技術ノート (No.46) 特集:港区 一般社団法人 東京都地質調査業協会 〒 101-0047 東京都千代田区内神田 2-6-8 TEL (03)3252-2963 FAX (03) 3252-2971 ホームページアドレス http://www.tokyo-geo.or.jp/ 目 次 技術ノートNo.46「港区」 発刊にあたって 1.港区の紹介 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1-1 港区の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1-2 港区の歴史・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.港区の地形と地質・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 2-1 地形 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 2-2 地質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 3.港区の防災 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 4.港区の主な土木・建築遺産、史跡など・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 5.港区の観光スポット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 技術ノートのあゆみ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 発刊にあたって 東京都は本年 9 月 8 日に念願の2020年東京オリンピック・パラリンピック開催 誘致に成功し、東京都が世界的に脚光を浴びる都市になりました。 “おもてなし” の心で世界中から来られるみなさまを歓迎したいと思います。 10月中旬に発生した十年来といわれる巨大な台風26号により、東京・伊豆大島 (大島町)で三原山中腹に分布する火山灰層の「表層崩壊」により土石流が発生し、 下流域の元町地区などに多大な人的・物的被害を与えました。全国的に火山が分 布する我が国としては、改めて火山地域の防災・減災対策の重要性を再認識しま した。 さて、昭和62年12月創刊の「技術ノート」は今回で46号を重ねることになり ました。今回のテーマは「港区」です。 「港区」は東京都のほぼ東南部に位置し、 東は東京湾に面しており、区界は中央区、千代田区、新宿区、渋谷区、品川区、 江東区に隣接しております。「港区」 の街並みは、 虎の門・新橋・芝などのビジネス・ オフィス街、流行の最先端を行く青山・赤坂などのファッション・商業街、国際 的な特徴をもつ六本木・麻布エリア、閑静な住宅と歴史や自然が融合する白金台・ 高輪エリア、汐留・台場などのベイエリア、東宮御所・迎賓館赤坂離宮、芝公園・ 国立新美術館などもあり多種多様な表情を持つ街であり、若者たちにも人気が あります。 「港区」の地形は、大きくは東側に広がる低地部と西側の台地部に分けられ、 台地部は埋め立て前の河口域を形成する古川及びその支谷によって樹枝状に刻ま れた台地群をなしています。台地部と低地部の境は、およそ0.6万年前の海水の 浸食作用によって形成された海食崖の急斜面であり、現在は人口改変により多く の坂を形成しております。 「港区」の地質は、東側の低地部では、埋土層、有楽町層等(粘土・砂・砂礫)」 の沖積層が表層に堆積し、その下位に東京層(粘土・砂) 、東京礫層が堆積して います。一方、西側の台地部では表層に関東ローム層である赤土とその下部には 凝灰質粘土の火山灰が堆積しています。これら上位層の下位に関東平野の基盤を なす海成堆積層である上総層群(砂岩・泥岩・凝灰質砂礫)が堆積しています。 「技術ノート」 は読み物としても面白く、配布されるのを楽しみにしておられる ファンもおられます。学校や企業における教材として、あるいは都市計画や防災 計画等の資料として活用していただければ幸いに存じます。 発刊にあたり地道な取材活動と執筆作業に従事された技術委員会のみなさまに 謝意を表すると共に、種々ご協力賜りました関係各位に厚く御礼申し上げます。 平成 25 年 11 月 一般社団法人東京都地質調査業協会 会 長 早 田 守 廣 1.港区の紹介 1−1 港区の概要 港区は、東京都 特 別 区 の 一 つ で、23区 西部に区分されます。港区は、東京都のほぼ 東南部に位置しており、東は東京湾に面し、その北端でわずかに中央区に接し、北は千 代田区と新宿区に、西は渋谷区、南は品川区、東は江東区にそれぞれ隣接しています。 港区の東端は台場2丁目(東経139度47分)、西端は北青山3丁目(東経139度42分)で、 南端は高輪4丁目(北緯35度37分)、北端は元赤坂2丁目(北緯35度41分)です。南北 の距離は約6.5km、東西の距離は約6.6kmで、総面積は約20.34km 2 をもち東京23区の総 面積の約3.27%を占め、23区中12番目の広さです 1)。総人口は212,033人(2013.8.1現在)、 人口密度は10,420人/km 2 の区です。区の木は「ハナミズキ」、花は「アジサイ、バラ」 が指定されています。 また、港区のマークは、旧「芝・麻布・赤坂」の3区を一丸とし、その象徴である港 区の頭文字の「み」を図化したもので昭和24年(1949)7月30日に制定されました 1)。 図1 東京23区分図 1) 写真1 港区役所とマーク1) 港区の地形は、西北部が台地となっている一方、東南部は東京湾に面した低地および 芝浦海浜の人工的な埋め立て地、区の中央部を西から東に流下する古川沿いに発達した 平地部から形成されています。台地は武蔵野台地と呼ばれている台地群の末端に位置し、 東京23区内で最も起伏に富んだ地形となっています(2章を参照)。このため、土地の 高低差が大きく、名前がついているものだけでも90余りの坂があります。最高地は北 青山3丁目3番の標高34m、最低地はJR浜松町駅前ガード付近の標高0.08mです。