平成22年7月15日 子どもの頃の体験は、その後の人生に影響する 「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」中間報告(改訂版) 国立青少年教育振興機構では,幼児期から義務教育修了までの各年齢期における多様な体験 (以下, 「子どもの頃の体験」という。)とそれを通じて得られる資質・能力(以下, 「体験の力」 という。)の関係性を把握し,学校や地域,家庭において,どの年齢期にどういった体験が重要 になるのかを明らかにするため,青少年の発達段階に応じた適切かつ効果的な体験活動の推進に 関する調査研究を実施しました。 現在,調査結果の集計・分析中ですが,興味深い結果が明らかになりましたので中間報告とし て主な調査結果を御報告させていただきます。 <主な調査結果> (詳細は「資料1」を参照) 結果① 子どもの頃の体験が豊富な大人ほど,やる気や生きがいを持っている人が多い ■ 子どもの頃に「自然体験」や「友だちとの遊び」などの体験が豊富な人ほど,「もっと深 く学んでみたい」といった意欲・関心(p1,図 1), 「電車やバスに乗ったとき,お年寄りや 身体の不自由な人には席をゆずる」といった規範意識(p1,図 2), 「社会や人のためになる 仕事をしたい」といった職業意識(p2,図 3)が高くなる傾向がみられた。 ■ 子どもの頃の体験が豊富な人ほど, 「どんなことも,あきらめずにがんばればうまくいく」 (p3,図 6)と回答した人の割合が高くなる傾向がみられた。 ■ 子どもの頃の体験が豊富な人ほど,最終学歴が「大学や大学院」と回答した割合が高く(p4, 図 7),その他,現在の年収が高かったり(p4,図 8),1 ヶ月に読む本の冊数が多くなる(p4, 図 9)傾向がみられた。 結果② 友だちの多い子どもほど学校好き,憧れる大人のいる子どもほど働くことに意欲的 ■ 友だちの数が多い子どもほど「学校が好き」と回答した割合が高く(p5,図 10),憧れる 大人がいると答えた子どもほど「自分にはなりたい職業や、やってみたい仕事がある」と回 答した割合が高くなる(p5,図 11)傾向がみられた。 結果③ 小学校低学年までは友だちや動植物とのかかわり, 小学校高学年から中学生までは地域や家族とのかかわりが大切 ■ 各年齢期において「体験の力」と関係がみられた体験は以下のとおりであった。 (p6-8,表 1・ 2,図 12-19) ・小学校低学年までは「友だちとの遊び」や「動植物とのかかわり」等 ・小学校高学年から中学校までは「地域活動」や「家事手伝い」 , 「家族行事」 , 「自然体験」等 結果④ 年代が若くなるほど,子どもの頃の自然体験や友だちとの遊びが減ってきている ■ 「海や川で泳いだこと」といった自然体験(p9,図 20~23),小学校高学年から中学校の時 期の「すもうやおしくらまんじゅう」といった友だちとの遊び(p10,図 24~27)は,年代が 若くなるほど減少する傾向がみられた。 ■ 「家族の誕生日を祝ったこと」といった家族行事(p11,図 28~31),小学校に通う前か ら小学校低学年の時期の「米や野菜などを栽培したこと」といった動植物とのかかわり (p12,図 32~35)は,年代が若くなるほど増加する傾向がみられた。 ※調査内容・方法等は「別紙」を参照してください。 【お問い合わせ】 独立行政法人国立青少年教育振興機構総務企画部調査研究・広報課 研究員 中村 〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町 3 番 1 号 [TEL]03-6407-7742(直通) [FAX]03-6407-7689 別 紙 「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」(概要) 1.目的 本研究は,子どもの頃の体験を通じて得られる資質・能力を検証し,人間形成にとってどの時 期にどのような体験をすることが重要になるのかを明らかにすることを目的とした。 2.特徴 (1)子どもの頃の体験と大人になった時の資質や能力の関係について検証 過去の青少年に関する調査では,現在の体験と意識・態度との関係性を検証することが中心 で,子どもの頃の体験を大人になった時の資質や能力との関係について検証している調査は数 少ない。そこで,本研究では,子どもの頃の体験(過去)とそれらを通じて得られる資質・能 力(以下, 「体験の力※」という。 ) (現在)の関係性を検証し,子どもの頃のどの時期にどのよ うな体験が大人になった時の「体験の力」に関係しているのかを明らかにする。 (2)子どもの頃の体験の年代間比較を実施 20 代から 60 代の成人(5,000 人)を対象に「子どもの頃の体験」について調査し,その結 果を年代間で比較することによって「子どもの頃の体験」の実施状況の推移を明らかにする。 (3)日本の文化に関する作法や教養に注目 過去の青少年に関する調査では,あまり注目されていなかった日本の文化における作法や教 養(「お盆やお彼岸にはお墓参りに行くべきだと思う」 , 「日本の昔話を話すことができる」等) に関する調査項目を取り入れ、その実態を把握するとともに「子どもの頃の体験」との関係を 明らかにする。 (4)家庭や学校、地域において取り組むべき課題を提示 青少年の健全育成において「体験活動が重要」と言われつつも,これまで具体的な体験の内容 や時期について明確な指標が示されてこなかった。そこで,本研究では,発達段階に即した青 少年育成の基本目標を示すとともに,家庭や学校,地域において取り組むべき具体的な体験の 内容について提示する(予定) 。 