3.賃金・人事考課・福利厚生 3 賃金・人事考課・福利厚生 事例3-1 賃金問題と最低賃金との兼ね合いで生じた問題 関連情報 1.企 業 の 業 種 製造業 2.問 題 の あ っ た 時 期 2000 年 3 月頃 3.体験の際の職種・職務 現地法人の社長 4.場 所 ( 州 又 は 都 市 ) ブカシ県 A.困難事例の概要 通例 4 月に昇給が実施されるに当たり、従業員代表との交渉期間の段階で、従 業員側は日本から新規の取引希望会社がインドネシアに来ることを知った。その 朝、突然の違法ストライキが決行され、即座の結論を要求された。 ストを回避し、新規取引先とのビジネスを成功させるために取った手段は次の とおり。 B.対処概要 1.従業員の要求は何の根拠もなく、 「現行の倍額に給与を増やせ。 」とのこと。 早朝よりの交渉だったが、従業員は日本よりの来客を見越して話し合いに応 じようとしないので、私も時間を稼ぐこととした。 そのうちにお客様が到着され、スト実行中の人垣を分けて社内に案内する。 ビックリしたのは来客であるが、インドネシアでは日常茶飯事だと説明し納 得いただく。 2.商談途中で数回の交渉を持ち、最終的に現行の 30%増額で話し合いが決着す る。同時に従業員は即座に通常の作業に従事した。 3.スト決着と新規のビジネスも確定し、やっと落ち着いたのはそれからしばら くした後だった。 4.それからは何回か従業員代表とコミュニケーションを持った中で、双方が納 35 3 賃金・人事考課・福利厚生 得できる今後の昇給基準ができたが、異例の内容となった。 5.その異例の内容とは、インドネシアは毎年の最低賃金が政府より発表される が、その最低賃金が確定したときに、前年の最低賃金との差額分を社員すべて に平等に加えることにより昇給するというもの。ちょうどこの時は 1998 年 5 月暴動が収束し、国内はガタガタして安定していない時だった。最低賃金も急 激に上昇した。しかし今になって考えれば、会社側はラッキー、社員側はアン ラッキーな結果となった(注参照) 。 6.目先のことだけ考える人々を説得することの難しさと簡単さを知った。 7.現在まで、この方法で毎年 1 月(2002 年より改定時期が変更になった。 )の 昇給計算が簡単で本当に助かっている。 どこの会社も昇給前の交渉が長引き、頭の痛い時期だが、当社は全く簡単で ある。 従業員より何の苦情も要求もなく、私自身が一番驚いている。 8.インドネシアは男女平等なので賃金も同一である。 1998 年スハルト政権が崩壊し、2001 年までは激変の期間だった。 (注参照) C.教訓(知っておくべき情報・知識など) 1.インドネシアの賃金体系 一般的な体系としては、基本給、能力給、職務手当、家族手当、交通費、皆勤 手当、医療補助、残業代などから作られている。 2.原則的には月給制が多い(週給制もあり) 。 3.ボーナスは必ずしも必要ではないが、インドネシア特有の THR(レバラン手 当)を最低1ヵ月分支給するよう政府の通達があり、義務付けられている。 4.日本と違ってインドネシアでの支給は額面であり、所得税などは会社負担が 通例となっているようだ。 色々な問題に直面したときは、自分だけで考えず、周囲の日系企業に相談して 36 3 賃金・人事考課・福利厚生 みるのが一番大切かと考える。 当社は日系企業が 100 社以上稼動している工業団地に入居しているので、常に 情報が入り、とても助かっている。 (注)1997 年のルピアの対ドル換算レート(年平均)は 2,347 ルピア/1 米ドルで あったが、通貨危機により 1/4 にまで減価したため、最低賃金が大幅に引き上げ られたものの、ドルベースではむしろ減少したため、賃金コストが減少した会社 もあった。 最低賃金の推移(ブカシ県) 年 最低賃金 引上率 Rp/US$ 最低賃金(ドルベース) 1998 年 Rp.172,000. 