サーキットトレーニングでスキーシーズンを速やかに スタートさせよう

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Jump-Start Your Ski Season With Circuit Training
サーキットトレーニングでスキーシーズンを速やかに
スタートさせよう
Courtenay Schurman [コータニー・シャーマン、MS、CSCS]
毎年のダウンヒルスキー旅行の前に、たった1カ月トレーニ
酸素系の活動で持久力を強調するのだろうか? このプログラ
ングを行うだけで準備を間に合わせることは可能だろうか?
ムは確かにスキーをよりハードで速く、かつ傷害と無縁なもの
確かに可能である。しかし来年は、最高の結果を得るために、
にするうえで役立つが、プログラムの中のサーキットトレーニ
2∼3カ月の時間をとるように努力していただきたい。
ング、インターバルトレーニング、脚の筋持久力のトレーニン
ここに、アドベンチャーを楽しむために必要なダウンヒルス
グに対して、基礎的な持久力はしっかりした土台を与えるから
キーのコンディショニングを組み込んだ4週間のトレーニング
である。また、それは困難なスキー滑走の間の回復を効果的に
プログラムの例を挙げる。それには、以下のものが含まれる。
するうえでも役立つ。有酸素的な基礎がなければちょっと滑降
1.殿部、下背部、脚に重点を置いた筋力
しただけで脚が疲れてしまい、頻繁に休憩を取らなければなら
2.ダウンヒルスキーに特異的な全身の筋持久力
なくなってしまうだろう。特に呼吸が苦しくなる標高8000フィ
3.一般的な心臓血管系の有酸素性持久力と無酸素性持久力
ート(約2400m)以上の場所ではそうなるだろう。体力のある
(特に標高の高いスキー場では重要である)
スキーヤーというのは、スロープに注意して素早い判断を行い、
4.バランス、アジリティ、コーディネーション
事故の経験が少なく、呼吸が乱れることもなくスキースキルを
5.コアのストレングスとコントロール
完璧に行うことに集中できる。膝や股関節、足首、腰に何らか
6.モーグルやジャンプを楽しむための筋パワーとスピード
の痛みを経験したことがある場合は、トレーニングを始める前
このプログラムは3つのパートにわけられる。ストレング
に医師やスポーツ医学の専門医に相談するべきである。
ス・サーキットトレーニン
グ、インターバルトレーニ
ング、筋持久力のトレーニ
ングである。このサーキッ
トトレーニングのエクササ
イズは、家でもホテルでも、
トレーニング機器を自由に
使えないどのような場所で
も行うことができる。
開始
このプログラムを行って
優れた結果を出すために
は、20∼30分の心臓血管
系エクササイズ(バイク、
ウォーキング、ジョギング、
縄跳び、ロウイング、階段
登りなどの方法で)を毎週
3回行ってフィットネスの
しっかりした土台をつくる
のがベストである。
なぜスキーのような非有
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写真1 タック
写真2 ウォールシット(ダンベルつき)
スキーのコンディショニングのためのサーキットトレーニング
サーキットトレーニングは、ストレングス&コンディショニ
る。
1、2週目は、動作をコントロールして各エクササイズを1
ングプログラムの重要な部分である。何分間か続くスキーの滑
∼2セット慎重に行う。各ステーションでは30秒間エクササイ
降に要求されるエネルギー系を高める。スキーの滑降中に木や
ズを行い、エクササイズ間の休息は30秒間とる。1分ごとに次
人の傍を突進して通り抜けたり、ものすごいスピードでモーグ
のステーションに移動できるように、時計かストップウォッチ
ルをしたりするとき、斜面上で身体を垂直に保つように大腿、
を持ってワークアウトを行う。3、4週目は、ダイナミックな
殿部、背部、下腿を激しく動かさなければならない。サーキッ
部分(各エクササイズの説明で示す)も加え、3∼4セット行
