対応ソフト/サービスが続々登場

対応ソフト/サービスが続々登場
ソリューションプロバイダのビジネスがガラリと変わる
ユーザー企業の業務プロセスを「サービス」
という単位で実装して組み合わせ、業務の変
更や拡張に柔軟に対応するシステム構築手法
「SOA(サービス指向アーキテクチャ)
」が大きな
関心を集めている。SOA に基づくシステム開発で
は、全体最適のためのサービスの設計や構築が不可
欠で、短期・低コスト開発も一層加速する。さらに
SOA が進展すれば、アウトソーシングや ASP(アプリ
ケーション・サービス・プロバイダ)などが主流になるかも
しれない。ソリューションプロバイダは、SOA 時代のビジ
ネスモデル確立の準備をするべきだ。
20 NIKKEI SOLUTION BUSINESS 2004.9.30
(森重 和春)
多くのソリューションプロバイ
て、今後のシステム開発では SOA
ザー企業は、レガシーシステムを
ダが関心を示す最新のキーワード
が重要な設計手法になるのは間違
改修して使い続けた結果、その保
がある。それが「SOA(サービス指
いない」
。TIS の会田雄一基盤技術
守コストが増大している。システ
向アーキテクチャ)
」と呼ぶシステ
センター長は、こう断言する。
ムを連携する際も、1 つのシステム
ム構築手法だ。SOA に基づくシス
コンサルタント会社である札幌
を変更するたびに、接続先すべて
テム開発では、ユーザー企業の業
スパークル(東京都中央区)の桑原
のシステムを変更する必要が生じ
務プロセスを「サービス」という単
里恵システムコーディネーターも、
るからだ。
「現在のレガシーシステ
位で実装して組み合わせる点が特
「戦略的な IT 投資による競争力強
ムでは、新機能の追加が容易では
徴で、業務の変更や拡張に柔軟に
化を目指し、ユーザー企業にシス
なく、ユーザー企業がやりたいこ
対応できるようになる(図1)
。
テム間連携の要求が高まっている。
とに必ずしも応えていなかった。
「ユーザー企業は、メインフレー
企業内の各部門の業務プロセスを
適用できない部分は手作業に置き
ムやクライアント/サーバー、Web
横断するようなシステムのニーズ
換えたり、データ交換によって無
アプリケーションなど様々な既存
が増えている。このために SOA が
理に連携させてきた。それが SOA
システムを生かしながら新たなシ
重要になる」と指摘する。
では既存のシステムを生かしなが
ステムを構築、連携していく。そ
レガシーシステムを変更する場
のときの課題を解決する手段とし
合にもSOA の役割は大きい。ユー
ら簡単に連携できるようになる」
(ウルシステムズの漆原茂社長)
。
図1 ● 既存システムの活用と事業の変化への柔軟な対応を両立する手法として、
SOA(サービス指向アーキテクチャ)
に基づくシステム開発への関心が高まっている
課題
新しいビジネスに必
要なITの機能を早
期に立ち上げたい
部分最適で構築したシステムが複雑
化し、新しいシステムを追加するたび
に、運用や保守のコストが膨れ上がる
既存システムの独自性が
強く、連携を考えると新しい
システムを自由に選べない
ユーザー企業
SOAに基づくシステム開発
業務をモデル化して可視化し、
「サービス」
を組み合わせて
業務プロセスを実現
Webサービスなどの標準化したインタフェースを活用して、
既存システムを含むネットワーク上に分散した機能を統合
サービスの組み合わせを変更することで、業務の変化に短期間で対応する
SOA導入のメリット
サービスの組み合わせで、
システムの変更や拡張を短期間でできる
既存システムの再利用性が向上し、
コスト削減につながる
業務プロセスの可視化により、企業内のシステムの全体最適化を図れる
NIKKEI SOLUTION BUSINESS 2004.9.30
21
特集:SOAに乗り遅れるな!
