山形県置賜地域(7市町)における共同アウトソーシング [198KB pdf

山形県置賜地域(7市町)における
共同アウトソーシング
∼その取組みと期待効果について∼
平成22
平成
22年
年2月9日
山形県
アジェンダ
 共同アウトソーシングの取り組みのきっかけ
 取り組みの経緯
 取り組みの内容
 取り組みのメリット、効果
 留意すべき点
1
はじめに
 山形県置賜(おきたま)地域
山形県は、大きく四つの地域(村山地域、最上地域、置賜地域、庄内地域)に分かれており、それぞれ特有の
文化、自然が展開されている。置賜地域は県の南部に位置し、米沢市、長井市、南陽市、高畠町、川西町、
小国町、白鷹町、飯豊町の3市5町で構成。赤湯、小野川、白布など数多くの温泉に恵まれているほか、上杉
氏の史跡や花回廊など多種多様な観光資源を有している。
上杉神社(米沢市)
人口(人)
米沢市
90,258
長井市
29,642
南陽市
34,126
高畠町
25,242
川西町
17,584
小国町
9,095
白鷹町
15,462
飯豊町
8,110
合計
229,519
(H21.10.1現在)
赤湯温泉(南陽市)
2
置賜地域の取り組みのきっかけ・目的
●置賜地域の電算業務は、昭和46年から置賜広域行政事務組合が窓口となり電算業務処理委託(民間事業者
へ委託)を実施してきた。
しかし、時代の流れで庁舎内での即時処理のニーズの高まりとともに、一部の業務を除き、各市町で独自に他事業者
と契約を行い、庁舎内に業務システムを導入するようになった。
●平成17年度には、共同アウトソーシングの動きも視野に入れながら、今後の電算業務のあり方について置広内に検討
機関を組織して検討を開始し、18年度にはコンサル業者に計画案を発注しようとしたものの、構成市町の意見がまとま
らず検討を中断。
●19年度、三位一体の改革以降、各市町の財政状況の悪化から真剣に共同アウトソーシングを検討を開始。
【置賜広域行政事務組合】
昭和46年に設立した置賜3市5町(米沢市・長井市・南陽市・高畠町・川西町・小国町、白鷹町・飯豊町)で
構成される一部事務組合。
コンピュータによる行政事務、し尿、ごみ処理、老人ホームの管理運営等の共同処理事務等を行っている。
3
取り組みの経緯(概要)
《平成17・18年度》
●置広の取り組みを県が支援
置賜総合支庁地域支援課
⇒管内市町間の調整
情報企画課⇒技術的支援
●置広、3市5町電算担当者、県に
よる勉強会の開催(計7回)
●ベンダからの企画提案、見積り
をたたき台として共同アウトソーシ
ングの実現可能性について検討
●具体的な業務処
理手法、システム移
行手法、定量的なコ
スト削減効果等が不
明確な状態
●各市町の取組み
への温度差
●先進地視察(北海道西いぶり広
域連合)
●導入検討報告書の作成(平成21
年4月稼動を目標に共同アウトソー
シングに取り組むことを明記)
ASPによる共同化
パッケージをノンカスタマイズ
《平成20年度》
●各市町において内部の合意形成
●首長レベルで、事業の実施と置広
が事務局を担うことを承認
●調達仕様書作成に向けた各市町
の現場との調整⇒システム変更に
伴う現場担当者の不安解消
●共同アウトソーシングの実施に関
する協定書の締結(3市4町でス
タート)
●事業者選定(公募型プロポーザ
ル方式)を実施(事業者の選定プロ
セスに現場の声を反映)
●21年4月稼動に向け準備
(データ移行、研修等)
全体で年間
約40%の
コスト削減
《21年4月》
長井市を皮切りに順次スタート
●置広と3市5町電
算担当者との間で
「共同アウトソーシン
グ」のキーワードの
もと、今後の電算業
務共同処理のあり方
について模索
《平成19年度》
4
取り組みの経緯(平成19
取り組みの経緯(平成
19年度)
年度)
