中堅・中小企業における戦略的標準化への取り組み-新市場創造型

SEMINAR
【 販 売拡大のための標準化制度活用セ ミ ナ ー 】
中堅・中小企業における
戦略的標準化への取組み
― 新市場創造型標準化制度 ―
昨年11月19日に武蔵野銀行本店ホールにて「販路拡大のための標準化制度
活用セミナー」が開催された。当日は、経済産業省斉藤和則室長の挨拶の後、
一般財団法人日本規格協会山田次雄参与から「中堅・中小企業等における標
準化の戦略的活用のために」と題した講演と、有限会社川上製作所川上巧代
表取締役より標準化への取組みについての事例を中心とした講演が行われた。
の取り組みということで武蔵野銀行様にはあ
経済産業省産業技術環境局
基準認証広報室長
斉藤 和則
氏
らためてお礼を申し上げたいと思います。
今回の標準化制度をうまく活用いただきま
すと、皆様方の技術が際立つということで、
あくまでも標準化というのは販路拡大の一つ
のツールではありますけども、皆様方の優れ
皆様、本日はお忙しい中、本標準化制度活
た技術・製品を早く市場に広める可能性が期
用セミナーにご参加いただきまして誠にあり
待できますので、ご検討いただければと思っ
がとうございます。
ている次第でございます。少し難しい面があ
経済産業省では、新市場創造型標準化制度
りますけども、皆様方の技術と標準化の活用
というものを創設いたしまして、企業の優れ
とを一緒に考えていただければと思っておりま
た技術を迅速に標準化に結び付けるというこ
す。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
とを可能といたしました。また、地域の金融
機関をはじめとし、産業振興機関、大学、公
的研究機関や日本規格協会との連携の上で、
− 講演1− 標準化について
中堅・中小企業の優れた技術を標準化してい
ただくため、その支援をするスキームとしま
して、標準化活用支援パートナーシップ制度
というものを創設いたしまして、11月4日
から運用開始したところでございます。
一般財団法人 日本規格協会
参与
山田 次雄
氏
この制度につきましては、埼玉県内から武
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蔵野銀行様ほか埼玉県産業振興公社様、さい
私の演題は「中堅・中小企業等における標
たま市の産業創造財団様にも参加いただいて
準化の戦略的活用のために」でございますが、
いるところでございます。パートナー機関
2014年5月の、標準化官民戦略という政府の
に、このようなセミナーを開催していただく
政策決定以降、新市場創造型標準化制度、標
のは、パートナーシップ制度が開始されまし
準化活用支援パートナーシップ制度が創設さ
てから、今回のこのセミナーが全国で初めて
れ、これについてお話しさせていただきます。
ぶぎんレポート No.196 2016 年 2 月号
図表1 中堅・中小企業が標準化により市場拡大・差別化に成功した事例
夜
光
塗
料
ロボット安 全 操 作 用スイッチ
金 属と樹 脂 の 接 合 技 術
○IDEC㈱
(従業員数2,287名
(連結)
、本社:
大阪)
は、開発・標準・知財の一体体制で標
準化活動を推進。
○大成プラス㈱
(従業員数43名、本社:東京)
は、金属と樹脂の接合技術を開発。標準が
存在しないため、性能を客観的に証明でき
ず、
新市場開拓の壁に直面。
○根本特殊化学㈱
(従業員数92名、本社:東
京)
は、時計や安全標識等の分野での標
準化活動に積極的に取
組み。
○ 大 手 樹 脂メーカー
(東ソー、東レ、三井
化学)
とともに、
自社
接合技術の強度の
評 価 方 法を国 際 標
準提案。
○自社製品の夜光塗料の
性能を際立たせる残光
輝度や残光時間の評価
方法や基準を標準化。
○予期せぬ危険事態が発生した際に、手を強
く握る人間の反射的な動作で機械を停止さ
せる、
ロボットの安全操作用スイッチについ
て、
自社技術を基に国際標準化を実現。
安全操作用
スイッチ
○世界シェア90%を達成。
(プロジェクタの筐体
に実装)
○平成27年8月、
国際規格を発行。
○国内時計メーカーのみならず、
スイス時計
メーカーにも夜光塗料を供給。夜光時計市
場シェアほぼ100%を実現。
○これまで進出できていない自動車や航空機
分野への本格展開を狙う。
○消防法でも国内規格が引用され、安全標識
業界でも市場拡大。
ます。経済のグローバル化に相まって、WTO
標準化とは?
