Mortgage-Backed Securities

ファイナンスIV2008#004.nb
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13. MBS (Mortgage-Backed Securities)
モーゲージ証券
à 損保ジャパン・アセットマネジメント
http://www.sjam.co.jp/college/mbs.htm
ü MBSとは
モーゲージ証券(以下MBSといいます)とは、主に住宅ローンを担保に発行された証券であり、米国
では国債と並ぶ大きな市場を形成しています
MBSには普通の債券とは異なる特徴があり、固有のリスクをしっかり認識する必要がありますが、高
い流動性と信用力、高い利回りなど、魅力ある投資対象であるといえます
高い流動性
MBSは米国債券残高の1/3以上を占め、米国国債に匹敵する大きな市場を形成しています。
※出典:リーマン・ブラザーズ社インデックスデータに基づき当社作成
高い信用力
MBSの多くは、米国政府または米国政府系機関の保証が付いており、これらは最上級(AAA)相当
の高い信用力があります
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出典:TCW資料
※MBSの主な発行体につきましては、MBSの発行者をご参照下さい。
※上記の他、GNMA,FHLMC,FNMAが保証・発行したMBSを担保として発行されたCMO(モーゲージ担
保債務保証書)の残高が約6193億ドルありますが、統計上の2重算入を避けるため除外してあります。
高い利回り
MBSは米国国債などの普通債券と比べて、相対的に高い利回りで投資できます
※出典:リーマン・ブラザーズ社インデックス及びシティグループ世界国債インデックス データに基づ
き当社作成。
※デュレーション(金利感応度)が近いと考えられるゾーンで比較しています
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ü MBSのリスク
市場リスク
MBSの市場利回りは、ほぼ米国国債の市場利回りの推移に連動して変動していますが、利回り格差
(スプレッド)も時期により変動します。
したがって、MBSには米国国債と同様の市場リスクがあると同時に、米国国債とのスプレッドの変動
リスクがあります。
一般的に比較されることが多い30年物FNMAパス・スルー証券の利回りと、5年物米国国債の利回
りの推移を見てみると右図のようになっています。
※出典:Bloomberg
期限前償還リスク
ほとんどのMBSは毎月利払いと元本の一部償還があり、年1∼2回利払いで満期に一括して元本が償
還される普通の債券とは投資後のキャッシュ・フローが全く異なるため、リスクの把握などでも独特の
計算を行わなければなりません。
また、住宅ローンの借り手は金利低下に伴う借り換えに代表されるように任意に元本の一部または全額
を繰り上げ返済できるため、満期までの期間が不確定であるということから、期限前償還リスクと呼ば
れるMBS固有のリスクが存在します。
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MBSの期限前償還リスクの一例として以下のようなケースがあり、ネガティブ・コンベクシティ(負
の凸面効果)と呼ばれています。
(この他、高利回りで購入したMBSが低金利期に期限前償還されることにより、償還された元本の再
投資利回りが低く なってしまう、再投資リスクなども期限前償還リスクの一例と考えられます。)
MBSの期限前償還は、以下のような要因で発生することが多いと考えられています。
これらの不確定要因のリスクプレミアムが存在するため、米国国債と同じ信用力でありながら、より高
い利回りで投資できると考えられます
期限前償還の発生要因の一例
住宅ローン借り換え需要
・金利水準低下による毎月の返済額削減効果
・イールド・カーブの形状変化による、固定・変動金利間の乗り換え
住宅の買い換え需要
・税制変更、好況による所得増加で買い換え意欲が増加
・大規模な災害による局地的な買い換え需要
・好況な地域への他地域から移転する人の増加
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ü MBSの種類
パス・スルー証券
・担保となっている住宅ローンの借りてが毎月返済する元金利をそのまま受け取るタイプのMBS。
・借り手が元本の一部または全部を繰り上げ返済した場合には、投資家の保有割合分も期限内償還され
ます。
・クーポンは固定であり、30年物、15年物が発行されており、MBS発行残高の約80%を占めて
います。
ARM(Adjustable Rate Mortgage)
・パス・スルー証券が固定クーポンであったのに対し、クーポンが指標金利に連動する変動利付モー
ゲージ証券をARMと呼んでいます。発行者は大部分がGNMA、FNMA、FHLMCのエージェン
シーです。
・指標金利には、プライムレート、米国国債1年物の利回り平均(CMT)、全米各地域のS&L(貯
蓄貸付組合)の調達コストを連邦住宅金融銀行(FHLB)が計算したもの(COFI)等がありま
す。
CMO(モーゲージ担保債務保証書 Collateralized Mortgage Obligation)
・既発のパス・スルー証券を担保にREMICと呼ばれる一種のSPC(特別目的会社)から発行さ
れ、担保となっているパス・スルー証券の利払い及び償還のキャッシュ・フローを人為的に組み替えた
様々なクラスまたはトランシェに分けて発行されます。
・パス・スルー証券は30年物または15年物中心ですが、CMOとして組み替えることにより、クー
ポン、平均残存期間、最終償還日、期限前償還の不確定度合いなどが自由に設計でき、投資家のニーズ
に答えることができます。
・エージェンシーのパス・スルー証券を担保としているものは、全てAAA相当の信用力があると見な
されています。
上記の他、パス・スルーのクーポンと元本部分を分離して発行される、IO(Interest Only)やPO(Principal Only)といわれる分離型MBSなどもあります。
ü MBSの発行の仕組み(GNMAパス・スルー証券の例)
住 宅 ロ ー ン の 毎 月 の 元 利 返 済 金 は 、 管 理 集 金 手 数 料 ( サ ー ビ サ ー ・ フ ィー ) と し て 金 融 機 関 が
