Thermo Scientific Sorvall X シリーズを用いた 全血サンプルからの末梢

Application Note:
ANCFGGP1PBMC-0609
Thermo Scientific Sorvall X シリーズを用いた
全血サンプルからの末梢血単核球 (PBMCs)の分離
Gwendoline Hatton, Sophie Oceana, Dominique Collart, CHU Nantes Hotel Dieu,
Pole de Biologie, Banques de transfert, Biotheque-Tumorotheque, Nantes, Franc
概論
末梢血単核球(Peripheral Blood Mononuclear Cells;
PBMCs)は単球や T 細胞、B 細胞、NK 細胞を含むリン
キーワード
• 末梢血単核球
(PBMCs)
• 全血サンプル
パ球に代表される球状の核を持つ血球細胞を示す。
これらの細胞はヒト免疫システムにきわめて重要な構
成要素をなすことから、外来物質(ウイルスや細菌を
含む)に対する生体防御反応に中心的な役割を果た
している。
全血サンプルからの PBMCs の分離は Ficoll を用い
• Ficoll
た密度勾配遠心分離が用いられる。遠心ステップの
• Cell Preparation Tubes
後、Ficoll によってリンパ球や単球を含む血球層が血
(CPT)
• ユニバーサル遠心機
(X1シリーズ)
漿層の下に分離される。分離された PBMCs は学術研
究や臨床研究に用いられるほか、全血サンプルから
の PBMC の遠心分離は免疫システムのモニタリング
等の検査・分析にきわめて重要なステップになってい
る。
このアプリケーションノートでは二つの PBMC 調製法
を紹介する:一つは Ficoll を用いた密度勾配遠心法
1-5
、そしてもう一方は細胞分離用チューブを用いた分
離法である。これらの二つの方法は Thermo
Scientific Sorvall Legend X1 遠心機を用いて行われ、
分離された細胞の生存度および細胞の回収率を検定
することで評価した。
方法 1: Ficoll 密度勾配遠心法による
PBMC の分離
全血サンプルを Ficoll 密度勾配遠心にかける方法は
単球細胞の分離に最もよく使用される方法である。こ
の方法は習得までに技術的熟練が必要である。
図 1. Sorvall Legend X1(上)と
TX-400 スイングバケットロータ(下)
1. 採血管に全血サンプルを分取した。
2. クラス II 安全キャビネット内で全血を 50mL コニカル
チューブに移した。
3. PBS バッファーで全血を 1:1 に希釈した。
4. 希釈した全血サンプルを Ficoll の上に慎重に積層
した;チューブを一定角度に固定し希釈した全血を
ピペットでゆっくりと Ficoll の上に積層する。この方
法は熟練が必要である。
注) 細胞を十分に分離するためには、遠心処理の
前に Ficoll と全血サンプル層がきれいに分離してい
ることが極めて重要である。
5. 20℃、833xg (2,125rpm)で 20 分間遠心処理
(Thermo Scientific Sorvall X1R を使用)した。この時
加速は最大 9 にセットし、減速は 0 (ブレーキ無し)
で行った。
注) ロータは TX-400 ロータを使用した。汚染や暴
露を防ぐためにバイオセーフティー対応 ClickSeal
バケットキャップを使用すること。
6. 分離した層を乱さないように遠心機からチューブを
取り外した。
7. PBMC 層を注意深く取り出し、新しい 15mL コニカ
ルチューブへ分取した。この時 Ficoll を一緒に吸引
しないよう気をつける。
8. 残った Ficoll と赤血球を密閉可能なチューブに移
し、捨てる。
9. PBMC の入ったチューブに PBS バッファーを加え、
細胞を洗浄した。
10. 425xg (1,518 rpm)で 10 分間(加速・減速はそれぞ
れ 9 段階)遠心した。
11. 上清を捨て、再度細胞を PBS バッファーで洗浄し
6.
た。
12. 上清を捨て、細胞を適当な量の PBS バッファーへ
15 分間遠心した。細胞塊を壊さないように上清
のみを捨てる。
8.
人差し指でタップし細胞塊を懸濁後、PBS バッ
細胞数を検定した。
方法 2: BD Vacutainer CPT 細胞調製チュ
ーブを用いた PBMCs の分離
ANCFGGP1PBMC-0609
室温(20~25℃)で 300xg (およそ 1,275rpm)で
13. Hemocytometer 等で細胞数をカウントし、10uL の
注)Trypan Blue テストは細胞懸濁液中の生細胞を
カウントするために用いる一般的な方法である。原
理は、生細胞は無傷の細胞膜を持つため、細胞自
体は trypan blue のような色素を排除する。一方
で、死細胞は青く染まる。
Application Note:
を 3~5 回逆さにし、細胞をミックスする。
7.
