2008年度「労働組合が抱える課題とその取り組み」

本紙調査
08年度「労働組合が抱える課題とその取り組み」に関するアンケート
調査結果
概要
○本 調査 に つい て
本調査の実施概要は以下の通り。
・調 査 名:2008年度「労働組合が抱える課題とその取り組み」に関するアンケート調査
・実施時期:2008年5月上旬∼2008年5月末日
・実施方法:アンケート調査票郵送方式
・調査項目:1.2008年春闘における重点課題
2.直面している課題
3.労使協議の変化状況
4.組合活動の活性化に向けて
5.ワーク・ライフ・バランスに向けた取り組み
6.グローバル化の影響
・調査対象:「生産性新聞」を購読している単位労働組合の中央執行委員長
・回答労組:270組合
【お問合せ先】
財団法人社会経済生産性本部
〒150-8307
メディアセンター
渋谷区渋谷 3-1-1
TEL03-3409-1115
FAX 03-5466-7661
2008年春闘における重点課題
今春の労使交渉において、組合員全員の月例賃金改善(いわゆるベースアップ)以外に重視した内容
としては、「時間外・休日労働の割増率の改訂」を挙げた労組が多かった(46 組合、15.6%)
。
また、最も多かった「その他」の回答でも、業種を問わず「総労働時間の短縮」、
「ワーク・ライフ・
バランス(育児・介護)の推進」を挙げる労組が多く、労働時間管理を含む「働き方」の問題が労使間
で取り沙汰されていることが明らかになった。
「その他」の記載では「企業体質の強化」、
「一時金の引き上げ」、
「人事・賃金制度の見直し」といっ
た組合員全体に及ぶ問題だけではなく、
「交替勤務者の労働条件の改善」
、
「(初任給の改定を含む)若年
層の賃金水準の見直し」、
「単身赴任制度の見直し」といった一部の組合員が対象となる問題もそれぞれ
複数回答寄せられ、各々の企業がどの層を強化しようとしているのか、浮き彫りになった。
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直面している課題
現在直面している課題(複数回答)では、「総労働時間の短縮(休暇取得促進・所定外労働時間の削
減)
」を挙げる労組が 157 組合(58.1%)と最も多く、全体の約 6 割の労組が回答している。以下、
「次
世代組合役員の育成」
(93 組合、34.4%)、「組合員とのコミュニケーション強化」
(85 組合、31.5%)、
「人事制度(処遇・評価等)の見直し」
(79 組合、29.3%)
、
「組合員のメンタルヘルス」
(67 組合、24.8%)
、
「組合員の仕事と家庭の両立支援」(58 組合、21.5%)
、「職場風土の改善」(54 組合、20.0%)の順で
多い。
製造業/非製造業の業種別にみると、製造業では、「総労働時間の短縮」を挙げる労組が 61.9%と 6
割を超えているのに対し、非製造業では 51.9%と、約 10 ポイントの差があり、製造業の労組で特に課
題に挙げる傾向が見られた。以下、製造業では、
「組合員とのコミュニケーション強化」
(31.9%)、
「次
世代組合役員の育成」
(31.3%)、
「人事制度の見直し」
(29.4%)、
「組合員のメンタルヘルス」
(26.3%)
、
「組合員の仕事と家庭の両立支援」
(21.3%)
、
「職場風土の改善」
(19.4%)、
「組合員範囲の拡大」
(12.5%)
の順で多い。非製造業では、
「次世代組合役員の育成」
(38.7%)、
「組合員とのコミュニケーション強化」
(31.1%)、
「人事制度の見直し」(30.2%)、「組合員のメンタルヘルス」(23.6%)、「組合員の仕事と家
庭の両立支援」(21.7%)、
「職場風土の改善」
(19.8%)
、「組合員範囲の拡大」(16.0%)と続いている。
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また、現在直面している課題のなかで、
「もっとも重要な課題」を一つ挙げてもらったところでは、
「総
労働時間の短縮(休暇取得促進・所定外労働時間の削減)」を挙げる労組が 90 組合(33.3%)と全体の
3分の1を占めた。次いで「人事制度(処遇・評価等)の見直し」(34 組合、12.6%)、「次世代組合役
員の育成」(32 組合、11.9%)、「組合員とのコミュニケーション強化」(29 組合、10.7%)、「職場風土
の改善」(17 組合、6.3%)、「組合組織体制の再構築」(12 組合、4.4%)
」の順となっている。
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製造業/非製造業の業種別では、製造業では、
「総労働時間の短縮」35.0%、
「組合員とのコミュニケ