9,875 17.4 US$ 1999 年 Rp.230,000. 33.72%UP 7,853 29.3 US$ 2000 年 Rp.344,000. 49.57%UP 8,514 40.4 US$ 2001 年 Rp.417,000. 21.22%UP 10,211 40.8 US$ 2002 年 Rp.575,000. 37.89%UP 9,700 59.3 US$ 2003 年 Rp.631,000. 9.74%UP 9,200 68.6 US$ 2004 年 Rp.670,000. 6.18%UP 9,290 2005 年 Rp.710,000. 5.97%UP 経済危機前の最低賃金(ジャカルタ)は次のとおりである。 年 最低賃金 1996 年 Rp. 156,000. 1997 年 Rp. 172,500. 引上率 10.6%UP 37 Rp/US$ 最低賃金(ドルベース) 2,347 66.47 US$ 2,952 58.43 US$ 3 賃金・人事考課・福利厚生 事例3-2 インドネシアにおける人事制度改革 関連情報 1.企 業 の 業 種 2.問 題 の あ っ た 時 期 2003 年頃 3.体験の際の職種・職務 4.場 所 ( 州 又 は 都 市 ) A.困難事例の概要 インドネシアに進出して数十年になる当社が、駐在員事務所から現地法人への ステータス変更を機に、それまでの年功序列的な人事評価制度をやめて、ジョブ サイズ及び成果主義を反映した報酬体系に変更しようとした際に困難が発生した。 新人事制度導入に際しては、日本からコンサルタントを起用し、検討メンバー には日本人駐在員数名と労働組合幹部数名を選出し、事務局として人事部が取り まとめるというフォーメーションで半年間をかけて執り行った。 もちろん、コンサルタントの新しい方式をそのまま適用するのではなく、その 時の現状をある程度ベースにして、 諸事情を加味しながら作成するやり方であり、 そのために結成されたのが前述の検討委員会である。 まず新制度のコンセプト概要を説明する。 1.職員は「秘書」 、 「総合職」 、 「課長代理」 、 「課長」 、 「部長」 、 「役員」などに分 類される。それぞれ個人の現在行っている仕事をジョブサイズという一定の基 準で測り、どの分類に属するかを決定する。 2.給与はジョブサイズごとにレンジが決められており、原則としてその範囲で の処遇となる。フリンジベネフィット(付加的給付)に関しても同様である。 3. 昇給の交渉は世間相場をベースにした各職務レンジの中央値の交渉となるが、 それぞれのレンジ内での実際の当人給料の位置関係により、給与の昇給率が変 38 3 賃金・人事考課・福利厚生 わってくる。つまり、例えば秘書クラスでの給与レンジが毎月 100 万ルピアか ら 150 万ルピア、中央値が 125 万ルピアとした場合、それぞれの実際の給与が 秘書 A=90 万ルピア、B=120 万ルピア、C=130 万ルピア、D=155 万ルピアである とすると、給与が低いほど実額が上昇しやすく、高いほど上昇しにくくした制 度である。特に枠外の A は枠に入るような高い昇給、D は既に枠をオーバーし ているので昇給なし。大雑把にいってこのような仕組みである。 4.では前述の D についてはどのように給与が上がるのかというと、基本的には 仕事の内容が変わり、ジョブサイズが高くなることによって設計上のより上の 給与クラスである「総合職」あるいは「課長代理」のレンジになった時に、処 遇が改善されることになる。 ここで長年の歴史がある会社ゆえの問題点がまず発生した。その問題点とは、 長年勤続している秘書に起因するものである。 1.20 年以上勤務している秘書が、歴代派遣員に重宝がられ、各上司から良い評 価を得て、毎年給与の上昇を続け、結果的に現在、一般的なジャカルタにおけ る秘書給与相場の 3 倍もの高水準の給与になっていた。 