1-1. 経営組織とは何か

1-1. 経営組織とは何か
個人と組織の本質的な関係とは何か?
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人間行動と組織(協働体系)の特性
 人間行動の特性:個人は「限られた選択力」と何らかの「目的」をもっているが、一人ではできないことを他
の人と協働すること(組織化)によって制約を克服して目的を達成することができる
 協働体系の特性:協働目的は環境変化に従って種類と質が変化し、それらの目的は相互依存的であるが、
それらの中のある目的は個人的行為を許さないこともある
一人でできること
自由意思をもつ「個人人格」
VS.
組織(集団)でできること
自由意思が制限された「組織人格」
(協働体系における機能的存在)
協働体系の中では常に併存している
協働体系は本質的に不安定であるが故に、管理者による適切なマネジメントプロセスが不可欠
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳 経
営者の役割』ダイヤモンド社、1968年)を参照して作成
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公式に組織が「成立」するための要件とは何か?
公式に組織が成立するための要件:公式組織の定義
組織とは、空間的には漠然としたものであり「どこにも存在しない」が、非人格的な諸力が規定された場で
あることから「重力の場」もしくは「電磁場」に例えることができる
「二人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力の体系」
コミュニケーション
相互に意志を伝達
できること
適切な伝達技術(方法)がなければ、専門化された分業組
織をマネジメントすることはできず、組織理論の中心的地位
を占める
貢献意欲
行為を貢献しようと
いう意欲をもつこと
非人格的な行為体系に貢献しようという意欲=
f(個人の動機(個人的欲求と嫌悪)・それを満たす諸要因
(客観的要因と負担))
共通目的
共通目的の達成を
目指すこと
貢献者によって主観的に解釈されるが、外的、非人格的、
客観的なものである
※個人的目的(動機)は内的、人格的、主観的なものである
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳
経営者の役割』ダイヤモンド社、1968年)を参照して作成
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公式に組織が「存続」するための要件とは何か?
公式組織が存続するための要件:
 組織目的が環境に対して適切か否か:組織の有効性(effectiveness)の問題
 組織と個人との相互交換(誘因≧貢献」の変換率):組織の能率性(efficiency)の問題
経営組織を
取り巻く環境
組織の有効性
経営組織
貢献
誘因
組織の
能率性
 協働目的の達成(有効性)と個人的動機の満足(能率性)の関係
社会的事実として協働目的が達成されても、心理的事実として個人的な欲求が充足されるとは限らず、
逆に個人的に満足しても協働目的が達成されるとも限らない
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳
経営者の役割』ダイヤモンド社、1968年)を参照して作成
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公式な組織を形成する作業組織と管理組織
 複合組織の特徴
複合組織とは、いくつかの組織単位で構成されるが、多くの作業組織の上に管理組織を重ね持つ
 作業組織:構成単位が個々人 ex. 作業班や軍隊の小隊など
 管理組織:構成単位が組織 ex. 事業部門や軍隊の連隊など
単位組織の管理者は、下位組織である「作業組織」と上位組織である「管理組織」の2つの
組織に所属するので、一つの意思決定や行動は、同時に2つの組織に貢献することになる
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳
経営者の役割』ダイヤモンド社、1968年)を参照して作成
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作業組織(労働現場)の変遷:前近代産業の発展と工場管理
前資本主義的労働様式
 農業の周期性に従って1年サイクルの中で収穫繁忙期と閑散期が存在(農業社会の労働様式)
 一部の手工業的産業の労働様式(1600年以降)は、安息日(日曜日)には働かず週間サイクルとなった
(e.g. 織布工は家族労働(家内工業)による1週間分の毛織物を土曜日に市場で売ることが一般的)
 18世紀には問屋制家内工業に発展し、織機や紡ぎ車を所有する家族労働者が、問屋から原材料を仕
入れて販売も彼らに委託することによって、賃金労働者に転化しつつあった
 資本主義的工場制度の普及(18世紀中頃~19世紀末)の背景
技術決定論
中央動力源に依存する動力機械が工場に労働
者を集結させる工場労働制を普及させた
工場制度普及の背景
社会統制論
労働者の怠惰な時間労働や部材の横領を統
制することで生産性を向上させるために工場労
働制を普及させた
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内部請負制による工場労働の矛盾
内部請負制による労働様式:職種別労働組合(craft union)と「組織的怠業」の温床
「内部請負人は、多くの点において、独立下請業者と似ていた。内部請負人は、製品の一部を製造し、各完成部
品に対して一定の価格を受け取る契約を会社の工場長あるいは所有者と結んだ。[中略]内部請負人は、自分の
領域の生産、かれ自身の従業員の雇用および作業過程の監督については完全な責任を負っていたが、この(次
の)点では独立下請業者と相違した。かれらはその会社以外には取引はなく、企業は特定品目の生産のすべて
をかれらに依存していた。より重要なことは、内部請負人として、かれらは企業が所有する工場の建物の内部で
働き、その企業の機械、設備、原材料を使用していたということである。内部請負人は、その企業の従業員であり
、多くの場合、企業から日給と完成品1個あたりいくらかの賃金を受け取っていた。」
(D.クロースン(1995、原著1980)『科学的管理生成史』森山書店、p.71)
単純出来高払制度
会社は完成品1個あたりの正当な価格を決め、その生産量に応じて労働者に賃金を支払う。したがって、
労働者は余分な努力や自ら工夫や改善をすることによって生産量を増大させると、より多くの賃金を受け
取ることができる。
→しかし、実際には、会社は出来高価格を調整して労働者の賃金を切り下げてしまうため、労働者はみせ
かけの生産高制限によって組織的に怠業し、労働強化をもたらす生産性の向上に貢献することはなかった。
(e.g. 新参者の賃率破りが生産性を倍増させたが、彼の賃金は50%切り下げられた)
記録保持と管理の発展
労働者の作業過程や生産高を克明に記録することによって生産性を向上させることは明らかだったが、未
だ十分に管理技術が普及していたわけではなかった。
技術変革
分業の進展と機械の導入は、低賃金の不熟練労働者の雇用を可能にし、作業過程における労働と生産の
速度の統制を促進させることによって労働生産性を向上させた。
(Clawson, D. (1980) Bureaucracy and labor process: the transformation of U.S. industry, Monthly Review
Press(今井斉監訳『科学的管理生成史』森山書店、1995年、pp.181-221を参照)
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生産制限と組織的怠業のメカニズム
二種類の「怠業」
①「自然的怠業」:人間は生まれつきの本能および傾向として楽をしたがること
②「組織的怠業」:他人との関係からいろいろ細かい思慮をめぐらした結果として怠けるもの
(F.W.テーラー(1903)「工場管理法」上野陽一・訳・編(1969)『科学的管理法 新版』産業能率短期大学出版部、p.62)
高生産性に対す
る社会的圧力
労使間
不信
高い生産性は
1.賃率変更
2.生産性割当量の増大
3.失業
につながるという確信
高生産性は多分に
ネガティブな結末を
もたらすという確信
高生産性は報酬
につながるという
確信の崩壊
生産制限
と怠業
出所)E.E.ロウラー三世 (1972) 『給
与と組織効率』ダイヤモンド社、p.177
「労働者側においては、彼らの就業時間に対してできるだけ多くの賃金をうけようとする要求が一般的にあり、経
