おだわら環境志民フォーラム

おだわら環境志民フォーラム
∼森の再生からブリの来るまちへ∼
平成23年11月19日(土)
ミニ講演⑤
「緑の国へ ∼ 生まれ変わる日本の再生」
小田原市環境部環境政策 課
ミニ講演⑤
○稲本
「緑の国へ ∼ 生まれ変わる日本の再生」
稲本でございます。河野さんが今、原発のことでいたしましたけれども、私、一応原
子物理学者だったんですね。(笑)ただ、38年前にやめたんです。河野さんが、遅きに失
したと。本当に遅きに失し過ぎましたね。私が原子物理をやめた38年前、あのころからも
う原子力は研究していましたから、やめていればこんなことにはならなかった。先ほど福
島の方とお会いしました。うちはアロマを取り扱っていまして、元気をおくるアロマ隊と
いうことで、福島をはじめ東北のほうで一生懸命、木からとれた精油というんですが、そ
れでマッサージに行っています。そうすると現地の人がすごく喜んでくれる。今、仮設に
入ってもなかなか友達ができなくて困っている人たちがいるんですけれども、そんなこと
があります。
原発の話をするとすぐ時間が過ぎちゃいますので、20分しかないということなので、20
分の中で、なるべく小田原の、先ほどブリの話もありましたし、畠山さんの話もありまし
たけれども、森と海にかかわる話をしたいと思います。
誰も読んでいないだろうと思うんですが、「緑の国へ
生まれ変わる日本のシナリオ」と
いう本を読んだ人いますか。あっ、いた。すごい。(笑)この本に書いてあることとちょ
っと重複しますけれども、本当言うと日本は生まれ変わらなきゃいけない、そういう時代
だと思います。
私は、先ほど述べましたけれども、38年前、飛騨の山の中に入りました。全く成り行き
だったんですが、真ん中に木がありますけれども、ここは別荘分譲に失敗した土地でほと
んど木がなかったんです。私たち、これを植えました。今、上のほうの山にはオオタカが
棲んでいます。あそこに野鳥の会の展示もありましたけれども、オオタカが棲んでいると
いうことは生態系が物すごく豊かだということです。
次にいってください。やっていることは、ぱっぱっと言いますと、「100年かかって育っ
た木は100年使えるものに」、「お椀から建物まで」、「子ども一人、ドングリ一粒」、こ
の三つの合言葉でやりました。本当にお椀から建物までつくっています。結構大きいもの
もつくっていまして、ソニーの井深さんの井深記念塾というのもつくったりしています。
小さいものでは、最近はイチローのバットになれなかった材料で携帯ストラップもつくっ
ているんですけれども、そういう小さいものから大きいものまでつくっています。常に木
を
になっています。「子ども一人、ドングリ一粒」ということで木を植えていま
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す。
次にいってください。一応 、僕は建築が専門ですが、野中さんのところもつくったんです
ね。これは最近、ここから余り遠くない伊東につくった建物で、海へ飛び出ている建物で、
「CASAブルータス」に載っていますけれども、これが一応本業です。
次にいってください、時間がないので。これが言いたかったんですね。あそこにいるのは
畠山さんです。それでC.W.ニコルさん、ニックと言っていますけれども、ニックと僕は、
今年は国際森林年なので木を植えたり森を大切にしようとのんびり構えて、3月17日に実
は記者会見をやろうと思っていました。そうしたら、3月 11日にああいう事件が起きたわ
けです。前から、5月11日ぐらいにスパイラルホールというところで、ある種の展示会兼
いろいろなイベントをやろうと思っていました。そうしたらああいう事件が起きまして、
畠山さんは、ニコルさんも僕も共通の友人ですから、彼のところへ連絡したら、ご存じの
ようにカキの養殖場は跡形もなくなったと。もちろん現地にも行きました。
そこで、僕たちが考えたのは、僕も畠山さんもニックも3人が共通していることは、杉の
木が嫌いなんですね。(笑)何ぼ何でも、あれは植え過ぎだと。僕らがドングリを植えた
ら、ドングリなんて雑木を植えるなと林野庁からめちゃくちゃ叱られて、それでも林野庁
の林政審議委員になったことはあるんですけれども、圧倒的に広葉樹というのは少数派で、
杉をひたすら植えたわけですね。小田原も植えたと思います。もちろん、僕は建築をやっ
ていますから杉もいいんですけれども、余りにもバランスが悪過ぎるんです。
それで、広葉樹を植えようと思っていたところに、私は38年前から木を植えていますが、
20数年前、森は海の恋人は今年で23回目の植樹祭だったと思いますけれども、だから23∼
24年前、畠山さんがやり始めて間もなく知ったので、漁師で木を植えているやつがいると。
