マシーンvsフリーウェイト

from Strength and Conditioning
Volume 23, Number 5, pages 67-68
Machines versus Free Weights
マシーンvsフリーウェイト
Juan Carlos Santana[ユアン・カルロス・サンタナ、MEd、CSCS,*D、オプティマムパフォーマンスシステムズ、フロリダ
州ボカラトン]
長い間、人類は「ストレングスとパ
グを始めたのはこの頃である。「フリー
グには多くのフリーウェイトを含み、
ワー」に病みつきになっている。我々の
ウェイトは危険である」という表現をす
我々の活動する状況、動作の多面性に
「ストレングス」に対する関心は古くは
る人物も出てきて、メーカーでは「レジ
よって特徴づけられる状態、そして地面
古代エジプト、古代中国の芸術作品の中
スタンストレーニング・マシーンはスト
反力、重力、慣性、運動量、インパルス
に容易に見ることができるが、その中で
レングスおよび筋肥大を獲得する最適で
などの身体的要素を効果的に扱う。ま
は男たちが重い石を持ち上げているとこ
簡単な方法である」と説明した。
た、フリーウェイトを用いた機能的ト
ろなどが描かれている。そして今日では、
レジスタンストレーニング・マシーン
レーニングは、パフォーマンスのすべて
「強い男たち」のための競技がいくつか
の人気は高まり、1980年代を通して成長
の構成要素に対して安全な方法で取り組
存在している。絵文字やチャールズ・ア
を続け、1990年代にはより積極的なデザ
むことができ、神経的な要素が強いため
トラスの作品、あるいは「強い男たち」
インとマーケティングによってさらに成
に急激に成果が得られることも多い。
の競技を見ると、いくつかの共通点が明
長を拡大させていった。この成長には、
なぜ、いまレジスタンストレーニン
らかになる。それは、そこに描かれた
いくつかの要因が考えられる。それは、
グ・マシーンから、より機能的なアプ
「力業」はいずれもレジスタンストレー
運動人口の増加、施設数の増加、そして
ローチへと移行しているのだろうか? ニング・マシーンの助けを必要としない
もちろん人間の持つ「物事をより急い
レジスタンストレーニング・マシーンは
ものであり、すべてフリーウェイト様式
で、簡単に行おうとする」果てしない探
効果的でないのだろうか?
を利用しているということである。ま
究心ゆえである。しかし今日、状況が変
た、すべてがダイナミックで、地に足を
わり始めている。
つけて行う多関節動作を含んでいる。
この問いには「そうではない」と答え
ることができ、適用の仕方によっては効
最近、ストレングス&コンディショニ
果的であると言える。しかし、レジスタ
レジスタンストレーニング・マシーン
ング業界ではトレーニング方法に関する
ンストレーニング・マシーンで実施でき
の発達は、1900年代初頭まで遡り、垂直
パラダイムシフト(社会的な価値観の移
るほとんどのエクササイズはフリーウェ
方向への動作であるフリーウェイトト
行)が起こっている。業界では、
「フリー
イトトレーニングでも実施できるし、フ
レーニングから離れて、まず最初は水平
ウェイトに戻り、基本に回帰し始めてい
リーウェイトを用いて機能的トレーニン
方向の抵抗を加えることが可能なプー
る」。違いを明確にするために、ここで
グを行うとより効果的になることが多い
リーの使用から始まった。そこから、バ
はフリーウェイトトレーニングを、マ
のである。
ネ、ワイヤー、ケーブル、ゴムチューブ
シーンのような固定化された状況におい
では次に、レジスタンストレーニン
など重力の影響を受けない抵抗が開発さ
て起こらないトレーニングと定義しよ
グ・マシーンに対するいくつかの賛否
れていった。次いで第二次世界大戦後に
う。これには、メディシンボール、自体
と、フリーウェイトトレーニングとどの
は、振動ベルトや電動ファットローラー
重、サンドバッグ、幅広のゴムバンドな
ように比較されるのかをみてみよう。
などの様々なモーター機器が市場に姿を
どが含まれるが、これらだけに限定され
見せ始め、ほぼ同時にウェイトスタック
るわけではない。
まず、レジスタンストレーニング・マ
シーンは、初心者が専門家の指導なしで
を用いたレバーシステム(例:ユニバー
まず、パフォーマンス向上に関係する
トレーニングを行うといった管理者なし
サル)が一般的になってきた。1970年代
分野の指導者には、見栄えや感触がよ
の環境に置かれているときに強みがあ
にはカムシステムを持つノーチラスが現
く、機能的に優れた手段としてフリー
る。しかし、管理者なしでのトレーニン
れた。レジスタンストレーニング・マ
ウェイトを用いた機能的トレーニングを
グ実施は、どのようなトレーニング施設
シーンメーカーが積極的にマーケティン
奨める人がいる。この機能的トレーニン
においても許されるべきではない。それ
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はトレーニングを行う人(特に、経験の
なトレーニングに時間をかけている人の
る。その新しいプーリーシステムは、1
少ない人)にとっては非常に危険なこと
ほとんどが「優秀」以上の「最高の結
つのマシーン(例:チェストプレス・マ
であり、施設にとっては責任問題であ
果」を望んでいる。だが、レジスタンス
シーン)がロウイング、ローテーショ
る。次に、多くのレジスタンストレーニ