営者側においては、支払った賃金に対してできるだけ多くの仕事をさせようとする要求がある」(F.W.テーラー(1895)
「出来高払制私案」上野陽一・訳・編(1969)『科学的管理法 新版』産業能率短期大学出版部、p.17)
労使ともに明らかに損をしている理由は、「いろいろな仕事を仕上げるのに要する時間について雇主も職長もま
ったく無知であり、同時に工員自身もこのことについて大部分無知である」。そして「どんな管理法を採用すべきか
、それを適用するにはどんな方法をとるべきかについて、雇主は無頓着であり、無知であること。工員の個性、価
値観および福利に関して無頓着であること」(F.W.テーラー(1903)「工場管理法」上野陽一・訳・編(1969)『科学的管理法
新版』産業能率短期大学出版部、p.61)
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作業組織のマネジメントモデル:「科学的管理法」
科学的管理法の本質
科学的管理法の4原理
目的は使用者と従業員の最大繁栄
①科学をめざし、目分量をやめる
②協調を主とし、不和をやめる
③協力を主とし、個人主義をやめる
④最大の生産を目的とし、生産の制限をやめる
⑤各人を発達せしめて最大の能率と繁栄を来たす
①「大なる1日の課業」:毎日なすべき課業を明確に
し、一流の工員並みに難しくする
②「標準条件」:仕事を与える際に標準化した条件と
用具を与え、確実に課業が達成できるようにする
③「成功したら多く払う」:課業を達成したら必ず沢山
払ってやらなければいけない
④「失敗すれば損する」:失敗すれば必ず損するよう
にしなければいけない
出所)F.W.テーラー(1911)「科学的管理法の原理」上野陽一・訳・編(1969)『科学的管理法 新版』産業能率短期大学出版
部より作成
固定給制
差別的出来高給制
差別的出来高給制
一流の労働者の最短時間を「標準時間」に定め、その時間内に
品質に問題がなく標準生産高よりも多くの成果を上げれば単位
当りのもしくは1仕事当たりに対して高い賃率で支払う。逆に、品
質が悪かったり時間が長くかかった場合は低い賃率で支払う。
日給
$2.50
$3.50
機械コスト
$3.37
$3.37
1日合計コスト
$5.87
$6.87
5個
10個
$1.17
$0.69
出来高
職能的職長制度と計画部の創設(計画と執行の分離)
単位コスト
仕事の順序および手順係
指導票係
時間および原価係
指図票
計画部
(計画)
準備係
工場訓練係
現場ライン
(執行)
速度係
出所)ジェームズ・フー
プス(2006、原著:
2003)『経営理論 偽
りの系譜』p.71
検査係
修繕係
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新たなマネジメントのプロセス:管理過程論
マネジメントに関する本質的職能
①技術的活動:生産、製造、加工
②商業的活動:購買、販売、交換
③財務的活動:資金の調達と運用
④保全的活動:財産と従業員の保護
⑤会計的活動:棚卸、貸借対照表、原価計算、統計など
⑥管理的活動:「管理するとは、計画し、組織し、命令し、調整し、統制することである」(同上、p.9)
計画:将来を探求し、活動計画を作成すること
組織:事業経営のための、物的および社会的という二重の有機体を構成すること
命令:従業員を職能的に働かせること
調整:あらゆる活動、あらゆる努力を結合し、団結させ、調和を保たせること
統制:樹立された規則や与えられた命令に一致してすべての行為が営まれるよう監視すること
出所)Fayol, H. (1925) Administration industrielle et générale, Bordas S. A.(佐々木恒男 『産業ならびに一般の管理』ダイヤモンド社、1979年、pp.4-9)
「管理的職能は他の五職能とは明確に区別せられる。この管理を経営と混同しないことが大切である。経営
するとは、企業に委ねられているすべての資源からできるだけ多くの利益をあげるよう努力しながら企業の目
的を達成するよう事業を運営することである。本質的六職能の進行を確保することである。
管理は、経営がその進行を確保せねばならない本質的六職能の一つにすぎないのである。しかし、それは経
営者の役割の中で、時にはこの経営者の役割がもっぱら管理的であるかのように見られるほどに大きな地位
を占めているのである」 (同上、 p.10)
Cf. 「経営」と「管理」の峻別
「全般的管理者は企業に委ねられた資源から最大限の利潤を引き出すように努力しながら、企業をその目的
に向かって指導することを義務とすることである」(同上、p.111)
「経営者の管理活動は重大であって、その時間と能力の全てを吸収しつくすほど」(同上、p.146)であり、経営
者には管理能力の習得が非常に重要であることを強調した。
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今日の一般的な仕事のマネジメント手法
 Plan-Do-Check-Action(PDCA)サイクル)
•事前に計画
を立てる
•計画に従って
実行する
Plan
Do
Action
Check
•変化や問題
に対処して(改
善)行動する
•計画の進捗
状況を確認
(検証)する
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近代の管理組織のマネジメントモデル:官僚制組織
支配とは「特定の(またはすべての)命令に対して、挙示しうる一群のひとびとのもとで、服従を見出しうるチャ
ンス」であり、「一定最小限の服従意欲、すなわち服従することに対する(外的なまたは内的な)利害関心があ
るということが、あらゆる真正な支配関係の要件である」(Weber, M. (1964) Wirtschaft und Gesellschaft:
Grundriss der verstehenden Soziologie, Kiepenheuer & Witsch (世良晃志郎訳(1970)『支配の諸類型』(『経済と社
会 第四版』)創文社、p.3)。
支配類型
合法的支配
伝統的支配
カリスマ的支配
定義
制定された諸秩序の合法性と、これ
らの秩序によって支配の行使の任務
を与えられた者の命令権の合法性と
に対する、信仰にもとづいたもの。
昔から妥当してきた伝統の神聖性と、
これらの伝統によって権威を与えら
れた者の正当性とに対する、日常的
信仰にもとづいたもの。
ある人と彼によって啓示されあるい
は作られた諸秩序との神聖性・また
は英雄的力・または模範性、に対す
る非日常的な帰依にもとづいたもの。
服従の類
型
合法的に制定された没主観的・非人
格的な秩序と、この秩序によって定
められた上司とに対して、上司の指
令の形式的合法性の故に、またこの
指令の範囲内において、服従がなさ
れる。
伝統によってその任につけられ、・伝
統に(伝統の範囲内で)拘束されて
いるヘルの人に対して、ピエテート
(恭順:信条的な帰依と服従)によっ
て、慣習化したものの範囲内で、服
従がなされる。
カリスマ的な資格をもった指導者そ
の人に対して、啓示や英雄性や模範
性への人的な信仰によって、彼のこ
のカリスマへの信仰が妥当している
範囲内において、服従がなされる。
日常性と
準拠規範
日常的な「計算可能な規則」
※一般に計算不能な非合理的な感
情的要素を職務遂行から排除すれ
ばするほど、資本主義に好都合な特
質を発展させることになる
日常的な伝統
非日常的なカリスマ性
恒常性
地位への任命によって恒常的
地位の世襲などによって恒常的
特定の個人に依存した非恒常的
社会関係
職務権限に基づく「上司」と「部下」
「主人」と「臣民」
「指導者」と「帰依者」
出所)「定義」および「服従の類型」に関しては、同上、PP.10-11より参照して作成。それ以下はWeber, M. (1956) “Kapitel Ⅸ. Soziologie der
Herrschaft,”Wirtschaft und Gesellschaft, Grundriss der verstehenden Soziologie, vierte( neu herausgegebene Auflage, besort
von Johannes Winckelmann) (世良晃志郎訳『支配の社会学Ⅰ』(『経済と社会 第四版』)創文社、1960年)を参照して作成。
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官僚制組織の特質と資本主義の適合
特徴
内容
規則による権限と義
務の配分
明確な規則によって職務上の義務とその履行に必要な権限が明確に分配される。
階層制と単一支配