また、 港区は、企業が本社を最も多く構える区の一つであり、日本のビジネスの中心であると -1- ともに、駐日大使館や外資系企業も多数立地し、外国人居住者が人口の1割を占めると ても国際色豊かな区です。 特に、虎ノ門・新橋・芝に代表されるビジネス・オフィス街エリア、流行の最先端を行く 青山・赤坂などのファッション・商業エリア、国際的な街としての特徴をもつ六本木(六本 木ヒルズ)・麻布エリア、閑静な高級住宅街と歴史(増上寺、泉岳寺)や自然が融合する白 金台・高輪エリア、人気スポットが満載な、汐留・台場に代表されるベイエリアなど近代都 市として多種多様な表情を持つ一方、東宮御所・迎賓館赤坂離宮をはじめとし、有栖川宮記 念公園・芝公園・自然教育園・台場公園・お台場海浜公園などの緑地帯や海浜公園などの自 然環境豊かな環境と、国内外の有名オーケストラの演奏会が開かれるサントリーホールをは じめ、サントリー美術館、国立新美術館、東京都庭園美術館、根津美術館など多くの文化施 設を兼ね備えた、自然色・文化色豊かな区との側面も持っています。交通機関では、JR線、 私鉄、東京メトロ地下鉄線、都営地下鉄線、ゆりかもめ、東京モノレールなどの鉄道網が 整備され、特に東京モノレールにより空の玄関口である羽田空港と直接結ばれているほか、 日の出や竹芝などの客船が停泊するターミナル、港南・芝浦の大流通基地もあり、まさに、 東京都内における陸・海・空のアクセスの要であり、近代的な区として成長してきました (写真5 ~写真8)。このように多種・多様な側面をもつ区ですから、昼(区外からの通勤者 や通学者)と夜(居住者)の人口差も顕著で、昼は夜の約5倍程度まで人口が増加します。 写真3 増上寺(山門) 写真2 六本木ヒルズ 写真4 ベイエリア -2- 写真5 港区の東側風景(ベイエリア方面) 写真6 港区の西側風景(六本木方面) 写真7 港区の南側風景(ベイエリア・高輪方面) 写真8 港区の北側風景(新橋方面) 港区で起こった歴史的に有名な事件として、麻布住吉会幹部射殺事件、お台場フィリ ピン人バラバラ殺人事件、新橋ストーカー殺人事件、第一ホテル殺人事件、永山則夫連 続殺人事件、村井秀夫殺人事件、青酸コーラ無差別殺人事件、三井物産爆破事件、つい 最近では、11代目市川海老蔵暴行事件や六本木クラブ襲撃事件などがあげられます 3)。 出典:フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」 図2 三井物産爆破事件の新聞記事 2) 写真9 爆破事件のあった三井物産本社 3) -3- 1−2 港区の歴史 東 京 が 日 本 の 都 と し て 整 備 さ れ 始 め た の は、 徳 川 家 康 が 江 戸 に 入 府 し た 天 正18年 (1590)まで遡ります。江戸時代の港区は、主に、赤穂浪士の墓所がある泉岳寺、徳川 家の菩提寺である増上寺を中心とした寺社地と大名屋敷が立ち並ぶ武家地が、現在の区 域の7割程度を占め、一部で町人が住む町人地が存在していました。これらの寺院は大 図4 幕末の江戸の土地利用 4) 図3 増上寺付近の江戸の町並み 4) 名家の菩提寺としてつながりの強いもので、高い格式をもち、諸大名の参詣なども頻繁 に行われました。明暦3年(1657)の「明暦の大火」(1月18日・19日)で港区の大部分 は延焼し、宝永4年(1707)11月23日の富士山宝永噴火時にも多大な被害を受けました。 図5 明暦の大火焼失図 4) 図6 宝永の富士山噴火時の状況 5) -4- その後港区は、勝海舟と西郷隆盛による江戸城無血開城など幕末外交や明治維新の拠 点として、あるいは、文明開化における鉄道(明治5年(1872)新橋と横浜間鉄道開通) ・ ガス・新聞の発祥地として、時代の転換期の舞台となってきました。 写真10 江戸無血開城を決めた「勝・西郷会談」が行われた薩摩藩屋敷跡地 6) 現在の港区の 姿 は、 昭 和22年(1947) 3月15日、旧赤坂区、旧麻布区、旧芝区の3 区の合併にその誕生を遡ります。なお、「港区」という名称は、3区合併を機に、各区 の関係者から提案されたもののうち、「今後の我が国の発展は貿易の振興にあるが、そ の素材ともいえる東京港を包含している」として「東港区」が候補となりましたが、 「東 港区」では「東京都東港区」のように類似する音が重なることから、「東」の1字を除 いて「港区」となりました 1)。この名称は新区が誕生する前の、昭和22年(1947)2月 26日に決定されています。 その後、大正12年(1923)9月1日に起こった関東大震災により、港区では地震や 大火災で芝区を中心に甚大な被害を受け、被災者はおよそ10万5千人に達しました。 震災後、日本は第二次世界大戦へと悲劇の道をたどります。終戦間際の昭和20年頃 (1945)には、東京大空襲を始め連日・連夜空襲や空爆を受け、港区の死者は1,051人、 負傷者は9,100人を数え、153,800人もの人々が被災しました。この戦争で区の大半は焼 失し、赤坂・青山・六本木はほぼ全焼、増上寺や多くの文化遺産が焼失しました。 写真11 大震災直後の赤坂見附の倒壊家屋 7) 写真12 大震災直後の新橋付近の惨事 7) -5- 写真13 世界大戦時の東京都の惨事 3) 写真14 東京大空襲の惨事(戸越公園駅)3) 終戦後、港区でも復興の兆しが見え、昭和30年代の高度経済成長時代に突入します。高 度経済成長時代には、昭和33年(1958)12月23日、現在登録有形文化財に登録されている 東京タワーの建設を始めとし、都市整備事業、首都高速道路や幹線道路の建設・整備が進 められ、世界貿易センタービルを始めとする高層ビルなどの建設ラッシュが続きます。特に、 空の玄関口である羽田とは、羽田~浜松町間を結ぶモノレールが昭和39年(1964)9月に完 成しています。交通網の整備とともに、都市再開発事業、港湾整備、埋立事業、ゆりかも やレインボーブリッジの建設による臨海部開発も急ピッチで進められ、港区も現在の虎の 門・芝・新橋エリア、麻布・六本木エリア、青山・赤坂エリア、白金・高輪エリア、ベイ エリアへと近代的な都市として変貌を遂げていきます(写真5 ~写真8)。 近年では、外国公館・大使館が数多く設置され、国際機関や外資系企業などが集中し、 国際性豊かな文化圏を形成している区であるとともに、区内には、国立新美術館、サン トリー美術館、根津美術館などに代表される文化・芸術施設、東京大学(医科学研究所)、 東京工業大学(田町キャンパス)などの国立大学や、北里大学、慶應義塾大学など多く の私立大学も設置されています。