咀嚼能力と運動能力 私は授業で“咀嚼能力”というものを見ています。顎

■咀嚼能力と運動能力
私は授業で“咀嚼能力”というものを見ています。顎、口腔系が食べ物を切断、破壊、
粉砕し、そして唾液と混和を行いながら食塊を形成して、嚥下動作を開始するまでの一連
の能力を“咀嚼”と呼んでいます。何故咀嚼能力を見るかというと、最近、子供の咀嚼能
力の低下が指摘されています。咀嚼能力の低下は過食と肥満につながります。やはり年々、
子供達の中で肥満が増加しています。特に高校の男子生徒を対象にして、咀嚼能力と生活
習慣・運動習慣・運動能力との関係を調査した結果、次のようなことが言えました。咀嚼
能力が強い群は、運動量が多くよく噛んで食べており、反対に咀嚼能力が弱い群は、運動
量が少なくあまりよく噛んでおらず、軟らかい食事を好むという結果が出ました。咀嚼能
力と運動能力の検討において、咀嚼能力の強い方は筋の持久力が高いと言われています。
この結果から、咀嚼する機会を多くしたりよく噛んで食べることで、顎の発達を促進し咀
嚼能力を強くすることが重要だと分かりました。
咀嚼は食物摂取から嚥下までの動作の連続であるのですが、それを測るためにどういう
方法があるかと言ると、色変わりガムやパラフィンキューブ、グミゼリーなどで評価する
方法があります。私達は、フィルムやガムなどで測定しています。ガムは最初は緑色です。
それが 2 分間噛み続けるとピンク色になります。均一に濃いピンク色のガムになったとき
は問題ないのですが、緑色が残っているようなガムになった場合、喉詰めの原因になると
いうことです。私達はガムの色の差を見ているのですが、最近の若い方に言えることは、
濃いピンクではなく薄いピンクの学生が4割ほどいるということです。緑色が残ることは
ないのですが色が薄いです。ですから、若い方の噛む力は弱くなってきていると言えます。
ご高齢者の方で総入歯や部分入歯など義歯が合わないと、同じように薄いピンクになる方
がいます。
私達は4年間、西宮地区の方達に咬合力アップ運動というものを行っています。月2回
30 分ほど、柔軟、レジスタンストレーニング、口腔機能トレーニングをしています。私達
が 4 年前に入ってきたときから参加者のみなさんの咬合力は全く落ちていません。普通は
加齢と共に噛む力が落ちてきています。2009 年のデータで、年齢がほとんど変わらず、
体脂肪も骨格筋も変わらない、骨密度なども差がない方を比較しました。握力に関しては、
ほとんど差がありません。ですが、咬合力については、運動をしていない方は年と共に落
ちてきていますが、運動をしている方はほとんど下がっていません。運動をすることによ
って、ある程度咬合力を維持できるということが言えるかと思います。このことを今日、
みなさんに知っていただければと思います。