上位組織が下位組織を監督する階層制が存在し、その階層間には単一支配による命
令の一元性が確保される。
文書に基づく職務執
行と公私の区別
書類や文書にドキュメント化されたルールや規則に従って全ての職務が執行され、事務
所と私生活の場のような公私の区別が明確になされる。
専門的訓練の要求
職務活動は徹底的な専門的訓練を前提としている。
兼業の禁止
職務遂行には全労働力が要求され、兼業することは許されない。
規則に基づく職務遂
行
明確で網羅的で習得可能な規則によって職務は執行され、こうした規則の知識を習得し
ていなければいけない。
出所)Weber, M. (1956) “Kapitel Ⅸ. Soziologie der Herrschaft,”Wirtschaft und Gesellschaft, Grundriss der
verstehenden Soziologie, vierte( neu herausgegebene Auflage, besort von Johannes Winckelmann)
(世良晃志郎訳『支配の社会学Ⅰ』(『経済と社会 第四版』)創文社、1960年)Mpp.60-62を参照して作成。
「官僚制的組織が進出する決定的な理由は、昔から、他のあらゆる形に比べてそれが純技術的にみて優秀で
あるという点にあった」(同上、p.91)
また、「できる限り迅速な、しかも精確で一義的で継続的な職務処理の要求は、今日では、とりわけ、近代資本主
義的取引の側から、行政に対して提出されている。近代資本主義的諸企業の全体が、それ自体、普通、厳格な
官僚的組織の無比の模範なのである。これらの企業における取引は、全く、作業の精確性・恒常性(非断続性)・
とりわけ迅速性の増大にもとづいている」(同上、p.92)
そして、「完全な発展をとげた官僚制は、特殊的な意味において、「怒りも興奮もなく」という原理の支配下にもあ
るわけである」(同上、p.93)
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官僚制の一般モデル
支配の類型と官僚制の関係
支配の類型
支配の正統性の根拠
支配の結合・混合・変形
法および規則
合法的支配
伝統および慣習
伝統的支配
指導者の偉大な資質
カリスマ的支配
家産官僚制
カリスマの日常化と変形
出所)角野信夫(2001)『基礎コース 経営組織』新世社、p.17
現代の官僚制
官僚制の機能的特質
※家産官僚制:家父長制的支配に対して伝統への
厳格な拘束と支配者の恣意的支配とを併せ持つ
官僚制の一般モデル
「機械モデル」および
「官僚制の一般モデル」
予期されない、意図されない結果
予期され、意図された結果
「機械モデル」
顕在的機能(機能) + 潜在的機能:(機能+没機能+逆機能)
出所)同上, p.53
「官僚制の一般モデル」
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官僚制の逆機能
「訓練と技量にもとづいてこれまでは効果のあった行為も、変化した条件の下では不適当な反応に終わること
がある。技量の発揮に柔軟性が欠けていると、変化した環境の下では多かれ少なかれ重大な不調整に終わる」(ロバ
ート・K.マートン(1961、原著:1949、1957)「ビューロクラシーの構造とパーソナリティ」『社会構造と社会理論』みすず書房、p.181)
「目標の転移」=「手段的価値が終極的価値となってくる」
「もともと規則を守ることは一つの手段だと考えられていたのに、それが一つの自己目的に変わる」。その結果、「規則
遵守の関心が第一となって、そのために組織の目標が阻害されるようになる」(同上、p.183)
こうした同調過剰のメカニズムとは、
①「ビューロクラシーが効果を発揮するためには、反応の信頼性と規程の遵守が要求される」
②「かかる規則の厳守はやがて規則を絶対的なものにしてしまう」(規則は一連の目的とは無関係になること)
③「「一般的規則の立案者がはっきりと予想していなかったような特殊な条件の下では、臨機応変の措置がとれない」
④一般に能率向上に資すべきはずのものが、特殊な場合にはかえって非能率を生み出すことになる」
その結果、「規程厳守の関心を過大にして、臆病、保守性、技術主義を誘致する」 (同上、p.184)
官僚制組織の集団内では先任順に昇進が行われ競争も回避された集団精神とインフォーマルな組織が生成され、
自らの利害を擁護し組織集団の保全が図られる。また、専門的な技量に誇りを持つがゆえに、仕事の変更に過
剰な抵抗を示すようになる。
人間的で特殊的な対応の要求
非人格的で権威主義的な対応
(機械的で偉そうな態度)
古典的な機械的組織モデ
ルは,組織内均衡(貢献と
誘引)と環境適応に重大な
問題をはらんでいる。
官僚制組織(非人格化)
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科学的管理法と機械的組織モデルへの批判
 科学的管理法の前提となる仕事の属性:
 大部分が反復的であり、毎日の活動は同じものかもしくは密接に関連した多数の循環的な反復に分割可能
 標準的な手法が訓練されるが、複雑な問題解決は要求されない
出所)March, J. and Simon, H. A. (1958) Organizations, John Wiley & Sons(土屋守章訳『オーガニゼーションズ』ダイ
ヤモンド社、1977年)邦訳、p.20より
Modern Times by C. Chaplin
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ホーソン工場実験:科学的管理法の批判
ウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場実験:労働生産性を向上させる秘訣は何か?
実験区分
仮説と実験内容
実験結果
原因分析と新たな仮説
照明実験
1924年~
27年
照明度と作業能率の
関係を明らかにする
実験
照明の変化は作業能率に
はほとんど無関係:実験
は失敗
作業能率は物理的な作業環境の一変数だ
けでは説明できない(→複数の物理的作業
条件と作業能率の関係を調査すべき)
継電器組立
作業実験
1927年~
32年
隔離された5名の実
験室で様々な作業条
件と作業能率の関係
を明らかにする実験
休憩時間など様々な作業
条件の相違とは無関係に
実験室での作業能率が向
上し、彼女らの満足感と
連帯感が醸成されてい
た:再び実験は失敗
彼女らの意見を取り入れるなどの民主的な
監督方式や個々人の満足度の上昇、協力
的態度などの「感情」が作業能率に大きな
影響を及ぼす(→監督方法や労働条件の
実態を詳しく調査すべき)
面接実験
1928年~
30年
個々の従業員の不
平・不満と作業条件と
の関係を明らかにす
るための面接調査
生理的な不満は一部だが、
不満の大半は個人的な
「感情」に起因するもので
ある
問題は単純な監督方式や改善しやすい労
働条件ではなく、人間そのものや職場集団
などの社会的なものである(→社会的行動
と作業能率との関係を調査すべき)
バンク配線
作業実験
1931年~
32年
インフォーマルな職場
集団の社会的作用に
関する知識を得るた
めの実験
2つの仲間集団が形成さ
れて、能力熟練度の高い
人間が業績をあげるとは
限らず、自分達で生産高
を制限していた
インフォーマルな仲間集団が作業能率に大
きな影響を与えている
出所)Mayo, P. E. (1933) The human problems of an industrial civilization, The Macmillan Company(村本栄一訳『新訳
産業文明における人間問題』日本能率協会、1967年)Roethlisberger, F. J. (1941) Management and morale, Harvard
university press(野田一夫、川村欣也訳『経営と勤労意欲』ダイヤモンド社、1954年、pp.131-151を参照して作成)
Copyright ©Masahiko Fujimoto
ホーソン工場実験結果のインプリケーション
ホーソン工場実験からの含意
Ⅰ 変化
反応 :労働条件の物理的変化と労働者の反応との直接的な関係仮説
Ⅱ 変化
反応 :労働者の反応は物理的変化に対する態度(感情)によって理解される
態度(感情)
Ⅲ 変化
反応 :Ⅱの態度や感情は個人的な経験的感情と職場の人間関係に依存する
態度(感情)
個人的経歴
職場状況
出所)Roethlisberger, F. J. (1941) Management and morale, Harvard university press
(野田一夫、川村欣也訳『経営と勤労意欲』ダイヤモンド社、1954年、p.24より加筆修正)

産業の社会的構造
1.