6月27日 ・置賜広域行政事務組合電算窓口業務担当者会議において、3市5町全体での共同化について勉強会
を継続することを確認。(県はオブザーバとして参加)
広域行政検討会での検討
広域消防等の検討を目的に平成18年度に設置した県置賜総合支庁・市町村の企画部門の会議の枠組みのなかで、
置広担当者会議を支援する形で検討開始。
9月11日 ・第1回勉強会の開催(業者への企画提案依頼内容を確認。各市町から課題、ニーズの抽出。)
9月12日 ・ベンダ5社に対し企画提案依頼(置賜地域における共同アウトソーシングの実現可能性、共同化の業務範
囲、概算見積り等) →対象業務、見積金額がほぼ同じ
10月2日 ・第2回勉強会の開催(ベンダ5社による提案プレゼンテーションの実施)
10月15日 ・第3回勉強会の開催(各市町の業務システム毎の更新時期、事情等について確認)
11月12日 ・置賜地域行政懇談会(各首長・県議会議員の懇談会の場で検討状況を報告)
11月29日 ・第4回勉強会の開催(各市町の業務担当職員を対象にベンダ5社によるシステムデモを実施)
12月19日 ・第5回勉強会の開催(運営組織、対象業務、事業費、iDC、時期等の諸条件について検討)
1月30日 ・先進地視察(北海道西いぶり広域連合) 室蘭市など3市1町の基幹系業務システムの共同化の状況に
ついて調査。人口10万人規模の団体でもパッケージをカスタマイズせずに運用できていることを確認。
3月 6日 ・第6回勉強会の開催(これまでの検討内容と先進地視察の結果から、ASP型サービスで提案を求めていく
こととし、改めて業者へ見積りを依頼)
3月21日 ・第7回勉強会の開催(導入検討に関する最終報告書、事業者見積り、来年度以降の進め方を検討)
3月27日 ・広域行政検討会(課長レベル) 勉強会の成果(「置賜地域市町における電算システム共同アウトソーシング
導入検討報告書」)を報告し、来年度早々の事業着手に向け、各市町内で検討を行い参加の有無の判
断を依頼。
5
各市町の現行システム更新時期
19年度
米沢市
長井市
南陽市
20年度
21年度
23年度
24年度
25年度
26年度
未定
21年4月
22年10月
高畠町
23年4月
川西町
23年4月
小国町
22年度
22年4月
白鷹町
25年4月
飯豊町
25年4月
6
事業化に向けての課題
1.開始年度をそろえるのは難しい。
・それにはお金がない。(違約金や重複期間経費)
・費やさなければならないエネルギーが膨大(各市町調整、現場の職員)
→基本設計等のプロセスを行っておらず、事業化の確証が得られないため
開始年度をそろえての事業参加の判断のハードルが高い。
2.適正なシステム運営が難しい。
・情報システムの専門的な知識を持った職員がいない。
・自前でシステムを持つと数年でブラックボックス化の恐れ。
・人事異動があっても適正な運営ができる仕組みづくりの必要性。
→ システムアーキテクチャで共同化は進まない。
自治体のニーズは「オープンかつ優秀なパッケージ」ではなく、
「パッケージも含めた業務サービス」にある。
3.早急に事業化をする必要性があった。
・長井市において21年4月からサービス開始する必要性がでてきたこと。
7
北海道西いぶり広域連合共同電算の取組み
・パッケージをカスタマイズせずに室蘭(9.8万人)、登別(5.3万人)、伊達(3.7万人)壮瞥(0.3万人)で21年
1月稼働。
・カスタマイズせずにパラメータの設定で各団体の独自性を吸収
・技術的にもWebサービスインターフェースを取り込んだ実質ASP型全国初の例
・平成24年までに4団体の合計で約4.5億円の経費削減効果
日経BP社 →「総論賛成、各論反対の共同アウトソーシングに一つの道筋を示したと言える。」
パッケージをそのまま使用した実績。
実は中小規模自治体向けのPKGソフト
は熟度があるのでは?
