをためないようにする 26.0 35.2 お酒を飲みすぎない・飲まない 29.9 29.7 30.0 定期的に運動やスポーツを行う 27.6 30.2 25.0 26.5 早寝早起きなど規則正しい生活を心がける 22.3 30.7 その他 0.4 0.4 0.4 全体 男性 女性 15.5 特に何もしていない 19.2 11.7 では、病気の経験がある人もない人も含め、自身の健康のためにはどのようなことを日 頃から心がけているのでしょうか。 全体では「睡眠や休養を十分とる」「栄養や食事内容に気をつけて食事をとる」の割合が それぞれ半数前後ですが、それ以外の6項目は3割前後に過ぎません(図表6) 。 性別にみると、 「睡眠や休養を十分とる」「栄養や食事内容に気をつけて食事をとる」 「ス トレスをためないようにする」などの多くの項目において、男性の割合が女性の割合を下 回っています。男性のほうが健康に心がけていないといえます。ただし、 「定期的に運動や スポーツを行う」は、女性より男性のほうが高くなっています。 7 健康に関して心がけていること② 三大疾病の経験者は「栄養や食事内容」の割合が特に高い。 「ストレスをためない」は病気の経験にかかわらず3割台にとどまる。 図表7 健康に関して心がけていること(病気の経験別) 0 20 60 % 40 54.1 56.3 52.9 睡眠や休養を十分とる 58.0 栄養や食事内容に気をつけて食事をとる 53.2 47.7 35.7 35.2 32.5 タバコを吸いすぎない・吸わない 45.4 定期的に健康診断を受ける 41.5 30.1 34.6 33.6 30.3 ストレスをためないようにする 35.8 34.5 お酒を飲みすぎない・飲まない 29.4 定期的に運動やスポーツを行う 28.4 29.7 27.4 早寝早起きなど規則正しい生活を心がける 26.9 30.2 26.2 その他 0.0 0.4 0.4 特に何もしていない 三大疾病 それ以外の病気 ない 10.0 10.4 16.0 図表7には、健康に関して心がけていることを病気の経験別に示します。これをみると、 「特に何もしていない」割合は、三大疾病またはそれ以外の病気の経験がない人よりある 人のほうが低くなっています。病気を経験した人はそうでない人より、さまざまな面で健 康に気をつかっているといえます。特に、三大疾病やそれ以外の病気を経験した人では、 「栄 養や食事内容に気をつけて食事をとる」 「定期的に健康診断を受ける」の割合が病気の経験 がない人に比べ高くなっています。 一方、病気になる前にしておけばよかったこと(前述)としてあげられた割合が最も高 かった「ストレスをためないようにする」ことを日頃から心がけている割合は、病気の経 験にかかわらず3割台にとどまっています。 8 ≪研究員のコメント≫ 過去5年間に入院や手術を伴う病気・ケガを経験した人が、病気やケガによって生じた 状況としてあげている割合が最も高いのは「今後の人生や万が一のことについて深く考え た」です。病気・ケガの経験がライフデザインを考えるきっかけの一つになっていること がうかがえます。また、若い世代においては病気・ケガによって「働き方を変えざるを得 なかった」 「家事や子育てにも支障が生じた」と答えた割合も比較的高く、仕事や家庭にも 問題が生じることがわかります。大きな病気・ケガをすることによって現在・将来の生活 のさまざまな面に影響が及ぶことは間違いないでしょう。 病気を経験した人のうち、最も多くの人が病気になる前にしておけばよかったと思って いるのは「ストレスをためないようにする」です。この項目への回答割合は、「早い段階で 治療する」という医療的な面や「栄養や食事内容に気をつけて食事をとる」 「睡眠や休養を 十分とる」という生活習慣の面に関する項目などへの回答割合を上回っています。病気を 経験した人にとって“ストレスは万病のもと”なのかもしれません。 しかし、 「ストレスをためないようにする」ことを健康のために日頃から心がけている人 は、病気の経験にかかわらず3割台しかいません。ストレスをためないことの難しさがう かがえます。メンタルヘルスの維持・管理は個人的にも社会的にも大きな課題といえます。 また、病気を経験していない人は病気を経験した人に比べて健康に関して心がけている ことが全体的に少ない傾向がみられます。病気になってから後悔しないよう健康に心がけ ることの重要性が、改めて浮き彫りになったといえるでしょう。 (研究開発室 上席主任研究員 水野映子) 9 ≪書籍のご案内≫ 【編:第一生命経済研究所】 『ライフデザイン白書 2015』 2015 年 7 月に『ライフデザイン白書 2015』 (編:第一生命経済研 究所、発行:ぎょうせい)を発刊しました。本書は、第一生命経済 研究所が独自に実施している全国規模のアンケート調査をもとに、 生活者の視点で生涯設計を考え、人々の生活実態や生活意識を時系 列で分析したものです。今回の白書も、図表を多く取り入れ、より わかりやすく見やすい内容にしています。 高校や大学における社会科・家庭科・ライフデザイン学科の学習 教材であると共に、記事などの裏づけ資料としてもご活用できる一 書となっています。皆さまの生活に役立つ内容が盛り込まれていま すので、ぜひご一読願います。 10
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