2.
いかなる経済活動もその基盤である社会組織との関係から切り離して別々に扱うことはできない
人間の集団的な協力関係を軽視して技術的な解決に偏重する傾向が強く、経済的なインセンティブによっ
て人間協力を扱おうとするきらいがある
現実には経営組織は多数の職場集団によって構成されており、そこでは集団独自の社会的な価値や地位
が存在する
経営組織は物理的構造と社会的構造を共存させており、社会的変化は個々人や集団の社会的安定に影
響を与える
経営者は、社会的構造を理解せずに技術的、論理的な調整を試みるために集団内のコミュニケーションを
阻害する結果を招く
3.
4.
5.
出所)同上、pp.78-80より作成
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ホーソン工場実験から人間関係論へ
人間関係論(ヒューマン・リレーションズ)の台頭
背景
科学的管理法の普及による労働作業の細分化、断片化、単純反復化
→疲労感や単調感による労働災害や労働移動の増大と職場の人間関係の破壊による協働意欲の喪失
→生産性や作業能率の低下→労働作業の合理化の強化
職場集団の連帯感醸成や管理監督方式の変更による協働意識の高揚の重要性を指摘
(感情や心情にもとづいて行動する社会的存在としての労働者観の確立) cf.経済人仮説
経営組織
技術的
組織
個人
人間
組織
公式
組織
能率の
論理
論理的
行動
非公式
組織
感情の
論理
非論理的
行動
社会的
組織
出所)角野信夫(1998、初版:1995)『アメリカ経営組織論 増補版』文眞堂、p.47
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公式組織と個人人格(パーソナリティ)の矛盾関係
成熟したパーソナリティの欲求と公式組織の不適合
公式組織の要件
 日常の労働についてほとんど自己統
制が許されない
 受身で、依存的で、従属的であるよう
に期待される
 短期の展望を持つように期待される
 いくつかの表面的に浅い能力を、絶
えず完全に使い、しかもそれを高く評
価するように教えこまれる
 心理的に失敗するような条件で生産
するように期待される
パーソナリティの基本的性質(未成熟から成熟への傾向)





受動的行動から能動的行動への発展
他人依存から比較的独立した状態への発展
少数の行動様式から多様な行動様式への発達
移り気でその場限りの浅い興味複雑で深い興味への発達
主に現時点に規定される短期的な行動の展望から過去と未来
が強く影響する長期的な行動の展望への発達
 従属的地位の甘受から同等または上位の地位の希求
 自己意識の欠如から自己意識と自己規制への発達
出所)(クリス・アージリス(1970、原著:1957)『新訳 組織とパーソナリティ』日本能率協会、pp.88-89およびp.110を参照して作成
「この避けることのできない不適合は、(1)従業員がますます成熟するにつれ、(2)公式構造が最高の公式
組織の能率にますます鮮やかにそして論理的にしっくりされるにつれ、(3)従業員が命令の末端にさがるにつ
れ、そして(4)職務がますます機械化されるにつれ、増大する」 (同上、p.110)
不適合がもたらす結果=フラストレーション、失敗、葛藤、短期の展望・・・etc.
個人の順応パターン=退職、昇進を目指して激しく働く、防衛機構によって世界を歪める、無感動や無関心に
なる、生産性を低下させ怠ける、非公式集団を結成する・・・etc.
こうした不適合を減少させるためには:
①「職務拡大」:一人当たりの課業の数を増やし、従業員の能力をより一層生かして満足を高める
②「参加的リーダーシップ」:命令的、独裁的なリーダーシップを民主的、参加的、従業員中心的なものに変える
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織の二重構造(公式組織VS.非公式組織)
 公式組織の背後に存在する非公式組織の特質
「個人の本質的欲求は社会的結合であり、この欲求が個人間における局地的活動、すなわち直接的相互作
用を求めることになる。社会的結合がなければ人間性は失われる」(邦訳、p.125)
公式組織
(Aさん)
貢献
協働システム
共通目的
貢献意欲
「組織人格」
非公式組織
「個人人格」
(aさん)
動機
誘因
(Bさん)
貢献意欲
貢献
「組織人格」
誘因
動機
「個人人格」
(bさん)
 非公式組織とは、無意識的な社会過程から成り
立っているが、
① 態度、理解、慣習、制度を形成し、
② 公式組織の発生条件を創造する:
• 事前の接触と予備的な相互作用が公式組
織に先行することが一般的だが、公式組織
を形成しなければ永続できない
• 公式組織が作用し始めると、非公式組織を
創造し必要とする
 非公式組織の機能は、以下の3つあり、
① 社会的結合を通した伝達
② 個々人の貢献意欲と客観的権威とを調整するこ
とで公式組織の凝集性を維持する
③ 自律的な人格を自覚させ、人間としての自尊心
や自由意思の選択力を維持する
つまり、公式組織を補完しており、公式組織の運営に
不可欠である
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳
経営者の役割』ダイヤモンド社、1968年)を参照して作成
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公式組織のデザイン:組織の専門化のあり方
組織の専門化の種類:「協働の目的は専門化なしには成就できない」!





