2010年6月20日 新人サポート研修会 一般部門 尿沈渣の基本的な見方① 白血球の見方 碧南市民病院 包原久志 本日の内容 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 採尿方法 尿沈渣中の白血球の意義 尿沈渣中の白血球の種類 白血球反応による不一致について 紛らわしい成分について はじめに 尿沈渣中の白血球は、赤血球とともに臨床的評価 は高い。白血球は尿路感染症を中心に腎・尿路の 炎症や全身的疾患の存在を示唆する重要な所見で ある。一般に大きさは10∼15μmの球形をしている ことが多いが、細胞の生死の状態や浸透圧、pHな どの性状によって種々の形態を示す。一般的に浸 透圧の高い場合は丸く、低い場合は膨化状傾向と なる。尿中にみられる白血球は主に好中球で、95% 以上を占める。その他の出現としてリンパ球、好酸 球、単球などが見られる。判別できるものは記載する。 採尿方法(中間尿の採り方) 男性:手をよく洗い、亀頭を濾出させ清拭綿などで外尿道口を清拭する。排尿の最初の 部分は捨てて、排尿を止めずに途中からの尿(中間部分)採尿容器へ採取する。 排尿最後の尿は捨てる。 女性:手をよく洗い、陰唇を指で広げて清拭綿などで外尿道口を清拭する。排尿の最初 の部分は捨てて、排尿を止めずに途中からの尿(中間部分)採尿容器へ採取する。 排尿最後の尿は捨てる。ビデの使用も効果的である。 白血球 1,炎症性病変 尿中白血球の存在は腎・尿路系に感染症な どの炎症性病変があることを示す。 2, 分類 ・好中球−尿中白血球の95%以上 ・リンパ球・単球−慢性の炎症 ・好酸球−間質性腎炎、アレルギー性病変 3, 大きさ 10∼15μm、球形 4, 健常人では強拡大1視野に4個以下 5個以上は膿尿 5, 臨床的意義 淡染細胞+移行上皮+細菌→膀胱炎を示唆 グリッター細胞(輝細胞)+発熱→腎盂腎炎を示唆 尿中白血球の形態分類 染色方法による鑑別 希酢酸 核の明瞭化 染色法の活用 1 S染色:尿沈渣成分の確認。白血球の超生体 染色で生細胞と死細胞の鑑別等に使用される。 2 Prescott-Brodie染色:ペルオキシダーゼ陽性 の白血球(好中球、好酸球、単球)を染める。と くに上皮円柱と白血球円柱の鑑別によい。 3 Hansel染色:エオジン顆粒を特異的に染め、 好酸球の確認に用いる。間質性腎炎などの鑑 別に用いられる。 好中球 • 白血球の中で最も活発な遊走能、貪食能を有し、さまざまな 形態変化を示す。 ◎ 生細胞・・球状、棒状、短冊状、アメーバー状、有尾状等 死細胞・・膨化状、萎縮状 膀胱炎・腎盂腎炎・尿道炎・前立腺炎・・生細胞 ◆ 淡染細胞(pale cell):細胞質と核が無染色または細胞質がわ ずかにピンクに染まるもので活きた白血球の出現と考えられる。 生細胞 ◆ 輝細胞(glitter cell):細胞質内にブラウン運動をする 顆粒を認め、低浸透圧尿の際に出現することが多い。S染色 で染まらない。生細胞 ◆ 濃染細胞(dark cell):核が濃青紫色に染まり、老化・死滅した 細胞と考えられる。女性の場合、膣部・外陰部から混入した 白血球で多く見られる。死細胞 好酸球 尿細管間質性腎炎、アレルギー性膀胱炎、 寄生虫性疾患、尿路結石症などで認める。 白血球の5%以上好酸球があればエオジン 尿といえる。 大きさは8∼15μmで細胞質に好酸性顆粒 を有し、多くは円形、類円形。好酸性顆粒は S染色では染まらず、小さく揃った光沢のある 黄褐色∼黒褐色を呈する。 ハンセル染色では好酸性顆粒は橙赤色に染 まる。 ハンセル(Hansel)染色 リンパ球 尿路のリンパ管路瘻による乳び尿、腎移植 後の拒絶反応などで見られる。 大きさは6∼10μmで円形、類円形で好中 球より小さい。 核は単核でN/C比が大きい。円形∼類円形 状でやや中心に1個見られる。核内が抜け て見えることが多い。 S染色では核は青色、細胞質は淡赤紫色を 呈する。 単 球 糸球体腎炎、尿路感染症の慢性期や回復 期などで見られる。 大きさは20μm以下を単球と呼び、それ以 上を大食細胞と呼ぶ。 単球は活発な貪食能を示し細胞質内には細 胞成分、細菌等が観察される。 核は偏在し核形は多様な形状(円形、類円 形、馬蹄形、腎形、ブーメラン形)切れ込み のある形を示す。 S染色では赤紫色∼青紫色の細胞質を示す。 伊藤機一他:一般検査ポケットマニュアル、羊土社 尿中白血球(定性:沈渣)の不一致 白血球反応(+)尿沈渣(−) 白血球反応(−)尿沈渣(+) ・尿沈渣鏡検時の見落とし ・崩壊白血球の残存酸素活性 ・低浸透圧尿 ・アルカリ性尿 ・着色尿 ・古い尿 ・ホルマリン含有尿 ・試験紙の劣化 ・エステラーゼ活性(−)の 白血球の増加 ・高浸透圧尿 ・高蛋白尿 ・高ブドウ糖尿、高シュウ酸 尿 ・白血球の誤認 ・その他 Prescott-Brodie染色(P-B染色) 【染色結果】 好中球、好酸球、単球:陽性で淡青色∼青色∼濃青色∼黒青色 【染色方法の注意】 尿沈渣1滴と染色液1滴をスライド上で混和する。ただし本染色 法は酵素反応を利用しているため白血球が多いときは基質量 が不足するため染色液を多めに加えるとよい。 ☆ 紛らわしい成分について ・トリコモナス原虫 ・扁平上皮細胞の裸核 その他:小型の尿細管細胞、回腸導管 術後尿にみられる腸粘膜細胞など。 ポイント ・ 女性の場合、尿沈渣中に白血球と細菌を認めた ときは、腎・尿路感染症と膣や外陰部 からの混入 を鑑別しなければならない。後者の場合は、出現し ている白血球の多くは濃染細胞(死細胞)である。 無染色でも核が明瞭であることから鑑別することが できる。背景には扁平上皮細胞が多く見られる。 ※尿道口清拭や中間尿採取が行われない全部尿 の場合(女性)には混入がしばしばみられる。 ・ 他成分との鑑別が困難な場合は、S染色やP・B 染色を行う。また、酢酸を滴下することで核は明瞭 化するため鑑別が容易になる。 尿沈渣を見分ける上達法 • 「尿沈渣検査法2000」の参考と熟知。 • よい指導者のもとで教育が受けられ、多くの経験の積み重 ねができる環境であること。 • 細胞の基本的な形態をしっかりと見極める。 • 背景に見られる細胞などもよく見る。 • 患者情報や病名なども調べ参考にする。 • 分からない細胞は経験豊富な先輩技師に訪ねる。 • 例会、研究会、研修会、講習会など積極参加する。 • 尿沈渣検査の重要性を認識し興味をもち、日々 精進し続けること。
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