サステナビリティ・サプライチェーンを対象とした マネジメントシステム

〔論 文〕
弘前大学経済研究 第 38 号 54-76 頁
2015年12月25日
サステナビリティ・サプライチェーンを対象とした
マネジメントシステムに関する研究
金 藤 正 直
本では,環境経営が継続的に行われていること
Ⅰ 環境経営とサステナビリティ経営
が理解できる。
環境経営の取組みでは,図表 1 のような経営
日本では,1996年に,国際標準化機構(Inter-
戦略モデルを用いて 3 ),従来の経営活動も考慮
national Organization for Standardization : ISO)
に入れた「環境保全と利益創出の同時実現」と
から発行された環境マネジメントシステム
いった戦略が策定されるとともに,これに基づ
(Environmental Management System : EMS)
いて,有効的かつ効率的にマネジメントしてい
規格である ISO14001が,企業(主に,大企業)
くことが必要とされる。たとえば,現在におい
を中心に認証取得され始めた。その結果,各企
て,当該企業が,Ⓐの状態(たとえば,利益を
業では,新たな顧客の創出と利益の最大化を目
上げているが,組織全体で基準値以上の二酸化
指していくバリューチェーン(Value Chain :
炭素(CO2)を排出している状態)であれば,
1)
VC)を対象とした従来の経営活動に加えて ,
環境配慮型設備に投資したり,再生可能エネル
環境保全の組織的なマネジメントを行う環境経
ギー事業などの新たな環境関連の事業に参入す
営(Environmental Management)あるいは環
ることによって,短期的には環境基準をクリア
境配慮経営(Eco-Minded Business)の取組み
してⒸの状態にし,また,長期的にはⒷの状態
が実施されるようになった。環境省の調査結果
(いわゆる win-win 関係の構築)を目指したマ
(2015)によれば,この EMS 規格を認証取得し
ネジメントを行っていくべきである。
ている企業が現在も増えていることから ,日
2)
1 )バリューチェーン(VC)とは,サプライヤーからの
資材調達から最終消費者が製品を手にするまでの価値創造
を形成する特定の企業内プロセスの鎖であり,そこでは,
個々に活動していたプロセスを 1 つにまとめ,コストダウ
ンを実現しながら,顧客に対する製品あるいはサービスへ
の満足感,つまり,顧客が生産メーカーの提供する製品・
サービスに対して進んで支払う金額(売上額)を示す価
値(value)の創造活動が行われる。このような活動を通
じて,結果として,マージンにあたる企業利益(総価値か
ら価値活動にかかるコストの差額)を創出することができ
る(Porter, M.E.(1985)
, Competitive Advantage: Creating
and Sustaining Superior Performance, The Free Press,
pp. 33‒39(土岐坤・中辻萬次・小野寺武夫(1985)
『競争優
位の戦略 ─ いかに高業績を持続させるか─ 』ダイヤモンド
社,45‒51頁)
.
)
。
2 )環境省(2015)
『環境にやさしい企業行動調査結果【概
要版】』,2 頁の「図 7 ISO14001 等の認証取得状況の推移」
および 3 頁の「図 8 ISO14001 等の認証取得状況」と「図
9 ISO14001 等の認証取得状況(売上高別)。
3 )横軸の「環境負荷量(絶対量)」は,環境負荷物質の
排出量を示しており,環境経営の実施による企業利益への
影響を示している縦軸の「企業利益への影響」との交点か
ら右方向に進むに従って,その排出量が増加することを意
味する。なお,横軸の中央に示されている「社会的に認め
られた環境負荷量」とは,国,地方自治体,企業等が設定
している環境法規制(環境基準)あるいは社内規制を意味
する(金藤正直(2010)
「企業の環境経営と環境管理会計」
河野正男先生古希記念刊行委員会『生態会計への招待 ─ サ
ステナビリティ社会のための会計 ─ 』森山書店,113‒114
頁)。
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- -
サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
図表 1 環境経営戦略のモデル例
※注)ⒶからⒹの 4 つの象限は,各企業における現時点での環境経営の状態を示している。
・第 1 象限Ⓐ:環境経営の取組みよりも従来の経営活動に従事しているために,環境負荷量や企業利益
だけではなく,社会的コストの発生も大きい状態
・第 2 象限Ⓑ:環境経営の取組みに従事しながらも,企業利益を大きく獲得している状態
・第 3 象限Ⓒ:環境経営の取組みに従事しすぎたために,企業利益があまり得られない状態
・第 4 象限Ⓓ:環境経営を取り組まなかったために,大気汚染や廃棄物処理に対して課せられる損害賠
償など多額の事後コストを発生させる状態
(出典:金藤正直(2010)
「環境管理会計の体系と国際的動向」河野正男先生古希記念刊行委員会『生態会
計への招待─サステナビリティ社会のための会計─ 』森山書店,113頁の図 7 ‒ 2 に加筆修正して作成。)
また,こうした取組みでは,個別企業の特性
または CSR(Corporate Social Responsibility)
に基づいた VC を対象とした「部分最適」のた
経営にもみられる 4 )。日本企業の中でも,環境
めのマネジメントだけではなく,LCA(Life
経営度調査で上位にランキングしているコニカ
Cycle Assessment)を用いた環境影響評価な
ミノルタ,東芝,キャノン,トヨタ自動車など
どのように,製品・サービスにおけるライフサ
は,現在,各社発行の CSR 報告書やホームペー
イクル,あるいはサプライチェーン(Supply
Chain : SC)といった企業間連携を対象とした
「全体最適」のためのマネジメントも必要とさ
れる。
環境経営のこうした動きは,2000年以降に注
目され始めた,経済,環境,社会の 3 つの影響
を与える経営活動をマネジメントしていくサス
テナビリティ経営(Sustainability Management)
4 )八木(2013)は,企業によるマネジメントの対象内
容が,環境問題から社会問題に多様化し,また,その対象
範囲は,個別企業が直接的に影響を及ぼす問題から,SC
における環境問題や社会問題を含む広範囲の問題へと拡
がっているために,生態会計を用いて,こうした企業の活
動ごとに経済面,環境面,社会面およびこれらの間の関係
を把握しながら,サステナビリティ経営を行っていくこと
の必要性を指摘している(八木裕之(2013)
「生態会計のフ
レームワーク」河野正男・八木裕之・千葉貴律『サステナ
ビリティ社会のための生態会計入門』森山書店, 5 頁)。
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- -
図表 2 サステナビリティ経営戦略モデル例
ジの中で,SC における CSR 調達やそれに関わ
組みを導入していくことが重要となる。
るリスク管理を積極的に行っている 5 )。した
SIGMA(Sustainability Integrated Guidelines
がって,サステナビリティ経営のための戦略モ
for Management)プロジェクト(2003)6 ),Porter
デルについても,図表 1 に「社会面」を新たに
(1996)
・
(2006)7 )や Stead 等(2014)8 )の研究で
加えた図表 2 のような 3 次元のモデルになる。
は,環境経営やサステナビリティ経営に関する
すなわち,環境目標と,コンプライアンス(社
戦略の必要性や概念モデルが提示されている。
会適応)やフィランソロピー(社会貢献)など
といった社会的影響への対応によってもたらさ
れる効果(社会的効果)に関連する社会目標の
達成が,利益創出にも繋がる「Ⓑの状態」の領
域(灰色のボックス)になるような戦略を策定
すべきである。
このように,各企業が,環境経営も加味した
サステナビリティ経営のための戦略を策定し,
それを有効的かつ効率的に実現しながら,継続
的に運営していくためには,先述した SC を対
象とした「部分最適」や「全体最適」のための
マネジメントとその実施結果を評価していく仕
5 )最新の環境経営度調査結果は,日本経済新聞朝刊の
2015年 1 月25日の 7 面を参照されたい。
6 )The SIGMA Project(2003), THE SIGMA GUIDELINES PUTTING SUSTAINABLE DEVELOPMENT
INTO PRACTICE — A GUIDE FOR ORGANISATIONS,
pp.1‒80.
7 )Porter, M.E., and C.V.D. Linde.(1995), “Green and
Competitive : Ending the Stalemate”, Harvard Business
review, Vol. 73 Issue5, pp. 120‒134( 矢 内 裕 幸・ 上 田 亮 子
(1996)「ダウ・ケミカル,デュポン,3M などの欧米先進
企業が実践する 環境主義がつくる21世紀の競争優位」『ダ
イヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー』第21巻第 5
号,101‒118頁).Porter, M.E.,and M.R. Kramer.(2006),
“Strategy and Society The Link Between Competitive
Advantage and Corporate Social Responsibility,” Harvard
Business Review, Vol. 84 Issue12,pp. 78‒92(村井裕(2008)
「「受動的」では価値を創出できない 競争優位の CSR 戦略」
『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー』第33巻
第 1 号,36‒52頁).