地理的専門化(作業が実施される場所)
時間的専門化(作業が実施される時間帯)
作業を共にする人々と組織自体の専門化(「社会結合の専門化」)
職能的専門化(作業の対象物や目的に従う)
作業方法や過程の専門化
 組織の専門化に関する2つの命題:
「(1)協働体系の有効性は、ほとんどまったく専門化の革新の工夫、あるいはその採用に依存している」
(2)専門化の第一義的側面は、目的の分析、すなわち、一般目的を中間目的ないし細部目的--それらはより
遠い目標の手段となる—に分析することである」 (邦訳、 p.138)
 組織の有効性は、どのように組織を専門化するのかというデザイン(仕組み)に依存する
 組織全体の最終目的は、専門化された単位組織に細分化され、それを理解し受け入れることが不可欠
最終目標(一般目的)
手段=中間目標(中間目的)
「しかし一般に複合組織は、その一般目的を完全に理解せず、また完全に受容していないところに特徴があ
る。(中略)主として重要なのは目的の知的理解よりも、むしろ行動根拠に対する信念である。「理解」はただそ
れだけでは、むしろ麻痺させ分裂させる要素である」(邦訳、p.144)
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳
経営者の役割』ダイヤモンド社、1968年)を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織目的に対する貢献(意欲)を引き出す誘因の本質
 貢献と誘因の本質
組織目的は個々人の貢献しようとする意欲がなければ達成できないが、
「組織のエネルギーを形づくる個人的努力の貢献は、誘因によって人々が提供するものである」(邦訳、p.145)
客観的誘因を
提供する方法:
「誘因の方法」
誘因の二側面
主観的態度を改
変させる方法:
「説得の方法」
特殊的誘因(個人に特定的に提供されるもの)
Ex. 賃金などの物質的なもの、地位などの非物質的な報酬
一般的誘因(個人に特定されないもの)
Ex. 社会的調和、文化的適合、尊厳、連帯感など
「みせしめ」などを利用した強制力、正当化された組織的規
範、道徳的説得など
「あらゆる組織において、好ましい誘因の存在指標として組織の規模が繰り返し強調されること、あるいは規
模が小さいか成長が頓挫しているときには、その代わりに他の誘因を合理化することからもわかるように、成
長はあらゆる種類の効果的な誘因を実現させる機会を提供するように思われる。しかし、この原因から過度
の成長が生ずると、そうでなければ成功した組織をも破壊するもととなる。なぜなら、そのような成長はかえっ
て組織の有効性と能率に反作用を与え、その結果、誘因の経済をしばしば混乱して、もはやその有効性と能
率を適切なものとなしえないからである」(邦訳、p.166)
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳
経営者の役割』ダイヤモンド社、1968年)を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織における伝達と権威の受容メカニズム
権威受容説:権威とは個人の受容や同意に基づいている!
「権威とは、公式組織における伝達(命令)の性格であって、それによって、組織の貢献者ないし「構成員」が、伝
達を、自己の貢献する行為を支配するものとして、すなわち、組織に関してその人がなすこと、あるいはなすべか
らざることを支配し、あるいは決定するものとして受容するのである」(邦訳、p.170)
 権威受容の条件
①
②
③
④
伝達を理解でき、また実際に理解すること
意思決定にあたり、伝達が組織目的と矛盾しないと信ずること
意思決定にあたり、伝達が自己の個人的利害と両立しうると信ずること
その人は精神的にも肉体的にも伝達に従いうること
リーダーシップ
影響力
職位の権威
命令
命令
受容・
同意
無関心圏
(受容圏)
組織人格
法的な権威は現実には効果が不十分であり、
権威は部下の「無関心圏」を前提として相手の
受容や同意を必要とする。そして、特定の職位
に付随する「職位の権威」は、個人的能力によ
る尊敬から生じる影響力をもつ「リーダーシップ
の権威」とは区別される。
Cf.上位権威説(法定説):権限は上位の者にあ
り法によって保障されている
自由意思をもつ個人人格
Ex. タクシーで行先を告げる顧客と運転手の関係VS. 軍隊で人殺しを命令する上司と部下の関係
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳 経営
者の役割』ダイヤモンド社、1968年)を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織における伝達体系の要件と組織的意思決定
 伝達体系の要件
1. 伝達の経路は明確に知らされていなければならない
権限のラインを明確に確立するために、組織図や職位の任命者を周知すること
2. 客観的権威は組織のあらゆる構成員に対する明確な公式的伝達経路を必要とする
レポートライン(誰に報告すべきか)が決められていること
3. 伝達のラインはできるだけ直接的か、または短くなければならない
4. 原則として、完全な伝達ラインが通常は用いられなければならない
5. 伝達のセンターとしての役目を果たす人々、すなわち役員や監督者の能力は適格でなければならない
6. 伝達のラインは組織が機能する間は中断されてはならない
24時間機能する通信会社や鉄道会社は夜間や休日であっても権限ラインが中断されてはならない
7. 最後に、すべての伝達は認証されなければならない
伝達する人が当該の「権威ある職位」に任命されており、それが「職位の権限内」であること
 組織的意思決定の基本的要素
全ての人間の行為は意思決定の結果だが、意識的なものと無意識的なものに分けられ、意識的な意思決定は
「目的」(価値観を含む)と「手段」(価値観を含まない事実)で構成される。そして、組織的意思決定とは、目的を
規定し「戦略的要因」(目的を達成させる要因)を識別することであり、組織目的に対する専門化の過程を通して
目的と手段の連鎖によって決定を委譲する仕組みが必要となる

①
②
③
④
「管理的意思決定の真髄とは、
現在適切でない問題を決定しないこと、
機熟せずしては決定しないこと、
実行しえないことを決定しないこと、
そして他の人がなすべき決定をしないことである」 (邦訳、 p.202)
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳 経営
者の役割』ダイヤモンド社、1968年)邦訳、pp.184-189を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織における管理者の役割
基本的な管理職能:「組織を継続的に活動させる専門職務」!
① 「明確な伝達体系を提供し維持すること」:組織構造と職責を決定し、職位に個人を適正配置し調和を図ること
② 「個人的活動の努力の確保を促進すること」:必要な人材を採用して、貢献意欲をできる限り引き出すこと
③ 「組織の目的や目標を定式化し定義すること」:各単位組織に責任を割り当てて職務内容を明確にすること
しかし、実際には「構造的な特徴が曖昧で、作用要因の把握が困難であるために」リーダーシップに依存する
「信念を作りだすことによって協働的な個人的意思決定を鼓舞するような力が必要なのである。その信念とは、
共通理解の信念、成功するだろうという信念、個人的動機が結局満たされるという信念、客観的権威が確立して
いるという信念、組織に参加する個人の目的よりも共通目的のほうが優先するという信念である」(邦訳、p.270)
 「組織の存続はリーダーシップの良否に依存し、その良否はそれの基礎にあたる道徳性の
高さから生ずる」(邦訳、p.295)
「管理職位は、
リーダーシップ
道徳性
個人に内在する人格的諸力
(個人の行為を支配する私的準則)
組織的な道徳準則
社会的な道徳準則
①
②
③
④
複雑な道徳性を含み、
高い責任能力を必要とし、
活動状態のもとにあり、そのため
道徳的要因として、対応した一般的、特殊的な
技術的能力を必要とし、
⑤ 他の人々のために道徳を創造する能力が要
求される」(邦訳、pp.284-285)
※地位が高まるほど複雑な道徳性が要求さ
れ、その責任を果たす際の道徳的対立を回避
するための高い能力が要求される
出所)Barnard, C. I. (1938) The Functions of Executives, Harvard Business Press (山本安次郎ほか訳 『新訳 経営
者の役割』ダイヤモンド社、1968年)を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織的な意思決定の過程(組織における管理過程)とは何か
 組織目標の達成は、影響を与えられた個々人の意思決定の成果に依存