これは変なやつだと思ったんですね。(笑)私も、原子物理から森へ行って、いろんなこ
とに対する、何というかな、驚かないんですね、私自身が変人ですから。でも、漁師で木
を植えているやつ、これは変人だと思って早速宮城に行ったら、これがまたなかなかの学
者なんだな。ご存じかと思いますけれども、京大とかで今やっていらっしゃいます。先ほ
ど言われていましたが、僕らは木を植えていたけれども、正直言って森を守る、森を再生
するためだけに植えていたんだけれども、それが海につながっているということを知った
のは、これは僕の中でも、いわゆるデカルト、ニュータウンからアインシュタインの相対
性理論に変わったような大変革で、それから友人になりました。何しろみんな流れたと。
この建物、スパイラルで、杉の間伐材を使って、1日で建てるようなシステムをつくりま
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した。家具もやっているので非常に細かいことで、金具は使っていません。
次にいってください。この建物、これがミソなんですね。一応物理やっていたから、ちゃ
んとのっかる。のっかるというところがすごいんです。しかもユニットになっております
から、どんどん増やせるんです。最終的には村までできます。
次にいってください。今、文科系と理科系とすぐ分かれて、省庁が分かれちゃうんだけれ
ども、木を植えること、木を使うこと、それから家具や器をつくること、それと食べるこ
と、これを全部つながなきゃいけないので、今は杉を植え過ぎなんだから、杉で一生懸命
こういう建物をつくって、村をつくっていく。だけれども、忘れずにですね、ここにもあ
りますようにちゃんと木を植える。こういうことをやれば、僕は日本は生まれ変われるん
じゃないかと思っています。先ほど魚つき林思想というのがありましたけれども、畠山さ
んも、思想を言っているだけじゃなくて実践しているんです。僕も実践したんです。
次にいってください。これはどこでしょう。気仙沼と書いているのは、畠山さん のところ
と書くとまたうるさい人がいるんだね。だから、気仙沼の畠山さんの家のちょっと右側の
高台です。ああいうふうに建てました。
次にいってください。それで完成したんですね。これが1個目で、もう幾つか今予定があ
ります。友人のニコルさんも、あの人は被災していないんだけれども、黒姫につくってく
れと言われていて、雪解けにつくろうと思っています。これは何がいいかというと、現地
の間伐材でできるということです。大体15年から20年の木でできます。しかも、設計図が
ちゃんとできていますので、いわゆるプレカット、機械を使って掘って、最後は大工がち
ゃんとやって、大工が1人いたら素人でも建つんです。
だから、僕 が何を考えているかというと、まず林業を再生する。畠山さんも製材機やられ
るそうなんですけれども、何しろ製材をする。それを地元の大工さんで刻む、もしくはプ
レカット工場で刻む。それを地元の人と、今仕事をつくらなきゃいけないという話もあっ
たので、地元の人たちみんなで手伝って建てると。そうすると、産業ができるわけですね。
僕らはノウハウを提供しますので、ぜひともそういうような形にしていきたいと思ってい
ます。
次にいってください。仮設住宅が随分ありますけれども、僕も知らなかったんですが、仮
設というのは、1カ月以内に着工して、2年2カ月で壊さなきゃいけないんですね。あの
ごみをどうするんだと。これだったらば木造で、のっけることもできますから、仮設から
復興住宅にもなります。復興住宅も、数をつくればかなり安くできるはずです。1個しか
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つくらないと少し金がかかるんですけれども、そんなことでぜひともこれを進めたいなと
思っています。
森林の基本というか、生活の基本、先ほど食べ物の話もあったので、身近と森林がどうか
かわるかということで話していきま す。
人間は、1日に空気が20キロ必要なんです。20キロですよ。意外と多いでしょう。大体
4畳半いっぱいの空気がないと人間は生きられません。それと、酸素が21%ぐらいないと
体も動かないし頭も動かないんです。だから、人間が活動できる酸素をつくってCO 2を出
すのは、今のところ森です、圧倒的に。昔は、海もそれなりにつくっていたんですけれど
も、今は海に、先ほどもいろいろ話がありますけれども、能力がなくなっているので、圧
倒的には森林です。
次にいってください。それから人間は、ここに水がありますけれども、水を1日 に2キロ、
約2リットルの水を飲まなきゃいけないんです。2リットルの水を飲まないと調子が悪く
なるんです。特に高山に行くと、水がないと頭が痛くなります。その2リットルの水は、