トトレーニングは、このプログラムの前、後半の両方にわたっ
う。各エクササイズ種目は45秒間行い、休息は15秒間とる。サ
て脚筋力、筋持久力、全身の有酸素性能力、様々な程度のパワ
ーキットを一巡したら、始めのエクササイズ種目に戻り、望ま
ーを増大させる。各エクササイズを行う際は、フォームに細心
しいセット数だけ行う。
の注意を払い、次のワークアウトで強度、パワー、反復スピー
ドを自信を持って上げられるようにする。
このスキーのコンディショニングのためのサーキットトレー
タック/ウォールシット
大腿四頭筋の持久力を高めることが目的である。ダウンヒル
ニングを開始する前に、準備用のウォームアップを行うように
のタックでクラウチングの姿勢をとる。両足を数インチ離し、
する。これに含まれるのは、数分間の縄跳び、トレッドミルで
両腕は体側に置き、まるでダウンヒルを見るように頭を前方に
の歩行、バイクなどである。体重を利用してランジ、スクワッ
向ける(写真1)。1、2週目は、壁に寄りかかって行っても
ト、トルソーツイストを数回軽く行ってもよい。股関節、足首、
よい(写真2)。3、4週目は難易度を上げて、次のようにす
膝、肩の関節可動域を徐々に高めて、身体の深部温を上げ、使
る。
っている筋への血流を増やすようにする。ウォームアップを行
1.スロープでターンするときに行うように、片方の脚にほぼ
ったら、サーキットトレーニング・プログラムに移るようにす
全体重がしっかりかかるように、もう片方の足の踵を上げ
る。この動作を両足交互に行う。
2.姿勢を落としてタックになる。
3.両手にダンベルを持つか、背中にバックパックを背負う。
スクワットスラスト・プッシュアップ・ジャンプ
大腿、股関節、コア、上半身の筋力とパワーを発達させるの
が目的である。直立姿勢から開始する。床にしゃがみこみ、両
手を足の前方外側につく(写真3)。1、2週目は、両脚を後
方に1回ステップバックしてから、プッシュアップの姿勢にな
写真3
スクワットスラスト・プッ
シュアップ・ジャンプでの
スクワット姿勢
写真4
スクワットスラスト・プッ
シュアップ・ジャンプでの
スラスト姿勢
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る。3、4週目は、1回のス
ムーズな動作で脚を後ろに突
き出す(写真4)。このとき、
腹筋を締め、背部を平らに保
つ。胸を床まで下げ
(写真5)
、
プッシュアップして再び板の
ような姿勢に戻る。それから、
脚を両手の位置までステップ
する、あるいはホップして戻
す。1、2週目は、立ち上がっ
てもとの姿勢に戻り、動作を
繰り返す。3、4週目は、しゃ
がんだ姿勢からできるだけ高
く空中にジャンプする。柔ら
かく接地して、望ましいイン
ターバルタイムで繰り返す。
写真5 スクワットスラスト・プッシュアップ・ジャンプでのプッシュアップ姿勢で身体を床に下ろしてい
るところ
踵上げスクワット
の状態では、体重が前に移動して両足の母趾球にかかるだろう。
スキーブーツを履いたときの姿勢で、大腿四頭筋を強化する
スキーのクラウチングの姿勢(写真6)へと下ろすときに息を
ことが目的である。まず、両足を足1つ分の幅をとって立ち、
吸い、直立姿勢に戻るときに息を吐く。胸を張り、視線は真っ
両足の踵の下に薄い本や板、10ポンドプレートなどを置く。こ
直ぐ前に向け、踵に体重をかけたまま保つ。背中は平らにする
が、「垂直」にしてはならない。体幹を少し前傾させるが、背
中が丸くなり始めるまで前傾してはいけない。後ろにあるイス
に座るところをイメージする。こうすることで、股関節を最初
に動かしてから膝を曲げる動作が行いやすくなるはずである。
1、2週目はフォームをマスターして、可動域を広げる。3、
4週目はダンベルやバーベル、パックで負荷を加える。
ラテラルホップ
股関節のパワーを発達させ、自分の重心への「気づき」を高
めることが目的である。タオルかスウェットシャツを丸めて床
においてクラックとし、それに対して両足を平行にして立つ。
写真6