2.その給与水準で、現行の課長クラスの給与レンジを超える秘書も存在した。 3.新制度では、仕事の内容が変化し、ジョブサイズが上がらない限り、基本的 に給与水準は今までのように上がらない仕組みである。 4.旧制度のままであれば、現行通り、引き続き昇給が見込めるだろうと判断さ れた。 5.新制度では、現状の社員をすべてのジョブサイズの分類に焼き直し作業をし なくてはならなかったが、勤続年数にかかわらず、仕事の内容で職種ごとに分 類されるため、特に新人秘書と同じ分類の「秘書」に組み込まれた長老の秘書 の理解を得られなかった。 6.前述のとおり、旧制度で長年ぬるま湯に浸かってきた秘書が多く、ほとんど の秘書がレンジの上あるいはレンジ外に位置した。 39 3 賃金・人事考課・福利厚生 以上のように、居心地の良かったはずの会社に突然牙を向けられた形になり、 その処遇を巡って、秘書に理解が得られなかったことが問題点としてクローズア ップされた。 更なる問題点の発生 結論としては、メンバーである組合幹部と策を練りつつ、会社側として譲歩で きるところは譲歩して最終案を作成した。しかし、本件は当社の組合との労使協 定 ( CLA:Collective Labor Agreement [ 労 働 協 約 ]、 イ ン ド ネ シ ア 語 で は KKB[Kesepakatan Kerja Bersama])改定に当たるため、組合員の最終投票を受け なければならず、決戦となった。結果は CLA の改定有効得票に至らず、会社側の 惨敗であった。組合幹部を通じて、事前にかなりの根回しをしたつもりであった が、やはり秘書の猛烈な抵抗勢力にしてやられた形となった。 B.対処概要 結論としては、コンサルタントを介してのこの制度は否決されて、白紙に戻っ た。 このまま旧制度で行くにはあまりにも能がないので、この制度をベースにした独 自の制度を作成すべく、組合員の参加を募集してゼロからスタートし、半年以上 かかったが、それなりの成果報酬ベースの制度が完成した。 会社側もかなり譲歩したが、適用の過渡期の特別措置などを含む折衷案で折り 合った結果となった。 C.教訓(知っておくべき情報・知識など) 1.インドネシア人には理詰めの交渉は通用しない。 2.インドネシアの投資環境悪化の一つに人件費アップがあるが、安いと思って 毎年繰り返した賃金アップがこのような形で跳ね返ってきたのは、我々進出企 業の功罪。 40 3 賃金・人事考課・福利厚生 3.インドネシアの悪法の一つに、一旦与えた給与は下げられないという考えら れない考え方がある。これも今後の投資の阻害要因の一つ。 4.既得権という考え方が根付いている。 5.労働組合、CLA を侮るべからず。 41 3 賃金・人事考課・福利厚生 事例3-3 従業員の賃金査定に際して 関連情報 1.企 業 の 業 種 運輸業 2.問 題 の あ っ た 時 期 2003 年 12 月~2004 年 1 月頃 3.体験の際の職種・職務 現地法人の管理職 4.場 所 ( 州 又 は 都 市 ) バリ島デンパサール A.困難事例の概要 年度末に従業員の賃金の見直しを行い、改めて各従業員の賃金を査定した。そ の後、新年度に支払われた賃金の内容についての反響が予想以上に大きかった。 従業員同士での比べ合いや、賃金の内容に納得のできない従業員に対しての個別 の対応などで、業務に支障を来しそうになるまでに発展してしまい、事態の収拾 に苦労した。 B.対処概要 「賃金査定の基準については勤続年数や年齢のみが考慮されるはずではない か。 」と考えている従業員も多く、従業員の間でも賃金査定の基準に関しての理解 があいまいであると思われたので、各従業員に個別面談を行い、改めて査定基準 を説明した上で他の従業員との賃金の違いが生じる理由等も具体的に話して理解 を求めた。 