0.4%(年率)、GNMAが保証料として0.1%(年率)差し引いた上で、そのまま投資家に支払
われます。したがって、元の受託ローン金利が7%の場合には、6.5%クーポンのGNMAパス・ス
ルー証券が発行されます。
また、借り手が残高の一部または全額を期限前に繰り上げ返済した場合には、投資家も持ち分に応じた
額面が償還されることになります。
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ü MBSの発行者
GNMA(通称ジニーメイ)
・政府抵当金庫(GNMA:Government National Mortgage Association)は、住宅モーゲージの流通市場
を設けモーゲージ投資を魅力ある物にすることにより、資本市場からの住宅建設資金導入を促進する国
策として1968年米国連邦政府により住宅都市開発省の100%保有会社として設立された政府機関
です。
・GNMAはMBSを発行するのでなく保証する業務のみ行っていますが、保証対象とするローンは
FHA(連邦住宅局)またはVA(退役軍人局)の保証が付いたローンのみであり、連邦政府が元利金
の完全かつ遅滞なき支払いを保証していることから米国国債と同じ信用力を持つとされています。(第
1号発行は1970年)
FNMA(通称ファニーメイ)
・連邦抵当金庫(FNMA:Federal National Mortgage Association)は、1938年に政府機関として設
立されましたが、1968年再編によりGNMAと現在のFNMAに分離されました。ニューヨーク証
券取引所に上場されている私企業の形をとっていますが、法的位置づけはGSE(Government Sponsored
Enterprise)として住宅都市開発省の規制・監督下にあり、その信用力は米国国債に準ずるとされます。
・FNMAはGNMAと異なり、政府の保証や保険の付かないローン(コンベンショナル・ローン)を
対象としてこれを買い取り、自らがMBSの発行者となります。(第1号発行は1981年)
FHLMC(通称フレディーマック)
・連邦住宅金融抵当公社(FHLMC:Federal Home Loan Mortgage Corporation)は、コンベンショナル
・ローンの組織された流通市場をつくるため1970年に合衆国議会により設立され、法的位置づけ及
び信用力はFNMAと同じく米国国債に準じるものとされています。
・FHLMCもFNMAと同様にコンベンショナル・ローンを買い取ってMBSの発行者となり、
FNMAのライバルとなっています。(第1号発行は1971年)
民間発行
・GNMA、FNMA、FHLMCの公的機関(エージェンシーと呼ばれます)以外にも、民間の銀行
等がMBSを発行する例も増加しています。第1号は1977年に「アメリカ銀行」により発行されま
した。
・民間発行のものは、政府系機関による保証はないが、プールに対する保険や信用状の活用により、
AA以上の格付けを得ているものが大部分です。
à 証券化商品
なぜ MBS 投資は難しいか?
ü キー・ポイント
経路依存性
住宅ローン債務者の行動:住宅ローンがオリジネートされた時点から現在までの「経済的」履歴に依存
非同質な住宅ローン債務者
住宅ローン債務差hの振舞い:同質ではなく,個々の債務者の特性に依存し,「合理的」行動の「規
準」が 債務者によって異なる.
ü 債務者の選択
全額繰り上げ返済
引越
借換え
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一部繰り上げ返済
延滞
デフォルト
ü MBSの商品性
通常の債券との相違点に留意する必要
monthly amortization
uncertainty of cashflow
Cashflows are dependent on interest rate trajectories.
full prepayment
partial prepayment (curtailment)
delinquency
default
à concept and terminology
ü pool factor
the remaining balance of the pool as a ratio of its original balance
ü weighted average coupon (WAC)
the average interest rate on the mortgages in the pool weighted by the principal amount of the mortgages
ü weighted average maturity (WAM)
the average remaining maturity of the underling mortgages in the pool weighted by the remaining balance of the
mortgages
ü weighted average life (WAL)
the measurement of mortgage backed securities time horizon other than maturity.
It considers the impact of all principal payments both scheduled and prepaid.
à prepayment speed
ü Single Month Mortality (SMM)
: scheduled factor at the end of month n
SFn
AFn : actual factor at the end of month n
SAFn : scheduled amortization factor (without prepayment at the end of month n)
SMMn := HSFn - AFn L ê SFn
SFn := AFn µ SAFn ê SAFn-1
ü Constant Prepayment Rate (CPR)
The monthly SMM can be converted and annualized in terms of a constant prepayment rate (CPR).