きれいな水じゃなきゃだめです。汚い水だとだめなんです。先ほどちょっと水の惑星に対
して、畠山さんは鉄の惑星と言ったんですけれども、僕は森の惑星だと思っているんです。
(笑)なぜかというと、水の惑星である地球のうち、 97.2%は海水なんです。でも、これ
は人間は残念ながら飲めない。魚は飲めるし、カキも飲めるけれども、人間は飲めないで
す。陸上にある2.8%、その中で人間が手が届く、氷雪でもなく、地下水の深いところでも
なく、届く水は0.28%です、たったの。その0.28%のうち、きれいな水がどれだけあるか。
これの3分の1もないと言われているんです。人によっては10分の1以下だと言われてい
る。ということは、 0.0何%となる可能性があるわけですね。これはすごいことですよ、
0.1%でも1,000分の1ですからね。だから、きれいな水をつくっているのは明らかに森で
す。大学で講義して、若い人に、きれいな水はどこでできますかと言ったら、水道局だと
言った。(笑)水道局の人がつくっている水なんて、ほんのちょっとです、きれいな水。
圧倒的に森林なんです。
次にいってください。人間は1日に、先ほど魚を食べないという話もありましたけれども、
2キロ食べるんです、大体。食べ過ぎる人もいるし、食べない人もいるけれども、平均2
キロ。2キロ食べるうち、植物がまずできなきゃいけない。植物は水と二酸化炭素で育つ
わけだから、結論から言うと水がなきゃだめ。いい水がないと植物は育たない。それから
カキだって、カキだけじゃなくて魚だって、いい水がないと育たない。ということは、結
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局森がないと食料はできないということになるんですね。だから、森の惑星なんです。
次にいってください。これは有名な国連のIPCCが出している、あんなにCO2 が増え
ているんです。これは京都議定書どおりやっても、500ppmぐらいはいくと言われていま
す。
次にいってください。それを計算しているのは、パチャウリというノーベル平和賞をもら
った人です。
次にいってください。時間がないので、少しずついきましょう。二酸化炭素を一番出して
いるのは、かつてはアメリカだったんですが、今や中国なんですね。ところが、1人当た
りに出しているのは圧倒的にアメリカ人です。それからロシア、日本、ドイツ、イギリス
も出しています。中国、インド、アフリカの人たちはほとんど出していません。この人た
ちが出してくると、地球は何個あっても足りないと言われています。だから、その意味で
も森が大切なわけです。
次にいってください。人間が1人息を吸うだけで15∼16本要ります。さっき、ちゃんと
魚を食べない人は罰せられるみたいな話をしていましたけれども(笑)、僕から言わせれ
ば、16本以上木を植えていない人は空気を吸っちゃいけないということ になりますね 。
(笑)
次にいってください。文明的な生活をすると 376本。インド人とかは少ないんです。先ご
ろブータンの国王が来ていますね。国民総幸福論といってやっておりますけれども、ブー
タンもすごいんです。大体ああいうところは、1人当たり40∼50本あれば生活が成り立つ
んですね。
次にいってください。もうアメリカはバカヤロウですね。(笑)800本近くないとだめ。
うちの息子はアメリカに住んでいるんですけれども、一方で自然保護と言いながら、どん
どん木を使うわけです。
次にいってください。これは、CO2 を吸収するためには森を大切にしなきゃいけないと
いうことです。
時間がないのでどんどんいきましょう。日本の木材は 、自給率がどんどん落ちている とい
う話です。それで、外国からひたすら買っているんです。日本は世界最大のウッドマイレ
ージです。
次にいってください。ひたすら外から木を買っているので、どうなっているかといいます
と、先ほどもありましたように、日本は世界第2位の森林大国です。2位ですよ。もうス
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ウェーデンを追い越しちゃったんです。フィンランドの次が日本なんです、面積に対して。
これだけの森林大国なんですけれども、残念ながら原生林は ありそうで な い ん で す よ 。
2.3%しかない。もう圧倒的に人工林と二次林なんです。二次林というのは、1回切った森
です。これは手を入れなきゃだめなんですね。手を入れながら、どうやって循環していく
か、これが大切です。
飛ばしていきます。日本の森とか世界の森を紹介しようと思ったんですが、時間があと5
分なのでちょっと無理なので、ばっといってください。
日本はすごいですよ。これは西表、こんな木まであるんですね。