8
共同アウトソーシングの導入に向けた対応
システム関連のトータルコストの削減を図るとともに、ASP型のアウトソーシングによ
る業務の効率化を図り、最終的に住民サービスの向上を図ることを目標とする。
●参加市町が参加に関する協定を結び、参加市町の更新時期に随時参加。
●対象業務を基幹系12業務とし、使用するシステムはパッケージをカスタマイズせずに、パラメータの設
定で各市町の状況に対応させることを原則。
●通常業務で利用しているPCのブラウザソフトで利用できるWebシステムとする。ただし、アーキテク
チャは一切問わない。(サービス利用を明確化)
●パッケージの活用により業務手順や帳票類を標準化。システム導入にとどまらず、BPRを行える機
会とする。
●システム保守運用経費ばかりでなく、制度改正等の対応も安価に対応できるよう、総務省地域情
報プラットフォーム等への対応
●県WANの活用など既存のインフラを活用し、最低限の投資とする。
●稼働率については、98%以上(ただし、回線部分を除く)で
●契約終了時におけるデータ移行を担保(今回の契約金額に含む)
●他システムとの連携はパッケージのEUC機能を利用(事前に連携システムの洗い出しを実施)
9
共同化全体イメージ
運営協議会
サービス利用型共同化の方向性
・各団体で負担がかからず属人的にならないこと
・システムパッケージをカスタマズせずに使用できるよう
になり共同化が容易になったこと
・先進事例ができてていること
共同化のメリット
(事業計画、契約・仕様管理)
(民間データセンタ等の利用)
・各団体で協定締結し事業の継続性を保証
・全体の事業計画や年度ごとの事業の改善
等について検討
・これまでの所有する業務システムからインターネット
サービスを使用するイメージ
・各団体では機器故障時の立会い等職員労力の軽減
・情報セキュリティや個人情報取扱の認証制度の資格を
有する事業者による運営
各市町で協定締結→
サービス開始から5カ年運用
米沢市
長井市
南陽市
高畠町
[職員の業務]
川西町
最新のシステムで業務の
効率化が図れる。
小国町
PCはブラウザのみで操作
※業者やPCが替わっても影響無し
[納税通知書等の印刷物]
大量帳票は配送
白鷹町
飯豊町
・
・
他団体
契約は個別
税
福祉
・・・
各団体
事業者A
今回の12業務
住民情報
上下水道
※プロポーザルで業者を
選定
事業者B
次回共同化するもの
図書館情報 など
ISMS、Pマーク
取得事業者による
運用で、庁舎に
機器を設置するよ
り高セキュリティ
システム連携インターフェースの統一
・システム運用に係る経費を削減できること
・最新のシステム導入で業務の効率化が図れること
・システム障害時の立会い等が必要なく、担当職員の
負担軽減が図れる
ASPサービス
システム連携を
標準化すること
でシステム追加
や多様な業者の
システム導入が
可能になるため、
拡張性や競争性
が担保される。
安価かつ適正に
事業の継続化が
図れる
10
取り組みの経緯(平成20
取り組みの経緯(平成
20年度)
年度)
4月 ・広域行政検討会(課長レベル)(各市町の検討結果の報告→参加の意志表明は4市町のみ)
5月7日 ・置賜広域行政事務組合理事会(首長会議)(今年度、事業として実施する事、その内容等について了
解を得る。また併せて置広が事務局を担うことも決定。)
5∼6月 ・再度、各市町の業務担当職員を対象にベンダ3社によるシステムデモを実施
5∼6月 ・事務局である置広を中心に、協定書締結に関する調整、発注準備作業を開始
関係者
役割
各市町
市町内部の合意形成
置広(事務局)
協定書締結作業、発注準備作業
県置賜総合支庁地域支援課
市町内部の合意形成への支援、参加への働きかけ
県情報企画課
提案公募に関するノウハウ、提案仕様書等作成、発注準備作業
6月5日 ・置賜地域電算担当係長会議(事業者選定方式、市町原課ヒアリングについて協議)
6∼7月 ・発注に先立ち、市町原課からヒアリングを行い、発注仕様書等へ反映。情報企画課でアンケート作成、それ
を元にヒアリングし、市町実務担当者への説明、事業者への確認作業等を実施。
(目的は現場の不安払拭)
7月7日 ・置賜広域事務組合理事会(首長会議)(最終参加団体が確定(小国町以外の3市4町)、協定書案文、
発注仕様書等への了解を得る。協定書の締結へ。)⇒各市町がシステムの更新時期に契約することが約
束され、事業実施の担保とすることで共同アウトソーシングの実現へ。
7∼8月 ・事業者選定(公募型プロポーザル)を実施
価格点500点、技術点500点の合計1000点満点
技術点のうち100点は、提案者が行うシステムデモに対する市町担当者の評価分
審査委員は学識審査委員(3人)と各市町審査委員(7人)で構成
9月 ・平成21年4月からの長井市における全業務運用開始に向け準備開始(システム構築、データ移行、研修等)
11
導入スケジュール
○共同化業務は以下の12業務
①住民情報 ②税 ③国保年金 ④選挙投票 ⑤福祉 ⑥介護保険 ⑦医療費助成 ⑧学齢簿
⑨財務会計 ⑩人事給与 ⑪上下水道料金 ⑫後期高齢者医療