また、情報発信の拠点となるマスメディアの本社も集 中し、情報・文化・芸術・教育も兼ね備えた魅力的な区として成長しました。 写真15 フジテレビ本社とゆりかもめ 写真16 慶應義塾大学図書館・旧館 -6- 2.港区の地形と地質 港区は、東京都のほぼ東南部に位置し、東側で東京湾に面しています。その周囲は 中央区、千代田区、新宿区、渋谷区、品川区、江東区と境を接し、23 区内では中央区、 千代田区とともに産業経済の中心地を形成しています。 東京西部青梅市付近の武蔵野台地は、標高200m程度をもち、東へ高度を低くし低地 と接する付近で10m ~ 20mの標高を示します。 図7 東京の地形区分図 8) -7- 2-1 地形 港区の地形は、大きくは東側に広がる低地と西側の台地に分けられます。最高地は 標高34m(北青山三丁目)、最低地は 標高0.08m(JR浜松町駅前ガード付近)です。台 地(武蔵野台地)は標高約30 ~ 40m の平坦面を有し、区の中央を流れて現在の浜松町 駅周辺で埋め立て前の河口域を形成する古川及びその支沢によって樹枝状に刻まれて、 いくつかの台地群をなしています。台地群は、北から赤坂台地、青山台地、飯倉台地、 麻布台地、三田台地、白金台地、高輪台地などと呼ばれています。一方、低地は古川及 びその支沢の形成する沖積低地と東京湾に面する砂州・砂堆及び埋立地からできていま す。台地と低地の境では急な斜面を形成し道路は急坂となっており、これらの急斜面は、 海食崖であり、およそ0.6万年前の海水の浸食作用によって作られた地形です。そのため、 港区には人工改変による坂が多く見られ、乃木坂、鉄砲坂、魚籃坂などさまざまな名前 のつけられた90余りの坂の名前からは港区の歴史や文化だけではなく、地理的環境を 知ることができます。(図8参照) 図8 東京都区部デジタル図 9) -8- 2-2 地質 港区の地質は、地形区分により異なります。東側の低地では、埋土層、有楽町層など の沖積層が表層部に堆積し、その下部に東京層、東京礫層が堆積しています。 低地部の主体層である有楽町層は、上部が砂、下部が貝化石を多く含む軟弱なシル ト・粘土から構成されています。下部層は約1万年前の海面が今より40m程度低かった 時代から約0.6万年前の縄文海進最盛期にかけての急速な海面上昇時期に堆積したもの で、全体に砂を含む均一な砂質シルト、シルトを主体としています。上部層は海進最盛 期から内湾に移行した海退時の堆積物で、貝殻混りシルトや砂質シルトからなる粘性土 を主体として、上位と下位に不規則に砂層を挟む層相です。層厚は埋没谷中心部で最大 30m程となります。 一方、西側の台地では、表層は関東ローム層と呼ばれる火山灰質土により覆われてい ます。ローム層は上部のローム土いわゆる赤土と下部の凝灰質粘土(おもに、約10 ~ 12万年前の下末吉面に堆積)に大別され、第四紀更新世につもった火山灰です。これ らは富士や箱根、あるいは八ツ岳、そして北関東へゆけば、浅間、榛名、赤城等の火山 に由来しています。そして、浅い深度から東京層群の東京層(粘土・砂)・東京礫層が 現れます。さらに、関東平野の基盤をなす海成堆積層である砂岩・泥岩あるいは凝灰質 砂礫などからなる上総層群が堆積しています。 東京層以深の地盤は超高層ビルの支持層として利用されています。たとえば、東京タ ワー(竣工 昭和33年(1958))は、GL-22mにある東京礫層を支持地盤(深礎杭)と し て い ま す。 ま た、 世 界 貿 易 セ ン タ ー ビ ル( 竣 工 昭 和45年(1970)) もGL-18.7mに ある東京礫層を支持地盤(直接基礎)としています。さらに、2000年代完成のミッド タウン・タワー(竣工 平成19年 (2007))は上総層群を支持地盤(直接基礎)として います。模式図を図9に示します。港区内の支持地盤までの深度は、おおよそ15m ~ 30mとなっています。 152m 隅田川 浜松町 〔m〕 50 0 有楽町層(沖積層) 図9 超高層ビルと東京層の模式図 10) -9- 世界貿易センター 東京層 麻布 東京礫層 青山 関東 ローム層 下町低地 渋谷 武蔵野礫層 山の手台地 東京都第一本庁舎 新宿 神田川 0 226.3m 池袋 サンシャイン 〔m〕 60 50 243m 図10に、港区の東西方向の模式断面図を示します。この断面図より台地部では、ローム層 (Lm)その下位に東京層群(砂層;Tos、粘土層;Toc、砂礫層;Tog)そして、関東平野の 基盤をなす海成堆積層である上総層群(泥岩・砂岩・礫岩;Ka)の層序がわかります。一方、 低地部では、これらの台地を海進・海退あるいは河川による開析作用により削り取られそこ に沖積堆積物等(有楽町層上部砂層;Yus、有楽町層下部粘土層;Ylc)が複雑に堆積している ことがわかります。 港区 渋谷区 中央区 JR東海道本線・山手線・京浜東北線 JR山手線 東京急行電鉄東横線 渋谷川 首都高速2号線 国道1号線 東京モノレール 東京臨海高速鉄道 りんかい線 隅田川 標高 (m) 50.0m 40.0m 30.0m 20.0m 10.0m 0.0m -10.0m 表1 地質凡例および地質層序表 12) 図10 港区の模式断面図(東西方向)11) - 10 - 晴海埠頭 3.港区の防災 災害を未然に防ぐための施策、行為を称して『防災』といいます。 災害対策に関する最も基本的な法律である“災害対策基本法”では、「災害を未然に 防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ること」 とされています。また、発生が免れない自然災害においては、その現象の被害を皆無に することは不可能であり、対策により被害を最小限に抑えるという「減災」の考え方が 取り上げられてきています。 そして、地震、洪水などによる大規模な災害発生時に、国、地方公共団体等の防災機 関との連携の強化、自主防災組織をはじめとする民間の防災組織や企業、団体、個人な ど、すべての国民がそれぞれ役割を担い連携協力する防災力の向上、また情報通信技術 を取り入れ、画像情報、地図情報なども活用した的確な災害情報の収集、伝達の実施な どが今日では、特に求められています。 