ーション強化」13.1%、
「人事制度の見直し」10.6%、
「次世代組合役員の育成」10.0%、
「職場風土の改
善」5.6%の順で多いのに対して、非製造業では「総労働時間の短縮」30.2%、
「人事制度の見直し」16.0%、
「次世代組合役員の育成」15.1%、
「組合員とのコミュニケーション強化」7.5%、
「職場風土の改善」6.6%
の順となっている。
製造業では「総労働時間の短縮」と「組合員とのコミュニケーション強化」を挙げる労組が非製造業
に比べて5ポイントほど高く、非製造業では「次世代組合役員の育成」と「人事制度の見直し」を挙げ
る労組が製造業に比べて5ポイントほど高かった。
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労使協議の変化状況
10年前と比べた労使協議の変化状況については、「活性化している」、「どちらかというと活性化し
ている」を合わせると 132 組合(49.1%)と、
「変わらない」80 組合(29.7%)、
「どちらかというと活性
化していない」「活性化していない」の 51 組合(18.9%)を大きく上回っている。
組合活動の活性化に向けて
組合活動の活性化、組合への関心を高めるために特に力を入れて取り組んでいる活動については、多
様な意見が出された。その中でも、とりわけ「組合員とのコミュニケーション強化」
、
「広報活動の充実」
、
「組合員への教育活動」、
「イベント・レクリエーションの企画」については、それぞれ多数の回答が寄
せられ、組合活動の意義の伝播、活動の見える化に注力していることがうかがえる結果となった。一方
で「試行錯誤中。コミュニケーションを活発化したいが、職場の流れは逆行している」など、活動に苦
慮する様子もうかがえる。具体的な取り組み例は次の通り。
●組合員とのコミュニケーション強化
組合の職場討議に 100%参画/メールではなく、直接対話できる機会を多く持つ/階層別に毎月約 50
人との昼食会を実施/全組合員との個別面談を実施、職場環境の改善、要望事項を聞き取り/フリーダ
イヤル個別相談窓口の設置/職場の異なる組合員同士の交流/懇談会を毎月1回実施するほか、制度を
新たに導入するにあたって組合員への説明、対話のための職場討議を行っている
●広報活動の充実
イントラネット上における組合掲示板の設置と内容の充実/機関紙の発行回数の増加/機関紙の充
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実、リアルタイム性の重視/組合情報を記載した機関紙を毎日発行し職場に配布/活動内容を機関紙で
はなく社内イントラネットにタイムリーに掲載
●組合員への教育活動
家族も含めたメンタルヘルス、退職準備セミナー、新人セミナー等多数のセミナー実施/若手、中堅
組合員に対する各種研修(ライフプランセミナー等)の充実/目標面接制度を活かすための研修を実施
/植林活動、環境問題・倫理・道徳教育の実施/組合活動の基本や労働協約の勉強会
●イベント・レクリエーションの企画
家族を含む行事の実施/一般公募によるイベント強化/社会貢献、ボランティア活動への参加と組合
員への機会提供/労使共催レクの実施/月1回の会社周りの 4S活動/若手組合員が参加しやすいイベ
ントの開催や共済制度の見直し、セミナー開催など福利厚生の充実
ワーク・ライフ・バランスに向けた 取り 組み
ワーク・ライフ・バランスへの対応については、
「運動方針に取り入れて積極的な対応を行っている」
が 158 組合(59.2%)と過半数を超えた。「今後、運動方針に取り入れて対応を進めていく」も 63 組合
(23.6%)を占めた。
「春闘における重点課題」や「直面している課題」でも見られたように、長時間労働是正を中心とし
た働き方の見直しについて労働組合が重視している点がうかがえる。
「積極的な対応を行っている」組合の具体的活動としては、時間外労働の削減や有給休暇計画取得を
中心とした総労働時間の抑制、企業・組合員の意識改革を促すセミナーなどの開催などが多く見られた。
加えて、労使合同によるプロジェクトチームを発足させる組合が散見されるなど、企業としてもワー
ク・ライフ・バランスへ関心を払っている様子がうかがえる。
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各労組の具体的な取り組み例は次の通り。
●総労働時間の削減
総労働時間の短縮、所定労働時間短縮、年休、長期連続休暇取得推奨など仕事面からの改善/総実労
働時間の短縮。週に1回NO残業デーの朝ビラ、マイク放送、時間管理川柳募集、時間管理推進委員会
の設置/休暇取得キャンペーン、積立休暇日数の拡大と取得事由の拡大/ログオン、ログオフによる労
