議事録 - ライフサイエンスの広場

科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会/学術分科会 脳科学委員会
戦略的に推進すべき脳科学研究に関する作業部会
(第2回) 議事録
1. 日時
平成27年2月5日(木曜日)14時00分~16時00分
2. 場所
文部科学省 旧文部省庁舎5階 文化庁特別会議室
3. 出席者
(委 員) 樋口主査、岡部主査代理、岡澤委員、尾崎委員、加藤委員、須原委員、
本間委員
(欠席:赤澤委員、神谷委員、山口委員)
(事務局) 堀内ライフサイエンス課長、阿蘇戦略官
馬場ライフサイエンス課長補佐、横井ライフサイエンス課長補佐
4. 議事
(1) 社会への貢献を見据えた今後の脳科学研究の推進方策について
(2) その他
5. 配付資料
資料1
社会への貢献を見据えた今後の脳科学研究の推進方策について
(中間取りまとめ)(骨子案)
参考資料1
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会/学術分科会
脳科学
委員会 戦略的に推進すべき脳科学研究に関する作業部会委員名簿
参考資料2
戦略的に推進すべき脳科学研究に関する作業部会の設置について(平
成26年12月15日 脳科学委員会(第26回)参考資料2)
参考資料3
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会/学術分科会
脳科学
委員会運営規則(平成26年12月15日 脳科学委員会(第26回)
参考資料4
戦略的に推進すべき脳科学研究に関する調査検討の主な論点
参考資料5
戦略的に推進すべき脳科学研究に関する調査検討の経過及び今後のス
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ケジュール
参考資料6
社会への貢献を見据えた今後の脳科学研究の推進方策について(調査
検討経過報告)
(平成26年12月15日 脳科学委員会(第26回)資料1)
6.議事内容
【樋口主査】
時間は少し早いですけれども、できるだけ早めに始めて、雪がひどくな
らないうちに終わりたいと思います。それでは、第2回の戦略的に推進すべき脳科学研究に
関する作業部会を始めさせていただきます。先生方におかれましては、悪天候の中、そし
てお忙しい中にお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は、赤澤委員、神
谷委員、山口委員より御欠席との御連絡を頂いております。
それでは、本日の議事及び配付資料の確認について、事務局からお願いいたします。
【横井課長補佐】
それでは、本日もよろしくお願い申し上げます。
まず、配付資料の確認でございます。お手元のクリップで綴じたものを御覧いただけれ
ばと思います。外していただくと分かりやすいと思います。1番目は、座席表の1枚紙です。
2枚目は、議事次第の1枚紙です。資料1として、中間取りまとめの骨子案、参考資料1が委
員名簿、参考資料2が「作業部会の設置について」
、参考資料3が、脳科学委員会の運営規則、
参考資料4が主な論点、参考資料5が「調査検討の経過及び今後のスケジュール」
、最後に、
参考資料6として、調査検討の経過報告の資料でございます。先生方のお手元には、前回の
脳委員会における御意見の未定稿のものと、冊子として、平成21年の第1次答申の報告書を
お配りしております。
本日の議事につきましては、2枚目の議事次第にございますとおり、
「社会の貢献を見据
えた今後の脳科学研究の推進方策について」となっております。資料等を含めまして、過
不足等ございましたら、お申し付けいただければと思います。
以上でございます。
【樋口主査】
ありがとうございます。
では、本日の議題に移りたいと思います。最初の議題は、
「社会への貢献を見据えた今後
の脳科学研究の推進方策について」でございます。本件につきまして、前回のこの作業部
会において御議論いただきまして、その際に頂いた御意見を踏まえて、主査、主査代理で
まとめをさせていただきまして、それが本日の資料1でございます。その内容について御議
論を頂くことになります。なお、今回の議論を踏まえた内容については、来週2月13日の脳
-2-
科学委員会で、中間取りまとめ骨子として報告をさせていただく予定になっております。
それでは、資料1につきまして前回からの変更点を中心に岡部主査代理より、御説明を頂
きたいと思います。
【岡部主査代理】
お手元の資料1を御覧ください。前回、この資料1をお出しいたしま
して、いろいろ御意見、御議論を頂きました。その後、こちらの方で内容を検討いたしま
して、特に不足しているのではないかという御指摘を頂きました、今後の戦略的な脳科学
研究の推進自体の社会への貢献の在り方はどんな形で見えてくるのかという部分の記載が、
少し薄かったということで、これはむしろ1章を設けて、そこにきちんとした形で記述すべ
きではないかということになりました。
資料の3ページ目、4ページ目、5ページ目の部分が、
その新しく付け加わりました2-0
「社会への貢献を見据えた脳科学研究の在り方と今後の推
進方策」という部分になります。この部分は全く新しい文章ですので、少し集中して見て
いただいて、御意見を頂ければと思います。
続きまして、2‐1‐1「臨床と基礎の連携強化による脳科学の社会貢献」の中の「研究の
現状分析による今後の研究課題」の部分に関しましても、多少記載が短くて、研究の現状
が必ずしもきちんと分かるような形にはなっていないのではないかという御意見がありま
したので、この部分に関しては、前回お出ししました資料の文案をなるべく生かす形で、
そこに数行程度の加筆を加えていく形で変更を行いました。こちらについて、後ほど、も
う少し詳しく、どこの部分が変わっているのかを御説明いたします。これが3ページ目から
9ページ目までになります。
その次の10ページから13ページまでの「戦略的研究項目」の部分の記載ですけれども、
この部分に関しては、基本的には前回お示ししました資料と、ほとんど記述は変わってお
りません。実際には指摘された点も幾つかあったのですが、今回お出しする資料が、それ
以前の前段の部分の文章がかなり変わっておりますので、改めて今回全体をお目通しいた
だいて、その上でこの戦略的研究項目について、何か過不足等があれば御意見を頂くのが
適切ではないかと考えました。
続きまして、2‐2、それから2‐3の部分ですけれども、この部分に関しては、前回まで
の資料では、2‐2が「脳の情報処理の理解とその応用による社会貢献」という章で、2‐3
が「脳の機能回復・代償・補完の実現による社会貢献」という部分になっておりました。
ただ、振り返って見てみますと、2‐1の部分が主に精神・神経疾患に関する取組というこ
とですので、それに近付けたところに、むしろこのBMI、リハビリテーション等を含む機能
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回復という章を持ってきた方が、全体としての収まりがいいのではないかということにな
りまして、2‐2と2‐3の部分は順番を入れ替えております。内容に関しては、14ページ、