3.調査内容 (1)子どもの頃の各年齢期における体験 自然体験,動植物とのかかわり,友だちとの遊び,地域活動,家族行事,家事手伝い (2)体験の力 自尊感情,共生感,意欲・関心,規範意識,人間関係能力,職業意識,文化的作法・教養 (3)葛藤場面における意識 (4)その他(最終学歴,現在の年収,1 ヶ月に読む本の冊数 等) 4.調査方法 (1)青少年調査 ① 調査対象 小学校高学年から高校生までの青少年 約 11,000 人 (内訳)小学 5 年生 2,860 人,小学 6 年生 2,830 人,中学 2 年生 2,480 人 高校 2 年生 2,844 人 (抽出)都市規模と学校規模を層化した層化二段集落抽出法 ② 調査方法 学校を通した郵送法による質問紙調査 ③ 調査期間 平成 21 年 11 月 27 日(金)~12 月 18 日(金) 1 (2)成人調査 ① 調査対象 20 代~60 代の成人 5,000 人 (内訳)各年代で男女各 500 人 (抽出)ア.回答者の居住する地域ブロックが実社会の構成比と大幅に異なら ないように配慮した。 イ.回答者の居住する都市規模が実社会の構成比と大幅に異ならない ように配慮した。なお,都市規模は平成 21 年 10 月 1 日時点で市 区町村を分類し、各市区町村の人口に応じて、 「区部」 「大市部(人 口 20 万人以上)」 「小市部(人口 20 万人未満)」 「郡部」の4カテ ゴリーとする。 ウ.性・年齢ごとに、既婚者・未婚者及び就労・未就労の割合が、実 社会の構成比と大幅に異ならないように配慮した。 ② 調査方法 ウェブアンケート調査 ③ 調査期間 平成 21 年 11 月 13 日(金)~16 日(月) 5.研究会 座 長 明 石 要 一(千葉大学教育学部教授) 委 員 青 山 鉄 兵(桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部助教) 岩 崎 久美子(国立教育政策研究所生涯学習政策研究部総括研究官) 金 藤 ふゆ子(常磐大学人間科学部准教授) 時 代(千葉大学教育学部客員研究員) 茅 野 敏 英(国立青少年教育振興機構客員研究員) 土 屋 隆 裕(統計数理研究所データ科学研究系調査解析グループ准教授) 6.今後の予定 今後は,研究会において専門的見地からより詳細な分析・考察を行い,最終報告において発達 段階に即した青少年育成の基本目標を示すとともに,家庭や学校,地域において取り組むべき具 体的な体験の内容について提示する予定。 (注) ※「体験の力」とは 本研究では,体験を通して得られる資質・能力について検討を行った結果,自尊感情や共生感, 意欲・関心といった 7 つの要素があると仮定し,これらを総括して「体験の力」と表現している。 それぞれの要素を代表する事柄は,下記に示したとおりである。 (自尊感情)自分のことが好き,家族を大切にできる 等 (共生感)休みの日は自然の中で過ごすことが好き,悲しい体験をした人の話を聞くとつらい 等 (意欲・関心)もっと深く学んでみたい,なんでも最後までやり遂げたい 等 (規範意識)叱るべき時はちゃんと叱れる親が良い,社会のルールは守るべき 等 (人間関係能力)人前でも緊張せずに自己紹介ができる,近所の人に挨拶ができる 等 (職業意識)大人になったら仕事をするべき,社会や人のためになる仕事をしたい 等 (文化的作法・教養)お盆やお彼岸にはお墓参りに行くべき,はしを上手に使うことができる 等 2 各年齢期における体験と体験を通して得られる資質・能力(体験の力)の関係(イメージ図) <研究の目的> 本研究は,子どもの頃の体験を通じて得られる資質・能力を検証し,人間形成にとってどの 時期にどのような体験をすることが重要になるのかを明らかにすることを目的とした。 職業意識 規範意識 人間関係能力 「社会のルールは守るべ き」や「いじめている人がい ると腹が立つ」等 「友達を仲直りさせること ができる」や「初対面の 人とも話ができる」等 「やってみたい仕事があ る」や「社会や人のために なる仕事をしたい」等 文化的作法・教養 「丁寧な言葉を使うことが できる」や「日本の昔話を 話すことができる」等 自尊感情 「自分のことが好き」や「日 本が好き」等 意欲・関心 共生感 「もっと深くまで学んで みたい」や「何でもチャレ ンジしたい」等 「自然の中で過ごすことが 好き」や「悲しい体験の話 を聞くとつらくなる」等 体験を通して得られる資質・能力(体験の力) 各年齢期における体験の程度やその量を検証 どのような体験が現在の「体験の力」に ※体験の頻度や量を年代別に比較し, 体験の実施状況の変遷を検証 関係しているのかを年齢期ごとに検証 中学生 各年齢期における子どもの頃の体験 小学校 高学年 自然体験 小学校 低学年 「海や川での魚 釣り」や「湧き水 や川の水を飲 んだこと」等 動植物との かかわり 「米や野菜の収 穫」や「昆虫の 捕獲」等 友だちとの 地域活動 遊び 「かくれんぼ等 の遊び」や「友 人とのケンカ」 等 就学前 3 「祭への参加」 や「近所の小さ いことの遊び」 等 家族行事 家事手伝い 「家族の誕生日 を祝う」や「家族 の病気の看病」 等 「ナイフや包丁 の使用」や「食 器の準備」等 (本報告書を読むにあたって) ○ ウェブアンケート調査の対象者はインターネットの利用者に限られていることから,現在の 20 代から 60 代の全ての成人を代表する回答とは異なる可能性がある。そのため,以下の基礎集計 結果を読む際は,本調査に限られた結果であるという点に留意する必要がある。 ○ 本研究は、同じ調査票(一部の設問を除く)を使って,青少年調査では郵送法による調査,成人 調査ではウェブアンケート調査と 2 つの手法を用いてアンケート調査を実施した。以下の基礎集 計結果では,設問ごとに調査結果をグラフ化しているため,青少年調査と成人調査の結果を同一 のグラフで示しているものもあり,基礎集計結果を読む際は,調査手法の違いに留意する必要が ある。 ○ 図に示している回答比率(%)は,小数点以下第 2 位を四捨五入しているため,その和が必ずし も 100.0%と一致しない場合がある。 4 資料1 結果① 子どもの頃の体験が豊富な大人ほど,やる気や生きがいを持っている人が多い ■ 子どもの頃に「自然体験」や「友だちとの遊び」などの体験が豊富な人ほど, 「もっと深 く学んでみたいことがある」 といった物事に対する意欲や関心, 「電車やバスに乗ったとき, お年寄りや身体の不自由な人には席をゆずる」といった社会における規範意識, 「社会や人 のためになる仕事をしたい」といった職業意識が高くなる傾向がみられた。 【成人調査】 図1.子どもの頃の「自然体験」と現在の「意欲・関心」との関係 なんでも最後までやり遂げたい(現在) 海や川で貝を採ったり、魚を 釣ったりしたこと (子どもの頃) 意欲・関心(現在) 低 高 自然体験 (子どもの頃) 40.7 41.0 18.3 0% 27.9 42.9 29.2 少 17.3 42.8 40.0 多 とてもあてはまる あまりあてはまらない 33.6 何度もある 少しある 24.6 ほとんどない 22.0 0% 夜空いっぱいに輝く星を ゆっくりみたこと (子どもの頃) 20% 40% 60% 80% 100% ※(多~少), (高~低)の分類方法は p2 を参照 (自然体験) ・海や川で貝を採ったり、魚を釣ったりしたこと ・海や川で泳いだこと ・太陽が昇るところや沈むところを見たこと ・夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと ・湧き水や川の水を飲んだこと (意欲・関心) ・もっと深く学んでみたいことがある ・なんでも最後までやり遂げたい ・経験したことのないことには何でもチャレンジしてみたい ・分からないことはそのままにしないで調べたい ・いろいろな国に行ってみたい ややあてはまる まったくあてはまらない 52.0 13.5 0.9 55.4 19.5 54.1 20% 40% 22.0 60% 80% 0.5 1.8 100% もっと深く学んでみたいことがある(現在) とてもあてはまる あまりあてはまらない 何度もある 39.8 少しある 44.8 31.9 ほとんどない 14.3 1.1 16.8 50 23.5 0% ややあてはまる まったくあてはまらない 47.4 20% 40% 25.8 60% 80% 1.3 3.4 100% 図2.子どもの頃の「友だちとの遊び」と現在の「規範意識」との関係 交通規則など社会のルールは守るべきだと思う(現在) (子どもの頃) ままごとやヒーローごっこ をしたこと (子どもの頃) 友だちとの遊び 規範意識(現在) 低 高 50.4 31.4 18.1 0% 36.3 33.0 30.7 少 20% 27.8 33.9 38.3 多 40% 60% 80% とてもあてはまる あまりあてはまらない 64.1 何度もある 54.1 少しある 47.7 0.1 46.2 0.9 5.2 0% 20% 40% 60% 80% 100% 弱い者いじめやケンカを注意 したり、やめさせたこと (子どもの頃) 電車やバスに乗ったとき、お年寄りや身体の 不自由な人には席をゆずろうと思う(現在) とてもあてはまる あまりあてはまらない ややあてはまる まったくあてはまらない 49.3 何度もある 45.6 0.6 4.5 43.0 少しある 52.1 0.1 4.8 31.8 ほとんどない 1 42.2 3.7 100% (友だちとの遊び) ・かくれんぼや缶けりをしたこと ・ままごとやヒーローごっこをしたこと ・すもうやおしくらまんじゅうをしたこと ・友人とケンカしたこと ・弱い者いじめやケンカを注意したり、やめさせたこと (規範意識) ・叱るべき時はちゃんと叱れる親が良いと思う ・交通規則など社会のルールは守るべきだと思う ・電車やバスの中で化粧や整髪をしても良いと思う(逆転項目) ・電車やバスに乗ったとき、お年寄りや身体の不自由な人 には席をゆずろうと思う ・他人をいじめている人がいると、腹が立つ 0.1 33.9 1.9 ほとんどない ※(多~少), (高~低)の分類方法は p2 を参照 ややあてはまる まったくあてはまらない 59.8 0.8 7.6 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図3.子どもの頃の「地域活動」と現在の「職業意識」との関係 近所の小さい子どもと 遊んであげたこと (子どもの頃) 職業意識(現在) 低 高 地域活動 44.7 多 29.7 (子どもの頃) 35.8 24.2 少 0% 34.0 34.0 20% 40% 25.5 30.2 41.7 60% 80% 大人になったら仕事をするべきだと思う(現在) とてもあてはまる あまりあてはまらない 何度もある ややあてはまる まったくあてはまらない 65.3 30.8 0.6 3.4 少しある 54.7 ほとんどない 53.0 39.4 0.7 5.2 38.2 1.1 7.7 100% 0% ※(多~少), (高~低)の分類方法は p2 を参照 20% 40% 60% 80% 100% できれば、社会や人のためになる仕事をしたいと思う(現在) (子どもの頃) 地域の清掃に参加したこと (地域活動) ・近所の小さい子どもと遊んであげたこと ・近所の人に叱られたこと ・バスや電車で体の不自由な人やお年寄りに席をゆずったこと ・祭りに参加したこと ・地域の清掃に参加したこと (職業意識) ・自分にはなりたい職業や、やってみたい仕事がある ・大人になったら仕事をするべきだと思う ・できれば、社会や人のためになる仕事をしたいと思う ・お金が十分にあれば、できれば仕事はやりたくないと思う(逆転項目) ・今が楽しければ、それでいいと思う(逆転項目) とてもあてはまる あまりあてはまらない ややあてはまる まったくあてはまらない 43.1 何度もある 44.2 1.3 11.3 少しある 32.5 ほとんどない 51.4 27.2 0% 20% 14.6 51.8 40% 60% 18.8 80% 1.5 2.2 100% (注) (年代によるクロス集計結果の違いの有無について) 年代(20~60代)によって上記のクロス集計の結果(図1~3)に違いが生じないか検証するため, 年代別に同様のクロス集計を行った結果,どの年代においても上記の結果と同様の傾向がみられた。 ( 「子どもの頃の体験」の全体及び各カテゴリ(自然体験,友だちとの遊び等)における多寡の分類方法) 1.各項目の回答を「何度もある」2 点、「少しある」1 点、「ほとんどない」0 点と得点化 2.各カテゴリを構成する 5 設問の得点(1 設問 0~2 点×5 設問=0~10 点)を年齢期(小学校に 通う前~中学校)ごとに合算した後,各年齢期の合計得点を合算し,カテゴリの得点を算出 3.カテゴリごとに,カテゴリの得点の平均(M)及び標準偏差(SD)を算出し,「平均+標準偏差 の 2 分の 1」以上を「多」 , 「平均-標準偏差の 2 分の 1」以下を「少」, 「多」と「少」の中間の 三群に分類 ※「子どもの頃の体験」の全体を多寡で分類する場合は,カテゴリに分けずに上記の手順で分類 (「体験の力」の各カテゴリ(意欲・関心,規範意識等)における高低の分類方法) 1.各項目の回答を「とてもあてはまる」3 点、「ややあてはまる」2 点、「あまりあてはまらない」 1 点、「まったくあてはまらない」0 点と得点化 2.各カテゴリを構成する 5 設問の合計得点(1 設問 0~3 点×5 設問=0~15 点)を算出 3.カテゴリごとに合計得点の平均(M)及び標準偏差(SD)を算出し, 「平均+標準偏差の 2 分の 1」 以上を「高」 ,「平均-標準偏差の 2 分の 1」以下を「低」,「高」と「低」の中間の三群に分類 2 ■ 子どもの頃の体験が豊富な人ほど,「どんなこともあきらめずにがんばればうまくい く」, 「人間の都合で自然を破壊するのはやめるべきだ。」と回答した人の割合が高くなる傾 向がみられた。 【成人調査】 ※子どもの頃の体験(多~少)の分類方法は p2 を参照 図4.子どもの頃の体験の多寡と「自分の弱いところを見せることに対する意識」との関係 a.仲の良い友達には、 自分の弱いところを見せてもかまわない。 子どもの頃の体験 多 b.仲の良い友達でも、 自分の弱いところは見せたくない。 68.8 31.2 63.7 少 0% 36.3 42.2 57.8 20% 40% 60% 80% 100% 図5.子どもの頃の体験の多寡と「自然を破壊することに対する意識」との関係 子どもの頃の体験 a.人間の都合で自然を 破壊するのはやめるべきだ。 多 b.人間の生活のために 自然が破壊されるのはやむをえない。 86.1 13.9 84.7 少 0% 15.3 18.7 81.3 20% 40% 60% 80% 100% 図6.子どもの頃の体験の多寡と「物事をやり遂げることに対する意識」との関係 b.どんなことも、 あきらめずにがんばればうまくいく。 子どもの頃の体験 a.がんばっても うまくいかないこともある。 多 81.1 18.9 85.9 少 0% 14.1 12.0 88.0 20% 40% 60% 3 80% 100% ■ 子どもの頃の体験が豊富な人ほど,最終学歴が「大学や大学院」と回答した割合が高く, その他,現在の年収が高かったり,1 ヶ月に読む本の冊数が多くなる傾向がみられた。 【成人調査】 ※子どもの頃の体験(多~少)の分類方法は p2 を参照 図7.子どもの頃の体験の多寡と「最終学歴」との関係 大学・大学院 専門学校 短大・高専 子どもの頃の体験 50.4 多 11.9 48.6 0% 20% 11.6 11.3 45.4 少 26.1 12.5 11.9 40% 中学校・高校 27.6 30.8 11.9 60% 80% 100% 図8.子どもの頃の体験の多寡と「現在の年収」との関係 1000万円以上 250万円~500万円未満 子どもの頃の体験 多 5.9 10.5 750万円~1000万円未満 250万円未満 17.4 9.0 500万円~750万円未満 わからない 26.9 36.1 16.8 32.5 35.2 3.2 2.9 3.7 7.2 少 0% 12.1 3.8 20% 4.4 35.3 37.1 40% 60% 80% 100% 就業者(3,527 人)のみ 図9.子どもの頃の体験の多寡と「1 ヶ月に読む本の冊数」との関係 子どもの頃の体験 1~2冊 3~5冊 6~9冊 36.4 多 19.5 35.5 10冊以上 5.7 ほとんど読まない 30.1 8.3 39.7 16.3 4.2 4.3 31.2 少 50.3 12.1 3.3 3.1 0% 20% 40% 60% 4 80% 100% 結果② 友だちの多い子どもほど学校好き, 憧れる大人のいる子どもほど働くことに意欲的 ■ 友だちの数が多い子どもほど「学校が好き」と回答した割合が高く,憧れる大人がい ると答えた子どもほど「自分にはなりたい職業や、やってみたい仕事がある」と回答し た割合が高くなる傾向がみられた。 