第 5 章 新しい授業プログラムの試み 第 5 章 新しい授業プログラムの試み 第 5 章 新しい授業プログラムの試み 関 わりなく、私 は授 業 の際 に多 くのプリント資 料 を作 成 ・配 遠隔講義・e-learning の研究 と実践 付 し、また完 全 にパワーポイントのスライドとワープロの画 面 〜eラーニング実験授業「変 異する日本現 代小説」報告〜 をスクリーンに投 影 する仕 方 で授 業 を進 めてきました。結果 的にはそのことが功を奏し、本番ではなく実験であるというこ 高等教育研究 企画センター学外連携推進 部門長 ともあり、授 業 そのものにはほとんど手 を加 える必 要 はなか 人文学部 中 村 三 春 ったのです。 はじめに システムの構築と授業の形式 「相 互 研 鑽 による教 養 教 育 の飛 躍 を目 指 して」が、山 形 大学 FD の合い言葉です。これは要するに、単に上意下達 授業の教室である山形大学教養教育 1 号館 127 番教室 式 に改 善 を進 めるのではなく、まず隗 より始 めて、お互 いに は、もともと TV 会議システムを用いたリモート講義用の教室 その成 果を分 かち合うということです。まず隗より、というわけ であり、この授 業 も米 沢 地 区 ・鶴 岡 地 区 へのリモート授 業 と で、高 等 教 育 研 究 企 画 センター学 外 連 携 推 進 部 門 を担 当 しました。eラーニングの方 は、基 本 的 にインターネットを利 し、大 学 コンソーシアムやまがたで運 営 委 員 会 の仕 事 をし 用します。 樹氷 ているこの私自 身が、自 分の授業 を、単位 互換 eラーニング (Learning Management System=授業支援システム)、カメ の実験授業とすることになったわけです。 ラ等の設備と、担当スタッフと TA の経費を負担しました。さ で は 、 ス ト リ ー ミ ン グ サ ー バ 、 LMS らに、教養教育担当係からも支援を受けています。 大学コンソーシアムやまがたでは、平成 18 年度から全参 加大学 の間 で単 位 互 換制 度を発 足 させる予 定 です。また、 地域ネットワーク FD 樹氷 では、授業改善 の一環として、e ラーニングのシステムとコンテンツ開 発 を事 業 の一 つとして います。現 在 のところ、コンソーシアムで単 位互換 やeラーニ ングの制 度 的 な枠 組 みを定め、 樹 氷 の予 算 によってシス テム構 築 やスタッフ・TA の配置などを担 当する、という形に なっています。 開講までの準備 山 形 大 学 の教 養 教 育 は全 学 出 動 方 式 ですが、山 形 ・小 白川地区の 3 学部が、教養 教育責任学部 として、多くの授 コンテンツの画 面 ・音 声 構 成 上 は、従 来 のリモート講 義 の 業 を担 当 しています。私 は「文 化 ・行 動 」の領 域 で、前 ・後 場合とほとんど同じものです。すなわち、スライドのスクリーン 期 1 コマずつを担当し、これまで、前期は多数の学生を受 と、その横 に教 員 の姿 が映 っているビデオに、実 際 の講 義 け入れる映像論を「文化論 」として出講し、後期はやや高度 の音声が重なるというもので、eラーニングのコンテンツとして で深 く学 びたい学 生 を対 象 として日 本 文 学 関 係 の授 業 を は、最 も素 朴 (原 始 的 )なものと言 えます。この方 法 の利 点 「文 学 」として実 施 してきました。学 生 は現 代 文 学 への関 心 は、担 当 教 員 はほとんど何 もシステムにタッチする必 要 がな が高 いので、テーマを「変 異 する日 本 現 代 小 説 」とし、2〜3 く、スタッフ・TA も、システムを立ち上げてセットアップし、終 回完結で 6 人の作家を取り上げる方式としました。 了 後 はシステムをダウンして片 付 けるだけで、非 常 に操 作 が簡単であるという点です。 スタッフがeラーニング収録システムを、TA がリモート講義 のシステムを起動し、私は自分が映っているモニターを見て、 スクリーンの位 置 に合 わせてカメラのアングルとズームを調 整 してもらいます。パソコンの映 像 と音 声 のケーブルをシス テムに接続し、ピンマイクをオンにすれば、後は通常の授 業 と同 じです。プリント資 料 を読 み、パワーポイントのスライドを 提示して授業 を進めます。必 要な場 合は、スクリーン上にワ ープロの画 面 を投 影 して、スライドの資 料 を補 足 し、講述内 容を補っています。 シラバスを作 成 する段 階 で考 えていたのはここまでです。 すなわち、eラーニング化 する予 定 も意 思 も、その段 階 では 全 くありませんでした。ただし、eラーニング化 するか否 かに -1- 第 5 章 新しい授業プログラムの試み す。スタッフと TA が非常に有能な仕事ぶりを見せてくれまし 授業の状況 と留 意 点 たので、きわめて円 滑 に進 めることができたというのが実 感 水曜日の 1〜2 校時のこの授業のために、毎回のプリント です。成 績 評 価 はリモート教 室 も含 め、ウエブ上 ではなく、 資料とスライドのファイルは、前 日 の正 午 までにスタッフを通 レポートを紙 で提 出 させて評 価 する一 般 的 な方 法 を用 いま じて配 付 ・送 信 してもらいました。リモート講 義 用 としては、 した。 