九 島 大 橋 市 道 坂 下 津 1 号 線 事業概要 九島は、宇和島市の中心部から直線で約4kmに位置する周囲約12kmの島 で、蛤地区、百之浦地区、本九島地区の3つの集落に、人口905人(426世 帯)が暮らしています(平成28年2月29日現在)。 また、今や絶滅したとされる「ニホンカワウソ」が最後に保護された場所(昭 和50年)としても知られています。 九島大橋が完成するまでは、島民は、内地を結ぶ唯一の交通手段である1日9 宇和島市 便のフェリーに頼った生活を送るなど、離島であるがゆえに、医療・就学・経済 活動の面で多くの課題を抱えており、架橋は島民の長年の悲願でした。 昭和62年に島民からの強い要望を受け、本架橋の実現に向け、調査、検討を 進め、平成20年度から本格的な調査が開始され、平成22年度には、国の補助 事業として採択されました。平成24年度に、愛媛県へ橋梁本体工事を委託、建 設工事に着手し、平成28年3月に完成しました。 九島大橋は、日常生活での不便の解消や、医療、福祉等の行政サービスを向上 させるだけでなく、災害時の島民の避難路や支援物資運搬路としての役割も果た 九島全景 す「命の架け橋」であると言えます。 九島大橋 側面図 橋長 L=468.0m 1.25m 140.25m 185.00m 140.25m 1.25m 坂下津側 九島側 P1 約30m 15.5m 可航水路幅=90m H.H.W.L=TP+1.609 1 43.8m 深礎杭φ2500 L=9.5m~11.0m N=4 本 A2 P2 42.8m A1 深礎杭φ2000 L=3.0m~4.5m N=4 本 鋼管杭(SKK490)φ1500mm L=14.4m~17.4m N=28 本 鋼管杭(SKK490)φ1500mm L=29.3m~29.5m N=24 本 橋梁諸元 断面図 橋 標 準 部 8250 500 長 全長 L=468.0m 支 7250 500 500 2750 2750 1250 路肩 車道 車道 幅広路肩 長 140.25m+185.00m+140.25m 間 道 路 規 格 第3種第4級 設 計 速 度 30km/h 路 線 名 市道坂下津1号線 荷 重 A活荷重 形 式 上部工 鋼3径間連続鋼床版箱桁橋 抑流板 幅1.0m 下部工 抑流板 幅1.0m 1.5% 上水平プレート 幅0.6m C L 有 1.5% 上水平プレート 幅0.6m 効 幅 舗 板 鋼床版:t=16mm 鋼 重 量 2,724t (桁重量:2,655t) 5000 使 用 コ ン ク リ ー ト 下水平プレート 幅1.0m 下水平プレート 幅1.0m NTT 四国電力 上水道 張出式橋台(深礎杭基礎) 員 7.25m 装 グースアスファルト舗装:t=75mm 床 総 張出式橋脚(RC橋脚・鋼管杭基礎) 橋脚部 設計基準強度 σ ck=30N/mm2 橋台部 設計基準強度 σ ck=24N/mm2 上部工 SM490Y,SM400,SS400,S10T,F10T 下部工 SKK490 使 用 鋼 材 使 用 鉄 筋 エポキシ樹脂塗装鉄筋 SD490,SD345 防 食 方 鋼道路橋塗装・防食便覧 法 外面:アルミニウム・マグネシウム合金溶射 内面:D-5(重防食) 公 共 添 架 物 上水道、電力、電話 1625 5000 8250 1625 道路橋示方書・同解説Ⅰ~Ⅳ(平成24年3月) 適 用 示 方 書 鋼道路橋設計便覧(昭和55年4月) 道路橋耐風設計便覧(平成19年12月) 品質確保 ◇橋脚のプレキャスト化 橋脚を陸上で製作することで、水中施工に比べ、品質お よび作業効率を向上させました。 ◇温度応力ひび割れ解析 FEMによる温度応力解析を行い、橋脚躯体部について は、ひび割れ制御鉄筋の配置や保温養生対策を行うことに より、有害なひび割れを防ぎました。 