その結果、従業員の理解もおおむね得ることができ、今後はさらに明確な形で 賃金査定の方法を会社規則(Peraturan Perusahaan)に明記して行うことなどを従 業員との話合いで決定して問題の拡大を回避した。 C.教訓(知っておくべき情報・知識など) 1.現地従業員同士では、賃金等の個人的な情報でも、かなりオープンに互い 42 3 賃金・人事考課・福利厚生 が教え合ったり、また時にはその情報が全く事実と異なったりするというこ とを事前に知っておくこと。 2.問題が大きく発展しそうな雰囲気を感じたら、それを扇動するおそれのあ るキーパーソンを早い段階で把握して、個別に十分なコミュニケーションを 図ること。 3.会社規則については、コンサルタント等の専門家からのアドバイスも参考 にして、問題が予想される個所については現地人マネージャーの意見も参考 にしながら細かく明記し、さらにそれが現行の法規に沿った内容であるか確 認する必要がある。 また、平時においても、普段からミーティング等でできる限りのコミュニケー ションを積極的に図り、日頃から従業員とは良い雰囲気での関係を保つことも大 切である。そしてコミュニケーション不足により発生するトラブル、時としてお 互いの誤解から生じるトラブルを防止することが重要である。 43 3 賃金・人事考課・福利厚生 事例3-4 福利厚生面での要求の変化 関連情報 1.企 業 の 業 種 製造業 2.問 題 の あ っ た 時 期 2004 年頃 3.体験の際の職種・職務 現地法人の社長 4.場 所 ( 州 又 は 都 市 ) ブカシ県 A.困難事例の概要 創業してから 10 年を超えるが、 従業員の高齢化とともに福利厚生面での要求が 変化してきた。創業開始当時は従業員も若く、賃金も低かったので、残業を好ん で実施したが、10 年も経つと、従業員にも家族を持つ者が多くなり、福利厚生面 での要求は、労働時間の短縮や、休暇の増加、家族も含めた医療面での援助等に 変わってきた。 B.対処概要 C.教訓(知っておくべき情報・知識など) 給与面だけではなく、福利厚生面でも将来、5 年後、10 年後を見据えた人事制 度の確立が望ましい。創業開始時はなかなか手が回らず、そういった将来の問題 を考慮した人事制度まではできないのが実態。時間がかかってもよいので、でき るだけ早い段階で人事制度の確立を目指す必要がある。 44 3 賃金・人事考課・福利厚生 事例3-5 インドネシア人の遅刻削減 関連情報 1.企 業 の 業 種 卸売・小売業 2.問 題 の あ っ た 時 期 1999 年 5 月~2003 年 6 月頃 3.体験の際の職種・職務 財務経理・人事総務担当取締役 4.場 所 ( 州 又 は 都 市 ) ジャカルタ A.困難事例の概要 ジャカルタ赴任直後から、インドネシア人は時間の感覚がなく、遅刻が当たり 前で遅刻削減は困難と聞いていた。 朝の出勤時の遅刻、 昼食後の遅刻共にである。 B.対処概要 最初からギブアップせずに、 「なぜ毎日のように、1 週間に 3 回も」などと遅刻 者を呼びつけて注意を繰り返した。また、インドネシア人を使うボス(日本人) が手本を見せること(遅刻しない)も非常に重要である。 考課制度があったので、年間で遅刻常習者は、昇格拒否、考課点の減点等を行 い、考課者にも遅刻対策を浸透させた。 自分の直接の部下には、考課面談時にも遅刻の話をし、遅刻の多い部下につい ては考課点に反映させた。 (日常注意はしているが、考課にも反映することを意識 させる目的。 ) ジャカルタの交通事情は良くないので、時々の遅刻はありえるが、それ以外は 本人の怠慢との認識をしっかりと持たせることが重要である。 C.教訓(知っておくべき情報・知識など) 1.まず日本人がしっかりと見本を見せること。 