トレーニング・マシーンでどれだけ厳格
ン、チョップ、エクステンション、およ
ング・マシーンにおいて利用できる選択
なトレーニングを実施しても、それだけ
び他の多くのエクササイズ種目など、
ピンによって、抵抗負荷を素早く、安全
では最高のパフォーマンスを得ることは
様々なエクササイズの実施を可能にして
に変えることが可能である。これによっ
難しい。
いる。これは間違いなく、レジスタンス
て、プレートなどを下に落としてしまう
まずは、我々の活動する状況をよく見
トレーニング・マシーンでのトレーニン
こともなくなり、また、サーキットト
て、レジスタンストレーニング・マシー
グに新たな次元を加えるものである。こ
レーニングのときや大きな集団でトレー
ンで起こっていることとそれを比較する
の新しいデザインでは、かつてはフリー
ニングを実施するときに人の流れがス
とよいだろう。我々は重力の影響を受け
ウェイトトレーニングに限られた領域内
ムーズになるだろう。少しの経験と正し
るフリーウェイト的な環境の中で生きて
での動作パターンが実施可能である。さ
いプログラム計画によって、フリーウェ
いる。そして、機能的トレーニング、フ
らに、ダンベルやバーベルといった伝統
イトトレーニングにおいて生じるこのよ
リーウェイトトレーニングは、この環境
的なフリーウェイトトレーニング様式に
うなジレンマを容易に解決することがで
に完全に対応している。実際、機能的ト
はない水平方向の抵抗ベクトルも与えて
きるのである。また、レジスタンスト
レーニングは我々の環境におけるこの性
くれる。
レーニング・マシーンは、単独の筋に対
質をトレーニング計画の基準として用い
レジスタンストレーニング・マシーン
して非常に効果的である。中枢神経系、
ている。また、フリーウェイトトレーニ
の過剰使用は、我々の「間に合わせ社
筋量の動員の低下によって、特定の筋を
ングでは、正しい挙上と安定した動作
会」のまさに1つの指標である。我々は
より指向したワークアウトが可能となる
フォームを用いるように促される。ポジ
最小の努力で「強く」
「筋肉質に」なりた
ため、筋肥大にとって非常に効果的なの
ショニングによって、フリーウェイトト
いし、
「VO2を増やしたい」
「朝刊を読みな
である。しかし我々は、単独の筋を肥大
レーニングはより多くの筋群を動員し、
がらカロリーを燃焼したい」と思う。に
させるというパラダイム(理論的枠組
より大きなトレーニング刺激を生み出す
もかかわらず、我々は得た結果が期待し
み)を乗り越えて、実際の生活では単独
ことが可能である。これは、実生活での
たものに届かないとき、不平を言う。こ
に働く筋などないことに気づかなければ
活動、姿勢に対してトレーニングからの
の意味で、レジスタンストレーニング・
ならない。そうだとすれば、このような
変換が起こることによって傷害の危険性
マシーンメーカーによって約束された結
トレーニングをする必要はあるのだろう
を低下させているかもしれない。フリー
果が効果的であるならば、議論する必要
か?
ウェイト器具を使用したトレーニングを
はないはずである。すべての人は結果を
A
そして最後に、コストの問題である。
実施すれば、器具を投げたり手から離し
知るだろうし、我々は全員が完全な身体
例えば、一般的なレジスタンストレーニ
たりするといった巧みな操作が可能にな
標本ともなるのである。
ング・マシーン1つで2000∼4000ドル
る。トレーニングにおけるこのような側
筆者はトレーニングへの統合的なアプ
(約24万∼48万円)の費用がかかる。こ
面は、パワー向上に極めて有効であるだ
ローチに期待している。レジスタンスト
れだけの費用があれば、最高のフリー
ろう。最後に、フリーウェイト器具の多
レーニング・マシーンは有効であると言
ウェイト器具一式を備えた20×30フィー
様性とその広い適応能力によって、ト
え、特に新しいプーリーデザインはそう
ト(約6×9m)のトレーニングエリアを
レーニングを行う人が意欲を持って困難
である。トレーニングは面白く楽しくな
用意することができる。
に立ち向かう状態を続けることが可能と
ければならず、唯一のトレーニング方法
なる。
などというものはない。それゆえレジス
著者は、いわゆる「レジスタンスト
レーニング・マシーンの利点」というも
レジスタンストレーニング・マシーン
タンストレーニング・マシーンを適切に
のは、必ずしも本当の利点であるとは限
はコンディショニング分野のものである
使い、新しいトレーニング方法(例:メ
らないと思っている。一般的なフィット
と言える。神経的な適応が不十分なため
ディシンボール、バランスなど)に挑戦
ネスや健康に興味がある程度であれば、
にフリーウェイトで実施するエクササイ
することを恐れてはならない。最高のパ
レジスタンストレーニング・マシーンは
ズ種目が危険となる人を指導するうえ
フォーマンスを得たいならば、使える用
コンディショニングにおいて大きな成果
で、レジスタンストレーニング・マシー
具をすべて正しく使って、トレーニング
があるかもしれない。しかし、トレーニ
ンは効果的であろう。また、現在、新し
に対する統合的なアプローチを取るべき
ングを実施する人のほとんどは「優秀な
い機器メーカーでは、四肢の自由な動作
である。
結果」以上のものを求めており、ハード
が可能なプーリーシステムを開発してい
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