15ページ、16ページ、17ページの部分は、前回お出しした資料とほとんど変更はございま
せんので、きょう改めて御覧いただいて、もし新たにお気付きの点等がありましたら、御
指摘を頂ければと思います。これが全体の変更の概要になります。
引き続いて、特に大きく挿入等変更がありました2‐0の部分と、それから2‐1‐1の部分
について、御説明させていただければと思います。
まず、3ページを御覧いただいて、2‐0「社会への貢献を見据えた脳科学研究の在り方と
今後の推進方策」について御説明いたします。この部分は、後段の実際の戦略的研究項目
に合わせて2‐0‐1、
2‐0‐2、
2‐0‐3という形で3つの部分に分けて記載をいたしました。
2‐0‐1が精神・神経疾患の克服に向けた取組、どのような社会への貢献ができるのかとい
うことが記載されております。初めの段落に、現在の日本の社会の特に問題となっている
高齢化についての記載をしてあります。実際に世界で類を見ないような形の高齢社会にな
りつつあることと、それに伴って認知症の患者数の推計が出ていますけれども、これが2025
年には700万人を超えるという推計値があるということで、
これに対する研究開発や成果の
普及というのが非常に重要な課題であることが記載されてあります。
2段目に行っていただいて、この部分は精神疾患、発達障害に関する記載でして、統合失
調症の患者数、うつ病、双極性障害を合わせた患者数、その未治療の患者数が更に多いと
いう推計、それから、うつ病をはじめとする精神疾患に関しては社会的損失が極めて大き
いという、経済的な損失についても記載をしてあります。
3段目は、以上の記述を受けて、このような認知症、うつ病を代表とするような精神・神
経疾患の予防診断治療が社会的な貢献として非常に大きなものであること、現在走ってい
るその研究開発としては、脳プロの中で、特に課題Fが、精神・神経疾患の克服を目指す脳
科学研究ということで実施されているけれども、最終年度を既に迎えること、それからも
う一つ大きな研究計画としては、革新脳という研究計画の中で、中核拠点を中心にして脳
の機能構造マップを活用して、神経回路情報から精神・神経疾患にアプローチすることが
試みられつつあるけれども、そういう形での戦略設定なので、必ずしも全ての研究開発を
これに包含することは難しいということになると思います。
このような議論を受けて、
その次の段落で、
今回の社会に貢献する脳科学研究としては、
このような臨床脳科学に結び付くような形での研究、特に疾患概念、それから疾患に関連
-4-
した分子といった基盤的な研究から、トランスレーショナル医学に至るような、多段階の
研究をつなげて、効率良く推進する研究の仕組みを作ることが重要であることが書かれて
おります。
4ページ目に行っていただいて、
そのための実際の研究要素についても後段で触れられて
いまして、例えば、動物モデルによる基礎研究を推進する上で、その臨床試験にきちんと
有効性が得られるような形の動物モデルが必要であることから、効果の高い遺伝子変異や
孤発例の研究等から得られる疾患遺伝子情報、更に遺伝子の組み合わせとしてのネットワ
ークをいかに解析していくかという技術を確立する。更に超早期診断が一つの重要な技術
ですので、それに結び付くようなバイオマーカー、それから疾患動物モデルの開発を結び
付けた、ネットワーク型の研究体制が必要であると結論付けました。ここの部分が精神・
神経疾患の克服に向けた取組として、1番目の重要項目として挙げた内容になります。
2-0-2は順番を入れ替えましたので、「身体機能損失の回復・代償・補完に向けた取組」
が記載されています。1段目では、脳及び身体機能の障害というものが、様々な要因で引き
起こされますけれども、これは非常に医療の分野では、様々な診療科にまたがった領域に
なります。脳外科、神経内科、整形外科、リハビリテーション、それから小児科あるいは
麻酔科、ペインクリニック、眼科、耳鼻科等、様々な診療科に、縦割りでこれを研究して
いくのは非常に効率が悪いことで、こういう個別の方法論ではなくて、それを総合的な戦
略として、機能回復に向けた新しい研究をしていく必要があることが、まず1段目で書かれ
ています。
2段目に関しては、そういう観点から、既にブレインマシーンインターフェースの研究が
脳プロの課題として推進されていますけれども、そこで行われているのは非常に実用化に
向けた出口に近い研究が主体であって、その範囲は神経工学的な部分に限定されるという
性格が強いことが書かれています。現在、様々な再生医療、あるいは工学、情報学等の技
術の進歩がありますので、特に幹細胞工学の応用を含めて革新的な機能回復、補綴技術を
実現することが可能であるということから、これが2番目に重要な研究項目として、
「脳の
機能回復・代償・補完の実現による社会貢献」を挙げると結論付けました。
続いて2‐0‐3が、これまで2番目に挙げられていました「社会の幸福度の向上と社会的
ストレスの低減に向けた取組」ということで、この部分は、まず疾患という狭い範囲にと
どまらず、社会全体の幸福をいかに担保するかという意味で、現在の日本の社会での様々
な問題点についての記載がされています。特に、主観的幸福は様々な要素によって成り立
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っていて、一面では経済的なファクター、雇用機会や自由時間の確保、あるいは子育て・
教育、福祉・医療などが挙げられますけれども、こういう部分に加えて、非経済的な要因
として、かなり精神的なファクター、人と人とのつながりや支え合い、それから他者の役
に立っているという実感等が重要であるという報告があります。特に我が国は、世界幸福
度報告書の中で幸福度が43位であることが報告されていまして、経済規模の評価との間に
非常に乖離があることが一つの特徴ですので、こういう非経済的な要因による幸福度の低
下の原因を調べていくことには意味があるということを結論付けております。
2段目で、実際にこのようなポジティブな意味の幸福度の裏側の側面として、社会的スト
レスや問題行動、それが、ひきこもり等の対人関係の問題の場合もありますし、薬物乱用
や多重債務、それから肥満・摂食障害、生活リズムの障害といった問題にも広がっていま
す。このような人の行動パターンの多様性、それから不適応を科学的に調べていくことが
非常に重要であって、自殺率の統計等を見ても、日本はOECDの34か国中4位という高率にあ
る点も指摘されていますので、早急な対策が求められています。
このような観点から、こういった「ヒトの行動選択・コミュニケーション・社会性を対
象とする脳科学を推進」することを、第3番目の重要な研究項目として挙げさせていただき
ました。ここまでが「社会への貢献を見据えた脳科学研究の在り方」という部分について、
新しく記載を加えた内容になります。
引き続きまして、2‐1‐1の「臨床と基礎の連携強化による脳科学の社会貢献」の部分の
「研究の現状分析」を多少修正いたしましたので、そこを御説明いたします。6ページを御
覧ください。2‐1‐1「研究の現状分析による今後の研究課題」の中の(1)
「発症メカニズ
ムの探求」という部分です。この部分に関しては、様々な階層の分子を扱うべきであると
