ご参考資料 特別レポート 【不安定なマーケット環境における株式市場と資源価格】 ブラックロック・ジャパン株式会社 2011年9月27日 不安定なマーケット環境 9月22日から23日までの世界株式市場は、世界経済の先行 き懸念が拡大し、大幅に下落しました。また原油や金属など の商品価格が需要減退懸念から下落し、資源セクターも大幅 に下落しました。通常、信用リスクのない「安全な資産」とされ る傾向にある金においても、株式などのリスク資産の急落を 受け、換金売りと思われる売り圧力に押されて、大幅に下落し ました。 現在の米株式市場をみると、過去に相場が大きく変動した 時期と同様に、値動きの荒い展開になっています。投資家心 理の度合いを示す恐怖指数(VIX指数)*は、直近40を超えま した。VIX指数が40を超えた時期は、1998年ロシア通貨危機、 2001年同時多発テロ、2002年エンロン不正会計事件、2008 年リーマンショック、2010年ギリシャショックなどの時期でした。 現在は、これらのマーケットが混乱した時期の水準に匹敵す る水準になっています(図1)。その主要因の一つは欧州債務 問題と思われます。本レポートでは、その欧州債務問題につ いて市場がどのような反応を示しているかにも焦点をあてて 現状の市場環境を整理してみたいと思います。 本資料は、最近の金融市場等の動向に ついてご説明する目的で作成したものであり、 当社が設定・運用するファンドにおける投資 判断が本資料の見解と必ずしも一致するも のではありません。 おいても具体策の合意は出来ず、依然として支援問題の先行 きは混沌としています。今後もギリシャの債務のデフォルトが 起きるかどうか周縁国にも問題が波及するのかどうかが焦点 になると考えます。 また、ギリシャ債務がデフォルトした場合には、ギリシャへの 融資を多く行っていると見られるフランスの金融機関の自己資 本問題に発展する可能性があることも市場の懸念事項となっ ています。 *シカゴ・オプション取引所がS&P500種株価指数を対象とするオプション取引のボラティ リティ(変動幅)をもとに算出して公表している指数。 図1. VIX指数の推移 欧州の信用市場 昨今、国や企業の信用リスクを見る尺度として、クレジット・ デフォルト・スワップ(CDS)**が広く利用されています。CDS 取引の動向から発行体の信用リスクが市場からどう評価され ているか参考にすることができます。欧州主要国債のCDSを みてみると上昇基調にあります。信用コストが上昇していると いうことですから、これは、すなわち市場での信用が低下して いることを示唆しています。一部不安視されているイタリアや スペイン国債のCDSが上昇しているだけでなく、特に問題視さ れはじめたフランス国債のCDSの上昇も目立ち始めました。 90 **CDSとは、債権自体を移転することなく信用リスクのみを移転する取引。 80 70 60 50 bps 40 600 図2. 欧州主要国と日本の国債のCDS推移 イタリア スペイン フランス ドイツ 日本 30 500 20 10 400 0 93/9 96/9 99/9 02/9 05/9 08/9 11/9 (年/月) 300 出所:ブルームバーグのデータをもとにブラックロック・ジャパン作成 (データの期間(週次):1993年6月4日~2011年9月26日) 200 ギリシャ支援問題をめぐる迷走 100 ギリシャ支援に関しては、ギリシャ政府と欧州連合(EU)、欧 州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)との協議が継続して いますが、具体的な支援策については発表されていません。 また、EUの中心国であるドイツについては、メルケル首相と議 会との対立が深まっており、ギリシャ支援にはっきりとしたスタ ンスを打ち出せていない状況です。前週末開催されたG20に 0 10/9 10/11 11/1 11/3 11/5 11/7 11/9 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータをもとにブラックロック・ジャパン作成 (データの期間(日次):2010年9月14日~2011年9月26日) 当資料は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではありません。 当資料は当社が信頼できると 判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。また、当資料中の各種情報は過去の ものであり、今後の運用成果を保証するものではなく、当資料を利用したことによって生じた損失等について、弊社はその責任を負うものではありませ ん。さらに、本資料に記載された市況や見通しは作成日現在の当社の見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の 多様化に伴う変化に対応し、予告なく変更される可能性があります。 1/4 ご参考資料 この背景は、ギリシャ支援策で政治的な足並みが揃わない 中、南欧との経済的な結びつきが強いフランスへの負担が懸 念されているからです(図2)。また、フランスの金融機関にも信 用低下の兆しが見られます。国際決済銀行(BIS)によると、昨 年末のポルトガル、イタリア、アイルランド、スペイン、ギリシャ 向け与信残高は6,400億ドルにのぼり、与信残高が多いフラン スの金融機関への視線が厳しさを増しています(図3)。 図3. 欧州金融機関債のCDS推移 bps 500 450 400 サンタンデール(西) ソシエテ・ジェネラル(仏) バークレーズ(英) BNPパリバ(仏) ドイツ銀(独) UBS (スイス) 米国の金融機関の格下げ 9月21日格付け会社のムーディーズはバンク・オブ・アメリ カの長期シニア債務格付けをA2からBaa1に、ウェルズ・ ファーゴをA1からA2へ変更し、シティグループについては長 期格付けが据え置きました。