8 )ジーン・ガーナ―・ステッド,W・エドワード・ステッ
ド(2014)
『サステナビリティ経営戦略 ─ 利益・環境・社会
をつなぐ未来型マネジメント』マグロウヒル・エデュケー
ション。
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サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
また,先述の SIGMA プロジェクト(2003)9 ),
に提示しているが,企業内外の組織(特に,
Schaltegger(2002)・(2003)・(2005) ,伊藤
SCM の基幹企業)が,両モデルを有機的に連
(2005)
・
(2006)
・
(2009) の研究では,Kaplan=
携し,マネジメントシステムとして実践的に利
10)
11)
Cooper(1996)の バ ラ ン ス・ ス コ ア カ ー ド
用していく方法までは検討されていない。
(Balanced Scorecard : BSC) を用いて,環境
そこで,本研究では,各企業が,図表 2 のモ
経営やサステナビリティ経営を対象としたBSC
デルに基づいて策定される経営戦略を実現して
12)
(Sustainability Balanced Scorecard : SBSC)の
い く サ ス テ ナ ビ リ テ ィ・ サ プ ラ イ チ ェ ー ン
検討がなされている。しかし,これらの研究で
(Sustainability Supply Chain : SSC)を対象と
は,サプライチェーン・マネジメント(Supply
したマネジメント(Sustainability Supply Chain
Chain management : SCM)の視点と手法や,
Management : SSCM)の概念と現状を検討す
そのマネジメントを対象とした BSC のモデル
るとともに,この検討を通じて,SSCM システ
化までは行われていない。こうした研究につい
ムの実践的展開方法も提案する。
ては,Cetinkaya 等(2011) や Morana(2013)
13)
14)
が,サステナビリティ・サプライチェーン・バ
ラ ン ス・ ス コ ア カ ー ド(Sustainability Supply
Ⅱ サステナビリティ・サプライチェーン・
マネジメントの概念
Chain Balanced Scorecard : SSC-BSC)を概念的
SCM とは,製品や食品などの生産メーカー
9 )The SIGMA Project(2003), The Sigma GuidelinesToolkit Sustainability Scorecard, pp. 1‒12.
10)Schaltegger の SBSC に関する研究論文については,
次のようなものがある。Figge, F., T. Hahn, S. Schaltegger,
and M. Wagner(2002), “The Sustainabilty Balanced
Scorecard ─Linking Sustainability Management to Business
Strategy,” Business Strategy and the Environment, Vol. 11,
No. 5 , pp. 269 ‒284 . Figge, F., T. Hahn, S. Schaltegger, and
M. Wagner(Eds.)
(2003), “The Sustainabilty Balanced
Scorecard as a Framework to Link Environmental Accounting with Strategic Management,” in Bennett, M., P. Rikhardson,
S. Schaltegger, Environmental Management Accounting:
Purpose and Progress, Kliwer Academic Publishers, pp.17‒
39. Moller, A., and S. Schaltegger(2005),“The Sustainability
Balanced Scorecard as a Framework for Eco-Efficiency
Analysis,” Journal of Industrial Ecology, Vol. 9, No. 4, pp. 73‒83.
11)伊藤嘉博(2005)
「環境配慮型業績評価(2)バランス
ト・スコアカードと環境パフォーマンス指標の統合─サス
テナビリティ・スコアカードの意義と可能性」
『環境管理』
第41巻第 5 号,64‒70頁。伊藤嘉博(2006)「戦略マネジメ
ントシステムとしての BSC の現状と展望~その基本構造の
普遍性と拡張性に関する検討~」
『管理会計学』第14巻 2
号,65‒75頁。伊藤嘉博(2009)「インタンジブルズとして
の CSR-- その「見える化」の意義と可能性」
『早稲田商学』
第418・419合併号,59‒91頁。
12)Kaplan, R.S., and D.P. Norton(1996), The Balanced
Scorecard: Translating Strategy into Acton, Harvard Business
School(吉川武男(1997)
『バランス・スコアカード─新し
い経営指標による企業改革─』生産性出版)
.
13)Cetinkaya, B., Cuthbertson, R., Ewer, G., Klaas-Wissing,
T., Piotrowicz, W., Tyssen, C.
(2011)
, Sustainable Supply Chain
Management Practical Ideas for Moving Towards Best
Practice, Springer.
14)Morana, J.(2013)
, Sustainable Supply Chain Management, Willy.
が,迅速に顧客ニーズに対応するために,サプ
ライヤーや顧客とのパートナーシップを築き,
原材料の調達から,製造,販売,輸送,サービ
ス(製品修理・改善など)といった一連の業務
プロセスである SC に流れる,あるいは SC で利
用される経営資源を,有効的かつ効率的に管理
していくための経営管理手法である15)。日本に
おいて,SCM の実践的な取組みは,1990年代
後半から注目され始めた。また,その際に,
SC の基軸企業となるのは,大手メーカー,特に,
製品や食品などの生産メーカーが主導する場合
が多いのが現状である16)。そのために,本研究
15)この定義は,次の文献を参考にしている。Handfield,
R.B., and E.L. Nichols. JR(1999), Introduction to Supply
chain Management, Prentice Hall, pp. 1‒5(新日本製鐵
(株)
EI 事業部(1999)『サプライチェーンマネジメント概論』
株式会社ピアソン・エデュケーション, 1‒ 6頁).
16)本章におけるサプライチェーン・マネジメント
(SCM)
の変遷やタイプに関する内容については,次の文献を参
考にしている。金藤正直・君島美葵子(2013)「サプライ
チェーン管理会計の拡張と変容」中村博之・高橋賢『管理
会計の変革─ 情報ニーズの拡張による理論と実務の進展』
中央経済社,113‒119頁。金藤正直(2014)「地域サプライ
チェーンとしての産業クラスターのマネジメント ─ サプラ
イチェーン・マネジメントの適用─ 」二神恭一・高山貢・
高橋賢『地域再生のための経営と会計─ 産業クラスターの
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- -
でも,大手メーカー主導型の SCM を対象に検
討していく。
また,同時期には,こうした ESCM の取組
みに加えて,SC 全体に関わる社会的影響への
SCM では,生産メーカーが,VC の主な目的
マネジメントも加味し,図表 2 のⒷの領域を目
でもある顧客価値の創造や企業利益の拡大のた
指していくサステナビリティ経営戦略のための
めに,90年代前半まで行われていた流通部門の
SSCM も必要とされてきた。SSC に関する国際
効率化や,供給企業と需要企業の懸隔を克服し
的なガイドラインを公表している国連グローバ
ながら,自社内プロセスの効率化を行うだけで
ル・コンパクト(United Nations Global Compact :
はなく,取引関係を持ったサプライヤー,物流
UNGC)・BSR(Business for Social Responsi-
業,卸・小売業などといった自社外プロセスも
bility)(2010)は,SSCM を「製品とサービス
加味して,SC 全体の物の流れを迅速化したり,
におけるライフサイクルを通じて,環境的・社
在庫(物の滞留)を必要最低限にしながらコス
会的・経済的影響を管理することであり,また
トダウンを追求していく取組みも必要とされ
良好なガバナンスの実践的取組みを奨励するこ
た。そのために,生産メーカーは,SC の構成
「製品とサービスの市場
と」17)と定義し,また,
企業との長期的な信頼関係を保持しながら,
化に関与するすべてのステークホルダーのため
個々の構成企業および SC 全体のコストダウン
の長期的な環境的・社会的・経済的な価値を創
を実現するとともに,相互に利益を享受し,拡
出し,保護し,高めていくこと」18)が,このマ
大化していく win-win 関係を構築していくため
ネジメントの目的であると提示している。した
のマネジメントを実施した。
がって,生産メーカーには,こうした SSCM の
しかし,2000年代に入り,90年代から地球環
取組みを通じて,SC 全体に関する環境保全お
境問題に対応していくための新たな環境法規制
よび社会的影響への対応とともに,良好なガバ
の遵守や,先述した ISO14001などのような環境
ナンスを維持しながら,顧客価値の創造,企業
関連規格の認証取得などといった国内・外にお
利益の拡大,環境マージンの向上,社会的効果
ける企業の取組みによって,これまでの SC に,
の創出を目的とする SCM が必要とされる。
消費者・利用業者から発生される不用品・処分
このように,SCM の対象範囲や視点は,各
品を廃棄・リサイクルするための新たなプロセ
企業が,経済・社会環境および顧客ニーズの変
スを加えて,徹底したマネジメントを行ってい
化や,新たな制度に対応することによって,少
く環境配慮型 SCM(ESCM)あるいはグリーン
しずつ拡張していることが理解できる。そこで,
SCM(GSCM)への取組みが必要され始めた。
SCM,ESCM,SSCM の 3 つを並べ,マネジメ
この時期から,生産メーカーは,収益基盤の強
ントの対象範囲と視点とともに,SC を構成し
化,不良在庫の削減,商品の品切れによる販売
ている各プロセスの活動内容とその事例も整理
機会損失の回避だけではなく,SC 全体で排出
すれば,図表 3 の A および B のように表すこと
される環境負荷物質とその抑制・削減などに要
ができる。なお,この図表の SC,ESC,SSC
する環境コストの削減と,環境マージン(環境
を構成している各プロセスは,VC を用いて表
保全効果や経済効果)の向上も加味しながら,
している。
図表 1 のⒶからⒸ,そして,Ⓑの状態を目指し
ていく経営戦略の策定とこの戦略に基づいた
SCM に注力していった。
可能性 ─ 』中央経済社,44‒47頁。
17)United Nations Global Compact and BSR(2010),
SUPPLY CHAIN SUSTAINABILITY A Practical Guide
for Continuous Improvement Second Edition, p.7.