いうところで、少し記載の統一が取れていませんでしたので、今回の版では、ゲノム変異、
RNAの発現・制御、タンパク質の発現・修飾等という形でまとめております。それから、統
合オミックス的アプローチに加えて、大規模データを扱うための計算論の開発という部分
が必要であることが指摘されていましたので、この文言が付け加わっております。
以上が(1)の変更点です。
続いて(2)に行っていただいて、マル1の「精神・神経疾患の生化学的バイオマーカー
の開発」の部分ですけれども、前回はたしかここは比較的簡略化された記載になっていま
したけれども、今回は認知症研究、特にアルツハイマー病の生化学的バイオマーカーに関
する記載について、実例を挙げて少し詳しく説明するようにさせていただきました。
また、
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認知症の中のアルツハイマー病以外の認知症についても、記載を付け加えております。こ
の部分の記載で、生化学的なバイオマーカーについて、前回のものですと、分子マーカー
や生化学的バイオマーカー、それから血液バイオマーカーなど様々な表現がされていまし
たので、ここはなるべく「生化学的バイオマーカー」と記述するようにしております。た
だ、この点については、もし御意見があれば頂ければと思います。
続きまして、マル2「認知症の病態進展メカニズム解明」の部分になりますけれども、こ
の部分も実際の分子プローブの開発に関する記載について、少し詳しく内容を書くという
ふうに変更してあります。特に3行目でしょうか、
「しかし、開発されたタウのプローブや」
以降の文章に関して、開発されたものがどのような形で使われていくべきであるか、それ
から、プローブがアルツハイマー病以外の認知症での異常タンパクを検出するという観点
からも、必要であることが記載されています。
続きまして、マル3の「精神疾患における症状発現の神経生物学的基盤の解明」の部分で
は、前段の、現状として海外及び日本でのゲノム研究と脳画像研究を組み合わせた解析に
ついての説明という部分を、少し詳しく記載させていただきました。現状の問題点として
は、バイオマーカー確立、それから病態関連神経回路の同定が課題となっていることが記
載されています。ここの変更はその点になります。
続いて(3)
「モデル動物の開発と創薬への応用」の部分を御覧ください。マル1の「精神
疾患モデル動物」に関しては、特に変更はしておりません。マル2の「認知症モデルマウス
を用いた病態解明と創薬への応用」の部分に関しては、これまでの記載は少し簡略化され
ていましたので、もう少し詳しく、アミロイド凝集がきちんと再現されるモデルが今まで
つくられているけれども、このモデルの中で治療効果を示した成功例がまだ得られていな
いという形の記載に変更しています。実際にこの乖離の理由としてどういう原因が考えら
れるかということについても、少し詳しく書かせていただきました。
以上がこのマル2の部分の変更点です。
それから、マル3「精神・神経疾患モデル動物における薬効評価のための行動指標及び動
物とヒトに共通な画像・生理マーカーの開発」の部分では、真ん中の文章で、新しく視線・
眼球運動の解析に関する記載をさせていただきました。これはヒトでは有用性が期待され
ているけれども、モデル動物としてはまだ作成されていないことが重要だという御指摘が
ありましたので、追加してあります。
続いて(4)
「新しい疾患概念と革新的治療技術」の、マル1「新規バイオマーカーによる
-7-
精神・神経疾患の脳病態分類再編」の部分になります。この文章の前半の部分の記載を少
し変えております。精神疾患における疾患概念の問題点に関して、前回の記載よりもかな
り詳しく書かせていただきまして、ヒトと動物で共通に測定可能な中間表現型の開発が試
みられているけれども、まだ確立したものがないこと、症候群のレベルで、その分類がと
どまっていることが多いことを記載してあります。
この段落については以上です。
続いて、マル2「精神・神経疾患の回路病態を解明するための革新的ヒト神経組織モデル
研究」の部分は、現状としての研究内容について少し記載が詳しくなっておりまして、2
行目「国外において、小頭症のiPS細胞から作成した脳オルガノイド、それから、アルツハ
イマー病遺伝子を発現させた神経前駆細胞からの3次元的脳オルガノイドの病態解析が、国
外で行われていることを追加してあります。
続いて、
(5)
「リソース・データ蓄積」に関しては、マル1の「iPS細胞、脳組織等の人試
料リソースの活用基盤整備」の部分の前段の文章が、前回は、たしかほかの部分と文章が
重複しているという御指摘がありましたので、この部分は書き変えさせていただいていま
す。欧米でどのような研究が行われていて、それが実証的なデータの裏付けが乏しい、日
本発の研究戦略としては、どのような形の研究が必要であるかということが書かれており
ます。
この部分の変更点については、以上になります。これで大体御説明はさせていただけた
と思いますので、あとは御議論いただければと思います。以上です。
【樋口主査】
どうもありがとうございました。
前回からの変更点を中心に説明をしていただきましたので、それも含め、また変更が加
わっていないところも、全体を通して御意見を頂ければと思いますので、どこの項目から
でも結構でございます。よろしくお願いいたします。
どうぞ。
【須原委員】
4ページですけれども、
「精神・神経疾患の創薬研究においては動物モデ
ルによる基礎研究では成果が得られつつある一方で」という。
【樋口主査】
上から3行目ですね。
【須原委員】
はい。そうありますが、創薬研究で成果が得られつつあるというと、薬
に結び付くと思うので、ここは「動物基礎実験では多くの知見が得られている」というよ
うな書き方の方がいいのでは。
-8-
【樋口主査】
「多くの知見」ですね。
【須原委員】
はい。
【樋口主査】
よろしいですか。
どうぞ、そのほかはいかがでしょうか。どうぞ。
【尾崎委員】
この2-0-1の最初、高齢化から始まるのですが、高齢化しているのは少子
化が起こっているからなので、
「少子高齢化」
としていただいた方がいいように感じました。
そのために、例えば発達障害が起こっていることが少子化にもつながっていたり、あるい
は、5ページ目に、肥満と摂食障害と生活のリズムの障害が出てきます。ここで「摂食障害」
と疾患名が突然出てきますが、去年12月に厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査」
によると、成人の女性の痩せ、BMIが18.5未満の人が史上最高になった。要するに極端な痩
せですよね。それが問題なので、「肥満」とされるなら、
「極端な成人女性の痩せ志向」と
された方が、しかもそれが少子化にこれまたつながってしまうということではないかなと
は感じました。2‐0に関しては、そのようなところを感じております。
それから、文言ですが、4ページで「効果の高い遺伝子変異」が出てくるのですが、後ろ
の方では「エフェクトサイズの大きい」と出てきていたり、全体にもう一度そこら辺の文
言の統一化が図られた方がいいかな。特にそれ以降も疾患名がいろいろな名前で出てくる