港区では、災害発生時に区民の生命と貴重な財産を守るために、区が防災対策上取 り組むべき課題を明らかにするともに、区、区民、事業者が『自助』・『共助』・『公助』 という防災の基本概念に基づき、それぞれの果たす役割と責任の中で、防災対策を進め ることが必要であるとしています(下図参照)。 ~ 『自助』 『共助』 『公助』による防災力の向上 ~ 自らのことは自らが守るという『自助』の考え方をまず基本とし、 次に地域においてお互いに助け合うという『共助』を進め、 さらに行政が区民等の安全を確保するという『公助』の考え方に基づき、 区、区民、事業者が相互に連携を図りながら協力することが必要です。 防災恊働社会 図11 防災協働社会のイメージ図 13)に加筆 - 11 - 最近では、「事業の継続」という観点から、事業所が中心となる防災対策が見直され てきています。企業が本社を多く構え、いわば日本のビジネスの中心とも言える港区で は、この状況を鑑み、区内の事業所が、次の3つの防災の基本に加えて「事業の継続」 を追加して検討することにより、防災体制をより一層充実強化できるように事業所向け 防災マニュアル『Never Too Late』(図12参照)を作成しています。 <防災の基本> ○「自分の身は自分で守る」という地震対策の基本を認識すること ○ 小売業やサービス業等においては顧客の安全も従業員の安全と同様に配慮すること ○ 地域社会の一員であることを自覚し、地域の人々や地域の防災組織と相互連携すること このマニュアルの基本的な考え方を「学ぶに遅すぎることはない(Never too late)」と して、企業により温度差がある防災対策をより浸透させるべく、幾つかの工夫がされて いるのがこの冊子の大きな特徴です。 対 策 は、 一 か ら 十 ま で を 一 度 に や 港 区 事 業 所 向 け 防 災マニュアル ら な け れ ば な ら な い も の で は な く、 で き る と こ ろ か ら 手 を つ け て、 少 し ず つ 積 み 重 ね て い く も の で す。 そ こ で、次のようなマークを付けて、 必ずやる対策 やってください! やった方がいい対策 今 すぐ 始 め る 事 業 所 の 地 震 対 策 できればやってほしい! 対策の優先順位がひと目で分かるよ うに工夫しています。また、必ずやる 対策は、優先度が高くあまりお金のか からない対策にまとめています。 港 区 こ の 冊 子 は、 そ ん な 工 夫 が 随 所 に 施 さ れ、 事 業 所 の 防 災 レ ベ ル の 向 上 に一役買っています。 気づいた時にすぐ始めること! これが最大の防災対策なのです。 図12 港区の事業所向け防災マニュアル 『Never Too Late』15) - 12 - 港区は、大規模開発などにより土地利用の変化が著しい街です。また、商業・業務機能、 居住機能、臨海部の港湾機能など様々な機能が存在しています。区は災害に強い街づく りを推進しつつ、今後は、このような現状や、景観への意識の高まりなど時代の要請を 踏まえ、地域特性に応じた土地利用の適正化を図り、居住と都市活動の均衡がとれた街 を目指しています。 東京都は、地震に関する危険度調査を行い「地震に関する地域危険度測定調査報告書 (第6回)(平成20年2月)」として発表しています。これは、地震に強い都市づくりの 指標としているもので、下表により1~5までのランクで相対評価をしています。 この評価の中で、港区は危険度の低い“1”に70%弱、 “ 1~2”に90%がランクされ、 危険度の低い街であると言えます(下表参照)。 表2 地域危険度調査の指標 14)に加筆 危険度:高い 区 分 東京都 港 区 危険度:低い ランク 5 4 3 2 1 計 町丁目数 84 283 807 1623 2302 5099 比率 1.64% 5.55% 15.83% 31.80% 43.15% 100.00% 町丁目数 - 2 8 24 71 105 比率 0.00% 1.90% 7.62% 22.86% 67.62% 100.00% 1.建物倒壊危険度 地震動によって建物が壊れたり傾いたりする危険性の度合いを評価したものです。 2.火災危険度 地 震による出火の起こりやすさと、それによる延焼の危険性を測定して、火災の 危険性の度合いを評価したものです。 また、防災計画の前提条件として東京都防災会議が平成24年(2012)4月に公表した 「首都直下地震等による東京の被害想定報告書」では、東京湾北部地震(首都直下地震)、 多摩直下地震(首都直下地震)に加え、元禄型関東地震(海溝型地震)、立川断層帯(活 断層で発生する地震)もあわせて4つの地震モデルをもとに被害想定の見直しが行われ ました。 港区では、津波を除き、被害が最大に達するケース「東京湾北部地震(M7.3)冬の 夕方18時 風速8m/s」を前提条件としました。そして、津波については、「元禄型関東 地震(M8.2)水門開放」を条件としました。ただし、東日本大震災では、津波が、非 常に大きな被害をもたらしたことから、津波・液状化については、東京都の津波・液状 化の被害想定をより詳細に分析を行うことや区にとって最悪の被害を想定し、独自に詳 細なシミュレーションを実施しています。 - 13 - その結果、港区で発生する主な被害想定は以下のとおりです。 ◆最大震度7となるほか、震度6強の地域が9割を超えて発生します。 ◆帰宅困難者は46万人発生します(夜間人口(居住者)は約23万人ですが、区外から の通勤者と通学生、区民など昼間残留する昼間人口は、約90万人にもなります)。 ◆建物被害(揺れ、地震火災)は、高輪などの木造住宅密集地域で多く発生します。 ◆津波浸水被害は、芝浦地区などの臨海部、運河沿いで想定され、区内の浸水面積は約 150ha、最大浸水深度は1.5m程度とされています(図13参照)。 ◆液状化の可能性については、芝浦、港南、台場などの臨海部のほぼ全ての地域のほか、 内陸部の一部にも点在してその危険性が高くなっています(図14参照)。 また、港区では、地震による揺れの大きさを示す“揺れやすさマップ”(図15参照) を作成し、防災意識の向上に努めています。 