【青少年調査】 図 10. 「いつも遊んでいる友人の人数」と「学校が好きである」との関係 学校が好きである とてもあてはまる ややあてはまる いつも遊んでいる友人の人数 10人以上 あまりあてはまらない 34.2 44.2 5~9人 27.1 1人 0% 20% 10.3 19.1 25.4 27.0 27.9 25.3 40% 7.9 22.9 31.8 19.8 6.8 18.1 39.8 23.7 いない 14.8 40.0 33.9 2~4人 まったくあてはまらない 60% 80% 100% 図 11. 「あの人のようになりたい」と思う大人の有無と「自分にはなりたい職業や、やってみ たい仕事がある」との関係 自分にはなりたい職業や、やってみたい仕事がある 「あの人のようになり たい」と思う大人 とてもあてはまる ややあてはまる あまりあてはまらない 62.9 いる いない 20.9 40.0 0% 20% まったくあてはまらない 24.0 40% 5 11.6 14.6 21.5 60% 4.7 80% 100% 結果③ 小学校低学年までは友だちや動植物とのかかわり, 小学校高学年から中学生までは地域や家族とのかかわりが大切 ■ 「子どもの頃の体験」と「体験の力」の関係を分析(重回帰分析)し, 「子ども の頃の体験」が多いほど「体験の力」が高くなる傾向が見られた体験を年齢期ご とに表示(表1) ■ 【青少年調査】(高校 2 年生のみ)でも同様の分析を行い,(表1)の結果に世 代の違いや現在の生活環境による影響がないかを検証(表2) 表1.【成人調査】の結果 体験の力 年 小学校に通う前 小学校低学年 自尊感情 齢 期 小学校高学年 中学校 地域活動 地域活動 家族行事 共生感 友だちとの遊び 動植物とのかかわり 地域活動 自然体験 地域活動 家族行事 意欲・関心 友だちとの遊び 自然体験 自然体験 地域活動 友だちとの遊び 家事手伝い 家族行事 家事手伝い 規範意識 友だちとの遊び 友だちとの遊び 動植物とのかかわり 家族行事 職業意識 友だちとの遊び 動植物とのかかわり 家族行事 家事手伝い 自然体験 友だちとの遊び 動植物とのかかわり 家事手伝い 友だちとの遊び 地域活動 家族行事 家事手伝い 人間関係能力 文化的作法・教養 動植物とのかかわり 6 地域活動 地域活動 家族行事 家事手伝い 表2.【青少年調査】 (高校 2 年生のみ)の結果 体験の力 年 期 小学校低学年 小学校高学年 中学校 自尊感情 友だちとの遊び 家事・手伝い 地域活動 家族行事 共生感 友だちとの遊び 動植物とのかかわり 地域活動 自然体験 地域活動 家族行事 家事・手伝い 意欲・関心 友だちとの遊び 動植物とのかかわり 地域活動 家事・手伝い 規範意識 小学校に通う前 齢 友だちとの遊び 家族行事 家事・手伝い 自然体験 地域活動 家族行事 動植物とのかかわり 自然体験 地域活動 家族行事 友だちとの遊び 動植物とのかかわり 職業意識 人間関係能力 友だちとの遊び 文化的作法・教養 家族行事 自然体験 友だちとの遊び 地域活動 家族行事 動植物とのかかわり 地域活動 家族行事 家事・手伝い 各年齢期において「体験の力」と関係がみられた体験 世代の違いや現在の生活環境に限らず, ・小学校低学年までは「友だちとの遊び」や「動植物とのかかわり」 等 ・小学校高学年から中学校までは「地域活動」や「家族行事」,「家事手伝い」 7 等 小学校に通う前から小学校低学年までの体験と「体験の力」の関係 図 12.小学校に通う前の「自然体験」と 「人間関係能力」の関係 図 13.小学校低学年の「動植物とのかかわり」 と「共生感」の関係 人間関係能力(現在) 共生感(現在) 動植物とのかかわり 自然体験 (小学校に通う前) 20% 40% 60% 46.8 20% 40% 20% 44.3 28.3 40.5 40% 60% 80% 100% 48.3 30.4 21.3 0% 40.0 32.3 27.7 少 26.6 35.6 20% 40% 60% 80% 小学校高学年から中学生までの体験と「体験の力」の関係 図 16.小学校高学年の「自然体験」と 「意欲・関心」の関係 0% 43.3 28.6 40.8 20% 40% 60% 80% 100% 図 18.中学校の「家事手伝い」と「職業 意識」の関係 0% 20% 0% 34.0 43.6 31.9 24.5 20% 22.4 40% (中学校) 少 60% 80% 100% 文化的作法・教養(現在) 31.1 34.7 60% 80% 低 高 0% 8 31.9 34.2 少 100% 50.3 多 地域活動 (中学校) 家事手伝い 31.3 40% 図 19.中学校の「地域活動」と「文化的作法・ 教養」の関係 低 46.5 41.2 45.5 職業意識(現在) 高 多 25.5 50.1 24.3 少 13.3 40.3 16.6 48.2 35.2 多 家族行事 18.9 少 18.8 (中学校) 自然体験 (小学校高学年) 42.2 低 高 低 28.1 【成人調査】 自尊感情(現在) 意欲・関心(現在) 38.9 100% 図 17.中学校の「家族行事」と「自尊感情」 の関係 高 多 100% 低 37.8 多 家族行事 0% 20.7 41.1 80% 高 (小学校低学年) 友だちとの遊び (小学校低学年) 18.4 少 60% 規範意識(現在) 41.5 27.5 41.9 図 15.