野球におけるストライク・ボール自動判定システム The automatic judgment system of the strike or the ball in baseball 井口 博史 Hiroshi Iguchi 斉藤 英雄 Hideo Saito 慶應義塾大学 Keio University 1. 序論 2.3 ボール検出・追跡 野球やソフトボールにおけるストライクゾーンは空間的 なものであり,ボールの通過の有無を判断するのは非常に 難しく,プロの審判であっても誤審は生じる.特に草野球 などにおいては,公式な審判がつくようなことはほとんど なく,当該チームの手の空いている人などが審判をするこ とが多い.しかし,素人の審判では一貫した判定をし続け ることは難しく,判定結果によってはプレーヤーと審判の 両者が不快な思いをしてしまうことが考えられる. MLB においては審判の技術向上の支援のために QuesTec 社が開発した UIS [1]というリアルタイムで正確なストライ ク・ボールの判定を行えるシステムが導入されている.し かし,アマチュア野球においてはこのような高価で大規模 なシステムを導入することは非常に難しい. 本研究では,安価な機材を用いて,野球やソフトボール におけるストライク・ボール判定システムを提案する.具 体的には,2 台の非同期のカメラから投球の 3 次元軌跡を 大まかに算出することで判定を行う. カルマンフィルタによるボール位置の予測結果に応じて 探索窓を移動させる[2]ことにより,ボールの追跡を行う. 探索窓の初期位置や大きさは手動で設定する.ボールの検 出は,まずフレーム間差分を行い,探索窓内でのラベリン グをした後,ラベルの縦横比や面積によって絞り込むこと で行う. 2.4 平面の算出 検出したボールの 2 点の画像座標と射影行列から,画像 中で直線的に近似したボール軌跡を含む平面を算出する. ボールが 1 点しか検出できない場合は,ラベルを重心から 上(右)半分,下(左)半分に分けて,上下(左右)それぞれの重 心座標を利用する. 2.5 判定 2 平面の交線をボールの 3 次元軌跡とみなし,ストライ クゾーンを通過したか否かを判定する.ストライクゾーン の高さは,打者の対面からの画像から算出する. 2. 提案システム 3. 実験 2.1 システムの概要 室内やグラウンドでボールを投げ,本システムを適用し てみた.判定結果の一例を図 2 に示す.図中の直線はボー ルの軌跡を直線的に近似したものであり,枠は探索窓を示 していてボールの検出に伴って移動する. ボールの検出に成功さえすれば,図のように本システム によって判定を行うことができた. 本システムは Web カメラを接続した 2 台のノート PC を 使用し,捕手の後方と打者の対面から撮影する.2 台のカ メラは非同期であるが,各カメラの画像からボールの 2 次 元軌跡を求め,それらを合成して 3 次元の軌跡を求めるこ とで判定が可能になることに着目した.それぞれの画像か ら得られる情報は,2 台の PC 間で無線のアドホック通信 を行うことで共有する. 2.2 処理の流れ 図 1 に本システムの処理の流れを示す.カメラキャリブ レーションは基準物体を用いて事前にしておく. (a) 出力画像 1 (b) 出力画像 2 図 2 判定結果 Fig.2. Result of judgment 4. まとめ 野球やソフトボールにおけるストライク・ボール判定シ ステムを提案した. 参考文献 図 1 処理の流れ Fig.1. Overall algorithm of this system [1] Inc QuesTec.UIS(umpire information system). http://www.questec.com/q2001/prod_uis_qanimation.htm [2] 高橋正樹,三須俊彦,合志清一,藤田欣裕.“画像内 の物体抽出技術を用いた高速投球作画手法”,信学論 D-II, vol.J88-D-II, No.8, pp.1672-1680 (2005)
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