18)Ibid., p.7.
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サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
図表 3 サプライチェーン,環境配慮型サプライチェーン,サステナビリティ・サプライチェーン
A マネジメントの対象範囲と視点の違い
サプライチェーン・マネジメント(SCM):
顧客価値の創造、企業利益の拡大
資材・部品
供給業者
製品生産
メーカー
物流業者
販売業者
消費者・
利用業者
廃棄・
リサイクル
業者
環境配慮型サプライチェーン・マネジメント(ESCM):
顧客価値の創造、企業利益の拡大、環境マージンの向上
サステナビリティ・サプライチェーン・マネジメント(SSCM):
顧客価値の創造、企業利益の拡大、環境マージンの向上、社会的効果の創出
(出典:金藤正直(2014)「地域サプライチェーンとしての産業クラスターのマネジメント─サプライ
チェーン・マネジメントの適用─」二神恭一・高山貢・高橋賢『地域再生のための経営と会計─産業ク
ラスターの可能性─』中央経済社,45頁の図表 ₁ ︲ ₃ ︲ ₂ に加筆修正して作成。)
活動
B A に示された各プロセスの活動内容とその事例19)
段 階
購買物流
製造
活 動
主
出荷物流
販売・
マーケティング
サービス
調達
支援活動
技術開発
人事・労務管理
全般管理
バリューチェーン
活動内容
環境配慮型バリューチェーン
サステナビリティバリューチェーン
活動例
活動例
活動例
製品の原材料を外部 原材料の計量,
保管, グリーン購入活動,環境に優 輸送の影響(排気ガス,渋滞,林道の
から受入れ,
貯蔵し, 在庫管理,供給業者 しい原材料の保管,在庫管理, 建設など)の管理
配分する活動
への返品など
取引先への指導・普及など
原材料を最終製品に
変換させる活動
機械の操作,包装, 公害対策や省資源対策などの
組 立 生 産 設 備 の 保 実施や廃棄物の発生抑制など
守,検査など
製品を収集し,保管
し,バイヤーに製品
を届けるまでの活動
最終製品の保管,梱
包,荷積,輸送など
製品・サービスの販
売促進や価格・品質
への調査を行う活動
広告宣伝,
市場調査, 環境配慮型製品の広告宣伝や
営業など
市場調査,環境報告書や環境
広報・広告の作成,社会との
共生のための取組みなど
マーケティングや広告(過大表現のな
い広告や子供向け広告など)への対
応,
価格設定(一部顧客への優遇価格,
反競争的価格,貧困層向けの価格政策
など)への対応,消費者情報やプライ
バシーへの対応など
製品の価値を高めた
り,維持するための
活動
製品の据付工事,修
理,整備など
自社製品の回収や再利用と
いったリサイクルの取組みなど
旧式製品の廃棄の管理,消耗品(プリ
ンターインクなど)の処理,消費者の
プライバシーの対応など
社内にない購買物の
機能を社外から調達
する活動
設備・装置の調達, 環境保全に優れた機械設備・
人材能力の調達など 装置や環境分野専門の人材な
どの調達など
調達とサプライチェーン(賄賂,児童
労働,紛争地産出ダイヤモンド,農家
への価格移転など)の管理,特定原材
料(毛皮)や天然資源の利用抑制など
製品の品質を高める
活動,生産工程を向
上させる活動など
製品設計,研究など
環境保全性に優れた製品や生
産技術 ・ 工程に関する研究開
発など
大学との連携強化,研究活動倫理
(動
物実験,遺伝子組み換え作物など)へ
の対応,製品の安全性の強化など
従業員の募集,
採用, 社員教育,研修,育
訓練などに関わる活 成など
動
社員への環境教育,訓練,資
格取得など
教育研修,安全な労働条件の設定,多
様性や差別対策への強化,健康管理・
福利厚生・報酬制度への対応,レイオ
フの方針など
価値活動全体を計
画・統制する活動
環境経営計画や目的・目標, サステナビリティ経営計画や目的・目
設備投資計画の設定など
標,経営活動の透明性確保,財務報告
の方式
(統合報告)
への対応など
経営計画,目標など
の設定など
温室効果ガスおよび廃棄物の排出削
減,生物多様性や自然環境への影響管
理,エネルギーと水の消費抑制,労働
者の安全や労使関係への対応など
梱包・包装資材の使用量削減, 使用する包装材とその廃棄の抑制,輸
梱包・包装方法の変更,材質 送の影響管理など
変更への取組みなど
(出典:金藤正直(2014)「地域サプライチェーンとしての産業クラスターのマネジメント─サプライ
チェーン・マネジメントの適用─」二神恭一・高山貢・高橋賢『地域再生のための経営と会計─産業ク
ラスターの可能性─』中央経済社,46頁の図表 ₁ ︲ ₃ ︲ ₃ を加筆修正して作成。)
19)この図表については,次の文献も参考にして作成し
ている。Porter, M.E.,and M.R. Kramer.(2006),op.cit.,” p.86
(村井裕(2008)
,前掲訳書,44頁の図表 1 )
.
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- -
そこで,次章では,日本企業の SSC を対象
の時点においても,他の取組み(特に,1 ,2 ,
に調査も行っている社団法人日本経済団体連合
4 , 5 の取組み)と比べてあまり進んでいない
会(以下,日本経団連)
(2009) と,一般財団
状況が理解できる。日本経団連は,こうした状
法人企業活力研究所(以下,企活研)(2015)
況を「CSR を推進する上での課題の 1 つ」22)で
が実施したアンケート調査の結果に基づいて,
あると指摘している。また,一般社団法人グ
図表 3 の A および B に示された取組みを実施し
ローバル・コンパクトジャパン・ネットワーク
ている SSCM の現状とその課題について明らか
サプライチェーン分科会(2013)も,この調査
にする。
結果に基づいて,日本経団連と同様の理解を示
20)
している23)。
Ⅲ サステナビリティ・サプライチェーンの
現状と課題
次に,「サプライチェーン・マネジメント」
の調査のうち,「サプライチェーンやバリュー
チェーンにおいて実施している,CSR 推進の
1 .社団法人日本経済団体連合会の調査結果
ための取り組みを行っている(複数回答)」と
日本経団連の企業行動委員会は,2009年 5 月
から 7 月の 2 カ月間に,日本経団連企業1,297
いった内容の調査結果は,図表 5 のとおりであ
る。また,この調査に関連して,図表 6 では,
社を対象に『CSR(企業の社会的責任)に関す
「サプライヤーに求める具体的要件(単一回
るアンケート調査結果』を実施している21)。回
答: 1 ~ 8 の各項目に設けられた①から③のう
答企業数は,437 社(回 答率 33.7%) で ある。
ち 1 つ選んで回答)」に関する調査結果が示さ
本節では,この調査の中で,SSC に関係する結
れている。
図表 5 の調査結果では,「 6 .サプライヤー
果を中心に取り上げ,その現状を明らかにして
の CSR への取り組みを支援している」という
いく。
まず,
「CSR への取り組み状況」の調査のうち,
回答が,(「 7 .その他」を除いた)他の質問項
「2005年当時と比べて,現在の自社の CSR への
目の回答数と比べて最も少ないことが明らかに
取り組み状況をどのように判断されますか(単
されている。こうした結果から,サプライヤー
一回答: 1 ~ 7 の各項目に設けられた①から⑤
との連携を図り,SCM に関連する何らかの取
のうち 1 つ選んで回答)」という調査結果は,
組みを行っているが,CSR への支援も含めて
図表 4 のとおりである。
徹底した取組みまでは十分に行われていないこ
この調査結果から,
「 3 .サプライチェーン・
とが理解できる。
マネジメント」の取組みは,①および②の回答
また,図表 6 の調査結果においては,この当
企業数が約 3 割となっている。そのために,こ
時にすでに存在していた ISO 規格(品質マネジ
メントシステム(ISO9000シリーズ),情報セ
20)2012年 3 月30日には,社団法人から一般社団法人に
法人格の変更がなされている。
21)社団法人日本経済団体連合会(2009)
『CSR(企業の
社会的責任)に関するアンケート調査結果』1‒43頁。この
調査の目的については,次の 2 つが示されている(同報告
書, 1 頁)
。
(1)CSR が現在の企業経営の中で,どのように位置づけ
られ,実践されているかを明らかにするとともに,推進上
の課題を整理・分析する。
(2)2008 年秋以降の経営環境の急激な変化の中で,各
社の取り組みにどのような変化が見られるかについても調
査を行う。
キュリティマネジメントシステム(ISO27001),
環境マネジメントシステム(ISO14000シリー
ズ)に関する取組み,つまり, 1 , 3 , 6 の質
問項目に関する取組み)をサプライヤーに対し
22)同報告書,10頁。
23)一般社団法人グローバル・コンパクトジャパン・
ネットワーク サプライチェーン分科会(2013)『サプラ
イチェーンにおける望ましい CSR 活動のあり方─ サプライ
チェーン分科会からの提案─ 』, 5 頁。
60
- -
サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
図表 4 2005年と比較した CSR の取組状況の結果
0
20
1.方針・戦略の明確化
1
(6社)
9
(38社)
16
(69社)
2.CSR推進体制の整備
2
(7社)
11
(45社)
16
(68社)
40
80
100(%)
34
(114社)
40
(169社)
12
(51社)
19
(78社)
21
(85社)
3.サプライチェーン・マネジメント
60
①ほとんど取り組んで
いない
36
(154社)
36
(151社)
②あまり進んでいない
39
(159社)
9
(38社)
1(6社)
4.従業員などへの教育・訓練
8
(32社)
19
(81社)
5.CSRに関する情報開示
6.