3行の格付け見通しは引き続き ネガティブとなっており、今後更に格下げが進む可能性が懸 念されています。 今回の格下げのニュースを受けて、欧州同様、米国でもカ ウンターパーティー・リスク***の顕在化が懸念され始めてお り、株式市場下落に拍車をかける展開となっています。今後 は、自己資本積み増しやリスク資産圧縮を含めたバランス シートの強化や、インターバンク取引におけるストレス(上乗 せ金利)の沈静化が鍵となると考えます。 ***カウンターパーティー・リスクとは、デリバティブ取引等の金融取引における、取引相 手の信用リスクのこと。 350 300 250 今後の見通し 200 150 100 50 0 08/8 08/11 09/2 09/5 09/8 09/11 10/2 10/5 10/8 10/11 11/2 11/5 11/8 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータをもとにブラックロック・ジャパン作成 (データの期間(日次):2008年8月27日~2011年9月26日) 米国の追加金融緩和策の実施可能性の減少 21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、短期国 債を売って長期国債を買うツイストオペとモーゲージ債の償 還金再投資が決定されました。これらの決定およびツイスト オペの4,000億ドルの規模については、債券市場参加者に とっては想定以上であったことから、米国30年債利回りは大 幅に低下し、債券価格は上昇しました。しかし、バーナンキ 議長が量的緩和第3弾 (QE3)に対する言及を行わなかった ことで失望感が高まり、株式市場は顕著に下落しました。今 後については、QE3の実施有無・時期や実体経済への効果 が市場の注目点となると考えます。 各国政府は、ギリシャ支援をはじめ、各国の債務問題と金 融システムの改善に向けて、早期具体策の策定に追われて おります。一部報道されているような「ユーロ共同債」の発行、 救済基金の規模を2兆ユーロに拡大する案など危機回避に 向けた協議が繰り広げられています。また、ユーロ圏の銀行 には 米不良資 産救済 プログラ ム( TARP)同様に欧州版 TARPを通じて約1,500億ユーロ程度の資本注入が必要で はないかとの試算もあります。引き続き、予断を許さない状 況が続きますが、10月以降も3日にユーロ圏財務相会合、4 日にEU財務相理事会、17日~18日にはEU首脳会議など の日程が注目されています。 欧州債務問題の進展と欧米金融機関のカウンターパー ティー・リスクの状況が引き続き市場の焦点となると予想さ れる一方、抜本的な解決策も期待しづらいことから、株式・ 債券・為替・コモディティーの各市場において変動性の高い 展開を想定しています。特に、欧州債務問題に直接的に影 響を受ける欧州株式、欧州債券、ユーロについては一層下 落するリスクを内包していると考えます。また、株式等のリス ク資産についても本格的な上昇に結びつく要因が少ないと 考えられることから、しばらくの間弱含む可能性が高いと考 えています。一方で、グローバル債券については、グローバ ル景気の鈍化と緩和的な金融政策を受けて大幅な長期金 利低下が進んできたことから、更なる金利低下の余地は限 定的であると考えますが、全般的に市場が混乱していること から、長期金利は低位で推移すると予想します。 当資料は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではありません。 当資料は当社が信頼できると 判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。また、当資料中の各種情報は過去の ものであり、今後の運用成果を保証するものではなく、当資料を利用したことによって生じた損失等について、弊社はその責任を負うものではありませ ん。さらに、本資料に記載された市況や見通しは作成日現在の当社の見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の 多様化に伴う変化に対応し、予告なく変更される可能性があります。 2/4 ご参考資料 資源価格と今後について 図4. 原油先物価格(NY市場)の推移 米ドル/バレル 120 欧州債務問題などに起因する不安定なマーケット環境によ り、投資家の動向として投資リスクを引き下げる「リスクオフ」 110 が広がりつつあります。23日に1バレル=80ドルを一時割り 込んだNY原油先物価格(図4)や昨年8月以来の安値をつけ た銅先物価格(図5)など、インフレ懸念が台頭するなか比較 100 的堅調な値動きを示していたコモディティ市場も直近下落基 調となっています。また、これまでリスク回避先として騰勢を 90 強めた金価格も現段階では利益確定目的の資金化と思わ れる動きにより大幅調整となりました(図6)。 80 しかしながら、金についての見通しとして、長期的には金市 場を取り巻く良好なファンダメンタルズは続くと考えています。 70 10/4 宝飾品需要については、所得水準の上昇などを背景にイン ドや中国からの旺盛な需要が続くと予想され、金価格を支援 する要因になると思われます。また、欧州の債務問題やイン フレ懸念は継続する可能性があると考えていることから、こう 米ドル/トン した市場トレンドを前提として、引き続き金をヘッジ目的に購 11,000 入するといった投資需要が金価格を支援すると想定してい ます。さらに、中央銀行による保有金の売却が昨年に続き減 10,000 少する可能性が想定されることもプラス材料として挙げられ 9,000 ます。一方で、仮に実質金利(物価上昇率を考慮した実質的 な金利)が上昇した場合は、金利を生まない金にとってはマ 8,000 イナス材料になる可能性が予想されます。 7,000 また資源を取り巻く今後の需要に関して依然強い見通しも あります。