愛想笑いをする人はけがが少ない? 健康開発学科 教授 坂井博通 日本人には欧米人にはわからない謎の笑い=「ジャパニーズ・スマイル」がある。そん な文化論が依然盛んだったが、今はあまり聞かれなくなった。でも、その謎の笑いがなく なったわけではない。 若い人ほど愛想笑いをする(?) 自分が愛想笑いを「よくする方」か「あまりしない方」かとアンケート調査 1)で尋ねる と、男性は 50%弱、女性は 50%強が愛想笑いを「よくする方」と回答した。これを年齢別 にみると、私の予想とは正反対に若い人ほど愛想笑いを「よくする方」との傾向が見られ た。理由に関しては、老若で愛想笑いでとらえているものが違うのだとか、若者は愛想笑 いを肯定的に評価しているのだ、などいろいろ考えられる。いずれにせよ、愛想笑いとい うジャパニーズ・スマイルは今も健在のようだ。 愛想笑いをする人はけが入院経験が少ない さて、笑いと健康の関連は「日本笑い学会」で会員に行ったアンケートでも最も関心が 高かった項目だった。 そこで、愛想笑いと健康項目の関係を探索してみると、特にけがの入院経験について明 快な関係が見られた。つまり、愛想笑いをする人は、性・年齢を問わずけがの入院割合が 少ないという結果が出たのだ(図を参照)。実に意外な、でも首尾一貫する傾向であった。 指標としての愛想笑い なぜだろう? 愛想笑いはふつうの笑い、微笑と関係が深い。また、愛想笑いは対人的積極性、近隣と の交流、話好きという指標とも関係が深い。そんなことがわかっている。 そうしてみると、愛想笑いをよくする人は、どちらかというとそもそも明るい性格の人 で、注意力があり、周りに注意を払っていて、事故に会いにくく、会ったとしても笑いの ために治る期間も短い(?) 、治ったと判断されがち、そんなことも想像されてしまう。 以上、夢想的な憶測に過ぎないが、さらに要因を調査してみたいと思っているのだ。 図 愛想笑い別、 「けが」で1週間以上の入院経験がある割合 (長野県佐久市のサンプルについて集計)1) 1)社団法人長野県世論調査協会報告書「心の健康と生活報告書(2008 年 10~11 月調査)
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