「組織がとる行動は、すべて現業員(組織の実際の「物理的」仕事を行う人々)の行動に影響を与えるようになっ
ている決定過程の複雑なネットワーク」(邦訳、p.279)
最終目標(目的)
影響を与える
手段=
中間目標
組織の管理者は、管理階層の最下層の現業員の行為(それに先立
つ意思決定)に影響を与えることによって、集団的な「合理的な行
動」を喚起して組織目的の達成に参加する
影響の
方法
個々人に組織への忠誠心をもたせ、能率を向上させる
訓練をする(→非公式組織における個人人格)
組織的なオーソリティ(権威)を確立して、助言や情報
を提供する(→公式組織における組織人格)
 組織の管理過程における意思決定
 組織とは、個々人から決定の自治権を一部取り上げることによって、彼らに組織的な意思決定の過程を与える
 組織的な意思決定とは、
①個々人の職能(職務の範囲と性質)を明らかにし、
②権限(意志決定の権力)を配分し、
③個々人の意思決定に活動を調整するための制約を与える(邦訳、p.11)
出所)Simon, H. A. (1945) Administrative behavior: a study of decision-making process in administrative
organization, The Free Press(松田武彦、高柳曉、二村敏子訳『新版 経営行動』ダイヤモンド社、1989年)を参照して作成
Cf. 意思決定組織論:管理の一般理論は、効果的な行為に先立つ選択(意思決定)を保証する組織の諸原則が
不可欠であり、物事を成し遂げるための行為に先立つ意思決定の過程に注目した管理の理論(バーナードの「行
為システム」としての協働体系組織論を発展)
Copyright ©Masahiko Fujimoto
意思決定の基本的な仕組みと限定された合理性
階層的な意思決定の仕組み:不完全に統合された決定の階層(目的と手段の連鎖)
手段1-1
手段1
手段1-2
目的
手段2
「最後に選ばれた代替的選択肢は、目的の完全
無欠の達成を許すものでなく、その状況下で利用
できる最善の解決であるにすぎない」(邦訳、p.9)
手段2-1
最終目標の選択 目標の実行を意味する選択
「事実判断」
「価値判断」
※「価値」という言葉には倫理的・道徳的な意味合いを含み、「事実」
という言葉は価値を含まない現実に関連する事実的命題
上位の手段は下位の目標になるが、実際には選択された代替的選択肢は複数の目的に関係しており、目的と
手段の連鎖は複雑になる→全ての決定は妥協の産物
限定された合理性
理想的な意思決定
現実的な意思決定:「限定された合理性」
①すべての代替的選択肢を概観し
て列挙する
行動可能範囲の限定:限られた時間内に人間が想起できる代替的行
動はほんの一部だけであり、全ての代替的選択肢を思いつくことはない
②それらの選択肢から導かれる複
雑な結果を全て確定する
知識の不完全性:現在の状況について部分的な知識しかないし、将来
の結果を導く規則や法則についても限られた知識しかない
③一連の諸結果を全て比較評価す
るための基準としての価値体系に
よって、最終的に選択肢を選択する
価値予想の困難性:事前に予想できる価値要素と実際に生起した結果
に対してあとづけられる価値要素は異なり、あらかじめ選択肢によって
導かれる様々な結果の価値を完璧に(比較)評価することは困難である
出所)邦訳、p.103を参照して作成
出所)Simon, H. A. (1945) Administrative behavior: a study of decision-making process in administrative
organization, The Free Press(松田武彦、高柳曉、二村敏子訳『新版 経営行動』ダイヤモンド社、1989年)を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
合理的な意思決定による問題解決の手順
問題設定
問題把握
課題(目
標)設定
代替案の
洗い出し
代替案の
評価
優先順位
の決定
• 特定の目的や期待に対する現状との差が生じている問題を定義(設
定)する(「何が問題なのか?」)
• 問題に関する複数の事実(問題点)を洗い出し、現状を分析する
• 目的と問題のギャップを埋めるための分析や行動に結びつく解決
すべき課題(取り組むべき対象:「・・・する(こと)」)を明らかにする
• 課題解決のための複数の手段や方策の洗い出し
• 各案に対する複数の評価項目によるメリットとデメリットの洗い出
し
• 評価項目を総合的に考慮し緊急度と重要度などによる優先順位
の決定
Copyright ©Masahiko Fujimoto
個人的な意思決定(課題解決)の実例
例題:「就職活動において自分にとって最適な就職先を選択する」(自分にとって幸せな進路の探索)
幾つかの問題点
解決すべき課題
自分は何かやりたいのだろうか?
自分の得意なことは何か、不得意なことは何か?
自分はどのような暮らし(勤務地、報酬)がしたいのか?
就職希望先の会社をどのように見つけるのか?
エントリーすべき会社をどのようにして絞り込むべきか?
どうすれば入社試験をパスして内定をゲットできるか?
複数の内定先からどのようにして最終決定すべきか?
課題解決のための代替案
1.自分の将来的な生き様のイメージを明らかにする
2.就職先の候補企業に関する情報を収集する
3.就活に関する知識とノウハウを習得する
メリット(効果)
デメリット(コスト等)
1-1.これまでの自分史を作成する
自分の価値観や動機を自覚できる
嫌な過去も想い出してしまう
1-2.友人からアドバイスをもらう
自分について客観的な情報を得られる
傷つくことがあるかもしれない
1-3.自分の将来を占ってもらう
期待通りの良い結果だと自信がもてる
出費を伴い、悪い結果だとへこむ
2-1.会社を理解するための授業を受講
会社の良し悪しを見極めることができる
つまらないでも授業にも出席?
2-2.リクナビなどで様々な会社を検索
新卒採用予定企業を検索できる
求人企業情報が完璧に網羅され
ていない
・・・・・・
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
Copyright ©Masahiko Fujimoto
個人による意思決定VS.集団による意思決定
 個人的意思決定VS.集団的意思決定
個人的意思決定
集団的意思決定
意思決定
の効率性
〇
×
個人決定よりもはるかに時間がかかる
意思決定
内容の優
劣
△
集団よりも最も優れた個人の決定の方が正
解率が高く、アイデアの総数も内容も集団よ
りも個人の方が勝るという実験結果あり
△
異なる視点や知識を結集して新たな知識創
造などに活用ex.「三人寄れば文殊の知恵」
合意形成
と実行
×
独裁的な意思決定とみなされて集団構成員
の満足度や実行度が低下する
〇
手続き的公正が担保され、集団成員の満足
度や実行度が向上する:「みんなで決めたこ
とは守られる」
出所)田尾雅夫編著(2010)『よくわかる組織論』ミネルヴァ書房、p.118-119を参照しながら一部改編して作成
 集団浅慮(Groupthink):優秀な専門家集団が、何故、愚かな意思決定をしてしまうのか?
「内集団の圧力によって、考えていることが現実場面に適切に当てはまるかどうかを検討する能力や、問題
の道義的側面に対する判断力が損なわれる現象」(池田(1993)『社会のイメージの心理学』サイエンス社)
Ex. 米国のキューバ危機、スペースシャトルのチャレンジャー号の爆発事故
集団浅慮の要件:
①凝集性の高さ、②集団の構造的問題(多数決など)、③集団を取り囲む状況的要因(時間的圧力など)
⇒自分たちの意見に対する批判的な分析が希薄となり、反対意見に対する露骨な同調圧力が生じ、情報
解釈がご都合主義に陥る
出所)田尾雅夫編著(2010)『よくわかる組織論』ミネルヴァ書房、p.122-123を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織的な意思決定の実態:ゴミ箱モデル
組織化された無秩序(現実の組織的な意思決定)の特徴
「キチンとしていない選好」:組織はチグハグで不明確な選好基準をベースに動いており、多様なアイデアの
ルースな集合体として、行為を通して選好を発見することが少なくない
「はっきりしないテクノロジー」:意思決定や行為のメカニズムが組織メンバーによって理解されておらず、試
行錯誤や経験的学習の残りカスを基盤としている
「しっかりしない参加」:意思決定の参加者は時間と労力を都度やりくりしており、顔ぶれは刻々と変化する
「参加者」:参加者は出
入りし彼らの嗜好や時
間配分に左右される
「問題」:問題とは注意を
喚起するが、選択されて
も解かれないこともある
「解」:商品がニーズを創り
出すように、解が問題を明
らかにすることもある
「選択機会」:
定期・不定期な決定の場
Ex. PTA、委員会、教授会、etc.
