わが社の新製品、新技術の紹介/シリーズ3:日酸TANAKA

「わが社の新製品、新技術の紹介/シリーズ3:日酸 TANAKA」
2014 年 10 月
わが社の新製品 新技術の紹介(シリーズ№3)
日酸 TANAKA㈱
FA事業部 国内営業部
石川 広宣
1. はじめに
日酸TANAKAは 1989 年に”世界初”となる発振器搭載型 CO2 レーザ切断機を開発・
販売を開始し、造船、橋梁、建機、シャーリング等の市場やお客様ニーズにお応えする、
LMX シリーズ(写真 1)
、LMR シリーズ(写真 2)といった、発振器搭載型 CO2 レーザ切
断機を国内、海外に 1,000 台以上納入して参りました。
近年では、以前から注目されていたファイバーレーザが高出力化を実現したことで、フ
ァイバーレーザの普及が増え、特に 2kW 以下の出力による薄板分野では、切断性能とラン
ニングコストの両面で CO2 レーザよりも高い優位性が得られることより、ファイバーレー
ザの普及率が高くなってきています。
写真1
発振器搭載型 CO2 レーザ切断機 LMXⅦ
写真2
発振器搭載型 CO2 レーザ切断機 LMRV
最近では、ファイバーレーザの適用範囲を中厚板分野へ拡大する取り組みがなされてお
り、当社も 2011 年より中厚板切断を対象とした 5kW ファイバーレーザ切断機の販売を開
始しております。
今回は、「わが社の新製品・新技術の紹介」と題しまして、弊社のファイバーレーザ切断
機をご紹介させて頂きます。
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2. ファイバーレーザ切断機の開発背景
弊社は、2006 年にファイバーレーザ加工技術の研究開発に着手し、第 1 号機となる定尺
4×8 サイズ(1,219mm×2,438mm)に対応したフルカバー式の 2kW ファイバーレーザ切
断機を 2008 年に納入致しました。(写真 3)
写真 3
定尺材専用ファイバーレーザ切断機 LMSⅢ
その後、中厚板分野へ適用範囲を拡大し、2011 年には、5kW 発振器で“世界初の軟鋼板
厚 32mm の実用切断”を実現した、大型ガントリータイプのファイバーレーザ切断機 FMR
シリーズを製品開発し販売を開始致しました。
(写真 4)。
さらに今年の4月 2014JIWSにて、大型定尺 8×20 サイズ(2,438mm×6,096mm)
に対応したフルカバー式のファイバーレーザ切断機 FMM シリーズを製品発表し(写真 5)、
中厚板市場に最適な切断機のラインナップを揃えております。
写真 4
大型ファイバーレーザ切断機 FMR
写真 5 大型定尺材専用ファイバーレーザ切断機 FMM
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3. ファイバーレーザのメリット
3.1 レーザの特性
表 1 に各種レーザの特性、図 1 にファイバーレーザと CO2 レーザの発振方法を示します。
表1 各種レーザの特性
波長 (μm)
チラーを含む総効率 (%)
レーザヘッド、電源、
チラーの占有面積
(LDを1として)
Fe
Al
ビーム吸収率
(%)
半導体レーザ
(LD)
0.8
25~30
ランプ励起
YAGレーザ
1.064
1
ファイバー
レーザ
1.07
20
CO2レーザ
(軸流)
10.6
6
1
12~15
1
6~7
40
13
35
7
100
35
7
光学系
2,000
フラッシュランプ
500~1,000
25
1.0
0.6
12
2
光学系
2,000
ブロワー/タービン
20,000
6
0.1
(焦点径)
LD
10,000
取換え時間 (Hrs.)