温度応力解析 ベルタイプ基礎 耐久性向上(塩害対策) ◇エポキシ樹脂塗装鉄筋の使用 橋脚躯体内の鉄筋に、エポキシ樹脂塗装鉄筋を使用 することで、外部からの塩化物イオン(塩分)の侵入 による耐久性の低下を防ぎました。 ◇アルミニウム・マグネシウム金属溶射の採用 桁の外面には、塩分の遮断効果の高いアルミニウム と強度のあるマグネシウムを溶射(溶融状態の物質を エポキシ樹脂塗装鉄筋 吹き付けて被膜を作る)しています。 溶射皮膜の上には、耐久性に優れた「ふっ素塗装」を施しています。 これにより、長期間の品質の確保が期待されます。 金属溶射状況 施工性向上・環境対策 耐風対策 ◇水中不分離性コンクリートの使用 ◇主桁の耐風対策 橋脚据付後、鋼管杭と橋脚のフーチング部との結 合には、成分の不分離性と高い流動性を持つ「水中 不分離性コンクリート」を使用しました。これによ り、海中であっても、フーチングの隅々まで充填が 可能となり、また、濁水の発生による養殖魚への影 響を抑えました。 架橋地点が、風の影響を受けやすい海峡にあるこ とや、桁の断面が、幅員に対する桁高の比が大きい、 前例の少ない形状であることから、耐風安定性を確 保する必要がありました。このため、風洞模型試験 をもとに、主桁には「上・下水平プレート」を設置 し、橋面上には「抑流板付防護柵」を設置しました。 地震対策 ◇免震支承の採用 地震時の橋桁の揺れを抑えるため、支承には「免 震支承(超高減衰ゴム支承:HDR-S)」を採用 部分模型試験(1/50) しました。 全橋模型試験(1/100) 全橋模型試験(1/100) 抑流板 上水平プレート ゴム支承 上・下水平プレート( 部) 抑流板付防護柵 下部工工事①(橋脚の製作) 九島大橋の最大の特徴は、水深約30mの海底に設置する「コンクリート製橋脚」とその「基礎構造」です。 また、この橋脚の構造形式は、その形状が柄のついた鐘に似ていることからベルタイプ基礎と呼ばれています。 本橋では、あらかじめ海底に鋼管杭を打設、その上に、陸上で製作した重量約3,500tの橋脚を大型起重 機船で吊り下ろし、一括据付する工法を採用しました。 本橋は、ベルタイプ基礎の設置水深として国内最大級となります。 橋脚一般図(P1 橋脚) 起重機船による吊上げ時の対策 (海上構築) 上柱部 鉄筋への応力を低減させること、また、橋脚自重による躯体への過度な引張応力度 の発生やひび割れの発生を避けるために、柱の内部とフーチングの隔壁部には、PC 鋼材によるプレストレスを与えました。 鋼管杭の打設 (陸上構築) 下柱部 打設に先立ち、平面位置のズレを防ぐために、格子状の鋼製枠であ る「導枠」をあらかじめ海底部に沈設しておき、その枠内に最長で約 60mの鋼管杭を打設しました。特に、杭の位置決め、鉛直度管理に は、光波による計測に加え、杭打ちのオペレーターにもリアルタイム に状況が確認できるように、望遠カメラ付トータルステーションを使 用しました。 望遠カメラ付トータルステーションと映像 導枠 水中不分離性コンクリートによる杭頭結合 杭との結合を図るため、フーチング部を鋼製枠による なぜ水中不分離性コンクリートを使うの? ①高い流動性により、充填性、セルフレべリング性に優れて スリット構造としました。また、海底部の鋼管杭と橋脚 います(大水深下での締固めが不要)。 との結合は、水中不分離性コンクリートによる「A結合」 ②ブリーディングやレイタンスがほとんど生じないため、鉄 を採用しました。打設はCP船(2軸強制練)により行 筋との付着性が優れています。 いました。また、水中不分離性コンクリートについては、 ③コンクリート成分が分離しにくく、汚濁水の発生を抑える ことができます。 打設に先立ち試験施工を行いました。 ◇水中不分離性コンクリートの試験施工 なぜ試験施工が必要?このコンクリートは、①道路橋示方 書には規定されていない材料であること、②大水深の水中施 工で施工難易度が高いこと等から、事前に設計計画時におけ る要求性能を満足するための施工の確実性を確認しておく フーチング部のスリット構造(写真:P2) 試験施工の確認事項 (1)施工について ①水中不分離性コンクリートの流動性および充填性確認 ②打込み時の筒先管理高さ確認 (2)設計について ③水中不分離性コンクリートの強度確認 ④エポキシ樹脂塗装鉄筋との付着強度確認 必要があるためです。 57.5cm 5.4m 杭頭結合(A 結合) 試験供試体全景 スランプフロー 下部工工事②(橋脚の据付) ◇国内最大の起重機船による橋脚の据付 ○起重機船による据付時の対策 橋脚の据付は、国内最大の4,100t吊起重機船 (海翔)により行いました。 基礎杭上への据付の規格値は、平面位置「±150 フーチング゙部の「鋼製側板」には、据付時に鋼管杭 (導杭)を通すための「ガイド」を設けました。 導杭 mm以内」、高さ「±100mm以内」であり、高い 精度が求められ、陸上からの光波測距計による測量で 位置を調整し、陸上の測量担当と海上の船やクレーン 担当が密に連絡を取りながら慎重にそして丁寧に作業 を進めました。 鋼製枠 玉掛け作業 玉掛け完了 坂下津岸壁での地切り 鋼管杭ガイド 吊曳航状況 据付状況(矢印は導杭) 位置誘導(船上) 据付確認状況 上部工工事①(橋桁の工場製作から輸送) ●施工フロー 橋桁は、工期の短縮を図るため、2つの側径間ブロッ クを長崎の工場で、中央径間ブロックを千葉の工場で製 材料受入れ 作しました。 加 ◇品質確保・精度管理のための工夫 溶 接:箱組立では溶接品質確保のため、溶接姿勢が下 箱組立後の反転作業 工 組立・溶接 向きとなるよう、上面(デッキ)を下面で箱組立後、反 転作業を行いながら、溶接、仕上げを行いました。 仮組立検査 仮組立:箱桁ブロックの製作精度の確認のための仮組立 検査については、工場塗装前にデジタルカメラでの3次 塗装・溶射 元計測によるシミュレーション仮組立と、現地大ブロッ ク継手部は実仮組立による確認を行いました。 宮地エンジニアリング(株) 千葉工場 シミュレーション仮組立 箱桁ブロックの完成 エム・エムブリッジ(株) (三菱重工業(株)長崎造船所香焼工場) 地組立 浜出し 中央径間ブロック ゴライアスクレーンによる浜出し (側径間ブロック) 海上輸送(側径間ブロック) 海上輸送 上部工工事②(大ブロック架設) ◇大型起重機船による一括架設工法の採用 架橋位置は、内地と九島間を往復するフェリーや、他の島へ向 かう航路となっているほか、漁船が通航するため、水路の閉鎖時 間が最小限となるよう、2,200t吊起重機船(駿河)による 「大ブロック架設工法」を採用しました。なお、架設は3つの大 ブロック(側径間×2、中央径間)に分割し行いました。 STEP1 側径間(坂下津側)架設 坂下津側の側径間(1,050t)架設時に、中央径間ブロックの 大ブロック架設(中央径間) 架設を容易にするため、あらかじめ支点を坂下津側に100mm移 動(セットバック)。 2,200t吊起重機船『駿河』 セットバック 100mm 至坂下津 至九島 J11 県道九島循環線 市道坂下津46号線 九島蛤 As A2 A1 P1 STEP2 P2 側径間(九島側)架設 九島側の側径間( 1,050t)を架設。 2,200t吊起重機船『駿河』 至九島 至坂下津 市道坂下津46号線 J11 J18 県道九島循環線 九島蛤 As A2 A1 P1 STEP3 P2 中央径間架設 セッティングビーム 中央径間(750t)をセッテイングビームで支えながら落とし込 み架設し、架設完了後は仕口調整(セットフォー・端支点部調整) し、橋梁灯の点灯を開始。 