これはデンマークですけれども、これは人工林なんですよ、自然のようですけれども。デ
ンマークは
で有名ですね。
次にいってください。これだけはちょっと言っておきましょう。木を切って使っても、木
は常温で加工できますから、木の中にはCO2 は入ったままです。例えば100歳の木は、真
ん中のほうには100年前の二酸化炭素が詰まっているわけです。二酸化炭素の缶詰めなんで
す。だから、二酸化炭素の缶詰めでつくるからCO 2 は増えないんです。金属で やると上が
るんです。木を植えるとどんどん下がります。50年たって、また大きくなった木でつくる。
そうしたら、また缶詰めになる。それでまた木を植えて下がる。木をうまく循環させると、
CO2 を減らすことができる 、珍しい生き物兼資源なんです。
しかも、周りをきれいにするんです。かつてシュレーディンガーという原子物理学者が
ですね。人間がいろいろ活動したりすると大体周りが汚れるんです。ところが、
木とか植物は、活動すると周りの環境をきれいにするんですね。
次にいってください。こういうものをいろいろつくって、これは同じ長さなんだけれども、
ちゃんとドレミファが出るんですね。こういうものをつくって、木育ということに今力を
入れています。こういうものもやっております。
次にいってください。先ほど言いました森の惑星ということで、世界の森を回りました。
もう一つ、僕が畠山さんと同じぐらいショックを受けた男がいるんです。プランツという
キューガーデンの元園長、サー・ドクター・
、サーがついているから貴族です
けれども、彼と会って、「稲本さん、あなたは木で家具をいろいろつくったり建築したり
しているけれども、葉っぱのほうがすごいんだよ」と言われたんです。確かに、葉っぱは
すごいんです。葉っぱというのは、 CO2 を吸収し幹をつくるわけですから、葉っぱはすご
いんですね。その葉っぱから、実のところアロマというものが出ている。木は動けない、
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植物は動けないのに元気であるためには、細菌とか悪いものを寄せつけない、自分の味方
である昆虫は寄せつける 。そのために信号を出します。それがアロマなんですね。
アマゾンに生育する中で一番有名なアロマはローズウッド、そこにリナロールというもの
があります。そのリナロールが人間に作用するとどうなるか。これは大切なんです。食べ
物も大切だけれども、人間の精神にすごく重要で、視覚とか聴覚だけじゃなくて、人間は
今健康が物すごく害されています。そうなると免疫、それからホルモンとか全部含めた内
分泌、自律神経、交感神経と副交感神経のバランス、アドレナリンが出るか出ないか、そ
のバランスが非常に重要になってきています。これをつかさどるのが実のところアロマで
あるということがわかってきています。
最後に、森の癒しということをいっていますけれども、僕ら日本をつくり直さなければい
けないときに、やはり精神も元気でなければいけない。人間の精神が元気になり、森が豊
かになると、必然的に海も豊かになるわけです 。
最後に言いますけれども、葉っぱはなぜ緑か。これに答えた植物学者はいないんですね。
この前、タイラー・ブリュレという「Monocle」の編集長が来たんだけれども、彼
もさすがに答えられなかった。葉っぱの緑ってすごいです。僕は、間もなく葉っぱは黒く
なると思うんです。黒くなったとき、絶対人類は滅びます。なぜかというと、太陽の光の
一番多いところが緑なんです。葉っぱは、その緑をはね返しているから緑なんです。だか
ら、もし木なり植物が自分勝手に生きようとしたら黒になるのが一番いいんです。エネル
ギーを全部とれちゃいますから。動物とのバランスを考えて、太陽エネルギーの一番多い
ところをはね返してくれている。これはすごいことで、僕らはその恩恵を受けて生きてい
る。その意味で、日本人は自然との共生ということをいっているんですけれども、これの
根源が、実のところ葉っぱは緑だということで、だからこの本のタイトルも「緑の国へ」
としたんですけれども、もう一回その辺を根本から考え直して国策をつくり直すことが必
要で、今、気仙沼で畠山さんが一生懸命やっていますけれども、彼を僕がなぜ援助してい
るかというと、彼の新しい国ができれば、海と森がくっついたいい国ができれば、これを
小田原に持ってきて、ブリが何十万匹獲れても大丈夫のようになれば、これは日本は変わ
ります。これができるかどうかというのがこれからの課題だと思います。この後、シンポ
ジウムで話しますので、これぐらいにしておきます。
どうもありがとうございました。(拍手)
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