自然エネルギーによる持続可能な社会の構築に向けた提言 ~自然エネルギーによる強靭なまちづくり~ 内閣総理大臣 安倍 晋三様 指定都市 自然エネルギー協議会 我々「指定都市自然エネルギー協議会」は、約2,750万人の市民を抱える エネルギーの大消費地として、地球温暖化対策、自然エネルギーの最大限の導入、 スマートコミュニティの構築などに取り組み、持続可能な低炭素社会を次世代 へとつないでいく使命がある。 また、喫緊の課題として、東日本大震災、熊本地震といった大規模災害での教 訓を活かし、発生が想定される首都直下型地震、南海トラフ地震等に備えて、分 散して発電が可能な自然エネルギーを導入した、強靭なまちづくりを進めてい く必要があると認識している。 一方、国際社会では、COP21において、新たな地球温暖化対策の枠組みで ある「パリ協定」に合意しており、我が国においても、新たな地球温暖化対策計 画を閣議決定し「伊勢志摩サミット」において「G7はパリ協定の2016年中 の発効という目標に向けて取り組む」ことを宣言している。 我が国が、強靭なまちづくりを推進するとともに、パリ協定の目標値を実現し、 国際社会での役割を果たすには、自然エネルギーを最大限導入することが不可 欠であり、国は、高い導入目標の設定だけではなく、各省庁が一層緊密に連携し て、市場への導入につながるあらゆる手段を活用する必要がある。 我々「指定都市 自然エネルギー協議会」は、国と一体となり、自然エネルギ ーの意欲的な導入を図り、『持続可能な社会の構築 ~自然エネルギーによる強 靭なまちづくり~』を進めていくために提言する。 1 提言1.自然エネルギーの最大限の導入に向けた目標値の設定 ・2015年7月に策定された「長期エネルギー需給見通し」では、総発電電力 量に占める2030年の自然エネルギーの割合が22%から24%と示された が、十分な目標値とは言い難い。次期の電源構成においては、自然エネルギー の最大限の導入に向け、30%程度の積極的な目標値を示せるよう、 「第5次エ ネルギー基本計画」の内容を検討すること。 提言2.自然エネルギーの最大限の導入に向けた対策 <1.地産地消型の分散型エネルギーの普及拡大> ・平時の低炭素化だけではなく、災害時のエネルギーセキュリティの確保といっ た防災の観点も踏まえ、系統に接続した分散型エネルギーに加え、系統に接続 していない状態(オフグリッド)での地産地消型の自然エネルギーの導入につ いても省庁横断的に支援を行うこと。 1.エネルギーの効率的な利用に向けた支援 大型蓄電池、エネルギーマネジメントシステム(EMS)、バーチャルパ ワープラント(VPP)、ゼロエネルギーハウス・ゼロエネルギービル(Z EH・ZEB)など 2.未利用熱やコージェネレーションシステムの効率的な利用に向けた支援 排熱、太陽熱、地中熱、下水熱の有効利用、熱導管を含めた熱利用システ ムの実証・導入など 3.イノベーションの実現に向けた技術開発への支援 ・都市部においては、中小規模の太陽光発電が分散型電源として有力なエネルギ ー源であるため、太陽光発電設備や蓄電池、EMS等の複合的な活用など、自 然エネルギーを効率的・効果的に導入する際に活用しやすい支援を行うこと。 また、生ごみバイオマスや下水汚泥、建築廃材などのバイオマス発電の導入ポ テンシャルも高いが、立地規制をはじめ、様々な課題がある。資源を最大限活 用するため、規制緩和や地域の取組の支援に努めること。 2 ・日本の国土における森林率は約7割と世界有数の森林大国であるが、その資源 を活かしているとは言い難い。本年5月に林野庁より新たな「森林・林業基本 計画」が発表されているが、木質バイオマスの普及や林業の振興に向けて、具 体的な取組(林道整備、機械化、間伐材の収集システム構築、規制緩和等)を 早急に進めること。 <2.FIT制度の適切な運用> ・FIT制度が自然エネルギーの普及拡大に大きく貢献していることに鑑み、当 面は制度を堅持しつつも、さらなる自然エネルギーの拡大のためには、賦課金 の見直しなど、国民の理解を得られるよう、引き続き制度の改善に努めること。 ・FIT法改正を踏まえた制度設計においては、今後入札対象となる電源や規模 などの要件を検討する中で、入札が国民負担の軽減に繋がっているか等の成果 を検証する仕組みを構築した上で、地域の自然エネルギーの普及を妨げないよ う実施すること。 ・FIT法改正前第5条の接続義務と優先給電が削除されたことは、自然エネル ギーの普及が後退することに繋がりかねない。自然エネルギーの普及拡大に向 け、円滑な系統連系の確保に必要な措置を講じること。 ・太陽光パネルの耐久年数経過やFIT期間終了等に備え、リサイクル技術の確 立、再利用を円滑に実施できる制度、安全な廃棄や処分のルールなどの検討を 進めること。 ・住宅用(10kW未満)太陽光発電設備の余剰買取期間満了が大量に発生する 「2019年問題」については、太陽発電設備を継続して活用するため、蓄電 池の導入や自家消費を後押しする支援など、必要な措置を講じること。 3 <3.エネルギーシステム改革の着実な推進> ・電力小売全面自由化が本年4月より開始され、更に来年4月にはガス小売全面 自由化が予定されている。需要家自らが「えらぶ」ための充分な情報を提供し、 混乱を招くことがないよう積極的な広報や普及啓発に努め、事業者に対して は適切な指導を行うこと。 ・電力システム改革により、市域内の温室効果ガスの削減量を把握する際に必要 となるデータの収集が困難になっている。そのため、消費電力量や自然エネル ギーの発電規模など、各種エネルギーデータを国が責任をもって提供する仕 組みを早急に確立すること。 ・2016年5月時点で、電源構成を開示している小売事業者は4社に1社程度 に留まっている。需要家である国民の、電源種別を「知る」、サービスを「え らぶ」といった権利を守るため、全小売事業者に対して電源構成の開示を義務 化すること。 ・電力広域的運営推進機関に対し、今年度定める「広域系統長期方針」の中で、 北本連系線、中国九州間連系線などの地域間連系線や既設の電力系統を最大 限活用し、北海道、九州エリアなど、自然エネルギー導入適地からの送電網へ の接続可能量を最大化することを位置づけるよう、また、中立性・透明性を担 保した運営を行うよう、国が指導すること。 ・従来の託送料金制度では電力系統の双方向化等が考慮されておらず、分散型エ ネルギーの導入に託送料金のコストが大きな障壁となっている。そのため、分 散型エネルギーの普及を後押しするよう、抜本的な見直しを進めること。 4 提言3.水素社会の実現 ・太陽光やバイオマスなど都市に賦存する自然エネルギー由来の電力を活用し た水素を「ためる」、 「はこぶ」、 「つかう」ことは、社会構造を変えうる大きな 可能性を持つ。このため、2016年3月に改定された「水素・燃料電池戦略 のロードマップ」に基づき、水素ステーションなどのインフラ整備や、住宅用・ 産業用燃料電池の利活用を着実に推進し、水素社会の実現をめざすこと。 ・水素を「ためる」技術開発を積極的に進めるとともに、FCVやFCバスの導 入を促進し、災害時には自動車からの外部給電(VtoX)といったオフグリ ッドによる分散型電源として利用するなど、 「はこぶ」 「つかう」仕組みの構築 に対して支援すること。 5 平成28年7月19日 指定都市 自然エネルギー協議会 会 長 京都市長 門川 副会長 福岡市長 髙島 副会長 浜松市長 鈴木 康友 幹 さいた ま 市長 清 水 勇人 札幌市長 秋元 克広 仙台市長 奥山 横浜市長 林 文子 川崎市長 福田 紀彦 相模原 市 長 加山 俊夫 新潟市長 篠 田 静岡市長 田辺 名古屋 市 長 河村 たかし 大阪市長 吉村 洋文 堺 市 長 竹山 修身 神戸市長 久元 喜造 岡山市長 大森 雅夫 広島市長 松井 一實 北九州 市 長 北橋 健治 熊本市長 大西 一史 事 6 大作 宗一 郎 恵美 子 昭 信宏
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