5 forces(5つの脅威)と呼ばれる、ハーバード大学のマイケル・ポーター

(社)日本シヤッター・ドア協会
ご挨拶
諏訪東京理科大学
平成22年度通常総会懇親会
教授
奈良 松範
様
本日はお招き頂きまして、ありがとうございます。
今回は、環境に関するテーマについてお話ししたいと思います。
5 forces(5 つの脅威)と呼ばれる、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱し
た「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「業界内の競
合他社」といった 5 つの力を総合的に判断して企業の最適な戦略を考え、究極的な収益率
を決めるという理論があります。
この 5 つの力の他に、
“第 6 の力”
(補完的生産者)と呼ばれるものがあります。
“ハード
ウェアとソフトウェア”
“ご飯と味噌汁”のように、必ず何かものがあると、それに対して
補完的存在するものがあります。
実は、この関係が新しい市場の開拓に重要であると言われています。
例えば、多くの会社が参入し、鎬を削っている「太陽光発電」ですが、こんな話があり
ます。ある屋上ルーフィングの会社では、今まではコンクリートを打ってその上に太陽光
パネルを固定していたのですが、これを直接ルーフィング材に固定する方法に変えたこと
により、低コスト、短納期が可能になり、結果、売り上げが上がっているそうです。
これは太陽光発電に対して、補完的生産者であると考えられます。では、シャッターや
ドアに対する補完的生産者は何になるのでしょうか。生産者は補完的生産者とともにお互
いを高め合うことができる製品を開発すべきです。ぜひ、マイケル・ポーターが提唱して
いる“第 6 の力”をうまく利用して頂ければと思います。
また、1960 年代中盤、GE(ゼネラルエレクトリック)が事業の再編を進める中、ボスト
ンコンサルティングがPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)と呼ばれ
る経営分析を提唱しました。これは、多種類の製品を生産・販売する企業が、戦略的観点
から経営資源の配分が効率的・効果的となる製品や事業相互の組み合わせを決定するため
の管理手法です。
きっかけは、輸出攻勢で世界市場を席巻し始めた日本企業の存在で、当時の日本企業が
低価格で市場シェアを取り、米国企業を圧迫し始めていたことへの対抗策でした。戦略マ
ップは、金の生る木、花形製品、問題児、負け犬の4象限に分類され、そのポイントはシ
ェアは小さいけれども、将来性が大きい問題児を“花形製品”にしようということでした。
しかし、現在の成熟(低成長)市場においては、シェアも将来性も小さい“負け犬”こ
そが、新しい市場を開拓するために重要ではないかと、私は考えています。
通信機能を搭載した計測機器等を設置して、電力供給を人の手を介さずに最適化できる
「スマートグリッド」と呼ばれるものがありますが、環境のテーマでは「スマート“設備”
グリッド」と考えてよいのではないかと思います。
私は、シャッターや防火設備の加速度、振動、音をひろうことができるシステムを作り、
その情報をコンピュータに送って管理するシステムを開発しました。これは、地域ごとに
群管理することにより、いち早く悪い所を見つけられるほか、コストダウン効果もありま
す。
一方、最近気になったことでは、社会保障関連の予算が約 27 兆 3000 億円に対して、公
共事業関連予算は約 5 兆 8000 億円ということです。社会保障関連の企業の数は公共事業関
連に比べれば少ないにもかかわらず、予算はその 5 倍あります。ですから、そこに目をつ
けて、そういった隙間に参入することも有望ではないかと考えております。関連してもう
ひとつお話しますと、貼っておくだけで、遠くにあるパソコンに心電図を送ることができ
る心電計が開発されています。これからは、そうした医療分野に対応していくことも重要
だと思っています。
いま、関連業界は閉塞感に包まれているように思いますが、最後にジャン・ジャック・
ルソーの言葉を贈ります。
「生きるということは呼吸することではない。行動することだ」
ただ止まっているだけではなく、ぜひ、行動して頂きたいと思います。
ありがとうございました。