のですが、
「自閉症」になったり「自閉スペクトラム症」になったり「発達障害」になった
り。初めて読む人は、これは一緒なのか違うのか、分からなくなるだろうという気はいた
しました。
それから、ページの順で言いますと、6ページ2‐1‐1の(1)のマル1ですが、最初の文
「欧米では」云々のところですが、
「実証的データによる裏付けのない仮想的な予想」とい
う文言が出てまいります。欧米の現状をこのように指摘されているのですが、同じような
表現で、実証的データの乏しい、裏付けが乏しいのが現状であると、9ページにももう一遍
出てくるのですね。こう言い切っていいのか、では、全くデータの裏付けがないのか、ど
こまではやっているのかというのは、逆に確認しておいたほうがよいだろう。私の理解で
すが、精神疾患の場合は、極めてまれな変異がいろいろな遺伝子に見付かってきている。
遺伝的な非常に異質性が分かってきて、それをある程度統一の病態にするためには、こう
いったパスウェイとかイン・シリコの解析が非常に重要で、今のところは、例えば遺伝子
発現が、どの時期に脳のどの部位で一緒に起こっているかといったデータ、遺伝子の共発
現や、あるいはタンパク‐タンパクの相互作用などのデータに一応基づいてイン・シリコ
-9-
で解析されている。全く実証的データによる裏付けのない仮想的な予想というのは、言い
過ぎであろう。
一方、今はここまではやっていて、まだ何をやっていないのか。後で「修飾」が出てき
ますが、こういったことはまだやれていなくて、ここはやらねばいけないということに、
次の文章につながるのだろうと思うのです。ここでは、機能という話は出てこないのです
が、例えば当然、修飾が起こって、最終的に機能がどうなるのか。酵素や例えばトランス
ポーターの機能がどう変わるかというのは、欲しいわけですよね。そのことはここでは出
ないなと思っていたら、このような同じような文言が何遍か出てくる中の、10ページの上
に、同じような文章の後で、「また、同定された分子の機能の解析は研究項目(3)におい
て実施する」と言ってくださっているのですが、機能解析はどうするのかというのは逆に
最初に言っておかれた方が。ここまで来て、ようやく機能の解析は後ろなのだということ
が分かるのですね。そのような感じはいたしました。
最後にもう一つだけ申し上げますと、先ほどお触れいただいた、視線・眼球運動のこと
ですが、8ページでは「行動指標」と書いてあって、7ページのマル3では「生理学的指標」
となっていて、読む人は、これは生理指標なのか、
「生理学的」と「生理指標」も混ざって
いますが、行動なのか生理なのか、多分一体化されているのでしょうが、違うものをここ
では言っているのか、同じものなのかが分かりにくくなるので統一をされる。モデル動物
だと生理指標と行動指標と両方取らなければいけないので、
「生理・行動指標」とされた方
がいいのかもしれないです。
そのような文言のことと、先ほどの仮想的云々のところは、少し引っ掛かったところで
あります。以上です。
【樋口主査】
ありがとうございます。用語については、もう一度見直していただくこ
とが必要ですが、「生理学的指標」に統一した方が、
「生化学的バイオマーカー」と使って
いるので良いのではないでしょうか。
【加藤委員】
「行動」は入れないということですか。
【樋口主査】
そこはどうしましょうか。
【加藤委員】
行動も計測したら生理学と言えなくもないですよね。
【樋口主査】
広い意味ではね。
では、加藤先生、ありますか。
【加藤委員】
まず3ページの2段落目で、統合失調症とうつ病、双極性障害の人数や社
-10-
会負担が書いてありますが、この中に自閉スペクトラム症が1行あってもいいような感じが
します。自閉スペクトラム症が何とかかんとかと。
【樋口主査】
自閉症に関してはきちんとしたデータがありますか。
【尾崎委員】
数は明確でなくて、一応、有病率は、最近一、二%と出ています。
【樋口主査】
有病率ですね。
【加藤委員】
何か一言あればいいと思います。
それから、4ページ、7行目ぐらいで、
「分子変異に立脚した研究」と書いてあるのですが、
前のところでは「遺伝子変異」となっているので、余り「分子変異」とは言わないような
気がしますので、ここも「遺伝子変異」でいいかなと思います。
【尾崎委員】
後ろの方は「ゲノム変異」になってきますね。
【加藤委員】
「ゲノム変異」の方がいいですかね。では、上も「ゲノム変異」ですか
ね。
【樋口主査】
「ゲノム変異」でしょうね。
【加藤委員】
「効果の高いゲノム変異」
、下も「ゲノム変異に立脚した」と統一したら
いいのかなと。
【岡部主査代理】
ここの「分子変異」は、
「疾患関連分子ネットワークの新規解析方法
の確立による」
を受けているので、
「遺伝子変異」
としてしまうのは狭過ぎると思いますね。
【樋口主査】
なるほど。
【加藤委員】
しかし、
「分子変異」というのも、余り聞かなくて。これは患者さんに見
付かる分子の変異ということですよね。
【岡部主査代理】
【加藤委員】
いや、そんなことはないと思います。
【岡部主査代理】
それに限らないということですか。
仮想的な分子変異も含めて、動物実験で想定される仮想的な分子変
異も含めたものだと思います。
【加藤委員】
【岡部主査代理】
では、このままで。
言葉として非常に違和感があるのであれば、何かお考えいただけれ
ばと思います。
【岡澤委員】
私が発言してもよろしいでしょうか。
【樋口主査】
どうぞ。
【岡澤委員】
多分、尾崎先生の御発言とのすり合わせもあるのだと思いますが、何が
-11-
従来の欧米の研究で分かっていて、何が不十分かという意味で、この言葉が残ってきてい
るのだと思います。言葉自体の使い方は確かに新しい感じがするので、少し考える部分だ
と思うのですが、先ほど尾崎先生がおっしゃった、遺伝子変異はいろいろ分かっている、
それをそのネットワークに落とし込むこともしている、そこから出てきた仮想的なキー分
子を一部機能解析していることはやっている。一方で、例えば明らかにRNAの発現情報など
がそこに加味されていることはないし、タンパク自体の機能がそこで見付かった変異でど
う変わっているかが、十分に織り込まれていることもない。そういった意味で、この文脈
の「実証性が乏しい」と書いてあったり、実証性がないみたいな形で書いてあったりとい
う、表現のところは微妙に調節する必要があると思うのですが、実証は不十分であると。
特に機能面で実証は不十分であって、機能面を加えたネットワーク解析が必要であるとい
うことが、伝わればいいのだと思うのですが。
【加藤委員】
6ページの5行目ぐらいに関するコメントですね。
【岡澤委員】
はい。全体を通して、尾崎先生が先ほど3か所ぐらい指摘されたところを
通じてのコメントです。
【樋口主査】
そうすると、ここは「分子変異」という言葉は残した方がいいというこ
とですね。
【加藤委員】
はい、分かりました。
【樋口主査】
では、続けてください。
【加藤委員】
あと5ページですが、幸福のことが書いてあって、
「人と人のつながり」
とか書いてあって、非常にすばらしい文章で、これ自体は本当にアグリーするところです
が、その最後に、これに基づいて「第三として」これを「挙げることとした」ということ