今月、オーストラリア資源・エネルギー経済局は、 6,000 2011年度(2011年7月から2012年6月)の豪州資源・エネル 5,000 10/4 ギー輸出額が前年度比21%増の2,148億豪ドル(約16兆 2,150億円)となるとの見通しを示しました。同27%増だった 2010年度に続き、2年連続で過去最高を更新する見通しで す。欧米経済の減速で鉄鉱石や石炭の価格は2010年度か ら下落したものの依然高水準を維持すると予測しています。 米ドル/トロイオンス したがって、オーストラリアの見通しのように、資源に対す 2,000 る堅調な世界需要が引き続き見込まれれば、現在、リスクオ フによって大きく調整している資源価格に関しても、今後回 1,800 復の兆しが現れるかもしれません。つまり、欧州問題等懸念 材料が緩和されるような局面では、投資動向もリスクオフか 1,600 らリスクオンに反転し、資源関連の価格変動にも影響を与え 1,400 る可能性が考えられます。 10/7 10/10 11/1 11/4 11/7 (年/月) 11/7 (年/月) 11/7 (年/月) 図5. 銅価格(ロンドン市場)の推移 10/7 10/10 11/1 11/4 図6. 金価格(ロンドン市場)の推移 1,200 1,000 10/4 10/7 10/10 11/1 11/4 出所:ブルームバーグ (データの期間(日次):2010年4月7日~2011年9月26日) 当資料は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではありません。 当資料は当社が信頼できると 判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。また、当資料中の各種情報は過去の ものであり、今後の運用成果を保証するものではなく、当資料を利用したことによって生じた損失等について、弊社はその責任を負うものではありませ ん。さらに、本資料に記載された市況や見通しは作成日現在の当社の見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の 多様化に伴う変化に対応し、予告なく変更される可能性があります。 3/4 ご参考資料 投資リスク・手数料について 投資信託に関するリスクについて 投資信託を取得される場合には、投資信託説明書(交付目論見書)をお渡しいたしますので、リスクの内容をご確認のうえ、 ご自身でご判断下さい。投資信託に関するリスクの例として次のものが挙げられます。 ■有価証券等の価格変動リスク 投資信託の基準価額は、投資信託が投資する有価証券やデリバティブ取引等の値動きの他、為替変動による影響を受けますが、 これらの運用による損益はすべて投資家の皆様に帰属いたします。投資信託は元本が保証されているものではなく、有価証券等の 価格変動により損失を生じるおそれがあります。また、投資信託は預貯金や保険契約とは異なり、預金保険機構および保険契約者保 護機構の保護の対象ではありません。 ■為替リスク 外国株式など外貨建資産の円換算価値は、資産自体の価格変動のほか、当該外貨の円に対する為替レートの変動の影響を受けま す。為替レートは、各国の金利動向、政治・経済情勢、為替市場の需給その他の要因により大幅に変動することがあります。投資信託 に組入れた外貨建資産について、当該外貨の為替レートが円高方向に進んだ場合には、基準価額が下落する要因となり、損失を生じ るおそれがあります。 ■カントリー・リスク 世界各国の株式に投資し、また、エマージング諸国の発行体が発行する株式にも投資します。主として先進国市場に投資する場合と 比べてエマージング諸国への投資は、投資先の国の政治・経済事情、通貨・資本規制等の要因により、より大幅に株価が変動するこ とが考えられ、それに伴い基準価額が大幅に変動することがあります。 手数料について 弊社が運用する公募投資信託については、ご投資いただくお客さまに以下の費用をご負担いただきます。 ■直接ご負担いただく費用 お申込み手数料 : 上限4.20%(税抜 4.0%) 解約手数料 : ありません。 信託財産留保額 : ありません。 ■投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用 信託報酬 : 上限2.4994%(税抜 2.428%程度) ■その他の費用 上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。 (その他の費用については、運用状況等により変動するものであり、事前に料率、上限額等を示すことができません。) ※リスク及び手数料の詳細につきましては、投資信託説明書(交付目論見書)等でご確認ください。 ブラックロック・ジャパン株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第375号 加入協会:社団法人 日本証券投資顧問業協会/社団法人 投資信託協会/日本証券業協会 ウェブサイト:www.blackrock.co.jp 当資料は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではありません。 当資料は当社が信頼できると 判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。また、当資料中の各種情報は過去の ものであり、今後の運用成果を保証するものではなく、当資料を利用したことによって生じた損失等について、弊社はその責任を負うものではありませ ん。さらに、本資料に記載された市況や見通しは作成日現在の当社の見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の 多様化に伴う変化に対応し、予告なく変更される可能性があります。 4/4
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