(世界貿易機構)のTBT協定(貿易の技術的障
新市場創造型標準化制度とは、中堅・中小
競争力を保つためには、新技術を開発・普及
企業が開発した優れた製品や、この性能・品
させ、国際市場を拡大することが必須となっ
質を客観的に示すことができる評価方法を、
ています。そのためにも標準化を経営のひと
国内規格(JIS規格)や国際規格(ISO規格や
つのツールとして考えるという政策が推進さ
IEC規格等)として新たに定める制度です。
れ、その中で誕生したのが今回の「新市場創
一般的に「標準化」とは、
「自由に放置すれ
造型標準化制度」なのです。
害に関する協定)も結ばれた今、日本が国際
ば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を、
少数化、単純化、秩序化する≪行動≫」のこ
戦略的取組みの活用効果と重要性
とです。国内においては、1949年に「工業標
準化法」が制定され、日本工業規格(JIS)の
現在、中堅・中小企業の皆様は、製造や生
制定、JISマーク表示制度が運用されました。
産活動において、JISを活用する、いわゆる規
これは戦後間もない中で、産業振興や技術復
格のユーザーの立場に立つ人が多いと思いま
興などが目的としてスタートされたものであ
すが、今回の標準化は、自ら規格を作り、規
り、品質の確保や互換性、安全の確保、生産
格を自らのビジネスツールとして活用するこ
効率の向上等々の基本的な役割を果たしてき
とをお考えいただきたい。
ました。近年では特に高齢者・障がい者対応
標準化の活用とは、まず寸法や形状等に留
や温暖化防止などの環境保全、消費者安全等
まらず、自社の技術や商品が市場で際立つよ
の分野でも標準化が進められています。
うな品質基準や試験方法などを、JISや国際規
そして最近では、新技術の普及や市場の拡
格として標準化することがスタートとなりま
大などが標準化の役割の中で重要となってい
す。標準化の活用において期待される効果と
ぶぎんレポート No.196 2016 年 2 月号
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図表2
図表2
標準化への戦略的取組の重要性
(知財との組合せ)
標準化の類型
①
製品の仕様の
標準化
②
インターフェイス
部分の仕様の
標準化
③
性能基準・
評価方法の
標準化
るのです。
標準と特許の組み合わせ
(典型例)
自社特許を含めて標準化
標準
特許
ライセンス
市場展開が実現でき
標準化への戦略的
具体的事例
な 取 組 み に お い て、
Blu-rayDisc〔パナソニック・ソニー他〕
・ブルーレイディスクの仕様を国際標準化。
・標準に対応するために必要な特許は、
無差別かつ安価にライセンス。
〔デンソー〕
自社特許等の周辺インター QRコード
・QRコードの基本仕様を標準化し、無償で提供。
フェイスを標準化
ORコードは
標準化し
無償化
・QRコードの読み取り技術はブラックボックス化
し、読み取り機やソフトウェアを有償で販売。
標準
特許
等
自社特許等を含む製品の
評価方法を標準化
特許
等
読み取り機
で収益確保
⇒読み取り機では国内シェアトップを獲得。
評価
標準
する。②自社の技術・製品のスペック・性能
を変更することなく、市場投入を可能にする。
③一定の水準の品質基準などの標準化により、
低品質の排除などを可能にする。④顧客を自
社の技術・製品に惹きつけることにより、コ
スト競争力の強化を可能にする、などがあり
ます。このような効果により、中堅・中小企
業が保有する新技術や優れた製品の速やかな
図表3 オープン・クローズ戦略
クローズ 化
・ライセンス
・クロスライセンス
・パテントプール
・RAND
標準化
・無償実施
・オープンソースソフト
RAND 条件:無償もしくは非差別的、かつ合理的な条件
【出所:日本工業標準調査会第24回総会
(2013年2月26日)
資料7より抜粋】
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ぶぎんレポート No.196 2016 年 2 月号
組み合わせていくか
合理的な条件(RAND
条約)で特許権の実
り、標準化を進める際に、特許を含む場合は、
必ずこれを公正に公開せよ、ということが国
際ルールになっているため、こうしたルール