で、その内容が若干狭い感じがしまして、この幸福が重要だという話で大きく出ているけ
れども、それに対して研究内容が少ないという印象があります。最後の1文の前に、例えば
「ヒトの行動選択・コミュニケーション・社会性を対象とする脳科学を幅広く推進し、科
学的基盤を提供することが必要である。そのためには、非常に幅広い研究が必要なのであ
るが、ここでは特に推進すべき項目として」のように、物すごくたくさんあるけれども、
今回はこの辺に少し焦点を当てますというぐらいにしておいた方が、幸福のためにこれだ
けでいいかと言われると、もっとあるのではないかなという感じがしました。
次の6ページの「実証的データによる裏付けのない仮想的な予想」は、私ももう少し柔ら
かく書いた方がいいかなと。例えば「機能的な意義がまだ完全には実証されていない」と
-12-
か、その程度で。何しろ「仮想的な予想」と言ってしまうと、その後また新たな計算論で
大規模データを扱ったときには、また仮想的な予想になると思いますので、これを否定し
てしまうと苦しいのではないかと思います。
次の「生化学的なバイオマーカー」という言葉に関しては、これでいいのかどうか、何
を含むのかというのが、解釈が割れるところかと思います。例えば、分子イメージングは
こちらにも画像にも入るような気がしますし、ゲノムは入らないけれども、エピゲノムは
入るのかなとか、何かそこら辺は解釈次第ということで、
「生化学」は残していいかなとい
う気になりました。だから、改定の提案では。
【尾崎委員】
ゲノムの遺伝子多型の例が出てきますね。ポイント。
【加藤委員】
はい。
【尾崎委員】
ゲノム変異も入っているので。
【加藤委員】
ゲノム変異もバイオマーカーに入りますか。
【尾崎委員】
入れているように読めます。
【加藤委員】
そうか。ゲノムも入ると。
【岡部主査代理】
ここの文章は、
「脳脊髄液中の生化学的バイオマーカーや遺伝子多型」
なので、生化学的バイオマーカーに遺伝子多型は入っていないというふうに、一応書いて
はあるのです。
【尾崎委員】
そういうことなのですね。すみませんでした。
【加藤委員】
それから8ページ、4行目に「ノックインマウス等の新たなモデルの開発
が必要である」と書いてあるのですけれども、大分以前のバージョンでは、こんなノック
インマウスがあり、こんなノックインマウスも脳プロでつくったという書き方をしていた
時期もあったものですから、実際ノックインマウスが結構開発されているところもあるの
で、
新たなモデルを用いた研究が必要であるとすれば、開発も含めてということになって、
いいのではないかと思うのですが。
【樋口主査】
【加藤委員】
「開発」をやめてしまうわけですね。
新たなモデルを用いた研究が必要であると。
用いるために必要だったら、
また開発してもいいと思うのですが。
【須原委員】
「患者に近い脳病態」が、ここの意図するところなのではないですか。
【加藤委員】
ええ。これができたと主張している論文も。それを否定してしまうので。
【須原委員】
そうですね。確かに、それはそう。
-13-
【加藤委員】
あと8ページの下から3行目で「ヒトアルツハイマー病遺伝子を発現させ
た」と。この論文を私は知らないのですが、
「アルツハイマー病遺伝子」は一般用語みたい
な感じで、
「原因遺伝子変異を導入した」とかですかね。
【岡澤委員】
これは私が一部書いたのかもしれないのですが、変異遺伝子を発現、オ
ーバーエクスプレッションさせている系だったと思います。
【加藤委員】
では、CRISPRで変えたとかではなくて、変異遺伝子の過剰発現。
【岡澤委員】
ええ。入れ替えたという意味ではないですね。変異を足したわけではな
くて。
【加藤委員】
では、アルツハイマー病原因変異。
【岡澤委員】
トランスジェニックマウスと同じような、ウィルスベクターを用いたト
ランスジェニックセルですね。
【加藤委員】
「アルツハイマー病の原因遺伝子変異を発現させた」ですかね。すみま
せん、細かいことで恐縮ですが。
【岡澤委員】
変異遺伝子を発現させたということですね。
【尾崎委員】
というものですね。元の文章はそうなっていましたよね。
【加藤委員】
あと11ページですが、1番上に「うつ病・精神病性障害」と私が以前書い
たものだと思うのですが、あのときは、たしか未発症から発症までをフォローするコホー
ト研究というような文脈で、統合失調症と決めつけるのもなと思って、このように書いた
のですが、この文脈で見ると何だか変だなという感じがしますので、ここは「うつ病・精
神病性障害」をやめて、精神・神経疾患でいいかと思います。
そうすると、マル2の下から2行目で、うつ病、統合失調症及び神経変性障害とあるので
すが、
「神経変性障害」は変なので「神経変性疾患」としつつ、あと、統合失調症の次に「自
閉スペクトラム症」を入れた方がいいのかなと思いました。
それから11ページのマル1ですが、マウスを使ったMRIと神経回路のラベル法の透明化で
神経回路を同定することが書いてあるのですが、これだけだと因果関係がよく分からない
ので、
「組み合わせた3D解析を行うとともに、神経回路操作により原因神経回路の意義を検
証する」とか、何かそういう一言があった方がいいのかなと思います。
次の12ページ、1番上の段落の「精神疾患については」というところで、ここは全て「モ
デルマウス」となっているのですが、この大項目のタイトルは「モデル動物」となってい
まして、しかも創薬スクリーニングに利用可能なという話なので、もう少し小さい動物の
-14-
利用もあり得ると思いますので、ここの1段落に「マウス」が4つありますけれども、
「モデ
ル動物」にしておいた方が、より必要に応じて使うことができるかなと思います。
最後に、13ページのマル2の2行目ですが、前回コメントさせていただいたものがそのま
まになってしまったのかと思うのですが、うつ病のゲノム研究は余り希望が薄いというこ
とで、
「うつ病」の代わりに「双極性障害」をここに入れた方がいいと思います。
以上です。
【樋口主査】
はい。
ほかにはいかがでしょうか。岡澤先生、何かお気付きのところはありますか。
【岡澤委員】
いや、私は特別ありません。今まで御指摘のあった用語の統一や、表現
の強弱的な、あるいはニュアンス的なところ以外はございません。大変よくまとめていた
だいて、むしろ感謝を申し上げる次第です。
【樋口主査】
本間先生は何か。
【本間委員】
問題であった2‐2と2‐3の入れ替えで大変分かりやすくなりました。特
に、幸福あるいはストレスなどの文言が入ってきて、一般の人に役に立つところが強調さ
れて、分かりやすくなり、大変感謝いたします。
16ページの2‐3‐2「脳・身体・環境ダイナミクスの包括的分析による意思決定」のとこ
ろで、実際そのとおりですが、
「遺伝子、教育・発達環境、生体リズム、情動、記憶」と、
内容が非常に雑多で、少し分かりにくいかなと思いました。また、生体リズムがあるので
すが、睡眠障害、不眠、今の日本人は非常にストレスフルな社会で、十分な休息が得られ
ていないということもあるので、そういう点もどこかに入れられたらよいかと思いました。
【樋口主査】
睡眠の問題という意味、生体リズムだけではなくてという意味ですか。
【本間委員】
そうですね。