小学校低学年の「家族行事」と「規範 意識」の関係 低 37.8 28.7 36.7 意欲・関心(現在) 高 多 19.7 38.5 21.4 0% 100% 図 14.小学校低学年の「友だちとの遊び」と 「意欲・関心」の関係 33.5 32.8 少 80% 低 高 多 34.0 40.0 26.0 0% 24.6 41.1 34.4 少 17.0 34.3 48.7 (小学校低学年) 低 高 多 【成人調査】 21.2 33.4 32.3 28.5 20% 40% 17.8 50.2 60% 80% 100% 結果④ 年代が若くなるほど,子どもの頃の自然体験や友だちとの遊びが減ってきている ■ 「海や川で泳いだこと」といった自然体験,小学校高学年から中学校の時期の「すも うやおしくらまんじゅう」といった友だちとの遊びは,年代が若くなるほど減少する 傾向がみられた。 【成人調査】・ (参考)【青少年調査】 図 20.子どもの頃の「自然体験」の体験量 の推移 中学校の時期の「自然体験」 図 21.「海や川で貝を採ったり、魚を釣ったり したこと」の推移 何度もある 60代 50代 40代 30代 20代 60代 自然体験(子どもの頃) (年齢期) 少 少しある 31.3 23.1 50代 18.2 40代 17.4 ほとんどない 45.6 29.4 52.4 多 25.8 56.8 4.0 30代 3.9 小学校に通う前 3.6 13.2 26.8 20代 11.0 3.4 60.0 26.1 62.9 24.8 63.1 (参考) 3.4 中・高校生 12.1 0% 5.4 20% 60% 80% 100% 図 22.「海や川で泳いだこと」の推移 5.0 何度もある 4.9 小学校低学年 40% 4.7 32.1 60代 4.4 少しある 50代 25.9 40代 23.5 ほとんどない 34.6 33.3 36.3 37.8 5.9 5.3 5.2 小学校高学年 20代 4.4 40.9 30.8 20.4 30代 4.8 35.6 15.6 48.8 32.2 52.2 26.4 54.6 (参考) 5.3 中・高校生 4.5 19.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 4.2 中学校 3.7 図 23. 「湧き水や川の水を飲んだこと」の推移 3.5 何度もある 60代 上記のグラフは,子どもの頃の体験の回答を 得点化(p2 参照)し,体験の多寡を体験量 として数値で表示 15.1 40代 13.4 ほとんどない 35.7 20.8 50代 少しある 43.5 29.9 55.0 27.0 59.6 30代 10.2 24.4 65.4 20代 10.1 26.2 63.7 (参考) 中・高校生 8.5 ※中・高校生=中学 2 年生,高校 2 年生 0% 9 19.3 20% 72.1 40% 60% 80% 100% 【成人調査】 ・(参考)【青少年調査】 図 24.子どもの頃の「友だちとの遊び」の 体験量の推移 60代 50代 40代 30代 小学校高学年の時期の「友だちとの遊び」 図 25.「ままごとやヒーローごっこをしたこと」 の推移 何度もある 少しある 34.8 33.1 20代 60代 友だちとの遊び(子どもの頃) (年齢期) 少 ほとんどない 32.1 50代 30.9 31.0 38.1 40代 32.1 29.8 38.1 多 4.0 4.7 小学校に通う前 45.8 26.4 16.7 20代 4.6 28.7 25.5 30代 4.6 56.9 (参考) 4.6 0% 5.7 5.9 6.1 小学校低学年 78.7 15.6 中・高校生 5.7 20% 40% 60% 80% 100% 図 26. 「すもうやおしくらまんじゅうをしたこと」 の推移 5.7 何度もある 少しある ほとんどない 5.3 46.5 60代 34.0 19.5 5.5 5.3 小学校高学年 4.2 2.6 中学校 36.7 37.4 40代 4.7 3.2 41.5 50代 5.3 34.9 27.8 30代 27.7 33.0 21.3 20代 21.8 39.2 30.1 48.6 (参考) 中・高校生 2.5 24.3 9.9 0% 2.2 65.7 20% 40% 60% 80% 100% 2.2 図 27. 「弱い者いじめやケンカを注意したり、 やめさせたこと」の推移 上記のグラフは,子どもの頃の体験の回答を 得点化(p2 参照)し,体験の多寡を体験量 として数値で表示 何度もある 60代 12.4 少しある ほとんどない 36.4 51.2 50代 11.1 35.6 53.3 40代 11.8 33.8 54.4 30代 9.3 20代 7.7 31.1 59.6 28.3 64.0 (参考) 中・高校生 26.1 ※中・高校生=中学 2 年生,高校 2 年生 0% 10 5.6 20% 68.3 40% 60% 80% 100% ■ 「家族の誕生日を祝ったこと」といった家族行事,小学校に通う前から小学校低学年 の時期の「米や野菜などを栽培したこと」といった動植物とのかかわりは,年代が若 くなるほど増加する傾向がみられた。 【成人調査】・(参考)【青少年調査】 図 28.子どもの頃の「家族行事」の体験量 の推移 小学校に通う前の「家族行事」 図 29.