両 地 区 の担 当 スタッフに送 信 して印 刷 し、eラーニング用 と また、受 信 側 からの意 見 としては、多 くの大 学 から普 通 に しては、サーバーにアップロードして LMS を通じてダウンロ 視 聴 で き る と い う ご 報 告 があ っ た も の の 、 一 部 の 大 学 か ら ードしてもらいました。 は、正 常 な視 聴 は困 難 であるという意 見 もありました。これ 正 直 に言 って、常 日 頃 から資 料 とスライドを作 成 している は、回 線 の容 量 の関 係 が大 きく、その証 拠 に、同 時 に回 線 とはいえ、今 回 は「送信 する」ということが念 頭にあり、分 量 ・ が情 報 処 理 の授 業 などで使 われている時 に、特 に問 題 が 内容 ともに通常よりもかなり充実したものになりました。プリン あると言 われたことからも分 かります。今 後 、コンテンツの精 ト資 料 は、最 初 に表 紙 を配 付 し、メールアドレスとホームペ 度 と回 線 そのものの改 善 とを含 めて、考 慮 して行 かなけれ ージの URL のほか、表紙 裏にはシラバスを載せました。内 ばならないと思われます。 容 は両 面 印 刷 とし、最 後 に大 学 のロゴマークを入 れた裏 表 さらに、eラーニングの場 合 には、送 信 する資 料 類 の著 作 紙 を配 付 して、綴 じると小 冊子 になる形 式です。全 体 で 60 権 への配 慮 が必 要 となりますが、今 回 は試 行 ということもあ ページ近くになりました。またスライド資料は、1 回につき、ス り、ほとんど配 慮 を行 いませんでした。ライヴストリーミングの ライド 12 面とし、6 面ずつ両面印刷して 1 枚ずつ配付しまし 場 合 は通 常 の授 業 と同 等 の著 作 権 への配 慮 が必 要 という た。そのほか、感 想 文 用 のコメント用 紙 も、遠 隔 キャンパス ことですが、オンデマンド化 する場 合 には、いっそうの配 慮 には LMS とファイル添付によりして送信してもらいました。 が求 められることになります。今 後 、本格 的にeラーニングが 開始される際には、必ずや明確な指針が必要となることでし ょう。 eラーニング普及の現状と展望 大学コンソーシアムやまがたでは、参加 9 機関の間 で包 括協定を結び、平成 18 年度より単位互 換を始めます。そ れに伴 い、県 内 各 地 に散 在 した大 学 ・キャンパス間 をeラー 学 生 の受 講 態 度 は、他 の授 業 と同 じく、概 ね真 面 目 で、 ニングのネットワークで結び、単位互換を実 質化させなけれ 静かであったと思います。ただし、eラーニング授業 に要求さ ばなりません。コンソーシアムではこれを、平成 18 年度から れる双方向性を確保しようと考えました。2〜3 回で 1 章完結 の 3 年計画で推進しようと構想しています。さしあたり最初 の順 序 ですから、各 章 ごとに感 想 文 を書 かせて提 出 させま の平成 18 年度においては、山形大学の教養教育の授業 した。また、各 章 の終 わりごとに、TA にマイクを持 たせて教 の一 部 をeラーニング化 して、他 大 学 に提 供 するという形 を 室 からの声 を拾 おうとしましたが、これは遠 慮 してか発 言 も 取ります。そこで、まずは山形大学において、eラーニングの なく(感 想 文 にはいろいろ書 いてくるのですが)、また時 間 も コンテンツを定 常 的 に作 成 する基 盤 を作 って行 かなければ 足 りずに実 質 的 な成 果 は上げられませんでした。オフィスア なりません。 ワーを設 定 し、メールアドレスも伝 えてありますが、ごく少 数 今回、平成 17 年度後期の間を通じて、eラーニングの実 の質 問 しかありませんでした。公 開 検 討 会 の席 上 でも、双 験 を行 い、様 々なノウハウと留 意 点 を蓄 積 しました。今 後 は 方 向 性 の確 保 についての疑 問が出 されましたが、確 かに課 これを元 にして、広 く学 内 外 に普 及 を図 らなければなりませ 題であると言えます。 ん。2 月 6 日には、高等教育研究企画センターが主催して、 その他、留 意したことと言えば、スライドのフォントをやや大 学内向けeラーニングの説明会を開催し、2 月 20 日には、 きくしたこと、マイク音 量 に注 意 して大 きめにしたことくらいで 第 1 回パワーポイント講習会を開きました。今後も、コンテン -2- 第 5 章 新しい授業プログラムの試み ツ化 と視 覚 教 材 作 成 に関 する講 習 会 等 を、断 続 的 に企 画 していきたいと思 います。またこれらと並 行 して、学 内 にeラ ーニング授業の募集を行い、相当数の応 募がありました。 山 形 大 学 としては、 eラーニングの普 及 は、YU-SUNY 事業(NY 州立大学との提携 )、エリアキャンパスもがみ事業、 あるいは小 ・中 ・高 大 連 携 事 業 など、現 在 推 進 中 の多 くの 教 育 を通 じた国 際 または地域 貢 献 ・連携の事 業 に、新 たな 可 能 性 を開 くものでもあります。今 回 の実 験 はまだ素 朴 な 段階ではありますが、これらの端緒となれば幸いです。 -3-
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