を踏まえた戦略的な標準化が重要になってく
るのです。自社技術や製品の協調領域と競争
領域を見極めた最適な「オープン・クローズ
戦略」を踏まえて、
「事業戦略」
「研究開発戦略」
「標準化戦略」
「知的戦略」という4つの戦略
スキルを一体的に推進する必要があるのです。
図表4 企業における開発・標準・知財戦略の一体的推進
事業戦略
事業ニーズ
技術シーズ
研究開発戦略
標準化戦略
市場拡大、コストダウン
製品差別化
連携
・秘匿化(ノウハウ)
・知財占有化
差別化
−独占実施
の源泉
−権利侵害差し止め
−高額ライセンス
(ファブレス)
オ ー プ ン 化
る特許とどのように
しくは非差別的かつ
事業ニーズ
コア領域以外
際に、自社が保有す
施を許諾することが求められています。つま
コア 領 域を特 定
コア領域
標準化を進めていく
特許権者は、無償若
⇒これまでに進出できていない自動車や航空機分野への本格展開を狙う。
能の見える化を通じて市場の差別化を可能に
との組み合わせです。
が 問 題 と な り ま す。
金属と樹脂の接合技術
〔大成プラス〕
・金属と樹脂の接合技術に関する標準が
存在しないため、
性能を客観的に証明でき
ず、市場開拓の壁に直面。
・大手樹脂メーカー
(東ソー、
東レ、
三井化学)
とともに、
自社接合技術の強度の評価方法を国際標準提案。
しては、①自社の技術・製品のスペック・性
重要となるのが知財
化
体
一
連携強化
知財の創出
知財戦略
SEMINAR
【 販 売 拡 大 の た め の 標 準 化 制 度 活用セミナー 】
図表5
新市場創造型標準化制度 ( 国際標準と国内標準 )
企業/
グループ
「新市場創造型
標準化制度」
国内コンセンサス形成
国内業界団体等
国際コンセンサス形成
2∼3年
2∼3ヶ月
ISO
(国際標準化機構)
IEC
(国際電気標準会議)
日本規格協会
(JSA)
(原案作成)
企業/グループ
2ヶ月∼1年
国際標準化
︵ISO/IEO︶
国際標準の場合
3∼5年
国内標準の場合
国内業界団体等
※原案作成開始まで
に時間がかかる
「新市場創造型
標準化制度」
企業/グループ
※原案作成に
時間がかかる
日本規格協会
(JSA)
(原案作成)
国内標準化
J(IS )
企業/グループ
中堅・中小企業等では原案作成が困難な場合、
官民が連携した標準化戦略
2014年5月、官民が連携した標準化戦略の
強化のために、経産省や経団連、日本商工会
議所などと主要産業界トップが参画する「標
準化官民戦略会議」が開催されて、
「標準化官
民戦略」が取りまとめられました。
戦略的に標準化を推進していくためには、
官民の適切な役割分担と連携の下で、標準化
推進体制整備などに取り組む必要があります。
さらに、我が国が国際標準化を主導していく
ためには、人材の育成、国際的な連携や認証
との一体的推進について、官民が協力して中
長期的に取り組んでいく必要があります。こ
のような認識の下、具体策を官民で連携して
行うことが必須であるとしています。
また、先ほど説明しました「標準化官民戦
略」に基づく取組みとして、業界団体を通じ
たコンセンサスを求めない「新市場創造型標
準化制度」が2014年7月に創設されました。
この制度の特徴は、先端的な技術であるもの
の、企業一社で業界内調整が困難な場合や、
複数の産業界にまたがる場合などに、従来の
業界団体でのコンセンサスを形成せずに、迅
速なJIS化や国際規格化が可能となる制度で
す。現在、経済産業局や自治体、経済団体・
業界団体を通じて、制度の周知徹底や案件発
掘 が 行 わ れ ています。さらに、ISOやIECと
いった国際標準化会議において標準化をリー
ドする人材育成・強化のために、官民が協力
して中長期的な人材育成を実施しています。
図表6
標準化官民戦略のポイント
1.
官民の体制整備
⑴ 新市場創造型の標準化制度の構築∼政府の対応
⑵ 産業界における標準化戦略の強化∼産業界の対応
例)
CSO
(Chief Standardization Of ficer)
の設置
⑶ 中小企業の標準化及び認証の活動に対する支援強化
⑷ 標準化人材の育成強化
2.
世界に通用する認証基盤の強化
我が国企業の海外展開の観点から戦略的に重要な分野につい
て、認証又は試験の結果が国際的に認められる認証基盤を順次
国内に整備。
3.