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踵上げスクワット(スキーのクラウチング姿勢)
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写真7a、b ラテラルホップ
障害物の上を横にホップしてまたぐ(写真7
a、7b)。1週目は、低いクラウチング姿
勢でサイドステップして、それを跳び越す
(右にステップしたら左足を運んで右足に合
わせ、左にステップしたら右足を左足に合わ
せ、これを繰り返す)。2∼4週目は、ブー
ツを履いているときのように両足をくっつけ
たままキープする。接地時間が最小になるよ
うに、接地した瞬間に爆発的にステップして
戻る。
オフセットスクワット
片方の脚と股関節のストレングスを同時に
発達させることが目的である。低い(4∼6
フィート〔約10∼15cm〕)ボックスか段の上
に片足を乗せて、横に立つ。バランスをとる
ために、両手は身体の前でも、腰に当てても、
スキーのスタンスで体側に置いてもよい。下
の足は上の足よりもわずかに後ろにして、上
写真9 トライセップスディップ(両脚を前方に伸ばした姿勢)
側の脚、あるいは力を入れるほうの脚の動きに集中する(写真
8)。スクワットダウンするときに息を吸い、立ち上がるとき
に息を吐く。3、4週目は、ホップしてボックスをまたぐよう
にする。あるいは、バックパックかダンベルによって負荷を加
える。1回のサーキットセットの中で2回行う(つまり、3セ
ットのサーキットは、このエクササイズを左脚で3回、右脚で
3回の計6回行うことを意味する)
。
トライセップスディップ
ストック操作に使う肩と上腕三頭筋のストレングスを発達さ
せることが目的である。しっかりした椅子やバスタブ、段の縁
に、指が真っ直ぐ前を向くようにして大腿の外側で両手をつく。
肘は横ではなく後ろを向くようにしなければならない。前に丸
まらないように両方の肩甲骨を寄せ、肘が90°になるまで身体
を下げる。息を吐いて、身体を押し上げる。1、2週目は、尻
をベンチに近づけ、両足裏を床にしっかりとつける。3、4週
目は、脚を伸ばして両足を遠くに置く(写真9)。両足をベン
チの上に置いたり、膝の上に重りを乗せてもよい。
グッドモーニング
腰部の筋持久力を高めることが目的である。両足を足1つ分
の幅にして立ち、辞書や重り、メディシンボールなどを胸に抱
写真8 オフセットスクワット(下降したときの姿勢)
える。息を吸って股関節の部分から前にかがむ。背部は平らに
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して、膝はわずかに曲げ、ハムストリングスがしっかり伸ばさ
は避けなければならない。3、4週目は難易度を上げるために、
れていると感じるまで胸の下部を下げて大腿に近づける(写真
重りの重量を増やしたり、前に曲げるときの可動域を大きくし
10)。直立姿勢に戻るとき、息を吐く。背部が過度に丸まるの
たりする。
プランクリーチ
腹筋、下背部、上腕三頭筋、肩、胸、股関節を強化すること
が目的である。プッシュアップの姿勢から開始するが、殿部を
わずかに上げ、脊柱を支えるために腹筋を締め、両足の幅はか
なり広くし、両手は近づける。片腕を横に上げて体重をわずか
に移動させて片方の手にかけるとき、股関節を絶対に動かさな
いように保つ(写真11)。上げた手を床に戻し、反対の手を上
げる。腕以外の体幹部を動かしてはならない。3、4週目は、
両足の幅を狭くして、両手の幅を広げるようにする。
梨状筋のストレッチング
サーキットを終えたら水分摂取し、数分間はゆっくり動き続
ける。それから好みの下半身のストレッチングを行う。その中
に、この股関節のストレッチングを入れるようにする。この姿
勢に入るためには、スプリントのスタンスで身体を下げ、右脚
を伸展させる。左足を身体の下にして、右の股関節の前面を下
げて左足の踵の方向へ真っ直ぐ近づける。左股関節を床の上に
つけ、胸を左の大腿のほうへ下げる(写真12)。指を前方に伸