ステークホルダーとの対話や協働
2
(9社)
9
(38社)
15
(66社)
3
(13社)
41
(176社)
32
(137社)
19
(79社)
24
(102社)
10
(44社)
7.マーケティングとの連携
(関連する製品・サービスの開発など)
③2005年度と同様に
十分取り組んでいる
54
(229社)
18
(78社)
④ある程度進んだ
44
(187社)
⑤かなり進んだ
1(22社)
20
(83社)
27
(114社)
36
(152社)
12
(51社)
※%は,各項目への回答企業数に対する回答社数の割合
(出典:社団法人日本経済団体連合会(2009)『CSR(企業の社会的責任)に関するアンケート調査結果』
10頁の図を加筆修正して作成。)
図表 5 サプライチェーン・マネジメントの取組状況の結果
0
50
100
1.調達ガイドラインなどとして明文化している
129
39%
3.サプライヤーからのヒヤリングや意見交換を実施
している
202
62%
4.サプライヤーに対する教育・研修を実施している
38%
5.サプライヤーに対する監査を実施している
22%
13%
125
108
33%
6.サプライヤーのCSRへの取り組みを支援している
250(社)
200
212
65%
2.契約条項に盛り込んでいる
7.その他
150
72
42
※%は,本設問への回答企業数〔327社〕に対する回答社数の割合
(出典:社団法人日本経済団体連合会(2009)『CSR(企業の社会的責任)に関するアンケート調査結果』
18頁の図を加筆修正して作成。)
61
- -
図表 6 サプライヤーに求める具体的要件
0
1.製品・サービスの安全・品質
50
11
(4%)
250
300(社)
281
(86%)
192
(66%)
86
(30%)
66
(32%)
107
(51%)
35
(17%)
67
(33%)
101
(49%)
37
(18%)
5.人権への配慮
110
(37%)
10
(3%)
①ある程度の強制力
をもつ分野
②考え方の提示に留
めている分野
175
(59%)
17
(12%)
7.地域貢献を含む社会貢献
8.その他
200
71
(44%)
70
(43%)
20
(12%)
4.労働慣行
6.環境
150
39
(12%)
7 2%)
(
2.消費者対応
3.個人情報保護、情報セキュリティ
100
87
(61%)
39
(27%)
③導入を検討している
分野
18
(55%)
13
(39%)
(
2 6%)
※%は,各項目への回答企業数に対する回答社数の割合
(出典:社団法人日本経済団体連合会(2009)『CSR(企業の社会的責任)に関するアンケート調査結果』
19頁の図を加筆修正して作成。)
て課している。しかし,
(「 8 .その他」を除く)
な課題として指摘されている」24),といった
他の質問項目に関する取組みについては,回答
SCM を実践的に取り組んでいくための課題を
数が決して多くないことから,自発的な活動を
指摘している。
推進していることが考えられる。
以上の調査結果から,各企業は,SSCM の取
2 .一般財団法人企業活力研究所の調査結果
組みを行っているが,企業間で徹底して取り組
企活研は,一部上場企業(海外売上比率15%
んでいく体制までは十分に構築されていないこ
以上)1,000社を対象に,2014年の11月から12
とが考えられる。日本経団連も,図表 5 と図表
月まで『海外拠点における CSR のマネジメン
6 の調査結果から,「サプライヤーの社数が多
トに関するアンケート調査』を実施した25)。な
いことや業種・業態が多岐に渡ること,国際的
なひろがりをみせていることから,一律的な対
応が難しいことが挙げられている。監査につい
ては,現状把握やモニタリングの重要性を感じ
ながらも,手法の標準化が難しいことが指摘さ
れている。また,対象とするサプライヤーの範
囲について,どこまで遡るかについても,重要
24)社団法人日本経済団体連合会(2009),前掲報告書,
20頁。
25)一般財団法人企業活力研究所(2015)
『企業のグロー
バル展開と CSR に関する調査研究報告書』,1‒241頁。この
調査の目的については,次の 3 つが示されている(同報告
書, 1 頁)。
(1)本社と海外拠点の関係性に着目し,海外拠点におけ
る CSR のマネジメントの現状と課題を把握し,今後の改
善点を提示する。
62
- -
サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
図表 7 海外拠点におけるサプライチェーン・バリューチェーンの CSR 対応方針の策定状況(%)
定められている
7.8
17.6
今は定められていないが、1年以内
に定める予定である
42.2
今は定められておらず、1年以内に
定める予定もない
その他
24.5
不明
7.8
(出典:一般財団法人企業活力研究所(2015)『企業のグローバル展開と CSR に関する調査研究報告書』,
40頁の図を加筆修正して作成。)
お,回答企業数は,102社(回答率10.2%,約 9
また,図表 8 では,図表 7 において CSR 対
割が製造業)である 。ここでも,先ほどの日
応方針を定めていると回答した約 4 割の企業
本経団連のアンケート調査と同じように,SSC
(ここでは42社が対象)が,SC のどのプロセス
26)
までを対象としているか,そして,図表 9 では,
に関する調査結果を中心に取り上げていく。
まず,回答企業数102社のうち,「海外拠点に
そのプロセスにどのような取組みをして CSR
おけるサプライチェーン・バリューチェーンの
対応を促しているのか,という調査結果が示さ
CSR 対応方針」を定めている企業に関する調
れている(両調査ともに複数回答)。
査結果(単一回答)は,図表 7 のとおりである。
図表 8 と図表 9 の調査結果から,CSR 対応
図表 7 の調査結果から,現時点では,約 4 割
方針の対象範囲は SC 全体ではあるが,その中
の企業が SSC のための方針を策定している。
でも「一次サプライヤーの原材料・部品調達先」
しかし, 1 年以内に策定する企業も含めれば,
が,その方針のほとんどに含まれていることが
対象企業数の半分が SSC に取り組んでいると
理解できる。また,その対応を促す取組みにつ
いては,「本社がガイドライン,マニュアル等
言えよう。
を作成している」が最も多いことから,このガ
(2)日本企業によるサプライチェーン・バリューチェー
ン上の CSR の現状と課題を,特に海外を中心に把握し,今
後の改善点を提示する。
(3)日本企業の海外進出とともに,CSR においても日本
企業としての特徴や,欧米企業等との違いを感じているか
どうかを把握し,その活かし方を提示する。
26)この調査での「海外拠点」については,
「進出先によっ
て実態に大きな差があることもあり,ここでは焦点を絞る
観点から日本企業の進出が最近増加しつつあり,CSR 上の
課題も多いと思われる「アジア」を対象とした。具体的に
は「アジアの代表的な拠点」を 1 社につき 1 拠点,任意に
特定することを依頼し,当該拠点に関する回答を得た。回
答企業102社のうち,中国の拠点について回答した企業が
45社に上った」と示されている(同報告書,18頁)
。
イドラインやマニュアルを用いて,SC に関わ
る企業に CSR 対応を支援していることが考え
られる。
次に,こうした方針に基づいて SSC に取り
組んでいくための困難な点とその改善策に関す
る調査結果は,図表10と図表11のとおりである
(両調査ともに102社対象とし,複数回答)。
図表10の結果から,自社と取引関係にあるサ
プライヤーや販売先の関係構築を行う場合に,
63
- -
図表 8 CSR 対応方針のサプライチェーン・バリューチェーンの対象範囲
0
20
40
外注労働者
60
100 (%)
80
33.3
建設・土木工事などの請負、外部委託先
26.2
物流の請負、外部委託先
33.3
情報システムなどの外部委託先
21.4
コンサルタントなどの外部委託先
19.0
顧客、消費者
11.9
一次サプライヤーの原材料・部品調達先
97.6
二次サプライヤーの原材料・部品調達先
14.3
三次サプライヤー以降の原材料・部品調達先
11.9
その他
7.1
(出典:一般財団法人企業活力研究所(2015)『企業のグローバル展開と CSR に関する調査研究報告書』,
42頁の図をもとに筆者作成。)
図表 9 サプライチェーン・バリューチェーンにおいて CSR 対応を促す取組み
0
20
40
本社がガイドライン、マニュアルなどを作成して
いる
23.8
サプライチェーン・バリューチェーン内の他組織