タイミングによる偶発的合流⇒3つの決定スタイル
「解決による選択」:一定の時間をかけて問題を解く一般的な決定
「見過ごしによる選択」:形式的な審議のみが要請されているような会議(選択機会)で、そもそもあらか
じめ問題など存在しなくても迅速に解が選択される
「飛ばしによる選択」:難題が先延ばしされ、他の魅力的な選択機会(参加者と解の組み合わせが残留
した問題に相応しい機会)に移るだけで問題は本質的に解決されない
出所) March, J.G. and J. P. Olsen, and A. Jung (1976) Ambiguity and choice in organizations,
Universitetsforlaget(遠田雄志、アリソン・ユング訳『組織におけるあいまいさと決定』有斐閣、1986年)を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織におけるプログラム化された意思決定
意思決定の種類と技法
意思決定の種類
意思決定の技法
伝統的技法
現代的技法
プログラム化しうるもの
日常的・反復的意思決定
習慣
標準化された業務手続
組織構造
(共通の期待、下位目標のシステ
ム化、情報チャネルの整備)
オペレーション・リサーチ
電算機によるデータ処理
プログラム化しえないもの
一度限りの構造化しにくい政策
的意思決定
一般的問題解決法による処理
判断力・直観力・創造力
経験則
経営者の選抜と訓練
「発見的問題解決法」
意思決定者の訓練
発見的コンピュータ・プログラム
の作成
出所)角野信夫(2001)『基礎コース 経営組織』新世社、p.100
複雑なシステムの階層性
「複雑なシステムについての重要な理論をうちたてる一つの道は、階層の理論によるものであるということである。
経験的にいって、われわれがこの自然界で観察する複雑なシステムの大部分は、階層的な構造を呈している。
理論的にいえば、複雑性が単純性から発展していく世界においては、複雑なシステムは階層的であると考える
ことができるであろう。その動態の点からいえば、階層はその行動を非常に単純化する特性、すなわち準分解
可能性の特性をもっている。その準分解可能性はまた、複雑なシステムの記述を単純化し、そのシステムの発
達や再生産に必要な情報がいかにして適度に貯えられるかということの理解を可能にするのである」
出所)Simon, H. A. (1969) The Science of the Artificial, M. I. T. Press(高宮晋監修『新訳 システムの科学』ダイヤモ
ンド社、1977年)邦訳、pp200-201
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織的な意思決定を構成する要素と手順
 組織における意思決定の要素と機能
経営戦略や経営計画
本質的意思決
定
目的や方法などの
政策的な計画の決
定
組織の影響のメカニズム
 組織は、各メンバーに特定の仕事(課業)を分割して与
えることによって注意をそこに向けさせて限定する
 組織は、標準的な手続きを確立することによって意思
決定の労力を節約する
 組織は、権限と影響の制度を確立して階層化すること
によって意思決定を伝達する
 組織は、コミュニケーションの経路によって意思決定の
ための情報を流通させる
 組織は、メンバーを教育することによって意思決定の基
準に関係する知識、技能や忠誠心を内面化する
(邦訳、pp.129-130より抜粋)
執行的意思決
定
手続き的意思
決定
先行する2つの意思
決定に従ってその計
画を執行するための
日々の決定
本質的意思決定を
実現するための組織
の機構やデザインの
計画の決定
執行
組織設計(構造とプロセス)
出所)Simon, H. A. (1945) Administrative behavior: a study of decision-making process in administrative
organization, The Free Press(松田武彦、高柳曉、二村敏子訳『新版 経営行動』ダイヤモンド社、1989年)を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
管理組織のマネジメントにおける課題
合成された決定の過程における管理の役割
組織とは「合成された意思決定」のための仕組みであり、個人の行動を従属させることによって個人の行動を秩
序化し、同時に無意識的手続きをパターン(プログラム)化することによって意思決定の労力を節約する
「通常では、影響は、自由裁量の行
使に部分的な制限を加えるにすぎ
ない。部下は、なにをすべきかを言
い渡されるであろうが、いかにして
その与えられた仕事を実行するか
については、相当の余裕が与えら
れるであろう」(邦訳、p.282)
自由裁量と
限定された
合理性
自由裁量と
限定された
合理性
集権化のメリット:
調整機能、専門知識、責任の確保
集権化のデメリット:
集権化のコスト(情報収集や負担)
集権化
意思決定
の配分
自由裁量と
限定された
合理性
分権化
自由裁量と
限定された
合理性
自由裁量と
限定された
合理性
自由裁量と
限定された
合理性
自由裁量と
限定された
合理性
「管理理論は、人間の合理性には実際には限界があり、これらの限界は静止していず、個人の意思決定がそこ
で行われる組織的な環境に左右されるという事実から、必要とされるのである。個人がその合理性(組織目標か
ら判断して)へできる限り近づくように、この環境を設計することが、管理のなすべき仕事である」(邦訳、p.304)
出所)Simon, H. A. (1945) Administrative behavior: a study of decision-making process in administrative
organization, The Free Press(松田武彦、高柳曉、二村敏子訳『新版 経営行動』ダイヤモンド社、1989年)を参照して作成
Copyright ©Masahiko Fujimoto
組織的意思決定の失敗:巨大組織“陸軍”暴走のメカニズム
 NHKスペシャル 『日本人はなぜ戦争へと向かったのか』
「第2回 巨大組織“陸軍”暴走のメカニズム」(49分)
Copyright ©Masahiko Fujimoto
機械的組織VS.有機的組織
バーンズ=ストーカーの「機械的組織」と「有機的組織」
英国スコットランドにおける20社の比較事例研究(1961)
環境特性の条件
具体的な特徴
技術や市場の変
化が比較的安定
「機械的組織」のマネジメント
企業全体の問題やタスクが専門分野別に細分化され、個々人のタスク遂行と全体的
な活動の結びつきが希薄
各職能の役割に伴う権限や責任は厳密に規定され、上司と部下のタテの相互関係
が強く、業務活動は上司の指示や決定によって統制される
マネジメントの役割は、公式的な階層組織に従って情報を上に流し決定事項や命令
を下に流す単純なコントロール・システムを操作すること
技術や市場の変
化が不安定
「有機的組織」のマネジメント
企業全体の問題やタスクが専門分野別に細分化できず、個々人のタスク遂行と全体
的な活動の結びつきが強い
公式的な権限や責任とは別に、参加する他のメンバーとの相互作用によって業務活
動が変わり、上司と部下のタテと同様にヨコの相互関係が重視される
企業のトップは、全知全能なる役割を期待されることはない
出所)Lawrence, P. R. and Lorsch, J. W. (1967) Organization and environment: managing differentiation and
integration, Harvard university press(吉田博訳『組織の条件適応理論』産業能率大学出版部、1977年、p.227より作成