【樋口主査】
ただ、疾患とか障害とかというふうに、ここは触れるのは、文脈として
はどうなのですかね。
【岡部主査代理】
もう少し幅広な方がいいかもしれないです。
【本間委員】
そうかもしれないです。
【尾崎委員】
「生活リズムの乱れ」とか。
【樋口主査】
「生活リズム」とか「睡眠」という。
【尾崎委員】
「乱れ」ぐらいで。「障害」よりも。
【加藤委員】
「生体リズム」の後に「生活リズムの乱れ」というと繰り返しっぽいで
-15-
すね。
「睡眠」
、
「生体リズムの乱れ」を中黒で。
【樋口主査】
「睡眠・生体リズム」がいいかもしれないですね。
須原先生は何かありますか。
【須原委員】
さもないことですが、6ページ、マル1の1行目、
「欧米では、精神・神経
疾患」ですよね。ほかの部分の表記と合わせると。
【樋口主査】
全部ここは統一ですよね。
「精神・」と。
【須原委員】
13ページですが、加藤先生が以前指摘されたようにも思ったのですが、
ここの項目が「iPS細胞、脳組織等のヒト試料リソースの活用基盤整備」ですが、本文では
「患者のiPS細胞等のリソースを整備する。細胞リソースは」となっているのですが、ここ
も「iPS細胞、脳組織等のリソース」にして、
「組織リソース」と直すような感じだったの
ではなかったですか。
【樋口主査】
「iPS細胞」の後に「脳組織等の」
。
【須原委員】
「脳組織等のリソースを整備する」で、ここの「細胞リソース」ではな
く「ヒト試料リソース」
。
【樋口主査】
「ヒト試料」ですね。
ほかはいかがですか。どうぞ。
【岡部主査代理】
先ほど加藤先生から御指摘いただいたように、2‐0の部分の3番目の
項目ですが、幸福の話を付け加えて、改めて実際の研究実施内容としての3番目の項目を見
てみると、要するに、加藤先生が言われるように、私も、研究項目のスペクトルが狭くな
っているのかなという気が、振り返ってみてしております。ですから、そこを何とかうま
く膨らませたらいいのかなと感じていまして、とりあえず一つ、この「戦略的研究項目」
のタイトルですが、今の形だと意思決定の統合的理解だけを目指すという内容になってし
まっているので、そうではなくて、
「脳・身体・環境ダイナミクスの統合的理解」といった
タイトルにしてしまった方がいいのではないかと感じております。むしろ、意思決定の包
括的分析を行って、それによることで、脳・身体・環境ダイナミクスの統合的理解を目指
すというふうにすれば、目標とするものが社会に対して開かれている形になりますので。
下の実際の研究項目も、そういった視点を取り入れて多少変更した方がよろしいかなとい
う気がしております。
【尾崎委員】
あと1点、いいでしょうか。
【樋口主査】
どうぞ。
-16-
【尾崎委員】
先回、私は欠席をしていたものですから、確認ですが、コホートがなく
なって、どちらかというとgenotype first(ゲノム変異の有無を確認した上で、前向きに
コホート研究を実施する)でという文言に切り替わって、13ページのマル2にそれが反映さ
れています。「検出された変異を出発点として」のところですね。私が最後に出ましたとき
に、加藤先生からgenotype firstという話が出ていて、それをここに入れていらっしゃる
のかなと思ったのですが、そうであうなら、ある時点だけの表現型ではなくて、
「継続的な
表現型の解析」と、
「継続的な」を入れていただくと非常に有り難いと思います。
【樋口主査】
「継続的な」ということですね。
それでは、疾患名のところを統一、基本的には「精神・神経疾患」という表現でいいで
すね。それから「発達障害」という言葉と「自閉症」という言葉をどこかに使っていまし
たか。
【尾崎委員】
「自閉症」
「自閉スペクトラム症」が3つ出てくるのですが。
【樋口主査】
3つ出てきますね。これも統一した方が。これを「発達障害」で統一すべ
きですか。
【尾崎委員】
「精神疾患」と「発達障害」を分けているところと、一緒にしていると
ころと、それから「自閉症」という文言と「自閉スペクトラム症」といろいろ混在してい
て、読んだ人は、同じなのか違うのかが分かりにくいので。
【樋口主査】
そこは統一すべきですね。
【尾崎委員】
はい。自閉スペクトラム症は、精神疾患の中に、DSMの中にも入っていま
すので、入れて頂きたいと思います。また、自閉スペクトラム症で統一するのが、現在の
用語の方向ではないかと思いますが。
【須原委員】
先生、そうすると、3ページの「一方で、精神疾患・発達障害」の表現は
どのようになりますか。
【尾崎委員】
ここは「精神疾患」にして、先ほど加藤先生が御指摘いただいたように、
頻度を「自閉スペクトラム症も一、二%で」という文言を入れれば、それも含んでいるこ
とが分かるのではないでしょうか。
【樋口主査】
そのほかはよろしいですか。どうぞ。
【加藤委員】
つまらないことですが、12ページの真ん中辺に「血液・髄液等の生化学
サンプルも収集する」と書いてありまして、バイオサンプル、生体試料、何としたらいい
か分からないのですが、
「生化学サンプル」
は何か変かなと思いまして。要らないかな。
「髄
-17-
液等のサンプル」だけでもいいかもしれないです。
【樋口主査】
「等のサンプル」でもいいですね。
【加藤委員】
はい。あと、12ページの下から5行目に、
「3次元的に再構成された神経回
路モデルにおいて」
、
「効率良く行うための技術開発」と。これはずっとオーガノイドとい
うアイデアでやってきたので、もちろんそうなのですが、ひょっとして2次元の方がいいよ
うな解析があったら、それを使ってもいいという感じもするので、ここはどうでしょう、
「3次元的に」と特定した方がいいのか、
「再構成された神経回路モデル」だけでもいいよ
うな気もするのですが。どれだけオーガナイドにこだわるかということですが、オーガノ
イドがうまくいかなかった場合も、多少想定した方がいいかなと思ってしまいます。
【樋口主査】
それは、その上もそうですか。
「in vitro」でも。
【加藤委員】
バイオ技術の開発はした方がいいと思うのですが、やってみた結果、2
次元の方がいいよねという可能性も、ないとも言えないと思いました。
【岡澤委員】
これは私の記憶では、加藤先生が入れられたように思っていたのですが。
【加藤委員】
そうでしたか。その後、だんだん考えが変わってきまして、オーガノイ
ドで本当に行けるかどうか、実際これを始めたときに、うまくいくかどうか、やってみな
いと分からないと。まだオーガノイドで本当に精神疾患の様態が解明できるかどうか、未
知数かなという気が沸々としてきまして。
【樋口主査】
なおさら、そうですね。では、外しましょう。
【加藤委員】
すみません。
【岡澤委員】
ただ、限定するのはあれですけれども、学問の進歩のためには、少しチ
ャレンジングなところを多少フォースする部分も、必要かなとは思うのですが。
【加藤委員】
技術開発は3次元をどんどんやり、再構成されたモデルに関しては可能な
ところからどんどん始めると。
【岡澤委員】
そうですね。革新的技術、治療技術と書いてありますけれども、革新的
技術という要素を言うには、2次元だと余りにも当たり前というか。
【加藤委員】
「2次元」と書いてしまうと、いま一つなのですが。
【樋口主査】