を対象とした説明会を実施している
その他
100 (%)
38.1
サプライチェーン・バリューチェーン内の他組織
に対しCSR監査を定期的に実施している
特に実施していない
80
81.0
海外拠点向けのガイドライン、マニュアルなどを
作成している
サプライチェーン・バリューチェーン内の他組織
を対象とした研修を実施している
60
21.4
9.5
4.8
11.9
(出典:一般財団法人企業活力研究所(2015)『企業のグローバル展開と CSR に関する調査研究報告書』,
40頁の図をもとに筆者作成。)
64
- -
サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
図表10 サプライチェーン・バリューチェーンでの CSR 活動の困難な点
0
5
10
15
20
25
30
35
40
自社と、サプライヤーや販売先との関係づくりが、
日常的で密なコミュニケーションが容易な国内と海
外ではそもそも難しい
45 (%)
41.2
海外でのサプライヤーや販売先は、欧米・アジア
企業との取引も行っているケースが多く、自社から
の依頼や要請が相対的に通りにくい土壌がある
22.5
その他
19.6
(出典:一般財団法人企業活力研究所(2015)『企業のグローバル展開と CSR に関する調査研究報告書』,
42頁の図をもとに筆者作成。)
図表11 図表10の改善策
0
10
20
30
40
経営全体として関心を高め、経営理念の共有・周知徹底
を通じて本社の調達部門など関連部門のCSRに対する理
解を促す
31.4
顧客に対する自社の販売方針の説明を強化する
17.6
サプライヤー調査について現地NPOなどとの連携を強化
する
その他
70 (%)
34.3
取引条件としてCSRイシューへの対応を厳しく求める
サプライヤーによるCSR関連の外部認証取得を支援する
60
59.8
サプライヤーへの直接訪問回数を増やすなどして、CSR
推進の意義をさらに共有する
現状で十分と考えている
50
13.7
7.8
4.9
9.8
(出典:一般財団法人企業活力研究所(2015)『企業のグローバル展開と CSR に関する調査研究報告書』,
43頁の図をもとに筆者作成。)
65
- -
日常的なコミュニケーションが日本では容易で
要性を十分に認識し,その方針の策定も行って
あるが,海外では難しい状況にある,という点
いる。しかし,海外拠点も加味したマネジメン
が,SSC の取組む場合において大きな課題に
ト体制,SC の対象範囲,取引先の習慣や法規
なっている。その他に,海外では,欧米やアジ
制の違いによる CSR への意識レベルや取組内
アの企業との取引を日常的に行っているため
容の質のばらつきなどが,SSCM を推進してい
に,自社からの依頼や要請が相対的に通りにく
くための課題になっていると考えられる。
い土壌である,という点も課題とされている。
また,図表11には,こうした課題に対する改
これらに関係する原因については,回答企業数
善策が提示されているが,これらの改善策とそ
が比較的多い「その他」の中から取り上げれば,
の課題との直接的な関係が明らかではない。そ
「海外拠点で CSR 活動の推進体制や方針が十分
のために,SSC の基幹企業である生産メーカー
ではない,習慣や法規制の違うこと,CSR の
が,その改善策に基づいて課題を 1 つずつ解決
重視度のばらつきがある,サプライヤーとのコ
し,SSC を実施することは容易ではないと考え
ミュニケーションを現地拠点から実施すべきで
られる。したがって,生産メーカーは,先述の
ある(地元での良好な関係を構築する)」27)など
ISO 規格のように,海外拠点も含めた SSC を統
が考えらえる。
括できるマネジメントが実現できる国際的なガ
図表10のこうした課題に対する改善策につい
イドライン,規格,基準などを参考にしながら,
ては,図表11に示されているように,
「経営全
また,図表11の改善策も加味して,SSC を組織
体として関心を高め,経営理念の共有・周知徹
的に取り組めるマネジメントシステムを導入す
底を通じて本社の調達部門等関連部門の CSR
べきである。
に対する理解を促す」,「サプライヤーへの直接
そこで,次章では,国内・外で適用されてい
訪問回数を増やすなどして,CSR 推進の意義
る SSC の取組みに関するガイドラインなどに
を 更 に 共 有 す る 」,
「 取 引 条 件 と し て CSR イ
基づいて,生産メーカーが実施すべき SSCM の
シューへの対応を厳しく求める」といった取組
実践的展開方法を検討する。
みに注力すべきである,という結果になってい
る。しかし,これらの改善策が,図表10の課題
を本質的に改善できる策として考えていいの
Ⅳ サステナビリティ・サプライチェーン・
マネジメントの実践的展開方法
か,という点には疑問が残る。企活研のこうし
国 内・ 外 の SSC に 関 す る 動 き に つ い て は,
た結果からも,日本経団連の調査結果と同じよ
うに,日本企業には,SCCM に取り組んでいく
企活研によれば,大企業を中心として,サプラ
徹底した体制が構築されていないことが考えら
イヤーからの資材などの調達指針に,労働,人
れる。
権,環境,公正な事業慣行などの内容を盛り込
んでいること(CSR 調達),また,対象の拡大
3 . 2 つの調査結果に基づくサステナビリティ・
サプライチェーンの現状と課題
や要求水準の高度化とともに,個別企業,業界,
地域によって,統一された方針や条件(統一基
日本経団連と企活研の 2 つのアンケート調査
準)を利用していることが示されている28)。な
結果に基づいて,まず,SSC の取組状況につい
お, この統一基準は, 業界団体, 国際機関,
て整理すれば,日本企業は,SSC の取組みの重
NGO,政府が,OECD 多国籍企業ガイドライン,
27)同報告書,221‒222頁。
28)同報告書, 7 頁。
66
- -
サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
UNGC,ISO26000などといった CSR に関する
モデルを実践的に導入し,有効的かつ効率的な
国際的なガイドラインや規格に基づいて作成
マネジメントシステムとして展開していく方法
し,公表されている。
を検討する。
そこで,本章では,このガイドラインや規格
のうち,SSC の取組方法に関するガイドライン
1 .国連グローバル・コンパクトのマネジメン
トモデル
を公表している UNGC(2010)のマネジメント
UNGC は,2010年に,BSR と協働することに
モデルを取り上げ,また,生産メーカーがこの
図表12 国連グローバル・コンパクト10原則とサステナビリティ・サプライチェーンとの関係
10 原 則
サステナビリティ・サプライチェーンとの関係
人権
原則 1 :事業(ビジネス)では,国際的に
宣言されている人権の保護を支持し,尊重
し,
(そして)
企業は,人権を尊重する責任を持っている。基礎となるその責任は,他人の権利を侵害したり,
発生するすべての悪影響に対応することではない。2011年 6 月に,国連の人権理事会で承認
されたビジネスと人権(基本原則)のガイドでは,企業は,この責任に対応していくための世
界的に権威の基準を提供している。このガイドには,企業が,人権に対するデュー・デリジェ
ンスのプロセスを考慮に入れて,その場所の規模や環境にとってふさわしい方針と(サプラ
イチェーン)プロセスを持つべきことが示されている。また,国連グローバル・コンパクト
の原則 1 及び 2 に記載されている人権を尊重していくための企業責任に関する内容が提供さ
れている。換言すれば,国連グローバル・コンパクトの原則 1 に示されている人権を尊重す
る企業責任は,このガイドに説明されている内容と同じものである。また,このガイドには,
労働者の人権の分野を含む人権も含まれることに留意すべきである。したがって,人権を尊
重する責任については,国連グローバル・コンパクトの原則 1 から 6 原則が適用される。
原則 2 :自らが人権侵害に加担しないよう
に確保していくべきである。
労働
原則 3 :事業では,組合結成の自由と団体
交渉の権利において実効的な承認を支持
し,
原則 4 :さまざまな形態の強制労働
の撤廃を支持し,
さらに,事業では,コアとなる事業活動,戦略的社会的投資,慈善活動,公共政策の関与,
擁護(弁護)のパートナーシップに基づいて,人権を支援し,促進していく手順をとっていけ
ば,人権に関する障害を乗り越えていくことができる。そのようにすることがより良い事業
を展開することができる。また,ここでは,権利者のための救済策を提供するための重要な