ばし、30秒間維持する。反対側で、これを繰り返す。
写真10
グッドモーニング(前かがみの姿勢)
写真11
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プランクリーチ(片腕を横に上げた状態)
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写真12
梨状筋のストレッチング
心臓血管系のトレーニング
このプログラムの2つ目の要素、インターバルトレーニング
2日目:ウォームアップ5分、「短い」インターバルトレーニ
ング20分、20回繰り返す(高強度の「スプリント」15秒、低強
として、有酸素性運動を選ぶ。自分が楽しめるものならどんな
度の「回復」45秒)
運動でもよいが、スキーをしてるときのように脊柱に負荷をか
5日目:ウォームアップ5分、「長い」インターバルトレーニ
けられるものが好ましい(例:ジョギングやスプリント、ウォ
ング20分、10回繰り返す(中∼高強度のスプリント30秒、回復
ーキングやスピードウォーキング、異なる速さでの縄跳び、
90秒)
EllipticalMachineでの前方・後方移動、階段昇降、バイクやヒ
6日目:低強度の脚の筋持久力トレーニング45∼75分(雪のあ
ルクライミング、ロウイングスプリントなど)。プログラムの
る場所で、可能なときはいつでも)、スキーテクニックを高め
中には、高強度の短いインターバルと、中程度の強度の長いイ
るために、スキー旅行に行く前にレッスンを受けることも考え
ンターバルを入れるようにする。「短い」インターバルは、ス
る。
キーの滑降における短くて激しい高強度な部分に対する耐性を
3日目と7日目:オフ・回復
増大させるのを助ける。それに対して、「長い」インターバル
は、中程度の強度のスキー滑降を繰り返すことに対して無酸素
まとめ
性持久力を構築するのを助ける。インターバルトレーニングの
翌年に備えてスキーの調子を維持するために、年間を通して
間は、高強度の運動をしているときと回復のときで、心拍数は
いつものトレーニングプログラムに毎週少なくとも1回はイン
20∼30拍違うだろう。プログラムの最後の要素は、重りで負荷
ターバルトレーニングの日とサーキットトレーニングの日をそ
をかけた脚の筋持久力のトレーニングである。ハイキングをし
れぞれ設ける。そうすれば、スキーのトレーニングにすぐに戻
たり、カンジキを履いて歩いたり、クロスカントリースキーで
れる準備ができていることになるだろう!
散歩したりする。単に背中に15∼20ポンド(約6.8∼9.1kg)の
バックパックを背負って近所を歩き回るのでもよい。
週間の計画
サーキットトレーニングは少なくとも1週間に2回入れ、ト
レーニングから次のトレーニングまでは48時間空けるようにす
る。毎週、サーキットトレーニングを行わない日は、2回のイ
ンターバルトレーニングと1回の脚の筋持久力トレーニングを
行う。スケジュールは、以下のような感じになるだろう。
1日目と4日目:ウォームアップ5分、サーキットトレーニン
グ20∼40分、クールダウン5分、ストレッチング
[著者紹介]
Courtenay Schurman:MS、CSCS。アウトドアスポーツのストレング
ス&コンディショニング企業であるBody Resultsを夫のDoug Schurman
(CSCS)と共同経営している。登山家やクライマー、スキーヤー、トラ
イアスロン選手のコンディショニングプログラムをデザインしている。
トレーニングに関する数多くの出版物があり、最近66分のビデオ『Train
to Climb Mt. Rainier… and Other High Peaks』を制作したばかりである。
これは彼女のウェブサイト(www.bodyresults.com)から入手できる。ま
た、彼女のサイトにはトレーニングの情報に関する500近いページもある。
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