2.インドネシア人も、言えば(理解できれば)遅刻をしなくなる。 45 3 賃金・人事考課・福利厚生 (ジャカルタでの交通事故・渋滞等による特殊事情による若干の回数以外。 ) 46 3 賃金・人事考課・福利厚生 3 賃金・人事考課・福利厚生 関連解説 法令で義務付けられている 2 つの手当(時間外手当、レバラン手当)と日系企 業でよく用いられているものを紹介する。特に先の 2 つは、注意が必要である。 3.1 時間外手当 (1)時間外労働賃金の計算の関係法令 労働移住大臣決定 No.KEP-102/MEN/VI/2004 6 月 25 日(7098I/7099-7100E) 内容:改正労働法(2003 年第 13 号法)第 78 条第 4 項の実施細則。 ① 時間外労働とは、定められた就業時間(通常、週 6 日労働の場合は 1 日 7 時間、週 5 日労働の場合は 1 日 8 時間、週ではいずれも 40 時間)を超えた労 働、及び休日や政府が定めた祝祭日の労働を指す。 ② 時間外労働は原則、1 日 3 時間、週 14 時間まで。 ③ 労働者に時間外労働をさせるには、雇用主からの時間外労働命令とこれに対 する当該労働者の同意を書面で個別に得ることが必要。 ④ 時間外労働の実施には、時間外労働賃金の支給、十分な休憩時間の設定、 1400kcal 以上の食・飲料の提供(時間外労働が 3 時間以上に及ぶ場合、換金 不可)が義務付けられる。 ⑤ 時間外労働賃金の計算には、月の賃金の 173 分の 1 を 1 時間当たりの基礎賃 金として利用。平常の労働日に行われた時間外労働の場合は、時間外労働開 始から 1 時間は同基礎賃金の 1.5 倍、2 時間目以降は 1 時間当たり同 2 倍の 時間外労働賃金を支給する。休日や祝祭日の労働には、労働時間を 3 段階に 分け、それぞれ 1 時間当たり基礎賃金の 2~4 倍支給するよう定められた。 ⑥ 時間外労働賃金の計算について意見の相違が生じた場合は、県/市、州、中 央の労働担当部署に決定を求める。 ⑦ 本決定の発効により、関連する旧令、労働大臣決定 No.KEP-72/MEN/1984、 同 No.KEP-608/MEN/1989、労働大臣規定 No.PER-06/MEN/1993 は失効する。 47 3 賃金・人事考課・福利厚生 (出典) http://www.indonesialink.net/indomalco/keizai.php?logno=200412 「月刊インドネシア企業経営 別冊 インドネシアの労働関連法の解説」 発行 PT.Indomalco Info Center 3.2 レバラン手当(THR) (1)関係法令 労働大臣通達 1994 年第 4 号 No.PER-04/MEM/1994(抄) インドネシア共和国労働大臣は、 a. インドネシア国民は、各自が信仰する宗教に基づき祝日を毎年祝う、宗教を信 仰する国民であること。 b. 上記の祝日を祝う労働者に対して、必要経費の追加が必要であること。 c. 上記の祝日を祝うために、 経営者が宗教祝日手当を支給することが慣例となっ ていること。 d. 平穏な事業活動を創造するために、労働者の福祉を向上させ、レバラン手当の 支給に関して大臣通達によって基準を定める必要があること。 を考慮し、会社所属の労働者に対するレバラン手当に関する労働大臣通達を制定 する。 第 1 条 d. レバラン手当(THR)とは、宗教的祝日を迎える労働者及びその家族 に対して、経営者が金銭又はその他の物品などにより支払い義務を負う ところの労働者の所得を指す。 第2条 第 1 項 経営者は継続して 3 ヵ月間、あるいはそれ以上の勤続期間をもつ労働者 に対してレバラン手当(THR)を支給する義務を負う。 第 2 項 上記第 1 項に述べるレバラン手当(THR)とは、1 年に 1 回のみ支給され るものである。 