アジア諸国との連携強化
各国の国家規格の開発、標準化人材の育成及び認証基盤の整
備に対する支援、国際標準の共同開発などの分野でアジア諸国
との協力関係を強化。
ぶぎんレポート No.196 2016 年 2 月号
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図表7
新市場創造型標準化制度を活用した具体的案件の概要
液体用高機能容器に関する標準化
株式会社悠心
(新潟県、従業員12人)
自動車用緊急脱出ツールに関する標準化
株式会社ワイピーシステム
(埼玉県、従業員25人)
蛍光式酸素濃度計に関する標準化
株式会社オートマチック
システムリサーチ
(東京都、従業員9人)
開封後も液体内容物が
高い鮮度を保つことが
可能な逆止弁を用いた
液体用高機能容器の評
価方法を標準化。
(JIS化)
交通事故などで自動車に
閉じ込められた時に使用
されるガラス破砕・シートベ
ルト切断ツールに関する
破 砕・切 断 性 能を標 準
化。
(JIS化)
高機能性塗料による表面処理方法の標準化
株式会社竹中製作所
(大阪府、従業員155人)
耐久性、測定性能に優
れる蛍 光 式の酸 素 濃
度計の評価方法を標
準化。
(JIS化)
プラスチック再生事業の生産プロセス
に関する指針JISの開発
株式会社レノバ
(東京都、従業員196人)
耐久性、耐食性等に優れる高機能性塗料に
よる金属の表面性能を標準化。
(JIS化)
再生プラスチック生産プロセスの信頼性等向上に資する品
質マネジメントシステム
(JIS Q 9001)
の分野別指針を標準
化。
(JIS化)
経産省は、戦略的な標準化を加速させるた
めの課題として、地域企業の持つ技術等に関
する標準化案件の発掘や、その標準化への支
援体制が不十分であること、国際標準化を担
う中核人材の世代を超えた確保等をあげてい
ます。今後は、自治体等の企業支援担当者の
標準化案件の発掘に対応した標準化研修の実
施や、中堅・中小企業等の技術の標準化活動
に対する支援体制の強化、高機能・高品質を
示すためのJISマークの活用・普及とその認証
スキーム構築支援、国際標準化に関する国際
会議で幹事等を務める標準化人材の育成強化
などを積極的に推進していく予定です。
次に現在「新市場創造型標準化制度」を活
用した具体的案件の概要についてご説明しま
す。2015年5月、日本工業標準調査会(JISC)
は、中堅・中小企業から提案のあった5件に
ついて「新市場創造型標準化制度」を活用し
て標準化を行うことを初めて決定しました。
現在、一般財団法人日本規格協会(JSA)が
提案企業を含めた原案作成委員会を構成し、
標準化の原案を作成中です。図表7に具体的
案件の概要をご紹介します。
標準化活用支援パートナーシップ制度
では最後に、もう一つの制度であります「標
準化活用支援パートナーシップ制度」につい
てご紹介します。中堅・中小企業等における
標準化の戦略活用について、経産省と日本規
格協会がパートナー機関としてご登録いただ
いた自治体・産業振興機関、地域金融機関、
大学、公的研究機関等と連携し、日本規格協
会に配備する「標準化専門アドバイザー」を
中心にして、インターネットTV電話等を活用
しながら、
「どこでも」きめ細かく専門的に支
援する制度です。
2015年11月、今月から開始された制度で
すが、武蔵野銀行様をはじめ、もうすでに50
を超えるパートナー機関の登録がございます。
こういった機関を通じて、中堅・中小企業の
皆様と協力しながら、皆様の技術・製品を新
しい市場を獲得するため、標準化を進めてい
ただく制度でございます。
ご清聴ありがとうございました。
※日本規格協会の「新市場創造型標準化業務」については右記の URL ご参照ください。 http://www.jsa.or.jp/stdz/partner.html
※武蔵野銀行では、標準化活用支援パートナーとして「新市場創造型標準化業務」について、ご相談・お問合せを承っております。
武蔵野銀行地域サポート部 ☎ 048-641-6111( 代表 ) E-mail:[email protected]
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ぶぎんレポート No.196 2016 年 2 月号
SEMINAR
【 販 売 拡 大 の た め の 標 準 化 制 度 活用セミナー 】
図表8 標準化活用パートナーシップ制度
企業支援担当者への研修
パートナー機関
日本規格協会
(JSA)
(自治体・産業振興機関、
地域金融機関
大学・公的研究機関 等)
<標準化アドバイザー>
企業の課題等に関する情報提供、
専門的支援依頼
パートナー機関
中堅・中小企業等
企業等の課題把握
標準化アドバイザーによる
専門的支援の機会提供
(セミナー、面談等)
標準化アドバイザー
標準化の戦略的活用
に関する専門的支援
(情報提供、助言等)