防潮施設機能あり、液状化なし 防潮施設機能あり、液状化あり 凡例 凡例 浸水深 浸水深 0.00-0.15m 0.15-0.50m 0.50-0.80m 0.80-1.50m 1.50m以上 防潮施設機能なし、液状化なし 0.00-0.15m 0.15-0.50m 0.50-0.80m 0.80-1.50m 1.50m以上 防潮施設機能なし、液状化あり 凡例 凡例 浸水深 浸水深 0.00-0.15m 0.15-0.50m 0.50-0.80m 0.80-1.50m 1.50m以上 0.00-0.15m 0.15-0.50m 0.50-0.80m 0.80-1.50m 1.50m以上 区独自の津波シミュレーション(平成24年) 図13 津波浸水被害状況 14) - 14 - 凡例 液状化危険度 ■ 液状化の可能性が高い地点が含まれるメッシュ ■ 液状化の可能性がある地点が含まれるメッシュ ■ 液状化の可能性が低いメッシュ 区独自の液状化シミュレーション(平成24年) 図14 液状化危険度分布図 14) 図15 地震による揺れやすさマップ 14) - 15 - 4.港区の主な土木・建築遺産、史跡など 港区には、貴重な土木・建築遺産、史跡がたくさんあります。ここでは国指定重要文 化財、都指定歴史的建造物、東京都指定有形文化財などの中から代表的なものと、平成 に建てられた有名な構造物について以下に紹介します。 土木遺産:旧芝給水所 建築遺産:東 京タワー、迎賓館赤坂離宮、東京都庭園美術館、慶應義塾大学図書館旧館、 高輪消防署二本榎出張所、増上寺 史 跡:柳の井戸、旧芝離宮恩賜庭園 平成の構造物:レインボーブリッジ、国立新美術館 (1)旧芝給水所(写真17) 所 在 地:芝公園3丁目6番7号 アクセス:東京メトロ日比谷線 神谷町駅徒歩5分 旧 芝 給 水 所 は、 芝 増 上 寺 の 北 西 部 の 高 台 に 位 置 し、信濃小諸藩主牧野遠江守康済の屋敷跡地に、芝 給 水 工 場 と し て 明 治29年(1896) 8 月 に 竣 工、 明 治31年(1898)12月 に 淀 橋 浄 水 場( 現 在 の 新 宿 区 西新宿・北新宿)から浄水を受け給水を開始しまし た。この給水所は、淀橋浄水場、本郷浄水工場と共 に東京近代水道の始まりとなった施設で、その後約 100年にわたり、関東大震災や戦災に見舞われなが らも、東京都民の生活に欠かせない飲料水を送り続 けてきました。 写真17の遺構は、施設の一部を保存し後世に伝え るために保存されています。 写真17 旧芝給水所の碑 (2)東京タワー(写真6、写真18) 所 在 地:芝公園四丁目2番8号 アクセス:都営地下鉄大江戸線赤羽橋駅徒歩5分 東京タワーの正式名称は、「日本電波塔」で、昭和33年(1958)12月に高さ333mの トラス構造の電波塔として建てられました。この高さは、フランス・パリのエッフェル 塔(現在324m)より高く、当時の自立式鉄塔としては世界最高でした(写真18)。現在は、 東京スカイツリーに次ぐ日本で2番目に高い建造物です。 東京 タワ ーは、 関東 エリ ヤの100km圏の電波をカバーしてきましたが、現在はデ ジ - 16 - タルテレビ放送の一部の電波を届けているほか、い くつかのラジオ放送を発信しています。 展望台は、大展望台(高さ150m)、特別展望台(高 さ250m ) が あ り、 東 京 の 景 色 や 遠 く 富 士 山 を 望 む ことができます。また、夜のイルミネーションも奇 麗です。 平成25年(2013)6月に国の登録有形文化財に登 録されました。 (3)迎賓館赤坂離宮(写真19) 所 在 地:港区東京都港区元赤坂2丁目1番1号 アクセス:JR四谷駅徒歩7分 迎賓館赤坂離宮は、かつて紀州徳川家の江戸中屋 敷があった広大な敷地の一部に、ベルサイユ宮殿に 倣って、明治42年(1909)明宮殿下(大正天皇)の 写真18 建設当時の東京タワー 16) の全景 東宮御所として建てられました。設計は片山東熊が 行い、外観はネオ・バロック様式(装飾性が強いのが特徴)、内装はロココ風(唐草・ 貝殻模様などの曲線を主にした繊細・優美な装飾性が特徴)にできています。昭和49 年(1974)に、外国の元首や首相などの国賓、公賓に対して宿泊その他の接遇を行う ために、110億円を投じて大改装が行われ、国の迎賓施設になりました。国賓、公賓の 滞在中は、首脳会談、表敬訪問、署 名 式、 レ セ プ シ ョ ン や 晩 餐 会 な ど 様々な外交活動が行われています。 迎賓館赤坂離宮では、国民の高い 関 心 に 応 え、 昭 和50年(1910) か ら毎年、接遇に支障のない時期(主 に夏期)を選び、館内を一般に公開 する参観が行われています。内閣府 のホームページをご覧になって下 さい。 写真19 迎賓館赤坂離宮の全景 17) (4)東京都庭園美術館(写真20) 所 在 地:白金台5丁目21番9号 アクセス:都営三田線白金台駅徒歩5分 - 17 - 東京都庭園美術館は、浅香宮邸として昭和8年(1933)に建てられ、戦後の一時期、 外務大臣・首相官邸、国の迎賓館として使用されてきましたが、昭和58年(1983)に 都立美術館として一般公開され現在に至っています。また、東京都の有形文化財に指定 されています。この建物は、地上2階、地下1階の鉄筋コンクリート造りで、1920年 代 か ら1930年 代 に か け て ヨ ー ロ ッ パ で流行したアール・デコ様式(装飾美 術)を現在に伝えるものです。美術館 は、広大な緑溢れる庭園に囲まれ、自 然と建物と美術作品があわせて楽しめ る環境に恵まれ、そこに庭園美術館の 名前が由来しています。 庭園内に併設されたカフェレストラ ンでは和のスイーツが充実し、ゆっく 写真20 東京都庭園美術館の全景 18) り楽しむことができます。一度訪れて みるといいと思います。 (5)慶應義塾大学図書館旧館(写真16) 所 在 地:三田2丁目15番45号 アクセス:JR三田駅徒歩7分 慶應義塾大学図書館旧館は、義塾創立50周年を記念し、明治45年(1912)4月、工学 博士曽禰達蔵、工学士中條精一郎両氏の設計監督によって建てられました。この建物は、 ゴシック様式の洋風煉瓦館で、外観が赤煉瓦と花崗岩、テラコッタ(素焼き粘土)によ り鮮やかに彩られています。本館は地下1階・地上3階、書庫は地上6階、東南隅にあ る八角堂は地上4階からなり、建築面積は約680m 2 になります。また、蔵書数・閲覧席 の規模では当時の大学図書館としては画期的なものでした。慶應義塾のシンボル的存在 で、階段上を飾るステンドグラスの一番下に「Calamvs Gladio Fortior」と書いてあ ります。