21年度
米沢市
長井市
南陽市
高畠町
川西町
小国町
白鷹町
飯豊町
22年度
23年度
24年度
25年度
26年度
27年度
28年度
29年度
医療費助成(23年1月)・人事給与(24年4月)の2業務のみ参加
21年4月より全業務
22年10月より全業務
25年4月より全業務
財務会計・人事給与は21年8月より運用、他業務は22年4月より
不参加
24年度3業務、他業務は25年度より
25年4月より全業務
12
導入による効果
 システムの運用経費は参加団体全体で年間約40%削減(△2億円/年)
(単位:百万円)
A市
B市
C市
D町
E町
F町
G町
合計
発注後年間経費
8.2
60.5
67.0
51.9
41.5
45.2
31.2
305.5
18年度経費
7.5
129.7
約110
約86
約55
約75
約41
504.2
削減率(%)
−
△53.3
△39.1
△39.7
△24.5
△39.7
△23.9
△39.4
※ 経費の内訳はシステム移行、構築、研修、回線経費、保守費用に係るすべての経費を
利用年数で割り返したもの。
※ A市の発注後年間経費には、今後導入予定のシステムが含まれている。
13
共同化によるメリット
1.トータルコスト削減
(1)システム運用経費の削減
各市町が単独で導入するより、30%経費削減(事業者見積りベース) ⇒ 約40%の削減を実現
(2)最新システム導入による業務効率化の効果
老朽化したシステムを延命しながら運用している団体が多い。
⇒ 最新システム導入により業務の効率化が図れるため 職員のリソースを有効活用できる。これまでシス
テム導入がなされていない団体は、格段に業務の効率化が図れる。
(3)電算業務負担の軽減
各市町では、それぞれ自庁舎内に情報システムを設置、運用(障害対応、各種メンテナンス立会い等電算部門
の負担大、専門性を要求されるため担当職員への負担大)
⇒ 担当職員の負担が軽減し、本来業務の精度が上がり、住民サービスの向上が図れる。
2.業務におけるBPRの推進
各市町におけるローカルルールの見直し作業が必要。
⇒ 共同化作業を、BPRのチャンスとして捉え、業務改革に取り組める。
3.セキュリティの確保
セキュリティ対策は高額な経費を要するため、各市町において十分な対策が取れていない状況
⇒ 住民に対し説明責任を果たせる対策が確保できる。
4.新たな住民サービス提供の可能性
システムやネットワークの広域化によるメリットを活かした新たな住民サービスを検討、実現するための基盤整備が
可能となる。
14
置賜地域の取り組みにおける効果
 財政改善の手法として「ASPによる共同化」を具現化
●パッケージのノンカスタマイズによる運用を実現することで、大幅なコストダウン
●後からの参加、対象業務の選択が可能
●これまでの自治体の課題(コスト、セキュリティ、マンパワー、システム更新時期の違い、業務の標準化)を解決
するうえで有効な選択肢
●今後、各ベンダにおけるASPサービスの充実・展開を期待
●最大の成果は基幹系情報システムの料金表を作らせたこと
 ASPサービスの安定・充実(パッケージ機能の強化)への寄与
●仕様変更の要望があった場合の対応
⇒ 基本は必ず市町の情報部門のフィルターを通しチェックする。要望を採用する際の可否は、それを実
現することがパッケージの強化につながり、他団体へも等しく恩恵を与えるようなケースのみ。
 共同化に取り組もうとする意識の高まり
●共同化に対する不安感が減少、他地域における取り組みへノウハウを展開
⇒ 村山地域(7市7町)で共同化の勉強会を実施中
15
置賜地域における実現のポイント
 各市町における主体的な取り組み
●問題意識の明確化
●共同アウトソーシングを実施する目的・目標の明確化と共有
●各市町間における密接なコミュニケーション
●先行する団体のノウハウの展開
●業務及び現行システムの分析
 取り組みを支援する組織の存在
 各市町の現場の業務担当職員の不安解消
●システムデモへの参加
●仕様書作成時における現場の業務担当者へのヒアリングと説明
16
終わりに∼事業を成功させるために∼
 共同アウトソーシングの目的を職員が理解すること
(パッケージ(サービス)をカスタマイズせずに使用することが重要)
▼現行システムが最適化されているという思い込み
▼これまでの事務のやり方を変えられない職員
▼慣例や趣味趣向までもシステム化の対象とされているケースも
●カスタマイズが余計な経費を発生させ、制度改正などでさらに負担増
●従来の囲い込みのビジネスモデルからの決別
●パッケージは良くも悪くも全国標準業務フローで作られている
●何が一番大切なのか(住民サービス、コスト削減)
⇒ カスタマイズしないことの理解
 今後の情報システムの方向性
●「情報システム」から「サービス」へ (独自開発、カスタマイズ ⇒ テンプレート活用、パッケージ適用、サービス化)
●「所有」するものから「サービス利用」するものへ (クラウド、ASP、SaaSへの動き)
⇒ ASP化は今後、更に加速する。
17