第3条 第 1 項 上記第 2 条第 1 項に記載されるレバラン手当(THR)の金額は下記のと 48 3 賃金・人事考課・福利厚生 おりに定めるものとする。 a. 継続して 12 ヵ月、あるいはそれ以上の勤続期間をもつ労働者に対し ては、賃金の1ヵ月分の金額。 b. 継続して 3 ヵ月以上、12 ヵ月未満の勤続期間をもつ労働者に対して は、下記の計算式を用いて勤続期間の割合に応じた金額を支給する。 継続期間 × 賃金 1 ヵ月分 12 第 2 項 上記第 1 項に記載する賃金 1 ヵ月分とは、基本給に固定手当を足したも のとする。 (出典)「インドネシア共和国 労働関連法規集 2003 年度版」 PT.Fuji Staff Indonesia (2)レバラン手当と賞与 レバラン手当(THR)は賃金 1 ヵ月分が最も多い回答だが(製造業 83.8% 非製 造業 75.4%)、1.1 ヵ月以上のところもある。 (製造業 16.2% 非製造業 24.5%) 定期賞与(THR は含まない)は 7 割から 8 割(75.4%、非製造業 80%)の企業が支 給すると回答し、支給時期はレバラン時期及びその前後となっている。 (出典)日系企業・インドネシア現地社員給与動向 2005 年度版 nna 3.3 賃金査定 日本の雇用体系に即したボーナス制度を導入 68% 能力給導入 46% 施策として「人事管理制度導入」と回答 28% 評価・査定について「公平で透明な評価・効果基準の作成・開示」と回答 45.6% (出典)アジア日系企業における現地スタッフの給与と待遇に関する調査 2004 49 3 賃金・人事考課・福利厚生 日経シンガポール(2003.9-10 に調査実施 1266→68 社 回答率 5.4%) 3.4 日系企業でよく用いられている手当 出張手当(製造業 88% 非製造業 82%) 食費支給(全体 7 割 製造業 9 割 非製造業 6 割) 現物支給の可能性もあり 通勤手当(全体 8 割 製造業 9 割 非製造業 7 割) 送迎車の可能性もあり 住宅手当(製造業 35% 非製造業 20%) 地方は 50%程度となる 資格・技術手当(製造業 3 割 非製造業 1 割) 外国語、会計、パソコン その他 皆勤手当、制服手当、慶弔手当、シフト手当、医療手当 (出典)日系企業インドネシア現地社員給与動向 2004 年度版 nna 扶養手当、役職手当、重作業手当、皆勤手当、精勤手当、通勤手当(現地企業調べ) 3.5 社会保障制度 (1)制度の現状 JAMSOSTEK(労働社会保障)の健康維持保障を使わずに、 独自に医療手当を支給し ているところも多いようである。 実施している福利厚生においても、 地域・産業の別に限らず医療費負担をトップ に挙げている。 法令により JAMSOSTEK の 4 つの保障のうち 3 つ(労災保障・死亡保障・老齢保障) は、全企業に加入義務があるが、5%の企業が加入していない。(法令違反,同種の 民間保険加入では免除されない。) (出典)日系企業インドネシア現地社員給与動向 2004 年度版 nna 3.6 最低賃金 2000 年 9 月の大統領令 226 号により、中央政府の専権的最低賃金の決定権限は 廃止され、2001 年施行の地方自治法に従って、月額最低賃金(UMP)は地方賃金 委員会との協議によって決定されることになった。UMP は 2002 年 1 月に引き上げ 50 3 賃金・人事考課・福利厚生 られたが、2002 年から 2004 年に至る間に大幅に上昇した。(いずれの地域でも 30 から 40%の賃金上昇が見られる。) (出典)「ARC レポート 2005 インドネシア」 (財)世界経済情報サービス 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