*古典的な組織モデル(機械的組織)は必ずしも普遍的な最適モデルではない
Copyright ©Masahiko Fujimoto
コンティンジェンシー理論Ⅰ
ローレンス&ローシュのコンティンジェンシー理論
(プラスチック産業6社、容器製造産業2社、食品産業2社の実証研究)
プラスチック産業の不確実性の状況調査の結果
※点数が大きいほど不確実性が高い
課業環境の不確実性=f(情報の不明確性,因果関係の不明確性,明確なフィードバック時間の長さ)
環境領域
情報の明確
度
因果関係の不
確実性
明確なフィード
バックの時間幅
不確実性の総
合計点
科学的環境(研究開発)
3.7
5.3
4.9
13.9
市場的環境(マーケティング)
2.4
3.8
2.8
9.0
技術・経済的環境(生産の経済性)
2.2
3.5
2.7
8.4
出所)Lawrence, P. R. and Lorsch, J. W. (1967) Organization and environment: managing differentiation and
integration, Harvard university press(吉田博訳『組織の条件適応理論』産業能率大学出版部、1977年、p.34)
プラスチック産業の基本的な職能部門の分化の特徴
分化の程度=f(構造の公式性,対人指向性,時間指向)
構造の公式性
対人指向性
時間指向
出所)同上, p.43より作成
販売
製造
応用研究
基礎研究
やや高い
高い
やや低い
低い
人間関係本位
やや人間関係本位
やや仕事本位
仕事本位
短期
短期
やや長期
長期
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コンティンジェンシー理論Ⅱ
 プラスチック産業の分化と統合および業績の関係と分化に伴うコンフリクト解決の効果性を
規定する要因
高い
分化
低い
高い
統合
低い
好業績A社
D=9.4
I=5.7
好業績B社
D=8.7
I=5.6
中業績A社
D=7.5
I=5.3
中業績B社
D=9.0
I=5.1
低業績A社
D=9.0
I=4.9
低業績B社
D=6.3
I=4.7
※分化の評価点が高いほど分化の度
合いは高く、統合の評価点が高いほど
統合がうまくいっている。
出所)同上, p.57より一部加筆修正
統合担
当部門
の媒介
的位置
統合担当者の
テクニカルな適性
能力にもとづく
影響力
統合担当者が
全体業績につ
ながる報酬を認
知する度合
組織が
有する
影響力
の総量
必要な階
層への影
響力の集
中度
コンフリクト
解決の
行動様
式
好業績A社
高
高
中
高
高
高
好業績B社
中
高
高
高
中
中業績A社
中
低
高
高
中業績B社
中
低
中
低業績A社
低
低
低業績B社
中
低
分化の
程度
統合の
程度
組織の
業績
高
高
高
高
高
高
高
中
中
低
高
中
高
中
中
高
低
中
低
低
低
低
高
低
低
低
低
低
低
低
低
低
出所)同上, p.94
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コンティンジェンシー理論Ⅲ
 3つの産業の不確実性と分化および統合の状況調査の結果
※点数が大きいほど不確実性が高く、分化と統合の度合いが高い
不確実性
科学的環境
(研究開発)
市場的環境
(マーケティング)
分化の平均得点
技術・経済的環境
(生産の経済性)
統合の平均得点
好業績
組織
低業績
組織
好業績
組織
低業績
組織
プラスチッ
ク産業
13.9
9.0
8.4
10.7
9.0
5.6
5.1
食品産業
12.1
11.0
7.8
8.0
6.5
5.3
5.0
容器産業
7.4
5.8
7.8
5.7
5.7
5.7
4.8
出所)同上, p.107&p.122より作成
 3つの産業の好業績組織における統合のための手段の比較
プラスチック産業
統合担当部門
3つの管理階層における常設の部
門間チーム
管理者の直接的折衝
管理階層
文書制度
出所)同上, p.162より作成
食品組織
統合担当者
臨時的な部門間チーム
管理者の直接的折衝
管理階層
文書制度
容器組織
管理者の直接的折衝
管理階層
文書制度
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コンティンジェンシー理論Ⅳ
組織の条件適応理論(コンティンジェンシー理論)の命題
「これらの研究結果が示唆することは、組織というものは有機体としての性質を有することを認める組織の条
件適応理論である。[中略]組織の諸変数は相互に、また環境の諸条件との間に、複雑な相互関係にある」
「効果的組織における分化の状態は、環境の諸部分の多様さに適合していたと同時に、統合の達成状態も、
環境が要求する部門間の相互依存に適合していた[中略]。要するに、環境が多様であれば、それだけ組織の
分化は高度になり、それだけ精巧な統合手段が必要になるのである」(同上,186頁)
環境
原材料
従業員
情報
財務資源
インプット
変換プロセス
アウトプット
サブシステム
バウンダリー・
スパンニング
生産、保守管理
適応、マネジメント
バウンダリー・
スパンニング
製品
サービス
出所)Daft, R.L. (2001) Essentials of organization theory and design, South-Western College
Publishing(高木晴夫訳『組織の経営学』ダイヤモンド社、2002年p.13)
※組織の環境の定義(同上, pp.88-92より)
タスク環境:「組織が直接に相互作用し、組織の目標を達成する能力にも直接影響を与えるセクター」
(e.g. 業界、原材料、市場、労働市場(人的資源)、国際環境など)
一般環境:「企業の日常の運営に直接影響を及ぼさないものの、間接的な影響を及ぼすセクター」
(e.g. 政府、社会文化、経済状態、技術、財務資源など)
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経営組織と経営環境の適応関係
組織の責任とコントロールに関する3つの次元(J.D.トンプソン、1967)
組織の存続には不確実性を取り込んで環境と組織との相互依存関係を認識し全体的整合を図る必要がある
タスク環境
確実性
の追求
管理的レベル下位
組織をコントロール
し全体的整合を担う
制度的レベル
不確実性
の追求
他組織や社会との
全体的接合
「コンティンジェンシー要因が多数存在する場合に
は、組織は諸能力を自己充足的な単位にまとめて
、そのそれぞれに対して組織がコンティンジェンシ
ー要因に対処するのに必要な一揃いの諸資源を
与えようとする。(中略)テクノロジーやタスク環境
が組織をばらばらなものにする傾向が強ければ強
いほど、組織はその全体性を守らねばならない」(
同上、p.100)
(機会志向的監視)
技術的レベル
下位組織が技術的な
問題を解決する
(問題中心的探索)
自由裁量の余地
インプット
活動
テクノロジー
活動
アウトプット
活動
「組織は有能な個人を見つけて重要な裁量的地位
に就けなければならないが、それと同時に彼らの
裁量的行動を誘出しなければならない。(中略)自
由裁量の大きな職務は政治的プロセスを伴ってお
り、このような職務に就いている個人は、自己の他
者に対する依存度と同じかそれ以上のパワーを維
持しようとするであろう。このために必要とあらば、
彼らは連合に参加する。それゆえ、組織における
依存関係の変化は、いずれかの連合に脅威を与
え、新たな連合を可能にする」 (同上、p.166)
出所)Thompson, J. D. (1967) Organizations in Action, McGraw-Hill(高宮晋監訳『オーガニゼーション・イン・アクション』
同文舘、1987年)を参照して作成