排尿の異常について -おしっこが出にくい、近い、漏れる-

排尿の異常について
-おしっこが出にくい、近い、漏れる-
小林クリニック
小林峰生
高齢化が進む中、排尿のトラブルでお困りの方が増えています。近年、排尿のメカニズ
ムが研究され、排尿異常を改善する新しいお薬や手術方法が開発されています。尿が出に
くい、近い、漏れるなどの排尿のトラブルの原因や診断のお話に加え
新しい治療法もご
紹介します。
膀胱、尿道の働き
腎臓で作られた尿は、膀胱に溜められます。膀胱は筋肉で出来ていて、風船のように伸
び縮みする袋です。尿を溜めている時は、膀胱の筋肉は緩み、袋は膨らみます。膀胱が尿
でいっぱいになると、脳は尿意を感じ、排尿するように膀胱に命令し、膀胱の筋肉が収縮
して排尿が起こります。一方、尿の出口である尿道には尿道括約筋という筋肉が栓の役わ
りをしています。膀胱に尿を溜めている間は
尿道括約筋が締まって尿が漏れないように
しています。膀胱がいっぱいになり、排尿時になると 尿道括約筋がゆるんで尿道の栓が
開き排尿が起こります。これは、脳からの命令が神経を介して正しく尿路に伝えられ、膀
胱と尿道が協調して働いたとき初めて 蓄尿、排尿がスムーズに行われます。
この働きが障害されると
尿が出にくい、漏れる、我慢できない、近いなどの排尿の症
状が起こります。このような障害をおこす3つの代表的な病気
前立腺肥大症、腹圧性尿
失禁、過活動膀胱についてお話します。
尿が出にくい・・・前立腺肥大症
前立腺は膀胱の出口に尿道を取り囲んである臓器です。前立腺は男性だけにあり、子供
を作るための精液を作り排出する男性生殖器です。加齢とともに、前立腺が腫れてくる病
気が前立腺肥大症です。良性の腫瘍ですが、膀胱、尿道を圧迫して排尿障害をおこします。
尿が出にくい、勢いが弱い、出るまでに時間がかかる、力まないと出ない、尿が近い、夜
間の回数が多い などの症状がおこります。
診断は
肛門からの前立腺の触診、超音波、残尿測定
尿波形などの検査をして行いま
す。前立腺癌との鑑別には PSA という血液検査をします。
治療は薬物療法と手術療法があります。お薬は、尿道を広げる交感神経遮断薬が大変有
効です。前立腺の腫れや炎症を抑える抗男性ホルモン剤や漢方薬も使われます。お薬で効
果が悪い場合、手術が行われます。内視鏡を使い 尿道から腫れた前立腺を削り出します。
電気メスやレーザーを使って、比較的簡単に安全に行える手術です。
咳、くしゃみで尿が漏れる・・・腹圧性尿失禁
咳やくしゃみをしたり
重いものを持ったり
運動したりして急にお腹に力が入った時
に尿が漏れてしまう状態を腹圧性尿失禁といいます。この症状は
主に女性に多く認めら
れます。もともと女性の尿道は短く尿が漏れやすいのですが、お産や肥満、加齢などによ
り
膀胱尿道を支えている女性の骨盤底の筋肉はさらに弱くなってしまいます。このため
急に腹圧がくわわると
膀胱内の圧力が突然上昇して尿道の締めている力を上回り
あっ
つと思った時には 尿が漏れてしまうのです。
治療法は3つあります。1つは骨盤底筋体操です。肛門を閉める要領で骨盤底筋を収縮
させる運動を繰り返し行い、筋肉を強める方法です。軽度の腹圧性尿失禁には
来るとても有効な方法ですが
簡単に出
続けていく必要があります。漏れがひどい場合は手術療法
があります。尿道や膣の周りに人工のメッシュをいれて骨盤底を補強する方法で
手術成
績も良好です。お薬もありますが残念ながら効果は限られています。
尿が我慢できない
近い・・・過活動膀胱
急に尿がしたくなり我慢できない。我慢できずに漏れてしまう、トイレまで我慢できな
い。尿が近い。このような症状のある状態を過活動膀胱と呼びます。1つの病気というよ
り、いろいろな原因で このような症状を起こす病態をまとめた症候群です。
原因はいろいろですが、脳卒中やパーキンソン病などの脳や神経の病気によるもの、前
立腺肥大症や慢性膀胱炎などによるもの
加齢などはっきり原因のわからないものなどが
あります。
正常では尿がしたくなっても膀胱の収縮を抑え、尿を我慢できます。過活動膀胱では 神
経が障害されたり膀胱の壁が厚くなったりしたために
膀胱の収縮を抑えるべき時に
膀
胱が勝手に震えるように収縮してしまい 尿を我慢できずに漏れてしまう状態です。
最近
この病態によく効く抗コリン剤というお薬が発売され、過活動膀胱の治療が可能
となりました。この過活動膀胱は
高齢者の方に多く見られます。良いお薬がありますの
で 恥ずかしがらずにご相談いただくと良いと思います。
排尿のトラブルは不快で憂鬱なものです。生命に直接関係なくても、外出や運動が制限
されたり、気分がめいったりして 生活の質を著しく損ないます、恥かしい、年だからしょ
うがないとあきらめているかたも多いようです。お話ししたように、排尿のトラブルを改
善する治療法や良いお薬が色々ありますので
に ぜひご相談ください。
かかりつけの先生
泌尿器科や病院の先生