働時間管理、長時間労働職場の改善、記念日休暇2日間の協定化/上部団体の方針である、総労働時間
2100 時間以内を来年 3 月末までに実現することを目標。その一つとして、年休取得向上の一環で、年
休カットゼロ職場などに賞を設けて活性化させている。次世代法への対応も労使で取り組み、「くるみ
ん」事業体の認定を受けた/会社と連携して「19 時ダッシュ」という早時退社運動を行っている/管理
職を含めた全社員一斉帰宅
●組合員・会社の意識改革
ライフプラン、マネープランセミナーの実施/ワーク・ライフ・バランスの「考え方」を組合員、会
社に普及/働き方改善のキッカケづくりとして管理職含めた全社一斉定時帰宅等を検討中/職場、家庭、
地域社会の相互発展を織り込んだライフクリエイトセミナー(35、45、54 歳)や基礎教育の実施/男
性社員の育児休暇促進/女性営業者の働き方を考える懇談会を実施/年 2 回労使双方参加の「労働時間
管理の適正化」懇談会を開催
●人事制度・次世代育成計画の見直し
次世代育成計画の見直しや、児童クラブや子育て支援グループとの共同利用協定への取り組み/次世
代育成支援や単身赴任者支援など家族的責任が果たせる柔軟な勤務制度にかかわる調査、検討/育児関
連諸制度(特に育児短時間勤務制度)の充実
●労使によるプロジェクトチーム
次世代認定マーク「くるみん」の取得を目指して労使会議を実施、女性組合員を対象にしたワーキン
グウーマンセミナーを実施/労使で「ワーク・ライフ・バランス推進チーム」を設置し、次世代育成支
援や介護、育児の問題を検討
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グローバル化の影響
グローバル化の進展による労組への影響については、
「大いに影響がある」が 82 組合(30.4%)、
「や
や影響がある」が 75 組合(27.8%)と、両者を合わせると 157 組合(58.1%)が「影響がある」と答
えている。
製造業/非製造業の業種別にみると、製造業では、「影響がある」(
「大いに影響がある」と「やや影
響がある」の合計)と答えた労組が 68.8%と7割近くに達しているのに対して、非製造業では 42.5%と
4 割にとどまっており、製造業と非製造業の温度差が明らかになった。
具体的な影響の内容については、
「企業合併、組織再編」や、
「海外出向・駐在員増加に伴う労働条件
の整備」「決算が海外法人との連結決算となったことによる春闘方式の変更」などの面で、組合側と経
営側との間のギャップが拡大していることを懸念する意見が多く挙げられており、グローバル化対応に
迫られている労働組合の姿が浮き彫りになった。
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グローバル化の影響については各労組から以下のような意見が自由回答で寄せられている。
●企業合併、組織再編の影響
海外企業による合併の為、既存組合は解散/経営陣(外国人)が入れ替わるため、中長期の視点で話
し合うことが難しい/外資系企業の組合であるため、すべてにおいて影響/海外グループ売上の比率上
昇が一時金に影響/労働組合の守備範囲は国内だが、経営はグローバルな視点なのでギャップがある。
また、機能によってはトップが海外になっている/企業の活動、ルールがグローバル化している中で、
組合の職場活動はローカルルールで運営されており、コミュニケーションギャップやメンタル面での課
題が増えている。異文化との融合のカベがある
●海外駐在、派遣増加への対応
海外派遣者の増加(組織対策、労働環境)/事業構成が完全にグローバル化している。組合としても
グローバル化への対応は重要課題ととらえて、様々な活動に展開していく(研修・資料の英文化、海外
出向者対応)/製販はもちろん、設計や開発の拠点もグローバルになる中、労組のあり方はこのままで
良いのか(ローカル上司に日本人の組合員)(外部・請負・期間工の考え方等)/海外拠点の増加に伴
い、出向者、出張者のフォローが重要であり、ワークルール等の整備が必要なため、対応する人員、予
算の確保が課題/国内外の従業員比率の変化による国内従業員の将来的な雇用人員数の減少
●海外団体、ローカル組織との関係
現地社員との関係、国際労働および人権団体との対応/ローカル社員の組織化
●春闘方式への影響
企業業績が従前にも増して海外の経済状況に左右されることにより、労使交渉時の情報不足が心配/
グローバル化による業績連動による成果配分のあり方/海外拠点での労使紛争/会社の収益変化によ
る労働条件の変化(改善が進みにくくなる)/会計基準変化で春闘交渉の仕方までが変わってきている
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