これはラテン語で「ペンは剣よりも強し」という意味で、権力に屈しない慶應 義塾の精神を表しています。 大正12年(1923)の関東大震災及び戦災による被害を修復し、今日なお当初の遺構 を留めています。煉瓦建築の少ない我が国にあって、建築史上貴重な建物です。昭和 44年(1969)に国の重要文化財に登録されました。 (6)高輪消防署二本榎出張所(写真21) 所 在 地:高輪2丁目6番17号 - 18 - アクセス:都営浅草線高輪台駅徒歩10分 高輪消防署二本榎出張所は、昭和8年(1933)12月に建てられ、近代建築の遺産(ド イ ツ 表 現 主 義 ) と し て、 学 術 的、 文 化 的 に も 貴 重 な 建 築 物 で、 平 成22年(2010)3月 に 東 京 都 選 定 歴 史 的 建 造 物 に 選 定 さ れ ま し た。 こ の 建 物 は、 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 造 り 地 上 3 階 建 か ら な り、 3 階 に 円 形 講 堂、 そ の 上 に 望 楼 が 構 築 さ れ、 表 面 は ク リ ー ム 色 の 磁 器 タ イ ル で 覆 わ れ て い ま す。 ま た、 ア ー ル ヌ ー ボ ー 風 の ガス燈が当時のまま保存されています。 こ の 建 物 の 場 所 は 標 高25m の 位 置 に あ り、 新 築 当 時 は 周 囲 に 高 い 建 物 が な く、 東 京 湾 を 眼下に眺望できたことから、「岸壁上の灯台」 とか「海原を行く軍艦」と評されていました。 現 在 も 消 防 署 と し て 使 用 さ れ て い ま す が、 建 物を拝観することができます。 写真21 高輪消防署二本榎出張所の全景 (7)増上寺(写真22) 所 在 地:芝公園4丁目7番35号 アクセス:都営三田線御成門駅徒歩4分 増上寺は、浄土宗の七大本山の一つで、明徳4年(1393)、浄土宗第八祖酉誉聖聰(ゆ うよしょうそう)上人によって開かれた由緒ある古刹です。正式の呼び名は、三縁山 広度院増上寺です。この寺は、徳川家康公が関東の地を治めるようになってまもなく、 徳川家の菩提寺として選ばれ、慶長3 年(1598) に 現 在 の と こ ろ に 移 転 し ました。明治新政府誕生までは、敷地 20数 万 坪 を 保 有 し、 常 時3,000名 の 僧 侶 が 修 行 す る 大 寺 院 で し た。 し か し、 明治期の2度にわたる大火と昭和20年 (1945)の空襲によって焼失しました。 その後、焼失を逃れた山門、経蔵、黒 門などを含む境内は、昭和49年(1974) 完成の大本堂とともに、近代的に整備 写真22 増上寺の全景 されました。現在でも浄土宗の大本山 - 19 - として、東京を代表する由緒寺院の格式を保っています。また、建造物、古文書、経典 など文化財の宝庫として知られています。 (8)柳の井戸(写真23) 所 在 地:元麻布1丁目6番善福寺前 アクセス:東京メトロ南北線麻布十番駅徒歩5分 善福寺参道の右側に大きな柳の木があり、その根元から湧いているのが「柳の井戸」 です。湧いている水は、清らかで非常 に 冷 た く、 そ の 量 も 比 較 的 豊 富 で す。 東 京 の 名 湧 水57選 に 選 ば れ て い ま す。 「 柳 の 井 戸 」 は、 関 東 大 震 災 や 東 京 大 空襲の際の災害時の飲料水として利用 され、多くの人命を救いました。港区 の文化財に指定され、区民に親しまれ ています。この湧水は、現在飲むこと はできませんが、善福寺の境内に入る と、左手に手押しポンプの井戸があり、 写真23 柳の井戸の全景 水を汲んで飲むことができます。 (9)旧芝離宮恩賜庭園(写真24) 所 在 地:海岸1丁目4番1号 アクセス:JR浜松町駅徒歩1分 旧芝 離 宮 恩 賜 庭 園 の 地 は、 芝 浜と呼ばれていた眺望豊かな海浜でしたが、延宝 6 年 (1678)、老中大久保忠朝が下屋敷を造り、約8年の歳月をかけて「楽寿園」を作庭しま した。その後幾多の変遷を経て、明治 8年(1919) に は 宮 内 省 所 管、 翌9年 (1920) 芝 離 宮 と な り ま し た。 関 東 大 震災により被災を受けましたが、大正 13年(1924)昭和天皇の御成婚を記念 して東京市に下賜され、震災復興によ り同年4月に「旧芝離宮恩賜庭園」とし て一般に公開し、今日に至っています。 昭和54年(1979)に文化財保護法によ 写真24 旧芝離宮恩賜庭園の全景 り国の「名勝」に指定されました。 - 20 - (10)レンボーブリッジ(写真25) 所 在 地:芝浦埠頭~お台場 アクセス:ゆりかもめ芝浦ふ頭駅徒歩3分 レンボーブリッジは、芝浦からお台場を結ぶ橋長798m、塔の高さ海面から126mの 吊橋形式の橋梁からなり、昭和56年(1987)着工、平成5年(1993)に竣工、同年8 月 に 開 通 し ま し た。 こ の 橋 は、 上 下 2 層 の ダ ブ ル デ ッ キ 構 造 で、 上 層 は 首 都 高 速11号 台 場 線、 下 層 は 臨港道路・臨海新交通システム(ゆ りかもめ)から な る 複 合 交 通 施 設 に な っ て い ま す。 ま た、 下 層 の 道 路 外 側 に は 遊 歩 道 が あ り、 歩 い て 渡 れ ま す。 東 京 湾 に 浮 か ぶ 白 く 優 美 な 容 姿 が 印 象 的 で、 夜 は 美 し く ライトアップさ れ 夜 景 が 大 変 綺 麗 です。 写真25 レンボーブリッジの全景 (11)国立新美術館(写真26) 所 在 地:六本木7丁目22番2号 アクセス:東京メトロ千代田線乃木坂徒歩1分 国立新美術館は、平成19年(2007)1月に開館しました。延床面積は日本最大です。 建築設計は、黒川紀章が行い、「森の中の美術館」をコンセプトとして緑の広場と滑ら かな曲線を生か し た 全 面 ガ ラ ス 張 りの明るい外観 が 観 客 を 迎 え て い ま す。 こ の 建 物 で は、 展 覧 会 の 開 催・ 情 報 収 集 お よ び そ の 公 開・ 教 育 普 及 が 行 わ れ て い ま す。 