「家族の誕生日を祝ったこと」の推移 何度もある 60代 50代 40代 30代 20代 60代 (年齢期) 少 多 3.6 28.5 27.4 49.2 20代 34.2 24.2 26.6 54.8 20.8 24.4 (参考) 3.7 70.1 中・高校生 3.9 0% 4.3 4.5 小学校低学年 43.3 26.3 44.1 30代 3.5 ほとんどない 26.3 39.5 40代 3.2 小学校に通う前 30.4 50代 家族行事(子どもの頃) 少しある 20% 11.8 18.2 40% 60% 80% 100% 図 30. 「お墓参りをしたこと」の推移 4.6 何度もある 4.7 4.7 60代 35.7 50代 5.0 少しある ほとんどない 36.5 27.8 40.1 30.0 29.9 5.0 小学校高学年 40代 5.1 5.1 5.2 5.1 4.9 中学校 5.1 26.9 29.5 30代 46.7 27.3 26.0 20代 46.2 27.2 26.6 (参考) 55.0 中・高校生 4.8 4.9 43.6 0% 20% 21.9 23.1 40% 60% 80% 100% 図 31. 「家族で家の大掃除をしたこと」の推移 何度もある 上記のグラフは,子どもの頃の体験の回答を 得点化(p2 参照)し,体験の多寡を体験量 として数値で表示 少しある ほとんどない 60代 20.1 29.1 50.8 50代 20.2 28.8 51.0 40代 20.7 25.6 53.7 30代 19.6 25.8 54.6 20代 22.1 28.6 49.3 (参考) 26.9 中・高校生 ※中・高校生=中学 2 年生,高校 2 年生 0% 11 20% 41.5 31.6 40% 60% 80% 100% 【成人調査】 ・(参考)【青少年調査】 小学校低学年の時期の「動植物とのかかわり」 図 32.子どもの頃の「動植物とのかかわり」 の体験量の推移 図 33.「米や野菜などを栽培したこと」の推移 何度もある 60代 50代 40代 30代 20代 動植物とのかかわり(子どもの頃) (年齢期) 少 多 ほとんどない 60代 9 . 0 1 8 . 0 73.0 50代 8 . 5 1 9 . 9 71.6 25.0 40代 9 . 4 30代 1 1 . 8 3.0 少しある 65.6 28.0 60.2 3.0 小学校に通う前 20代 3.1 15.2 40.8 44.0 (参考) 3.1 17.7 中・高校生 3.4 0% 4.4 4.4 20% 40% 60% 80% 100% 図 34.「花を育てたこと」の推移 何度もある 4.5 小学校低学年 37.4 44.9 少しある ほとんどない 4.5 60代 1 2 . 9 4.8 50代 1 2 . 6 4.8 4.6 49.8 37.3 43.1 44.3 40代 1 2 . 8 54.1 33.1 13.8 54.7 31.5 4.6 小学校高学年 30代 4.3 4.3 18.8 20代 24.4 56.8 (参考) 4.0 22.6 中・高校生 24.6 52.9 3.4 中学校 0% 3.2 2.8 2.9 20% 40% 60% 80% 100% 図 35. 「ペットなどの生き物の世話をしたこと」 の推移 何度もある 26.1 60代 上記のグラフは,子どもの頃の体験の回答を 得点化(p2 参照)し,体験の多寡を体験量 として数値で表示 少しある ほとんどない 38.1 35.8 50代 29.2 40代 27.7 37.4 34.9 30代 26.4 40.3 33.3 20代 28.6 33.4 37.4 39.0 32.4 (参考) 33.7 中・高校生 31.9 34.3 ※中・高校生=中学 2 年生,高校 2 年生 0% 12 20% 40% 60% 80% 100% 今後の青少年の育成における課題 子どもの頃の体験とそれを通じて得られる資質・能力(体験の力)の関係を検証した結果, 子どもの頃に「自然体験」や「友だちとの遊び」などの体験が豊富な人ほど,「もっと深く学 んでみたいことがある」といった物事に対する意欲・関心,「電車やバスに乗ったとき,お年 寄りや身体の不自由な人には席をゆずろうと思う」といった社会における規範意識,「社会や 人のためになる仕事をしたい」といった職業意識が高くなる傾向がみられ,その関係を年齢期 ごとにみると,小学校低学年までは「友だちとの遊び」や「動植物とのかかわり」 ,小学校高学 年から中学生は「地域活動」や「家事手伝い」 , 「家族行事」 , 「自然体験」といった体験が「体験 の力」と強い関係にあることが明らかとなった。 また, 「子どもの頃の体験」を年代別に比較したところ, 「家族の誕生日を祝ったこと」といっ た家族行事や小学校に通う前から小学校低学年の時期の「米や野菜などを栽培したこと」といっ た動植物とのかかわりは年代が若くなるほど増加する傾向がみられたのに対し, 「海や川で泳いだ こと」といった自然体験や小学校高学年から中学校の時期の「すもうやおしくらまんじゅう」と いった友だちとの遊びは年代が若くなるほど減少する傾向がみられた。 以上のことから,小学校低学年の頃までは友だちや動植物とのかかわり,小学校高学年から 中学生の時期までは地域や家族とのかかわりを推進する取組を行っていくとともに,減少傾向 がみられた自然体験や友だちとの遊びといった体験の充実を図ることが今後の青少年の育成 において重要になると考えられる。 なお,本研究では,今後,研究会において専門的見地からより詳細な分析・考察を行い,最終 報告において発達段階に即した青少年育成の基本目標を示すとともに,家庭や学校,地域におい て取り組むべき具体的な体験の内容について提示する予定である。 13 資料2 主な質問項目について 1.