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経済危機に伴う外国人住民の雇用・生活状況調査結果
実施主体:(財)滋賀県国際協会
調査代表者
龍谷大学国際文化学研究科博士課程 松尾隆司
■調査経緯
2008年秋以降の経済危機により、製造業を中心とする分野で非正規労働者の派遣切りや雇い止めによ
る失業が問題化している 。滋賀県在住の外国人労働者においてもその状況は同様に深刻であり、2009
年1月に第1回目として実施したこの調査では、6割にあたる人がこの経済危機以来に「失業した」と回答し
ている。
こうした状況の中、今後の彼ら彼女らに対する支援を本格化するため、失業状況や雇用保険受給状況な
ど外国人住民を取り巻く雇用状況を中心に実態を明らかにするために今回第2回目の調査を実施した。
今回の調査の目的は、前回の調査から約半年が経過した6月に同地域で同様の調査を実施し、依然とし
て景気が回復せずまた雇用回復や改善がみられない中で、外国人労働者の生活を取り巻く状況の変化を
より詳しくつかむためである。これら結果からは、より柔軟な支援や対応を求める際の(行政側に対しての)
根拠として、また適切な支援を行っていく際の(NPOやボランティア団体の)基礎資料として活用を期待する
ものである。
■調査概要
●調査対象者…県内在住の南米出身者
●調査地域 …長浜市、東近江市、湖南市(3市)
●調査方法 …直接訪問による面接調査
※調査員2名1組による、聞き取り調査(通訳者1名、記録者1名)
●調査実施日…2009年 6月13日(土)、14日(日) :長浜市
2009年 6月21日(日) :東近江市
2009年 6月27日(土)、28日(日) :湖南市
●質問内容 …国籍、戸数内人数、就業状況、失業時期、雇用保険の受給状況、今後の滞在予定、
子どもの就学状況
■調査結果
1.回答戸数(有効回答戸数)
142 戸
2.回答があった世帯(戸)の総居住人数 404人
うち16歳以上
うち16歳未満
304 人
100 人
3.就業状況
就業者(フルタイム)
就業者(アルバイト)
失業者
無職者
学生
125
28
130
19
2
(N=304)
国籍内訳:
ブラジル国籍・・・315人
ペルー国籍 ・・・ 69人
ボリビア国籍 ・・・ 17人
その他 ・・・
3人
無職者 学生
6.3% 0.7%
失業者
42.8%
就業者
(フルタイム)
41.0%
就業者
(アルバイト)
9.2%
フルタイムの仕事があると回答した人は125人・41.0%、アルバイトの仕事があると回答した人は、28人・9.2%で
あった。また一方で、この金融危機以降で失業をしたと回答した人は、130人・42.8%、無職者は、19人・6.3%となっ
た。
フルタイム・アルバイトがあると回答した人は、全体の153人・50.2%である一方、金融危機以降に失業した人が、130
人・42.8%にも達している。
用語説明
就業状況
・ 就業者(フルタイム)・・・週5日以上の仕事をしている。
・ 就業者(アルバイト)・・・週2~3日程度の仕事をしている。
・ 失業者・・・2008年秋以降で仕事を失った人
・ 無職者・・・就業の意思がないもの。例:主婦、高齢者、妊婦、産休者など
・ 学生・・・ 16歳以上で学生。例:高校生、大学生など
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4.世帯(戸)別就業状況
有職世帯
一部有職世帯
完全失業世帯
54
45
43
(N=142)
完全失業
世帯
30.3%
有職世帯
38.0%
一部有職
世帯
31.7%
経済危機以前と変わらず仕事がある「有職世帯」は、54世帯・38.0%。経済危機により家族の誰かが失業している
「一部有職世帯」は、45世帯・31.7%。経済危機により家族の誰もが失業している「完全失業世帯」が、43世帯・30.3%
となっている。
用語説明
世帯状況
・ 有職者世帯・・・世帯内で失業をした人がいない。
・ 一部有職世帯・・・世帯の誰かが失業している。もしくは、アルバイトのみで生計を立てている世帯。
・ 完全失業世帯・・・昨秋以降に失業をして、世帯内でだれも仕事をしていない。
5.失業(雇用)保険の状況
受給中
手続き中
受給終了
受給なし
不明
88
12
2
23
5
(N=130)
受給なし 不明
17.7%
3.9%
受給終了
1.5%
受給中
67.7%
手続き中
9.2%
失業をしていると回答した130人のうち、失業保険を「受給している」と回答した人が88人・67.7%、「受給手続き中」
と回答した人は、12人・9.2%であった。一方で、雇用保険が受給終了したと回答した人が2人・1.5%、失業保険を「受給
していない」と回答した人が23人・17.7%となった。
6.雇用保険終了時期
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
