日本中にもっと牛のいる風景を 小学生みんなに牛のぬくもりを

巻頭言
日本中にもっと牛のいる風景を
小学生みんなに牛のぬくもりを
東海農政局
次長
栗本 まさ子
名古屋城からほど近い東海農政局の玄関ロビー
いう意識が高まってきている今、肉用牛経営は、
には、牛の写真が展示されています。多くの方々
酪農と並んで「牛―人―土・草」のバランスの上
の暖かいご理解、ご支援をいただき、初回の1.5
に立脚する最も環境に、地球に優しい産業、と胸
倍を超える応募作品を得て終了した第2回東海・
を張っていただきたいと思うのです。
牛放牧フォトコンテストの受賞作品です。
家畜とのふれあいを通じた食育の実践を続ける
かつてはどこの農家でも飼われていた牛。ここ
方は、畜舎の前を鼻をつまんで走って通る小学生
に放したら牛がとても喜びそうだ、ここに牛がい
を見たのがきっかけ、と言われます。ご近所への
たらどんなに良い景観になるだろう、ここは牛に
配慮、牧場・畜産への理解を深めて欲しいという
頑張ってもらうしかないだろう、などと思われる
思いがきっかけになったのです。そして今では、
場所はいたる所にありますが、外でのどかに草を
毎年4年生が子牛を飼う小学校、山羊を飼育し子
食んでいる姿を見かけることは、ほとんどなくな
山羊品評会で一等賞を取った小学校などがあり、
りました。
教育的な成果も報告され、食育推進基本計画は教育
耕作放棄地が牛舎の目の前に広がる繁殖農家
に、なぜ牛を外に出さないのか伺ったことがあり
ファームの取り組みの推進を目標に掲げています。
田植えや芋掘りも大切ですが、家畜、特に牛と
ます。主な理由は、ご近所への配慮、遠慮でした。
のふれあい、餌付けや掃除をすべての小学生に体
臭い、鳴き声がうるさい、虫がわく、水が汚れる、
験させて欲しい、と願っています。名古屋駅のす
脱走したら大変…。農村地帯なのに、こんなにも
ぐ隣の大都会の小学校でもこれが見事に実践され
肩身の狭い思いをしておられるのか、愕然とした
ています。このことは、牧場・畜産を理解しても
ものです。
らう、応援団を増やすため、というよりむしろ、
すっかり遠ざかってしまった牛と人。是非もう
子どもたちをやさしく、たくましく育てるために
一度、牛のいる風景を増やし、両者を近づけたい。
必要になっている、とその女性校長はおっしゃい
この思いが放牧フォトコンテストのコンセプトで
ます。
す。放牧に最も適しているとされるのは繁殖和牛
私達の調査で、「牛が好きですか?」との問い
の2頭組。臭い、鳴き声云々の問題はまずなく、
に「嫌い」と答えた人はわずか4%でした。思っ
安産でその後の繁殖成績も良好。始めるとき大反
ているより、みんな牛が好きだと考えても良さそ
対なさったお年寄りは、収牧の折り、窓から顔を
うです。遠慮せずにもっと牛を外に出し、もっと
出して寂しそうに聞かれたそうです。「今度いつ
地球に優しく牛を飼い、そして何よりも、未来を
来るんだい?」と。
担う子どもたちをやさしく、たくましく育てよう
そしてさらに、「環境への配慮はおしゃれ」と
ではありませんか。
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