ビーム品質 BPP(mm*mrad)
および
ファイバー径
ファイバー径
(φmm)
LD
50,000
5
0.1
表 1 を見ると、ファイバーレーザは、CO2 レーザに比べて波長が約 1/10 と短いことにより、金
属へのエネルギー吸収率が CO2 レーザの約 3 倍と非常に高いことが分かります。
ファイバーレーザは金属へのエネルギー吸収率が高く、反射によるロスが少ないことより、CO2 レ
ーザと比較して、高い切断性能を得ることができると言えます。
また、ファイバーレーザの変換効率は CO2 レーザの約 3 倍と非常に高い効率となります。
これは、気体レーザである CO2 レーザの場合は放電エネルギー、固体レーザの一種であるファイ
バーレーザは光(ダイオード光)であり(図 1)、ファイバーレーザでは光の種類を変更するだけなの
で非常に高い変換効率が得られ、結果消費電力削減にもつながっています。
Yb添加コア
※レーザ媒体
励起光
励起用
ダイオード群
励起用
ダイオード群
(発振用ファイバー)
レーザ光
マルチ
カプラー
マルチ
カプラー
(伝送用ファイバー)
FBG
ファイバーブラッググレーティング
(b) CO2レーザの発振方法
(a) ファイバーレーザの発振方法
図1 ファイバーレーザとCO2レーザの発振方法
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3.2 付帯設備の縮小
CO2 レーザはビームの伝送に反射鏡(ミラー)を使用する(図 2)ため、ビーム伝送のための複数
枚のミラーとそれらを設置するための装置が必要となります。
一方、ファイバーレーザでは、ファイバーケーブルにてビーム伝送がおこなえるため、ミラー等の
部品や装置が不用となります。
4. 弊社のファイバーレーザ切断機の特徴
4.1 省エネルギ
表 2 に弊社が採用するファイバーレーザと CO2 レーザの発振器およびチラーの仕様比較
を示します。
ファイバーレーザは、3.1 項で述べた高エネルギー変換効率の関係で、消費電力が CO2
レーザの約 1/3 で、筐体サイズも小さく、非常に省エネルギーな仕様となっています。
さらに、CO2 レーザには必要不可欠なレーザガスが不要、発振器の待機電力が無いとい
った特徴もあります。
表2 ファイバーレーザとCO2レーザの装置仕様比較
発
振
器
ー
チ
ラ
メーカ
サイズ
波長
レーザガス
定格出力
最大出力時
消費
ベース放電
電力
(待機電力)
サイズ
消費電力
冷却能力
流量
ファイバーレーザ
IPG
1,106×806×1,519
1.07μm
不要
5kW
20kW
CO2レーザ
FANUC
3,250×790×1,420
10.6μm
20L/h
6kW
60kW
0kW
22kW
1,590×850×1,500 2,190×1,200×2,010
13kW
45.8kW
20.3kW
66kW
90L/min
250L/min
付 昇圧トランス
そ
帯
の 純水装置
設
他 レーザガス切り替え装置
備
吸着式エアードライヤ
必要
不要
チラー内臓
不要
不要
必要
必要
必要
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4.2 省メンテナンス
表 3 にファイバーレーザと CO2 レーザのメンテナンスについて示します。
ファイバーレーザは、3.2 項で述べたビーム伝送系の光学部品が不要なため、CO2 レーザ
で必要となる発振器内外部部品の定期的な清掃・交換・調整が不要となり、基本的にはメ
ンテナンスフリーとなります。
表3 ファイバーレーザとCO2レーザのメンテナンス比較
CO2レーザ
ファイバーレーザ
出力鏡
リア鏡
発
折り返し鏡
振
ガスフィルター
器
消
真空ポンプ排気フィルター
耗
真空ポンプオイル
品
ターボブロアオイル
プロセスファイバー
ゼロシフトミラー(5枚)
外部
集光レンズ
円偏光ミラー(1枚)
光学系
保護ガラス
集光レンズ
その他
ノズル
ノズル
メ
内部光軸調整
発
ン
振
定期清掃(放電管)
テ
器
部品交換
ナ
外部光軸調整
ン 外部
定期清掃
ス 光学系
4.3 低ランニングコスト
図 3 にファイバーレーザと CO2 レーザの 1 ヶ月当たりのランニングコスト比較を示しま
す。
ファイバーレーザは、CO2 レーザに比べて、約 66%の電気代削減、約 28%のガス代削減、
約 85%の保守・消耗品代削減が可能となり、総ランニングコストとしては実に約 71%の削
減が図れます。(CO2 6kW 発振器とファイバー 5kW 発振器による比較)
1,200,000
1,000,000
800,000
600,000
ファイバー 5kW
CO2 6kW
約71%削減
=使用状況『某ユーザ実使用条件』=
月の立ち上げ時間:422時間(17h/日)
プログラム起動時間比率:422時間の55%
ビームon時間比率:422時間の34%
約66%削減
約85%削減
400,000
約28%削減
200,000
0
電気代
ガス代
消耗部品
保守費用 総ランニングコスト
(ミラークリーニング)
図3 ファイバーレーザとCO2レーザの1ヶ月のランニングコスト
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4.4 高い切断性能
表 4 にファイバーレーザと CO2 レーザで、板厚 32mm 軟鋼切断を実施した際の切断結果
を示します。
ファイバーレーザは CO2 レーザよりも低いビーム出力でありながら、同等の切断能力が
得られていることが分かります。
また、表 5 には中抜き切断をファイバーレーザで実施した結果を示します。
ファイバーレーザによる中抜き切断は、板厚 16mm でΦ5mm、板厚 22mm でΦ7mm と
いったように、板厚の約 1/3 の直径が切断できており、CO2 レーザの場合は板厚と同等直径
が一般的であることから、ファイバーレーザの高い中抜き切断能力が確認できます。
図 4 にファイバーレーザと CO2 レーザでパルスピアシング能力を比較した図を示します。
いずれの板厚についても、ファイバーレーザの方が、2~8 秒程度ピアス時間が短く、ファ
イバーレーザはピアシング能力にも優れていると言えます。
表4 ファイバーレーザとCO2レーザの切断品質比較
アシストガス種
レーザ出力
切断速度
軟鋼切断(板厚32mm)
CO2レーザ
ファイバーレーザ
酸素
酸素
5kW-CW
6.5kW-パルス
600mm/min
600mm/min
切断面写真
中抜き切断
板厚16mm φ5mm 板厚22mm φ7mm
表面
裏面
50
パルス ピア シ ング時間
(sec.)
