開会の挨拶(12k)

●ウイルス肝炎
開 会 の 挨 拶
森
亘(日本医学会長)
おはようございます.私は現在日本医学会
をいまでも覚えておりますが,とにかく,い
亘と申し
までいうウイルス肝炎は当時から多くの人々
ます.開会に当たって一言ご挨拶申しあげま
の注目の的でした.こういう意味では大変古
す.
い問題であります.
の会長を仰せつかっております森
本日は,第 123 回日本医学会シンポジウム
そして新しいという意味は,その後多くの
ということでご案内をさしあげましたとこ
方々のご努力によって研究が著しく進展いた
ろ,このように多くの方々がお出かけ下さい
しました.その中に在って,今日ご発表いた
ましてありがとうございました.心からお礼
だける日本人の研究者の方々も,非常に大き
申し上げます.
な役割を演じられたわけです.いずれにして
日本医学会シンポジウムは,原則として 1
も,この病気については非常に多くの研究が
年に 3 回開催しておりますので,第 123 回と
行われ,非常に多くの知見が得られ,同時に
もなれば,約 40 年の歴史を持っていること
治療法等も大いに変わり,現在なお日々新た
になります.その時々にさまざまな課題を掲
になりつつあると私どもは理解しておりま
げてまいりましたが,今回は
「ウイルス肝炎」
す.そうした意味からすれば,これは大変新
であります.ただこのウイルス肝炎という題
しい問題でもあります.
目も,どちらかといえば広義にとらえており
いま私はこのように,古くして新しい問題
まして,内容としてはご覧いただきますよう
であるということを申しあげましたが,ここ
に,ウイルス肝炎はもちろん,肝炎ウイルス,
にもう一つ付け加えたいことがあります.そ
ウイルス性肝疾患というようないくつかの言
れは,私どもの時代には,世界中の病気では
葉が多く使われていることにご注目いただき
あるものの,どちらかというとアジアやアフ
たいと思います.
リカに重点が置かれていたと思うのです.し
この広義のウイルス肝炎と申しますもの
かし最近では,決してアジア,アフリカ諸国
は,いわば日本にとって古くして新しい問題
のみならず世界全体の問題である,というよ
であろうと思います.古いという言葉の意味
うな意識が非常に強くなったと理解しており
から申しますと,とくに臨床の場ではかなり
ます.
以前から注目されていたということでありま
本日のシンポジウムの内容は,
「わが国にお
す.多くの方々にはちょっと想像ができない
けるウイルス性肝炎の現状」に始まって,
「分
かもしれませんが,私どもは,たとえばモイ
子レベルからみた肝炎ウイルス」
「肝炎ウイ
,
レングラハト黄疸指数とか高田反応など,そ
ルスと肝障害」
,そして
「ウイルス性肝疾患に
ういった時代の人間です.そのころはカタル
対する治療の進歩」という 4 つの大きな項目
性黄疸という言葉が実際に使われていたこと
に分かれております.それぞれに優れた演者
ウイルス肝炎 1
の方々をお迎えできましたことは,私どもに
変優れた三人の先生方に組織委員をお引き受
とって大変喜ばしいことであります.
けいただき,このように立派なプログラムが
この日本医学会シンポジウムの運営にあ
できあがった次第であります.
たっては,まず企画委員会を設け,そこで
「次
前置きはこの程度にいたしまして,今日の
にはどのようなシンポジウムの課題を選ぶの
シンポジウムが充実したものでありますよう
がよいか」という相談をしていただきます.
に祈念して,私のご挨拶を終りましょう.こ
そして課題が決まりました後,次の段階とし
こで多くのご発表をうかがい,また活発な討
て組織委員会というものを設け,そこでは具
論をしていただいて,今日このシンポジウム
体的なプログラム,あるいは演者のお名前を
が終わる時点で,ご出席のみなさま方が「出
考えていただきます.今回は組織委員の方々
席して本当によかった」という印象を持って
として,順不同ですが,東京大学の小俣政男
お帰りいただければ,主催者にとってはこの
教授,自治医科大学の真弓
上ない喜びでございます.なにとぞよろしく
忠名誉教授,広
島大学の吉澤浩司教授という,この領域で大
2 第 123 回日本医学会シンポジウム
お願い申し上げます.