書かない。
【岡部主査代理】
この文章は、最後、末尾が「技術開発を行う」と書かれていますの
で、私の感覚では「3次元的に」と書いてしまっても、それは技術開発課題なので、よろし
いのかなという気がいたしますが。
-18-
【樋口主査】
技術開発だからという意味で。
【加藤委員】
では、すみません。
【樋口主査】
元に戻しておいて、いいですか。
「3次元的」は。
【加藤委員】
開発を行う、実際の主な機能解析は、場合によっては、より現実的な2
次元のモデルを活用する場合もあり得るという理解で。
【岡部主査代理】
そうですね。それは当然だと思います。
【加藤委員】
失礼しました。
【尾崎委員】
細かい文言の話ばかりで申し訳ないのですが、先ほど申し上げた6ページ
は、
「ゲノム変異、RNAの発現・制御、タンパク質の発現・修飾等の網羅的情報」云々と書
いてあって、似たような文章が何度か出てくるのですが、微妙に違っています。意図的に
変えているのか、単に用語の統一ができていないのかが、よく分かりません。例えば9ペー
ジのiPS細胞のところにも、
「ゲノム変異、RNA発現、スプライシングパターン、タンパク質
発現・修飾」が出てきて、10ページの上にも、マル1のところに「ゲノム、coding/
non-codingRNA、タンパク質発現と翻訳後修飾」と出てくるのですね。3回同じような文章
が出てくるのですが、微妙に違っていて、意図的か否か分かりにくかったので、統一をさ
れるのか、あるいはもう意図的に変えるのか、そこら辺もお考えいただくといいかなと思
いました。また「分子パスウェイ」になったり、
「タンパク質パスウェイ」になったりして
います。その前の文言で言いますと、6ページでは、ゲノム解析を「分子パスウェイにつな
げる」と書いてあって、9ページでは、
「タンパク質パスウェイ」になっているというとこ
ろが、意図的に変えているのか分からなかったので。
【岡部主査代理】
9ページはこれまでの研究の説明ですので、欧米で行われているのが、
ゲノム情報からタンパク質パスウェイにつなげる研究であるという意味だと思います。そ
れ以外の部分は、多分、今後行うべき統合的なオミックス研究についての説明なので、ゲ
ノム変異、RNA、それからタンパク発現・修飾という全てのレベルを書くという形になって
いると思います。ただ、確かに書き方としてRNAの部分がcoding/non-codingになっていた
りするところは不統一なので、もしよろしければ、今それはどういう表現が一番適切なの
かを決めていただければ、あとは事務的に全てその形に書き直せると思いますが。
【樋口主査】
いかがでしょうか。9ページの「日本発の研究戦略として」の下に書いて
あるところが、
「ゲノム変異、RNA発現、スプライシングパターン、タンパク質発現・修飾」
、
これがどちらかというとスタンダード。
-19-
【岡部主査代理】
そうですね。もしこれでよろしければ、全てこの記載にしますけれ
ども、ただこれだとマイクロRNAとかが抜けてしまうかもしれないので。
【岡澤委員】
そうですね。マイクロRNAの発現というのでもいいと思うのですが、多分、
「RNAの発現・制御」が一番いいかなとは思いますが。
【樋口主査】
発現と制御。
【岡澤委員】
ええ。例えばRNA decayだとかいうものも入ってくるので。
【岡部主査代理】
そうすると、6ページのマル1に書かれている表現でいいということ
でしょうか。「ゲノム変異、RNAの発現・制御、タンパク質の発現・修飾等」という表現で
よろしいでしょうか。
【岡澤委員】
良い表現だと思います。
【樋口主査】
では、それで統一をする。
【尾崎委員】
10ページもそうなりますかね。もう一回、ここは「ゲノム」と書いてあ
って、
「coding/non-codingRNA」と書いて、ここは修飾に、「翻訳後修飾」と書いてある。
【加藤委員】
網羅的データだから変異に限らないから、これは「ゲノム、RNA、タンパ
ク」だけでいいのではないですかね。
【尾崎委員】
ここはね。そこは意図的に違うのだということですね。
【岡部主査代理】
ここはどうでしょう。どちらでもいいと思いますが。多分、
「変異」
と書いても多分コントロールが要るので、当然、変異していないものも収集するでしょう
し。
【尾崎委員】
ここだけわざわざ「翻訳後修飾」と書いてあって、あとは「修飾」だけ
で終わっていますよね。
【岡部主査代理】
【尾崎委員】
そうですね。
細かい話ですが。気になってしまって。普通、
「翻訳後修飾」と言ってい
ませんか。修飾だけだと、分かる人は分かるのですが、
「翻訳後修飾」の方が分かりやすい
のですが。
【岡澤委員】
難しいですね。6ページの最初の表現を踏襲すると。
【樋口主査】
それでいいということですね。
ほかにはどうでしょうか。
【尾崎委員】
あと12ページの先ほどのバイオマーカーのところですが、マル1で、疾患
横断的な、ここは「分子バイオマーカー」と書いてありますが、ここだけ「分子バイオマ
-20-
ーカー」になっている。先ほどの御説明で「生化学バイオマーカー」にするという話があ
ったのですが、ここだけ「分子」になっていますね。
【樋口主査】
いや、ここは「生化学的バイオマーカー」で問題はないですね。
【尾崎委員】
いいですね。
【樋口主査】
どうぞ。
【岡部主査代理】
今回、2番目と3番目の項目を入れ替えましたので、今までよりもBMI
の発展技術が、最初の項目に近付いたわけですよね。近付いたことで、むしろ両方、ある
意味少し並べて見ていただいて、多少記載に関しても、iPSを使うと技術的なオーバーラッ
プもありますし、そういった観点から、現状の記載でよろしいのか、それとも、むしろ分
ける方向で考えた方がいいのか、あるいは統合して両者が少し研究協力しながら課題とし
て進めていくような形に書くべきなのか。そこら辺は、一般的な御意見として頂ければい
いかなと思いますが。
【加藤委員】
対象の病気が全く違うので、まとめると少し話がややこしくなるかなと。
ALS、アプローチもそうですし、ここに書いてあるような脳性まひとか脊髄損傷といったも
のは、2‐1の方では出てこないので、カテゴリーとしてはこれでいいのではないかと思い
ます。ただ、4ページでは、BMIは今やっているけれども、そうではなくて生物学的な理解
に基づいたアプローチと幹細胞による補綴、補完が重要だというお話ですが、この4ページ
を読んだ後で14ページを見ると、少しBMIの方に比重が掛かっている感じがしまして、どう
書いたらいいかすぐには思い付かないのですが。BMIよりも神経工学的な側面でない、生物
学的な理解と幹細胞工学というところを、少し強調した方がいい感じがしました。
【岡部主査代理】
多分このマル3が、一番バイオに近い部分になるのですが、記載が少
し短くて、内容を取りにくいところはあるとは思うのですね。
【加藤委員】
あと15ページのマル4は完全にBMIの話なので、でも、今の状態では足り
ないと思っていらっしゃる方も多いと思うので、これはいいのでしょうね。
【岡部主査代理】
この部分も、もう少しバイオと組み合わせたような形での記載は、
可能かもしれないと思います。例えば、細胞側にチャネルロドプシンみたいなものを入れ
ておいて、それで高精度に光デバイスを使って刺激するような技術とか、可能性はいろい