表5 ファイバーレーザの中抜き切断性能
ファイバーレーザ
CO2レーザ
40
30
20
10
0
0
5
10
15
20
25
30
板厚(mm)
図 4 ファ イ バ ーレ ーザ と CO 2 レ ーザ の ピ ア シ ン グ 能 力 比 較
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4.5 安全対策
ファイバーレーザは、1.07μm という波長であることから、目に対する危険が非常に高
く、切断機に遮光カバーの設置や作業者の保護メガネの着用、レーザ管理区域の設定等、
WES9020:2014「高出力レーザ溶接及び切断の安全基準」に準拠した安全対策が必要とな
ります。
弊社ではファイバーレーザ光の遮光対策を考慮したファイバーレーザ切断機を2機種用
意し、お客様のご要求に合わせてご提案させて頂いております。
①FMMシリーズ
定尺材8×20(有効:幅 2.6m×長 6.6m)に対応したファイバーレーザ切断機で、装置全
体をフルカバーで覆い、ファイバーレーザの反射光を気にすること無く、安全に切断作業
が行えるファイバーレーザ切断機です。
遮光フルカバー
FMMシリーズ:ファイバーレーザ切断機
ファイバーレーザ切断機
素材及び製品の出し入れは、パレットチェンジャ、
鋼板ストッカ装置、トラバース台車等を用意し、
お客様の用途や工場スペースに適応したご提案を
させて頂きます。
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②FMRシリーズ
門型ガントリータイプのファイバーレーザ切断機で、有効切断幅 2.5m~5.5m の幅広い範
囲に対応。有効切断長については走行レールを延長することで、50m といった有効長にも
対応可能となります。
また、既設発振器搭載型 CO2 レーザ切断機やプラズマ切断機の既設走行レールを流用し
て、FMRファイバーレーザ切断機を設置するといった対応も可能となります。
門型ガントリータイプのファイバーレーザ切断機において、懸念される問題はファイバ
ーレーザ光に対する安全性ですが、弊社では独自の遮光対策により、レーザ切断機設置場
所の外周に遮光壁を設置しない運用方法についてもご提案させて頂きます。
a) 切断機本体遮光対策:トーチ遮光カバー+機体遮光カバー+遮光スカート装備
b) 切断定盤遮光対策
:ファイバーレーザ用切断定盤の販売及び提案
c) オペレータ遮光対策:ファイバーレーザ専用保護メガネの着用
d) 設置エリア管理区域の設定:関係者以外立入禁止
FMRシリーズ:ファイバーレーザ切断機
機体遮光カバー
ファイバーレーザ用切断定盤
(反射光対策を考慮した定盤構造)
トーチ遮光カバー
遮光スカート
(機体カバーと切断定盤間の隙間を遮光)
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門型ガントリータイプファーバーレーザ「FMRシリーズ」の導入・運用ですが、お客
様におかれましてはファイバーレーザ光の危険性を十分にご理解頂いた上での運用とさせ
て頂くと共に、安全性維持のため定期的な遮光部品交換(遮光スカート、等)やメーカ定
期点検が必要となりますことを予めご了承願います。
5. 最後に
弊社は、切断・溶接機器から工業ガスまでを一貫して提供できるトータルソリューシ
ョンカンパニーとして、今回ご紹介させて頂きましたファイバーレーザ切断機をはじめ、
各種プラズマ切断機・ガス切断機や罫書装置(マーキング)、その他付帯機器に至るまで、
お客様のご要望に応じた様々なご提案をさせていただいております。
気軽に最寄の弊
社支店・営業所に何なりとご相談下さい。
また、弊社ホームページ(http://nissantanaka.com)にて各種製商品のご紹介や、お
問合せ・ご相談をお受けしておりますので、是非ご活用下さい。
日酸TANAKAは今後もお客様のニーズにお応えする製商品の開発に取り組んで参
ります。
今後とも「日酸TANAKA」を宜しくお願い申し上げます。
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