(インターネットTV電話等も活用し
全国どこでも対応)
中堅・中小企業等
− 講演2− 標準化への取組みについて
材が一つになるということです。回転の摩擦
と、後ろから押す圧力によってくっつく工法
です。一般的に溶接は溶材を使用しますが、
圧接は、溶材を使用しないので、環境にやさ
有限会社 川上製作所
代表取締役
川上 巧
氏
しい技術と言えます。
世の中には、アルミやステンレス、金、銀、
銅等々…実に色々な素材があります。摩擦圧
接で、素材同士を組み合わせることができれ
ば新しい素材として世に出せるのでは?と考
「新市場創造型標準化制度」
、難しく文字に
するとわかりにくい制度です。私自身、こん
なに難しいことをやった記憶がないのです。
振返ってみると、
「こういった制度に乗ってい
たのだな〜」という感じがいたします。
私 は15年 ほ ど 前 に な り ま す が、
「FW
えたのが10年ほど前になります。ステンレス
とアルミは溶接できません。しかし圧接では
実に簡単に接合できるのです。ただ、大手
メーカーや研究者の方々が「これとこれをくっ
資料1 圧接、摩擦接合
(Friction Welding)圧接」という摩擦技術と
圧接、摩擦接合とは、
出会いました。15年前というと、バブルの崩
高温、高圧、無酸素下での
壊後の厳しい時代。中小企業、特に金属加工
業にとっては本当に厳しい時代でした。その
時に巡り合ったのが「摩擦圧接」です。これは、
原子拡散接合
ノコ切断まま
(残油あり)
高温・高圧・無酸素下で、原子拡散接合させ
る技術で、金属材料を接触加圧しながら相対
運動を起こし、発熱する摩擦熱を熱源とする
接合法のことです。簡単に言うと、二つの素
摩擦接合
母材設計強度で取り扱い可能
ぶぎんレポート No.196 2016 年 2 月号
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つけてほしい」と直接素材を持参して、接合
したものを持ち帰ります。どこでどのように
資料2 異種金属摩擦接合
今後は、市場拡大が見込める異種金属接合の
使用されているかは全くわかりません。
J
I
S化を目指しています。
しかし蓋を開けてみると、最新の超電導シ
ステムや医療機器のMRIに組込まれていたり
と、色々なかたちで使用されているのです。
ただ、一般的には知られていないので、この
ような技術を持っていても市場がないのです。
この技術を知ってもらうためにサンプルを作
成し、展示会などでPRするのですが、
「きれい
ですね」で終わってしまうのです。そこで、
このままではいけないと、2011年に経産省に
持ち込みました。この技術を知ってもらい、
この市場を広げるにはどうしたらいいのか?
るかもしれないのです。もし独自の技術など
とお願いに伺ったのです。
があれば、是非経産省に足を運んでください。
最初は緊張や不安で一杯でしたが、親身に
自社の得になるような標準化を一度考えてみ
なって話を聞いてもらい、親密なやりとりが
てください。何かヒントが見えてくるかもし
できました。堅苦しさも全くありませんでし
れません。今回の標準化は中堅・中小企業に
た。その後は大阪にも来ていただき、国とし
とっては最大のビジネスチャンスの最大の近
てもこの技術を広めたいと言っていただきま
道であると自ら経験して思いました。
した。しかし、この時に壁になっていたのが
協会です。それぞれの業界には協会があり、
協会にはルールがあります。中小企業が色々
言ってもルールを変えることはなかなか困難
です。そこで経産省の方にも協会に同行いた
だき、この技術を熱くPRしてもらいました。
結果、協会の協力もいただけ、JIS化の方向が
★ これからビジネスをする上で、
標準化は必要不可欠になる
標準化は
★ 特殊技術保有の中小企業は、 ビジネスチャンス
標準化ツールが武器になる
の近道
★ 他社連携で標準化が出来る!
決定したのです。JIS化のためには委員会をつ
くり、委員の中には提案者である我々も入る
必要がありますが、これも経産省や協会の
方々のサポートがあったので、全く心配はあ
りませんでした。
事 業 所 概 要
事業所名 有限会社 川上製作所
所 在 地
今回の標準化により、圧接技術が広く認知
営業品目
広がるのです。一見難しく思われる標準化で
すが、企業が持つ技術には、もしかしたら優
位に立てる、スタンダード化できるものがあ
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ぶぎんレポート No.196 2016 年 2 月号
河内長野工場 河内長野市寿町9-11
産業機器用搬送ローラー、
され、異種金属という新素材が世に出て市場
が拡大することで、我々の営業環境が大きく
本社・工場 大阪狭山市茱萸木7-1485-2
自動車部品加工、食品機器、
真空機器・原子力関連部品の精密機械加工
摩擦圧接による各種部品の製造
所
属 株式会社 大阪ケイオス(2010年結成)