ろ考えられると思うのですが。
【加藤委員】
光や超音波等を用いて、生工融合ではないな、何か「生物学」の一言を
入れるといい。
「生物学的脳刺激法」というのがいいですかね。ワーディングは分かりませ
-21-
ん。
【樋口主査】
どうぞ。
【尾崎委員】
5ページの幸福度云々のところの現代社会の問題点として、先ほど、対人
関係とか行動選択、それから肥満と一方での痩せ志向と、生活リズムの乱れという話が出
てきていて、それに対する解決策は、
多分16ページの2‐3に呼応するのだろうと思います。
現代社会の問題を解決するのだということが、「円滑な人間関係の構築、
労働生産性の……
貢献するものと期待される」と書いてあるのだと思います。肥満と痩せが出てきますが、
その解決策は余り出てこないので、呼応するような形にされ、1対1対応にされた方が分か
りやすいような気がしました。
そういう意味では、2‐3‐2に「脳・身体・環境ダイナミクス」が出てきて、
「生体リズ
ム」が出てくるのですが、食べるとか、食物とか、あるいはボディーイメージですが、体、
痩せる、どういう体型、スタイルが良いとするのかという文化的規範が、そういうものが
何か入っていると、呼応するような気もしますが。少しややこしくなりますが。書き過ぎ
かもしれません。
【岡部主査代理】
【加藤委員】
何か一言で表現できるような。
「記憶」の次に「認知」を入れたらいいのではないですか。それでは足
りないですか。
「身体認知」にしようか。
【尾崎委員】
「身体認知」
。
【樋口主査】
「身体認知」
、
「ボディーイメージ」。
【尾崎委員】
「ボディーイメージ」が一番よく使われていますが、余り一般的ではな
いので。
【加藤委員】
何かスペシフィック過ぎる感じがします。
「認知」では広過ぎますか。
【樋口主査】
「認知」では、少し広いね。
【加藤委員】
「身体認知」はどうですか。
【岡部主査代理】
そうですね。
「身体認知」。
【樋口主査】
「身体認知」ですね。
【尾崎委員】
「身体像」ではないですか。
【加藤委員】
「身体像認知」。
【樋口主査】
「イメージ」
。
【加藤委員】
同じですね。
-22-
【尾崎委員】
【樋口主査】
そうですね。
「ボディーイメージ」に、だんだん近付いてきてしまった。
まさに。
少し横並びにするのがどうかという感じがしなくはないですね。
【加藤委員】
ほかが広過ぎますからね。
「遺伝子」とか。
【樋口主査】
相手が入っただけですから。
【加藤委員】
そうしますと、
「認知」くらいでいいのかもしれないですね。そこには「ボ
ディーイメージ」も含まれる。
【岡部主査代理】
ここは文章を整理して、要素を2つぐらいに分けた方がいいかもしれ
ないですね。
【樋口主査】
そうですね。そうした方がいいかもしれません。
【加藤委員】
外的要因と内的要因とか。
【樋口主査】
上位概念と、大き過ぎるのがあるから。
そうしますと、まだ細かい文言の修正については、今回は13日まで時間があるというこ
とですし、また13日に意見をいろいろ頂くので、それを含めた修正が入るわけですね。お
気付きの点は、今日に限らず頂くということでいいと思いますが、全体の基本的なところ
では、今日頂いたような御意見をこの中に盛り込んだ形にして、13日にそれを報告するこ
とになると思いますが、全体はよろしいでしょうか。今日のところの修正等については、
再度また主査代理と私の方で整理をさせていただくということで、
御一任いただくことで、
よろしゅうございましょうか。
(
「異議なし」の声あり)
【樋口主査】
【横井課長補佐】
ありがとうございます。どうぞ。
事務局からよろしいでしょうか。
ありがとうございます。
今後、
更に御検討というところになっていくとは思うのですが、
事務局から2つほどお願いがございます。まず、今後の課題についてですが、今回大きく3
つの分野として、認知症などの疾患、身体機能の補完の、それ以外に幸福度といったよう
に、分けていただいて、戦略的な研究項目も大分洗練されてきたようなイメージがあるの
ですが、作業部会の最初にもあったかもしれませんが、まず喫緊に取り込まなければいけ
ない短期的な課題と、長期的にやっていかなければいけない、中長期的にやっていかなけ
ればいけないものを、ある程度少し絞り込む形になると、私どもが今後これを課題として
立てていくに当たっては、非常に参考になるのかなと感じています。
また、今回は、あくまでも「戦略的に推進すべき」というところを絞り込んだ形で御検
-23-
討いただいているので、大きくこの3分野をうたっていただいているのですが、検討に当た
ってはかなり広い視野で現状の分析を頂いたと思います。現状これ以外にもたくさんいろ
いろ基礎研究も当然やられていると思うので、そういったものも重要だけれども、その中
でも喫緊な課題ということでは、こういうものが重要だというような流れというか、スト
ーリーを盛り込まれると、全体を俯瞰して絞り込むところが見えてくるかなと思っており
ますので、またその辺も是非、今後盛り込んで頂くようお願いしたいと思っております。
ありがとうございます。
【樋口主査】
今お話がございましたが、今後の予定といたしましては、2月13日の脳科
学委員会で、私と主査代理の岡部委員が出席のもとで、報告をさせていただきます。その
報告の後は、本日御議論を頂きました論点1と2とともに、論点3から5の検討を継続させて
いただいて、本年7月をめどに取りまとめを行うことになろうかと思います。委員の皆様に
おかれましては、引き続き、是非御協力を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいた
します。
大分、予定よりも早くて、雪がどうなっているかは分かりませんが、事務局の方、御連
絡はよろしいですか。
【横井課長補佐】
本日はどうもありがとうございました。
次回の作業部会につきましては、また後日改めて御連絡を申し上げたいと思います。本
作業部会は、脳科学委員会の下に設けられている作業部会ということもありますので、第7
期という脳科学委員会の任期から行きますと、今回が一区切りのような形になろうかと思
っています。引き続き2月の中旬以降、第8期ということで新たな枠組みで脳科学委員会も
スタートする予定にしておりますので、この作業部会は継続して、是非御協力をお願いし
たいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。今後の段取り、それから開催の
日程につきましては、事務局から御連絡を申し上げたいと思っております。
事務的なお知らせですけれども、今回の議事録につきましては、事務局で案を作成させ
ていただきまして、先生方にお諮りした後に、主査の御確認を頂いて、ホームページに掲
載という手続をとらせていただきたいと思っております。本日の資料につきましては、お
手元の封筒に入れていただければ、後日郵送させていただきますので、よろしくお願いし
ます。毎回ですが、この1次答申の冊子については事務局で保管しておりますので、そのま
ま置いていただければと思います。
以上でございます。
-24-
【樋口主査】
それでは、今日はどうもありがとうございました。お疲れさまでござい
ました。
―― 了 ――
-25-