CPR := 1 - H 1 - SMM L12
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ü Public Securities Association (PSA) Standard
percent PSA
(1)
at a 0.2% CPR in the first month
(2)
at a faster rate of incrementally 0.2% CPR per month during the fist 30 months
(3)
at a constant 6.0% CPR per month at the 31st month and thereafter
100% PSA
0.07
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
year
5
10
à cashflow of mortgage with prepayment
ü setup
the original pool balance = 1
ü four scenarios
PSA = 0
50
100
200
(green)
(cyan)
(blue)
(red)
15
20
25
30
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ü mortgage balance
mortgage balance
1
0.75
principal
0.5
0.25
0
0
200
PSA
5
100
10
15
year
20
25
30 50
mortgage balance
1
0.8
0.6
0.4
0.2
year
0
5
10
15
20
25
30
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10
ü principal prepayment
principal prepayment
0.006
0.004
prepayment
0.002
0
0
200
PSA
5
100
10
15
year
20
25
30 50
principal prepayment
0.01
0.008
0.006
0.004
0.002
year
0
5
10
15
20
25
30
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11
ü total principal payment
total principal payment
0.0075
payment
0.005
0.0025
0
0
200
PSA
5
100
10
15
year
20
25
30 50
total principal prepayment
0.01
0.008
0.006
0.004
0.002
year
0
5
10
15
20
25
30
ü WAL
year
Weighted Average Life
20
15
10
5
PSA
0
50
100
200
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ü animation
PSA = 0 ~ 400
principal prepayment
0.02
0.0175
0.015
0.0125
0.01
0.0075
0.005
0.0025
year
0
5
10
15
20
25
30
à mortgage への投資と付随するリスク
ü cashflow uncertainty
mortgagor's option
full prepayment
turnover
refinance
partial prepayment (curtailment)
low for newer loans, but increase with age
delinquency
default
ü negative convexity
金利の変化に応じて
prepayment
る.
∆r −5 −4 −3 −2 −1
0
1 2 3
4
5
PSA 720 400 240 160 120 100 80 70 65 62.5 61.175
が変化す
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13
2
1.75
1.5
1.25
1
0.75
0.5
0.25
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
green : without prepayment
red
: with prepayment
金利が低下する場合
価格
上昇する.
下落することがある.
この特性は negative convexity として知られている.
通常の債券
MBS/CMO
ü prepayment の影響
prepayment が予想したスピードよりも速い場合
元本は予想したよりも早く償還
ï average life の短縮
ï yield-to-maturity の変化
bond をディスカウントで(パーを下回って)購入
average life の短縮 ï yield-to-maturity の上昇
bond をプレミアムで(パーを上回って)購入
average life の短縮 ï yield-to-maturity の低下
prepayment が予想したスピードよりも遅い場合:上と全く逆の状況
à 貸付債権担保第1回住宅金融公庫債券
ü 発行条件
概要
債券の総額
債券の金額
利率
利払期日
格付け
S&P
R&I
500億円
1億円
1.750%
毎月10日
AAA
AAA
4
5
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ü 償還の方法
受益権行使事由発生前
信託債権残高(延滞が発生している場合には延滞がないものとした場合の)と比例する形で公庫債を償
還
受益権行使事由発生後
信託財産からの元本償還金および収益配当金を受け取る.
ü 信用補完
公庫債の当初元本額500億円
信託債権
55,125,921,555円
信託債権:4ヶ月以上延滞している債権は正常債権と差替えられる.
繰上償還
未償還残高が当初発行総額の10%以下となる場合には繰上償還することができる.
信託債権の残存元本率
2001/01
100%
ü 信託財産
当初融資額総額
55,563,300,000円
当初融資額平均
19,626,740円
融資残高合計
55,125,921,555円
融資件数(債務者ベース) 2,831人
融資債権数(金利別債権ベース)4,108本
平均当初融資機関
29.9年
平均残存期間
29.6年
平均経過期間
0.3年
平均LTV
平均返済負担率
平均年収
平均金利
債務者平均年齢
78.47%
18.95%
6,984,442円
2.88%
38.4歳
ü 受益権行使事由
受益権行使事由
・住宅金融公庫が株式会社等会社更正法の適用を受ける法人となった場合(民営化)
・住宅金融公庫による公庫債債務不払いが一定期間継続した場合
民営化リスク
受益権行使事由発生後
マンスリーパススルー方式のターボ償還
受益権行使事由が発生した場合には超過スプレッドによるターボ償還
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ü 考慮すべき点
支払サイクルのミスマッチ
bonus paymentsemi-annual
受益権の収益配当 monthly
受益権の支払うべきクーポン収入のうち, bonus payment に係わる部分が bonus payment month になるま
で未収となり,投資家に支払うべきクーポンがショートすることも考えられる.
ü prepayment の実績:2001/05/25 開示データ(住宅金融公庫)
延滞控除後
信託債権残高
発行時55,125,921,555
2.903
2001/02
54,843,588,271
2001/03
54,650,023,022
2001/04
54,462,622,413
加重平均金利 平均残存年数 年率任意繰上償還率
30.4
2.902
2.902
2.902
30.3
30.3
30.2
3.48
2.28
2.24
・ボーナスによる部分返済?
・新規 mortgage はデフォルトが高くなるが,差し替えによりバイアスがかかっている?