支援ツールとして,運用レベルにおいて苦情処理メカニズムを構築すべきである。
事業所,工場,農場,鉱山などの天然資源を採取する現場の労働条件は,多くの場合,国際
規格と国家の規制要件を大幅に下まわれば,深刻な人権侵害につながる可能性がある。こう
原則 5 :児童労働の実効的な廃止を支持し, した状況において,サプライチェーン事業では,強制労働・児童労働の廃止や差別をなくし,
また,サプライヤーは,自由選択権と団体交渉の尊重を確保することも含め,国際労働基準
(そして)
を尊重すべきである。
原則 6 :雇用と職業における差別の撤廃を
また,多くの国の労働者は,過酷な労働,過度の労働時間,賃金未払い,雇用者に対する待
支持していくべきである。
遇の低下や移動の禁止による扱いを受けている。こうした人権侵害を回避していくためには,
この事業での移動の自由,非人道的な扱いからの自由,同等の労働に対する同等の報酬を受
ける権利,休息する権利などを侵害しないように努めていくべきである。安全で,しかも健
康的な労働条件で働くといったすべての人々の権利は,誰であっても非常に重要なものであ
る。
環境
原則 7 :事業では,環境上の課題に対する
予防原則的アプローチを支持し,
原則 8 :環境へのより大きな責任を率先し
て引き受け,
(そして)
原則 9 :環境に優しい技術の開発と普及を
推進すべきである。
腐敗防止
原則10:事業は,強要と贈収賄を含むあら
ゆる形態の腐敗の防止に取り組むべきであ
る。
サプライチェーンから生じる環境影響は,特に,環境規制が緩く,また,価格への圧力が顕
著で,自然資源が豊富な(または豊富にあることが認識されている)地域では,多くの場合,
深刻な状況である。こうした影響は,高い温室効果ガスの排出量やエネルギー使用だけでは
なく,有害廃棄物,水質汚染,生物多様性の損失,森林伐採・減少,生態系への長期損傷,
水不足,有害大気排出物も含まれる。企業は,サプライヤーと連携し,環境へのより大きな
責任とクリーン技術の利用を促進し,予防的なアプローチを適用することによって,環境影
響を改善していくことが必要である。
サプライチェーンにおける顕著な腐敗リスクが,不正な調達と政府の汚職行為に関与する第
三者(サプライヤーなど)の取組みに存在している。この不正行為の直接コストは,製品の品
質を含めてかなりの金額であるが,多くの場合、法的責任や企業の評判へのダメージのよう
な問題を取り扱う管理者の時間や経営資源に関連する間接コストと比べると,その額はあま
り大きくない(つまり,間接コストの方が膨大になる)。意味がある腐敗防止プログラムを通
じてサプライチェーンに関わる企業は,製品の品質を改善し,不正やそれに関連するコスト
を削減し,誠実なビジネスのための彼らの評判を高め,ビジネスのための環境を改善し,そ
して,将来の成長のためのより良い持続可能なプラットフォームを作り上げることができる。
(出典:United Nations Global Compact and BSR
(2010), SUPPLY CHAIN SUSTAINABILITY A Practical
Guide for Continuous Improvement Second Edition, pp.8‒9を加筆修正して作成。)
67
- -
図表13 グローバル・コンパクト・マネジメントモデル
・コミット(commit )
□事業(ビジネス)の背景と作用因を理解することによって、
その事業ケースを展開させること
□ SSCのためのビジョンと目的を設定すること
□ SSCの持続可能な関心事項を設定すること
・ 評価(assess)
□人、環境、ガバナンスに対して不利な影響をもたらすリスク
(現実的であり、また、潜在的な大きなリスク)が存在してい
る主要なエリアをマネジメント適用(対象)範囲として決定し
ていくこと
・定義(define)
□ SSCの業績改善のために、サプライヤーに対して関心事項を
伝達し、従事させること
・ 実施( implement)
□ SSCの基幹企業が、自社内組織の役割や責任を明確にする
とともに、サプライヤーとの連携も行うこと
□ SSCの取組みの支援のためにも、産業界との協働やステイク
ホルダーとのパートナシップを行うこと
・ 測定(measure)と情報伝達(communicate)
□ SSCの目標(goals)に対する業績を把握し、その結果を企業組
織内外の関係者に対して報告して、透明性を確保すること
(出典:United Nations Global Compact and BSR(2010), SUPPLY CHAIN SUSTAINABILITY
A Practical Guide for Continuous Improvement Second Edition, p.5 を加筆修正して作成。)
よって,図表12に示されている国連グローバル・
まず,
「コミット(commit)」のステップでは,
コンパクトの10原則に基づくSSC を展開させる
図表14のように,SSC をビジネスとして取り組
取組みを推進していくための『サプライチェー
むことの意義を明らかにしている。UNGCでは,
ンの持続可能性:継続的改善のための実践ガ
SSC を「事業(ビジネス)」として展開していく
29)
イド』 を作成し,公表している。この図表
ためには,当該事業に必要とされるガバナンス
には,国連グローバル・コンパクトに示された
(governance),マネジメント(management),
人権(Human Rights), 労 働(Labour), 環 境
透明性(transparency)を基礎として,持続可能
(Environment),腐敗防止(Anti-Corruption)
な事業に関連するリスク(sustainability-related
の各原則を SSC と有機的に結びつけて,マネ
risks) へ の 対 応, 持 続 可 能 な 事 業 の 生 産 性
ジメントを展開していくための方向性が示され
(sustainability-driven productivity) の 向 上,
ている。
そして,持続可能な事業において有利な成長
また,このガイドには,図表12に示されてい
(sustainability-advanced growth)を目指して
る SSC を有効的かつ効率的に実施していくた
いく取組みが必要であることが提示されてい
めのマネジメントモデルとして,図表13の「グ
る。これらの取組みを長期的な成功に導いてい
ローバル・コンパクト・マネジメントモデル
くためには,先述した図表 2 のような経営戦略
(Global Compact Management Model :
の方向性を決定していく「ビジョン(vision)」
GCMM)
」の導入を推奨している。
と「目的(objectives)」,SSC へのステイクホル
ダーのさまざまな意見や要望といった関心事項
29)United Nations Global Compact and BSR(2010),
SUPPLY CHAIN SUSTAINABILITY APractical Guide
for Continuous Improvement Second Edition,pp.1‒73.
(expectations)を設定していくための基礎と
なり,事業活動やエンゲージメントの枠組みと
68
- -
サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
図表14 サステナビリティ・サプライチェーンをビジネスとして取り組むことの意義
サステナビリティ・サプライチェーン
のためのビジネスの作用因
持続可能な事業に関連するリスク
□事業運営のための社会的ライセンス
を維持すること
□現在明らかな、また今後明らかになる
法的要求事項と報告のための要求に対
応すること
□環境面、社会面、経済面に影響をもた
らすビジネスの混乱を最小限にすること
持続可能な事業の生産性
□原材料、エネルギー、物流
のためのコストを減らすこと
持続可能な事業において
有利な成長
□労働生産性を高めること
□変化し続ける顧客やビジ
ネスパートナーの要求に対
応すること
□サプライチェーンの効率性
を上げること
□市場の変化を取り入れる
こと
□企業の評判やブランド価値を保護す
ること:投資家やステイクホルダーの関
心事項に対応すること
ガバナンス、マネジメント、透明性
(出典:United Nations Global Compact and BSR(2010), SUPPLY CHAIN SUSTAINABILITY
A Practical Guide for Continuous Improvement Second Edition, p.15.)