ま た、 館 内 に は ミ ュ ー ジ ア ム シ ョ ッ プ、 レ ス ト ラ ン、 カ フ ェ な ど が 併 設 さ れ、週末は大変な賑わいです。 写真26 国立新美術館の全景 - 21 - 5.港区の観光スポット 都心を形成している港区は、日本のビジネスの中心とも言えます。特に、虎ノ門・新橋・ 芝をはじめとしたオフィス街では、経済活動が活発です。しかし、それだけでないのが、港 区の特徴です。 青山・赤坂などの商業、ファッションエリア、六本木などの歓楽街、麻布・白金台などの 高級住宅街、汐留・台場などの東京湾沿岸大規模開発地区、東宮御所・迎賓館をはじめとし て芝公園・白金台の自然教育園の緑地帯・自然環境などさまざまな表情を持っています。 地形は、湾岸の埋立地を除くと大部分が台地で、これを弁慶堀から溜池かけての谷と区中央を流 れる古川が浸食し、幾つかの台地に分け複雑な地形を形成しています。そのため、坂や橋が非常に 多く、区内には坂が90箇所あまり、橋が50本あまり存在します。台地が海や谷に臨む地 (入り江)は、 古代人が好む環境のため、丸山古墳・亀塚(三田4丁目)などの遺跡もあります。また、国の重要文 化財、天然記念物もあり、歴史的にも興味深い街です。明治維新後には、広大な武家屋敷地は軍用 地や外国公館地などに転用されおり、区内には80以上の大使館が存在し、国際色の豊かな町です。 また、平成25年(2013)9月8日に決定した、2020年・東京オリンピック・パラリンピッ クでは、お台場海浜公園がトライアスロンなどの競技会場になる予定です。港区は、都内で 最も多くの客室数があり、空の玄関、羽田、成田と直結し、東京港や新幹線品川駅により全 国と結ばれているなど、国内の交通網の中継地であることから、まさに東京オリンピック・ パラリンピックの中心地であり、世界中の方々が訪れる街となります。 写真27 大門、浜松町付近のオフィス街 19) 写真28 区内でも最も急な三分坂(赤坂)20) 写真29 駐日アメリカ合衆国大使館(赤坂) 21) - 22 - 写真30 芝丸山古墳(芝公園) 観光スポットの多い港区ですが、今回は竹芝~台場の東京湾沿岸地区をご紹介します。 (1)大型レストラン船ヴァンテアンでの東京湾遊覧 22) 竹芝客船ターミナルから大型レストラン船 「ヴァンテアン」 で東京湾の大パノラマを 眺めながら、本格フランス料理を楽しむことができる東京湾クルーズです。所要時間は、 景色や食事をゆっくり楽しむ事が出来る120 ~ 140分です。 出発時間は、遠くまで景色を楽しむ事が出来るお昼12時、夕陽を楽しむ事が出来る 16時30分、夜景を楽しむ事が出来る19時10分です。 コースは、以下の通りです。 竹芝客船ターミナル 竹芝桟橋 港区海岸 1 丁目、浜松町から徒歩 7 分。 東京港の客船ターミナル。 超高速ジェット船や大型客船が発着しています。 途中、東京タワー(港区芝公園)が見えます。 レインボーブリッジ 芝浦∼お台場を結ぶ橋長 798m、海面から 126m の吊橋形式橋梁。真下を船で通過します。 お台場 お台場海浜公園や人気スポットのフジテレビや 観覧車が見えます。 大井ふ頭・羽田空港 積み降ろしのクレーンやD滑走路からの飛行機 の離着陸が見えます。 (大田区) お台場 レインボーブリッジ 竹芝客船ターミナル 竹芝桟橋 お昼と夕方出発便:所要時間 120 分 夜出発便 :所要時間 140 分 写真31 ヴァンテアン号 総屯数1,717t 全長64.83m 航海速力10ノット 旅客定員700名(平水区域) - 23 - 写真32 ヴァンテアン号への乗船状況 写真33 船内からみるお台場 フジテレビや観覧車がみえる 写真34 大井側(品川区)と台場側を 結ぶ首都高速湾岸線東京港トンネル 写真35 レインボーブリッジの真下を通過する様子 写真36 芝浦の倉庫街 写真37 船内デッキの様子 東京タワーがみえる 結婚式もできる 写真38 船内デッキの様子 写真39 シーサイドデッキから海を望む - 24 - 写真40 船内にあるお土産コーナー 写真41 船内レストランの様子 写真42 メインディッシュ 写真43 デザート 若鶏の香草パン粉焼き 季節により、メニューは変化します (2)お台場海浜公園・台場公園 23) お台場海浜公園は、港区台場にある旧防波堤と台場公園に囲まれている入り江を利用 した砂浜や磯のある海浜公園です。海と緑の自然とレインボーブリッジやリゾートホテ ルと景観が見事に融合した観光スポットです。 写真44 お台場海浜公園 写真45 船内デッキの様子 きれいな砂浜で観光客も多い - 25 - 台場公園は嘉永6年(1853)6月に、ペリー提督ひきいる黒船来航に備え、東京湾 上に作られた砲台の跡地、第三台場を利用して作られた公園です。 当時は、外国艦船の攻撃から江戸を守るにも大型船がありませんでした。そこで考え られたのが、台場(砲台)の築造です。結果的に品川沖に6つの台場を作りましたが、 使 用 す る こ と な く 放 置 さ れ ま し た。 これが 「品川台場」 です。6つの台 場は昭和の年代まで残っていまし たが、東京湾の整備上4つが取り除 かれ、原形を最もよく保存している 第三台場と第六台場が国指定の史 跡に指定されています。 写真46 第三台場 写真47 台場公園内に設置されている第三台場案内図 写真48 砲台(火砲) 36ポンド砲が配置されていた 写真49 かまど 写真50 玉置所 鉄製の砲弾を格納する施設 港区は、経済・歴史・文化等、観光スポットが多い非常に魅力のある街です。今回ご 紹介したのは、ほんの一握りです。是非、足を運んでみてください。 - 26 - <参考文献> 1)港区公式ホームページ(http://www.city.minato.tokyo.jp/) 2)明 治・大正・昭和:データベース:YOMIURI ONLINE(読売新聞) (http://www.yomiuri.co.jp/mts/db_mts_20090904.htm) 3)Wikipedia 4)「歴史人(江戸の暮らし大全)」 5)日 本専門図書出版株式会社 (http://www.jpn-shuppan.co.jp/books/book1_sample2.html) 6)yahooプログ(http://blogs.yahoo.co.jp/hirahira523/5279298.html) 7)国 立科学博物館地震資料室 (http://research.kahaku.go.jp/rikou/namazu/03kanto/03kanto.html) 8)東京都(区部)大深度地下の地盤より抜粋 9)東京都区部 www.jmc.or.jp/map/jmc/digital_hyoko.sample.html 10)新版 東京都 地学のガイド コロナ社 11)インターネット 国土交通省 国土政策局 国土情報課http://nrb-www.mlit.go.jp/kokjo/ inspect/landclassification/land/detail/verticality/F4/shuto/pdf/WE22.pdfより抜粋 12)「首都圏地盤断面図」,国土交通省土地・水資源局国土調査課HP 13)港区防災対策基本条例 14)港区地域防災計画 15)港区事業所向け防災マニュアル<Never Too Late> 16)http://ja.wikipedia.org/wiki/東京タワー 17)http://www8.cao.go.jp/geihinkan/index.html 18)http://ja.wikipedia.org/wiki/東京都庭園美術館 19)http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:World_trade_center_tokyo.JPG 20)港区観光協会ホームページ http://www.minato-kanko.com/ 21)http://ja.wikipedia.org/wiki/駐日アメリカ合衆国大使館 22)東京ヴァンテアンクルーズホームページ http://www.vantean.co.jp/ 23)海上公園ガイド http://www.tptc.co.jp/park/tabid/62/Default.aspx - 27 - 技術ノートのあゆみ 技術ノートは 当協会技術委員会が技術情報誌として昭和62年12月に創刊号を発行して以 来、平成25年11月までで第46号に達しています。 創刊号から第45号までの内容は、既刊リスト表に示すとおりです。トピックスの内容は、 東京を舞台とする様々な話題の中に地形、地質との関連または基礎工学的な話を織り込みな がらその歴史や現在を伝える内容となっています。各号とも写真や図にカラーをふんだんに 使い、明るい紙面となっています。 技術ノートは、一般の方々に地質調査業を理解していただこうと始めた行事であります。 今後も、たくさんの人たちに読んでもらえるよう、内容を充実させて地域社会に貢献してい きたいと思います。 創刊号から最新号まで(社)東京都地質調査業協会のホームページ (http://www.tokyo-geo.or.jp/)からPDFファイルで読むことができます。 ■技術ノート既刊リスト表(バックナンバー) No. 発行年月 技術トピックス No. 発行年月 技術トピックス 1 S. 62.12 東京都の地形区分図・地質断面図 25 H. 10. 3 東京の川 神田川 2 S. 63. 3 超高層ビルの地質の基礎形式 26 H. 10.10 東京の台地 3 S. 63. 7 江戸城なりたち、その地形・地質との関係 27 H. 10.12 東京の道 4 S. 63.10 東京湾の埋立、その歴史 28 H. 11. 3 東京の水辺 5 H. 1. 3 東京の川と水 29 H. 11.10 東京のまちなみ 6 H. 1. 8 建築基礎工法の変遷、その地質との関係 30 H. 12. 3 首都圏を支える鉄道網 7 H. 1.12 隅田川の橋、その地質と基礎形式 31 H. 12. 9 東京の公園 8 H. 2. 5 東京の地下鉄 32 H. 13. 3 東京のお酒 9 H. 2.11 東京の石 33 H. 13. 9 三宅島 ー 2000 年噴火と火山災害ー 10 H. 3. 3 新東京都庁舎 34 H. 14. 3 大江戸線 11 H. 3. 7 東京の遺跡 35 H. 14.10 東京の野菜 12 H. 3.12 東京の高速道路 36 H. 16. 2 東京の斜面と災害 13 H. 4. 3 東京の温泉 37 H. 16.11 東京湾 14 H. 4. 9 都内の庭園 38 H. 17.11 多摩川 15 H. 5. 3 山手線 16 H. 5.10 東京のベイエリア 40 H. 19.11 隅田川 17 H. 6. 3 東京の下水道 41 H. 20.10 社団法人化 10 周年記念誌 東京を知る 18 H. 6. 9 東京のエネルギー 42 H. 21.11 東京の下町 19 H. 7. 3 東京の山 43 H. 22.11 東京の地下 20 H. 7. 9 東京の上水道 44 H. 23.11 中央線 21 H. 8. 3 東京の低地 45 H. 24.11 千代田区 22 H. 8.10 東京の運河 46 H. 25.11 港区 23 H. 9. 3 東京のトンネル 24 H. 9. 9 東京の防災 39 - 28 - H. 18.11 東京の地名と地形 編 集 後 記 今回の技術ノートは、 『港区』を取り上げましたが、如何でしたでしょうか。 本年9月8日に2020年・東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定 し、競技会場としてお台場海浜公園がトライアスロン、水泳、ビーチバレー 等の競技会場になる予定です。また、港区は、国際的な街としての特徴を持 ち、商業施設、ファッションエリア、歓楽街、文化施設などの人気スポット が豊富で、自然環境に恵まれ、宿泊ホテルも多く、2020年・東京オリンピック・ パラリンピックでは世界中の方々が訪れると思います。 今回の特集では、港区の国際性豊かな面を時代背景や歴史を踏まえながら 様々な角度から紹介しました。また、地震、洪水などの大規模災害に備えた 防災への取り組み、観光スポット、遊覧船による東京湾クルージングなども 紹介しました。 これからも東京都の素晴らしさを様々な角度から皆様にご紹介し、少しで も多くの方々に東京都の魅力や地盤のもつ面白さ、奥深さを知って頂きたい と思います。次回の技術ノートも是非楽しみにしていてください。 技術委員会(諏訪、川田(英)、川田(明)、河野、長谷川) 平成25年11月発行
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