SOA ではサービスのインタフェ
ス・プロトコル)
を使い、XML(拡
ッピングするための開発ツールな
ースを標準化しており、業務に変
張マークアップ言語)メッセージで
どだ。アプリケーションサーバー
更が発生しても該当するサービス
システム間のやり取りをすること
のベンダーなどが、SOA 対応のミ
だけを変更すれば、連携先のシス
で、異なるプラットフォーム間で
ドルウエア製品を相次ぎ市場に投
テムに影響しない(図2)
。
も、インターネットを介したシステ
入している(表)
。
例えばSOA で受注システムを開
ム連携が実現できる。企業の業務
Web サービスを組み合わせたビ
発するときは、業務プロセスの流
プロセス全体をサービスの組み合
ジネスプロセスを実装するため
れを基に在庫確認や発注、発送な
わせで定義すれば、SOA は企業シ
XML ベースの記述言語である
どの業務単位のサービスを組み合
ステムの全体最適を推進する EA
「BPEL(ビジネスプロセス実行言
わせて実現する。それぞれのサー
(エンタープライズ・アーキテクチ
語)
」が規定されており、各社はビ
ビスは、1 つのサーバー上にある必
ャ)の実現にもつながるだろう。
ジネスプロセス設計ツールや BPM
要はない。外部の決済サービスを
利用するなど業務プロセスを変更
相次ぐミドルウエアのSOA対応
製品の BPEL 対応を急いでいる。
NEC や日立製作所なども製品化を
計画している。
するには、それまで使っていたサ
SOA を実現するソフト製品は多
ービスと新しいサービスを置き換
岐にわたる。Web サービスの実装
サービスを連携する仕組みとし
えるだけで済み、すぐに受注の業
基盤となる Web アプリケーション
て、
「ESB(エンタープライズ・サ
務プロセスを変更できる。
サーバーや、サービスを組み合わ
ービス・バス)
」と呼ぶ新しいカテ
現在、SOA におけるサービスの
せたビジネスプロセスを実行する
ゴリーのミドルウエアも登場して
実装技術は、Web サービスが最も
ためのBPM(ビジネス・プロセス・
いる(図 3)
。Web サービスや JCA
有力だ。通信プロトコルに SOAP
マネジメント)ツール、既存のアプ
(J2EE コネクター・アーキテクチ
(シンプル・オブジェクト・アクセ
リケーションに Web サービスでラ
ャ)などの標準仕様に準拠したアプ
リケーションを相互連携させる仮
想的なバス機能を持つ製品で、サ
図2 ●SOA によるシステム構築の概要
企業における業務プロセスの構成要素を
「サービス」
として定義、開発し、サービスを組み合わせて業務プロセスを
構築する
業務プロセス
サービスの組み合わせで、業務プロセスを構築する
ことで、業務の変化や拡張に柔軟に対応
在庫確認
業務
発注業務
発送業務
Webサービスなど、共通の
インタフェースを使って、サ
ービスを連携
ービスの公開や登録、ルーティン
グ、データ変換などのメッセージ
バス機能を持つ。ソニックソフト
ウェア(東京都千代田区)やアイル
ランドのポーラーレイク社が製品
を国内で発売したほか、日本 IBM
注文確認
業務
決済業務
や日本 BEA システムズ(東京都港
区)
も来年、製品を投入する計画だ。
在庫確認
サービス
在庫
在庫管理
システム
発注
サービス
売掛
注文
販売管理
システム
注文確認
サービス
納品
発送
物流管理
22 NIKKEI SOLUTION BUSINESS 2004.9.30
発送
サービス
決済
サービス
決済
決済
決済
システム
社外決済
サービス
既存システムや新規に導
入するシステムから必要な
機能をサービスとして切り
出す
ミドルウエアだけではない。
SAP ジャパン(東京都千代田区)は
システム間連携の基盤製品「Net
Weaver」の販売に注力しているほ
業務の変化に応じてサー
ビスを変更可能
か、SOA の実現に向けて ERP(統
合基幹業務システム)製品のアーキ
テクチャ刷新を進めている。業務