して利用される「行動規範(codes of conduct)」
動を行っている企業とその企業に関するリスク
を策定していくことの必要性も示されている。
の事業および影響度をマッピングする方法を推
次に,
「評価(assess)」のステップでは,SSC
奨している31)。
の構成企業を選別するとともに,その中で,取
続いて,「定義(define)」のステップは,企
引上重要度が高い(優先順位が高い)企業だけ
業が SSC の業績向上を目指していくために,
ではなく,たとえば,資材調達にあたって,図
サプライヤーを含めた事業関係者(SSC の構成
表 3 の B のサステナビリティ・バリューチェー
企業)とのコミュニケーションや話し合いを通
ン内の「調達」活動にも示されている紛争鉱物
じて,先述した行動規範を用いてステイクホル
資源
30)
などのように,サプライヤーとの取引上
ダーの関心事項を共有したり,持続可能な事業
リスクが生じるなどといった SSC でのリスク
の業績向上への意識や,モニタリングおよび監
も把握し,マネジメントの対象範囲を明確にし
査などによってマネジメントの徹底した評価を
ていくことが必要とされる。なお,UNGC は,
行っていくことの必要性を浸透させていく段階
SSC の取組みにおいて,取引上重要度の高い企
である。このステップに関連して,次の「実施
業やリスクの高い企業を選別していくために,
(implement)」のステップでは,SSC の基軸企
自社の製品・サービスに関係している経営資源
や環境面・社会面の情報を用いて,鍵となる活
30)紛争鉱物資源と SSC のリスクに関しては,次の文献
を参照されたい。KPMG・有限責任あずさ監査法人(2013)
『紛争鉱物規制で変わるサプライチェーン・リスクマネジ
メント─ 人権問題とグローバル CSR 調達 ─ 』東洋経済新報
社。
31)GCMM では,縦軸に「リスクの可能性(Risk Likelihood)」,横軸に「人,環境,ガバナンスに及ぼすリスクの
影響 / 重要度(Risk Impact/Severity on People, Environment and Governance)」から構成される図表に SC 上のリ
スク事象を描き入れ,優先順位をつけていく方法を推奨し
ている(United Nations Global Compact and BSR(2010),
op.cit., pp.33‒34)。
69
- -
業となる企業(つまり,生産メーカー)が,ガ
Electronics and Information Technology Indus-
バナンスを十分に効かせながら,自社内での役
tries Association : JEITA)資材委員会の『サプ
割や責任を決定していくとともに,図表 3 の A
ライチェーン CSR 推進ガイドブック』34)といっ
および B に示したような組織内の部門間調整だ
た規格やガイドラインにも示されているため
けではなく,SSC の構成企業,産業界,他のス
に,日本企業は,これらの規格やガイドライン
テイクホルダーと一緒に組織間での協働体系を
を用いて,自社独自の取組方針などを作成して
構築して,マネジメントへの取組みを行ってい
いる。
CSR 調達の必要性と SSC の関係については,
くことが必要とされる。
そして最後に,
「測定(measure)と情報伝達
(communicate)
」のステップでは,SSC におけ
JEITA 資材委員会(2006)が,先述のガイドブッ
クの中で,「サプライチェーン・マネジメント
る個別企業(自社内)および企業間(自社内外)
の観点では,その商品がどのように作られ販売
の業績に関する目標(goals)が設定され,実
されるのかといった事業プロセス全体に対する
施後その目標に照らしながら業績評価が行われ
消費者の関心の高まりに応えるため,企業は自
る。 ま た, そ の 評 価 結 果 を SSC の 構 成 企 業,
社の活動において CSR を推進するだけでなく,
産業界,他のステイクホルダーに対して,持続
そのサプライヤーの CSR に配慮することも求
可能性報告書あるいは CSR 報告書や統合報告
められているといえます。その意味において,
書などを用いて情報開示し,自社が行っている
開発 ─生産─販売─ サービス等からなる一連の
SSCM の取組みへの透明性を確保していくこと
事業プロセスに参画するすべての企業が協力し
が必要とされる。
て社会の要請に応えていってこそ,サプライ
チェーン全体の相互繁栄が実現できるものと考
2 .グローバル・コンパクト・マネジメントモ
デルの実践的展開
えます」35)と述べている。また,一般社団法人
グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワー
日本企業での SSC の 取組 状況 につ いて は,
クサプライチェーン分科会(2013)も,
「バイヤー
第 3 章のアンケート調査で明らかにしたが,そ
とサプライヤーが協働して,品質・価格・環境・
の中には,図表 3 の A に示された「資材・部
人権などを配慮して製品・部品を改善すること
品供給業者」であるサプライヤーと「製品生産
に加え,リスクの低減とお互いの企業価値の向
メーカー」以降のバイヤーが協働して,従来の
上・競争力向上を図ります。その結果,安全・
品質,価格,納期(QCD)に,図表12に示され
安心なよりよい社会を享受するトリプルウィン
た UNGC の10原則のような視点も加味した調
調達」36)の取組みを推進している。
達活動を意味する「CSR 調達」の取組みが示さ
れている。また,この取組みについては,現在,
しかし,SSC の基軸企業である生産メーカー
が,GCMM を活かした SSCM を実践的に展開
UNGCとISO26000以外に,Social Accountability
していく場合には,サプライヤーとの CSR 調
International(SAI)の SA800032),EICC(Elec-
達を対象とした購買(資材)管理のみに注力す
tronic Industry Citizenship Coalition)の行動
るだけではなく,サプライヤー以外の他のプロ
規範 ,社団法人電子情報技術産業協会(Japan
セスが行う生産,物流,販売,廃棄・リサイク
32)Social Accountability International(SAI)
(2014),
Social Accountability 8000 International Standard, pp.1‒16.
33)Electronic Industry Citizenship Coalition(EICC)
(2014),Electronic Industry Citizenship CoalitionR Code
of Conduct Version5.0, pp.1‒13.
34)社団法人電子情報技術産業協会(2006)『サプライ
チェーン CSR 推進ガイドブック【CSR 項目の解説】』1‒15頁。
35)同書,ⅰ頁。
36)一般社団法人グローバル・コンパクトジャパン・ネッ
トワーク サプライチェーン分科会(2013),前掲書,6 頁。
33)
70
- -
サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
ルに関する経営資源のマネジメントも同列に考
サプライヤーのサプライヤー,競合他社などと
えていくことが必要である 。それによって,
戦略的に連携(協働)していく方法も提示して
SSC を図表 2 に示されたⒷの状態に近づけるこ
いる 41)。このマッピングの方法については,
とができ,また,「部分最適」や「全体最適」
GCMM での「評価」のステップに応用し,また,
も実現できると考えられる。
間接的な組織と連携していく方法は,「実施」
37)
そこで,生産メーカーが,GCMM に基づく
のステップに適用すべきであろう。
GCMM では,こうした取組みの業績評価は,
SSCM の展開方法においては,Senge(2010)
が提案している「イノベーティブでありながら
「測定」や「コミュニケーション」のステップ
─すなわち,製品やプロセスやビジネスモデル
で行うべきと述べられているが,その具体的な
を組み直すスキルとビジョンを備えていながら
方法までは十分に提示されていない。SSCM の
─自社のビジネスを取り巻く状況も理解してい
業績評価のためのモニタリングツールについて
る社員」 であるリーダーをコア人材として配
は,Cetinkaya(2011),Piotrowicz(2011),
置させ,リーダーシップを発揮させながらマネ
Morana(2013)が,BSC を応用した SSC-BSC を
ジメントしていくべきであろう。なお,このリー
利用すべきことを推奨している42)。
38)
ダーには,技術や経営,また,プロセスや企業
BSC は,一般的に,SWOT 分析に基づいて
文化に至るまでのイノベーションを考案した
策定された「ビジョンと戦略」を実現していく
り,SC のネットワークを構築する能力と組織
ために,図表15の A に示された「財務」,
「顧客」,
の機微に関する知識 ,といった総合的なマネ
「業務プロセス(内部プロセス)」,「人材と変革
ジメント能力(マルチな能力)が要求される。
(学習と成長)」といった 4 つの視点を設定し,
生産メーカーは,GCMM での「コミット」か
これらをバランスさせながら,組織全体に業績
ら「コミュニケーション」までのステップにお
評価を促していく戦略的マネジメントシステム
いて,自社も含めた SC の構成企業を厳しく指
である43)。Cetinkaya(2011)は,この図表15の A
揮・命令できるこうしたリーダーを育成し,配
に基づいて,SSC-BSC における「ビジョンと戦
置していくことが必要とされる。
略」および 4 つの視点を B のように表している。
39)
また,Lee(2013)は,SC 上で,環境や社会
また,BSC では,これら 4 つの視点に,次
的責任に関する諸問題と,これらを改善してい
の 5 つの項目が設定される。すなわち,戦略目
くチャンスがどこにあるかを特定化していくた
めに,SC の業務を俯瞰できるようにマッピン
グしたり40),SC において間接的な事業関係者,
37)たとえば,花王株式会社が SCM の中で行っている
「製品別輸送費」の分析(縦軸の輸送費,横軸に輸送距離
を示した分析)のように,SSCM では,CSR 調達以降の他
のプロセスに関するマネジメントも同じように必要不可欠
になる(金藤正直・君島美葵子(2013)
「サプライチェーン
管理会計の実践的取組みとその変容過程」中村博之・高橋
賢,前掲書,198‒199頁。
38)Senge, P.(2010), “The Sustainable Supply Chain,”
Harvard Business Review,Vol. 88 Issue 10,p.70(鈴木泰
雄(2013)
「The Sustainable Supply Chain」
『ダイヤモンド・
ハーバード・ビジネス・レビュー』第38巻第 4 号,56頁)
.