「子どもの頃の体験」のカテゴリ及び質問項目について □ 小学校に通う前から中学校までの 4 つの年齢期ごとに質問を設定 □ 各質問は「何度もある」,「少しある」,「ほとんどない」の 3 段階で回答 [自然体験] ・海や川で貝を採ったり、魚を釣ったりしたこと ・海や川で泳いだこと ・太陽が昇るところや沈むところを見たこと ・夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと ・湧き水や川の水を飲んだこと [動植物とのかかわり] ・米や野菜などを栽培したこと ・花を育てたこと ・ペットなどの生き物の世話をしたこと ・チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえたこと ・野鳥を見たり、鳴く声を聞いたこと [友だちとの遊び] ・かくれんぼや缶けりをしたこと ・ままごとやヒーローごっこをしたこと ・すもうやおしくらまんじゅうをしたこと ・友人とケンカしたこと ・弱い者いじめやケンカを注意したり、やめさせたこと [地域活動] ・近所の小さい子どもと遊んであげたこと ・近所の人に叱られたこと ・バスや電車で体の不自由な人やお年寄りに席をゆずったこと ・祭りに参加したこと ・地域清掃に参加したこと [家族行事] ・家族の誕生日を祝ったこと ・お墓参りをしたこと ・家族の病気の看病をしたこと ・親戚、友人の家にひとりで宿泊したこと ・家族で家の大掃除をしたこと 1 [家事・手伝い] ・ナイフや包丁で、果物の皮をむいたり、野菜を切ったこと ・家の中の掃除や整頓を手伝ったこと ・ゴミ袋を出したり、捨てたこと ・洗濯をしたり干したりしたこと ・食器をそろえたり、片付けたりしたこと 2.「体験の力」のカテゴリ及び質問項目について □ 各質問は「とてもあてはまる」 , 「ややあてはまる」, 「あまりあてはまらない」 , 「まったくあて はまらない」の 4 段階で回答 [自尊感情] ・自分のことが好きである ・家族を大切にできる人間だと思う ・学校が好きである ・今、住んでいる町が好きである ・日本が好きである [共生感] ・休みの日は自然の中で過ごすことが好きである ・動物園や水族館などに行くのが好きである ・悲しい体験をした人の話を聞くとつらくなる ・友達がとても幸せな体験をしたことを知ったら、私までうれしくなる ・人から無視されている人のことが心配になる [意欲・関心] ・もっと深く学んでみたいことがある ・なんでも最後までやり遂げたい ・経験したことのないことには何でもチャレンジしてみたい ・分からないことはそのままにしないで調べたい ・いろいろな国に行ってみたい [規範意識] ・叱るべき時はちゃんと叱れる親が良いと思う ・交通規則など社会のルールは守るべきだと思う ・電車やバスの中で化粧や整髪をしても良いと思う ・電車やバスに乗ったとき、お年寄りや身体の不自由な人には席をゆずろうと思う ・他人をいじめている人がいると、腹が立つ [人間関係能力] 2 ・人前でも緊張せずに自己紹介ができる ・けんかをした友達を仲直りさせることができる ・近所の人に挨拶ができる ・初めて会った人とでもすぐに話ができる ・友達に相談されることがよくある [職業意識] ・自分にはなりたい職業や、やってみたい仕事がある ・大人になったら仕事をするべきだと思う ・できれば、社会や人のためになる仕事をしたいと思う ・お金が十分にあれば、できれば仕事はやりたくないと思う ・今が楽しければ、それでいいと思う [文化的作法・教養] ・お盆やお彼岸にはお墓参りに行くべきだと思う ・目上や年下の人と話すときは丁寧な言葉を使うことができる ・ひな祭りや子どもの日、七夕、お月見などの年中行事が楽しみだ ・はしを上手く使うことができる ・日本の昔話を話すことができる 3. 「葛藤場面における意識」に関する質問項目について □ 各質問は「a.」又は「b.」のどちらかを選択して回答 [自分の弱いところを見せることに対する意識] a.仲の良い友達には、自分の弱いところを見せてもかまわない。 b.仲の良い友達でも、自分の弱いところは見せたくない。 [自然を破壊することに対する意識] a.人間の都合で自然を破壊するのはやめるべきだ。 b.人間の生活のために自然が破壊されるのはやむをえない。 [物事をやり遂げることに対する意識] a.がんばってもうまくいかないこともある。 b.どんなことも、あきらめずにがんばればうまくいく。 [学校の成績に対する意識] a.学校の成績がよいと、将来幸せになれる。 b.学校の成績がよいことと、将来の幸せは関係ない。 [人との付き合い方に対する意識] a.人に対しては、いつでも正直にいる方がよい。 3 b.時と場合によっては、嘘をつくこともある。 [問題解決に対する意識] a.トラブルを抱えたときは、できるだけ自分ひとりで解決すべきだ。 b.トラブルを抱えたとき、他に頼れる人がいるなら、頼ったほうがよい。 [友達への指摘に対する意識] a.友達が間違っていると思えば、相手が傷つくとしても言ってあげたほうがよい。 b.友達が間違っていると思っても、相手が傷つくことは言わないほうがよい。 [収入を得ることに対する意識] a.大人になったら自分の生活にかかるお金は自分が稼ぐべきだ。 b.家族に十分な収入があれば、大人になってもお金を稼ぐ必要はない。 [家族と過ごす時間に対する意識] a.仕事のためなら、家族で一緒に過ごす時間が減ってもやむをえない。 b.仕事のために、家族で一緒に過ごす時間を減らすべきではない。 [海外生活に対する意識] a.今後もできるだけ日本で生活していきたい。 b.今後、できれば日本以外の国で生活したい。 4
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