2,200t吊起重機船『駿河』 セッティングビーム セッティングビーム J11 至坂下津 至九島 J18 市道坂下津46号線 県道九島循環線 九島蛤 As A2 A1 P1 STEP4 P2 上面 架設完了 高力ボルト 仕口調整後、継手の連結。 側面 上面(デッキ)は溶接、側面(ウェブ)、下面(下フランジ)は高 力ボルトにより連結。 至九島 至坂下津 J11 市道坂下津46号線 J18 県道九島循環線 航路 桁下高15.5m 九島蛤 As A2 A1 P1 P2 橋梁標識 ◇橋梁標識・橋脚灯 本橋には、橋梁下を通航する船舶に対して、「橋梁の保護 と航行安全の確保」を目的として、橋桁の中央径間及び側径 間に、航路標識である「橋梁標識」(簡易標識)を設置しま した。 また夜間、「橋脚への衝突防止」を目的として、橋脚には 「ライトアップ照明」を設置しました。 左側端標(緑) ライトアップ照明 中央標(白) 橋梁用防護柵 ◇抑流板付防護柵 本橋の防護柵は、支柱は、紛体塗装を施した「鋼製」、横梁は「アルミニウム製」です。 特に、耐風対策としての抑流板は防護柵と一体化させており、その抑流板は、アルミよりも融点の低い「ろう材」 によりアルミ板を両面から貼り合わせた「ろう付けアルミハニカムパネル構造」を採用しました。 抑流板 <アルミハニカムパネルの特徴> ハニカムコアは、ほとんどが空気層の ため同じ大きさのアルミ板に比べて軽量 であり、ハニカム構造により非常に高い 強度と剛性を兼ね備えています。 丸コアハニカム 断面詳細 ・耐水性に優れています。 1000 抑流板(t=50mm) ろう付アルミハニカムパネル 基準点 10° 「防護柵の設置基準・同解説」に基づき、抑流板ブ ラケット設置状態での静荷重試験により性能を確認 しました。 50 ◇静荷重試験の実施 70 抑流板付防護柵 ハニカム(蜂の巣状)構造 また、密閉構造のため耐久・耐食性 基準点 E 800 726 載荷 997 車道側 抑流板付防護柵詳細図 静荷重試験 橋面舗装 ◇グースアスファルトと改質アスファルトによる橋面舗装 橋面の舗装は、たわみ(揺れ)が大きい鋼床版上となります。そこで、基層は、たわみ性に優れ、接着性、不 透水性が高い「改質グースアスファルト舗装」、表層は、たわみ追従性を持つ「ポリマー改質アスファルト舗装 (Ⅲ型-WF)」を採用しました。 鋼床版の表面処理 接着剤の塗布 クッカによる混合物の供給 グースフィニッシャによる舗設 位置図 大浦 九島 朝日IC 九島大橋 市立歴史資料館 JR宇和島駅 道の駅 みなとオアシスうわじま 坂下津 宇和島市役所 宇和島城 市立伊達博物館 坂下津IC 市立宇和島病院 天赦園 別当IC 別当I C ※交通アクセス(九島大橋まで) ●松山方面から:朝日IC下車後 車で約15分 ●JR宇和島駅から路線バスで20分 開通までの経緯 ●愛南方面から:坂下津IC下車後 車で約10分 昭和62年 九島連合自治会が架橋を市に陳情 平成3年 九島架橋促進協議会発足 平成7年 九島架橋準備委員会の設置 平成20年 海峡部測量調査、道路・橋梁予備設計の実施 平成22年 「社会資本整備総合交付金事業」に採択 平成23年 道路・橋梁詳細設計を実施 平成24年 橋梁本体工事の施行を愛媛県に委託(橋長 468m) 平成25年 橋梁本体および坂下津工区取付道路工事着手工事着手 平成26年 上部工・下部工(橋台部)・九島工区取付道路工事着手 平成28年2月 橋梁本体工事完成 平成28年4月 開 通 宇和島市 〒798-8511 建設部 建設課 愛媛県宇和島市曙町 1 番地 TEL:0895-24-1111
© Copyright 2024 Paperzz