不明
19
17
23
16
7
3
1
2
N=88
11月
10月3.4%
8.0%
12月 不明
1.1% 2.3%
6月
21.6%
9月
18.2%
8月
26.1%
7月
19.3%
雇用保険を受給している88人に対して、いつ頃、雇用保険が受給終了するのかたずねた。8月末までに雇用保険
が終了する人は、59人67%。12月末まで終了するものは、86人・97.7%の人が終了となる。
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7.今後の滞在について
滞在予定
日本に残る
帰国
未定
帰国
2.1%
戸数
139
3
―
(N=142)
日本に残
る
97.9%
今後の予定について、139世帯・97,9%が日本に残ると回答しており、3世帯・2.1%が帰国と回答している。今回の
回答の中では、「帰国」と回答している世帯の条件として、ブラジルまでの帰国チケット購入している、もしくは予約を
入れている世帯と限定した。今回、「帰国」と回答した3世帯は、近日中に帰国するということになる。
8.就学状況
公立学校在籍
外国人学校在籍
就学前児童
不就学
51
11
37
1
(N=100)
就学前児
童
37.0%
不就学
1.0%
公立学校
在籍
51.0%
外国人学
校在籍
11.0%
16歳未満の100人の中で公立学校に通っている人が、51人(51%)。ブラジル人学校に通っている人が11人
(11.0%)。小学校入学前の就学前児は、37人(37.1%)。不就学の人は、1人(1.0%)であった。
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■1月に実施した調査との比較
1.就業状況
就業者(フルタイム)
就業者(アルバイト)
失業者
無職者
学生
1月調査 6月調査
121
125
16
28
101
130
20
19
1
2
(N=259) (N=304)
50.0%
40.0%
46.7%
41.1%
42.8%
39.0%
30.0%
20.0%
9.2%
6.2%
10.0%
0.0%
7.7%6.3%
0.4%0.7%
就業者
(フルタイム)
失業者
就業者
無職者
学生
(アルバイト)
1月調査
6月調査
6月の調査では、フルタイム就業者の占める割合が1月と比べて、5.6%減少している。一方で、失業者の割合が
3.8%の上昇となっている。この状況から外国人を取り巻く雇用情勢は、改善の傾向は見られず、むしろ悪化している
様子が見受けられる。
2.世帯別就業状況
有職世帯
一部有職世帯
完全失業世帯
1月調査 6月調査
41
54
36
45
32
43
40.0%
37.6% 38.0%
33.0% 31.7%
29.4% 30.3%
30.0%
(N=109) (N=142)
20.0%
10.0%
0.0%
有職世帯
一部有職世帯
1月調査
完全失業世帯
6月調査
1月、6月のデータを比較すると、有職者世帯、一部有職者世帯、完全失業世帯とも、大きな変化はなかった。以前
として厳しい状況が続いている。
3.失業(雇用)保険の状況
1月調査 6月調査
受給中
15
88
手続き中
21
12
受給なし
41
23
受給終了
0
2
不明
24
5
(N=101) (N=130)
70.0%
67.7%
60.0%
50.0%
40.6%
40.0%
30.0%
20.0%
23.8%
20.8%
14.9%
17.7%
9.2%
0.0%
3.8%
0.0% 1.5%
10.0%
受給中
手続き中
受給なし
1月調査
雇用保険を受給していると回答した人が1月と比べて6月には、大幅にのびている。
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受給終了
6月調査
不明
4.就学状況
1月調査 6月調査
公立学校在籍
39
51
外国人学校在籍
就学前児童
不就学
8
30
8
11
37
1
(N=85) (N=100)
60.0%
50.0%
45.9%
51.0%
35.3% 37.0%
40.0%
30.0%
20.0%
9.4%
11.0%
9.4%
10.0%
0.0%
1.0%
公立学校
在籍
外国人学校
在籍
1月調査
就学前児童
不就学
6月調査
総括コメント
・今回の調査と1月の調査を比較してみると、外国人を取り巻く雇用情勢の改善は見られない。むしろ、
悪化しているように感じられる。
・今回の調査で失業と回答した人の多くが雇用保険を受給していることが分かった。しかしながら、雇用
保険が終了する時期が示すように、8月末までには、67%が、12月末までにはほぼ全員の給付が終了
する。このことから、給付終了後の生活について厳しい状況が推測される。
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