懸濁し、調製 PBMCs とした。
サンプルを 10uL の trypan blue 溶液と混合し生存
PBS バッファーを加え細胞を洗浄した。チューブ
ファーを加えて 3~5 回チューブを逆さにすること
で細胞をミックスする。
9.
300xg で 10 分間遠心し、ペレットの細胞塊を壊
さないように上清のみを捨てる。
10.
細胞塊を PBS バッファーに再懸濁した。
11.
Hemocytometer 等で細胞数をカウントし、10uL
のサンプルを 10uL の trypan blue 溶液と混合し
生存細胞数を検定した。
クエン酸ナトリウムを含む BD Vacutainer CPT 細胞
調製チューブは単核細胞や全血のコレクションに使用
されるチューブシステムである。これらのチューブを用
いた PBMCs の単離を BD 社のインストラクションに従
って行った。
1. 静脈穿刺法によって BD Vacutainer CPT チューブ
に全血を収集した。
結果
遠心処理後、全血サンプルは次に示す順で上層か
ら下層へ積層する。
CPT: 血小板を含む血漿 PBMC  密度勾配
溶液  分離ゲル  赤血球および顆粒白血球を
含む層 (図 2a)
Ficoll 密度勾配: 血小板を含む血漿  PBMC 
注)全血サンプルは採血後 2 時間以内に遠心処理す
ることで最適な分離結果が得られる。
Ficoll  顆粒白血球および赤血球を含む層 (図 2b)
2. 遠心前にチューブを 8 回から 10 回ほどゆっくりと逆
これらの方法で分離・回収された PBMC 細胞につい
さにし、撹拌する。
て、その生細胞率と回収率の評価が行われた。
3. Thermo Scientific Sorvall Legend X1 または X1R と
TX-400 ス イ ン グ バ ケ ッ ト ロ ー タ を 使 用 し 、 BD
細胞の生存率
Vacutainer CPT チューブを 1,700xg (3,037rpm)で 20
PBMC 細胞の生存率を調製後直ちに検定した。Ficoll
分間、室温(20~25℃)で遠心した。加速および減速
および CPT で調製した PBMC は共に生存率は 98%を
はそれぞれ最高の
9 段階とした。
注)BD Vacutainer CPT
は 2,000xg 以上で遠心しない
超えていた。
こと。チューブの破損を引き起こすことがある。
細胞の回収率
CPT チューブを用いて回収された生細胞数は血液
4. 遠心後、注意深く CPT チューブを取り出し、クラス II
1mL あたり 2.66x106 cells であった。一方 Ficoll 処理に
安全キャビネット内で蓋を開ける。パスツールピペ
よる PBMC 回収法では 1mL あたり 2.96x106 cells であ
ットを用いて、穏やかに血漿層の下にある単核細
った。いずれの方法でも回収率に大きな差が認めら
胞層を回収した。
れなかった。
5. 細胞を 15mL または 50mL コニカルチューブに移し
た。この時激しいピペッティングを避ける。
図 2. 全血サンプルからの PBMC の分離。(a) BD Vacutainer CPT チューブを用いた PBMC の分離結果、(b) Ficoll 密度勾配法
による PBMC の分離結果
結論
参考文献
Application Note:
このアプリケーションノートは Thermo Scientific X1 ま
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granulocytes from human blood. Scand. J.
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Development of methods and demonstration
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lymphocyte preparation from stored
heparinized blood. Vox. Sang. 20:561-563,
1971.
ANCFGGP1PBMC-0609
たは X1R 遠心機と TX-400 スイングバケットロータを
使用して、Ficoll 法または BD-CPT 法により全血サン
プルから PBMC を回収した。TX-400 用バケットの
ClickSeal バイオセーフティーキャップを使用すること
で、遠心機使用者をサンプルの暴露または汚染から
保護することが可能である。これらの方法によって効
率よく PBMC の生細胞を回収することができた。
5. Fotino, M., Merson, E.J. and Allen, F.H.
Micromethod for rapid separation of
lymphocytes from peripheral blood. Ann.
Clin. Lab. Sci. 1:131-133, 1971.
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
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