第 45 回 フィリピン関連の新聞記事について

「海外ビジネスコラム(第 45 回)」
(公財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター 鹿野健・海外販路開拓支援マネージャー
第 45 回
フィリピン関連の新聞記事について
数年前まで日本の新聞紙上でフィリピンの経済関係の記事を目にする機会は少
なく、フィリピン関係と言えばほとんどの記事が社会面記事であった。しかし、
最近はフィリピンの経済関連記事が多く目につくようになっている。この現象
は何を物語るのか分析してみたい。
1)フィリピンでは 2010 年 6 月にベニグノ・アキノ大統領が就任して、汚職の
一掃を大きなスローガンとして、クリーンな政治を志向している。この政権交
代が海外の投資家から好感をもたれて、フィリピン経済の風向きを変える引き
金となり、旧来言われていた「アジアの病人」というフィリピンにとって不名
誉な呼称も使われなくなっている。
2)フィリピン経済の風向きが何故変わったのかを検証してみたい。
a) 潜在的な力とも言える豊富な若年労働力が外国資本によって高い評価を得
ていること。つまりピラミッド型そのものの人口ピラミッドを描いていること。
具体的には 20歳未満の人口比率がフィリピンでは(9,400 万人中)約 44%
(JETRO 資料)と他国比較で圧倒的に高く、その労働供給力の大きさは容易に
想像できる。また人口の絶対数の 9,400 人は ASEAN の中でインドネシアに次
いで2位であり、上述の若年労働者の比率の高さも相まって労働者の確保が容
易である。
b) フィリピンでは PEZA(Philippines Economic Zone Authority=フィリピン
経済区庁)を始めとして外資を積極的に誘致しており、PEZA 区内の進出企業
には法人税の8年間減免、外国から持ち込んだ生産設備や原材料の関税免除等
の優遇策が適用されている。1995 年の設立以来、何回もの政権交代があったに
も拘わらず、PEZA 長官を務めるリリア・デリマ氏の力量の評価は極めて高い
ものがある。筆者は 1996‐2001 年の同地駐在中に同氏の講演及びスピーチを
数回聞いたが、実に説得力のあるものであったことを記憶している。
c) 一般によく言われることであるが、英語が同国の公用語であり、外国人にと
って言葉の障害がほとんどないことが外資の進出を容易にしている。また、
その英語力を有効に使うために米国企業のテレフォンセンターも進出しており、
これも新規雇用の創出に寄与している。
「海外ビジネスコラム(第 45 回)」
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d) 最低賃金の上昇率が非常に一定しており、毎年約5%という上昇率が保た
れている。この点は賃金が高騰している中国や所謂ポピュリズムで最低賃金を
政策的に大幅上昇させている他のアセアン諸国との比較で相対的に競争力を
増している。
3)2011 年の新政権発足で海外からの信頼度が増したという背景の下に、上記
の要因が複合して効果的に働き、IMF の見通しでは今年(2013)の経済成長率
は 7.0%とのことであり、またここ 1.5 年間の四半期毎平均成長率(年率換算で
約 7.0%)はアセアン諸国の中でインドネシアを上回ってトップである。更に米
国大手格付け会社数社は今年に入ってフィリピンの格付けを「投資適格級」と
している。
このような経済成長がフィリピン関連の新聞記事の内容を経済面的に替えさせ
ている理由と考える次第である。
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