39)Ibid.,p.72(前掲訳書,58‒59頁)
.
40)Lee, H. L.(2010),“Donʼt Tweak your Supply Chain
─ Rethink It End to End,” Harvard Business Review, Vol.
88 Issue 10, p.67(スコフィールド素子(2013)
「パートナー
との連携による持続可能なサプライチェーンの構築」
『ダイ
ヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』第38巻第 4 号,
67頁).
41)Ibid.,pp.67‒69(前掲訳書,67‒72頁).
42)Cetinkaya, B.(2011), “Developing a Sustainable
Supply Chain Strategy,” in Cetinkaya, B., Cuthbertson,
R., Ewer, G., Klaas-Wissing, T., Piotrowicz, W., Tyssen,
C., Sustainable Supply Chain Management Practical Ideas
for Moving Towards Best Practice, Springer, pp.17 ‒55 .
Piotrowicz, W.(2011), “Monitoring Performance,”in
Cetinkaya, B., Cuthbertson, R., Ewer, G., Klaas-Wissing,
T., Piotrowicz, W., Tyssen, C., Sustainable Supply Chain
Management Practical Ideas for Moving Towards Best
Practice, Springer, pp.57‒ 80 . Morana, J.(2013), op.cit,
pp.139‒165.
43)金藤正直(2015)
「食料産業クラスターを支援するバ
ランス・スコアカードの構想」
『産業経理』Vol. 75 No.1, 57頁。
71
- -
図表15 バランス・スコアカードとサステナビリティ・サプライチェーン・バランス・スコアカードにおける
「ビジョンと戦略」と 4 つの視点
A バランス・スコアカード 44)
B サステナビリティ・サプライチェーン・バランス・スコアカード 45)
財務の視点
財務的に成功するために、ス
テークホールダーに対してど
のように行動すべきか
顧客の視点
ビジョンと戦略を達成するた
めに、顧客に対してどのよう
に行動すべきか
ビジョン
と戦略
財務の視点
業務プロセスの視点
株主と顧客を満足させるため
に、どのような業務プロセス
に秀でるべきか
顧客満足の向上
サステナビリティ
の視点
サステナビリ
ティ・サプライ
チェーン戦略
サプライチェーン
の視点
企業の対応能力
人材と変革の視点
ビジョンと戦略を達成するた
めに、どのように人材育成と
変革能力を強化すべきか
人材と変革の視点
企業の人材育成と変革能力の強化
標(ビジョンを実現するための目標),重要成
16の SSC-BSC を SSCM に利用していく方法に
功要因(戦略目標を達成するための主要要因),
ついて考えてみると,まず,「人材と変革の視
業績評価指標(戦略の達成度を測定・評価する
点」では,この視点に示された 5 つの目標に基
指標)
,ターゲット(具体的な目標数値),戦略
づく能力を高めていくために,いかなる知識が
プログラム / アクション・プラン(ビジョンと
必要となり,また,どのようなハードおよびソ
戦略を実現するシナリオ)である。各企業は,
フトのインフラが必要となるか,また,「サプ
「ビジョンと戦略の策定⇒ビジョンと戦略を実
ライチェーンの視点」では,その知識やハード
現する視点の洗い出し⇒戦略マップの作成と戦
およびソフトのインフラを利用しながら,顧客
略目標の設定⇒重要成功要因の洗い出し⇒業績
満足の充足のために,新たな製品をどのように
評価指標の設定⇒ターゲットの設定⇒戦略プロ
開発すればよいか,その開発のための自社内外
グラムないしアクションプランの作成」のス
の事業計画,組織構造,プロセスをどのように
テップに基づいて BSC を構築し,組織内で運
構築していくべきか,といったことが分析でき
用していく44)。Cetinkaya(2011)は,図表15の
る。さらに,「サステナビリティの視点」では,
B に示されている SSC 戦略を実現していく 4 つ
開発される新たな製品が,環境面や社会面を考
の視点と,その戦略目標の関係を考慮に入れた
慮に入れながら,市場や顧客のニーズおよび満
SSC-BSC を,図表16のように概念的に示して
足度をどのように満たしていくか,また,これ
いる。
らに基づく価格も分析できる。そして,「財務
図表16では,重要成功要因,業績評価指標,
の視点」では,以上の視点を考慮に入れて,そ
ターゲット,戦略プログラム / アクション・プ
の製品の生産・販売に関するコストを削減さ
ランは十分に示されておらず,また,実践的な
せ,売上を上げていくだけではなく,「製品あ
利用方法までも説明されていない。そのため
るいはサービスの価値÷環境あるいは社会影
に,ここでは,SSC を主導する生産メーカー
響」45)によって測定される環境効率性あるいは
(あるいは Senge が言う「リーダー」)が,図表
社会効率性の向上についても検討することがで
45)Cetinkaya, B.(2011),op. cit., p.47.
44)吉川武男(2003),前掲書,30頁。
72
- -
サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
図表16 サステナビリティ・サプライチェーン・バランス・スコアカードの概念図
財務の視点
環境効率性
社会効率性
財 務
サステナビリティの視点
環 境
社 会
顧 客
サプライチェーンの視点
プロセス
計画と組織編成
内 部(自社内)
製品とサービス
外部(自社外)と協調
人材と変革の視点
人 材
協調&コミュ
ニケーション
情
報
システム
技 術
インフラ
と資源
(出典:Cetinkaya, B.(2011)
, “Developing a Sustainable Supply Chain Strategy,” in Cetinkaya, B.,
Cuthbertson, R., Ewer, G., Klaas-Wissing, T., Piotrowicz, W., Tyssen, C., Sustainable Supply Chain
Management Practical Ideas for Moving Towards Best Practice, Springer, p45 Figure2.14を加
筆修正して作成。)
果からも明らかなように,その取組みの必要性
きる。
生産メーカーは,SSC-BSC を用いてこうし
は各企業で共有し,認識しているが,徹底した
た分析や検討を行うことにより,SSC を図表 2
マネジメント体制を構築して,SSC を実践的に
のⒷの状態にしていくための意思決定が可能と
展開していく方法については,まだ十分である
なる。また,BSC の各種データを持続可能性
とはいえないことが明らかにされた。そこで,
報告書や統合報告書などの情報開示媒体にも利
本研究では,図表 2 のようなサステナビリティ
用することにより,SSC の構成企業,産業界,
経営戦略に基づいて,図表 3 の A および B の取
その他ステイクホルダーに対する説明責任を果
組みを実践することができる SSCM の方法とし
たすことができ,また,SSC の取組みの透明性
て,UNGC の GCMM を活かしたマネジメント
も確保することができよう。
システムを提案した。生産メーカーは,このシ
Ⅴ 研究の成果と今後の課題
分最適」および「全体最適」を可能にする SSC
ステムを,図表 2 のⒷの状態にし,また,「部
に展開していくためのツールとして利用できよ
日本企業における SSCM の現状については,
第 3 章で取り上げた 2 つのアンケート調査の結
う。しかし,現時点では,このマネジメントシ
ステムの日本企業への有効性については十分に
73
- -
明らかにできていない。
性報告書(CSR 報告書)や統合報告書での開示
また,このようなシステムを効率的に動かし
ていくためには,SCM でも適用されている ERP
情報として利用できるシステムとして機能させ
ることも必要であろう。
(Enterprise Resource Planning)などのような
図表17に示されたデータベースシステム環境
データベースシステムを活かしていくことも必
下での SSCM の実践的有効性に関しては,今後,
要であろう。たとえば,図表17のように,生産
日本企業への実験研究を行いながら検討してい
メーカーが,「コミット」から「コミュニケー
きたい。
ション」の各ステップで行われるさまざまな取
組みに対して必要なデータをデータベースシス
[付記]
テムから獲得できれば,サステナビリティ経営
本研究は,科学研究費補助金 基盤研究(C)研
戦略の実現に有効なマネジメントを効率的に実
究課題番号(15K03788)「地域バイオマスを活
施していくことができる。また,
「測定」や「コ
用した食料産業クラスター事業を評価する会計
ミュニ ケ ー シ ョ ン 」 の ス テ ッ プ で 行 わ れ る
システムの研究」
(2015年度 ‒2017年度)の研究
SSC-BSC に必要な業績評価データを提供した
成果の一部である。
り,SSC-BSC で用いたデータの一部を持続可能
図表17 データベースシステムを活かしたサステナビリティ・サプライチェーン・マネジメントシステムの概念図
データベースシステム(ERP)
データ
・持続可能性報告書
(CSR報告書)
・統合報告書
データ
SSC-BSCデータ
提 供
データ
データ
74
- -
サステナビリティ・サプライチェーンを対象としたマネジメントシステムに関する研究
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金藤正直・君島美葵子(2013)
「サプライチェーン管理
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性出版。